第13回        世界を護ろう                

 「WTCって、飛行機が衝突してしまうくらいとてつもなく高いビルなんだ・・・。」
ヒカリがTVを見ながらつぶやいた。
 「えっ、それって飛行機がぶつかったってこと?」
 「そうみたい。」
 「そりゃ、シカゴのシアーズタワーに次いで世界で2番目に高いビルだから、飛行機がぶつかる可能性がないこともないけどさ・・・。」
とは言ったものの俄かに信じがたく、レッスンが終わって帰りかけていたヒカリの肩越しにTVを覗き込む。
 「ほんとだ。すごい煙出してるな。」
 画面を観ながら、「WTCはたしかマンハッタン島の南端で、ウォール街の近くだったよな。あのあたりの上空、そんなにたくさんの飛行機が飛んでいたかなあ。」と独り言をいう。
 「ウワッ! また、ぶつかった。ウッソー!」
ココロが、カッと目を見開いて叫んだ。
 一体何が起こったのだろうか。続けざまに、2機の飛行機がWTCのツインビルに突っ込むなんて、単なる事故でないことは確かだ。が、それじゃあ一体何なんだと言われると、「何なんだ」と繰り返すしかない。画面から送られてくる映像の衝撃が、私の情報処理能力をはるかに超えているため、思考回路がまったく停止してしまったようだ。

 今日のレッスンのタイトルは、"Protect our World"。内容は、環境保護、動物保護だったが、アメリカで起こった同時多発テロニュースのおかげで、『人類保護』を考えないといけないようだ。

 ブッシュ大統領とパウエル国務長官が、「これは戦争だ」と断言した。(President Bush today called attacks on the World Trade and the Pentagon "the first war of the 21 st century and.) ブッシュ大統領はまた、"The United States would retaliate against those behind the attacks and any country that harbored them"と報復の対象として国家を想定した発言をしている。アメリカ国民も大統領を支持している。これが、戦争かテロか明確な判断はできかねるが、パレスチナの子供を含めた人々が、アメリカで数千人もの命が奪われたニュースに「神は偉大なり」と歓喜の声を上げていた(This scene has been faked.)のを目の当たりにして、『これはやはり、戦争かもしれない』と思う。(・・・in the West Bank city of Nablus, thousands of Palestinians celebrated, chanting "God is Great" and handing out candy.)
 あのTVの映像が、そのまま日本で起こっていても不思議ではないと言う評論家もいる。日本も巻き込んだ戦争だとなると、日本は一体どのような態度を取るべきなのだろうか。世界中が注目しているに違いない。湾岸戦争のときのように、何もしないわけにはいかないだろう。政府の態度が云々ではなく、平和にどっぷり浸っている私たち国民一人一人に突きつけられた究極の選択になるかもしれない。集団的自衛権の問題も含め、国際社会に対して日本国民の答えが求められるだろう。