第23回            Super Woman

 「ね、だからセンセイ、いいでしょう?」
ヒカリが、友達を連れてくるという。
 「ダメだと言っても、どうせもうOKって言ってるんだろ。」
 「あっ、やっぱ分かる?」と、ココロがいたずらっぽく舌を出す。
 ココロの知り合いの5歳年上の女性で、英語にものすごい情熱を傾けていて、どうしてもこのレッスンを受けたいと言っているらしい。ココロがどんな風にこのレッスンのことを紹介したのかは知らないが、ごく最近まで『エイケン・サンキュー』だった私としては、正直なところあまり気合の入った方はご遠慮願いたいのだが・・・。

 彼女は、これまでにもいわゆるネイティブが指導する英会話学校には通ったことがあるものの、いずれも彼女の期待に沿うものではなかったようで、もっと刺激的なレッスンがないものかと物色していたらしい。 私のレッスンが刺激的かどうかは彼女の判断に委ねるとして、 せっかく足を運んでもらうわけだから、これまでには受けたことがないような授業を提供できればとは考えたが、結局自然体で臨むのが一番と考え、オーソドックスに『通訳訓練法』をベースとしたレッスンを受けてもらうことにした。彼女とは、教材や日程などについて事前に打ち合わせをする必要があり、何度かメール交換したが、メールの文面からも英語に対する並々ならぬ意欲が伝わってきた。
 英語の資格試験は、英検は言うに及ばずTOEFL、TOEIC、はた又ボランティア通訳検定に至るまで総なめしている。その実力がまたすごい。英検準1級、TOEICスコア850、通検Aも一次に受かって、近く2次を受験するそうだ。英語の勉強に使っているテキストは、NHKの「やさビジ」、単語は「スーパーボキャビル」というから、こちらがご指導願いたいくらいだ。今から、当日のことが心配で少し落ち着かなくなった。

    そして、無事体験レッスンも終わり、ホッしているとスーパーウーマンからメールが届いた。
 一条様

 昨日は初めてのことばかりの体験レッスンでドキドキ緊張しました。でも、それと同時に2時間にぎゅっと凝縮された内容の濃いものでとてもいい勉強になりました。有意義な時間を過ごさせて頂いてどうもありがとうございました。
  『自分の頭の中で理解するとということ』と『人にきちんと伝わるように口に出す』と いうことの違いがこれほどまでに大きいとは!初めて通訳訓練というものを体験して その難しさに心底びっくりしました。日本語のシャドーイングなどはいとも簡単にで きそうなのに、それすらまともにできませんでしたし、少しの情報量であっても正確 にリテインするのは至難の技だと思いました。これらの通訳に必要な技能が一般的な英語力とは異なるもので、訓練次第で伸ばすことができるなんて、今の私にはにわかには信じ難いのですが、もし何とかなるなら絶対に身に付けておきたい技能だと思い ました。

 レッスンの内容は、いわゆる既存の英会話学校とは全く違うアプローチで質の高いレッスンだと思いました。通訳養成というよりも、まず英語力を高めるために通訳訓練法を用いるという考え方に強く惹かれました。まずは自分の言いたいこと、つまり日本語の内容をきちんと英語に訳せることが先だと私も思います。この訓練法に従って勉強したら今の英語力が飛躍的に伸びる、そんな期待で胸がいっぱいです。市販の教材の紹介やその勉強の仕方も丁寧に教えていただいて大変勉強になりまし た。

 通訳の訓練法を習うにしても、やはりその基本になる英語力はある程度揃っていると お互いに刺激になっていいと思います。その点、昨日のレッスンは皆さんレベルが高くとても居心地がよかったです。

 最後に質問です。私は、英語の文章を組み立てる上で文法の基本は身につけているつもりですが、もっと書くための勉強をすれば、ネイティブが聞いて自然な英文を作る力がぐっと上がるのではないかと思っています。ライティングからのアプローチについて今度時間があったら教えてください。  
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