「口呼吸」について
人は呼吸を無意識におこなっています。普通は鼻で空気を吸って、鼻から吐く『鼻呼吸』をしています。ところが、口から空気を吸って吐く『口呼吸』をするお子さんがかなり多いのが現状のようです。では、口で呼吸をすると一体どんなことが起きるのでしょうか?そして、お子さんのために気を付けることは?そこで「口呼吸」について山口先生に教えていただきました。
Q1 口呼吸になると良くない理由・惹き起こされる疾患は?
A 鼻は肺に入る空気の清浄器や加湿器の役目をします。持続的な口呼吸では肺に直接病原菌が侵入しやすくなります。鼻自体の機能も落ちて、アレルギー性鼻炎が強くなったり、鼻の入り口に湿疹が出来やすくなったり、風邪にかかった後に病原菌が広がり副鼻腔炎を起こしやすくなります。ひいては中耳へ空気が抜けにくくなって耳が塞がった感じがしたり、中耳炎が誘発されやすくなります。また噛みしめて食べる働きが弱くなることから、成長期の子供では顎の骨や顎関節の発育が悪くなるために、噛み合わせや歯並びが悪くなります。嚥下(えんげ=飲み込む)の働きが落ち、口の中が乾燥しやすくなることから、赤ちゃんでは哺乳力の低下をおこし、幼児では食欲が落ちます。また虫歯や歯肉炎、口内炎が出来やすくなります。学童期に顎関節症がひどくなると痛みで口が開けにくくなることがあります。のどの奥が狭くなることから、いびきがひどくなり、この状態が強くなると睡眠時無呼吸から睡眠時の低酸素が惹き起こされ、昼間の眠気が強
くなります。
Q2 口呼吸の原因となる疾患と治す方法(治療)は?
A 鼻の奥が狭いと口呼吸になります。小児では原因として最も多いのが扁桃肥大とアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎です。
①扁桃腺は外界からの感染を防御するために本来備わっているものですが、大きすぎると鼻呼吸を妨げます。口の中にある扁桃腺と鼻の奥にあるアデノイドが主なもので、肥大のピークは5~6才、その後小さくなり中学生で大人の大きさになります。
②アレルギー性鼻炎の中でも代表的な原因であるハウスダストに対する鼻炎は、就学前に目立ち始めて小学生まで症状が強くなることが多いです。
③副鼻腔という鼻の奥の骨の空洞は2才頃より大きくなりはじめて中学生で完成しますので、副鼻腔炎が慢性化するのは小学生以降です。このように成長期は原因となる部位や程度が変化していきます。年齢や程度に応じて鼻炎の薬物治療、副鼻腔炎や扁桃炎の細菌感染に対する治療、程度が強いと扁桃腺摘出や鼻の手術も考慮します。
Q3 自宅で気をつけたら良い事など
A お子様の口がいつも開いているようであれば、頭痛の訴えがないか?目の周りや耳の違和感を訴えないか?集中力不足の傾向がないか?などを観察して下さい。親御さんも試しに1時間ほど鼻をつまんで生活してみて下さい。いかに頭が重くなるか実感できると思います。また鼻への感染が治りにくくなることから、風邪に罹った後の治りが悪くなります。また鼻水は鼻の奥からのどに落ち込む症状が残りますので、タンがからんだような咳き込みが続いていないか注意して下さい。特に現代は、集団保育児が薬の効きにくい耐性菌に感染する機会が多いため、粘り気のある鼻水が続くなど細菌感染が慢性化していないかに注意します。中耳炎を誘発することもあることから音に対しての反応が鈍くないかも観察して下さい。口呼吸が続いて成長すると前歯が突出するなど前後に歯並びが悪くなる事があります。また現代っ子は固いものを食べる機会が減っていることから、顎の発育が悪く永久歯の並ぶスペースが少なくなり、歯並びが乱れる子どもが増えています。永久歯に生え変わる時期に歯並びが気になれば矯正歯科でチェックを受けて下さい。
*こねっと通信 あなたの町のお医者さん 寄稿文より