異物・誤飲が疑われた方の診察後の注意点 ~耳鼻咽喉科・気管食道科の立場から~
食物以外の物を誤って口から摂取することを誤飲といいます。誤飲したものが腸から吸収されないで便中に排出されるか、または摘出する必要があるものを異物といいます。誤飲した物が腸から吸収されて毒性を発揮する場合を中毒といいます。
咽頭異物:
食事中に急に痛みを感じて、その痛みが同じ場所で続く場合には、
⑴ 魚の骨のようなとがった物が刺さった。
⑵ 飲み込む際にこすれて傷がついた。
⑶ かすかにやけどした。
⑷ 異物を取ろうとして自分の手で傷をつけた。
⑸ 先に風邪などの炎症反応があり、粘膜を刺激した。
などが考えられます。
代表的な異物である魚の骨の場合、ファイバー検査も含めた耳鼻科の診察で異物や傷が見つからない場合、ごく小さな骨が口蓋扁桃や舌扁桃の奥に埋もれてしまうと見つけることは困難です。わずか1~2ミリほどの小さな骨や糸のように細い骨はレントゲンにも写りません。このような骨は、放置していても多くは3~4日で炎症反応とともに吸収されたり表面に押し出されたりして軽快しますが、まれには咽後膿瘍や頚部ほうかしきえん蜂窩織炎のように強い腫れが生じてきます。
このため、こじれずに快適に軽快させるために、2~3日、のど風邪の治療に準じて化膿止めや腫れ止め、痛み止めを内服し、消毒のためにうがいをして経過をみます。
もしも軽快せずに、痛みが持続する、のどの奥や首が徐々に腫れてきた場合には再診をお願いします。
下咽頭異物・食道異物:
診察で下咽頭や食道の異物が疑われる場合に当院では、状況に応じて単純レントゲン検査、バリウムによる造影検査、食道ファイバー検査を行っています。しかし、ごく小さな異物や傷では、診察時に症状がはっきりしないで後から徐々に症状が出る場合がごくまれにあります。首の前下の骨のくびれからみぞおちにかけての部位で、つばやごはんを飲み込んだ時に、必ず同じ場所に痛みを感じたり、物が落ちにくい感じが出て来れば再診が必要です。
食道に異物が停滞していると、たとえ先が鈍なものであっても、食道に穴をあけ(穿孔)、肺や心臓の回りに炎症(縦隔炎)をおこし敗血症などの重篤な病気を引き起こします。悪化の傾向がみられた場合には、総合病院の耳鼻科・消化器内科・小児科などに紹介します。
注意すべき異物:小児では ⇒ 貨幣、ボタン型電池
大人では ⇒ 義歯、PTP(薬剤の包装パック)、
鯛のあらのような尖った比較的大きい魚骨、肉類
気管支異物:
異物事故の発生は、大人では急にむせて咳込みますのでほぼ自覚できますが、幼児で親が目を離している間に起こるとわかりません。気管支異物の9割は3歳未満の乳幼児です。
特に片方の気管支の中ほどに豆類が落ち込むと、しばらくは全く症状がなくなり、1~3週間も経ってから、異物の奥で部分的に肺炎になります。
咳き込んだ直後の聴診やレントゲン検査で異常がなくても、2週間前後は妙に咳き込まないか、風邪の治りが悪くないか、微熱や胸の痛みを訴えないか注意が必要です。
注意すべき異物:ピーナッツのような豆類、おもちゃのプラスチック片、針などの金属片
誤 飲:
胃内に入った異物は、相当大きなものでも自然に排出されます。繊維質の食事を多く摂るよう心がけ、2~7日間、自然に便に異物がでてくるかどうか確認します。外科、小児科で経過をみます。
注意すべき異物:
タバコ;タバコは1本分に含まれるニコチンがすべて吸収されると幼児は死亡する可能性もあります。ただし、タバコそのものや、吸い殻を食べた時は、中毒を起こす前に吐き気が起こり、食べたタバコを吐き出してしまうことが多くあまり心配はいりません。しかし、水を入れた空き缶や灰皿のタバコは危険です。この水にはニコチンが溶け出しており、万一飲んだ場合は、あっという間に吸収されて、急性ニコチン中毒を起こします。胃洗浄の上、総合病院小児科に紹介します。
洗剤、殺虫剤、化粧品など;日本中毒情報センターに照会の上対応しますが、基本的には救急指定病院に紹介します。
ボタン型電池;アルカリ電池は放電し、中身のアルカリ性物質がでて胃の壁を損傷します。またリチウム電池は起電力が高く放電しやすく、電気分解によりできたアルカリで容易に腸管の壁を傷害します。したがってボタン型電池や複数の磁石を飲み込んでしまった場合にはなるべく早く摘出する必要があります。総合病院に紹介します。
灯油;口の中で揮発し肺炎を起こします。総合病院呼吸器科・小児科に紹介します。
■中毒110番(ダイヤルQ2、情報料:1件につき300円)
大阪 0990-50-2499 365日 24時間
つくば 0990-52-9899 365日 9時~21時 ■タバコ専用電話
(情報料:無料、テープによる一般市民向け情報提供)
072-726-9922 365日 24時間