第47回               State of the Union Address

 大学の後期テストの真っ最中だというのに、ヒカリがぶらりと立ち寄り、めずらしく熱心に英字新聞を読んでいる。
 「普段から、それくらい熱心に英字新聞読んでくれると、すぐ英語力アップするのになあ。試験中って、何か別に夢中になれること探すんだよね。急に部屋の掃除を始めたり、普段まったく読まないような小説読んだり。ヒカリは、英字新聞読んでるフリするのがそれかな。」
 「人がまじめに英語の勉強しようとすると、いつもそうやって意地悪云うんだから。ブッシュ大統領の『State of the Union Address』を読んでるんです。ところで、センセ、これって日本語でなんて云うんですか。」
 「あ、そう。そういうことなら、失礼。で、それは、『一般教書演説』って云うの。まあ、日本の首相が行う『施政方針演説』ってとこかな。でも、ブッシュの演説をいきなり英字新聞でというのは難しいだろうから、まず日本の新聞で訳されたものをざっと読んで内容をつかんでおくと、ずいぶん楽に読めるよ。あとで、小泉さんの演説と比較してみると面白いよ。」
 「あっ、そう云えば小泉さんがその演説の中で、松山のことに触れたってニュースで言ってました。えーっと、なんだったかなあ。」
 「司馬遼太郎の『坂の上の雲』をテーマとしたまちづくりをしているって云った事だろ。」
 「そう、そう。でも、そんなまちづくりが行われているなんて、私まったく知らなかったですよ。小泉さん、よく知ってましたよね。」
  「実は、僕もあまりよく知らなくて、市のHPでチェックしたところなんだ。」

 まずは、ブッシュ大統領の一般教書演説(State of the Union Address)について。対テロ、イラク対策については新聞やニュースで大きく取り上げられているので、ここでは不振を極めている米国内経済の建て直しについて言及している部分を取り上げます。
 第一印象は、単純で大胆だと云うこと。
 まずは、単純なところから。「雇用は経済が発展すれば創出できる。経済の発展は、国民の収入が増え、そのお金が消費・投資に回れば可能。そのための最善・公正な方法は、減税。2004年と2006年とに所得減税を行い、それを維持する。」
(Jobs are created when the economy grows; the economy grows when Americans have more money to spend and invest; and the best and fairest way to make sure Americans have that money is not to tax it away in the first place. All the income tax reductions set for 2004 and 2006 be made permanent and effective this year.)
 これ以上ないくらい単純な理屈ですが、これがうまくいったら痛快でしょうね。もう、ややこしい経済理論や学者さんなんて、要らなくなりますから。
 次に大胆な点。「@ 9,200万のアメリカ人が、現在より年平均13万2千円多くのお金を得ることになる。A 年収480万円の4人家族では、所得税は約14万円から5,400円にまで下がる。(見間違いじゃないかと何度も英文を見直したのですが、間違いないようです。)B 2,300万にのぼる小規模事業の採算ラインが改善される。(1ドル=120円で計算)」
(Ninety-two million Americans will keep an average of almost $1,100 more of their own money. A family of four with an income of $40,000 would see their federal income taxes fall from $1,178 to $45 per year.)
 大胆すぎる案ですが、迫力があります。それに、これだけ具体的な数字を示されると妙に信憑性を帯びてくるから不思議。こんな思い切った減税をして、社会・医療保障は大丈夫なのかしら。(この点について、大統領は、high quality, affordable health care for all Americansを公約しています。)
 それにしても、「あちらもこちらも」という八方美人では、政策は成り立たないと思うのは私だけでしょうか。なんだか、イラク攻撃に向けて、国内の不平・不満を必死になって抑えようとしている気がするのですが。

 次に、小泉首相の施政方針演説。米大統領の一般教書演説と比べると具体性と迫力に欠ける内容になっています。特に、日本経済再建に関しては、国民に大きな犠牲を強いている以上明確な見通しを提示すべきだったと思います。
 また、「日本の魅力再生」に関して、「四国の松山では、小説『坂の上の雲』がまちづくりのテーマです」と紹介していますが、彼がその内容について少しでも知っていることを期待しましょう。さらに、このまちづくりにあたり、中村市長が「新たな箱物は作らず、既存の施設を有機的に結びつけたまちづくり」としたことには、大いに敬意を払いたいと思います。そして、このプロジェクトが、松山の経済活性化、新たな人材活用につながることを期待しましょう。

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