耳は大切な器官です。聞こえが悪いと、子供やお年寄りをはじめとして心身に与える影響は計り知れないものがあります。3月3日は「耳の日」です。少し早いですが、耳寄りな話として難聴に対する最新の治療法を紹介しましょう。
難聴の原因は、鼓膜や中耳で音の振動が伝わりにくくなる伝音難聴と、神経自体が悪くなった感音難聴に分けられます。
伝音難聴の代表的な原因に、中耳炎の後遺症やけがなどで鼓膜に穴があいたままになった慢性穿孔性中耳炎があります。鼓膜を手術で再生しようとすると、これまでだと、長期の入院が必要なことが多かったのですが、近年、フイブリン糊という人体用の接着剤を用いた手術(鼓膜形成術)、キチン膜やコラーゲンスポンジなどによるパッチ術で、鼓膜の穴を簡単に閉じられるようになってきました。 これらの方法は短時間で安全に行うことができ、入院の必要もありません。
また、高度な伝音難聴の中には、補聴器を用いても十分に音が聞こえないタイプの中耳炎もあります。これに対しては、人工中耳と呼ばれる高感度の補聴器を中耳に植え込む手術も開発されています。
一方、神経の障害でほとんど音が聞こえない高度な感音難聴に対しては人工内耳と呼ばれる音の信号を発する電極を内耳に植え込む手術の臨床応用が始まっています。音を部分的な電気信号に分けて伝えるので、完全な音として聞こえるわけではないのですが、訓練次第では会話も十分聞き取れるようになります。もし、ヘレン・ケラ−が現代に生きていれば耳が聞こえるようになっていたかもしれません。
聞こえを補う補聴器の技術革新も着実に進んでいます。感音難聴の場合、単に音が聞こえにくいだけでなく音が割れて聞こえたり、耳鳴りを伴うことが多いため、自己流で補聴器を付けてもうまく聞こえないことがありました。
補聴器の出力を調整する測定器や、雑音のないデジタル補聴器の開発により、それぞれの人の難聴のパターンに応じて細かく音の増幅度を調節できるようにな
てきました。レ−ガン元米国大統領が用いて有名にな
た耳の穴に入れる超小型の補聴器も感度が良くなっています。これらの技術の多くは1980年代に研究が進められ、90年代に入り日本でも急速に普及しつつあります。耳鼻咽喉科で診察を受ければ聞こえの状態に応じて適切なアドバイスを受けられますので、難聴でお困りの方は相談してみるとよいでしょう。
院 長 山 口 幹 夫
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