第38回                 Galvanizing American Spirit(アメリカ人魂)

 「一条様、少しお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
 フィットネスクラブのスタッフが心配そうな面持ちで尋ねる。あながちルーティーンに発せられただけの言葉ではないようだ。午前中も午後もフルの授業だったので、さすがに疲れが表情に出ていたのだろう。
 「仕事が立て込んでいたもので・・・」
声を掛けてくれたのがいつも愛想のいい、お気に入りのスタッフだったので、その視線を意識して、少しトーンを押さえ気味に応じていると突然後ろから、
 「センセ、こんにちは。」と声が掛かった。振り向くとヒカリがいたずらっぽく睨んでいる。
 「ヒカリも入ったのか? 大学生のくせに、贅沢じゃないのか。会費は自分で払ってるんだろうな?」
心の中を見透かされまいと取り繕うあまり、つい説教口調になってしまった。
 「あら、ご機嫌ななめですね。あのかわいいお姉さんと話してたのをじゃまされたから?今日は無料体験レッスンの日だから来てるだけですよ。」
万事これだから、たまらない。きっとヒカリは読心術を習得しているにちがいない・・・。
 職場の近くにスポーツクラブが新たにできたので、入会したのはいいのだが、このところ疲れがたまったいるのかもっぱら「マッサージ&サウナ会員様」になってしまっている。お腹周りに付き始めた贅肉も気になるのだが、
 「まずは疲れを取ってから。」
と自分に言い聞かせながら、今日もタオルを手にしてお風呂に直行。

 アメリカでは9月11日のテロ以降、愛国主義的なムード(patriotic fever)が高まっているそうだが、そのことを表すのに次のような英語がある。
 "The tragedy had galvanized our American spirit."(あの悲劇はわたしたちアメリカ人魂を生き返らせた。)
この英語はアメリカのメディアで頻繁に使われ、到るところで目にしたり、耳にするそうだ。
で、そのことを先日のレッスン中に紹介したところ、例のスーパーウーマンが、
 「あっ、その"galvanize(ガルバナイズ)"という単語、以前映画で聴いたことがあります。」
と即座に反応した。
 「どの映画だったか覚えてます?」
 「ええ、たしか『フランケンシュタイン』だったと思います。」
 フランケンシュタインだと聞いて、私も納得。というのは、この"galvanize"というのは、もともと医学用語で、"sending an electronic shock to"という意味。おそらく、フランケンシュタイン博士が作り上げた人造人間に電気ショックを与えて生き返らせた場面か何かで使われていたのだろう。それにしても、よくこんな単語を覚えているものだ。
                                               参考文献:NHKビジネス英会話

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