根気強い治療が必要,状態に応じ吸入や洗浄
【問い】
2年ほど前から鼻の奥とロの中、舌が乾燥して,鼻の奥になにか詰まている感じがします。鼻の奥を、しぼり出すようにロの中へ吸い出すと、ぬるっとした透明のだ液のようなものが少し出ます。夜から朝の乾燥が特にひどく感じます。半年ほど前に、耳鼻科へ行きました。アレルギ−性鼻炎だと言われ、鼻炎の薬と点鼻薬で治療しています。 激しいくしゃみ、鼻水はその日で止まりましたが、最近では嗅覚(きゅうかく)もほとんどなくなりました。ビタミン剤も耳鼻科でもらて飲んでいます。1週間ほど前から鼻水が少し出ます。鼻をかむ程度ではつかないのですが、鼻の奥へティッシュをつめると血が少しつきます。痛みはありません。味覚もよく分かります。3年前に乳がんの手術をしました。月に一度、手術をした病院の外科で血液検査もしていますが、今は異常ありません。抗がん剤を飲んでいましたが、その副作用かと思い外科の先生と相談して今は飲んでいません。今している耳鼻科の治療で良くなるのでしょうか。内科的検査をした方がよいのでしょうか。よろしくお願いします。(南予)
【答え】
半年前症状が強いときに耳鼻科でアレルギー性鼻炎との診断を受けたようですので、普段から鼻の過敏症のような慢性鼻炎の素因があるものと思われます。アレルギ−性鼻炎は、鼻粘膜が過敏な体質の人が、ほこり、ダニや花粉などのアレルギ−の原因物質を吸った時に発症します。花粉症のような季節性の鼻炎の人でも、普段から体質的な粘膜の過敏症があることが多く、気温、気圧の変化、ストレスや、本来は軽い風邪でも鼻水が多くなったり、鼻づまりが強くなったりします。恐らく鼻粘膜の萎縮などの年齢的な変化もあって、二年前から慢性鼻炎の体質になったものと思われます。こうなると、以前は自然に治ていた鼻風邪が治りにくくなり、その上に細菌のニ次感染を起こすと、鼻の奥の副鼻腔(くう)に炎症が残り副鼻腔炎=蓄膿(ちくのう)症=を起こします。軽度な場合は、後鼻漏,(こうびろう)と呼ばれる粘液状の鼻水がすこしすつ鼻の奥からロに落ちてきて、鼻、のどの粘膜が慢性的に荒れてきます。正常な人でも自律神経の日内変動からみて夜からら朝にかけて鼻もつまりやすくなり鼻水も出やすくなりますので、鼻炎の人は夜間の鼻づまりのために、就寝中に口で呼吸することが多くなって、朝、ロの中が乾燥したり、後鼻漏による痰(たん)が多くなります。また、鼻の粘膜の委縮が強くなると、粘膜にかさぶたがつきやすくなります。鼻の粘膜は細かな血管が集まってできていますので、炎症が続くと血管が浮いてきて鼻血がでやすくなります。特に、鼻の入りロの皮膚と粘膜の境目は刺激を受けやすい部位ですので、ティッシュで刺激すると,血がつきやすくなっているものと思われます。鼻の中の一番上方ににおいを感じる部分があり、鼻炎で粘膜がはれるとにおいの粒子が到達しにくくなりますし、においを感じる神経の働きも落ちてきます。また、抗がん剤などの薬物を長期に服用すると、貧血やビタミン不足のほかにも、お茶やカキに多く含まれている亜鉛という栄礎分の取り込み不足などから、嗅覚の低下をきたすことがあります。
今後の治療ですが、アレルギー性鼻炎の状態が現在も続いているのか、細菌感染を伴うような副鼻腔炎を併発していないかを、レントゲン検査やアレルギー反応の有無をみる検査で見た上で、ます鼻炎の治療を行ってください。耳鼻科では、においを感じる部分の粘膜の状態を直接確認できますので、必要に応じてにおいの検査や治療も行います。内服薬による治療以外にも、鼻の吸入や洗浄、手術、アレルギーの体質改善など各種の治療法がありますので、鼻炎の状態に応じてどのような治療法がもっとも効果的か耳鼻科のかかりつけの先生とよく相談してください。急性の鼻風邪ではなさそうですので、少し根気強い治療が必要となるように思われます。
乳がんが鼻に転移する頻度は低いため過度に心配する必要はありませんが、頭痛やしびれなどの他の神経症状が出たり、鼻からのどにかけての痛みや違和感、首のはれ、鼻血の持続などがあれは、外科、耳鼻咽喉(いんこう)科、脳神経外科等で皿液検査以外の精密検査も必要となってきます。このような症状があれば、まず手術を受けた外科の主治医の先生に相談してみてください。
3、スギ花粉症:平成11年3月,NHKの取材に対しての提供資料です
1、愛媛県における今年の飛散予想
飛散数:例年よりやや多め 2年毎に多くなる傾向あり→今年は豊作年(反対語は裏作年)
飛散時期:今年の松山市での初観測
1月20日
飛散開始 定義;毎日ある一定数の花粉が飛び始める日 昨年 中予 2月8日 予想;南予 2月1日頃 中東予 2月6日頃
2、原因
発現年齢:毎年花粉を吸う度に体に抗体が増えていき、ある年に突然発症することが多い。
*小学生以上での発症が一般的だが、最近、幼稚園児での発症もみられる
*50才台以降で発症する人もいる。 江戸時代には花粉症を思わせる記述なし→近年増加傾向にあり。原因は? スギの植林が増えた、動物性蛋白質の摂取量が増えた、現代社会でストレスが増えた、排気ガスとスギ花粉が反応して抗原性が強まった‥等の説があるが明確な原因は不明
3、症状
代表的:くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目の充血、かゆみ *微熱、のどの痛み、咳、皮膚の湿疹が主な症状となる人もあり、風邪と勘違いする人も多い
4、予防
花粉を目に入れない→花粉防止用メガネ
鼻に入れない→マスク、帰宅後の鼻の洗浄
室内に入れない→換気は最低限 *空気清浄器
ふとんを干したらよくたたいて取り込む
衣類のほこりを取る
発症前投薬(予防投薬):症状のでる前から抗アレルギ−剤を服用する *一旦症状がでれば、粘膜のただれが改善しにくくなるため
免疫療法:スギ花粉のエキスを少量ずつ2〜3年かけて注射して体を慣らしていく *最も体質改善に近いが効果は6割前後
5、治療
ここ5年ほどで、続々と眠気のほとんど出ない薬剤が開発されている。鼻炎に対しては、レ−ザ−治療、化学剤手術、高周波電気手術などの日帰り手術も有効 注意:行なう施設が限られている、翌シ−ズンまでは効果が持続しにくい
症状が強くなったときには、医療用の抗炎症作用をもつホルモン剤(副腎皮質ホルモン)の局所投与が有効 鼻へのスプレ−;体の一部分への少量かつ短期の投与なので副作用の心配はほとんどない
院 長 山 口 幹 夫