扁桃腺とは:
口蓋(こうがい)扁桃とも呼ばれます。口蓋垂(のどちんこ)の両横にあるリンパのこぶです。免疫機能の脆弱な幼児期に病原菌の侵入を防ぐという生理的な目的があります。5〜7才が大きさのピークで、免疫機能が発達する中学生でほぼ大人の大きさになります。扁桃腺が必要以上に大きい場合は急性感染や慢性持続感染を誘発します。炎症が続くと,朝に痛みを感じやすく,夕方に微熱が出やすくなる傾向があります。
口蓋扁桃以外にも、鼻の奥に咽頭扁桃(小児ではアデノイドとも称します)と耳管扁桃が、舌の付け根の舌根扁桃が、口の中の突き当たりにも咽頭後壁リンパ濾胞と呼ばれるごく小さな扁桃組織があります。風邪の急性期に必要以上に反応した場合に急性扁桃炎になり、風邪をひいていない時に過剰な炎症が持続する場合には慢性扁桃炎になります。
昭和40年代には大きいだけで積極的に全摘出手術が奨められていましたが、局所麻酔や日帰り手術によるショックや術後出血のケースが見られたことや、当時の医学レベルでは致し方ない点もあるのですが免疫組織を摘出する事に対する免疫学的な影響が充分判ってなかったこともあり手術件数が減少しました。しかし、現在では少なくとも3才以降では術後一過性に細菌を殺す抗体(免疫グロブリン)の量が一過性に低下するだけで、免疫機能の低下は認めないとの考えが主流です。また、これらの扁桃組織は複合的に作用して外界からの異物を殺す免疫作用を司りますので、学童期以降では口蓋扁桃のみが無くなったからといって免疫力の低下を来す事はありません。最近の国際的な流れをみるとハンディキャップを手術的に取れるものなら積極的に取ろうという考えの米国や、抗生物質の普及が不充分な中国などでは日本より積極的に手術が行なわれているようです。ただし、3才以下では手術により逆に周りの扁桃組織が過増殖する代償性肥大という現象もあり、手術の適否については障害の程度や年令的な変化を勘案して判断する必要があります。
手術が必要な場合(当院の考え方):
1:大きい場合(扁桃腺肥大)
・常に睡眠中に息苦しい呼吸をして、いびきが大きい(睡眠時呼吸障害)
(その為小児で胸郭変形がある)
・いつも口を開けて集中力が低下している、食が細い
・幼児期の顎顔面の成長障害がある
2:炎症が強い場合(慢性扁桃炎)
・口峡炎(アンギーナ)と呼ばれる高熱が出るのど風邪を引きやすく、学業や仕事に影響する
(一年3〜4回以上が目安)
・扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍などの高度な炎症を2回以上繰返す
・風邪の後や体調不良時などの免疫力の低下時に微熱が出やすい
・中耳炎や副鼻腔炎(ちくのう症)が反復し難治な場合
・扁桃の表面に膿のかす(膿栓)が出来やすく口臭や微熱の原因となる
3:体に悪影響を及ぼす場合
・腎炎,皮疹などの病巣感染の原因となっている
・腫瘍が疑われる
・溶連菌の健康保菌者で腎炎を発症しやすい
※ 症状に応じて,扁桃腺が原因かどうかの検査を行います。
血液検査(白血球分類、CRP、ASK等)、扁桃誘発試験、睡眠ポリグラフ検査
手術法: 全摘出術について
全身麻酔の上、口の中から扁桃腺を掘り出します。入院期間は8日間前後です。総合病院の耳鼻咽喉科に紹介します。4才以上であれば周囲の組織が働きを補うので体への悪影響はありませんが、小児は小学校入学前の症状に応じて手術の適否を判断するのが一般的です。また、手術は症状の落ち着いた時に行なうのが一般的です。急性炎症は抗生物質などによる消炎治療が主体となります。
*病巣感染:
慢性の細菌感染を来している組織から放出された炎症産物や免疫複合体が血液を介して他の組織に障害を及ぼしている状態をいいます。慢性副鼻腔炎、歯周病、虫歯なども原因となりますが、慢性扁桃炎が誘因としては代表的です。惹き起こされる病気としては、IgA腎症などの腎炎、リウマチ熱、リウマチ性関節炎、心内膜炎、心筋障害、冠動脈障害、掌蹠膿疱症、結節性紅斑、多型滲出性紅斑、膿疱性細菌疹などの皮膚疾患や胃潰瘍、子宮内胎児発育遅滞などがあります。
*伝染性単核球症:
EBウイルスの初感染で発症します。扁桃炎,首のリンパ節腫脹,肝炎などを起こします。小児は扁桃炎のみで軽快することが多いのですが,成人では肝炎を起こしやすくなります。血液検査で肝機能障害の有無を確認します。小児で首の腫れが強く発熱が続く場合や,成人で肝機能障害が強い場合は入院が必要となることもあります。
*溶連菌咽頭炎:
溶血性連鎖球菌の感染で起こる痛みの強い咽頭扁桃炎です。当院では迅速抗体検査により約5分で正確な診断を行なっています。舌が赤くなり,全身に発疹がでたり、初期に中毒症状による吐き気や腹痛を訴えることもあります。遅れて細菌の毒素が誘発する免疫反応による腎炎、心内膜炎、関節炎を引き起こすことがあります。これらのことから10日間程の抗生物質の服用による充分な除菌が必要です。特に小児の急性腎炎の原因となることがあり、充分除菌した後での尿検査での確認が必要です。
アデノイドとは:
鼻の奥で口蓋垂(のどちんこ)の裏側の上咽頭(鼻咽頭)の後頭部側にある扁桃組織です。口蓋扁桃と違い咽頭粘膜との明瞭な境目はありません。その為、アデノイド増殖症や咽頭扁桃とも呼ばれます。3才頃より増殖が顕著になり5才前後で生理的な大きさのピークを迎え、その後中学生頃の年令には口蓋扁桃と異なりほぼ消退します。
鼻の奥という位置関係から、増殖が顕著な場合や急性の炎症反応が強くなる場合、慢性炎症が持続する場合は、口蓋扁桃以上に中耳炎や鼻炎、副鼻腔炎、またいびきなどのの病態に大きく影響してきます。
<アデノイドの手術時期、当院の考え方>
1〜3才の早期に切除するとアデノイド自体が再増殖したり、代償性肥大という回りの扁桃組織の肥大が逆に強くなる現象が起こることがあります。6〜7才以降は自然退縮も期待できます。
このことから、3才で睡眠時の呼吸障害が高度な場合、4〜7才で中耳炎や副鼻腔炎の症状が強く難治な場合、小学校中高学年以降で鼻づまりがひどく集中力が常に低下している場合に手術を勧めます。
次へ
なぜなに質問集へ