副鼻腔炎と気管支炎の関係
上気道と下気道は気道粘膜としての連動性があります。風邪(ウイルス性上気道炎)にかかった後に、二次的な細菌感染による副鼻腔炎を起こした場合、副鼻腔炎の細菌を含む鼻汁がのどに落ちたり(後鼻漏)、鼻閉のせいで口呼吸が主体となって鼻のフィルター作用が減弱したりすることから、気管支に刺激が加わったり感染を誘発しやすくなります。細菌性副鼻腔炎と気管支炎は連動して起こりやすいのです。この状態が慢性化したものが副鼻腔気管支症候群です。成人の慢性副鼻腔炎の方の約1割が慢性気管支炎を合併し、慢性気管支炎の方の約半数が慢性副鼻腔炎を合併します。乳幼児が鼻炎や副鼻腔炎になると、喘息性気管支炎も誘発しやすくなります。
小児の注意点:@気道の免疫機能がまだ未熟である A鼻腔や気管支が体格的に狭い B鼻腔や気管支粘膜の異物排出機構である線毛運動が弱い C特に2才以下の乳幼児では、自分で鼻をかんだり痰を排出したり出来ず、副鼻腔がまだ成長段階で小さく十分機能しない D1才から7才頃は、アレルギー素因の小児ではダニやホコリのアレルギーが目立ち始め、アデノイドや扁桃腺などのリンパ組織が過剰に反応しやすい、などの様々な要因で副鼻腔炎と気管支炎は連動した状態になりやすいのです。
また、鼻汁が鼻の奥に慢性的にたまるとアデノイドの周囲で細菌が増殖しやすくなります。細菌によっては潜伏感染します。鼻に薬剤耐性菌を保有している集団保育児の増加が問題になっており、細菌性副鼻腔炎が“がんこ”となった小児が増えてきています。耳管の機能が弱い体質の小児がこのような状態になると急性中耳炎を反復したり難治化したりします。必要以上に鼻を吸いこむ「鼻すすり」の癖がつくと、耳管狭窄の状態が続き滲出性中耳炎を誘発しやすくなります。
ただし副鼻腔炎の本格的な慢性化は小学生高学年以降の話です。副鼻腔は2才で形成され始め、4才でウミの溜まる大きさの空洞になりますが、6才頃までは副鼻腔の入り口は広いため、鼻炎が改善すれば副鼻腔炎も改善します。頭の骨が発達して副鼻腔の入り口が狭くなった小学生になって、副鼻腔だけに炎症が残る慢性化が始まります。
高齢者の注意点:加齢と共に、粘膜の萎縮や線毛運動機能の低下が起こってきます。鼻では萎縮性鼻炎となり、下気道では慢性気管支炎やびまん性汎細気管支炎となります。特に、喫煙を続けていた方は気管支の炎症が慢性化しやすくなります(慢性閉塞性肺疾患COPD、気管支拡張症、肺気腫)。
過敏症の方の注意点:NSAID不耐症(アスピリン過敏症)の体質が成人になって出てくると、消炎鎮痛解熱剤や添加物などの化学品に過敏になって鼻茸(はなたけ)(鼻ポリープ)と気管支喘息が連動して発症してきます。
〜 鼻かみの勧め 〜
鼻が通る状態が持続すれば、副鼻腔への換気が良くなります。神経質に1日中鼻をかむ必要はありませんが、膿を含んだ鼻汁は適宜かんで下さい。血管収縮剤の点鼻薬をお持ちの方は、点鼻後3分程で鼻が通った状態で、軽く片方ずつかんで下さい。両方の鼻を押さえて強くかみ過ぎると中耳炎や外リンパ瘻など耳に悪影響を及ぼす恐れもありますので注意して下さい。
鼻洗浄:花粉症の方の飛散シーズンや極端な膿性鼻汁が続く時には、生理食塩水による鼻洗浄(鼻うがい)は効果的です。ただし、急いでむせて鼻すすりの状態にはしないで下さい。
*生理食塩水の作り方:水1リットルを10分程度煮沸して殺菌塩素除去後、小さじ1杯の食塩(9g)を入れます
鼻かみが上手に出来ない小児:4才未満の幼児は“鼻はすすれても、鼻はかめない”ものです。お風呂の湯船で片鼻を塞いで息を吐いて水面を波立たせる、などの遊びを通じて、鼻から息を出すコツを覚えさせてみて下さい。
赤ちゃんの鼻吸引:1日2〜4回、上向きに寝た姿勢で生理食塩水や重曹水(発泡と殺菌作用があります)を鼻の穴に適量滴下した後、お母さまの口か吸引器でやさしく片方ずつ吸ってあげて下さい。鼻呼吸が出来ないと眠りも浅くなり、哺乳も上手くできません。授乳の前や、おやすみ前に行うと効果的です。