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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科を専門とし、地域医療に貢献します。

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

舌小帯短縮症と口唇粘液嚢胞・ガマ腫

舌小帯短縮症とは
 舌の裏側の真ん中で口の底に向かっているヒダを舌小帯といいます.このヒダが生まれつき短いことがあり,これを舌小帯短縮症といいます。短縮が高度で舌が口腔底に癒着するような高度なものを舌癒着症といいます。軽度のものは比較的多く学童の約18パーセントに見られるとの報告もあります。
 舌の先を上の歯の裏の歯肉に付けることができたり,舌を出したときに舌の先の中央がハート形にくびれなければ,まず手術の必要はありません。また舌小帯が短くても程度が軽いときは手術の必要はありません。舌小帯短縮症でもほとんどのこどもはうまく哺乳ができますし,逆に哺乳に問題のある乳児のうちでも,舌小帯短縮症によるものはほんの一部であるといわれています。手術が必要な場合は,高度な短縮で哺乳障害が疑われたり、構音障害や歯列異常の原因が疑われる場合です。しかし、手術の適応基準については臨床医のあいだでも統一的な基準がないのが現状です。

所 見:舌小帯が短いため舌の前方の突出や後退が制限され、無理に舌を前に出そうとすると舌の突端が中央で陥没し、ハート形を呈します。

症 状:障害として咀嚼障害、嚥下障害、発音障害(舌足らずの言葉)が見られ、特にラ行、タ行、サ行に現れる。母親は案外舌足らずな発音、発音障害、代償性の発音(正しい発音ができるように舌を前方に突出させ、歯と舌で発音する)などに気付かずに幼児語が残っていると考えていることも多いです。また正しい発音を行うように充分代償して問題ないこともあります。短縮が高度な場合は、下顎の前歯を内側から押すことによる反対咬合、前歯に隙間ができる空隙歯列、嚥下働きが落ちることによって食事に時間がかかる、咀嚼が不十分で肥満傾向になる、口呼吸が優位になることによるいびき、易感染性などの原因となることもあります。

治 療:従来、軽度のものは舌下面の小帯をはさみで横に切り離すだけでしたが、切離後の再癒着の問題もあり、舌癒着症などの高度な場合は舌小帯切除術(延長術)が行われます。術後に瘢痕治癒化の予防と舌挙上のための訓練<舌先で鼻をなめる練習をする>を行います。手術時期は子供の言語発育の面から言葉を覚える段階の小学校就学前が望ましいとされます。また歯列に影響がでている場合は時期をみて二次的に歯列矯正を行います。
 当院では、軽度の例には主に、高周波電気による凝固切離を行います。凝固により一瞬で切離され止血しますので、麻酔は行いません。術後5日程度創部が口内炎化した上で治癒します。再癒着を起こさない簡便な方法です。



口唇粘液嚢胞とガマ腫
 唾液は、耳下腺や顎下腺で主に産生されますが、舌の下にある舌下腺や口腔内粘膜に広く分布する小唾液腺でも作られます。唾液腺の口腔内への導管が外傷や炎症で塞がれると、唾液が溜まって袋状に腫れて粘液嚢胞(のうほう)となります。舌下腺を中心とした舌下部の嚢胞が大きくなるとガマ腫となります。

口唇粘液嚢胞:唇の裏側には1㎜程の小さなブツブツに見える小唾液腺(口唇腺)があります。下口唇は、食事中に噛んだり歯の刺激を受けやすいなどから、導管開口部が詰まり粘液嚢胞が出来やすく、粘液嚢胞の40%が口唇粘液嚢胞です。同様の嚢胞が、頬粘膜(頬腺)、軟口蓋(口蓋腺)、舌背後方(エブネル腺)、舌下面(前舌腺)にも出来ます。

当院での治療方針:注射器で吸引しても唾液を産生する袋は残っているために再発してきます。治療には、導管開口部を再疎通させる、嚢胞粘膜を口腔内に開く、嚢胞粘膜を取り除く、などの方針があります。
Step 1:小児では自然に治る場合もまれではありません。くちびるを噛んだり触ったりする癖を直すよう心掛けながら、3~6ヶ月治療せずに様子を見ます。
Step 2:初期で粘膜表面に炎症が残っている段階では、口内炎の治療で用いる抗炎症作用のある軟膏を約2週間をめどに繰り返し塗ります。
Step 3:嚢胞を部分的に切り開き、内側の唾液を産生する粘膜の細胞をレーザーや高周波電気で焼きます。
Step 4:局所麻酔の小手術で嚢胞を全摘出します。
*嚢胞の一部が残って再発する場合があります。その際は、レーザー治療の追加、時期をみての再摘出などを検討します。

ガマ腫:舌下腺は舌の下に2~3㎝帯状に広がる唾液腺で複数の導管があります。導管が何らかの刺激を受けた後に、破れた導管から唾液が漏出する・導管の部分的貯留・導管周囲の炎症・導管の閉塞や部分閉塞の瘤形成、などで嚢胞が形成されると考えられています。小唾液腺よりも唾液産生力が強いことから嚢胞は大きくなる傾向があります。嚢胞が大きくなって口腔内と首の境界の顎舌骨筋の間隙や後方から首に広がると、顎の下が腫れてカエルのガマ状になります。口腔内だけで膨れる舌下型、首に広がる顎下型、両方に広がる舌下顎下型があります。穿刺吸引液は粘稠です。進展の程度はMRIで評価します。

治療法:
開窓術:舌下型の嚢胞を切開して口腔内への唾液の出口を作ります。再手術が容易です。早期のものは当院でも行います。
嚢胞摘出術、舌下腺摘出術:舌下腺も含めた摘出が望ましいです。
*この疾患の手術は再発しやすい特徴があります。平均再発期間4ヶ月、再発が開窓術や嚢胞摘出術で40%、舌下腺摘出術で5%程度あります。
硬化療法:溶連菌弱毒株をペニシリン処理した製剤(ピシバニール)を注入するOK432嚢胞内注入療法がH23年9月より保険適応(厚生労働省の「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」において、ピシバニールが「がま腫」に関してリンパ管腫に準じて「使用事例を審査上認めるもの」とされる)となっています。注入時に発熱や腫脹がみられ、複数回の注入が必要なことから6~8週経過を見る必要があります。より難治性のものにはアルコール硬化療法もあります。 *当院での治療は行っておりません。

鑑別すべき疾患:吸引液の性状やMRIで鑑別診断します。
顎下腺粘液嚢胞;稀です。顎下腺を含めた全摘出が必要です。
類皮嚢胞(表皮様嚢胞、類表皮様嚢胞);皮膚に似た粘膜から出来た嚢胞で、成人になって徐々に目立ってくる場合があります。吸引液がサラサラ(漿液状)で皮膚様物質(debris)や毛髪様組織が含まれることがあります。手術的に全摘出する必要があります。
甲状舌管嚢胞、鰓原嚢胞、側頸嚢胞性水腫、嚢胞状リンパ管腫;乳幼児で注意します。

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