うがい薬、トローチと口腔病変
当院で用いているうがい薬(含嗽“がんそう”剤)やトローチについてご説明します。
1、ネグミンガーグル(イソジンガーグル)(茶色):殺ウイルス作用も含めた広い殺菌消毒作用
ヨウ素と界面活性剤(ポリビニルピロリドン)との複合体のポンピドンヨードを含み、ヨウ素を徐々に遊離して殺菌作用を現します。ヨウ素は酸化作用により細胞機能を阻害して、全ての細菌に対して強い殺菌作用を現し、真菌、ウイルスにも有効です。MRSAなどの抗生物質耐性菌にも有効です。刺激性や組織傷害性が低く傷口に塗布しても比較的痛みが弱いために、消毒薬ヨードチンキとしても広く用いられています。インフルエンザなどの病原性が強く感染力の強い風邪の予防、扁桃炎などで細菌が露出している場合、歯周病や歯肉炎で歯周病菌による障害部位が露出している場合に有用です。細菌感染にともなう口臭にも有用です。ヨウ素を含有するため、ヨウ素過敏症がある方は禁忌であり、甲状腺機能に異常がある方には慎重投与となります。そのほか、新生児、胎児はヨウ素の過剰接種により甲状腺機能障害が誘発されるとの報告があり、新生児や妊婦、授乳婦の方に使用する場合には少量の使用にとどめます。
★虫歯(う歯)は、歯垢(プラーク)が固まった部位から発生し、歯垢は物理的にこすり落とさなければ取れないので、うがいだけで虫歯を予防するのは無理があります。
★殺菌作用のうがいを極端に連用した場合には、舌の表面に生息する善玉菌が減少して、萎縮性舌炎や舌痛症を誘発する場合があります。そのような場合は、むしろ食塩水によるうがいが有用です。
*生理食塩水の作り方:水1リットルに食塩9gで0.9%の生理食塩水と同等になります。500mlのペットボトルならば付属のキャップ約半分の食塩を混ぜれば、おおよその食塩水が出来上がります。
2、アズノール(青色):粘膜の消炎作用
アズレンスルホン酸ナトリウムを含みます。これは、抗炎症作用、抗アレルギー作用、肉芽新生および上皮形成促進作用を有しており、創傷治癒の促進および炎症組織の直接的な消炎を目的として使用します。もともと薬用植物カモミールの研究からスタートした成分で、カモミールはハーブとしても人気が高く、ハーブの自然治癒力がルーツです。風邪で二次的に粘膜が障害された場合や、慢性扁桃炎や萎縮性舌炎、扁平苔癬など、慢性的に粘膜表面に炎症が続く場合に有用です。アズノールには殺菌作用はありませんが、フリーラジカルという細胞障害性の分子を消去して粘膜を保護し炎症を抑えることから、ウイルスや細菌に対する抵抗力を高めます。そのため間接的には風邪の予防効果があると考えられます。アズノールはマイルドな消炎作用から、胃粘膜保護用の内服薬、皮膚潰瘍治療用の軟膏、結膜炎用の点眼液など他の部位でも用いられています。
3、ファンギゾンシロップ(黄色)、フロリードゲル(白色):カビの殺菌作用
正常の人でも口腔内にはわずかにカビ(真菌)がいます。普段は病原性を示さないのですが、①風邪やストレスにより体の免疫力が落ちる(特に免疫力の十分でない赤ちゃんや高齢者が目立ちます) ②抗生物質を服用→一時的に口腔内の細菌が減少→細菌の増殖を抑えるために口腔内に集まっている白血球が減少 などによりカンジダを中心としたカビが逆に増殖することがあります。そのため舌やのどの痛みや違和感、嚥下時の痛みや違和感、味覚の低下などを起こすことによって口腔カンジダ症や舌真菌症、鵞口瘡(がこうそう)といった病気を引き起こします。ファイギゾンシロップにはアンホテリシンB、フロリードゲルにはミコナゾールというカンジダを殺菌する成分が含まれています。フロリードゲルは内服薬に分類されておりゼリーをゆっくり服用することにより口腔内や食道のカビを殺菌します。
4、SPトローチ:細菌の殺菌作用
塩化デカリニウムという成分です。細菌の蛋白質に作用し、口やのどの細菌を殺す働きがあります。当院では咽頭炎、口内炎の二次感染予防、扁桃炎の殺菌に用います。歯科では抜歯創を含む口腔創傷の感染予防にも用いられます。1日6回口中で徐々に溶解させます。症状により適宜増減してかまいませんが、原則1回には1錠です。できるだけ長く口の中に含んで、唾液により徐々に溶かすことによって、口の中での効果を持続させて下さい。かみくだいたり、飲みこんだりしないでください。
*その他に、オラドール(赤色、殺菌)、ネオステリン(緑色、殺菌)、ハチアズレ(青紫色、消炎)などもあります。