膠原病と自己免疫疾患 ~耳鼻科関連疾患を中心に~
膠原(こうげん)病は、全身の結合組織、血管、臓器に炎症が起こり機能障害をもたらす病気の総称で、結合組織の膠原(コラーゲン)繊維の障害から膠原病と名付けられました。自分の細胞の核に対する抗体が出来て障害を及ぼす自己免疫病、関節や筋肉に炎症を起こすリウマチ、結合組織が炎症を起こす結合組織病が複合したものです。成人女性に多い傾向があります。当院では唾液分泌減少、不明熱、ステロイド依存性感音難聴、側頭動脈や顔面の血管炎、肉芽腫、難治性口内炎が疑われた際にスクリーニング検査として自己抗体ANAを測定しています。この検査が陽性となった場合、必要に応じてリウマチセンターや膠原病内科に紹介しています。
症状:
全身的;発熱・全身倦怠感・血管炎
神 経;しびれ
精 神;うつ・不眠
呼吸器;息切れ・胸痛(間質性肺炎、胸膜炎)
循環器;胸痛・動悸(心膜炎)
腎 臓;むくみ(尿蛋白)
関節・筋肉;関節痛・筋肉痛・脱力(多発性筋炎)
皮 膚;蝶形紅斑(SLE)、硬化(強皮症)、レイノー現象
乾燥症状;口渇・目の乾燥(シェーグレン症候群)
抗核抗体(ANA):細胞の核と反応する自己抗体です。膠原病(特にSLE、SJS、MCTDで特異的)、甲状腺疾患、慢性肝炎等で出現しますが、正常女性の10%にも出現します。抗核抗体が陽性であっても他に異常がなければ経過観察のみとなります。膠原病が疑われた場合にはより詳細な特異的抗体を測定します。
治療:治癒は少なく、多くは寛解(病状が安定した状態)と再燃(病状が悪化した状態)を繰り返します。寛解状態を保つことが治療目標となります。治療は消炎鎮痛剤、漢方薬による対処療法、ステロイド、免疫抑制剤よる免疫抑制が中心です。関節リウマチに対するTNFα阻害薬(生物学的製剤)、SLEやシェーグレン症候群にB細胞を特異的に傷害するリツキシマブ、免疫グロブリン注射、ウェゲナー肉芽腫症やSLEに対するシクロフォスファミド投与など新たな治療法が開発されています。関節変形には整形外科的手術も行われます。
膠原病と類縁疾患:責任(障害される)細胞も挙げています。
1、慢性関節リウマチ (RA)、若年性関節リウマチ(JRA)
2、全身性エリテマトーデス (SLE);B細胞障害
3、強皮症 (PSS)
4、皮膚筋炎 (DM);CD4陽性T細胞障害
多発性筋炎 (PM);CD8陽性T細胞障害
5、混合性結合組織病 (MCTD)
6、シェーグレン症候群 (SJS);B細胞障害、唾液分泌減少、SS-A、SS-B陽性、唾液分泌促進薬
7、壊死性血管炎・その他血管炎;抗核抗体の関与なし
結節性多発性動脈炎 (PN)
過敏性血管炎
巨細胞性動脈炎
大動脈炎症候群;ステロイド依存性感音難聴合併の報告あり
側頭動脈炎
川崎病;毒性物質、真菌からの免疫応答による血管炎?
ベーチェット病;好中球障害、難治性口内炎
IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)
8、ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎
顕微鏡的多発血管炎;好中球障害
アレルギー性肉芽腫性血管炎 (チャーグ・ストラウス症候群);好酸球障害
ウェゲナー肉芽腫症;マクロファージ障害、鼻中隔穿孔
9、その他
コーガン症候群
成人スティル病
リウマチ性多発筋痛症
多発性紅斑
線維筋痛症、再発性多発軟骨炎
全身性硬化症;線維芽細胞障害
天疱瘡;皮膚粘膜の接着蛋白(デスモグレイン(1は皮膚、3は粘膜)へのIgG自己抗体)の障害による水疱