第25回                               Shadowing

 例年訪れている西山興隆時の紅葉狩りも今年は仕事に追われ、とうとう時機を逸してしまった。仕方ないので近くの公園に出かけ、紅葉を楽しむことにした。国道から少しばかり入ったところにあるこじんまりとした公園だが、高さ20mはあろうかという見事な2本のスギが誇らしげにそびえており、かなり遠くからでもその円錐形をした姿を認めることができる。秋の深まりと共にオシャレな赤銅色のコートへと衣替えをし、すぐそこに近づいている冬に備えているようだった。

 「センセイ、シャドーイングっていいの?」
 「いいって、何に?」
 「もちろん、英語の勉強に。」
 「英語の勉強といってもいろいろあるだろ。」
 「そんなことわかんないけど、大学の先生が『シャドーイングしなさい』っていつも言ってるから。」
 「おそらく、リスニング力を高めたり、音読に役立つということだと思う。でも、誤解を恐れずに言うと、センセイは基本的には反対だな。シャドーイングてのは、かなり英語のレベルが高い人に向いている練習法だと思う。きちんと指導を受けていない高校生や大学生がシャドーイングするのは、効果がないどころかむしろ悪い癖をつけることになるからな。」
 「ふ〜ん。じゃあ、きちんと指導を受ければいいわけね。」
 「そういうこと。ただ、リスニングや音読だけじゃなく、英語の運用力も高めたいんなら、シャドーイングよりいい方法あるよ。」
 「えっ!それって、何?」

 今日は、アメリカ同時多発テロに関するニュースを取り上げ、通訳訓練法を取り入れた学習をした。最初にいくつかの単語の意味を確認しただけでタスクリスニング。本文・質問とも2度ずつ聞いた後、答合わせ。
ちょっと無理があったか。
ところどころ単語は聞き取れていたが、答としては3割程度の出来。
文で正確に答えるには、まだまだ『道のり険し』って感じだ。
というわけで、1つずつ解説をしながら、リスニング問題を解いた。


 英日同時サイトラでは単に訳すのではなく、頭ごなしでいいから「スピード感」を大切にし、放送同時通訳者のつもりで「音の明瞭さ」を常に意識して発声するよう指導した。こうして、偉そうなことを書いているが、実は日本のアーティキュレーションという点に関しては、私よりヒカリの方がずっと上手だと思う。将来の夢のひとつであるニュスキャスターというのは、案外彼女には最適な職業かもしれない。

 次にシャドーリーディングの後、英日フレーズ同時通訳をした。
 今回は、日本語では、「荒廃させる」「倒壊させる」「被害を与える」「崩壊する」「衝突する」「墜落する」「激突する」など、英語では、"devastate","knock down","damage","collapse","crash","a devastating hit"などの類似表現が多くあり、かなり訳出しづらかったと思うが、やはり文脈で判断し最も適切な単語を選ぶ必要がある。

ところで、"crash"という単語が出てきたが、似たような意味を持つ"clash"とどのように違うのだろうかと思い英和で調べてみた。
crash (物が倒れたり壊れたしりて)大きな音をたてる、〜に(大音響を立てて)衝突する
clash (物がぶつかり合って)ガチャンと音をたてる、(人や事が〜と)ぶつかる・衝突する

なんとなく分かったような、分からないような。そこで、英英で調べなおしてみる。
crash a crash is an accident in which a moving vehicle runs into something and is badly damaged or destroyed.
clash If someone clashes with someone else or if two people clash, they fight, argue, or disagree with each other because they have different ideas or beliefs.
う〜ん、納得。やっぱり、英英辞書入りの電子辞書がほしいなあ。

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