英語の指導実践記録を小説風に書いてみます。いつの日かネイティブのように話せることを夢見て、日夜英語とタタカッテいるすべての日本人に贈る応援メッセージです。この小説を多くの方に楽しんでいただき、少しでも英語の勉強に役に立つようなことがあれば、作者としましては望外の喜びです。
 なお内容に関しましては、登場人物も含めすべてフィクションです。                             一条 マサト

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E-novel 「ヒカリとココロの英語奮闘記」

第44回 about a boy 第45回 Autumn-colored 第46回 Vacant or Taken?(Dec.1)
第47回 State of the Union Address 第48回 XXXL 第49回 塵肺症
第50回 St.Valentine's Day 第51回 Space Shuttle 第52回 日本人の英語
第53回 ブレイクスルー 第54回 しかたがない・・・ 第55回 TEAって、紅茶のはずじゃあ・・・
第56回 Mars 第57回 Best before・・・
内容 内容 内容
第1回 進め方 第14回 Baked Cheese Cake 第29回 Running for You Part U
第2回 発韻 第15回 通訳デモ 第30回 Background Knowledge
第3回 リエゾン 第16回 Soybean Food 第31回 Marriage Strike
第4回 リスニング 第17回 Newton 第32回 Repeating 
第5回 音読 第18回 Would-be Obatarians 第33回 Special Feature T
第6回 日英同通 第19回 Antique 第34回 Karen
忙中閑T 健康器具 第20回 Green Park 第35回 Lesson in Toyo city
忙中閑U Contest 第21回 HAIKU Poem 第36回 It cannot be helped
第7回 通訳訓練導入 第22回 Describing the Movie 第37回 Fancy meeting you!
第8回 Reproduction 第23回 Super Woman 第38回 Galvanizing American Spirit
第9回 Sense Group 第24回 Yahoo 第39回 Perennial
第10回 Funny Story 第25回 Shadowing 第40回 World Cup
第11回 Reading Aloud 第26回 Turning a New Leaf 第41回 Astronaut
第12回 Debate 第27回 Eiken 1st Grade 第42回 IC Dictionary
第13回 Protect Our World 第28回 Running for You - part T- 第43回 America's or American ?

第1回(June 7)           レッスンプラン        
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 梅雨入り間もない6月の初め、僕は仕事場である事務所に隣接している小さな教室でヘッドフォンから流れる英語に合わせて声を出していた。いわゆるシャドーイングである。
 "The Internet is the largest of all computer networks.
 No one owns it, but anyone can use it.
 With only a computer and a phone line, you can send and receive letters in minutes. ・・・"
 キーボードをたたく音をBGMに、ネイティブの子供独特の高くて粘っこい声がテープから流れてくる。
 ふと窓の外に目をやると、街路樹の銀杏の葉が、毎年梅雨入り宣言直後にいたずらっぽく顔をのぞかせる太陽の強い日差しを浴びていっそう青味を増している。焦点を銀杏から向かいのビルに合わせると、ギャラリー風の喫茶店で楽しそうにおしゃべりしている数人の女性が目に入る。なぜか、飲んでいるのは少し酸味の効いたアキリマンジャロだと思ってしまう。
 今度、知人の娘さんのココロとその友人のヒカリに英語のレッスンを始めることになった。2人とも高校を卒業したばかりで、ココロはフリーター、ヒカリは大学生。共に英語が好きで、将来は海外で勉強するか、仕事をしてみたいという漠然とした夢はあるようだ。とりあえずは、会話ができるようになりたいらしい。
 テキストを何にしようかと思案したが、以前から一度は使ってみたかった音読教本に決めた。指導方法は、次の通りだ。

指導内容 ポイント
1 タスクリスニング(2回) 質問の内容に集中して聴く。
2 内容理解 スピーディーに頭ごなし訳をする。頭で内容を描き、声を出して訳す。
3 シャドー・リーディング テキストを見ながらCDを聴き、イントネーションやポーズをとる。
4 音読 CDをかけずに、テキストを音読する。(5回以上)
5 筆写 テキストを開き、センテンス単位でリピートしながら筆写する。(1回)
6 リピーティング テキストを見ないで、一文ずつ聴き、リピートする。
7 シャドーイング ついていけないところは、飛ばしながら読む。
8 リプロダクション  キーワードだけを見ながら、できるだけ忠実に本文をリプロダクションする。
9 条件会話 or 同時通訳 内容に即したQ&A形式での会話を楽しむ。

 原則的には、テキストに載っている基本トレーニングに沿っているが、これはあくまで自学自習での活用法なので、授業でそのまま取り入れるには、ややもの足りない点もある。そこで、タスクリスニングや、シャドーイング、リプロダクション、さらに最後には習った教材をベースにした条件会話を取り入れることにした。1時間半でワンレッスンをカバーできればと思っている。
 英文自体は中学校3年生レベルだが、最初のレッスンはキーボードの雑音がバックに流れており、子供が話す英語ということで、タスクリスニングでは、やや聞き取りづらいかなと心配だった。が、予想に反して2人ともほぼ聞き取れていた。さすがに市内の進学校を卒業しているだけのことはある。それでも、質問に対して英語で答えるとなると負担が大きいようで、単語が単発で返ってくるが、まとまったフレーズや英文が出てこない。頭の中では理解できているのに、口から英語で出てこないもどかしさにいらだっているのが分かる。しばらくは日本語でも可としよう。

 いわゆる会話学校では、ネイティブとのアウトプット主体のレッスンが主流だ。しかし、アウトプットばかりを重視した指導では、あまりレベルアップを望むことは期待できない。"Out of nothing comes nothing."という認識を持つべきだ。
 やはり、アウトプットするためのインプットを充電する必要がある。それも、できるだけ効率的に。それをめざしているのが、ここで紹介しているレッスンだ。
 但し、一度にすべてを紹介するのではなく、毎回テーマを絞って、出し惜しみしながら指導内容を紹介する。インプットされた英語を、いかにしてリプロダクションまで持っていくかが一番の目玉だ。

第2回(June 14)          発音
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 今日は予定時間を30分以上もオーバーして4時過ぎまで授業をしたが、実はヒカリが少し遅刻したから始めるのが遅かったのだ。木曜日は大学の授業はオフのはずだから、
 「どうして遅れたの?」
と尋ねると、若者らしくはっきりと
 「彼氏とデート」
という答えが、なんのためらいもなく跳ね返ってくる。
 まあ、嘘で繕うよりはいいのだろうが、
 「はいはい、ごちそうさま」と言うしかない。
 このところ街の話題をさらっているTデパートの屋上にできた大観覧車(Ferris wheel)に乗りに行ったらしいが、1時間半待ちの末やっと乗れたそうでかなりはしゃいでいた。そのあとすぐにレッスンへと駆けつけた結果、20分遅れのご到着と相成ったらしい。
 ココロの方は、お気に入りのゴールドの幅の広いベルトを腰に巻き、カジュアルな中にもおしゃれ心を取り入れたファッションで登場。会うのは、今日で3回目だが会うたびに違う雰囲気を漂わせる子だ。
 週末には、大阪で開かれるメーキャップコンテストにモデルとして出場するらしい。コンテストのことをあれこれ心配していたようだが、モデルなんていうのはただ座っていればいいのじゃないのかなあ。何を心配することがあるのだろう。
 優勝すれば、来月東京で開催される全国大会に出場できるらしいが、どんなコンテストであれ、優勝するのは並大抵のことじゃあない。まあ、参加するだけでも良い経験になるかもしれない。

 教材が中学校3年生レベルなので、タスクリスニング終了後、1分ほど時間を与えすぐに頭ごなし訳をさせる。(この程度の英文なら2人とも頭ごなし訳でなくても処理できる。)
 主語をすべて訳してしまう癖が共通してあったので、
 「I, You, Weなどは日本語の場合訳さないことが多く、その他の代名詞も文脈で誰を指すのかが明確な場合には訳さなくてもよい。」
と教える。
 音声面に関しては、細かいことだがfunnyとdone。-u-と-o-をそのままの音で発音してしまう。この分だと、workとwalk、warmとwormなども混同しているんじゃないだろうか。
 また、questionの-tionをstationやvacationの-tionと同じように発音する。違いを説明すると、きょとんとした顔をして
 「高校の先生は、全然教えてくれなかった。」
と言う。
 学校じゃあ音声面は軽視されているんだなあと改めて実感。英語の基本は、音読にあるんだけどなあと思わず愚痴をこぼしてしまう。

 残りの30分で、リーディング力養成の一環として「読み手が自分に必要な情報を拾って読む読み方」であるスキャニング(情報検索読み)を教える。企業の広告や個人のビジネスダイアリーを使って指導する。
 二人とも異口同音に、
 「こんなのやったの初めて。でも、やっぱ外国に住むんだったら読めないと困るよね〜。」
と興味深そう。
 最後に、
 「次回は、1時間で1レッスンすべてをカバーするのから少しきつくなるかもしれないよ。」
と伝えて、本日のレッスン終了。


第3回(Jun 21)        リエゾン 
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 水瓶が干上がりそうだと大騒ぎして、昨日渇水調整協議会なるものが全会一致で取水制限を決定した。昨年もそうだった気がするが、こういう決定がなされると決まって翌日に大雨が降る。特に昨日の雨は、地元気象台が観測を開始した1890年以降では第2位の記録的な豪雨だという。どうして、十数時間後の大雨が予想できなかったのだろうか。この情報化時代に、協議会の面々は、どこから、どのような情報をもとにご判断を下されているのだろうか。老婆心ながら、協議会のメンバーに気象予報士と正しい情報収集能力を有する人物をメンバーに加えた方がよろしいのでは。
 さて、その雨も午後からは上がり、ヒカリは自転車でココロを誘いに行った。万事のんびり屋のヒカリも、授業まであと5分しかないのでさすがに少し焦っていた。歩道を歩く人が雨に濡れないよう申し訳程度突き出ているアーケードの下に自転車を止め、ココロの家のインターフォンを押した。
 いつもならあと3回は押さないと出てこないものだから続けて押そうとすると、いきなり扉が開いて、
 「はーい!お待たせ。」
 はじけるような声といっしょにココロが飛び出してきた。いつものラウドな色使いのコスチュームとは違い、シックな黒のワンピース。
 「そうか。日曜日のメーキャップコンテストの予選で優勝したんで、ご機嫌なんだ。」
 ヒカリは思った。
 結局、この日は10分遅れで授業開始。

 前回の復習で、レッスン1全部を諳んじさせてみるが、ほぼ完璧。まじめに課題はこなしているようだ(まだ、始まったばかりだから)。ヒカリに音読させてスピードを測ってみると約160wpm。やさしい教材とはいえ、まずまずの結果。180wpmまで伸ばしてやりたい。
 今回は予告どおり、レッスン2全部を1時間半の授業中にカバーした。シャドーイングとペアでさせる条件会話の時間は確保できなかったが、音読、筆写、リピーティングなどの活動はじっくりやれたし、イディオムや構文の説明( know a lot about…, as heavy as…, the 1940s, it doesn't get tired, thoughとbutなど)にも時間を割いた。
 例えば、"know a lot about …"
 「know a lot about ・・・は、knowの後にnothing, little, something, a lot, muchなどを入れて知っている程度を表すんだよ。」
 「ふ〜ん。have nothing to do with …と同じなんだ。」
とヒカリがこともなげに言う。
 飲み込みが早いから、ついでにlittleとa littleの違いも教えようかと思うが、思い直す。昔の悪い癖が頭をもたげて、ついあれもこれも教えようとしてしまう。リプロダクションできるようにするのが到達目標なのだから、テキストの以外のことは最小限に抑えねば。

 "the 1940s"については、「年号の後ろにsを付けて『〜年代』を表すんだけど、theを忘れないようにね。」
 "It doesn't get tired."は、「ん、主語が人以外でも、"get tired"は使えるんだ!」
 僕にとっても、新鮮な驚き。生徒に教えていないと、なにげなく読み流すところだ。辞書を引いても、「人以外のモノ」が主語になっている例文は見当たらない。これがあるから、教えるのは楽しい。

 5回ほど音読をさせた後、ワンセンテンスずつ聞かせてから書き取らせる筆写に移るのだが、音読の時にリズムに乗れていなかった表現がやはり定着していない。例を挙げる。次の2文だ。
 Pascal wanted to make the work easier for him.
 The value of the computer depends on our creative use of it.
 意味の取りにくい箇所がやはりリズムに乗りにくいし、音読もしづらいのだろう。特に2番目の文で、弱音が続く上にリエゾンする<on our>が2人とも言いづらそうだ。
 この二つの文はそれぞれリズムを取りながら10回程度練習する。リエゾンは英語を話したり音読したりする時にはとても重要となる。果たして次回までにマスターしてくれているだろうか。
 最初のタスクリスニングでは「〜年代」や「年号」が5つほど出てくるから、それらを中心に何が起こったのかを聞き取らせる。
 1回目は、年号の数字を聞き取るので精一杯。
 2回目に、ようやく内容をつかんだものの、「渡米した1969年」を「新しいタイプのコンピュータを完成させた」と勘違いしている。
 3回目で、間違いを自己訂正する。

 前回と同様に、残りの時間を使ってリーディング力をつけるために、文と文のつながりを読みとる練習をする。
 「次の二つの文は、内容・語彙ともに中学2年生レベル。でもよく考えないと間違うよ。」
と、牽制球を投げておいて解かせてみる。

次の(1)(2)の文は、下に示した(a)(b)のどちらの内容を示しますか。
 (1) Ken needed my help, so I didn't go out that day.
 (2) Ken needed my help, but I didn't go out that day.
 (a) Ken wanted to come to my home.
 (b) Ken wanted me to go to his home.

 案の定、二人とも自信ありそうな顔で、(1)と(b)、(2)と(a)を結びつける。
 (1)は「私の助けを必要としていたから、私は外出しなかった」のだから、健が僕の家に来ることが推測できる。一方、(2)は「私の助けを必要としていたが、私は外出しなかった」のだから、健としては自分の家に来てほしかったことが分かる。
 接続詞がsoからとbutに変わっただけで、その意味するところが大きく変わってしまう。英語を理解するためには、文の内容を予測しながら読んだり、接続詞や代名詞などに注意することが重要だということが分かる。
 
自宅にて
 次回は、テキストを使うのは復習だけにして、弱音、リダクション、リエゾンを中心としたリスニングと音読のコツを教えることにした。メル友である鵜田さんの「30音でマスターする英会話」を使ってみよう。
 時間が許せば、マザーグースの中からリエゾンか弱音の練習になる簡単な唄を覚えさせたいが…。
 「えーと。そう言えば、英会話入門にマザーグースの特集があったなぁ。」
 右後方に首を傾けながら、両足を突っ張って椅子を後ろに転がす。書庫の奥にしまいこんでいたテキストを10冊ほど引っ張り出す。99年の夏号に以前授業でも使った適当なのを見つける。 
 「えーと、エイ ワズン ナアーチャー フゥシャット アタフロッグ(A was an archer, who shot at a frog)」
とリズムをとって声に出してみる。いまいち、リズムに乗れない。
 もう一度。
 だめだ。自慢じゃないが、もともと音痴なのでリズム感に乏しい。こういったラップ調の読み方はとくに苦手だ。
 とまれ、恥をかかないように来週までに覚えねば。それにしても仕事とはいえ、この歳になると暗記するのが一番苦痛だ。


第4回 (June28)            リスニング  
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 2日ほど続いた真夏のような強烈な日差しから開放され、少しばかり生気を取り戻した街路樹たち。
 どんよりした曇り空の下、ココロは携帯を片手にペダルを漕ぐ。
 「もうすぐ着くから、玄関に出ていてよ。」
 珍しく、ココロが15分も前に迎えに来るらしい。ヒカリは、食べかけのショコラフレンチをジンジャ・エールといっしょに胃の中に流し込んだ。炭酸の刺激が喉越しに気持ちいい。
 少しむせながら、「行ってきま〜す。」と台所の母親に声をかけて、サンダルを引っ掛けて表に出る。
 「ココロ、早いじゃん。で、今日はばっちり?」
 「何が?」
 「シュ・ク・ダ・イ。」
 自転車の前籠にテキストの入ったミスド・バッグを入れながら、冷やかし気味に言ってみる。
 「ヤバ〜イ。」
 ホントにヤバイとは思っていないけど、多少は思っている。なにしろこの前先生に、『来週は完璧に覚えてくるから。』って約束していたから。
 「昨日の夜電話あったでしょ?私なんか、2課全部英語で質問されたよ。ホントに電話かかってくるって思ってなかったから、びっくり・・・。」
 昨夜先生からの電話があり、英語で話しただけのことだったが、言葉にすると『まんざらでもない』といった妙な優越感がココロに伝わってしまうのに気づいて、しまったと思った。
 「私バイトだったから、連絡つかなかったのかな。」
 ココロはココロで、言い訳じみた感じが自分でも嫌だ。
 「で、今日できなかったら、音読10回でしょ。そっちの方が、ヤバイじゃん。」
 気まずくなった場の雰囲気を変えようと、わざと明るく言い放った。

 今日のレッスンは、これまで習ったところの復習だから、シャドーリーディングとシャドーイングに時間をかける。
 文字を目で追えるシャドーリーディングの時にはうまくできても、シャドーイングとなると意識がリスニングだけに集中してしまい、分かっていても発音がなおざりになってしまうのがなんとも歯がゆい。それは、ココロだけの問題ではなくヒカリにしても同じ。まだ音読の絶対量が足りないのだろう。
 最後の30分は、リダクションの聞き取りに時間を割く。
 代名詞の"him, her, our, them" などが省略されたり、極端に弱音化して発音されるのには2人とも少なからず驚いている様子。
 「himは、/イム/とか/ム/で、herは、弱い/ア/音としか発音されないんだ。」
 「waterやletterの/t/音が/ l /音化されて、/ワラ/とか/レラー/と発音されることがあるのは知ってたけれど、/d/音化されるのは習ったことないよね。」
 ヒカリの言うとおり、
 "Do you know what it is?"
 "I had a lot of fun."
 をネイティブがナチュラルスピードで話すと、"it is"、"a lot of"がそれぞれ/イディズ/、/ア・ラダヴ/と聞こえる。本来の音とはまったく別の音で発音されるのだから、聞き取れないはず。
 「英語をナチュラルなスピードで話すと、必然的にリエゾンやリダクションが発生するんですよね、先生。」

 今回の授業に関連して重要な点を少々。YOUを主語とした疑問文が意外と聞き取りづらいと思う。また、この種の文は会話では非常に多いのでよく聞き取れるように訓練しておく必要がある。
 例えば、
 Do you like jazz?   Did you like the music?    Would you like to go again?
 /ジュア/        /ディジュア/           /ウジュア/
 What do you like to drink? How did you like it? などです。
 これは、/d/音とyouが連結されるため。
 I've made your bed.  Have you paid your bill?  I said you should come.の下線部でも同じことが発生する。
 次回は、音読。


第5回 (July 5)          音読 
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 部屋の中でじっとしていても、汗がでる。
 自転車で買い物に出かけても、汗がでる。
 車の中も、サウナ風呂。
 たまらず、クーラーがガンガンに効いているスポーツジムに来た。 暑さから逃れるために来たはずなのに、なぜかサウナでじっと暑さに耐えている。滑稽なはずなのに笑えない。 この空間の中では、誰もが真剣だ。下腹が盛り上がって競泳用の水着がほとんど見えなくなっている「オヤジ」に囲まれて、12分計をじっと睨んでいる。「オヤジ」のスイカのようなおなかと比べないと優越感が得られなくなった自分の体が恨めしい。 ヒロミ・ゴウって、やっぱすごいんだ。

 昨夜9時、ヒカリと携帯で。
 "What is the Internet?"
 "What can we do with the Internet?"
 "What are the rules for e-mail?"
 "When did Pascal make a calculating machine?"
 "How large and heavy was the earliest type of modern computers?"
 "Can we find microprocessors around us?"
 いきなり矢継ぎ早に質問したにもかかわらず、軽くさばかれてしまった。こうなるともう誉めるしかない。 次回からは、レッスンの内容から離れた質問をしてみるか。
 9時半、ココロと。
 "Hi. Good evening, Kokoro. It's me."
 "あの、 I am making up now.なので〜、後で掛けなおします。"
  "あ、そう。じゃ、あとで。"
 そう言えば、例のメーキャップコンテストの決勝来週だったなァ。今、大変なんだ。

 さて、今日の教材は「日本の文化が歴史的にいろいろな国の影響を受けていて、 その影響が言葉や食生活など身の回りの様々な場面で見られる。」といった内容だ。英語としても、 多少複雑な文が顔を見せている。例えば、次の文。
 Pan comes from the Portuguese word for "bread." パンというのはポルトガル語で、英語のブレッドを意味します。
 Pumpkins were brought by the Portuguese from Cambodia. パンプキンは、ポルトガル人によってカンボジアから持ち込まれた。
 The Japanese named pumpkins kabocha after Cambodia. 日本人がカンボジアに因んで、パンプキンをかぼちゃと名づけた。
 ここに挙げた文は、何れも日本の文化などを外国人に紹介する時に使える便利な文で簡単そうだけど、 いざ自分で作って言おうとすると意外にむつかしい。やはり、しっかり覚えておきたい表現だ。
 先ず、僕が読む。
 "Pan comes from the Portuguese word"
続いて、ココロとヒカリが繰り返す。
 "Pan comes from the Portuguese word."
 "For what word?"と、僕。
2人一斉に、"For bread" と答える。
 "Full sentence."と促す。
 "Pan comes from the Portuguese word for bread."
間髪入れず"How about karuta ?" と攻める。
 "Karuta comes from the Portuguese word for card."
とココロが余裕の笑みを浮かべながら即答。
 次のセクションは、カボチャとジャガイモがどこから、誰の手によって日本に入ってきて、なぜカボチャやジャガイモと呼ばれるようになったのかという話。 たったの6つの英文でこれほどの内容をカバーするなんて、中学校の教科書ってファンタスティック! 洗練された英文とその内容に美しささえ感じてしまう。
 Many kinds of food were introduced from abroad. For example, pumpkins were brought by the Portuguese from Cambodia. The Japanese called them Kabocha after Cambodia.
 Potatoes were introduced by the Dutch from Jakarta. The Japanese named them jagatara-imo after Jakarta. Later they called them jagaimo for short.
 さらに、発展学習として、カンボジアとポルトガル、インドネシアとオランダとの関係についても世界史的な視点を交えて触れると面白いだろうな。 

 次に、文単位でテープを聞かせて、ディクテーションさせてみた。気付いたことを書く。
 次の文で、by ・・・あるいはfrom・・・のいずれかが欠落していた。 受身のあとに、byとfromの両方がきているためか?
  Pumpkins were brought by the Portuguese from Cambodia.
  Potatoes were introduced by the Dutch from Jakarta.  
 他の文では、動詞の漏れはなかったが、疑問詞で始まる受身の文で、動詞のbroughtが落ちていた。
  When was English first brought to Japan?
 おそらく、受身の疑問文だということをすぐに認識できず、文の最後の方に現れる動詞のbroughtをとらえ損ねた為だと考えられる。また、動詞broughtの前に副詞firstがあるのも聞き取りの障害になったかもしれない。
 レッスンの進め方だが、1時間半のレッスン中に音読の時間を十分確保するのは無理があるようだ。頭ごなし訳やリピーティングに時間がかかる。そこで、音読20回を家庭での課題とした。
 次回は、この音読の成果がシャドーイングで表れることを期待したい。


第6回 (July 17)           日英同通            
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 このところの適度な雨のおかげか、事務所の駐車場わきに植えてあるミニトマトが鈴なりになっている。さっそく、二つほど取ってかぶりつく。
 「これは、いける。」
 一口で食べてしまった。冷蔵庫で冷やしてレッスン後にも食べよう。トマトって確か、晩夏の季語だったな。ブラディーマリーっていうトマトジュースをベースにしたカクテルがあるけど、あのトマトの真っ赤な色はどう考えても盛夏だと思うんだけど。

         欲しきとき トマトのありて 冷蔵庫      下村 非文

 「あのね、テキストの進め方だけど、これでいい?どう?」
 「はい。」ヒカリの方を見ながら答える。「いいよねぇ?ヒカリ」
 「うん、いい感じ。」
 「二人がそう言うなら、いいか。頭ごなし訳や音読、リピーティング、シャドーイングなんかはコアの部分だから変えないほうがいいとして、定着度を確認したり、応用する活動は他にバリエーションがあってもいいような気がしてね。」
 「今やってるリプロダクションと条件会話はむつかしいけど、その日に習った表現を使わなくちゃいけないから、力がついているって感じするよね。」
ヒカリがココロの顔を見ながら答える。
 「そう、そう。」
と、まじめな顔でうなづくココロ。
 「そうか。それならいいんだけど…。ま、始まったばかりだし、もうしばらくこれで行くか。」
少し間があって、ココロが思い出したように言う。
 「そう言えば先生、前から同通の訓練取り入れたいって言ってたじゃないですか。それ入れたらどうです?」
 「コホン。それはね、サイトラとかシャドーイングという形でやってはいるんだけど…、イチオウ。」
少し苦笑いをする。
 「あっ、そうですよね…。ただ、うちの母さんがテレビのニュース見ながら『眠っている・・・』、じゃない『やってる同通練習』みたいなのができないかなあって思ったから。」
 「えっ!」やや大げさに驚いた表情を作りながら、
 「それは、無理だろう。ココロの母さんみたいに専門的に訓練受けている人でも大変なんだよ。」と口にしてみて、「いや、待てよ。本当に無理なのか。」と自問してみる。
 これまで、同通訓練を取り入れた英語指導っていうのは、シャドーイングとサイトラをメインに考えていた。頭から、同通なんて初心者には無理だと決めつけていなかっただろうか。やさしい教材を使って、方法さえ工夫すればできるかも。いや、できるはず。
 「ココロ、それ意外といけるかも。イタダキ!」
さんまの真似をしてメモる仕草をする。これも、おやじギャグなのかな。
 ココロとヒカリの場合は、日英がいいか。シャドーリーディングが終わった段階で、英文の定着度をチェックするにはいい方法だ。

先ず、ココロがマイクを持って、英文を見ながら英日のサイトラをする。
その声をヘッドフォンで聞いたヒカリは、テキストを見ないで日英の同通。
録音した同通の音声をみんなで聞いて、反省とコメント。

 ココロの日本語はサイトラをしながらなので、ゆっくりだ。二人ともこの段階では、音読・筆写・リピーティング・シャドーイングでテキストの英文がかなり定着している(!?)はずだから、何とか同通できるんじゃないかなあ。(甘いか?)とにかく、次のレッスンでやってみよう。
 ココロの何気ない一言がきっかけで、次回からのレッスンがこれまでの和やかなものから一転、過酷なものになろうとは、この物語の作者である僕でさえ(!?)知らなかったのであります、ハイ。彼女達はそんなこととはつゆ知らず、僕が「菓子の実」で買ってきたオレンジゼリーをおいしそうに頬張るばかりでした。(ホントに、幸せなお二人)


                          忙中閑  T              
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 スポーツジムに、車輪の両サイドに取っ手をつけたような小型の健康器具がある。両ひざをつき、取っ手を握って前に押し出すように転がす。体が伸びきったところで、手前に戻す。いたってシンプルな器具で簡単そうに見える。が、実際はかなりきつくてジムのインストラクターでさえ体のあちこち―特に肩周り―が痛くなるという。僕がジムの仲間とこのローラーを使ってトレーニングしていると、
 「あ、それ僕も使わせてください。」
と、無邪気な声が背後から割り込んできた。声のほうを振り向くと、整った顔立ちの女性がいた。ずいぶん背の高い娘だなあ。僕とほとんど変わらない。軽くストレッチをした後、いとも簡単に5回ほど転がした。
 「私が持っているのバネつきなんですけど、これより負荷が大きいみたい。」
さらりと言うから、嫌味がない。
 「深夜のTVショッピングで、外人さんが使っているのみていいなあって思ってたら、次の日行ったスポーツ店で2700円で売ってたの。もう、即買い。」
 「それで、2、3日ためして、後はずっとお部屋のインテリアなんでしょう?」
 「あ、すご〜い。どうして分かるの?」
 知らないうちに、二人の周りには人が集まっている。二人の周りと言うより、彼女の周りという方が正しい。彼女、実はビーチバレーのM.S.さんだったのです。どおりで、体のバランスがよくって筋力もあるわけだ。


                    忙中閑  U            
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 今週のレッスンは、ココロがメーキャップコンテスト全国大会に参加するためお休みだった。で、昨夜本人から電話があった。
 「先生、こんばんは。」
 「『こんばんは』、はいいんだけど、もう12時まわってるような・・・。」
 「別に私はだいじょうぶよ。」
こっちはあまりだいじょうぶじゃないんだけれど・・・。
 「いま、コンテストの慰労会してるの。」
 「で、どうだった?」
 「ニイだった。」
 「ニイって、準優勝の2位?」
 「はい、その2位。」
 なんか、ココロって子、とんでもない奴のような気がする。大阪の予選に出られただけでもラッキーって感じで話していたのに、その予選で決勝代表に選ばれ、さらに東京の決勝大会で準優勝するなんて。こういう人間て本当にいるんだなあ。強運というか、本番に強いというか。
 「よかったじゃないか。おめでとう。まあ、せっかくだから東京観光も楽しんだらいいよ。じゃあ、また。」
 「はい。おやすみなさい。」
 「あっ、それと・・・。切ったか。」
 せっかくだから電話で宿題のチェックしておけばよかった。東京までテキスト持っていかなきゃって言ってたけど、ちゃんとやってるかな。


第7回  (July 26)         同時通訳訓練法導入

 午前中の嵐のような豪雨もおさまり、いつもなら西日が当たってサウナのように蒸している教室も曇天のおかげで涼しささえ感じる夕暮れ時。 「もうそろそろ故障しているクーラーを直さないと、このままじゃ夏は越せない。」
と独り言。
 ココロから東京土産の「そら飛ぶ子ドラ」をもらった。好物なのだが、成田でないと手に入らない貴重品なのでありがたい。地元でも高速のドライブインで、「そら飛ぶドラ息子(!?)」なるものを売っているがこちらの方はあまりいただけない。
 さて、今日は復習としてまず、シャドーイングをさせて課題をこなしているかどうかのチェック。ヒカリは前日のテレフォン・チェックでも問題なかったので心配ない。ココロの方は旅行帰りということもあり、やや不安だった。やはり、読み込みが足らないためキーセンテンスの
 "Pan comes from the Portuguese word for bread."
 "Pumpkins were brought by the Portuguese from Cambodia."
の2文がスムーズに言えなかったのはいただけなかった。「音読」の徹底を改めて指示した。

 初めてチャレンジした同時通訳のほうは、日本語の頭ごなし訳を与える役割をココロに任せたのは少し無理があったようだ。
 ココロが日本語で頭ごなし訳をしながら、ヒカリが通訳した英語を聞き、ヒカリが通訳しやすいような日本語を与える。これは、考えてみれば大変な作業だ。
 そこで、日本語は僕のほうで与えることにした。フレーズ単位で日本語に訳してやると、ヒカリもココロも初めてにしてはまずまずの日英同通ができていた。
 日英同通訓練のメリットは、次のような点にある。

耳から入ってくる情報をリアルタイムに英語に変換しなければならないので、徹底した音読練習に基づいた訓練となる。
英語の語順に応じた訳出法に慣れる。
英文を覚えているだけでは対応できないので、どうしても自分の英語力で補おうとする。これすなわち、会話の原点。
高度な言語活動なので、モティベーションが高まり、達成感を得ることができる。

 授業内容の定着度を測る最終チェックとして、「英文の暗唱」「英問英答」などを用いる向きも多いと思うが、同通させることほど完璧なチェック方法はないと思う。


                  第8回 (July 26) 
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 写真は野田信一氏提供ヒヨドリ 












 寝苦しくて、目がさめると6時少し前。アブラゼミのジーッ、ジーッという大合唱に混じってピーッピーッという鳥の声が聞こえる。眠気まなこをこすりながら網戸を開けて見上げると、電線に一羽の鳥が止まっていた。尾の形からヒヨドリだろうが、車の中から久しぶりに双眼鏡を取り出して、覗いてみる。ほぼ真下から見上げているので、ヒヨドリの特徴である褐色の耳羽は見とれないが、胸の淡い白地に黒い班模様で間違いないことが確認できた。これから、どうやって一日過すのだろうか。
 このところずっと雨が降っていない。駐車場の一角に植えてある「アキコ」という品種のトマトが真っ赤に熟れている。今日もまた暑くなりそうだ。
以前に指導した「リダクション・リエゾン」の復習として、リスニングテストをした。
 made it→madi、   like him→like'im、  know them→know'em
 英語でcanと聞こえたら、can'tですし、語尾の子音"t,d,k"はほとんど聞こえないので、all about it, that, right, wanted, ahead, backなどの普段よく耳にする単語や表現がまったく違った英語に聞こえるので、ヒカリもココロも戸惑いがち。
 「こういった現象は、ネイティブがノーマルスピードで話すときに生じるものであまり神経質になる必要はないよ。映画やニュースを観るときには役に立つけどね。」
と落ち込む二人をフォロー。(このフォローが、実はまったく要らぬお世話だったことがこの後すぐ判明するのだった…。)

 前回の同通訓練導入に気をよくして、キーワードを使ったリプロダクションから日英同時通訳指導を試みた。
リプロダクションに至るまでに、段階を踏んだ指導をしているためか、リプロダクション及び日英同時通訳が予想していたよりスムーズに運んだ。
 「おっ、なかなかやるな。二人とも初めてだから、この方法が効果的だという証明だな。」
少し悦に入って言うと、心の中を見透かしたように、
 「私らの実力でしょ、センセイ。」
間髪入れず、突っ込んでくる。さっきの落ち込みは一体なんだったんだ。情け心を出して、フォローした自分の甘さが恨めしい。近頃の子の立ち直りが速いこと。コンマ524秒以下だな。高校球児も真っ青。いや、ひょっとしたら落ち込んでいたことさえ忘れてしまっているのかもしれない。が、いつまでも落ち込まれるよりは、はるかにいい。

第9回 (Aug. 2)                                  
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 「いっしょに走ってよ、センセイ。」
ココロがいきなり言い出したものだから、少し面食らった。それも、以前から一度やろうって言ってたテニスじゃなくて、ジョギングをである。
 「ヒカリもいっしょに走るんなら、いいけど。」
その場しのぎに、思わず言ってしまった。たしか、ヒカリは走るの苦手だって言ってたよなと心の中で確かめる。
 「もち、走りまっス。私ら二人で、『女・ダイエット( on a diet )』だもんね。」
オヤジギャクも顔負けの突っ込みに、タジタジ。結局、週4回、夜の8時からジョギングに付き合うことになった。走るのは好きだからそれはいいのだが、女の子二人のペースに合わせて走るのはどうも気が進まない。どうせ、ちんたらちんたら走るに決まっているんだから。
 「若い女の子二人っきりで夜走れないでしょ。ンで、犬でもいればいいんだけど、ヒカリんちも犬飼ってないし…。」
ナニ!結局、僕は犬の代わりってわけ!? まあ、そんなところだろうとは思っていたけれど…。
 近くの公園まで車で行って、港に向かう新空港通りから岩小山トンネルを抜けるまでの往復2キロちょっとのコースと、弁天山トンネルまでの3キロコースを用意した。

 前回同様、通訳訓練を取り入れた方法を試みた。
 「これくらいの英語ならサイトラ大丈夫だけど、複雑なのになると自信ないなあ。」
 ヒカリがそういうので、一度サイトラを段階的にしっかり指導しておくべきだなと思った。サイトラ訓練にはうってつけのテキストがあったのでそれを使うことにした。
 「なんとなく分かったような、分からないような…」
ヒカリが正直にいう。
 「要するに、センス・グループ単位で、FIFOで訳せばいいんだよ。」
これまで繰り返して指導してきたことを、繰り返し言い聞かせる。
 「それに、センス・グループというのは、慣れればどんどん長くできるから、読解スピードもそれに比例して速くなるってわけ。」
 「ふ〜ん、そうなんだ。ココロ、がんばってみようか。」
 「オウッ!」の気合と共に、ハイタッチ。
 威勢のよさと声の大きさではこの二人にかなう者はいないんじゃないかな。とにかく、センス・グループを的確に把握するためには、構文・イディオムを意識しながら、文の要素であるSVOCMをしっかり押さえる必要がある。今後、二人が「どれだけセンス・グループを意識しながら英文を読もうとするか」が鍵となるだろうな。


第10回 (Aug. 6)                                   
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 Faithfulという名前のベーカリーがある。少し覚えにくい上に、シャレた響きもないが、英語で「信頼のおける」という意味で、食べ物を扱うお店の名前としては案外ふさわしいかもしれない。
 以前からなんとなく気になるお店だったので、レッスンの後二人と一緒にドライブがてら行ってみた。
 「えーと、橋を渡ってすぐコンビニがあって、そこから2,30メートル行ったところの右手だって書いてるよ。」
ココロが、声を弾ませて言う。
 「それじゃあ、もうすぐだな。」
二人のナビゲーションに従って車を走らせる。
 「あっ、コンビニ。センセイ、もうすぐ。」
100メートル走っても、それらしい店は見当たらない。200メートル、300メートルとあっという間に過ぎてしまう。
少しいらつきながら、
 「ん、やっぱ、初めからカーナビに任せとけばよかったかな・・・。」
とつい愚痴る。
 「ほんとに、あるの?」
 「つぶれたんじゃないの?」
二人が逆襲に出る。Uターンしてもう一度探してみると、美容院の向かいに見逃してしまうようなチャーミングなベーカリーがあった。
 「いらっしゃいませ。」
店に入ると、小学生の女の子二人がかわいい声で出迎えてくれた。時間がゆったりと流れているような店内の感じが心地いい。リーズナブルな値段のココナッツデニッシュ2つと、昔の駄菓子屋さんに置いてあったようなガラスの容器入りクッキーを5つ買った。このクッキーは、大粒のナッツが贅沢に使われていて、歯ざわりもよくお勧めだ。

 最初に、日本のとんち話を使ってリスニングテストをした。ある大名が、謎解きに長けている彦市を呼びつけ、腕試しをした。5人の子供の中から大名の息子を探し出すというものだ。どんなにしたのでしょうか。十分な時間を与えた後、大名は言う。
 "I have given you plenty of time. Have you found my son yet?"
彦市は、こう答えます。
 "It was difficult. But your son has something on his face."
すると、
 The daimyo and four of the boys all looked at one boy.
となり、無事大名の息子を言い当てたのでした。この話のオチ(the point of joke or the punch line)は、もちろん"Your son has something on his face."だが、ここで使われている"have"には実に様々な意味があり、リスニングする時には厄介な語である。

 この話の内容をよく頭に入れて、英語で語ってもらうことにした。そこに至るまでのステップは、いつものように、サイトラ、シャドーイング、音読、リピーティング。リピーティングは、3文程度のリテインを課してみたが、二人とも少し反応が鈍かったように思う。この暑さのせいかもしれない。明日は、早や立秋。


 第11回 音読の効果                           
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 「昨日食べたナン、めちゃおいしかったよ。」とココロ。
 「ナン食べたって?」と聞くヒカリ。
 「そう、ナン。」と応えるココロ。
 「だから、ナンを?」と再びヒカリ。
 「ナンのこっちゃ!」とまったくわけのわからない僕。
 普通ナンと言えば、インドでカレーといっしょに出されるお好み焼きの生地のようなシンプルな味のパンのことだが、ココロが食べたナンというのは、「カレー入りナン」。ナンの端までたっぷり入ったスパイシーなカレーがめちゃおいしいというわけなのだ。 
 誰でも1つや2つは、他人に教えたくないほど気に入っているお店がある。ところが、この店はまるで誰にも知られたくないかのような店の佇まいである上に、開いているのか閉まっているのかさえ分からない。本当に商売するつもりがあるのだろうかと呆れてしまう。そこがいいところでもある。(空港近くの、今はもうつぶれてしまっているパチンコ屋のすぐそばにあるので、興味ある方は探してみてください。)

 音読の大切さを実感してもらうためにある実験をした。内容をすぐに覚えられないように、NHKの日本語のニュースで練習してもらうことにした。
 「ブッシュ米大統領は、気候変動枠組み条約第6回締約国再開会合後に、京都議定書を批准する意志のない旨を表明した。一方、欧州各国は米国抜きで批准に向けた話し合いを進め、後塵を拝する不名誉を米国に押し付ける構えを見せている。同議定書発行には、批准国の温室効果ガス排出量の合計が先進国排出量全体の55%以上という要件が満たされなければならない。」
 まず、ココロには、声を出さずに読んで覚えてもらい、ヒカリには音読しながら覚えてもらった。3分後に、どれだけ覚えているかを二人に発表してもらった。二人ともほぼ同程度の量を覚えていたが、音読しながら覚えたヒカリの方が、はるかに正確に覚えていた。
 ココロによると、覚えたつもりでも声に出して言おうとするとあやふやな文章しか出てこないとのこと。一方、ヒカリの方は音とリズムが頭の中に残っていて、自然に言葉が出てくる感じだという。二人にとっては、日ごろあまりなじみのない難解な文章なので、純粋に音読の効果が表れたと言えよう。

第12回  ディベート 動物園是非論                 
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 台風一過、やっと過しやすい気候になった。雨台風だったので、風による被害もなかった上に、水不足の心配もなくなり、今回は「台風様々」といったところだ。残暑が厳しいという予報も出されているが、自転車に乗って感じる風はもう秋を思わせる。

 今日は、動物園是非論を扱った教材。テキストでは、二人ずつに分かれてディベートするのだが、ヒカリとココロには一人二役でやってもらった。まずは、日本語でやってもらいそのあとすぐに英語でディベート。ほぼテキストの内容に沿ったディベートができた。
 動物園賛成派のココロは、「動物達と直接触れ合う機会の必要性」や「動物園での保護の必要性」を、反対派のヒカリは、「檻の中の動物の悲惨さ」や「自然のまま保護することの必要性」をそれぞれ訴えた。
 動物をどのようにとらえるかで、立場が大きく変わってくると思う。Politically Correct運動では、家畜である犬や猫を"animal companion"と呼ぶ時代だから、野生動物は自然の中で生活させるというのが主流の考え方となるだろう。

 「最後に、このレッスンに出てきた表現を各自でまとめてみるか。」 
be for 〜
〜に賛成である
live natural lives
自然の生活をする
disturb
じゃまをする
be against 〜
〜に反対である
pace up and down
行ったり来たりする
make friends with 〜
〜と親しくなる
do away with 〜
〜を廃止する
human protection
人間による保護
do a good job
うまくやってのける
natural surroundings
自然環境
can't find enough to eat
十分な食べ物を見つけられない
many ways of looking at 〜
〜に対していろいろな見方がある
3分後、
 「できたか?」
 「は〜い!」
 「どうだった?」
 「単語にしても、フレーズにしてもかなりレベルが高くって、disturbとかsurroundingsやdo away withなんて高校レベルって感じ。」
とココロ。
 「ほんと、そう。このレベルの英語を自由に使いこなせたら、すごいと思う。They can't find enough to eatとかThere are many ways of looking at even a simple thing.なんていうのはいろいろ応用できそう。」
と言ったのはヒカリ。
 「今二人が言った通り。中学校3年間の英語が使いこなせたらネイティブと十分コミュニケーション図れるからね。もちろん、語彙については話す内容や場面に応じて増やす必要があるけど。それから、ヒカリが言ってたけど、They can't find enough to eat.なんかは、応用が利く表現で、to eat を to readにすれば、『本を読む時間が取れない』になるんだよ。」
 次回は、環境問題。テキストのほかに、京都議定書の問題にも触れてみたい。


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