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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科を専門とし、地域医療に貢献します。

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

急性中耳炎 ・ 滲出性中耳炎

急性中耳炎とは:
●かぜなどの咽頭や鼻腔の急性炎症が耳管をのぼって中耳に達して、炎症が起こります。
●中耳腔にウミがたまり、ひどくなると鼓膜が割けて(自壊、半自壊)、耳だれ(耳漏)が出ます。
●小児が平均1.8回かかるというデータがあります。

滲出性中耳炎とは:
●本来中耳腔は、つばを飲みこむ度に鼻から耳管を通して少しずつ空気が入って乾いています。中耳腔に水がたまって抜けなくなり、鼓膜が響かなくなるために難聴を来した状態です。
●0才で50%、1才で60%、6才までに90%がかかり、3ヶ月以内の治癒が多いが、3-40%で再発、5-10%で治癒まで1年以上かかるとのデータがあります。
●耳管自体が弱いと急性中耳炎も含めて0~2才でかかりやすく、鼻や扁桃腺が弱いと2~6才でかかりやすくります。小学校入学前後でなりやすい小児で中学生になってもなりりやすいのは20人に1人と少なくなりますが、頭の骨格の完成した中学生で弱い場合には成人になっても弱い傾向が続くことが多いです。

原因は:
●急性中耳炎の原因は、咽頭や鼻腔の急性炎症(かぜ)で細菌性です。ウイルスや滲出性中耳炎の悪化によるものもあります。
●滲出性中耳炎の原因は、中耳と咽頭を連絡する耳管の機能不良です。
●小児では急性中耳炎から滲出性中耳炎に移行するケースも目立ちます。
●アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、扁桃肥大(6才ピーク)、アデノイド肥大(3~6才ピーク)があるとかかりやすく、かつ治り難くなります。
●飛行機の着陸時やダイビング、峠越えなどの気圧の急激な変化で誘発されることもあります。

症状は:
●急性中耳炎ではかぜの症状が先立ち、続いて耳が痛くなります。熱や痛みの程度は様々です。
●急性でも滲出性でも、難聴、耳の詰まった感じ、自分の声が響く感じがあります。
●幼児では、不機嫌、微熱、耳をさわる、注意力低下など症状がはっきりしないことがあります。
 *夜間にウミが増えて悪化しやすいため、夜泣きの原因になります。軽い痛みが続くと、自律神経の刺激による吐き気や食欲不振を来すこともあります。

日常生活での注意点は:
●かぜのときと同じように、体力を不用意に消耗しないよう気を付けます。
●鼻の奥が乾かないと中耳も乾かないので、鼻の通りを良くしておきます。
●急性中耳炎で炎症が強い間は、熱いお風呂は中耳粘膜の充血を助長しますので控えます。耳だれが続いたり、鼓膜がまだ乾いていない間は、お湯が耳に入らないよう注意してぬるめのお湯で洗髪します。
●プールの消毒の塩素が鼻の粘膜を刺激して治りが悪くなるので、治るまではプールは控えます。
●かぜ気味で鼻が悪いときの飛行機搭乗には注意します。
●夜間に急に痛みだした時には、解熱鎮痛剤の頓服を服用の上、耳を冷やして30分程度様子をみます。
 *幼児のアセトアミノフェン、5才以上のイブプロフェンは発熱が無くても服薬可能です。

治療は:
●中耳腔や鼻腔の細菌感染が見られる間は抗生物質を服用します。
 *中耳は薬が効きにくく、またゆっくりとしか効かない部位です。一般的な抗生物質では、のどや気管支に到達する濃度の1~2割にしかなりませんので、しっかりと服用することが必要です。
●急性中耳炎の初期には、必要に応じて消炎鎮痛解熱剤で痛みを軽くして腫れを引かせます。急性中耳炎で、痛みが強い、熱が高い、体調が不良、合併症が疑われる時などで内服薬だけでは効果が期待できない場合は鼓膜切開を行ないます。鼓膜に小さな穴を開けてウミの逃げ場を作ります。炎症が強いと、3~7日、耳だれが持続します。
 *ただし、切開孔の閉鎖後に炎症や換気不良が続いていれば再発しやすいです。
●鼓膜切開をしたとしても鼓膜の穴は1週間程度で閉じます。細菌は1週間程度ではなかなか死にません。このため急性中耳炎が治るのは最短で1週間、標準で2週間かかります。また、鼻やのどの炎症が続く場合や治りきる前にカゼをひきなおした場合にはさらに長期間かかります。
●滲出性中耳炎では、まず鼻炎の治療で耳管から中耳に空気を通す通気を行ないます。なかなか治らなければ鼓膜切開して液を吸出し中耳を乾かします。さらに難聴の持続や真珠腫性癒着性中耳炎への移行などの障害を残す可能性があれば換気チューブをいれて様子をみます(小児治療ガイドラインでは3ヶ月改善しない場合)。
●扁桃腺やアデノイドが極端に大きい小児では、時期を見て手術することもあります。


注意すべき中耳炎には:
1、難治性中耳炎、反復性中耳炎:アデノイド肥大(扁桃肥大)、アレルギー性鼻炎の素因がある小児が、薬剤耐性菌に感染すると中耳炎が治りにくくなります。急性→治癒、急性→滲出性→治癒、急性→滲出性→急性増悪 などのパターンで反復します。
 4回/6ヶ月反復、血清IgG2 80未満でIVIG治療(静注免疫グロブリン月1回計6回投与)が2015年保険適応となっています。
2、水疱性鼓膜炎:インフルエンザなどの病原性の強いウイルス感染の初期やマイコプラズマ感染で、中耳粘膜や鼓膜の炎症が高度な場合には、強い痛みとともに内耳の神経炎を起こして高音部の難聴や耳なり、めまいが生じる場合があります。特に大人では後遺症が残る場合もあり注意深く経過をみる必要があります。
3、ハント症候群:帯状疱疹ウイルスが再活性化して起こります。鼓膜炎や外耳道、口腔内の水疱、難聴、めまい、顔面神経麻痺を来します。当初は耳痛のみで、2~3日後より症状がはっきりしてきます。
4、ムコイド中耳炎:ムコイド型肺炎球菌という強い毒性の細菌に感染すると、激しい痛み、多量の耳だれ、神経性難聴を起こします。
5、急性乳様突起炎:乳幼児で耳たぶの後ろが腫れてきます。髄膜炎に移行する場合もあり、入院の上点滴を行ない、それでも改善がなければ手術で耳の後ろの骨を削って排膿します。
6、急性中耳炎合併症:内耳炎(神経性難聴、耳なり、めまい)、顔面神経麻痺、化膿性髄膜炎、血栓性静脈洞炎、脳膿瘍
7、真珠腫性中耳炎:鼓膜の孔から皮膚組織が中耳に入り込み増殖して真珠腫を作り、徐々に大きくなります。破壊が内耳に及ぶこともあります。
8、癒着性中耳炎:鼓膜が中耳腔の奥に張り付き、響かなくなります。
9、慢性穿孔性中耳炎:難聴の持続と反復性の耳だれが見られ、内耳を障害する場合もあります。
10、コレステリン肉芽腫:高度な換気不良と粘液の排出不良により中耳内で内出血をきたし、ニカワ状の滲出液がたまり(青色鼓膜)ます。難治化しやすく神経性難聴に進行する場合もあります。ステロイド内服や鼓膜チューブ留置を行います。
11、好酸球性中耳炎:好酸球と呼ばれる細胞による粘膜の炎症が強くなり、高度難聴で難治の滲出性中耳炎を来します。神経性難聴を誘発することもあります。
12、航空性中耳炎:着陸時や山を降りる際に耳抜き不良があると、中耳に陰圧がかかり、痛みとともに鼓膜の充血を来し滲出性中耳炎を誘発します。
13、ANCA(好中球細胞質抗体)関連血管炎性中耳炎:微少血管の壊死性血管炎から難治性中耳炎と感音難聴を来し、腎炎が進行しやすい成人発症の自己免疫疾患です。
●大人で耳鳴りや歪んだ聞こえなどの内耳障害を認めた場合や、小児で慢性化反復化した場合は、難聴、耳鳴、めまい、耳だれの持続や真珠腫性中耳炎化などの後遺症を残さないための経過観察と治療が必要です。

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