平衡神経科におけるめまいの取扱い
体のバランス感覚は、内耳〜小脳〜目〜手足のネットワークで調節しています。特に内耳には聞く作用(聴神経)と重力や加速度を感じる作用(前庭神経)があり、内耳の障害で、回転したり流れたりするめまいが生じます。
検査 聴力検査;聴神経の働きをみます。
眼振検査:頭位
頭振後;急性期に患側向き、回復期(後遺症期)に健側向き眼振
圧負荷;真珠腫による外側半規管瘻孔、上半規管裂隙症候群で瘻孔症状陽性
起立検査:立ちくらみ、血圧の異常をみます。
重心動揺検査:耳、目、小脳、深部知覚(足)の調節力をみます。
温度眼振検査:外耳を水で冷やし、内耳の後半規管の機能をみます。後遺症診断にも用います。
脳神経検査:小脳や脳幹、手足の失調をみます。
血液検査:貧血、肝臓、腎臓、イオンバランスの異常、糖尿病、ホルモン、自己免疫異常などをみます。
CT、耳・内耳道X腺検査、蝸電図検査
MRI(内耳造影、MRA磁気共鳴血管撮影)、脳血管造影:脳神経外科、放射線科、総合病院耳鼻科に紹介します。
頚動脈エコー検査:頚動脈、椎骨動脈の動脈硬化の程度や血栓の有無がわかります。
主な病気
<耳鼻科関連>前庭機能低下を伴うもの
メニエール病(内リンパ水腫):内リンパ液の循環障害で内耳が水腫状となり起こる。低音部の難聴のみ起こる蝸牛型、めまいのみ起こる前庭型もあります。再発を繰返して進行する場合があります。
遅発性内リンパ水腫という以前あった内耳障害から引き起こされる病態もあります。
*耳からのめまいを総称してメニエール症候群と表現することもあります。
良性発作性頭位眩暈症(BPPV):前庭の重力を感じる部分の耳石の障害で起こる。カルシウム不足の閉経後の女性に目立ちます。良性の神経腫瘍などで徐々に悪化するものを悪性発作性頭位眩暈症といいます。
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD):もとの疾患から誘発され3ヵ月以上続くめまい。抗うつ剤SSRI、SNRIが有効。
前庭神経炎:前庭神経へのウイルス感染に続く神経障害で起こると考えられています。持続性の強いめまいや吐き気が起こりますが、難聴や耳鳴りは伴いません。
突発性難聴(めまい突難):聴力障害が主体ですが、めまいを合併する場合があります。
外リンパ瘻:くしゃみや鼻かみ、外傷などで内耳の外リンパ液が中耳へ漏れる。瘻孔症状、pop音、流水様耳鳴。CTP(外リンパ特異蛋白)検査(0.3ml生食洗浄液より0.1ml採取)
慢性中耳炎、急性中耳炎に伴う内耳炎、ハント症候群(帯状ヘルペス感染症)、薬剤性(結核治療のストマイなど)
内耳振盪症:頭部打撲による前庭機能障害です。
上半規管裂隙症候群:中頭蓋下骨欠損
<整形外科関連>
頚性めまい、頸椎ヘルニア、頸椎ヘルニア、頸椎捻挫(外傷性頚部症候群)
<脳神経外科・神経内科関連>
椎骨脳底動脈循環不全、一過性脳虚血発作(TIA):1/3で将来に脳梗塞の可能性
小脳・脳幹部腫瘍、低髄液圧症候群神、パーキンソン病・アルツハイマー病など神経変性疾患、
多発性硬化症・ギランバレー症候群など免疫性神経疾患、脳炎、髄膜炎
片頭痛関連めまい(前庭性片頭痛):片頭痛予防薬のミグシスが有効
低髄液圧症候群:起立時に増悪
★持続する強いめまいや、加えて視力障害、発語の障害、手足の麻痺やしびれ、強い頭痛や意識障害を合併すれば、脳卒中(脳梗塞・脳出血)を疑い緊急検査が必要です!
聴神経腫瘍:良性腫瘍。脳腫瘍の約10%。女性にやや多い。前庭神経から発生するものが多く、腫瘍が大きくなると聴神経や顔面神経を圧迫して機能障害が広がります。MRIで確定診断し、治療はガンマナイフなどの放射線治療と手術です。
<内科関連>
起立性調節障害(立ちくらみ OD)(体位性頻脈症候群 PoTS)、低血圧、高血圧、不整脈、貧血(鉄欠乏)、肝腎機能障害、甲状腺機能低下、脱水、熱中症、糖尿病
<小児科関連>
小児良性発作性めまい症:5才以下好発、乗り物酔い合併、家族に片頭痛
片頭痛関連めまい、外傷、ウイルス感染、中耳炎
<婦人科関連>更年期障害、月経前症候群・月経困難症、月経過多・不正出血による貧血
<精神科関連>自律神経失調、心因性めまい、不安障害(パニック障害)、気分障害(うつ病)、ヒステリー(転換性障害[身体面]、解離性障害[精神面])、てんかん、認知症