第21回　　　　　　　　　　　 Haiku Poem

　この季節重信川の河川敷をジョギングしているとすぐに汗ばんでくるが、全身から吹き出るような夏の汗と違い、ジョギングをしているという満足感を満たしてくれる程度のさわやかな汗だ｡上流に向かって走っていると心地よい向かい風が余分な汗を抑えてくれる。夏の間は日差しの強い日中を避け夜間走ることが多かったが、今は昼間走るようにしている。一年をとおしてこの時期ほどジョギングするのに適した気候はないだろう｡

　「センセイ、まだジョギング続けてるんですか｡」
　「誰かさんと違って、ま・だ・走っていますよ｡」少し、皮肉っぽく答える｡
　「あっ、『誰かさん』て、私たちのこと? あ・れ・は、ヒカリが足を痛めたから走れなくなったの｡」とココロが私の方を向いたまま言う｡
　「ふ〜ん、ずいぶん長い間痛めてるんだな〜、ヒカリ｡もう２か月以上になるよな。」
　「じゃあ、走るわよ｡明日からゼッタイ走るんだから。ね、ココロ｡」少し戸惑い気味のココロの方に目をやってヒカリが言う｡
　「う、うん。走ってもいいわよ。もちろん・・・。」ついその場の勢いで決めてしまったヒカリを恨めしそうに軽く睨みながら返事する｡
　「それにしても、センセイ走るの速いんだから、私たちのペースに合わせて走ってくださいね｡私たちが続けられなかったのは、それも原因なんだから。」
　なんでいつもこうなるのか分からないが､今回も結局「ヒカリとココロの三日坊主の責任は私にある」ということで落ち着いた。　

　さて、今日はポエムの作り方を指導した｡ポエムといってもいわゆる自由詩ではなく、与えられた形式の中で作るポエムだ｡言ってみれば、ポエムと俳句を組み合わせた"HAIKU POEM"とでも呼べるものだ。与える条件によっていろいろとバリエーションはあるが､一番シンプルな形式のものを指導｡　

　「簡単だろ?」
　「え〜、何のことかわかりません。」と例によって二人が声をシンクロナイズさせる。
　「じゃあ、実際に創ってみるから、よく聞いて｡
　　まず、１行目の名詞というのはポエム全体のテーマとなるから、身近で簡単な単語を選ぶ｡
　そうだな、自然というのはどうかな。なんとなくイメージ湧きやすいから､これでいこう。
　テーマが自然に決まったところで､『自然』に対するイメージを思い浮かべてみる｡え〜と、『緑と美しさ』なんかどうだろう。
　次に３行目。『自然』の中にいると人間は、『すがすがしい気分』になって、『楽しい気分』にもなる｡それから、『リラックス』もできるな。
　４行目は文にしなくちゃいけないから、『自然は永遠だ』とでもしようかな。
　最後は､自然を表す一つの名詞と考えればいいから､『生命』か『地球』のどちらかにしようかな。ここは、『生命』でいくか。
　はい、あとは英語に直して出来上がり｡整理して書いてみるよ｡」

　「こんな感じになるけど､いかが?」
　「うわぁ、素敵ね｡」素直に喜ぶココロ｡
　「うん、とてもいい感じ。こんなに身近な単語でできるんだ｡」とヒカリも自分で作ってみたい様子｡
　「じゃあ、二人もチャレンジしてみるか。」
　「はい！」と気持ちのいいシンクロナイゼイション。
　思ったより二人が喜んでくれたのでうれしくなり、今日はまだ夕方からもう一クラス残っているのに､
　「お〜けい。ひあ〜、うい〜、ご〜！」などとテンションを上げてしまった。『自分の歳を考えるべきだ』と反省した｡

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