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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科を専門とし、地域医療に貢献します。

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

2017年 今月の疾患情報

  30日   父の急逝により29日の診察は臨時休診とさせて頂きました。年末最後の診察の予定でした。当日、直接当院にお越しになられた方にはご迷惑をおかけしました。特に体調が優れず来院された方には申し訳ありませんでした。昨日、今日で父を送ることが出来ました。ありがとうございました。 
  24日  メリークリスマス! 若者のトレンドはどんどんハローウィンにシフトしているようですが、そうは言ってもクリスマスです。今日の日曜診療、幸いにも外科的処置や緊急で高位病院に紹介しなければいけない患者様がひとりもおられなかったこともあり、午後6時前には診察を終えることが出来ました。イブの夜はやはり予定のある人が多いでしょうから、なんとかスタッフに負担をかけずに済みました。それでも日曜の受付時間中は事務的な仕事がピークになります。スタッフには感謝です。また、体調の優れない方を優先的に診察することもあり、お待ち頂き診療に協力して頂いた患者様にも感謝です。
 今年も例年通り良い子達にはささやかながらクリスマスプレゼントをお贈りしました。今日診察を受けた子供達は診察に検査に処置に、いっぱい頑張りました! サンタさんも空の上から見ていると思います。(^^♪

 ホームページのこのコーナーは当院のFacebookにも転載しています。お恥ずかしいのですが、実はFacebookの投稿をこの夏から怠っていました。言い訳になるのですが、Facebookのページの進化にはビックリします。どんどん新しい機能が追加されて私も把握しきれません。特に当院のページも会社(ビジネス)のページとして登録されていますので、広告を出す、近隣に広告を出す、広告を管理、電話の発信を促す、クーポンを作成、ビジネスの道順を紹介、いいね!を増やすために工夫する、、などのコーナーがどんどん増えて、私としては「なんだかなー」という感じでしたので、ついつい投稿が億劫になっていました。昨日、遅ればせながら夏からの疾患情報を追加しました。Facebookでフォローして頂いていた方々には大変失礼しました。
 若者の間では、SNSの流行は Facebook → Line → Instagram だそうです。私はもう付いていけません。(-.-)

 インフルの流行は、12月10日の週までに全国で例年より早く注意報入り、松山でも注意報入りしました。愛媛では95%がA型との報告です。当院では一昨日大人の方でB型を検出しました。当院では98%がA型ぐらいでしょうか。インフルエンザワクチンの供給ですが、当初は12月に入ると供給不足は解消すると報道されていましたが、まだ供給不足は続いているようです。当院に来院された方に伺っても、予防接種したかったけど間に合わずに罹ってしまった、という方も目立ちます。

 いよいよ今週で今年の診察も終わります。当院の診療は例年通り、29日金曜日の午前までとさせて頂いてます。明日で子供たちは冬休み入りですので、連年ならばインフルエンザも含めて風邪の流行は一旦下火になります。思いの外、年末年始はのどかなことが多いです。しかし4~5年に一度は年末年始にインフルが流行します。そうなれば、救急病院の診察を待つ患者様も大変ですが医療スタッフも大変です。今年はインフルの流行がやや早いのが少し気がかりです。
 年末には新しいポールンロボ(花粉観測機)がやってきます。昨日は、今年活躍したポールンロボの5月からこれまでの雑草花粉の飛散データを吸い上げて記録しました。年末もわずかにスギ花粉は飛散しますが、スギ花粉の観測の決まりでは、お正月を明けて初めて観測された日が飛散開始日となります。花粉症シーズンももうすぐです。
 これから年末に向けて、、 これまで中耳炎が治らずに年末を迎える子供さんの一人でも多くが治って年越しできますように。

  熱性痙攣、耳下腺腫瘍、亜急性甲状腺炎、鼻骨鋤骨骨折、心因性難聴、脳貧血(プレショック)、サイトメガロウイルスによる伝染性単核球症、外傷性鼓膜穿孔、歯性上顎洞炎など。
  14日  当院の忘年会も終わりました。年末に向けて診療あるのみです! (^_^)/
 インフルの流行状況ですが、10日までに西条に続き今治が注意報入りしました。松山の三津浜小学校とともに西条市、西予市、宇和島市の小中学校計4校で学級閉鎖がありました。愛媛県下で検出されるタイプは、A型94%、B型6%でした。当院でも12月に入って検出されたのは全てA型でした。近隣のたちばな小学校でA型の集団発生もありました。当院では家族内の感染も見られ始めています。今日の朝は、松山の最低気温が0℃と今冬一番の冷え込みでした。年末のお仕事が忙しい方、受験生の皆さんは、体を暖かくして、うがい・手洗いの励行でインフルエンザを予防し風邪を吹き飛ばして下さい。


 4才の可愛い女の子から応援メッセージを頂きました。「あ」の字が書けるようになったと笑顔で報告してくれました。素敵なプレゼントをありがとうございます。私も元気100倍になりました! 
  8日   6日、水曜午後を利用して当院の大掃除が終わりました。一年の垢を落としました。

 愛媛県のインフルエンザは11月26日までの週で流行入りしました。西条では先週警報入りとなり、松山では5日に今シーズン初めてとなる学級閉鎖が三津小学校から報告されました。西条と今治で検出されたインフルがAH1(2009年型)でした。全国的にも47%がAH1です。当院でもご高齢の方でA型陽性の方の来院がありました。AH3(香港型)が流行った昨シーズンと異なり、今シーズンはAH1が流行の主体になりそうです。
 夏風邪の印象の強い手足口病ですが、当院ではまだ見られています。乾燥した空気で高気圧に覆われることの多い冬ですが、今日のように肌寒い雨の日にはメニエール病が増悪する方も目立ちます。

  急性喉頭蓋炎、先天性耳瘻孔急性増悪、過長茎状突起など。 
12月 1日   師走入りです。当院も大掃除、忘年会の季節となりました。ささやかながら院内のデコレーションもBGMもクリスマスモードです。

 今日、当院で今シーズン初めてA型インフルエンザを検出しました。残念ながら今シーズンも、A香港(AH3)とA2009年型(AH1)を区別できる迅速キットがありませんので、どちらのA型か、亜型はわかりません。愛媛県からの報告でもまだ、11月分のインフルエンザの分離状況の発表はありませんが、全国集計では、9月から11月中旬まではA香港型とA2009年型が拮抗していたところ、ここ2週間はA2009年型が優位となっています。当院で検出されたインフルもA2009年型だったのでしょうか? 2年前はA2009年型が2/3、B型が1/3の割合で流行、昨年はA香港型が4/5、B型が1/5程度で流行していました。例年、3月から5月にかけてはB型が多くなっています。今シーズンはやはり、昨年流行しなかったために国内では基礎免疫が低下している人が多いことから、A2009年型の流行が優位になりそうな気がします。

 当院ではここ半月程、大人の人を中心に、のどの強い痛み、声がれ、軽い咳、微熱が主な症状の上気道感染症の方が目立ちます。特に声がれ(嗄声させい)でお困りの方が多く見られます。声を使う仕事なので一刻も早く声がれを治したいという切実な訴えの方も多いです。私はどうもこの病原微生物はパラインフルエンザ(HPI)ではないかと予想しています。
 現在、外来で迅速検査が可能な病原菌には、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、溶連菌、肺炎球菌、マイコプラズマがあります。その他の代表的なウイルスは血液検査の抗体量の変化で感染の有無を確認したり、PCR法などの遺伝子検査で感染の有無を確認できますが、パラインフルエンザの確定診断は保健所や研究所レベルでの遺伝子検査が必要で、一般外来での検出は残念ながら出来ません。パラインフルエンザは専門的には一本鎖RNA-(マイナス)鎖ウイルスと呼ばれるグループのウイルスです。1本の遺伝子からなるウイルスで、感染した相手の細胞の遺伝子を奪って増殖します。インフルエンザも同じグループに属します。ヘルペスやアデノなどの2本鎖の構造を有することから安定しているDNAウイルスと比較して、RNAウイルスは変異しやすいのが特徴です。パラインフルエンザは1~4型に分類され、ヒトで感染症を起こすのが1~3型です。国内で最も報告の多いのが3型で、初夏から秋にかけて検出の報告が多くなっています。
 最も有名な病型は小児の声門下喉頭炎(クループ)です。人の声帯直下の内径はその人の指の大きさ程度とされます。母親からの移行免疫が減弱した1~2才の幼児の声門下腔は細く軟らかいことから、パラインフルエンザの感染で”じわりと”声門下の粘膜が腫れると、 息を吸い込む際にヒーヒーとのどが引き込まれる吸気性喘鳴が聞こえます。パラインフルエンザ以外のウイルス、インフルエンザやRSウイルス、ヒトメタニューモウイルスや細菌のインフルエンザ桿菌(HiB)でも声門下喉頭炎になる場合がありますが、パラインフルエンザによるものが最も多く、75%がパラインフルエンザによるとする報告もあります。インフルエンザはパラインフルエンザ以上に粘膜表面での増殖が速いために、気道粘膜が薄赤くただれて気管支炎の反応が強くなり激い咳込が特徴的症状です。大人のパラインフルエンザウイルスでは、ライノウイルスやコロナウイルスのような病原性の弱いウイルスより強いのどの痛みと声がれが目立ち、インフルエンザのような病原性と増殖力の強いウイルスよりは発熱や下気道の反応が弱い傾向になります。
 ここ数日、私は外来で、「この声がれの原因は、外来で出来る検査が無いので確定は出来ませんが、パラインフルエンザというウイルスによる感染かも知れません。一般のウイルス感染同様に直接効くお薬はありませんので、治療は対処療法が主体となります。出来るだけ早く腫れを引かせるお薬をお出ししますが、明日になったら劇的に声が出る、、というのは期待しないで下さい。むしろ声を無理すれば声帯に血豆のポリープが出来るかもしれません」と少しばかりプレッシャーをかける説明をしています。(^^ゞ 
     
  28日  RSウイルスやアデノウイルス、溶連菌感染症の流行が下火になってきました。インフルエンザも、某保育園でA型が複数出た、某中学校の部活でB型が複数出た、との情報はありますが、当院ではここ数日見られず、流行化の兆しは見られません。秋よりも晩秋の方が落ち着いている当院外来です。

 私のお気に入りの番組「ぶらぶら美術・博物館」の京都国立博物館の国宝展の作品紹介や、ブラタモリの高野山編で、空海の出家宣言書「三教指帰(さんごうしいき)」が紹介されていました。日本の歴史上でも最も才能豊かとされる空海の人となりが気になって、司馬遼太郎氏の「空海の風景」を手にしました。弘法大師空海、お大師さんは四国の人間にとっては身近な存在です。至る所に伝承の地があります。それにしては私はお大師さんをよく知りませんでした。私はよく石手寺を散策しますが、四国八十八箇所霊場では、曼荼羅や大日如来、大師像はよく目にしますが、お釈迦様の影が割と少ないのです。仏教寺院なのにどうしてだろうという違和感を持ち続けていたのですが、空海の足跡を辿るとよくわかりました。司馬氏の筆致はさすがです。読者を奈良時代の讃岐へ、室戸岬へ、平安京へ、長安へと招いてくれます。空海が遣唐使船で長安に向かったところから始まる大天才の活躍には胸がすきます。いわゆる司馬史観に対しては、明治や昭和時代を中心に様々な意見や立場がありますが、さすがに奈良時代では限られた古文書しかないために、読者は司馬氏とともに半ば空想の世界に没入出来ます。インドの行者から始まった密教が仏教と融合して、ヒンズー教やチベットのラマ教に影響を与えました。小乗仏教の奈良仏教から、大乗仏教に近い比叡山の最澄の天台宗、空海の真言宗への流れが追体験できます。おかげで、親鸞上人をはじめとした鎌倉仏教への理解も深まります。空海は若かりし頃、三教指帰で中国固有の儒教、道教とインド伝来の仏教の比較を行い仏教が最も優れていることを記して修験の道に入りました。その後、空海は長安で、大日如来を中心とした東洋の宗教では唯一の一神教に近い密教の後継者を任じられ、京都の東寺や高野山金剛峰寺を開きました。空海の足跡をたどることで、宗派が多くやもするとややこしい仏教への理解が深まります。 
  26日   Medical Tribuneなどの医療情報誌から耳鼻科関連の話題を拾ってみます。

〇閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS):OSASへの代表的な治療法である持続陽圧呼吸療法(CPAP)の降圧効果が過小評価されているとスイスのグループが発表しました。睡眠学会でも、今後のガイドラインでOSASが高血圧の重要な因子であることを強調するようです。私もOSASが気になる患者様にはよく血圧を測定しています。病院で緊張して血圧が上がる白衣高血圧の要因もありますが、OSASで無自覚に高血圧が隠れている方が多い印象があります。別の米国のグループは、睡眠呼吸障害が認知障害の危険因子であるとの解析結果を発表しています。確かにOSASでは昼間の傾眠が代表的な症状であるのは以前から知られています。認知症分野でもこれから注目されるのでしょうか。
 また世界睡眠会議からは、新たな治療法として、アラームで側臥位を維持する体位療法、植込型デバイスによる舌下神経刺激により舌を挙上する治療、換気コントロールの感受性を高めるために酸素補充+非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ルネスタの併用療法、上気道の筋緊張を高めるカリウムチャンネル阻害薬(開発中)の服薬などが報告されています。睡眠薬はベンゾジアゼピン系でなくても睡眠時の筋弛緩作用は多少はあると認識していました。OSASの治療にルネスタが用いられるのは意外な感があります。実際どれほどの効果があるのか、今後の報告に注目したいです。
〇帯状疱疹:帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる病気は、高度な神経麻痺や後遺症を残しやすく、耳鼻科関連でも顔面神経麻痺や突発性難聴、めまいなど多数あります。帯状疱疹は80歳までに3人に1人が発症し、患者の20%が頑固な痛みが続く帯状疱疹後神経痛に移行します。21世紀に入り我が国の帯状疱疹患者は増加しています。その要因としては、超高齢化、水痘ワクチンの定期接種化、抗がん剤や免疫抑制剤の使用の増加があるそうです。興味深いのは水痘ワクチンとの関連です。2014年から水痘ワクチンの定期接種化が始まったために、帯状疱疹ウイルスへの初回感染により起こる疾患である小児の水痘は激減しています。しかし大人が水痘に罹った子供と接触することにより免疫力が高まる免疫のブースター効果が起こりますが、小児の水痘が減ると大人のブースター効果が無くなるために、大人の帯状疱疹ウイルスの体内からの再活性化で起こる帯状疱疹が増えるのです。幼児と接触している保育士や子育て世代の大人の帯状疱疹の発生率が低いのもこのためだとされます。私も診察で水痘患児に濃厚に接触し続けていますのでいまのところブースター効果は抜群そうです。!(^^)! 昨年から任意接種ですが日本でも50歳以上で、帯状疱疹の発症予防のための水痘生ワクチンの接種が行われるようになりました。しかし生ワクチンであるために、免疫機能に異常のある人や免疫抑制の治療中の人には接種できず、効果も10年で切れてきます。現在、我が国では生ワクチンでない不活化ワクチンが申請中ですので、ワクチンが成人でも普及すれば帯状疱疹は予防可能な病気になるとのことです。また、水痘ワクチンを2回接種して帯状疱疹への免疫力が強い現在の幼児が大人になった時には帯状疱疹は激減しそうだとのことです。ワクチン接種には必ず副反応の問題が生じますが、安全なワクチンで帯状疱疹が激減した世界を見てみたいものです。
〇潜在性甲状腺機能亢進症:認知症の発症リスクが高まるとの報告がスイスからありました。これまで顕性の甲状腺機能亢進や機能低下が認知症のリスクになるとされていましたが、潜在性の段階でもリスクがあるとの報告も出てきました。潜在性の甲状腺機能障害を治療すべきか否か、まだ研究段階の部分も多いのですが、このようなデータが蓄積されてくると、今後より早期から治療するべきとの考えが広がりそうです。
〇電子カルテ:最近はほとんどの公的病院が電子カルテで診療を行っています。当然、新規開業のクリニックもほとんどが電子カルテです。私は未だ紙カルテに拘っています。(^^ゞ 耳鼻科の所見を図で入力したり、複数人の家族を同時に診察する際には、紙カルテは便利だと感じているからです。米国医師会の調査では、外来担当医師は患者と向き合う時間の2倍近くを電子カルテの入力やデスクワークに費やしているそうです。日本語入力の電子カルテではもっと時間がかかっているかも知れませんね。日本語音声入力は、診察室で子供さんが大声で泣くと認識出来なくなります。この報告をみて、私はまだまだ紙カルテで、と思ってしまいました。
〇咽頭痛へのステロイド投与:ステロイド投与が有効であるとの報告がカナダから発表されました。急性扁桃炎や咽頭炎に対して救急部やプライマリケア医への受診を対象に調査したところ、プレドニゾロン10㎎までの投与で、24時間後の疼痛緩和が2.2倍高く、48時間後の疼痛消失率が1.5倍高く、ステロイド投与による有害事象の増加は認めなかったとのことです。のどの痛みが強ければ非ステロイド系の消炎鎮痛剤を処方するというのが外来診療の定番ですが、最近は消炎鎮痛剤で炎症が遷延化したり、抗凝固剤服薬者が増えていることもあり胃潰瘍などの有害事象にも注意する必要があるとの考えもあります。扁桃周囲炎、仮性クループ、喉頭蓋炎でない単純なウイルス性咽頭炎にステロイドまで、、とも感じましたが、本来炎症を抑える為に体内からステロイドの分泌が高まります。生理的な作用を増強するという機序を考えると、咽喉頭の所見が強ければステロイド投与も選択枝のひとつです。
〇嗅覚:嗅覚障害と認知症の関係を白人でも黒人でも認めたとの報告が米国からありました。人種別の研究を行うのは、欧米ならではの報告です。大脳皮質の萎縮が大脳の中で嗅覚を認識する嗅覚野から始まる傾向があり、その為、嗅覚低下がアルツハイマー病などの認知症の先行指標として活用されつつあります。また違うグループから、嗅覚減退がパーキンソン病の前兆との報告もありました。パーキンソン病の前兆となるのは、どのような機序のためでしょうか。興味があります。また、この報告では、黒人より白人、男性より女性に傾向が強く出たそうです。人種や性別による差異の興味深いです。
〇救急車依存症:これはびっくりです。日本臨床救急医学会で、東京都の救急車出勤件数の調査から、同一個人が年間30回以上頻回に救急車を要請する人が88人、平均の要請回数が60回、最高200回要請した個人もいたそうです。年間10回以上の要請者は対象が多く検討から除外しています。8割以上が精神疾患の既往があるそうです。不安のために要請し、救急隊が来るとホッとして症状が治まる「救急車依存症」のケースが紹介されています。救急車を安易にタクシーのように使う人もいることから、救急車を有料制にしようとの意見もあります。適切な救急医療体制を構築するには、課題が多いです。
〇培養検査:日本外科感染症学会より、頭頸部では下顎領域の感染症で嫌気性菌の存在に注意して、嫌気培養も行うべきとの提言がありました。嫌気性菌と好気性菌の混合感染にも注意すべきとのことです。多くの病原菌は空気のある環境で増殖する好気性菌です。しかしガス壊疽など酸素のない環境で増殖する細菌(嫌気性菌)による感染症にも注意しなければいけません。糖尿病や誤嚥性肺炎では、局所の免疫力が落ちて、本来病原性の弱い嫌気性菌が病原性を表す場合があります。頭頸部の深部感染症では嫌気性菌の存在も忘れてはいけません。
〇喘息:喘息と診断された成人患者の1/3がその後の再評価で喘息が否定されたとの報告がカナダからありました。この報告では、この中の2%は喘息ではなく重度の心肺疾患だったとしています。喘息でないとされた群は初期に肺機能検査の施行率が低かったとのことです。鼻炎でも喘息でも、初期にしっかりとした検査や評価が重要なようです。
〇自己炎症性疾患:自然免疫系の異常で、全身に炎症反応が起こり臓器障害を引き起こす疾患のことで、遺伝子異常が同定されているものもあります。小児で原因不明の周期性発熱が続き、抗菌薬が奏功しない場合には専門施設へ紹介するように、とのことです。小児の”原因不明の周期性発熱”には注意したいと思います。
〇オテズラ錠:テラーゼ4阻害剤という尋常性乾癬の25年振りの経口薬が発売されます。乾癬は皮膚の角質が異常角化して惹き起こされる病気で、耳鼻科の目で見ると、外耳道入口部や耳介周囲の頑固な角化として見られます。私も以前から乾癬が疑われる方は皮膚科に紹介していました。昔は湿疹の治療だけだった乾癬やアトピー性皮膚炎の治療も進歩しています。慢性湿疹が治らないとあきらめている方には、今一度皮膚科で相談するようにアドバイスしていきたいと思います。
〇おたふくかぜ:自然感染の合併症とワクチンによる副作用の発生頻度を比較すると、耳下腺腫脹が自然感染65%;ワクチン3%、顎下腺腫脹が10%;0.5%、精巣炎が30%;なし、卵巣炎5%;なし、膵炎が4%;なし、髄液細胞増多が50%;不明、無菌性髄膜炎が1-10%、0.1-0.01%、脳炎0.1%、0.0004%、難聴0.01-0.5%、不明 でした。ワクチン接種による無菌性髄膜炎は適切に治療すれば後遺症を残さないのに対し、自然感染によるムンプス難聴は有効な治療法がなく高度な後遺症が残ることから、おたふくかぜワクチンの定期接種化が妥当との報告が国内からありました。自然感染では髄膜炎化しないでも髄液でウイルス性の炎症が高率に起こることを私も再認識しました。
〇小児のタミフル:今年3月の改定でインフルエンザの治療薬であるタミフルが新生児や1歳未満の乳児への投与が認められました。1歳未満への投与量は一歳以上への投与量の1.5倍です。また、小児、幼小児共に予防投薬も認められました。日本小児科学会では新生児のインフルエンザへの新対応案を発表しました。新生児への予防投薬は行わず、低出生時体重児や生後2週未満の新生児には使用経験が得られていないことから下痢などを含めた副作用に十分注意することとしました。また、学会ではインフルエンザ発症による早産や新生児への感染を防ぐために妊婦へのワクチンの接種を勧めています。タミフルの添付文書でも新生児への投与を認めていますが、添付文書上でも「国内外の臨床試験において、低出生体重児又は2週齢未満の新生児に対する使用経験が得られていないことから、副作用
の発現に十分注意すること」とされていました。国内だけでなく国外でも使用経験がないけど認められているのですね。
〇重症喘息薬:日本アレルギー学会が、生物学的製剤ヒト化抗インターロイキン(IL)-5受容体αモノクローナル抗体製剤ベンラリズマブの早期承認を求める要望書を厚労省に提出しました。気管支喘息の約半数は、好酸球という生物学的エフェクター細胞によって気道炎症および気道過敏性を起こすとされ、ベンラリズマブは自然免疫システムの構成要素であるナチュラルキラー細胞を動員し、直接的、速やかかつほぼ完全に好酸球を除去するモノクローナル抗体製剤です。重症喘息薬では2009年に抗IgE抗体薬ゾレアが登場し、抗IL-5抗体製剤のメポリズマブ(商品名ヌーカラ)が続きました。いずれも注射薬です。新しい製剤はヌーカラを投与してもコントロールできない患者に重要とのことです。残念ながらこれらの製剤は全て国外で開発されています。薬価も高額です。生物学的製剤は耳鼻科関連では抗がん剤が主ですが、もともと生物学的製剤は2003年の関節リウマチへの経口薬が最初でした。将来は耳鼻科の外来でも生物学的製剤が活躍するようになるのでしょうか? でもそうなると国民医療費は大変です。
〇アレルゲン免疫療法:喘息診療に従事する医師へのアンケートで、ダニアレルゲンへの皮下注射免疫療法(SCIT)での症状改善は75%ながら、合併する鼻炎や結膜炎への効果があるのは28%にとどまったとのことです。内科医小児科医の視点から見た鼻炎や結膜炎への効果ですが、舌下免疫(SLIT)より効くイメージのあるSCITで鼻炎の改善が少ないという報告は、耳鼻科医や眼科医が直接粘膜を診て判定する効果よりも患者さんの自覚的な効果を反映していそうです。これは、私が以前行っていた鼻炎に対するSCITの効果の印象とほぼ同じです。SCITの患者さんの自覚的なよう効率は3割程度のようです。
〇川崎病:ここ10年、日本でなぜか増え続けている川崎病ですが、病気の本態が血管炎であることが判ってきました。当院でも発熱が続き粘膜の反応が強い小児に対しては、常にその存在を念頭に置いておかなければならない疾患です。この治療に、日本が世界に先駆けて2015年12月に承認された生物学的製剤抗ヒトTNFαモノクローナル抗体の有効性と安全性が確認されました。これまでは免疫グロブリンやステロイドが治療の中心であった川崎病も、関節リウマチのような生物学的製剤で治療する時代となりました。耳鼻科領域の血管炎で有名なのはANCA関連血管炎性中耳炎です。将来はこの疾患に効く生物学的製剤も開発されるのでしょうか。 
  23日  週末に愛媛耳鼻咽喉科臨床研究会に参加してきました。新専門医制度では専門医資格を維持するには、決められた単位の講習を受講しなければいけなくなりました。地方学会の研究会や講演会の多くは日曜日に開催されますので、日曜診療を行っている私にとって土曜日に開催される今回の研究会は便利な機会でした。
 セミナーの一つめは、Barany学会という国際的なめまい学会の新分類の試案の紹介でした。これまで心因性めまいとされていたものをより細かく分類しています。その中に、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)という概念を取り入れています。3ケ月以上続くめまいで、耳の障害からの前庭性めまいや神経疾患・内科疾患が先行して、精神的な要因だけでない心因性めまいの中にPPPDとされる病態があるのではないかとしています。最近、例えば整形外科領域では、椎間板ヘルニアが手術で劇的に治っても腰痛が続くケースでは、椎間板ヘルニアが起こっていた際の痛みを脳が覚えていて、原疾患が治っても痛みを感じるという病態があります。このようなケースに、脳内の神経伝達物質を賦活させる抗うつ剤を投与すれば痛みが劇的に完全するケースがあることが判ってきました。慢性の神経痛や片頭痛でも抗うつ剤が有効との考えも確立されてきています。PPPDでもこのような機序の存在が疑われます。治療には副作用の少ない抗うつ剤SSRIやSNRIが有効であるとの研究も始まっています。めまいに抗うつ剤?私はうつ病ではありません!というケースでも、今後、副作用の少ない抗うつ剤SNRIを試みるような治療ガイドラインが出てきそうです。
 二つめは、頭頸部癌の個別化治療に関するセミナーでした。個別化治療とは、これまで癌が発生した部位別に診療ガイドラインを作成し、腫瘍の大きさや浸潤の程度、転移リンパ節や遠隔転移の有無を基にTNM分類という分類を作成して癌の予後や治療効果を判定してきましたが、個別化治療はより細かな癌のタイプによって治療方針を変えていこうという治療です。扁平上皮癌である、腺癌である、肉腫である、高分化である、未分化であるなどの組織検査を基にした細分類により治療方針を考える治療は、血液系の癌を中心に以前から行われていましたが、今回のセミナーで紹介されたのは、今後は癌の遺伝子まで把握して治療を細分化させるというものです。頭頚部癌で遺伝子による個別化治療が始まりつつあるのが、扁桃癌のような中咽頭癌です。中咽頭癌の中にはヒト乳頭腫ウイルス(HPV)により癌化したものが多く、これは頸部リンパ節転移が多くてもむしろ治りやすい(予後がよい)という研究データが集積されてきています。今後正式に発表される予定の2018年版の頭頚部癌TNM分類では、中咽頭癌を、HPVの遺伝子であるp18があるものとないもので治療方針を変えるように変更する予定です。米国ではHPVへの感染から中咽頭癌が発生することが判ってきた結果、男性へのHPVワクチンの接種も始まっています。日本ではHPVで誘発される癌の代表である子宮頚癌にたいするワクチン接種での副作用の問題から、HPVのワクチン接種を広めることは現時点では困難な状態です。HPVワクチンの接種を中止している日本では女性の子宮頚癌の発生率が、一旦減りつつあったのが増える傾向が出てきたとの報告もセミナーでは紹介されました。遺伝子治療の今後と、ワクチン接種の評価の難しさを考えさせられたセミナーでした。

  Bスポット治療、いびきに対する軟口蓋形成術、副鼻腔カテーテル治療、好酸球性中耳炎、 口腔カンジダ症など。
  21日   昨日の20日に愛媛県内で今シーズン初のインフルエンザによる学級閉鎖が報告されました。西条市の小学3年生の3クラスです。当院では今シーズンこれまでに3名からインフルエンザを検出しています。いずれもB型でした。県内ではA型の報告も見られます。これから年末にかけてA型B型ともに流行の発生に注意しておきます。
 院内掲示および当ホームページの「松山の花粉症情報」を2018年シーズンに更新しました。来シーズンの松山のスギ花粉の飛散予想は難しいようです。今年の夏の平均気温が高かった割には日照時間が少なく、スギの飛散が来シーズンは本来裏年に当たることが、予想を難しくしています。来シーズンのスギの飛散は多いのか?少ないのか? これから12月にかけて、実際にスギ花粉の雄花の発育状態を観測した予想が発表になります。昨年12月に、服薬中の自動車運転に注意することとの記載が添付文書にない眠気の出ない抗アレルギーの新薬、ビラノアとデザレックスが発売されました。この薬剤が1年間の経過観察を経てこの12月からは2週間以上の処方が可能となります。私の印象では、確かに眠気が発現する方はほとんど見られず、効果も高かった印象です。これからは長期処方も可能になりますので、鼻炎の診療が便利になります。また11月末には、12才から服薬可能な新薬ルパフィンが発売になります。PAFという化学伝達物質の阻害作用という新しい作用機序があります。(PAFは実は私が学位論文でその鼻粘膜血管への作用を研究していた物質ですので、親近感があります) 眠気の副作用を軽度認めるようですが、作用機序からは効果は高そうです。来シーズンの花粉症シーズンに向けて、治療の選択肢が増えます。 
  10日   今日は朝から天高い秋晴れでした。花園町や平和通りの銀杏並木が輝いています。当院待合室のポスターも銀杏木立の写真になりました。

 先日、長年勤務して頂いた方が退職しました。パートタイムでの勤務で、忙しい日曜診療に大活躍して頂きました。残念ですが家庭の事情もあり致し方ありません。このため、新たなパートタイムの看護師の方を募集することとなりました。当ホームページの職員募集のコーナーにも掲載しておりますが、このコーナーでも案内させて下さい。
 募集はパートタイムの看護師さんです。平日午後、土曜日、日曜日に出勤可能な方を求めています。週1回の勤務など勤務の曜日と時間は個別に相談致します。出来れば月1回程度日曜出勤出来る方を特に求めています。正看、準看は問いません。応募される方の耳鼻科経験は問いません。当院にて耳鼻科診療に必要な研修は行いますので、耳鼻科未経験の方も振るってご応募下さい。お子様好きの、健康的で明るい方を求めています。当院では耳鼻咽喉の日帰り手術、レーザー治療、めまい診療、気管食道科領域の診断治療など、実地臨床レベルでは高度な医療を行っていると自負しております。この3月には耳鼻咽喉科クリニックとしては先進的にCTの導入も予定しております。常日頃の診療に際しては、小さなお子様からお年寄りの方まで幅広い年齢の患者様に対して、暖かな治療や看護、心の交流が出来るよう心がけております。ぜひ当院で、私およびスタッフと、共に働いて頂けることを心待ちしております。ご応募は、まずは電話にてお問合せ下さい。勤務の曜日や時間帯についてまず電話にて相談させて頂きます。その後、履歴書を拝見の上、面接させて頂きます。また、ハローワーク松山にも求人票を出しておりますので、ハローワークを通じてのご応募もお待ちしております。 
  6日   昨日、当院でB型インフルエンザの高校生が来院されました。今のところ集団発生ではないようですが、今後の流行化には注意します。

 先日お伝えしたモンテルカストによる精神症状に関する副作用について、製薬会社の学術担当に問い合わせました。実はこの報告の第一報は2010年に既に報告されており、2010年3月には我が国の薬剤情報の基本となる薬剤添付文書も改定されていました。「本剤との因果関係は明らかでないが、うつ病、自殺念慮、自殺及び攻撃的行動を含む精神症状が報告されているので、患者の状態を十分観察すること」と追加されています。2009年の米国の論文で9929例中1例に自殺念慮が認められたことからFDA(米国食品医薬局)が精神症状に関する注意喚起を追記するよう指示しています。我が国でも10歳未満の女性1例で夢遊症が見られたとの副作用報告があり、我が国の添付文書で夢遊症が副作用報告として掲載されました。その後、国内でのうつ病の報告も非重篤な1例のみで非常に稀な副作用と考えられています。今回のうつ病の発生率が6.93倍高まるとの論文と、これまで集積されてきた副作用報告とのギャップは大きいようです。今後の情報にも注視しますが、私の印象ではモンテルカルストは現時点では、精神症状の副作用に注意はするべきものの小児も含めて服薬への問題は少ないと思われます。 
11月  3日   11月になりました。インフルエンザの患者さんの来院などなど、10月後半から当院外来も徐々に冬の気配です。私もそろそろ昼休みが無くなり、診療の終わる時間も遅くなってきました。今日は文化の日で当院もお休みを頂きました。これからの冬場に向かって、私も英気を養えました。
 31日のハローウィンが終わった翌日には早速、テレビCMはクリスマスモードです。一年の楽しい行事と言えば、お正月→バレンタインデー→ひな祭り→ホワイトデー→子供の日→母の日→父の日→夏休み→運動会・秋祭り→クリスマスでしょう。秋祭りとクリスマスの間にピタッとハローウィンがはまりましたね。仮装をしたまま診察してくれた愛らしい女の子が、当院を受診してくれました。(^^)
 10月はまるでシーソーゲームのような選挙の月でした。落ち着く間もなく極東ではチキンレースが続いています。どちらかが降りなければ、、 クリスマス休暇以降が空恐ろしいです。
 10月は氷雨とともに台風がふたつ襲来しました。その後もヒンヤリした日が続いています。今年は例年以上に気道過敏症やめまい症、頭痛の方の来院が多いように感じます。

 私が処方しているお薬で気になる情報がありました。医学雑誌 Pharmacology Research and Perspectivesの9月20日版に、モンテルカスト(商品名キプレス、シングレア)でうつ病、攻撃的行動、悪夢、頭痛などの副作用が疑われるとの研究報告が掲載されました。世界的なデータベースによる副作用報告の解析から、小児および成人でうつ病のリスクが6.93倍に高まる、小児では攻撃的行動の報告が多くそのリスクは29.77倍、あるデータベースでは頭痛のリスクが2.26倍、小児成人合わせて自殺念慮のリスクが20.4倍、悪夢のリスクが22.46倍で小児でその傾向が大きい、などショッキングな報告です。
 モンテルカストは小児向けもあるアレルギー反応を抑えるお薬です。アレルギー分野や小児科領域で世界的に広く処方されています。私のこれまでの印象では副作用の少ない安全な薬剤でした。日本では昨年12月に小児用にも後発医薬品が広く発売されたため、小学生などの医療費の自己負担が減って処方しやすくなっています。この薬剤で精神症状の副作用が出やすいという現象は、世界的にもまだ一般的ではありませんが、追試論文など今後の情報に注意したいと思います。私の処方した範囲では、現時点まで特に精神神経系への有害事象例は認ていませんが、私も患者様・患児の保護者も同時に見過ごしているケースがあるかも知れません。私も状況がはっきりするまでは、慎重に対応します。 
     
  24日   当院で2017/2018シーズンで初めてインフルエンザを検出しました。今日24日、微熱のあった幼稚園児の子供さんからB型が検出されました。当院では例年は11月に初めてインフルエンザを検出することが多かったのですが、直近の2年間は9月に検出していました。今年は例年よりやや早い時期での検出となりました。今シーズンの中予でのインフルの報告を見てみると、9月後半に砥部の小学生でB型の集団発生がありましたが、連休前でもあり学級閉鎖には至りませんでした。その後、10月初旬には松山市内からもB型の情報が散発で寄せられてましたが、10月中旬には報告が無くなりましので、私はインフルエンザが当院で見られるのは11月後半からと思っていましたので、10月中に検出したのは意外でした。また最近、松山市内の某公的病院で職員の間でA型の集団発生が見られているとの情報がありました。当院ではここのところ、急な発熱で一番多いのは一般的なウイルスによる急性上気道炎で、その中にRSウイルスや溶連菌、マイコプラズマがやや目立つ程度でしたが、これからはB型だけでなくA型インフルの発生にも注意したいと思います。
 国立感染研の発表では10月13日現在、A2009年型が23株、A香港が15株、B型(すべて山形系統)が14株検出されています。昨シーズンはA香港型が主、次いで多かったのがB型で、A2009年型は極端に少なかったのですが、今シーズンはA2009年型から流行が始まるとの予想も聞こえます。検査の体制で言えば、今シーズンもここ3年間と同様に残念ながら香港型と2009年型を分けて検出できる迅速検査キットは発売されませんので、A型がどのタイプかの判定は一般の医療機関では出来ません。これから約半年に渡るインフルのシーズンが始まりますが、A型の二度罹りにも注意しながら診察をしたいと思います。
  19日   今日は垣生小学校の就学時健診でした。先週と違い、今日は時間的な余裕を持って健診に向かうことができました。垣生小学校では耳鼻科担当の小学5年達が玄関でお出迎えしてくれました。ここでも引率の5年生はてきぱきと新1年生を誘導していました。頼もしかったです。今日は肌寒かったせいか1週間前のさくら小学校の健診の時より目立って風邪気味の子供さんが増えていました。
 秋祭りの提灯行列から2週間、秋雨前線の停滞が続いています。天気予報では台風接近も含めてあと1週間は雨模様の天気が続きます。今年は本格的な梅雨が2回あるような感じです。これから野菜の値段が上がるかもしれませんね。寒気と低気圧が繰り返し訪れたせいで、鼻炎や耳管狭窄症などの気道過敏症が目立ちます。めまいや自律神経失調を来す方も見られます。
 風邪の流行では、ライノウイルスやエコーウイルスによると思われる普通の風邪の方が多いようです。10月初旬まで記録的に多かったRSウイルスや、溶連菌、アデノウイルスのお子さんは目立って減りました。7月に流行した手足口病ですが、2回目、3回目と罹ったお子様も見られました。今週は高校生や大人の方の手足口病も見られました。おたふくかぜもやや多いようです。ここ10日間程でマイコプラズマ感染症の方が複数見られました。マイコプラズマ感染症は、昨年夏のリオ五輪の頃に目立っていた印象がありましたが、その後はほとんど見かけませんでした。流行してきたという印象ではありませんが、マイコプラズマは潜伏期が2~3週間あり、咳が鎮まって治癒したと思われた後もわずかな感染力が1~2ヶ月続きますので、集団内でマイコプラズマが発生すると数か月に渡って発症者が出ることがありますので注意が必要です。インフルエンザは松山市内でも散発的な報告があるようですが、当院ではまだ見られていません。 
  14日   12日木曜日の診察は小学校の就学時健診のために午後の診察開始を遅らせていました。当日は午前の診察が長引いたことから、健診後への診察時間の変更をお願いした患者様もおられました。変更を快く受けて頂いた方々には本当にありがとうございました。12日はさくら小学校での健診でした。先生方や引率の在校生のおかげで、スムースで落ち着いた健診を行うことができました。引率の5年生達は、泣いたり怖がっている新1年生がいると、優しく声掛けしていました。頼もしいです。来週19日は2校目の垣生小学校の健診です。午後の診察は12日同様、午後3時半頃からの開始を予定しています。受診を予定されている方々にはご迷惑をお掛けしますが、ご協力お願いいたします。
 健診の際に先生に教えて頂いたのですが、さくら小学校は来年度、1年生のクラスが4クラスから5クラスに増えるそうです。少子化の中、松山市でも生徒の減る小学校がほとんどですので、クラス増には少し驚きました。数年前には垣生小も1年生のクラスが増えています。どうやら私は松山市の中でも生徒の増える小学校の校医を担当していることになります。平成28年度の松山市の地区別人口動態を調べてみると、1年間で全市トータルで1175名の人口減少でした。44地区の内35地区で人口が減っています。地区別に増加数の多い順に挙げると、石井(+162)、東雲(+149)、味生(+141)、垣生(+97)、生石(+81)、堀江(+77)、新玉(+31)、伊台(+14)、小野(+2)、素鷲(-2)、余戸(-8)となっています。残念ながら松山市の資料では地区別かつ年齢別の統計はありませんでしたので、学童の年齢だけの増減数は分かりませんでしたが、垣生小学校区と余土地区の西に位置するさくら小学校区は松山市でも目立って子供の人口が増えている地区になっていると考えられます。当院は余土小学校区とさくら小学校区の境に位置する余土中学校区です。当院の周りでは、朝夕の時間は登下校の子供たちの元気な声が響いてきます。当院の周りは”若い活力のあふれた”地域なのですね。

 11月に入るとインフルエンザの予防接種の時期となります。インフルの予防接種による抗体は約2週間でついてきます。抗体は接種後小児で約4ヶ月、成人で約6ヵ月で減じます。インフルの発生は例年12月後半からで流行が1月上旬から3月下旬までですので、私が考える予防接種の最適な時期は、小児であれば11月下旬に1回目12月上旬の2回目を、成人では12月上旬だと考えます。10月中などあまり早く接種すると春には接種の効果が減弱します。近年は5月までインフルが発生することが多くなっていますので、やはり接種は11月後半からがお勧めです。(当院では診療時間の兼ね合いから今年も予防接種は行いません)
 今年のワクチンの供給体制ですが、供給不足が心配されています。ニュースでは、当初予定していたA型の製造株の増殖効率が著しく悪かったため、別の製造株に変更したために製造量不足が生じたとのことです。ワクチンの株によって増殖力に違いがあるとは知りませんでした。厚労省は、今年は小児も1回接種のみとすることを推奨しています。

 スギ花粉の飛散予想が面白くなってきました。先日紹介した日本気象協会の予想では四国は平年よりやや多めとの予想でしたが、ウェザーニューズでは四国は少ないとの予想です。今年の夏の天候の評価の違いで予想に差が出ました。日本気象協会は、夏の気温が高く日照時間が多かったことを評価し、ウェザーニューズは8月に悪天候が多く来年が飛散が裏年になることを評価しています。昨年まで予想を発表していた環境省が近シーズンから予想の発表を行わなくなっていることから、来シーズンの主要な機関の予想で反対の予想が出ることになりました。今後、12月頃には実際のスギの雄花の発育状況も観察してより精度の高い予想がでます。日本気象協会とウェザーニューズ、さてどちらが当たるでしょうか! 
  7日  好天の中、地方祭が終わりました。やはり道後の鉢合わせは全国区です。全国ニュースでも放映されていました。見ているだけでハラハラします。
 愛媛国体も早いもので11日間の日程も3日残すだけとなりました。ブルーインパルスの飛行経路が私の予想と全く違っていて、当院で見えなかったのは心残りでしたが、あれだけ一人で盛り上がっていましたので、記念の生写真を挙げておきます。よんやくの竹内氏が、ブルーインパルスの飛来前に私が話題にしていたこともあって、写真を撮ってくれていました。
 YouTubeではえひめ国体関係の様々な動画が早々とアップされています。ブルーインパルスの展示飛行だけでも様々な場所から、前日の予行も当日の祝賀飛行もアップされています。総合開会式会場から、えひめこどもの城から、重信川の土手から、松山城から、松山総合公園からなどがありました。回りの人達の歓声が聞こえるのも見ていて楽しいです。さらに、ブルーインパルスの松島基地の出発の様子や、築城基地の離発着、松島基地への帰投まで、様々な動画がアップされていてびっくりです。乗り物関係でいえば、天皇陛下の特別機の離発着や車列も様々な場所のものがアップされています。当日、ブルーインパルスがこの目で見られなかった私も少し気が済みました。
 YouTube ブルーインパルス 愛媛国体 愛顔つなぐえひめ国体 開会式 祝賀飛行 へ


 スモークをたなびかせて編隊飛行するブルーインパルスです。機影が小さいのでこのコーナーとしては大き目な写真にしています。


 天皇皇后両陛下のお泊所の松山全日空ホテル前で行われた提灯奉迎の人波です。私は予定を知らずに偶然一番町を通っていました。ホテル前の松山地方裁判所の中庭(写真正面)から奉祝していました。 
  6日   昨日今日と、当院の周りを秋祭りのちょうちん行列が通り過ぎました。診察が終わる頃合いに、子供たちの「もーてーこい!」の掛け声が診察室まで響いてきました。今年の提灯行列は二日続けてあいにくの雨でしたが、子供達の掛け声は元気そのものでした。秋祭りの提灯行列では、会津若松市の会津まつりが有名ですが、全国的にもそう多くないそうです。提灯行列の由来については、松山市立鴨川中学校の「ふるさと鴨川」に、”宵祭りからの子供の提灯や、各家庭の提灯に明かりをともすのは「神さまがおいでになります。そのために道々を明るくしてお迎えしましょう。」という意味を込めているそうです。私は、提灯行列に参加するととにかくお菓子がもらえると、由来を深く考えずにとにかく喜んでいたのですが、神様をお迎えするためと知ると行列にありがたみが増してきます。
 昨日私は三番町で神輿の行列にも出会いました。雨の中、法被姿のいなせなお兄さん達が、神輿の上にも乗りながら威勢よく練り歩いていました。今日の診察では、昨日のお祭りの準備で冷たい雨に打たれて体調を崩した方の受診がありました。心配されたお天気ですが、明日の本宮は天気も回復し気温も上がるようです。明日の地方祭、当院は平常通りの診察を行います。当院の周りを練り歩くであろう子供神輿を担ぐ子供達にもいい日和になりそうです。(^^)

 カルボシステイン(先発薬名ムコダイン)は、最近。スイッチOTC薬として市販の風邪薬にも配合が始まった去痰剤です。気管支の痰を切る作用だけでなく、副鼻腔や中耳の粘液を切る作用もある唯一の去痰剤ですので、医療の現場でも風邪薬的な処方では汎用されています。小児の中耳炎や副鼻腔炎でも用いられますので、全国的に見ても耳鼻咽喉科の処方のトップ薬ではないでしょうか。
 作用機序はマイルドで副作用には縁のない印象のあった薬剤ですが、固定薬疹の作用機序で注目されています。データベースではカルボシステインによる副作用は約100人に1人、薬疹の発現は1000人に1人とされますが、曲者の固定薬疹を起こします。固定薬疹とは、特定の薬剤を服薬する毎に同一部位に円形で赤い発疹が生じる病態です。原因薬剤の投与が続くと新たな部位にも生ずるようになります。全身に広がれば、Stevens-Johnson症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)、多形紅斑など重症化する場合もありますが、多くは原因薬剤を中止すれば軽快します。また、多くは原因薬剤を服薬後数時間で発症しますが、数日間内服を繰り返して初めて誘発されることもあります。カルボシステインはこの遅発性の固定薬疹を引き起こすことが最新の研究で明らかになりました。
 カルボシステインによる固定薬疹を引き起こす原因物質はカルボシステイン自体ではなく、カルボシステインが体内で分解されて出来た、パーマ液の還元剤の成分と似たチオグリコール酸という中間代謝産物が原因です。カルボシステインは、昼間には主に主代謝経路で酸化カルボシステインになりますが、夜間には違う代謝経路が主となってチオグリコール酸が多く産生されます。今年のノーベル医学賞は体内時計の研究に与えられましたが、代謝経路にも日内変動があるとは驚きです。カルボシステインによる固定薬疹は、”夜間を中心に2~3日以上服用すれば発現しやすい”のです。私の外来でも治療の経過中に皮疹が出ることはままあります。それが薬疹なのか、薬疹ならば服薬した薬剤の中のどれが原因薬剤なのか、自律神経などの体調から引き起こされた蕁麻疹や中毒疹なのか、ウイルス性発疹症や猩紅熱・マイコプラズマ感染症などの感染によって引き起こされたものなのか、接触性皮膚炎のようにⅣ型アレルギー反応によるものなのか、多形滲出性紅斑のような免疫異常が隠れているのか、紫斑のような血液の異常が隠れているのか、私なりに考え、判断がつかない場合や重症の場合は皮膚科にコンサルトしています。私もカルボシステインはそれこそ多数処方してきましたので、カルボシステインによる薬疹を結構見逃してきた気がしてなりません。原因が特定できない、抗菌剤が原因の可能性が高い、とお茶を濁していたかも知れません。今後は、カルボシステインの薬疹が疑われた場合には、患者様とも相談の上、チオグリコール酸に対する薬剤リンパ球刺激試験(DLST)やパッチテストを行こなった方がよいかどうかも含めて皮膚科専門医に紹介したいと思います。 
  4日   今日は中秋の名月です。澄んだ秋空にお月様が輝いています。中秋の名月は太陰太陽暦の8月15日で、本当の満月は明後日ですので、天文学的には13夜なんですね。日中も澄んだ秋空でした。水曜の午後の休診を利用して、時間があれば男子ゴルフの国体観戦をと考えていましたが、診察終了が午後を回り、月初めの医療事務に時間を取られ、念のため夕刻ゴルフ場に電話で問い合わせたところ既に競技は終わっていました。秋空のゴルフ場はさぞ気持ちよかったでしょう。残念でした。

 来シーズンのスギ花粉の飛散予想の第一報が日本気象協会から発表されました。平年と比較して、東海・近畿がやや多く、東北・関東甲信・九州では例年並み、北陸・中国・四国が少ないとの予想です。愛媛は平年並みの予想です。これを機会に松山の過去のスギ飛散数を確認しました。松山ではスギ花粉の1日単位の実測を、1980年代より県立中央病院耳鼻咽喉科と検査部が、2012年から松山大学薬学部で行っています。薬学部難波先生の観測グループからは松山耳鼻咽喉科会にデータを提供して頂いています。私も臨床に大いに役に立っています。松山耳鼻咽喉科会のホームページ(じつは以前私が担当者として管理していた時期がありました。今も私のまとめた記事が残っています (^^ゞ)の花粉飛散の記録を見ると、記録の残る1988年以降では、1991年、1995年(過去最高)、2001年、2005年、2009年(過去2番)、2011年、2013年と、4~5年に一度のペースで大量飛散しています。一方、2000年700個しか飛ばない年もありました。2006年までの年間の平均飛散量は3300個、2012年からは約3500個です。全国的にも21世紀に入りスギ花粉の飛散量は増加傾向にありますので、最近の松山の飛散数は平均3500個程度と考えられます。最近の飛散量を見ると、4年前の2013年に8000個程度の大量飛散がありその後は平年以下の飛散量でした。私は今年4年振りの大量飛散を予想していましたが、今年2017年シーズンの飛散数は3100個程度で例年よりやや少ない程度でした。共通性抗原のヒノキは多く飛散しました。2017年の夏は、全国的に気温が高く、日照時間も多くなりました。降水量は、北海道、東北、北陸で多くなったことを参考にして、日本気象協会は上記の予想を立てています。日本気象協会の県別の予想では、愛媛は平年並みですが高知では大量飛散すると予想しています。私の印象では、松山の2018年シーズンは「5年振りの大量とはいかないまでもやや多めに飛散する」ような気がします。

 潜在性甲状腺機能低下症の方の受診がありました。喉ぼとけの下にある甲状腺では甲状腺ホルモンという”体を元気にする”ホルモン(遊離サイロキシンFT4など)を分泌しています。脳下垂体からはこのホルモンの分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌されます。潜在性甲状腺機能低下症とは、T4などのホルモン自体の分泌は正常域ながらTSHが高値で、体のホルモンバランスの上では甲状腺機能低下が隠れている状態です。TSHの測定が可能になった1970年代から認知されるようになった病態で、頻度は成人の3~5%で60才以上の女性に多いとされています。甲状腺の働き自体は正常ですので治療を行う(介入する)べきか様子を見るだけでよいのか、2004年に米国から指針の発表がありましたが、日本ではまだ研究会で検討中の段階です。
 甲状腺機能低下で問題になるのは、機能低下がわずかでも胎児への悪影響があること、高コレステロール(特に悪玉菌のLDLコレステロール)血症から動脈硬化を悪化させ心筋梗塞などの冠動脈疾患が悪化することです。そのための治療として、甲状腺ホルモン(チラーヂンS)を少量服薬してTSHを低下させるホルモン補充療法があります。ただし服薬で甲状腺ホルモンが過剰な傾向になると、ふるえや体重減少などのバセドウ病のようなはっきりした甲状腺機能亢進症状まで至らなくても、女性では骨折を起こしやすくなる骨粗鬆症や心房細動などの不整脈を招くリスクもあります。
 この疾患に治療を行うべきかどうかについては様々な立場の論文があります。2012年、ホルモン補充療法を行った結果、70歳未満では有意に心血管イベントが抑制された(Razvi S,et al.Arch Intern Med.2012)。2013年、甲状腺機能低下が認められた患者のうち、抗うつ薬を処方されていた患者の半数以上はホルモン補充療法によりうつ症状が改善した(五十嵐健祐氏、老年病研究所附属病院)など治療が有用であるとの報告があります。ところが今年、格式の高い医学雑誌New England Journal of Medicine 誌に「高齢の無症候性甲状腺機能低下症患者に対するホルモン補充療法は、明らかな利益をもたらさない」との論文も掲載されました。医学は理学と違って100%再現性があるものではありません。母集団を吟味して統計上の有意差で判断します。さらに医療では社会的な観点の考慮も加わります。そのため物理学や数学の論文と違って、データの改ざんなどの不正も可能になるのです。話は脱線しましたが、潜在性のケースに治療を行うべきか、今後、”私の好きな”日本の学会の治療指針の発表に期待しています。現時点での治療のコンセンサスは概ね以下のようです。
 TSH値が10μU/mL以上や、妊娠中・妊娠を希望している女性には治療を行い、TSHが10μU/mL以下でも高LDLコレステロール血症など動脈硬化のリスクを有したり、甲状腺機能低下症の症状所見があれば治療を考慮してよい、その際はTSHのモニターを続けながら骨粗鬆症や不整脈などの副作用に注意する、高齢者(特に85才以上)には治療しない。
 私もこの方針で、内分泌内科とのコンサルトも考慮に入れながら治療してみたいと思います。 
  2日   頭痛の診断基準としては「国際頭痛分類ICHD」が最もスタンダードです。1988年の初版は世界初の分類・診断基準として片頭痛の疾患概念が統一標準化され、疫学研究や臨床研究のバイブルとなりました。その後、2003年に第2版が、2013年に第3版の先行版ともいえるβ版(ICHD-3β)が発表され2014年に日本語版が発表になりました。(β版はWindousの正式版が出る前のβ版と同じ意味で、まずβ版を公表した後に改良版を正式版とします)
 頭痛は神経内科が専門としますが、耳鼻科でも頭痛を主訴とする患者さんは多数来院します。耳痛、咽頭痛、頚部痛なども含めて痛み自体は見えるものではありませんので、頭痛の観点から頭頸部の痛みを評価することは大事です。今回、私もICHD-3βに目を通しました。診断基準の本といっても241ページもの分量があり、詳細な分類と説明がなされています。ICHDの目次を読むだけで、頭痛の概観が出来ます。( )内は私の補足です。

 一次性頭痛
  片頭痛
  緊張型頭痛頭痛
  三叉神経・自律神経性頭痛(以前の群発頭痛)
  その他
 二次性頭痛
  頭頸部外傷による
  頭頸部血管障害による
  非血管性頭蓋内疾患による
  物質またはその離脱による(薬剤性やアルコール、薬剤乱用や依存によるものを含みます)
  感染症による
  ホメオスターシス障害による
  頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口その他顔面頸部の障害による頭痛顔面痛
  精神疾患による
 有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛頭痛(三叉神経痛などの神経痛がここの範疇です)
 付録(これまでの研究ではまだ十分確証の得られていない新しい疾患概念について研究のための診断基準をしめす疾患を挙げています)
  月経関連片頭痛
  慢性片頭痛
  乳児疝痛、小児交互性片麻痺
  前庭性片頭痛(これまで片頭痛関連めまい、片頭痛関連前庭障害、片頭痛性めまいとよばれてきたもの)
  一過性表在頭痛
  頭部外傷による遅発性頭痛、持続性頭痛、放射線手術による頭痛
  てんかん発作による頭痛
  真菌または寄生虫による持続性頭痛
  HIVによる頭痛
  起立性低血圧によつ頭頚部痛
  宇宙飛行による頭痛
  上位頚髄神経根症、頸部筋筋膜痛による頭痛
  鼻粘膜、鼻甲介、鼻中隔の障害による頭痛
  うつ病、分離不安障害、パニック障害、限局性恐怖症、社交不安症による頭痛

 付録の章では、興味深い疾患が並んでいます。宇宙飛行による頭痛という”夢のある”疾患名もあります。最近、肩こりの原因として筋膜痛が注目されていますが、このあたりの概念もしっかり取り込んでいます。今回の版の耳鼻科医としての注目点は、これまで片頭痛関連めまいと呼ばれていた領域を、初めて前庭性頭痛という分類で「付録」として掲載したことです。付録の各疾患の中でも「前庭性片頭痛」には特に多くのスペースがさかれています。
 前庭性片頭痛の診断基準は、以下のように規定されています。
1、現在または過去に「前兆のある」または「前兆のない」片頭痛の確かな病歴がある 
2、頭痛の5分~72時間の間で持続する中等度または重度の前提症状がある
3、頭痛時の少なくとも50%は、3つの特徴のうちの少なくとも1つをともなう
 1)頭痛は、片側性、拍動性、中等度または重度、日常的な動作により頭痛が増悪するのういちの少なくとも2項目を満たす
 2)光過敏と音過敏
 3)視覚性前兆
 つまり耳鼻科医としては、明らかな片頭痛発作の直後から3日後までの前庭性めまいでは片頭痛の治療も考慮せよ、とのことでしょう。治療には片頭痛予防薬のカルシウム拮抗薬ミグシス、トリプタノール、バルブロ酸、プロプラノロールを用います。特にミグシスは副作用が少ないことから耳鼻科医にも処方しやすい薬剤です。ただし効果が出るかどうか2週間程度は経過をみる必要があります。ミグシスでも片頭痛がコントロール出来ない場合には私はやはり神経内科にコンサルトしようと思います。
 ICHDではさらに前庭性片頭痛と小児の良性発作性めまいとの関連性やメニエール病の重複についても今後の課題としています。将来の改定では「前庭性片頭痛/メニエール病重複症候群」という疾患名が組み入れられる可能性があるとも言及しています。頭痛とめまいの関連性は神経内科の研究でも今後注目されるでしょう。耳鼻科の平衡神経学会でも、メニエール病で頭痛を併発するケースについての研究発表が増えるかも知れません。 
10月 1日   今日の日曜診療は終了が午後8時前になりました。辺りが暗くなった当院の植栽からは虫の音が静かに聞こえていました。夜空には上弦の月です。10月に入り、秋も深まってきました。
 今日から愛媛国体の競技が始まりました。朝は富山県選手団を見かけました。診察では某県の国体選手が受診されました。やはり選手の方はドーピング薬について気にしておられました。早速、講演会で得たドーピーングの知識が役に立ちました。 
     
  30日   国体の総合開会式が無事終わりました。先ほど録画で見ていましたが、ブルーインパルスの展示飛行は私の予想とは違っていました。厳かなで静かな編隊飛行でした。飛行ルートも道後平野を東西に直線的に横断するのではなく、会場の総合運動公園の東側をカーブしていました。重信川の下流にある当院の近くには飛んできませんでした。民間航空機の松山空港への侵入ルート周辺を避けたような飛行コースでした。私なりに調べて飛行ルートを予想していたのに、大外れで恥ずかしい限りです。展示飛行自体も、私は航空祭や五輪のようなアクロバット飛行を期待していたのですが、実際は低速で重厚な飛行でした。そうでした、市街地上空での派手な高速の飛行は、危険で騒音の問題も起こります。昨日の予行(11時49分頃でした)では当院でもかすかに轟音は聞こえましたが、今日の本番では風向きも影響したのか音さえも聞こえませんでした。一人で盛り上がって期待していただけに、ちょっと脱力感です。('_') 

 9月5日に日本耳鼻咽喉科学会がムンプス難聴の全国調査に関する報告を発表しました。日耳鼻としては”力の入った”記者会見を開いています。昨年末までの2年間で全国の耳鼻科5565施設を対象にした調査の結果、336人のムンプス難聴が報告されました。当院も対象施設に入っていますが、幸いこの2年間ではムンプス難聴は経験しませんでしたので報告は上げていません。ムンプス難聴はムンプスウイルスに感染して起こる「おたふくかぜ」で引き起こされる難聴で、一度発症すると高度難聴化して、たとえ突発性難聴に準じて積極的な点滴治療を行ってもほとんど回復しません。日本はムンプスの予防接種を先進国で唯一定期接種化していません。過去に麻疹・風疹・ムンプスの三種混合(MMR)ワクチンとして定期接種していましたが、1993年に無菌性髄膜炎で国が訴えられるなどの経緯があり定期接種が中止されています。現在は任意接種として行われていますが接種率は30-40%程度にとどまっていることから、日本では周期的な流行を繰り返しています。これまでも複数の論文でムンプス発症時のムンプス難聴の発生が、ムンプス400例に1例、1000例に1例などと報告されていました。しかし発生率が少ないために、多くの症例を集めた検討が我が国でこれまでなされていなかったことから、日耳鼻が主導して全国調査を行いました。
 報告では、336人のうち、詳細が得られた314人の約80%、260人(内100人以上が入院治療)に高度以上の難聴の後遺症が残りました。また、260人中の14人、4%は両側性でした。我が国のムンプス発症者は年間20-30万人。その他に、まったく症状が出ずに感染する不顕性感染者が6-9万人です。今回の調査回収率が64%で中には耳鼻科に罹らないケースもあるとすれば、ムンプス難聴の年間発症者は450人程度でしょうか。とすると、ムンプス発症者の0.15-0.23%(700-450人に1人)が難聴を発症する割合になりますので、過去の欧米の報告とも似通っています。両側難聴も6000人に1人が発症することになります。
 両側性で発症した人のほとんどが人工内耳や補聴器を使用しているとのことです。両側性のケースを、私は耳鼻科医として一度も経験していませんが、両側性で発症すれば急性に大きな物音も聞こえないほどの高度難聴になります。その多くは幼児ですので、家族の心労も大きなものとなります。予防接種を受けずに発症した方は接種を受けなかったことに後悔するとの話も伝わっています。ワクチン自体は無菌性髄膜炎が報告された当時からは大きく改良されておらず、接種を受けても10%は抗体がつかないともされますので、国は定期接種化にまだ慎重なのだと思います。
 ワクチンの定期接種化の費用が年間50億円程かかります。ワクチンを定期接種化することで得られるムンプス難聴やムンプスによる無菌性髄膜炎の後遺症の予防効果のメリットと、接種の副作用としての無菌性髄膜炎の発症率と年間費用のコストがかかることのデメリットと、どちらを優先するか? ムンプスのワクチンに限らず予防接種事業化の判断は実に難しいです。 
  28日   昨日お伝えしたアセトアミノフェンの供給問題ですが、当院で主に使用している錠剤(コカール錠200㎎)は国内で原薬が製造されているために供給は続くそうです。錠剤が服用できる年代の方は安心ですが、やはり小児用は供給が一時的にストップしそうです。

 愛媛国体総合開会式もいよいよ明後日です。今晩は行幸ルート沿線道路の放置自転車の移動や路肩の清燥が急ピッチで進められていました。
 ついに明日は、航空自衛隊ブルーインパルスの展示飛行の予行が行われます。ブルーインパルスは宮城県松島基地所属の第11飛行隊です。松島基地のジェット戦闘機の津波被害は記憶の方もおられると思います。飛行隊は恐らく今日には福岡県の瀬戸内海沿岸の築城(ついき)基地にスタンバイしているものと思われます。明日の予行は9時50分(天候によっては11時50分)に予定されています。国土交通省航空局航空情報センター(AISセンター)からの航空情報NOTAM(ノータム)によると、
 E)AIR DISPLAY BY BLUE IMPULSE:
  1.FLT AREA : WI A RADIUS OF 8NM OF 334605N1324751E
   (SOGO-UNDO-KOEN,UENO-CHO MATSUYAMA-SHI IN EHIME)
   ALT: 1500FT-5000FT AMSL
  2.HLDG AREA : AROUND AIRSPACE SW OF 334639N1322335E
   ALT: 3500FT AMSL
  3.USING ACFT: T4 X 6
  4.WX COND : VMC ONLY
  5.RMK : VFR ACFT FLYING AROUND ABV AREA CTC IWAKUNI APCH128.0MHZ
 F)1500FT AMSL
 G)5000FT AMSL
県営総合運動公園の上空、海抜457mから1520mで有視界飛行の展示飛行を行います。総合運動公園の海抜が50m程ですので、開会式上のわずか400m上空を轟音とともに駆け抜けることになりそうです。築城リモート岩国交信で、私の勝手な飛行ルート予測は、瀬戸内海から砥部に向かって西から東への飛行ですが、明日、東か西かどちらから雄姿を現すか?楽しみです!
 1964年の東京五輪の開会式では初代ブルーインパルスF-86がカラースモークで大きな五輪の輪を描きました。1988年の長野冬季五輪の開会式では会場上空で扇方に展開しました。当時のTVドキュメンタリーを見たことがありますが、山岳地帯を数秒の誤差もなく展示飛行した当日の緊張感がよく伝わりました。実はカラースモークは1998年に車に色が付いたとのトラブルから使用されていません。2020年の東京五輪に向けて航空自衛隊ではカラースモークの復活に向けての技術開発が行われています。2020年の開会式の展示飛行がどうなるか、開会式はこれだけでも楽しみです。愛媛国体の開会式次第は分単位で進行します。11時50分の開会宣言の直後にブルーインパルスが登場の予定です。少なくとも10秒単位での正確さが要求されそうです。運動公園上空で扇方に展開の後、石鎚連峰に向かって上昇する? 診察中の私はこれは録画で確認することにします。
 私の周りではブルーインパルスが来ることを知っている人は少ないようでした。松山上空で展示飛行が見られるのは今後数十年ありません。29日の予行は9時50分か11時50分、30日の本番は11時50分です。中予地方の方は轟音に気付いたら空を見上げてみて下さい。 
  27日   今年の運動会は国体開催の影響か、例年以上に9月後半に集中しています。幼稚園では10月後半の施設も多いようです。24日日曜日は株主総会集中日の如く運動会集中日の様相でした。24日が好天で良かったです。もうすぐ10月、私の気になるノーベル賞発表の季節です。2日の医学生理学賞から3日の物理学賞、4日の化学賞、6日の平和賞、9日の経済学賞と続きます。日本人の経済学賞、見てみたいです。

 解熱剤であるアセトアミノフェンが10月中旬には在庫不足となる、との連絡を受けました。和歌山の原薬メーカーの供給停止が続いているせいだそうです。製品の品質自体には問題はなく中国からの輸入原材料を申告してなかったのが問題とのことでした。6月に3週間の営業停止処分を受けて問題は解決していたと思っていたのですが、驚いています。まだ供給再開の目途は明らかになっていません。アセトアミノフェンは乳幼児や妊婦さんへの消炎鎮痛解熱剤の”これしかない”というようなお薬ですので、11月以降まで供給停止が続くと全国的にも大きな影響が出そうです。どのような背景で供給停止が続いているのか。報道では厚労省が原薬等登録原簿を変更登録するよう指示し、その薬事手続きが終了するまでの期間という事ですが、どうなるのでしょうか。 
  24日   先週後半に砥部町の小学校でインフルエンザが集団発生したとの情報がありました。当院を受診された砥部町在住の学生さんも含めて当院ではまだインフルは検出していませんが、9月からのインフルの新シーズン2017/2018シーズンは、全国的にもインフルの集団発生が早いようです。厚労省の9月15日の発表では定点あたり報告数総数は昨年同期の約3.5倍、保育所・幼稚園・学校での患者報告数は昨年同期の約5.7倍となり、A香港型、A2009年型、B型ともに検出されており今季は例年より流行が早まる傾向がみられるとのことです。A香港型、A2009年型、B型ともに検出されており千葉、東京、大阪、鳥取、島根、沖縄の9施設(幼稚園1・小学校5・中学校3)では学年・学級閉鎖も報告されています。当院でも例年より早めの集団発生が見られないか注意したいと思います。一昨日に国立感染研から発表となった昨シーズンの耐性株のサーベランスでは、タミフルと注射薬ラピアクタに対してはA2009年型の1.3%に耐性が見られたものの、A香港型、B型への耐性は検出されませんでした。吸入薬のリレンザ、イナビルへの耐性は全く見られませんでした。数年前には抗ウイルス薬への耐性化が心配されていたインフルですが、なぜか耐性株の増加は見られていません。よい方向の”なぜか”です。
  23日  朝夕はめっきりひんやりしてきました。来週には国体開催と行幸を迎えます。天皇皇后両陛下は松山空港に特別機で御着の後、県総合運動公園での開会式にご臨席され、県美術館、県武道館、道後温泉本館をご視察、お泊所は松山全日空ホテルです。県武道館の取り付け道路周辺などの整備も進んでいます。私もおかげで快適にドライブできます。国体開催を前にして、外環道空港線側道部が開通しました。市駅前の花園町通りの整備もほぼ完成です。老朽化していたアーケードが無くなり、電線が地中化され、遊歩道が広がり、東側のお店にはロープウェイ街のような庇状の天幕が設置されたことから、街歩きが楽しくなりそうです。早速今日は遊歩道で青空市が開かれていました。一昨日からは低床式の新型市内電車5000系も走り始めました。道後温泉別館の飛鳥の湯もまもなく開業です。市内随所が新しくなって、私の気分も一新です。市内中心部では紙垂(しで)の白い紙がたなびくようになりました。2週間後には地方祭です。


 当院から見える外環道の、伊予鉄郡中線上の高架部の夜景です。昔気質の私からすれば自動車専用道の街灯はオレンジ色のナトリウム灯の方が”らしかった”のですが、白色のLED灯でもちょっと都会気分になりました。開通後に心配していた当院前の県道の混雑化ですが、今のところ全くありません。(^^)

 夏に流行していたRSウイルス感染症ですが、8月末の週ではついに全国集計でも過去10年で最大の流行となりました。愛媛は全国で6番目に流行した県となり、定点当たり5.8人となり大流行とされる5人を上回っています。国立感染研の報告では、報告の99%が5才以下の小児となっています。医療保険上の制約があるために学童や成人では一般的に検査しないことから臨床の場で確定診断されることは少ないのですが、実態としては大人でも結構見られます。当院でもしかりです。お子さんと同時期に発症した上気道炎の多くがRSウイルスによるものと考えられます。大人では軽い上気道炎で終わることが多いのですが、時には顕著な扁桃炎やインフルエンザ様の発熱を来す場合もあります。RSウイルスには直接効く抗菌薬がありませんので成人のRSウイルス感染症では対処療法が主体となります。ただし、慢性副鼻腔炎や慢性扁桃炎、慢性気管支炎、気管支喘息、反復性の滲出性中耳炎など、もともと気道粘膜や咽頭の弱い体質の方の場合は、二次感染に注意しながら経過を診てゆきます。 
  16日  宮古島に大きな被害をもたらした台風18号が、明日17日の午前中に松山に最接近します。台風18号は東シナ海で急激に勢力を拡大しました。急に大ききなった台風の目にはびっくりしました。明日に予定されていた余土中学校の体育祭は18日に順延されました。明日の当院の日曜診療ですが、受診される方はくれぐれも足元にお気をつけ下さい。台風の風雨は要警戒ですが、わずかなメリットもないことはないです。節水制限の始まった徳島や香川の水源である早明浦ダムとっては恵みになりそうです。また、台風一過直後は、秋花粉も一服です。
  13日  18日敬老の日、いよいよ松山外環空港線側道部が開通します。国体では天皇皇后両陛下もお通りになります。県道と外環道の交差点までは当院からわずか200mです。開通により当院と国道56号線や松山ICとのアクセスが格段に良くなりることから、国道56号線沿いの松前町伊予市方面や空港方面から受診される場合の移動時間が短縮されます。さらに松山市南部や砥部町から受診される場合の時間短縮は劇的です。数日前には当院第二駐車場に隣接する街灯に交通量を自動測定する機器が臨時で取り付けられていました。昨年、外環インター線が井門ICから余戸南ICまで開通しして国道33号線と56号線がつながったことにより、松山市屈指の交通量である天山交差点を中心とする松山環状線の交通量が約1割減少しました。今回の外環空港線の開通で、環状線和泉交差点から空港通り方面の交通量は減ると思われますが、当院前の旧56号線(県道326号線)の交通量ははたしてどう変化するのでしょうか? 私には全く予想がつきません。開通後の連休明け、当院前の県道がスムースに流れているのか否か? 大いに気になります。 
  12日   先日の松山耳鼻咽喉科会で、愛媛FCチーフチームドクターを務める森実和樹氏によるドーピングに関する講演がありました。愛媛国体を前にして、一般医家に必要な知識を教えて頂きました。当院でもプロの選手や国体級の選手、国際試合に参加する選手を診察する機会もあります。今後の診察に役に立ちます。

 ドーピング薬の検索にはJADA(日本アンチドーピング機構)の検索サイトglobal DROが便利で市販薬についても調べることができます。
 注意すべき禁止薬剤としては、
1、ホルモン剤 
 ステロイド(副腎皮質ホルモン):内服、点滴を含む静注は不可、局所注射も避ける。皮膚・眼・鼻・耳・口腔内などへの外用薬は可。吸入は、フルタイド、キュバール、オルベスコ、パルミコート、アズマネックスは可。
 テストステロン(男性ホルモン)、成長ホルモン:筋肉増強作用があり不可。
 エリスロポエチン:酸素運搬能を高めるため不可。
2、β刺激剤
 気管支拡張薬だが交感神経興奮作用、筋肉増強作用があり内服、テープ剤など基本的に不可。例外で吸入薬のサルタノール、オーキシス、セレベント、吸入ステロイドと合剤のシンンビコート、フルティフォーム、アドエアは可。
 あらたにヒゲナミンが追加されたことから注意が必要である。植物から抽出されるβ刺激作用のある成分で、漢方の附子(当院の処方では八味地黄丸、麻黄附子細辛湯など)、丁子(SM酸、KM酸など)、細辛(小青竜湯、麻黄附子細辛湯など)、南天実、呉茱萸に含まれる。その他、キャベジや太田胃散、タケダ漢方胃腸薬、第一三共胃腸薬、宇津救命丸、薬用養命酒、エスタック鼻炎カプセル、プレコール鼻炎カプセルなど多くの市販薬がある。
3、エフェドリン類
 交感神経興奮作用があり不可。市販の総合感冒薬のほとんどに含まれる。漢方の麻黄、半夏にも含まれる。
4、サプリメント
 服用しないこと。JADA認定商品マークがあっても商品認可時にしか検査していないため服用しない方がよい。

 これらの薬剤を見ていると、赤ちゃん用の夜泣き疳の虫用の宇津救命丸もドーピング薬になったのにはびっくりです。宇津救命丸は1597年、秀吉の慶長の役の年に生まれました。丁子など8つの生薬が配合されています。赤ちゃん用で極少量含まれているだけなのでしょうが、やはり有効だからこそ歴史を乗り越えてきたのでしょう。ちなみに、歴史的な日本のお薬で今も使われていると言えば正露丸でしょう。強力な殺菌力を持つ劇薬クレオソートが含まれています。日露戦争当時はまだ原因が不明で、未知の感染症が原因として疑われていた脚気に対して有効と考えて日露戦争の戦役で使用したことから、当初の商品名は”征露丸”でした。劇薬であるために抗生物質の無い時代の感染性胃腸炎や虫歯によく効きました。成分は消毒薬クレゾールに類似したクレオソートで解毒剤のない劇薬ですので、過剰摂取は危険です。これも効くから歴史を乗り越えてきたのでしょう。 
  9日   愛媛県感染症情報センターの報告では、先週、ますますRSウイルス感染症が県下全域で増えています。過去10年間で2番目の多さですが、なにせお盆明けのこの時期、1年で一番風邪が流行しない時期での流行は異例中の異例です。夏の流行は果たしてどのような要因のせいなのでしょう。沖縄ではB型インフルエンザ同様、RSウイルス感染症も以前より夏に流行のピークを迎えています。本州も亜熱帯地域のような流行パターンになりつつあるのでしょうか。また、宇和島管内ではB型インフルエンザも4例報告されています。私もインフルの存在も念頭に置いて診察を進めたいと思います。
 8月5日のこのコーナーでも触れましたが、手足口病の病原ウイルスについて、愛媛県下からはコクサッキーウイルスA6型、コクサッキーウイルスA10型、エコーウイルス7型と3つのタイプが報告されています。当院でもお盆明けに、この夏だけで手足口病に2回罹ったお子様を診察しました。二度罹る方は少ないのですが、やはりあり得ます。

 この6月、厚労省の研究事業として行われた難治性腎疾患に関する調査研究班から「エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2017」が発表されました。IgA腎症は、検尿で見つかる血尿の1/3を占める代表的な腎疾患で、重症化すれば腎臓死=透析導入に至ります。耳鼻科医としての関心は、新しいガイドラインで口蓋扁桃摘出手術の位置づけがどうなったのかです。今回のガイドラインでは初めて扁桃摘出術についてしっかり記載されています。成人で、扁摘+ステロイドパルス療法も扁摘単独も共に推奨度は2C(弱く推奨(提案)し、推定に対する確信は限定的)、つまり治療選択肢として検討してもよい、とされました。薬物療法の、尿蛋白が多量に排出される重症例ではステロイドとRA系阻害薬のみがはっきり推奨され、軽症例ではステロイド、RA系阻害薬、抗血小板薬、n-3系脂肪酸ともに扁摘と同様の検討してもよいレベルとなっています。今後、IgA腎症に対する扁摘が増えることが予想されます。
 耳鼻科領域では1980年代から扁摘の有用性は認識されていたのですが、内科的な認知はなぜ今になってからなのでしょうか。その答えもこのガイドラインで判ります。IgA腎症に扁摘を行う論文は、21世紀になってから中国からの報告も出始めましたが、当初は日本からの報告がほとんどでした。1983年の岡山大と札幌医大の報告を初めとする耳鼻科からの報告では、比較となる対照群を置かずIgA腎症に何例有効だったという症例集積の報告しかないので、エビデンス(根拠証拠)レベルでは不十分でした。しかし1996年に扁摘+ステロイドを点滴で短期間に大量投与する治療法が腎臓内科分野から出され始めたことから、エビデンスレベルの高い論文が多くなったために比較検討が可能になったことで、今回のガイドラインで取り上げられることになったようです。ちなみに、海外のガイドラインではエビデンスが不十分なおとから現時点では施行しないことを推奨しています。本ガイドラインでの経緯を見ると、1980年代の日本の耳鼻科に見る目があったと言えるかも知れません。私もIgA腎症の患者様で埋没型扁桃のような慢性扁桃炎のある方には、これまでも、扁桃誘発試験を行ったり、患者様自身で腎臓内科の主治医の先生に扁摘の考えを聞いてみるようにアドバイスすることが多かったのですが、これからはこのガイドラインを根拠に、私からしっかりと紹介や相談をしたいと思います。

 今月の日本アレルギー学会誌にいかにも愛媛県的な論文が掲載されていたので紹介します。「温州みかんによる食物依存性運動誘発アナフィラキシーの1例 神奈川県立こども医療センターアレルギー科 田中 裕ほか」です。新たな知見であることから、論文として採択されています。運動で誘発されるアレルギー反応では、小麦による運動誘発喘息が有名ですが、私も柑橘類でアナフィラキシーまで進むケースがあることは意外でした。学会誌に”温州みかん”と出ていたので思わず注目してしまいました。(^^ゞ この症例は10才代女児ですが、複数回のアナフィラキシーでアドレナリン筋注も行っています。抗原の解析には、血清を用いたイムノブロット法というしっかりとした解析手法を用いており、柑橘類間の交叉抗原性と運動誘発を引き起こす未知の抗原の存在を推定しています。と、研究的な話はここまでで、私は柑橘類の分類も勉強になりました。柑橘類は、オレンジ類(オレンジ、ネーブルなど)、グレープフルーツ類、好酸柑橘類(柚子、カボス、スダチ、レモンなど)、雑柑類(夏ミカン、ハッサクなど)、タンゴール類(伊予柑、デコポンなど)、ミカン類(温州みかん、マンダリンオレンジなど)に分類されます。温州みかんの兄弟分だと思っていた伊予柑は実は違う系統だったんですね。

  鼻骨骨折整復固定術、後鼻孔ポリープ摘出術、咽頭乳頭腫焼灼術、Bスポット治療、唾液腺粘液嚢胞など。 

 
 今日のから愛媛国体の会期前実施競技の弓道が始まりました。愛媛国体のマスコットキャラクターは「みきゃん」です。写真右は松山空港のみかんによるシャンパンタワーです。愛媛のお土産はみかんづくしです。関東での愛媛のイメージは、ポンジュースのCMのせいでなんといってもみかんジュースだそうです。なんだか誇らしいような微妙なような、、です。
  3日   サッカーW杯、日本VSサウジアラビアは6日未明2時30分キックオフです。アウェーの試合ですが、なんとサウジでは「チケットをムハンマド王子がすべて買い上げ、自国サポーターにスタジアムを無料開放する」そうです。さすが産油国の王族です。スケールが違います。スタジアムで日本はこれまでにないアウェー感覚に陥いるでしょう。サウジの必死さも伝わります。つくづく日本は先のオーストラリア戦で本選出場を決められて、本当に本当に良かったです。私は録画で翌晩にゆっくり観戦することにしましょう。(^^)
 先月、「ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA」の書評で世界初の水爆実験キャッスル作戦について取り上げましたが、その威力は広島型原爆1.000個分の1.500キロトンでした。今日の北朝鮮の核事件について、先ほど、規模が推定70キロトンとの見方を小野寺防衛大臣が示しました。北朝鮮の水爆?は米国の初代よりもまだ規模は小さいものの、それでも広島型原爆16キロトンの4.5個分の威力はあります。先日の書評では、松山に米国第一号の水爆が落ちたとすれば新居浜までキノコ雲覆われる規模とお伝えしましたが、70キロトンでも松山市中心部に落とされれば道後平野は壊滅します。Jアラートの「直ちに頑丈な建物や地下に避難して下さい」ですが、ほとんど地下施設の無い松山では、、想像もしたくありませんが、現実はレッドラインに近づいています。(*後に140キロトンと推定されると新たに報道されました)

 子供への医療費の公的補助に対して、日経新聞が警告を発しています。自治体が歯止めのない補助競争を行っていると指摘しています。入院費では中高校生まで対象とする自治体が全自治体の9割を越え、一部は大学生にも対象を広げています。通院医療費でも中学生以上を補助する自治体が8割、高校生まで補助する自治体も2割に達します。公的補助はこの10年で一気に拡大しました。新聞によれば、優遇範囲拡大の震源は東京23区とのことで、07年に都が都内自治体を対象に15歳まで医療費を助成する制度を導入したのをきっかけに独自に上乗せする形で無料化が広がり08年度には23区すべてで無料に、さらに千代田区が11年度に大都市圏の自治体で初めて18才まで無料化したそうです。地方への波及も加速しており北海道南富良野町は11年、22歳までの学生に対象を拡大しています。松山市では現在、入院費では中学生まで、通院医療費では就学前までとしています。松山市のような補助は就学前までの自治体は全自治体の11.6%しかありません。もちろん私も医療費の負担を気にしなくてよければ、薬価は高いけど新しい便利なお薬を選択したり、十分に病状を把握するためとして検査を積極的に行えます。便利で患者様の利益になるのは間違いないのですが、やはり国の財政を考えると、医師は”コスト感覚のない医療”を行い、患者は”コスト感覚のない受診”を行う傾向がでてしまいます。
 自治体の補助競争の果てに、全国町村会が医療費補助部分に国の財政支援強化を求め始めています。補助拡大が自治体財政を圧迫しているのが理由ですが、新聞はこの補助自体が本来、市町村の自助努力として始まった仕組みであることから過剰サービスへの力添えを国に求めるのは本末転倒と批判しています。自己負担分を自治体が補助しても、医療費の残りは国の税金や企業の健康保険組合などの保険料で賄っていることから、過剰受診が増えれば国や健保財政も圧迫します。医療費の公的補助は自治体の意向だけで決めるのではなく国レベルで制御すべき時期と主張しています。私も、自治省が自治体にふるさと納税の過剰な返礼品について指導したように、子供医療費の補助についても財政の観点から厚労省や財務省が指導してもいい時期に来ていると思います。
  2日   今日は医療とは全く関係ないのですが、、 一昨日のサッカーの日本対オーストラリア戦ですが、私は戦術など語れる知識はないのですが、これまでで見た日本代表の試合の中でも一番凄く感じました。背の高い相手がボールを回すところに果敢に近寄りボールを奪っていました。ディフェンスも見事でした。一昨日のオーストラリアの試合運びは、ボールを回してもゴールできないひと頃の日本代表を見ているようでした。試合から1日経って語ったハリルホジッチ監督の会見の全文があります。義姉の健康状態を押しての指揮だったようですが、戦術や選手の操縦術についても語っています。全文を読むと新聞報道では得られないものが見えてきました。切れる指揮官の片鱗が伺い知れます。ハリル監督は会見でこう述べました。「今現在のチームの状況では、ワールドカップでは結果を残せません。でも8カ月後、それは変わっているかもしれません。」 先日私は、W杯に出られればグループステージ敗退でもいいやと思いましたが、ハリル監督の言葉を聴けば、何かやってくれそうな期待が膨らんできました。!(^^)! 
  【全文】緊急会見のハリル監督が日本への愛情を語る「私から辞めることはない」 へ 
9月  1日   9月になりました。残暑、クーラーの冷え、朝の冷え込み、秋雨前線や台風による大きな気圧の変化、子供達は運動会の練習疲れ、ダニの死骸や糞が増えて最もハウスダストによるアレルゲンが多い時期である、など、耳鼻科にとっては体調を崩す人が最も多い月です。秋の花粉症を感じる方も少しづつ目立ってきました。秋花粉の飛散時期をまとめてみると、イネ科の飛散がお盆明けから10月いっぱいまで、キク科のヨモギが9月10日頃から10月中旬まで、花粉粒子が大きく刺激の強いキク科のブタクサ花粉が9月20日頃かたら10月中旬までです。雑草花粉はスギよりも大きいために刺激が強い傾向にあります。秋花粉症の方で、公園や草むら、あぜ道に近づく機会のある方は要注意です。

 9月、当院近隣では大きなイベントが控えています。9月18日、松山外環状道路空港線がいよいよ松山空港まで伸延します。当院からも高架を走る車を間近で見ることになります。いやー、都会っぽくなります。9月26日、道後温泉の別館、飛鳥乃湯がオープンします。「女性一人旅で行きたい温泉地全国ランキングトップ」の道後道後の温泉風情がまた高まります。9月9日の会期前実施競技から始まり9月30日の開会式から10月10日の閉会式まで愛媛国体の開催です。国体不要論も聞かれますが、参加人員延べ24万人は毎年開催されている行事ではやはり我が国最大のイベントです。私も初めて経験します。私はほとんどのスポーツがテレビ観戦ですので、この機会に生観戦にもチャレンジしてみます。手元の市の広報紙をみると、水球、テニス、自転車、ゴルフ、体操、柔道、ボウリング、ハンドボール、高校野球は水曜午後か祝日を利用して観戦できそうです。この内の一つか二つは出来れば会場に行ってみたいです。また、9月30日の国体開会式では航空自衛隊ブルーインパルスの展示飛行が行われます! 9月30日土曜日の13時50分頃、県総合運動公園の上空を飛行します。前日の午前にも予行飛行が予定されています。私は以前、岩国の航空祭で一度だけブルーインパルスのスモークたなびくアクロバット飛行を見たことがあります。道後平野で曲技飛行が見られるなんて強熱です! 当院からは総合運動公園方面となる道後平野の南が広く見渡せます。東から来るか?西から来るか? ジェット戦闘機の轟音が聞こえたら、しばし数分間、恐らく1分以内でしょうか? あっという間に過ぎ去ると思いますが、診察の手を止めて、子供達や患者様とともに雄姿を見たいです。 
     
  31日   8月最終日、夏休みも終わりです。今日の午後は特に学生さんの受診が少なかったです。夏休みの午後診、実は当院ではスタッフが順番で、少し早めに仕事を切り上げていました。スタッフの英気も養われたと思います。私も時に診察の合間に時間が開いて、おかげでちょっとした大工仕事などの雑用も出来ました。私も冬に向かって英気を養うことが出来ました。

 サッカー日本代表 ロシアW杯出場決定 おめでとう!! 私はいまだにドーハの悲劇の、あれっ、ロスタイムも終わりだけどひょっとして負けたの? を鮮明に覚えています。私のマイナス思考が悪いのか、日本人はいざという時に弱いイメージがある上に、今回の最終予選でも日本の初戦負けで予選敗退のジンクスも頭から離れず、今日の試合も無意識に”期待せずに”テレビ観戦していました。1点リードの後半はひやひやして見ていられませんでした。私としては珍しく、後半37分の井手口選手のゴールでは思わず声を挙げてしまいました。来年6月14日開催のロシアの本選、日本のグループステージ敗退でも私は本望です。(^^ゞ 
  29日   8月も今日を入れてあと3日、昼間は猛暑でしたが、診察が終わる時間には外はもう真っ暗でした。夕方の雀のさえずりに続いて、夕闇の中で虫の音も聞こえてきました。空を見れば上弦の月でした。秋の月はとても美しく私は大好きです。心が洗われます。 
 一方、東日本では早朝のJアラートで大変でした。今回の警報が太平の眠りを覚ますことになるのでしょうか。先日このページでも触れましたが、米国が行った世界初の水爆実験でさえ松山市が爆心だとすれば新居浜までキノコ雲で覆われます。もう少し威力のある水爆ならば伊方原発もキノコ雲に覆われます。もし格納容器ごとメルトダウンすれば西日本では数十年間人が住めなくなります。小松左京氏の「日本沈没」を思い出しました。映画版とは違い小説では、国民を国外に避難させるための政府や政治家の危機対応を細かく描いています。皇室はスイスに移住、国外に脱出できた国民6500万人の内で世界が正式に受け入れたのは3000万人、それも大半が移民ではなく難民としてです。私が中学生の頃に読んだ作品に妙にリアリティーを感じて空恐ろしくなります。
 夏休みも後わずか。今週に入り学生さんの来院がめっきり減りました。小学生の皆さん、夏休みの宿題は出来たでしょうか。(^^♪ 
 さすがに風邪に罹る方は少なくなりましたが、いまだに小さなお子さんの間ではRSウイルス感染症が目立っています。お父さん、お母さんがうつされて発症するケースも目立ちます。お盆明けなのに12月上旬みたいな当院外来です。
 31日にはいよいよサッカー日本代表のアジア最終予選オーストラリア戦です。この試合で勝つと引き分けでは大違いです。落ち着いて見れそうにありません。 
  23日   今年の夏は、手足口病の流行が長引き、RSウイルスが夏に流行したこともあって、夏休み中盤まで熱の出るお子様が目立っていましたが、一昨日の午後からは一気に来院される方が減りました。当院もようやく夏休みモードです。しかしながら今週松山でインフルエンザが発生しているとの情報もあります。少し注意しておきます。

 今日は薬剤依存症と小児中耳炎の話を取り上げます。

 睡眠薬や精神安定剤であるマイナートランキライザーの中心となる薬剤はベンゾジアゼピン系(BZD)薬です。1960年に最初の薬剤が開発された後、同系統の薬剤が多数開発されました。日本でも多く処方されており、耳鼻科領域でも耳鳴症やめまい、咽喉頭異常感症などで広く使用されています。ここ15年程で世界的にもBZDへの依存症が注目されるようになりました。英国の医学雑誌(N Eng J Med)に掲載された総説を紹介します。BZDはわずか1ヶ月の使用で半数が依存症になります。短時間で効き始める薬剤ほど依存性が高くなります。耳鼻科関連ではBZDは睡眠時無呼吸や慢性肺疾患での使用は禁止です。依存症の離脱症状が、短時間作用薬で休薬後2~3日で、長時間作動薬で5~10日で出てきます。離脱症状としては痙攣が最も一般的で、聴覚過敏や羞明(眩しく感じる)がBZDの離脱症状に特徴的です。このことから、聴覚過敏の人を診察した場合にはBZD服用歴があるかどうかの確認も行いたいと思います。BZDの作用には、抗不安作用や催眠作用以外にも筋弛緩作用、抗痙攣作用、健忘作用もあります。BZDが高齢者の転倒や交通事故にも影響しているとの指摘もありました。
 我が国ではBZDの依存症に注意しなければいけませんが、米国では現在、オピオイドの依存症が大きな社会問題になっています。先週の日経新聞土曜版の1面特集では米労働市場への影響が特集されていました。オピオイドはアヘンと同じケシ由来の化合物から作られる麻薬などで、モルヒネやヘロインを含みます。米国では90年代に医療用鎮痛剤として普及しました。同新聞では米国の25~54才の労働参加率は90年代初頭の93%から16年には88%台に落ちています。その間、日本は97%から96%にわずかに減っているだけです。米国の低迷は日米欧5ヵ国の中でも際立っています。その主因と見られているのが米国でのオピオイドの蔓延です。米疾病対策センターによると、2015年の過剰服用による死者数は3万3千人で00年の4倍、同じく15年の調査では12才以上の米国民の36%9750万人が直近1年でオピオイド系の医療用鎮痛剤を服薬し、その内の1250万人が不正使用、203万人が依存症とされました。働き世代なのに労働力でない男性の半分弱が鎮痛剤を日常的に服用し、その3分の2がオピオイドなどの医療用鎮痛剤でした。トランプ大統領は今月10日にオピオイド依存症の問題で国家非常事態を宣言する用意があると表明しています。BZDよりも深刻な依存症が米国で進行しているのです。幸い日本ではオピオイドは主に癌性疼痛の治療薬で、その処方や管理は厳しく規制されています。日本でもBZDの闇取引はニュースになったこともありましたが、オピオイドの依存症はまだ顕在化していません。日本でオピオイドの違法使用が蔓延しないよう厚労省には、医療用薬剤のこれまで通りの厳格な管理と違法薬剤の国内への入り込みの摘発を続けてもらいたいです。

 小児中耳炎関連の話題では、肺炎球菌ワクチン導入の影響の研究が、米国でも慶応大と同様に行われています。米ロチェスター総合病院研究所の発表では、小児の急性中耳炎が大幅に減少ました。ワクチン導入前の1989年の研究では、3才までに80%が1回以上中耳炎にかかり3回以上が40%でしたが、ワクチン導入で1回以上かかった例が60%に3回以上が24%にと目に見えて減っています。しかし、肺炎球菌以外のインフルエンザ菌やモラキセラ菌によるものが起炎菌として増えていることから、これまでの治療指針のペニシリン系抗生剤アモキシリンをファーストチョイスのではなく、アモキシリンとクラブロン酸の合剤またはセフェム系のメイアクトを使用する頻度が増えたそうです。当院でも炎症反応が強い肺炎球菌が起炎菌の中耳炎が減り、その代わりに遷延化して治りにくいインフルエンザ菌やモラキセラ菌によるものが増えた印象があります。このため、鼓膜の腫脹などの反応が強い中耳炎が減ったことで、外科的治療である鼓膜切開に頼るケースも減ってきているものと思われます。
 また、米国小児科学会の論文では、テキサス大が0才児を1年間モニターしたところ、やはり80年代や90年代より中耳炎の発生率は減ってきています。発症のリスクとして、頻回の上気道感染症の罹患、母乳保育の不足、たばこへの暴露の関与が認められました。この論文では、乳児の中耳炎発症率が低下した理由として、母乳保育の増加や喫煙率の減少、小児呼吸器感染症を起こす細菌やウイルスに対するワクチンの普及によるものと考えています。私は母乳保育が中耳炎予防に良いとの直接的な論文は初めて目にしました。興味深かったです。
 さらに、米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会議が小児滲出性中耳炎診療ガイドラインの改訂版を出しました。これは2004年に同会議と米国小児科学会が共同で作成したガイドラインの13年振りの改訂版です。このガイドラインの主な改訂内容は、診断を確実にするために気密耳鏡検査法とティンパノメトリーを行うべきとしています。気密耳鏡検査というのは日本では「ブリューニングの拡大耳鏡」を使って鼓膜を見る検査の事です。外耳道を密閉するような形の耳鏡の横からゴム球を使って外耳道に陰圧陽圧を掛けて鼓膜の可動性を見るものです。顕微鏡や気密耳鏡を用いるのはやはり耳鼻科医が主流です。この指針の意味は、米国の家庭医は耳鼻科専門医並みにしっかり鼓膜所見を取りなさいということですので、耳鼻科医としては大いに支持できる改定です。さらに改訂版では、鼓室内チューブ留置術を最も有効な治療法として位置付けています。滲出性中耳炎を診たら3ヵ月保存的に経過観察(watchful waiting)した後のチューブ留置を推奨しています。今後、我が国でもこの流れに沿ってより積極的にチューブを留置する症例数が増えるかもしれません。米国の耳鼻科の話がでたついでのよもやま話ですが、現在の米国では研修医が研修終了後に専攻する進路の難易度は、心臓外科や脳外科の偏差値が高いのではなく、1.皮膚科、2.耳鼻咽喉科頭頸部外科、3.美容外科の順に人気が高いとのデータを見たことがあります。耳鼻科は米国では難関専攻科です! 
 私はよく診療ガイドラインを取り上げますが、それは医療の現場でおおいに役立つからです。そんなガイドラインを集めたサイトが開設されています。EBM普及推進事業Minds(マインズ)が、各科のガイドラインを広く公表しています。私にとっては便利なサイトです。厚生労働科学研究費補助金により財団法人日本医療機能評価機構が運営するという、おもいっきり公的なサイトです。専門的なガイドライン以外にも、一般の方向けに判りやすく解説した「ガイドライン解説」も多数公開されていますので、一般の方もこのサイトでさまざまな病気の現在の医療水準や治療方針が分かることから参考になると思います。 Minds ガイドラインライブラリ へ 

 初めてオフィスのレンタルサービスを利用しました。コニカミノルタの関連会社として始まった、キンコーズの松山千舟町店です。昨年3月に開店しています。四国では1号店です。中待合に掲示してある「診察時のお子様の介助の仕方」の写真ポスターですが、10年以上前から掲示していたこともあり、ラミネートしていても退色して古臭くなっていました。どうにかせねばと思ってキンコーズを日焼けしたポスターを持って訪ねてみると、A2版の大きなポスターもしっかりスキャンの上、PDF&JPEGにファイル化してくれました。これを自分でワードに落として文章も少し改変、コンビニのカラーコピー機で拡大すると、新品のポスターの完成です。いやー、感激しました。便利です。キンコーズでは、商業用の大きなポスター製作や製本も行っています。名刺の原本を持っていけばその場で名刺も複製してくれます。都会のオフィス街ではお馴染みのサービスかも知れませんが、私にとっては新鮮でした。
 お子様を診る際には、保護者の方の協力がかかせません。お母様方も小児科の診察には慣れていますが、耳鼻科の介助のしかたはちょっと違います。耳をよく見るために、保護者の方にお子様の手をおへその前で抑えて頂くことにより、お子様の肩が下がってもらいたいのです。この体位を写した一目瞭然の写真をこれまでは中待合にのみ掲示していたのですが、今回2部作成しましたので、診察椅子から見える壁にも新たに掲示したいと思います。ちょうど、のど(喉頭)を診るための姿勢の取り方を図示したポスターの横に掲示したいと思います。以前、耳鼻咽喉科医会から配布されたポスターを参考にして、当院のポスターにはこんな説明を加えています。「お子さんは、正面向きで、手をおへその位置で抱えて、肩が下がるように、しっかりと、やさしく抱いてください。診察はすぐに終わります。小さなお子さんは、お母さん・お父さんのやさしさが、いちばんの励みです」 診察がスムースになればと期待しています。

  心因性難聴、真珠腫性中耳炎、耳下腺腫瘍など。
  21日   今日はほのぼのと。
 ある急性中耳炎の小さな男の子の耳に点耳液を入れたところ、、「溺れるーー」。ある小さな女の子がジーっという音のするのどの吸入を始めると、、「やかましいーー」。 ある男の子が吸入しながら前方のパネルの中から写真を見つけて、、「アッ、アンパンマン列車!」。 診察中のある女の子が額帯鏡の光が天井で回るのを見つけて、思わず手を伸ばして私が診察器具を落としてしまいました。すいません、小さな子たちは必死ですが、予期せぬ言動には思わず力が抜けてしまいます。
 「松山千春さん、遅延の飛行機内で「大空と大地の中で」熱唱 ネットで「神対応」と称賛、全日空も感謝」とのニュースがありました。札幌発伊丹行きの出発がトラブルで1時間遅れ、イライラが募った機内に乗り合わせていた松山さんが、機長の許可を得て機内アナウンス用のインターホンを通して歌いました。CAのアナウンスだけでも旅情をそそるのに、生歌の「大空と大地の中で」はしびれます。実は当院の診察室では時々、BGMでANAの「another sky」が流れているのをお気付きの方もおられるのではないでしょうか。 葉加瀬太郎氏作曲のこの曲は、搭乗時と降機時に流れています。きっとこの機内でも松山さんが歌う前にはこの曲が延々流れていたのでしょうね。 YouTube 「ANA B787 Another Sky」へ   
  20日   夏の甲子園3回戦 済美7-12盛岡大付 でした。私はダイジェストで見ましたが、史上初の1試合2本の満塁ホームランあり、白熱の試合でした。済美ナインにはお疲れ様と言いたいです。今日は雲一つない晴天です。青空も澄んでいます。秋の訪れを予感します。今日は延期になった三津浜花火大会が開催されます。例年より澄んだ空で、花火と星空のコントラストが楽しめそうです。

 お盆も終わり、学生さんはそろそろ宿題の消化ペースが気になる頃ですね。一昨日お盆前の感染症情報が発表されましたが、RSウイルス感染症が引き続き大流行です。当院では入院していた赤ちゃんから両親がうつされたケースもありました。

 現在は12才以上にしか使用できないダニの舌下免疫療法薬のミティキュア、アシテアダニですが、ともに5才以上の小児への適応の拡大を厚労省に申請中です。来春には結論が出て、問題がなければ承認される見込みです。幼児や小学生の鼻腔は狭く扁桃組織の影響もありアレルギーによる鼻粘膜の反応が大人よりも強い印象があります。成長期のダニの抗体が増えつつある段階で舌下免疫療法を行た場合、効果が成人よりも高いのか否か? 副反応の出現率はどうなのか? データに興味があります。承認時に発表される12才未満の小児への舌下免疫療法の効果と安全性の報告には注目したいと思います。

  急性喉頭蓋炎、良性発作性頭位幻暈症など。 
  15日   夏の甲子園、愛媛代表の済美高校が2勝、好発進です。現登録メンバー18名中愛媛出身は12名、当院近隣ではレギュラーの吉岡秀太朗外野手が垣生中出身、亀岡京平内野手が伊予市港南中出身です。がんばれ!吉岡君、亀岡君。

 遅くなりましたが、先の日耳鼻総会の私の忘備録を挙げておきます。日耳鼻総会と専門医講習会の出席でどうにか今年度、耳鼻咽喉科専門医の更新が出来ました。新専門医制度では、以前にもまして学会の講習会への参加が義務付けられています。次回の更新は5年後です。診療との折り合いをつけながら、学会に出席していこうと思います。今年はさらに気管食道科認定医の更新年度にも当たっています。気管食道科認定医はメジャーの専門医制度からは外れていますが、私にとっては大事な資格です。日本気管食道科学会にも出席しなければいけません。

平衡:
・内リンパの吸収産生には水代謝が関与し、内リンパ嚢で吸収される
・音響外傷では強大音により血管条の血管が攣縮し、虚血再灌流によりフリーラジカルが過剰に生じる
・メニエール病発作の本態は、慢性内リンパ吸収機能低下に急性水代謝障害が加わり起こる
・両側前庭障害は有病率28人/10万人とまれ
・VEMP(Vesutibular Evoked Myogenic Potential):胸鎖乳突筋で記録するcVEMPで球形嚢機能を、下眼瞼で記録するoVEMPで卵形嚢機能を評価
・外側半規管型BPPVの半規管結石症では方向交代性下向性眼振、クプラ結石症では方向交代性上向性眼振
・片頭痛関連めまい-5-15%、心因性めまいが5-30%
・3テスラMRIで造影剤注入後4時間後の内リンパ水腫描出

顔面神経:
・水痘帯状疱疹ウイルスVZVのVZV岡株ワクチンによりHunt症候群の罹患頻度の減少が期待される
・後遺症治療にボツリヌス毒素の局注、神経再生誘導チューブ(ナーブリッジ)の応用
・顔面神経麻痺診療の手引き:作成して6年経過、完全麻痺患者での顔面神経減価術の推奨度はC(行うよう考慮してよいが十分な科学的根拠なし)

鼻副鼻腔:
・嗅覚障害は人口の1%とされてきたが、米国では40才以上の23%、80才以上の32%との報告あり。嗅神経性の感冒後嗅覚障害には神経成長因子を誘導する当帰芍薬散が導入され、連日においを嗅ぐことで神経の軸索伸長とシナプス再形成を促進する嗅覚刺激療法で改善率は70-80%となった。中枢性の外傷性嗅覚障害の改善率は50%。
・鼻腔機能のバイオマーカーとしての呼気中NO濃度(FeNO)-下鼻甲介表面のNOは鼻アレルギー群で有意に高値
・嗅覚障害診療ガイドライン公開間近-基準嗅覚検査が行えない施設でも診断できるよう作成
・ENT-DBI副鼻腔炎治療用カテーテル

咽喉頭:
・嚥下障害;フードテストで、早期咽頭流入、嚥下反射惹起のタイミング、咽頭残留の有無、喉頭流入や誤嚥の有無を見る。兵頭スコア軽症0-4点では一口量の一定化、一口一嚥。中等症5-8点、経口摂取指導(嚥下訓練、摂食体位、食事介助法、食材の粘液調整法、補助栄養指導。重症9-12点、摂取中止指示と代替栄養の検討、誤嚥防止指導
・唾石症:内視鏡下摘出は顎下腺で直径5㎜以下、それ以上では口内法併用

頭頸部:
・DNAウイルスのヒトパピローマウイルス(HPV)は中咽頭癌、EBウイルスは上咽頭癌、鼻性NK/Tリンパ腫と関連
・咽喉頭癌への経口ロボット支援手術(TORS)

診療一般:
・電子カルテの音声認識ソフト:子供の泣き声で認識不能に
小児の免疫系異常IgG2低下児に生ワクチン接種後の免疫グロブリン製剤大量療法
・指定難病;シェーグレン症候群、IgG4関連ミクリッツ病、好酸球性副鼻腔炎、若年発症型両側性感音難聴 
  12日  当院は今日からお盆休みを頂いています。当院では例年13日~16日の4日間お休みを頂いていますが、昨年から11日に山の日の祝日が新設されたせいで、12日は患者様が混み合うこととなりました。お待ち頂いた患者様にはご協力ありがとうございました。実は当日、花瓶の水で電話機の親機が不調になっていたこともあり、いつもより緊張して診察を始めたのですが、子機の無い予備の電話機でなんとか診察が滞りなく終わってホッとしました。終わった時点で休診の留守電を入れようと親機の電源を入れたところ、なんと朝は直ってなかった親機が順調に作動するではありませんか。自然乾燥で直りました!
 12日に発表になった愛媛県感染症情報センターのデータでは、RSウイルス感染症が前週よりもさらに増えていました。例年の流行のピーク12月の定点当たりの報告が2名のところが3.2名にまで増えていました。冬に流行するイメージのあるRSウイルスがこんなに流行するとは。先日ある総合病院小児科に患児を紹介したところ、現時点ではベッドの空きがありませんとの返事をもらったことから他の総合病院に紹介したケースがありました。このお盆休み、入院施設のある小児科は大変だと思います。RSウイルス以外にも、ヒト・メタニューモウイスル、アデノウイスル、溶連菌、手足口病、ヘルパンギーナ、様々な感染症のお子様を診ることになりました。細菌性中耳炎の悪化や喉頭炎で発熱したお子さんも見られました。お盆前にこれだけ熱発の小児が集中したのも記憶にありません。保護者の方には、発熱は〇日程度は仕方がないけど、こんな症状には注意して下さいとお伝えしていました。お盆休みの間、来院された子供達の病状経過が落ちついていることを祈っています。

 昨日、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備え、陸上自衛隊松山駐屯地に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備されました。松山と北朝鮮の間には韓国があるので、ミサイルの打上げ失敗で同胞の韓国への誤着を考えると松山はミサイルの標的になり難いと勝手に想像していたのですが、極東の地図を見ると違いました。北朝鮮東部からグアムに向かって発射すれば、韓国を避けて打ち上げることが可能です。確かに愛媛も飛行ルート上になります。冷戦終結の平和ボケに冷や水です。
 そんな状況に、たまたまピッタリの本を数日前から読んでいました。ここのところ、図書館の新着本コーナーで偶然見つける本に衝撃を受け続けています。アニー・ジェイコブセン著「ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA]です。日本では翻訳本が今年4月に出版されました。
 アメリカ国防総省の最先端の軍事研究を行う国防高等研究計画局DARPA(ダーパ)は、1958年の創設以来、インターネット、GPS、ステルス機、ドローン、暗視装置、レーザー、軽量ライフル銃はじめ多くの革新的技術を生み出してきました。本書は軍事機密のベールに包まれているこの組織の実態にせまる史上初めてのノンフィクション作品で、米国では2016年度のピューリッツアー賞ヒストリー部門の最終選考作品になっています。軍事技術からみた戦後国際政治史の本とも言えます。冷戦後の核開発競争、べトコン(ゲリラ)と戦うベトナム戦争、ハイテク兵器による戦争となった湾岸戦争とイラク戦争、9.11などテロとの戦いの軍事史です。またミリタリーだけでなく戦後の科学技術史の本ともいえます。IBMやマイクロソフト、アップル、グーグルなどの民間企業の技術史には触れる機会は沢山ありますが、民間に転用されたものも含めてこれだけ多くの軍事技術を1冊の本で読めるとは思いませんでした。およそ10ページにひとつくらいのペースで、数々の衝撃のエピソードを知ることになりました。2010年公開の映画、イラク戦争中の即席爆発装置IEDの米軍処理班を描いた「ハートロッカー」や、今年1月公開のアメリカ国家安全保障局の盗聴記録を公表しロシアに亡命中のスノーデン氏を描いた映画「スノーデン」の技術のルーツはみなDARPAが開発しています。映画の背景の理解が深まること請け合いです。
 本書は1954年の世界初の水爆実験のルポから始まります。水爆開発の技術者がDARPAの基礎を作っていたのです。原爆の開発史は知っていましたが、水爆の開発史は知らなかった私は最初から知的好奇心で引き込まれました。ビキニ環礁で行われた水爆の爆発は当初予想された6メガトンではなく15メガトンでした。実は実験前までは、100万分の1の確率で地球の大気に引火する可能性も否定されておらず、科学者の中には世界が終わるかどうかの賭けをしていたものもありました。爆発後の閃光が収まった60秒後のキノコ雲の幅は65㎞、最終的には傘の直径は113㎞まで達しました。松山がグランドゼロならば新居浜までキノコ雲に覆われたことになります。想定以上の爆発かつ風向きが実験前の気象予報と違ったために、爆心から30㎞に設置された最も近い観測点の科学者たちは一瞬死を覚悟し、警告のない海域で操業していた日本の第5福竜丸が被爆、後に無線長の久保山愛吉氏が死亡、また2日後には爆心から480㎞離れたロンゲラップ等の環礁の住民を避難させなければなりませんでした。この爆弾の設計には、後にDARPAに加わる数学者のノイマンが関わりました。ノイマンはコンピューターソフトの原理を作ったことが一番有名ですが、実は原爆開発のマンハッタン計画にも参加しており、広島長崎の原爆がどの高度で爆発したら最も殺傷能力が高いかの計算を行い、結果高度550mでの爆発が設定されました。
 1957年10月、ソ連が史上初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功。実はスプートニクは大陸間弾道ミサイルICBMの技術で打ち上げられてたために、米政府は核攻撃の面でも大きなショックを受けました。ドイツのV2ロケットを始めとしてロケット技術はつまるところ軍事技術そのものです。このわずか5週後、アイゼンハワー大統領はDARPAの前身であるARPAの設立を許可しました。アイゼンハワーは当時陸軍と空軍がICBMの製造を競い合っている非効率性にいらついており、各軍の上部組織としての研究機関を設立することになったのです。その後、キューバ危機時に実は米国が2発、ソ連が2発、大気圏外核実験を行っています。この事実も本書が初めて明らかにしました。大気圏外で核爆発を起こすことによってICBMの被弾を食い止めるクリストフィロス効果の実験のためでした。もしこの時の核実験を他方の国が実際のICBM発射だと誤認していたら、本当の核戦争が起こってたかもしれません。本書はNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)の開発初期に月の影響で誤作動が起こり、フルシチョフ共産党第一書記が当時ニューヨークに滞在していたこともあって人間の判断でICBMの発射でないことを確認したエピソードも伝えています。その後、9.11テロ後に米国が最も恐れていたのは生物兵器によるテロでした。いまだに犯人は分かっていませんがワシントンでの炭疽菌汚染も同時期起こっていました。10月にホワイトハウスでは、DARPAが開発した誤作動しないとされていたバイオ兵器の警報装置であるボツリヌス毒素のセンサーが警報を発しました。ボツリヌス毒素はわずか1gで100万人を殺すことができる毒素です。実はセンサーの誤作動だったのですが、翌日まで誤作動かどうか判明できなかったため、ブッシュ大統領が翌日に死亡するかもしれない恐怖を味わっています。このような科学技術史の秘話が満載で、戦後の国際政治や科学技術が好きな私は、もう読むのを止められませんでした。
 DARPAでは、幾人ものノーベル賞を受賞した科学者が守秘契約のもとで研究に協力しました。国の頭脳が軍事力を進化させることがシステムとして確立されていました。軍産連携をよしとはしませんが、今の米国がインターネットをはじめとする軍事技術を基に、技術の分野で世界的な覇権を得て、ひいては政治的な覇権を得ている実態を見ると、日本が今後どのような科学立国を目指せば世界に伍していけるのか複雑な気持ちになります。また、この本では技術的なエピソードだけでなく、科学者の引き抜きや官僚の人事面での抗争や、ダラス委員会などの軍産複合体の予算獲得競争も描いています。予算獲得の欲と軍事技術の進歩がリンクしている怖さも判ります。
 湾岸戦争以降を記した本書の後半では、機密解除された公文書や関係者からのインタヴューを基にこれでもかと新しい技術の一端を紹介します。すさまじいスピードで軍事技術が進歩している様に怖さを覚えました。戦士を不眠不休化し痛みを感じなくするなどの精神へ作用する薬剤、昆虫サイボーグやトンボ並みに小さい超小型ドローンによる軍事行動、スノーデンが明らかにしたような自国民のメールや電話の会話すらたちどころに検索できるシステム、イラクやアフガニスタンの成人男性の顔認証ファイル化などの巨大な監視システム(現在米国に入国するには通関時に写真を撮られますが、当然すべてファイル化されていると思われます)、殺人ロボット、恐怖という感情のない世界、人間の脳にセンサーを挿入して思考するだけで機能するコンピューター(脳性麻痺の人がシュミレーターで飛行機を操縦する実例が本書で紹介されています)など、SFの世界が既に実現していることに驚かされます。
 医療者としての私にとって特に興味深かったエピソードを挙げれば、ソ連では秘密裏に生物兵器の研究開発がソ連邦崩壊まで続きその代表的な科学者が米国に亡命してさらに研究を進めたこと、ベトナム戦争でDARPAの開発した枯草剤のオレンジ剤を兵士の兵站などの農業へ作用する薬であって生物兵器ではないということにしてケネディー大統領が承認したこと、今も生物兵器の研究は粛々と進められていること、などです。例えば、エボラウイルスと麻疹の伝染性を組み合わせて治療が困難になるよう変化し続ける病原菌を作る、遺伝子組み換え技術で作成した細胞内に入って増殖するベクターを使って当初は症状が出ず長期間潜伏するステルスウイルスを作る、このような研究がたやすいことを元亡命者の科学者が指摘しています。遺伝子組み換えなどの先端技術を駆使して人為的に猛毒の病原体を作る、これには当然相手国には解毒剤はありません。なんだか、乱用にともなう抗菌剤の耐性化問題が馬鹿らしく見えてしまいます。
 DARPAでは、開発の見込みが立たない研究にも多額の予算が認められます。今も機密の下で多くの研究が進められていると思われます。自動車業界は今後わずか10年でエンジンからモーターに原動機が変わる大変革の時代に入りました。トヨタの経営陣の危機感は相当なものでしょう。だが軍事研究の大変革は民生機関の比ではありません。人類にとって好ましくない未来をもたらすかも知れません。しかしそこから人類に有用な実用技術も生まれます。AIも軍事分野では既に恐ろしい進化を遂げている気がしてなりません。 
  7日   今日は8月7日鼻の日です。歴代4位の長寿台風5号は松山では雨台風でした。診察が始まる8時9時は時間雨量が10㎜を超える激しい雨脚でした。夏休みは朝方に混み合う当院ですが、今日の診察開始時は閑散としていました。台風の影響で、三津浜の花火大会が20日に順延、夏の甲子園も順延でした。
 早いもので今週末にはお盆です。帰省先での中耳炎の経過を気にされるお母様や、飛行機搭乗による航空性中耳炎を気にする方が目立ちました。今日からお盆明けまでは、ざっと10日ほどあります。お正月休みと違って幸いにも公立病院は開いています。いざという時の病院へのかかり方なども含めて、体調悪化時の対応法をお伝えしています。

 8月1日に仮想通貨ビットコイン(BTC)の分裂騒動がありました。2日未明に中国のマイナー(後述します)が分裂させて新通貨「ビットコインキャッシュBCC」が誕生しました。ビットコインや流行語ともいえるFinTech(フィンテック、FinanceとTechnologyを合わせた造語で金融ITとも訳されます)は、私にとっては”なんぞや”の領域で、今回の分裂騒ぎの報道で気になり調べてみました。図書館にはプログラミング言語まで紹介した書籍もありましたが、私には敷居が高く、、 そんなところに私にぴったりの本が見つかりました。日銀出身の早稲田大学大学院教授の岩田 充氏による「中央銀行が終わる日 ビットコインと通貨の未来」です。ビットコインの仕組みと開発の歴史を解りやすく紹介するだけでなく、各国中央銀行が発行する銀行券ではない新たな国際通貨ともいえる仮想通貨の出現で金融政策にどんな影響が出るのか、日本のような低金利下では「流動性の罠」に陥って次の有効な金融政策が打ち出せない中どのような策があるのかなど、フィンテックと経済理論(ケインズ、フリードマン、クル―グマンといった経済学者の理論、流動性の罠、限界価格、コースの定理、フィッシャー方程式など)、日銀の政策(インフレターゲットによる異次元緩和、マイナス金利など)を広く論じた経済学者ならではのBTCの解説書です。
 ビットコイン(BTC)はインターネット上の仮想通貨の代表格です。わずか8年前にサトシ・ナカモトという日本人っぽいニックネームの人が提唱して(このあたり日本人としてはプライドをくすぐられます。しかし無料パソコンOSのリナックスのように匿名の開発者が集まって進化させており、提唱者のナカモト氏でもソフト全体の11%しか書いていないそうです)、コロンブスの卵ともいえる技術が始まりました。取引履歴が一度作成されたら改ざんが不可能な暗号技術で作られたブロックチェーン(分散台帳)という仕組みにして、これを10分ごとに作成保存することで、ネット上に改ざん出来ないデータ化した通貨が作られます。台帳の新しいページを無償で作成するマイナー(採掘者)が新たなBTCを得ることができます。現在のマイナーは巨大産業化しており、スーパーコンピュータ並みの装置が必要です。そのためBTCの価値の源泉はコンピューターを動かす電気代から生まれるともされます。
 本書はBTCの歴史を第二次大戦時のドイツ軍の暗号機エニグマから始めます。現在ネット上で一般的になっている秘密鍵・公開鍵・SSL暗号化通信などの技術も利用しています。本書では、BTCを取引の正当性の確認に暗号技術が使われていることから暗号通貨(クリプトカレンシー)と呼びんでいます。BTCはインターネット上のP2Pネットワークと呼ばれるネット上の共有台帳(ブロック)に証拠性を保存するためのハッシュ値を埋め込んで、10分毎にチェーン化して保存していきます。中央銀行のような管理者を置かずに共有台帳で管理できるのがキモです。ハッシュ関数のハッシュ値を見つける作業(プルーフ・オブ・ワーク)であるマイニング(発掘を意味する)に成功したマイナー(発掘者)が、ブロックを閉じる権利として新しいBTCを獲得できます。つまり、貨幣の流通確認と保存を証明する作業自体が、新しい貨幣の源泉となっています。不特定多数のマイナーに利益を与えることでBTCが運営されます。同時に獲得できるBTC数は4年毎に半数になると創始グループのナカモトらが規定していることから、BTC利用者の拡大に対応するためには、BTCのデータ数を少なくするか、マイナーの利益を確保するためにブロック数を減らさないで運用を続けるかの運用方針の対立によって、今回の分裂騒動が起きました。
 現在の日本銀行は低金利下の流動性の罠に陥っているために有効な政策が打てません。潜在成長率に類似し景気に安定的な影響を及ぼす自然利子率は人口や技術進歩などの基礎的な条件(ファンダメンタルズ)によって決まるので中央銀行によって操作できません。人口減少社会に入った日本では高金利にはなりにくいのです。金融政策で無理やり低金利とすれば、これは将来の利益を先取りしたことにしかなりません。しかし低金利、特にマイナス金利に銀行間だけでなく、本来ゼロ金利である貨幣にも適応できれば金融政策を「流動性の罠」から開放できます。著者はシルビオ・ゲゼルの「スタンプ付き貨幣」を発展させた新貨幣システムを提案しています。日本銀行券をデジタル銀行券とアナログ銀行券に分ける、デジタル銀行券には日々変更可能な「貨幣利子率」を付け、アナログ銀行券は「投資信託」として扱います。そうすれば流動性の罠を乗り越える金融政策が可能になります。日銀が円と交換可能な仮想通貨を作れば、マイナス金利の貨幣も作れるのです。BTCの話が国別の貨幣を流動化させる話になりました。BTCの登場は貨幣経済のブレークスルーになりそうです。
 BTCとの関連ではありませんが、筆者は流動性の罠に陥った日本は将来、”物価のジャンプアップ局面”とデフレが交代で起こる金利現象を予想しています。日銀には残念ながら制御するパワーはないと見ています。怖い話ですが、急激なハイパーインフレも夢物語ではないようです。ハイパーインフレは国家にとっての徳政令みたいなものです。銀行に預けているお金の価値が一気に減るだけでなく、国の借金である国債を年金基金や銀行預金で知らず知らずに保有している庶民全てが損実をこうむることになります。ある日突然、数日間生活費レベルの預金の引き出ししか認められず残った預金は全て新円に置き換えられる預金封鎖(実際、終戦直後に行われ、財産税導入・戦時国債の無力化とともに国の借金をチャラにしました)も夢物語ではないかもしれません。
 ここから蛇足ですが、BTCも金融商品のひとつになっています。BTCが分裂しなければ、BTCの総量には限界があることから外部から資金が入れば価値が上昇するからです。今夏、日経平均株価は36年振りの価格変動の無いステージ(ボラティリティが少ないといいます)を迎えています。BTCは今年初頭から約3倍に値上がりして並みいる金融商品のなかでは一番の運用成績です。でも民間のBTCの交換業者で売買しようと思うと、売買時に2.5%近くは鞘(スプレッド)を抜かれます。BTCは送金手段としては手数料がほとんどかかりません。金融商品としてよりは外貨送金手段として有用ですね。
  5日   台風5号が接近中です。松山は予報円の中心近くで、7日未明に最接近しそうです。今日の夕方風が少し出てきましたので、当院では西側の窓のすだれを外しました。明日来院を予定している方は、足元にご注意下さい。松山市の水がめ、石手川ダムの取水制限が始まりました。昨日、当院の前の県道を節水を呼び掛ける広報車が通りました。台風接近は困りますが、恵みの雨程度で終わって欲しいものです。
 
 今日、愛媛県感染症センターから7月30日までの週の感染症情報が発表されました。夏休み入りしても手足口病があまり減っていません。愛媛県下からはコクサッキーウイルスA6型、コクサッキーウイルスA10型、エコーウイルス7型と3つのタイプが報告されています。手足口病の二度罹りにも注意したいと思います。また、RSウイルスが冬の流行期並みのレベルで増えています。RSウイルスは例年だと12月に流行のピークを迎えます。昨年は愛媛も全国も例年より早く10月に流行しましたが、今年はさらに早く流行しています。夏の流行は私も記憶にありません。沖縄では今年も今の時期にB型インフルエンザが冬の流行期と同じレベルで流行っています。以前もこのコーナーで触れましたが、なぜ沖縄だけが1年を通してインフルエンザが発生するのでしょうか。やはり私の謎です。

 上気道炎で発熱が1週間以上続く方が複数見られました。このようなケースでは、ライノウイルスのような一般的な弱病原性のウイルス感染の後の細菌による中耳炎や副鼻腔炎、扁桃炎や肺炎などの二次感染に注意しなければいけません。また、ウイルス性では今の時期であれば、アデノウイルス、成人のRSウイルス、ヒト・メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスなどが考えられますが、10~30才代で注意しなければいけない感染症にヘルペスウイルス科によるものがあります。
 単純ヘルペスウイルスの初回感染では10%に長引く発熱、歯肉口内炎が見られますが、90%の人は不顕性感染といって明確な症状がなく終わります。
 さらにヘルペスウイルス科ではEBウイルスやサイトメガロウイルスによる伝染性単核球症があります。EBウイルスによるものが80%、サイトメガロウイルスによるものが20%とされます。EBウイルスによるものは、日本人の80%が出生時には母親からの移行抗体を有していることから乳児期に感染すれば軽い扁桃炎程度で終わりますが、10~30才代に初感染すると症状が強く長く現れます。典型的所見は白苔形成性の扁桃炎・頚部リンパ節炎ですが、発熱が10日以上続いたり肝機能障害、脾腫を来すこともあります。一方、サイトメガロウイルスによるものは、抗体の無い胎児(先天性CMV感染症)や移行抗体が十分でない早産児や低出生体重児で重症化します。サイトメガロウイルスの方がEBウイルスよりも乳幼児期に不顕性感染で終わることが多いとされていましたが、近年、我が国の妊娠可能年齢の女性におけるCMV抗体保有率が90%台から70%台に減少していることから先天性CMV感染症や10~30才代の人の感染症が増えています。これらの感染の有無を見るには血液検査で、EBウイルス急性感染期の抗体(EB-VCA-IgM)やサイトメガロウイルス急性感染期の抗体(サイトメガロ-IgM)を確認しますが、発症後1週間以降にならないと陽性化しませんので、早期診断出来ないのがネックです。
 上気道炎後の発熱が1週間以上続き原因が特定できない場合には、当院でもEBウイルスやサイトメガロ感染症の確認は行いますが、免疫不全や自己免疫疾患、肝炎腎炎やカビ(真菌)や嫌気性菌による深部感染症など重篤な経過となる病気が潜んでいることも考えられますので、経過を見ながら総合病院レベルの内科小児科へ紹介することとなります。

 耳下腺良性腫瘍(多形腺腫)、顔面腫瘤(皮様嚢腫、術後性肉芽腫)など 
8月  2日  8月入りです。当院隣接のエンゼル薬局さんが近隣小児科に新規開設しました。当院でもいざという時に小児用薬の取り寄せ時間が少なくなりそうです。助かります。
 診察室では朝から蝉が喧しいです。当院から松山ICと松山空港を結ぶ自動車専用道の松山外環状道路空港線の高架が見えています。国体を前にした9月18日に側道部分がいよいよ開通です。当院からわずか150mで松山自動車道に直結することになります。そうそう機会はありませんが私も診療後に愛媛大重信キャンパスや徳島大蔵元キャンパスに向かう際には結構な時間短縮になりそうです。開通後は院内から高架を通る車の明かりが眺められそうで、少し都会っぽい気分を味わえそうで今から開通が楽しみです。


判りにくいのですが、写真中央を横に白く伊予鉄郡中線を跨ぐ外環状道路空港線の高架が見えます。こちらから工事車両が見えますので、路肩のフェンスは低そうです。

 舌下免疫療法の薬の市販後調査のレポートを製薬会社の情報担当者MRさんから頂きました。スギに対するシダトレン、ダニに対するミティキュアダニともに各2例、急性の全身性アレルギー性反応であるアナフィラキシーの報告がありました。10才代の例がほとんどです。中には自宅から救急車で搬送されたケースもありました。幸い死亡例はなく、いづれも短期の反応で終わっています。これまで我が国では、少なくともスギに対する舌下免疫療法では重大な副作用はなかったのですが、始めてアナフィラキシーが報告されました。舌下免疫療法は注射ほどの刺激はないと考えられますが、やはりアレルゲンの成分を体内に入れると療法です。当院で治療を継続されてる患者様には、改めて注意喚起をしたいと思います。 
     
  29日   連日の猛暑です。汗ばみます。外耳道の湿疹の悪化→綿棒や耳かきで掻き過ぎてブドウ球菌が増殖して外耳道炎化→外耳道の奥(骨部外耳道)に炎症が波及して痛みが強くなる→鼓膜に炎症が広がり慢性化すると肉芽性鼓膜炎、皮膚に元から隠れているカンジダやクリプトコッカスというカビ(真菌)が広がり外耳道真菌症化、外耳道の入り口の毛穴から感染が広がり耳癤(じせつ)化、皮膚の深部に炎症が広がり蜂窩織炎化や頚部リンパ節腫脹化 などの方が見られます。今日は特に外耳道真菌症が悪化した方が来院されました。
 外耳道は皮膚の深部で骨に接している部位ですので、時には炎症が周囲に広がり重症化する場合があり悪性外耳道炎と呼ばれます。悪性といっても癌ではありません。壊死性外耳道炎や頭蓋底骨髄炎とも言われます。高齢者や糖尿病などで外耳道局所の免疫力が落ちている人の外耳道底部から炎症が周囲の骨組織に広がることによって発症します。専門的には炎症が前方の顎関節周囲に広がると開口障害、内方から茎乳突孔に広がると顔面神経麻痺が、頚静脈孔に広がると舌咽迷走副神経麻痺が、舌下神経管まで広がると舌下神経麻痺が起こります。さらに頭蓋内まで広がると細菌性髄膜炎、脳膿瘍、S状静脈洞血栓を生じます。このように死に至るケースもあることから悪性と呼ばれます。治療では抗菌薬を少なくとも6週間、時には半年投与しなければいけません。手術で中耳周囲の腐骨部を清掃しなければいけないケースもあります。単純な外耳炎だけでも痛みは相当不快ですが、悪性外耳道炎となればシビアです。外耳道も侮れない場所です。
  28日   子供たちは夏休み真っ盛り、早いもので来週には三津浜の花火大会です。中待合のテレビ映像を花火にしました。全国一の打上げ数を誇る諏訪湖花火大会と、世界で最も質の高い花火が打ち上げられるといわれる秋田県大曲の競技花火大会の映像です。診察中もかすかに花火の音が聞こえるようにしています。(^^♪ 

 学童の集団生活が終わったこともあり、ここ数日で夏風邪で来院される方が一気に減りました。当院も午後は夏休み状態になりました。(^^)/ それでも手足口病に罹った後にヘルパンギーナに罹り、立て続けに高熱がでたお子さんも見られます。真夏ですが、RSウイルスやヒト・メタニューモウイルス感染症の子供さんも見られました。

 Bスポット治療の原法である塩化亜鉛を用いた上咽頭擦過治療を行いました。塩化亜鉛は粘膜を収縮させる収斂(しゅうれん)作用があります。塩化亜鉛溶液を塗った場所に炎症があると粘膜から出血します。原法では1%濃度を用いますが、治療開始時の反応をマイルドにするために0.2%や0.5%から始める方法もあります。今回は他院でBスポット治療を経験したことがあったことも踏まえて1%液を用いました。塩化亜鉛をBスポットに塗ると、擦過した咽頭巻綿子に出血が見られましたので、出血が見られなくなる=表面上の炎症が見られなくなるまでBスポット治療を繰り返します。今回の治療の主な目的は、IgA腎症の改善を目指すことでした。IgA腎症や掌蹠膿疱症は、扁桃組織の慢性炎症が遠隔部位の臓器に悪影響を与える病巣感染の代表的な疾患です。この病巣感染の主たる原因部位としては口蓋扁桃も考えられます。Bスポットである上咽頭のアデノイド遺残の扁桃組織の量よりも、埋没型で表面上は小さく見えたとしても口蓋扁桃の方が扁桃組織の量は多いですので、Bスポットよりも口蓋扁桃の方が、病巣感染として悪影響を与えている可能性もあります。口蓋扁桃が病巣感染の原因かどうかは扁桃誘発試験という検査である程度判定できますので、今回のケースではどこかの時点で扁桃誘発試験も行う予定としました。 
  24日  鼻の奥と口腔の上の交差する部分を上咽頭と言います。以前は鼻咽腔とも言っていました。ここには小児期にアデノイドがあるために、免疫反応の場でありかく炎症の巣でもあります。上咽頭は大人になっても炎症の巣となる場合があり、風邪が治りにくくなったり頭痛の原因となったりします。この部分に消毒液を塗って消炎する治療法があります。私が勤務医時代には外来の耳鼻科診療ユニットに塩化亜鉛やルゴール液などの消毒液が備え付けられており、上咽頭の炎症が強い方には、咽頭巻綿子(けんめんし)という先端に綿が巻かれた器具で上咽頭に消毒液を塗っていました。その治療が、Bスポット治療として最近改めて注目されています。ここ数年、当院でもBスポット治療を行っているか否かの問合が増えています。当院ではこれまでルゴール液を上咽頭に塗る上咽頭擦過治療は行っていましたが、本来のBスポット治療は、塩化亜鉛を用います。塩化亜鉛には、たんぱく質を変性させて血管や細胞組織を収縮させる収斂作用があります。塩化亜鉛を上咽頭に塗ると刺激が強いために、一時的な強い痛みや出血が見られることがあります。このため私は刺激の少ないルゴール液を用いていたのですが、文献を当ってみると、やはり上咽頭に慢性炎症がある場合には、塩化亜鉛を塗る方が効果が高いようです。このため当院でも、明らかに炎症の強い大人の方に対して塩化亜鉛を用いたBスポット治療を行うこととしました。
 当ホームページにも、慢性上咽頭炎とBスポット治療について のページを設けました。

〇慢性上咽頭炎とBスポット治療     
 上咽頭は鼻の奥に位置する場所で、咽頭扁桃(アデノイドとも呼びます)があります。口の奥には扁桃腺(口蓋扁桃)があります。扁桃は、リンパ球が集まった免疫組織で、鼻や口から侵入した病原体などの抗原がリンパ組織に取り込まれ免疫担当細胞を介して免疫反応を誘導する免疫組織としての面と、上気道炎の感染巣となる炎症臓器としての面の2つの顔をもちます。扁桃は成長とともに増殖しその後退縮します。肥大のピークは、口蓋扁桃が6~7歳、咽頭扁桃が3~5歳です。乳児期の呼吸は鼻呼吸であり吸入性抗原の刺激が上咽頭で多いことから、まず咽頭扁桃が増殖し、その後幼児期に入り徐々に口呼吸が可能となり経口的に食事性抗原の刺激を受けることから、遅れて口蓋扁桃が増殖します。咽頭扁桃は8才頃までに劇的に小さくなり、口蓋扁桃は15才頃までに一回り小さくなり大人の大きさになります。
 上咽頭が体に害を及ぼす場合としては、上咽頭に直接的に炎症を持つ場合と、間接的に上咽頭の免疫複合体が他の臓器へ血流やリンパ流を介して悪影響を及ぼす病巣感染巣として作用する場合があります。また、上咽頭は神経の集まった場所でもあります。脳神経の迷走神経や舌咽神経と自律神経が走行しており、神経の調節作用が障害されると、耳から後頭部、咽喉頭、横隔膜まで影響を及ぼします。

慢性上気道炎による症状
上咽頭の慢性炎症から多彩な症状が引き起こされます。
1、炎症:鼻閉・後鼻漏・痰・咳、咽頭違和感、頭痛・舌痛・歯痛などの放散痛、肩こり・首こり、耳鳴、顎関節症
2、病巣感染:IgA腎症、掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症(他に乾癬、リウマチ、微熱、IgA血管炎、Behqet病、結節性紅斑などへの関与も疑われます)
3、自律神経系の異常:全身倦怠感(慢性疲労症候群、繊維筋痛症など)、めまい・立ちくらみ、睡眠障害、記憶力・集中力の低下、消化器機能の低下(機能性胃腸障害など)

< Bスポット治療 >
上咽頭は鼻咽腔とも呼ばれ、堀口伸作東京医科歯科大耳鼻科教授が1980年代にBスポット(ビインクウのB)と名付けました。このBスポットに塩化亜鉛を塗ることにより炎症を消退させる治療がBスポット治療です。
方法:0.5~1%の塩化亜鉛溶液を口腔(または同時に鼻からも)からBスポットに塗り込みます。治療後数10分の痛み、半日程度の僅かな出血が見られます。
週に1~2回の治療を、治療時に出血が無くなることを目標に約10~15回行います。
対象者と安全性:扁桃組織が年齢的に完成して急性炎症を起こしていない(風邪に罹っていない)成人を対象とします。 妊婦にも安全に行えるとされていますが、痛みの刺激を与えることを考慮して妊婦さんには行いません。塩化亜鉛に似た作用のグルコン酸亜鉛溶液の点鼻で嗅覚低下が起こったとの国外での報告があることから、鼻腔上部への治療は行いません。
*塩化亜鉛で痛みなどの刺激が強い方には、消毒液のルゴール液による上咽頭擦過治療を行います。
費用:医療保険が適応されます。ただし、初再診料や処置後に同時に行う吸入の料金が別途加算されます。
効果発現のメカニズム:
①塩化亜鉛製剤自体による組織収斂 (抗炎症作用) 
②迷走神経・舌咽神経や自律神経系を介した神経調節作用と抗炎症作用 
③うっ血状態の改善によるリンパ流や静脈流の改善 
  21日   先日、パーキンソン病による嚥下障害の方が来院されました。この病気は神経内科が専門ですが、嗅覚障害や睡眠障害、嚥下障害など耳鼻科外来を受診する方の中にも早期のパーキンソン病が隠れているケースもあります。今日は耳鼻科からアプローチするパーキンソン病について記してみます。
 パーキンソン病は神経が変性する病気の中ではアルツハイマー病に続いて多く、65才以上の高齢者の100人に1人が罹っているとの報告もあります。ドパミンという神経伝達物質を産生する黒質細胞が変性するためにドパミンの不足が起こり発症します。発症の時点で黒質細胞は10才代の50%に減少し、産生されるドバミンの量が20%程度になります。パーキンソン病と類似した症状を起こすものに、他の神経変性疾患で起こる二次性パーキンソン症候群や、脳血管障害や薬剤の副作用として起こる症候性パーキンソン症候群もあります。特にドパミン拮抗作用のある薬剤(抗精神病や抗うつ薬、抗潰瘍薬、制吐剤)で薬剤性パーキンソン症候群が起こりますので注意が必要です。
 症状は、大きく分けて運動症状と非運動症状に分けられます。運動症状としては、初期にはふるえ、動作が鈍い、前屈み姿勢、小刻み歩行などがあります。ごく早期には、動作時や歩行時の手のふるえや、歯磨きや包丁を扱う動作などの素早い手の反復運動の障害が起こりますが、この時点で診断されることは少なく、CTやMRIでも早期には診断がつきません。本人や家族は歩行時や立ち上がる際の動きの固さで気付きます。私の立場からは診察時の手や頭の動きの固さやふるえ(振戦)でパーキンソン病に気付きたいものです。進行すると、バランス障害や嚥下障害が起こり、治療薬の効果時間が短くなることから症状の変動(ウエアリング・オフ)や不随意運動(ジスキネジア)が起こる場合もあります。進行期の嚥下障害は高度となることが多いことから、耳鼻科でも誤嚥性肺炎の発症にも注意しながら食事療法などでリハビリテーション病院との連携を密にしたいです。
 耳鼻科で注意しなければならないのは早期の非運動症状です。最近の研究では、黒質細胞の変性の原因はLewy小体という細胞の出現と関連しており、このLewy小体は脳内だけでなく自律神経である心臓の交感神経や腸管固有神経叢にも早期に出現することが分かってきました。そのため、嗅覚障害や便秘、意欲低下、疲労感、睡眠障害(不眠やレム睡眠運動障害など)などが起こり、進行すると無気力、物忘れ、食欲不振による嚥下障害、幻覚妄想などの認知症症状が出現します。近年、嗅覚障害がパーキンソン病だけでなくアルツハイマー病や認知症の初期症状であることが分かり注目されています。認知症の診断スコアに嗅覚障害の有無を利用する研究も出始めています。私も嗅覚障害の方を診察する際には、鼻腔内の末梢性の障害の確認だけでなく脳内などの中枢性の障害の有無も念頭に入れて診察を進めたいと思います。 
  19日   今日は中四国から関東まで一気に梅雨明けです。明日は終業日。子供達にとってはタイミング良い夏休み入りです。お泊り保育や家族旅行を前にして風邪をこじらせたくない子供達の診察が増えてきました。汗ばむ時候です。外耳炎や鼻前庭湿疹からの鼻血が目立ってきました。

 水曜午後を利用して同期生のクリニック訪問に宇和町に行ってきました。南予の宇和町と言えば過去に何回か愛媛県歴史文化博物館は訪れたことがあったのですが、意外に?重要伝統的建造物群保存地区の卯之町の町並みは訪れたことがありませんでした。クリニックにほど近い町並みを少しだけ散策してきました。


 瓦屋根で落ち着いた佇まいのJR卯之町駅です。待合室で見つけた「青春18きっぷ」のパンフレットに思わず手が伸びました。
 思えば大学5年生の夏、私は、幹部を務めた最後のテニスの試合、西日本医科学生体育大会が金沢で終わった後、衝動的に青春18きっぷを使って目的地を決めない一人旅に出ました。実家に荷物を郵送、サマーセーター1着で、車内泊→駅前の安宿泊→車内泊を1週間繰り返し、金沢→青森→青函連絡船→稚内→東京→大垣行夜行鈍行→松山と旅行しました。後にも先にもこんな旅行はこの時だけです。当時ボックス席で特に北海道では椅子が木製の鈍行列車の車内や旅館では、いろんな人との会話やふれあいがありました。当時1万円で2日有効券2枚1日有効券3枚の7日分のチケットでしたが、最近は5日分で夏季限定となっています。パンフレットを見ていると、北海道新幹線オプション券というものが紹介されていました。そうでした、北海道新幹線が開通したことにより海峡線を走行するのは北海道”旅客”新幹線と貨物列車だけになっていました。連絡船や青函トンネルの普通列車が無くなったために青春18きっぷだけでは北海道に行けなくなっていたのですね。途中で新幹線に乗ってしまうと、ちょっと泥臭い感じが減って郷愁感が無くなりそうで残念です。(BSでは鉄道紀行の番組がいっぱいありますが、18きっぷを利用した私としては関口知宏氏の番組がいいです。最初のシリーズ「列島縦断鉄道12000キロの旅」もあこがれでしたが、この夏再放送された「中国鉄道大紀行 最長片道ルート36.000kmをゆく」が最高でした)


ホームには夏らしく風鈴とヘチマが吊るされていました。


 卯之町の町並みの特徴は、江戸の寺・商家、明治の学校、大正・昭和初期の町屋が混在しているところです。町屋も平入り(建物の棟と平行な部分に玄関がある)と妻入りが混在しているところで、格子・蔀(しとみ)・床几・大戸・卯建(うだつ)・袖壁・軒下の持送り・二階手摺・飾り瓦が様々に取り入れられています。歩くと建物の木の匂いでほんわかします。赤いポストが実用されています。いいですね。


一般の人が生活する家も、歴史的な町並みに溶け込んでいます。お土産屋さんや民芸店がほとんどないのもいいです。


デザインマンホール、またの名をご当地マンホールとも言います。以前、製作現場をテレビで紹介していましたが、1枚1枚丹念に手作りされていました。


開明学校です。左は明治5年開校当時の私塾申義堂。右は明治15年竣工の小学校校舎で四国で一番古く国の重要文化財に指定されています。


 高野長明の隠れ家です。
 高野長英と言えば、渡辺崋山とともに蛮社の獄で捕らえられたぐらいの知識しかありませんでしたが、なぜ南予に隠れ家が?と調べてみると、凄い人物ですね。高野長英の生誕地、岩手県奥州市の高野長英記念館では長英のことを「世界の動きから閉ざされた鎖国の時代 日本の夜明けを感じた人がいた」と紹介しています。ドイツの医学者シーボルトの長崎鳴滝塾での内弟子で、わが国最初の生理学書「医原枢要」を表しています。杉田玄白の解体新書は有名ですが、我が国初の生理学書にはノーマークでした。解剖学書よりもある意味生理学書の方がレベルが高いかも知れません。記念館のホームページ 高野長英記念館へ では、蛮社の獄で捕らえられる原因となった著書「夢物語」全文の読み下し文も掲載されています。今読んでもレベルが高い! アヘン戦争当時のイギリスの日本に対する出方の分析と対処法の提案を行っています。松下村塾の吉田松陰に引けをとらない人物です。同ホームページの「高野長英の人生をたどる」を読むと、大河ドラマが1本出来そうな人生を送っていました。長英は牢屋の火災をきっかけに脱獄した後、全国を逃亡しています。そして宇和島藩が兵学蘭書の翻訳と海岸防備を進めるための人材を確保する必要から潜伏していた長英を招き、また、卯之町には鳴滝塾で学んだ二宮敬作がシーボルト事件後に帰国し医業を開いたために、彼が長英を匿いました。それがこの隠れ家です。(さらに、二宮敬作はシーボルトの娘イネに医学を教えたことから宇和町は「日本女医発祥の地」でもあるとのことです)


卯之町のメインの商店街の街灯にはこんな表示板がここそこに、、「中心街」、分かりやすいです。(^^♪ 


商店街の伊予銀行卯之町支店は瓦屋根でした。こんなところにも風情があります。


帰り路の伊予灘サービスエリアはちょうど夕日が落ちる時間でした。ここは「恋人の聖地」で夜景が有名ですが、夕景も格別でした。ダッシュ島で有名な由利島に向かって日が沈みます。 
  17日   猛暑の海の日です。昨日、当院では手足口病の小児が急増しました。典型的な手足口病では、お子様が急に高熱が出てぐったりして、食事を全く採らなくなることから、保護者の方も心配になります。ただし初期では、発熱とのどの粘膜のかすかな充血だけだったりしますので、現在松山で手足口病とともに流行っている溶連菌咽頭炎やアデノウイルスによる咽頭結膜熱の初期と区別がつかない場合もあります。溶連菌やアデノウイルスは迅速検査がありますので、鑑別診断のために検査を活用しています。また手足口病は大人も発症する場合もあります。小児よりは総じて症状が軽い場合が多いのですが、時には高熱や多発性の口内炎、手足の皮疹が見られる場合もあります。さらに手足口病と似たウイルスによる夏風邪のヘルパンギーナもあります。今夏は手足口病の発生が目立って、ヘルパンギーナの発生は少ないのですが、ヘルパンギーナもそろそろ増えてきました。2週間前に手足口病に罹って今回ヘルパンギーナが疑われるというお子様も見られました。また手足口病はエンテロウイルス系の腸管で増殖するウイルスですので、下痢や吐き気などの消化器症状も見られます。昨日は朝から気温が上がっていましたので、学生さんで部活を朝に始めたとたんに熱が出て気持ちが悪くなった場合には、手足口病をはじめとする夏風邪の初期か熱中症か判断に苦しむケースもありました。咽頭所見や尿所見、時には血液検査も参考にしながら対応しました。

 海の日は、当院もお休みを頂いていました。痛みが強くなったお子様のお母様から問合の電話を頂きました。処方していた痛み止めが切れてしまったとのことでした。あいにく私も外出していたことから、ドラッグストアでお薬を購入して対応して頂くことにしました。3才以上であればドラッグストアでも消炎鎮痛解熱剤のアセトアミノフェンは購入できます。(2才以上で総合風邪薬としてもアセトアミノフェンは配合されていますが、解熱の常用量としては3才以上との決まりです) 松山でも営業時間の遅いドラッグストアならば午後11時まで営業していますので、今回は幸い病状が確認できていましたので、夜間救急病院を利用しなくてもお薬の入手だけで対応出来ました。

 私は1年振りに道後公園を散策してきました。以前は子供を連れてよく遊びにきていたものでしたが、最近は時々訪れる程度です。中央の展望台は比高30mの小高い丘陵ですが、結構木々が生い茂っています。樹液の匂いも強く、昔、夜中にカブトムシを探し回っていた頃を思い出しました。ひとつだけ当時との違いが、愛媛県立都市公園条例というのでバーベキューや花火が禁止になっていました。道後公園は花見の名所でもありますが、桜の木への悪影響もあるのでバーベキューも禁止だそうです。花見のあの香ばしい匂いはもう嗅げないのですね。
 道後公園は登山道の整備もしっかり更新されていました。また案内板も増えていました。ここは道後の温泉街の南端にあたります。市も整備にはしっかりとお金をかけているようです。ここは中世の守護の城館としては全国的にもまれにみる良好な保存状態の史跡です。先日、私は集中的に中世日本史を読み込んでいましたので、源平から元寇、応仁の乱まで鎌倉室町期の守護大名に関してちょっと知恵がついています。(*^^)v これまでなにげなく通っていた公園内ですが、ゆっくりと案内板を見ながら散策すると、興味深々でした。身近にこんな場所があって感激でした。
 道後公園は湯築城跡として国史跡に指定されています。湯築城は1334年頃に河野通盛によって築城された伊予国の守護河野氏の居城で、約250年間存続しました。祖先には源平合戦の際、源氏方で水軍を率いて活躍した通信や蒙古襲来の際に活躍した通有がいます。瀬戸内海の海賊衆来島村上氏も河野氏の配下でした。その後讃岐から攻め入った細川氏に一時占拠されたり、惣領職の継承をめぐるお家騒動、家臣の反乱による内紛はどを経て、天正13年(1585年)に羽柴秀吉の命を受けた小早川隆景に包囲され降伏し廃城になっています。呉座勇一氏の「戦争の日本中世史 下剋上は本当にあったのか」そのものの世界です。うーむ、公園内の土塁や武家屋敷を見るだけで面白いです!
 ここ最近、当院でも愛媛国体のポロシャツを着て受診される方が目立ってきました。9月30日に始まる愛媛国体に合わせて、道後では、9月中に道後温泉の別館「飛鳥の湯」が開館します。こちらは斉明天皇や法隆寺との繋がりを視野に入れて飛鳥・奈良時代と関連しています。耐震工事の始まる道後温泉本館や子規記念館、坂の上の雲ミュージアムは明治関連です。松山城は戦国・江戸時代関連です。湯築城を含めると、松山に居ながらにして飛鳥~明治を感じることができます!


道後公園は蓮の名所でもあります。蓮の花の命は4日、しかも午前中だけ開花します。見ごろはこれからでしょうか? 今日の夕方に花は確認できませんでした。


展望台の海抜は70m、比高は30m足らずですが、道後自体がゆるやかな高台になっているせいで、展望台からは松山城はもとより瀬戸内海、興居島から松山市駅の観覧車「くるりん」まで一望できます。先日、NHK全国放送で「ドキュメント72時間」で「くるりん」が取り上げられていました。観覧車に乗る人だけでもいろいろな人生があるんですね。


湯築城跡のお堀の外はもう道後の温泉街です。子規記念博物館や旅館「ふなや」が見えます。8室限定の旅亭「うめ乃や」は目の前です。


ちょと歴史の目で見ると、、公園の遊具の先には昭和天皇のご大典(昭和3年の即位)の記念碑が。坂の上の雲の主人公、日露戦争の騎馬隊を統率した陸軍大将秋山好古の揮毫です。


湯築城の遺構エリアでは、家臣団の武家屋敷跡などが復元されています。庭園跡や土塁も復元されていて、在りし日の守護大名の城郭内の生活を感じることが出来ます。 
  13日   まるで梅雨明けのような晴天猛暑です。手足口病が学童の世代にも広がってきました。あと10日で夏休みです。”夏風邪”の季節が遅めに到来です。他院でA型インフルエンザ陽性だった大人の方の来院がありました。”冬の風邪”もまだ見られます。

 高齢の方の高カリウム血症が見られました。採血や採決後の血液の保存状態によっても高カリウムのデータになります(偽性高カリウム血症)ので、評価は慎重に行わなくてはなりませんが、高齢者のイオンバランス(電解質代謝)の異常は、全身状態にも影響しますので要注意です。この方は内科での精査加療をお願いしました。
 電解質異常といえば、猛暑到来で熱中症にも注意しなければいけません。小さなお子様では熱中症の準備段階としてのうつ熱にも注意します。当院でも午後に発熱だけで来院したものの風邪の所見や炎症所見のない、体内からの放熱機能が落ちたことにより熱が体内にこもるうつ熱状態のお子様も見られるようになってきました。
 国際分類では熱中症を3段階のステージに分けています。
 ステージⅠが、熱失神・熱痙攣です。熱失神(heat syncope)は、発汗による脱水→末梢血管拡張→脳の血液循環の減少で起こります。室外だけでなく高温多湿の室内での発汗でも起こります。体のクーリングが有効です。熱痙攣(heat cramps)は、発汗後に水分だけ補給して塩分=ナトリウムが欠乏した場合に起こります。平熱でも起こり、低ナトリウム血症による筋肉の痙攣が誘発されます。経口補水液が有効です。
 ステージⅡが、熱疲労(heat exhaustion)です。脱水と塩分の欠乏が同時に起こり、体温が高熱になります。医療としての点滴(補液)が必要となります。
 ステージⅢが、熱射病(heat stroke)です。野外での日光直射による日射病(sun stroke)も同じ病態です。視床下部の温熱中枢まで障害され体温調節機能が低下し、意識障害が生じる重症レベルで、入院の上、クーリングや補液が必要で、時には人工透析も必要になります。
 体温の調節機構の未熟な小児や発汗機能の低下した高齢者では、軽度のうつ熱状態である熱失神から熱疲労に急速に進行する場合もあります。当院ではこの時期、発熱脱水が認められる、ただし急な点滴までは必要としない方には、経口補液のドリンク剤やゼリーをサービスでお渡ししています。

 日本の行政や政治は、官僚のお膳立てした霞が関の審議会や会議で決まります。小泉内閣の経済財政諮問会議が発表した「骨太の方針」のインパクトは今から思い返しても強烈でした。私の立場上気になるのがやはり厚労省が開催する会議で動向です。報道によると、厚労省は「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」(座長:間野博行・国立がん研究センター研究所長)の報告書で、「がんゲノム医療中核拠点病院(仮称)」の2017年度中の選定や、「遺伝子パネル検査」を活用した先進医療の2018年度からの実施、同年度末の薬事承認・保険収載などを目指すとしました。遺伝子パネル検査を医療保険で認める、、超高額な抗がん剤分子標的薬オブジーボを凌ぐ、超高額な医療の世界がやってきそうです。100以上に及ぶ分子標的薬が有効な遺伝子を患者個人が持っているかどうかを一括で調べることのできるパネル検査は、現在は自由診療で60~100万円かかります。私自身が癌を発症して抗がん剤を試みる段階になったとしたら、今後増えても全国に数10ケ所しかないがんゲノム医療中核拠点病院で医療保険を使ったパネル検査を望むと思います。現在でもオブジーボは、適応症が悪性黒色腫から肺癌、頭頚部癌そして今後は胃癌と広がっています。分子標的薬など遺伝子で確認したい抗がん剤も今後どんどん増えてくるでしょう。そう遠くない将来に、癌の多くは遺伝子診断してから抗がん剤治療を行う方が有効性が高くなるでしょう。全国の癌患者が拠点病院に殺到して予約待ちが十数年ということにもなりかねません。報道では、パネル検査が保険適応されれば医療財政は間違いなく破綻する、との大学病院医師の意見も紹介されていました。早ければT来年度の医療保険で認められます。医療財政は、癌医療はどうなるのでしょうか。私は、医療の進歩を喜びながら、ひしひしと恐怖感も覚えます。

 夏休みといえば、花火大会の開催ももうすぐです。愛媛県内の花火大会の双璧は、松山市の三津浜花火大会と今治市のおんまく花火大会です。昨年、おんまくが打上げ玉数1万”1発”、三津浜は1万発で、おんまくが県下一の花火大会となりました。今年は三津浜が1万1千発に増やしたかと思えば、おんまくはなんと1万4千発です! 全国的にも諏訪湖の4万発はダントツとして、全国4位の隅田川が2万2千発ですから、結構なレベルです。ちなみに、おんまくは全国同率39位のランキングです。愛媛は他にも、新居浜が8千800発、伊予市が7千発、東温市が5千発と、四国四県の中では断トツの頑張りです。愛媛の人は花火好きなのでしょうか? おんまくと三津浜のトップ争い、どうなるのでしょうか? バブル崩壊前でなければいいのですが。 
  10日   当院外来は早くも夏休みの雰囲気です。午後の空いた時間に、今日も研修を行うことが出来ました。(^^)

 大人の方の耳下腺炎が散見されます。耳下腺が腫れる代表的な疾患はおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)ですが、流行性耳下腺炎に感染すると抗体が一生持続することから再感染は起こりにくいとされていましたが、近年になって耳鼻科領域でも小児科領域でも再感染があり得るとの論文が出ています。そのため小児期におたふくかぜに罹ったと思われる大人でもおたふくかぜの可能性は否定できません。今回の腫脹がおたふくかぜでないかどうかの判断には血液検査でおたふくかぜの原因ウイルスであるムンプスウイルスの抗体価を調べます。急性期のIgMウイルスが増加していれば今回感染したと類推できますが、この抗体は発症後5~7日経たないと増えてきません。過去に罹ったことを示すIgG抗体があれば今回の腫脹はおたふくかぜではないと類推できます。実は大人の耳下腺腫脹の多くは、感染症ではムンプスウイルス以外のウイルスか細菌性です。腫れを繰り返す反復性であれば、シェーグレン病やミクリッツ病(最近はIgG4関連疾患とも呼ばれます)のような自己免疫疾患や唾石、小児の反復性耳下腺炎でみられるような唾液管末端拡張症、ワルチン病や多形腺腫のような良性腫瘍やアレルギー反応で腫脹する場合もあります。耳下腺をはじめとする唾液腺が大人の方で腫れた場合には、小児以上に様々な原因を考えなければいけません。

 当院が参加登録していた、慶應大の感染症学教室が行っていた「急性中耳炎の起炎菌に関する全国サーベランス研究」の日本感染症学会・日本化学療法学会・日本耳鼻咽喉科学会での発表資料が送られてきました。研究結果では、1)肺炎球菌ワクチンの普及とともに肺炎球菌の検出率や莢膜型、耐性遺伝子の割合が変化している。2)起炎菌では肺炎球菌が減少し、インフルエンザ桿菌が増加している。3)インフルエンザ菌検出例では、中耳炎治療ガイドラインで推奨する抗菌薬から変更しなければいけない場合が多く、これまで高い有効性を誇っていたキノロン系抗菌剤の耐性菌も出てきている。などが報告されています。本研究は遺伝子解析による薬剤耐性も調べており、臨床の立場から見てもおおいに参考になります。当院の診療が研究として活用されたことは臨床医として感無量です。中耳の膿汁の検体採取に協力頂いた子供達をはじめとする患者様や保護者の方の協力に改めて感謝します。

  耳介血腫、鼻茸摘出術、咽頭腫瘤、頚部蜂窩織炎、歯性上顎洞炎など。 
  8日   7月6日朝、当院における蝉の”初鳴き”でした。7日七夕、当院の午後診は久方振りに患者様が途絶えました。おかげで、空いた時間を利用して職員研修が出来ました。例年の夏季研修の如く、まずは救急体制の確認を、続いて聴力検査方法の確認を行いました。

 睡眠時無呼吸の経鼻カテーテル、ナステントのフィッティング希望の方が来院されました。当院はフィティングのみを行い販売は行なっておりません。ナステントの購入に際しては、販売会社seven dreamers laboratoriesのECサイトからもネット上で購入が可能です。定期購入では販売価格も割り引かれます。ナステントを継続使用される方には、ECサイトの利用をお勧めしています。
 当院はナステントを装着した時としない時の睡眠ポリグラフも比較しています。中にはナステントをしても閉塞型睡眠時無呼吸が改善されないケースも見られます。やはり舌根部が狭くレム睡眠時の舌根沈下が強いケースでは、効果に限界があります。当院では、個々人の鼻腔通気度、口峡部狭窄の程度、舌根部の広さ、舌根沈下の程度を総合的に判断して、CPAP(持続陽圧呼吸療法)・歯科装具・鼻炎も含めた耳鼻科的手術・減量や薬物などの内科的治療とともに、ナステントも治療の一手段として取り入れたいと思います。

 野村総合研究所NRIが「成長可能性都市ランキング」を発表しました。おらが町松山も入っているの?と確認したところ、松山は大健闘です! 総合ランキングで15位、注目度の最も高い、ローカルハブになるポテンシャルランキングではなんと4位、多様性を受け入れる風土では20位以内、創業イノベーションを促す取組で30位以内、都市の暮らしやすさで6位!、都市の魅力で7位!、リアルタイム世代が余生を楽しみながら仕事ができる3位!です。ちなみに総合ランキング1位は東京23区、2位福岡市、3位京都市。ポテンシャルランキング1位福岡市、2位鹿児島市、3位つくば市でした。松山は並み居る強豪都市に引けをとらない高ランキングでした。中でも私には「リアルタイム世代が余生を楽しみながら仕事ができる」の3位が特に素晴らしいです。野村総研のフォーラムでの発表資料「ランキングによる都市の持つ「成長可能性」の可視化 ~地方創生の成功の鍵はどこにあるのか~ 社会システムコンサルティング部 上級研究員 小林 庸至 グローバルインフラコンサルティング部 副主任研究員 波利摩 星也」を見ましたが、精緻な分析の上でランキングを導き出していました。しかし残念ながら資料では基データまでは公開されていませんでした。松山がどうして”余生を楽しめて””リタイアしても仕事ができるのか”、どういう根拠を基に高ランキング入りしたのか大いに気になります。 
  6日   九州豪雨、被災された方々の一刻も早い救出と復興をお祈りします。
 四国を横断した台風3号ですが松山は比較的おだやかに通過しました。愛媛に台風が上陸したのは14年振りとのことです。中予地方は山や半島が南にあって海が西にありますので、台風の反時計回りの風は四国山地や佐田岬半島に遮られて弱くなります。松山は風が穏やかとは思っていましたが、台風自体が避けていたのは意外でした。地理的にはどういう要因があるからなのでしょうか。

 夏風邪では、当院では手足口病が目立ってきましたが、現在の流行のタイプは症状が軽い傾向があります。愛媛県で検出されているタイプは、コクサッキーウイルスA6型、エコーウイルス9型、ライノウイルスです。コクサッキーウイルスA6型は皮疹が体幹に広がるタイプもあるようですが、中枢神経合併症を引き起こすエンテロウイルス71型が見られないのは幸いです。
 アレルギー学会誌に、誤嚥性肺炎の誘因として咳反射の障害に注意するようにとの総説が掲載されていました。(咳嗽反射と脳機能ーアレルギーではない慢性咳嗽から見る咳嗽制御機構ー 海老原覚) 施設入所認知症高齢者では、脳の機能の衰えとともに嚥下障害が始まる→誤嚥による慢性咳嗽→咳衝動の低下から咳嗽障害が起こる→不顕性誤嚥→肺炎 への流れに注意が必要とのことです。咳込みが軽くなったと安心した時期に、逆に肺炎を起こさないか注意する必要があります。誤嚥性肺炎の起炎菌は、Normal flora(正常細菌叢)がほとんどで、多くはα-streptococci、非溶血性streptococci、Micrococcusu属、淋菌を除くNeisseria属、ジフテリア除くCorynebacterium属とのこと。特にα-streptococci、非溶血性streptococciは虫歯菌です。やはり口腔の清潔が重要なことを示唆しています。

 先日のレヴューの続きですが、「植民地化の歴史」、大著ですが興味深いです。植民地化の歴史を紐解くと、2002年にインドネシアから独立した東ティモールがなぜ国際法上はポルトガルからの独立となるのか、などの錯綜する歴史の理解を助けます。私は植民地化は武力で一方的に行われたと思っていたのですが、植民地化を進める宗主国には文明国のプライドがあります。勢力確立の典型的なやり方は、「相手国の公共事業権委託を手に入れ、いずれ償還不能になになりそうな借款を地元の太守に契約させる」というものです。あくまでも表面上は、法に則った好意的な援助を装うのです。最後は背景の武力がものをいいますが、最初は地元の有力者が協力するケースも多いのです。やはり歴史を知らなければ、です。 
  3日   明日の朝、松山も台風3号の直撃が心配されます。来院予定の皆さまは、足元にお気を付け下さい。

 寄る年波とともに歴史が面白くなってきます。私には数年に一度、歴史のマイブームが訪れます。
 私は高校で世界史を選択していたこともあって、近代以前の日本史が掴みきれていませんでした。大河ドラマ「篤姫」の影響から維新の歴史人物の伝記を読み漁ってようやく私の中で維新史観ができました。司馬遼太郎氏の戦国4部作「国盗り物語」「関ケ原」「新史太閤記」「城塞」で戦国時代の流れが分かりました。その他の時代も井沢元彦氏の「逆説の日本史」や時代時代の書物で日本史の流れを捉えることはなんとか出来ていた気がしていたのですが、南北朝時代から戦国時代の初めまでの流れはどうも繋がりませんでした。今回、呉座勇一氏の著作を読むことによって、この辺りの時代の繋がりが初めて分かりました。
 現在、歴史書のベストセラー1位の「応仁の乱」は、奈良の興福寺から話が始まります。なぜお寺の話がと思っていると、大和(奈良地方)の国は室町幕府の守護が置かれず興福寺が主に治めていたためであり、京都周辺の大和国や山城国の実権を室町幕府の将軍が誰に任命するかという事が、室町幕府の政権基盤のなかでいかに重要かが分かってきます。そして、守護の権力争いと将軍職の後継者争いが絡み合って、日本社会を変えた歴史の転換点であり戦国時代を生んだともされる応仁の乱が起こりました。呉座氏は歴史小説のような筆致で書き進めていますので、なんとなく起こりなんとなく終わったような大乱を分かりやすく捉えることができます。応仁の乱はとても人間臭い乱だったのです。
 続いて呉座氏の出世作、角川財団学芸賞受賞の「戦争の日本中世史 下剋上は本当にあったのか」を読みました。源平合戦、元寇、南北朝動乱、応仁の乱と続く時代の武士の普段の生活が伺い知れます。戦で負傷すればどうなるのか、戦に参加したくない時はどうなったのかなど生々しい実例がたくさん示されています。著者以外の中世史研究者の考え方を多数紹介していることから現在の歴史学会の論点が分かり、また戦後の唯物史観を基にした歴史観の一面性も紹介されており、こちらの点でも興味深かったです。私は一揆は”動乱”という意味が主だと思っていましたが、武士の”政治的共同体の盟約”という意味が本来だったのですね。応仁の乱を経た頃には、将軍の守護を任命する権力が低下し、京都に駐在していた守護が在地で過ごすようになり、戦国大名が生まれていきます。日本の中世から近世への繋がりを理解する上で役に立ちました。
 呉座氏はあとがきの中で、応仁の乱は、誰も意図しないのに世界大戦になってしまった第一次世界大戦に似ていると述べていました。そう言えば私は第一次世界大戦もよく知らない、、と思ってイアン・カーショーの「地獄の淵から ヨーロッパ史1914-1949」(2017年)を、そうすると植民地統治の話もよく知らない、、とマルク・フェローの「植民地化の歴史 征服から独立まで/13~20世紀」(2017年)を、図書館の新刊書コーナーに見つけて読みました。読み進めて感じるのは、技術や文明は進歩してもやはり人間の本質は恐らく変わらないことの怖さです。例を挙げると、全体主義ファシズムはイタリア語由来です。ドイツが先ではなく、イタリアのムッソリーニ政権で最初に示された言葉です。左翼社会党機関紙編集長だったムッソリーニが1919年に政治結社「戦闘者ファッシ」を結成した際の綱領を紹介してみます。普通選挙権、貴族爵位の全面禁止、表現の自由、全国民に開かれた教育制度、公衆衛生の改善処置、金融投機の禁止、1日8時間労働制の導入、労働者を協調組合に組織し利益を共有、政治警察・貴族院・君主制の廃止、地方自治と行政権の地方移譲に基づく新イタリア共和国の創設。どうでしょう、現代の政党でも十分通用する主張です。ムソリーニッは権力を掌握する毎に方針を徐々に変えていきます。第一次世界大戦後、世界中の国々は米国の大恐慌後の世界恐慌に苦しみました。世界中が、民族や個人の安寧を優先しねければいけない社会になってゆきました。第二次大戦後の世界だけを見るのではなく、中世や近世も含めて過去の歴史から学ぶことはたくさんあります。 
7月  2日   7月になりました。梅雨の合間ながら梅雨前線は東北に北上し、代って台風3号が発生し先島諸島に近づいています。今日の松山は入道雲が広がり、まるで沖縄にいるような気分でした。蒸暑い中、耳を掻くことによって外耳炎を悪化させる方が目立ち始めました。当院外来も夏の気配です。

 6月1日、厚労省が「抗微生物薬適正使用の手引き」第一版を公開しました。これは風邪の診療ガイドラインともいうべきもので、これまで、中耳炎のガイドライン、副鼻腔炎のガイドライン、呼吸器感染症のガイドライン、肺炎のガイドラインなどの臓器別のガイドラインや、溶連菌感染症の診療指針、マイコプラズマの診療指針、百日咳の診療指針、インフルエンザの診療指針などの病原微生物別の診療指針はありましたが、急性気道感染症=風邪に対する権威ある治療ガイドラインは初めてです。耳鼻科外来はもとより医療全般としても最もありふれた病態である風邪に対してのガイドラインが示されたことは、今後の外来診療に大きく影響を及ぼしそうです。私としても大変注目度の高いガイドラインです。
 もう一つ、厚労省では6月23日に不適切な多剤併用(ポリファーマシー)の問題を議論する「高齢者医薬品適正使用検討会」の第2回会合を開催しています。同会合では、約5万人の65歳以上の高齢者のレセプト中、約4割に6種類以上の薬剤が処方され、約1割では10種類以上処方されているとの報告がありました。複数のレセプトを付け合わせれば、高齢者1人当たりの多剤併用例はさらに多くなると思われます。今後多剤併用に対する治療指針の策定があれば、精神科領域での多剤併用が是正されてきたように、内科診療の分野で大きな影響が出そうです。早ければ来年度末には最終報告が出る予定です。
 抗微生物薬適正の話題に戻ります。抗生剤への薬剤耐性菌の問題は1980年代から話題になっていましたが、一気に注目を集めたのが英政府が委託したオニール委員会が行った研究「抗菌薬耐性についての検証(Review on Antimicrobial Resistance)」です。2014年末にキャメロン首相から発表されました。オニール氏は米投資銀行のチーフエコノミストで、経済学的な側面も含めた検証だったことからも注目を集めました。研究では、薬剤耐性の影響により、2050年までに毎年世界で1000万人が死亡し、各国の国内総生産(GDP)が2~3.5%減少するとしています。耐性による死者数が最も多くなるのはアジア地域の470万人、アフリカ410万人、欧州39万人、米国31万7000人と詳細に推計しています。死亡要因2番目の癌による死亡数が年間820万人ですので、それを上回るとの推計も衝撃的でした。米国では既に年間約2万3000人の死亡例および200万人の疾患に抗生物質の効かない感染症が関係していると指摘、また経済的損失は、直接的な医療コストの超過で200億ドル(約2兆3800億円)、生産性の低下で350億ドル(約4兆1600億円)と試算しています。この報告が政治的にも注目を集め、ADR(antimicrobial resistance 抗微生物薬耐性)対策が策定されるようになりました。英国では医師毎の患者1000人当たりの抗菌薬処方量が公開されており、抗菌薬の処方量が多い医師には英政府主席医務官がペナルティのない通達を出しています。ちなみに通達を出すと必ず処方量が減るそうです。また一般患者向けに、”抗菌薬を必要以上に医師に求めない””抗菌薬が効かなくなったために英国では1日13人が亡くなっている”などの啓蒙を行っています。
 その後、2015年に世界保健機関(WHO)が「薬剤耐性に関する国際行動計画」を、各国が抗菌薬使用量を2020年までに3分の2に削減することなどを示した「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を策定し、昨年の伊勢志摩サミットでは、首脳宣言と同時に発表された『国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン』では、「抗菌薬の有効性を国際公共財として認識し、人及び動物に対する適切かつ適正な使用を通じて、抗菌薬の有効性を維持する努力を優先課題とする」とし、サーベイランス活動や研究開発で得られた情報を各国で共有するとともに、「抗菌薬の生産、処方、流通、使用を効果的かつ適切に管理するために、必要に応じて規制面の協力を促進する」と発表しました。このような経緯から「抗微生物薬適正使用の手引き」が策定されました。今後厚労省は、医師会などを通じて通達の内容を周知徹底する方針です。
 早速、私も手引きを読んでみました。手引きでは、風邪=急性気道感染症と急性下痢症に対する抗微生物薬の適正利用について取り上げています。過去の研究論文の結果を踏まえたEBM(evidence-based medicine 根拠に基づく医療)に則って分かりやすくまとめられています。また、斬新な点では、医師や薬剤師が患者・家族に説明する際の具体例も挙げています。これは患者様が今呼んでも有用だと思いますので文末に引用します。また、分かりやすいQ&Aも用意されています。これも秀逸なので文末に引用します。ここで述べられている「抗菌薬の延期処方」という概念が医療者と患者の間で共有できれば確実に抗菌薬の処方は減らせると思います。
 以下、耳鼻科の私が見た専門的な注目点・疑問点を挙げてみます。
1)感染症予防に、手洗い、ワクチン接種、咳エチケットは有用。うがいの予防効果は未定。
2)急性気道感染症を、反応する部位によって、鼻症状が主体の急性鼻副鼻腔炎、咽頭が主体の急性咽頭炎、気管支が主体の急性気管支炎、広く反応する感冒に分けています。治療のフローチャートで、感冒は抗菌薬不要としていますが、耳鼻科でみると感冒の中にも急性副鼻腔炎や急性中耳炎が含まれるケースもあり得ます。
3)急性鼻副鼻腔炎で軽症例は抗菌薬不要となっていますが、前頭洞炎、蝶形洞炎、中鼻道閉塞、鼻茸形成など所見によっては抗菌薬がないと慢性化しやすと考えられる例もあります。鼻副鼻腔炎では小児成人ともにペニシリン系抗菌薬のアモキシリンが推奨されるが、保育児童からの薬剤耐性菌の感染が強く疑われるケースでもアモキシリンがファーストチョイスなのか。
4)急性咽頭炎では、溶連菌迅速検査が陰性で扁桃周囲炎や喉頭蓋炎、咽後膿瘍などの深部感染でなければ抗菌薬不要となっています。扁桃炎における嫌気性菌の反応に関して、明確なEBMがないことから嫌気性菌に対する抗菌薬の必要性は不明となっています。しかし、過去に習慣性扁桃炎を起こしやすかったり、埋没型扁桃で慢性扁桃炎が遷延化したり扁桃周囲炎化しやすい場合には嫌気性菌への抗菌薬を必要とするケースもあります。無症状の溶連菌保菌者への対応法も不明確です。溶連菌咽頭炎の小児にはアモキシリン10日がセフェム系5日投与より推奨されていますが、服薬コンプライアンスの観点からはどうでしょうか。
5)急性気管支炎では、バイタルサインの異常(体温38℃以上、脈拍100以上、呼吸数24以上)だけでも胸部レントゲン撮影を含む精査が望まれるとしているので、咳が出て38℃以上の熱なら抗菌薬投与の判断のためのレントゲン検査を誘導してやや過剰診療を誘導する心配があります。急性気管支炎の治療では慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症の無い成人の気管支炎には抗菌薬は投与しないとなっていますが、抗菌薬が必要となる可能性のあるマイコプラズマ、百日咳、クラミジアに対する具体的な言及が少ないです。マイコプラズマ気管支炎に対しては抗菌薬を支持する根拠は少ないとしているますが、肺炎への移行の可能性をどう判断するのでしょうか。
 この手引きはEBMに基づいて分かりやすく作成されたマニュアルですが、集団保育児の耐性菌保菌問題など、一くくりに出来ないケースもいっぱいありそうです。私が実際の臨床の場で「抗菌薬の適正使用を目指す」指針として今後大いに参考したいと思いますが、正直なところ私自身が風邪に罹った際に”こじらさないために念のために抗生剤を飲みたくなる”立場との葛藤もあります。

 以下、手引きからの引用文です。
【医師から患者への説明例:感冒の場合】
 あなたの「風邪」は、診察した結果、ウイルスによる「感冒」だと思います。つまり、今のところ、抗生物質(抗菌薬)が効かない「感冒」のタイプのようです。症状を和らげるような薬をお出ししておきます。こういう場合はゆっくり休むのが一番の薬です。
 普通、最初の2~3 日が症状のピークで、あとは1 週間から10 日間かけてだんだんと良くなっていくと思います。
 ただし、色々な病気の最初の症状が一見「風邪」のように見えることがあります。また、数百人に1 人くらいの割合で「風邪」の後に肺炎や副鼻腔炎など、バイ菌による感染が後から出てくることが知られています。
 3日以上たっても症状が良くなってこない、あるいはだんだん悪くなってくるような場合や、食事や水分がとれなくなった場合は、血液検査をしたりレントゲンを撮ったりする必要がでてきますので、もう一度受診するようにしてください。

【医師から患者への説明例:急性鼻副鼻腔炎疑いの場合】
 あなたの「風邪」は、鼻の症状が強い「急性鼻副鼻腔炎」のようですが、今のところ、抗生物質(抗菌薬)が必要な状態ではなさそうです。抗生物質により吐き気や下痢、アレルギーなどの副作用が起こることもあり、抗生物質の使用の利点が少なく、抗生物質の使用の利点よりも副作用のリスクが上回ることから、今の状態だと使わない方がよいと思います。症状を和らげるような薬をお出ししておきます。
 一般的には、最初の2~3 日が症状のピークで、あとは1 週間から10 日間かけてだんだんと良くなっていくと思います。
 今後、目の下やおでこの辺りの痛みが強くなってきたり、高い熱が出てきたり、いったん治まりかけた症状が再度悪化するような場合は抗生物質の必要性を考えないといけないので、その時にはまた受診してください。

【医師から患者への説明例:ウイルス性咽頭炎疑いの場合】
 あなたの「風邪」は喉の症状が強い「急性咽頭炎」のようですが、症状からはおそらくウイルスによるものだと思いますので、抗生物質(抗菌薬)が効かないと思われます。抗生物質には吐き気や下痢、アレルギーなどの副作用が起こることもあり、抗生物質の使用の利点が少なく、抗生物質の使用の利点よりも副作用のリスクが上回ることから、今の状態だと使わない方が良いと思います。痛みを和らげる薬をお出ししておきます。
 一般的には、最初の2~3 日が症状のピークで、あとは1 週間から10 日間かけてだんだんと良くなっていくと思います。3 日ほど様子を見て良くならないようならまたいらしてください。
 まず大丈夫だと思いますが、万が一、喉の痛みが強くなって水も飲み込めないような状態になったら診断を考え直す必要がありますので、すぐに受診してください。

【医師から患者への説明例:急性気管支炎患者の場合】
 あなたの「風邪」は咳が強い「急性気管支炎」のようです。熱はないですし、今のところ肺炎を疑うような症状もありません。実は、気管支炎には抗生物質(抗菌薬)はあまり効果がありません。抗生物質により吐き気や下痢、アレルギーなどの副作用が起こることもあり、抗生物質の使用の利点が少なく、抗生物質の使用の利点よりも副作用のリスクが上回ることから、今の状態だと使わない方が良いと思います。
 咳を和らげるような薬をお出ししておきます。
 念ながら、このような場合の咳は2~3 週間続くことが普通で、明日から急に良くなることはありません。咳が出ている間はつらいと思いますが、なんとか症状を抑えていきましょう。1 週間後くらいに様子を見せて下さい。
 もし眠れないほど咳が強くなったり、痰が増えて息苦しさを感じたり、熱が出てくるようなら肺炎を考えてレントゲンを撮ったり、診断を見直す必要が出てくるので、その場合は1 週間たっていなくても受診してください。

【薬剤師から患者への説明例:抗菌薬が出ていない場合の対応例】
 あなたの「風邪」には、医師による診察の結果、今のところ抗生物質(抗菌薬)は必要ないようです。むしろ、抗生物質の服用により、下痢等の副作用を生じることがあり、現時点では抗生物質の服用はお勧めできません。代わりに、症状を和らげるようなお薬が医師より処方されているのでお渡しします。
 だし、色々な病気の最初の症状が「風邪」のように見えることがあります。
 3 日以上たっても症状が良くなってこない、あるいはだんだん悪くなってくるような場合や、食事や水分がとれなくなった場合は、もう一度医療機関を受診するように
してください。
※抗菌薬の処方の有無に関わらず、処方意図を医師が薬剤師に正確に伝えることで、患者への服薬説明が確実になり、患者のコンプライアンスが向上すると考えられている117-118。このことから、患者の同意を得て、処方箋の備考欄又はお薬手帳に病名等を記載することが、医師から薬剤師に処方意図が伝わるためにも望ましい。

【医師から患者への説明例:成人の急性下痢症の場合】
 症状からはウイルス性の腸炎の可能性が高いと思います。このような場合、抗生物質はほとんど効果がなく、腸の中のいわゆる「善玉菌」も殺してしまい、かえって下痢を長引かせる可能性もありますので、対症療法が中心になります。脱水にならないように水分をしっかりとるようにして下さい。一度にたくさん飲むと吐いてしまうかもしれないので、少しずつ飲むと良いと思います。下痢として出てしまった分、口から補うような感じです。
 下痢をしているときは胃腸からの水分吸収能力が落ちているので、単なる水やお茶よりも糖分と塩分が入っているもののほうが良いですよ。食べられるようでしたら、お粥に梅干しを入れて食べると良いと思います。
 一般的には、強い吐き気は1~2 日間くらいでおさまってくると思います。下痢は最初の2~3 日がひどいと思いますが、だんだんおさまってきて1 週間前後で治ることが多いです。
 ご家族の人になるべくうつさないようにトイレの後の手洗いをしっかりすることと、タオルは共用しないようにして下さい。
 便に血が混じったり、お腹がとても痛くなったり、高熱が出てくるようならバイ菌による腸炎とか、虫垂炎、俗に言う「モウチョウ」など他の病気の可能性も考える必要が出てきますので、そのときは再度受診して下さい。万が一水分が飲めない状態になったら点滴が必要になりますので、そのような場合にも受診して下さい。

参考資料
(1) 抗微生物薬適正使用を皆さんに理解していただくために

質問1. ウイルスと細菌は違うのですか?
回答1. 細菌とはひとつの細胞からなる生き物で、大腸菌やブドウ球菌などが含まれます。大きさが数マイクロメートル(千分の1mm)の微生物です。細菌は細胞壁という殻のようなものに囲まれており、その中に細菌が生きるのに必要な様々なタンパクなどの物質を合成したり代謝を行ったりする装置(細胞内器官と呼びます)と遺伝子を持っていて、それらの装置や遺伝子を使って自力で分裂して増えていくことができます。一方、ウイルスは細胞ではなく、遺伝子とタンパク質など物質の集まり(大きさは数十ナノメートル、細菌の1 万分の1 程度)だけの微生物です。例えばインフルエンザウイルスやノロウイルスなどです。自力では物質の合成や代謝ができず(そのような装置を持っていないため)、ヒトや動物の細胞の中に入り込んで、その細胞の中の装置を借りて遺伝子やタンパク質を合成してもらわないと増えることができません。

質問2. 抗微生物薬、抗菌薬、抗生物質、抗生剤の違いは何でしょうか?
回答2. 細菌、ウイルス、カビ(真菌と呼びます)、原虫、寄生虫など様々な分類の小さな生物をまとめて微生物といいます。微生物を退治する薬をすべてまとめて抗微生物薬と呼びます。つまり、抗微生物薬には細菌に効く薬、ウイルスに効く薬、カビに効く薬など多くの種類の薬が含まれていることになります。とりわけ細菌に効く薬は細菌による病気(感染症)の治療に使われ、そのような薬を抗菌薬と呼んだり抗生物質、抗生剤と呼んだりします。抗菌薬と抗生物質は厳密に学問的にいうと少し意味が違うのですが、一般的には同じ意味だと考えて差し支えありません。
抗生物質(抗菌薬)が効くかどうかを含めて、細菌とウイルスの違いをまとめると下の表のようになります。注意していただきたい点は、抗生物質(抗菌薬)はウイルスには効果がない、という点です。
※日常会話では「細菌」の代わりに「バイ菌」と言うこともありますが、一般的に「バイ菌」は全ての微生物(細菌、ウイルス、カビ、原虫などを含む)を指して使われていま

質問3. 薬剤耐性(AMR)とはどのようなことでしょうか?私に関係あるのでしょうか?
回答3. 細菌は増殖の速度が速いので、人や動物よりも桁違いに速く進化(遺伝子が変化)します。
細菌の周りに抗生物質(抗菌薬)があると、たまたま進化の中でその抗生物質(抗菌薬)に抵抗性を身につけた細菌が多く生き残ることになります。このように細菌が抗生物質(抗菌薬)に抵抗性を身につけ、抗生物質(抗菌薬)が効かなくなることを薬剤耐性(Antimicrobial resistance:AMR)と言い、薬剤耐性(AMR)を身につけた細菌を(薬剤)耐性菌と言います。「MRSA」や「多剤耐性緑膿菌」は耐性菌の一種です。また、薬剤耐性(AMR)は、例えばウイルスでも薬剤耐性は起こります。耐性菌が身体の表面や腸の中に住み着いている人に抗生物質(抗菌薬)を使うと、耐性菌以外の細菌は抗生物質(抗菌薬)で死んでしまうので、耐性菌だけが生き残り、身体の表面や腸の中などで増えることになります。普段、健康な私たちでも、耐性菌によって感染症を起こしてしまうと、本来効いてくれるはずの抗生物質(抗菌薬)が効きにくく、治療が難しくなること(症状が長く続く、通院で済むはずが入院しなければならなくなる等)があります。都合の悪いことに、このような耐性菌が日本を含む世界各地で増えています。抗生物質(抗菌薬)を大切に使わなければ、将来、抗生物質(抗菌薬)が効かなくなり、多くの方が感染症で命を落とすことになると考えられています。薬剤耐性(AMR)は、私たち一人ひとりが、抗生物質(抗菌薬)を使ったことで起こる問題です。私たちは、より丁寧に診察を行い、より大切に抗生物質(抗菌薬)を使いたいと考えています。皆さんには、抗生物質(抗菌薬)が必要であれば必要と、不必要であれば不必要と、しっかりと説明しますので、ご理解ください。

質問4. これからは、風邪を引いた、又は下痢をしているのに抗生物質(抗菌薬)を出してもらえないのでしょうか?
回答4. 医師はいつも患者さんの速やかな回復を願って診療しています。今後もその方針は何ら変わりません。一見、ウイルスによる風邪や下痢のように見える感染症の中には抗生物質(抗菌薬)の効く細菌による感染症が一部含まれていることは事実ですが、風邪や下痢の大部分は抗生物質(抗菌薬)の効かないウイルス性の感染症や抗生物質(抗菌薬)を飲んでも飲まなくても自然に治る感染症です。抗生物質(抗菌薬)が効くか効かないかはとても大切な区別ですので、私たちはこの手引きに従って、抗生物質(抗菌薬)が必要ないことを確かめた上で抗生物質(抗菌薬)を処方するかしないかを判断しています。

質問5. ウイルス感染症などの自然に治る感染症に対して抗生物質(抗菌薬)を使うと何か悪いことがあるのでしょうか?
回答5. 抗生物質(抗菌薬)は細菌の細胞内の装置を阻害する薬ですので、細菌を退治する効果があります。ウイルスは細胞ではないので抗生物質(抗菌薬)は効きません。抗生物質(抗菌薬)はヒトの細胞には作用しないので健康な人が飲んでも直接の害はほとんどありませんが、薬とはいえ人にとっては異物ですので、アレルギー反応を生じたり、肝臓や腎臓を傷めたりすることがあります。また、口から腸の中や皮膚には、無害な細菌や有益な細菌(いわゆる善玉菌)が数多く住みついています(常在菌と呼びます)。抗生物質(抗菌薬)は常在菌を殺してしまい、下痢や腹痛を起こすことがあります。さらに、常在菌を殺してしまうと、抗生物質(抗菌薬)が効かないように変身した細菌(耐性菌と呼びます)やカビが身体の表面や腸の中で生き残って増えてしまうことがあります。抗生物質(抗菌薬)を飲んだ人には、そのようにして増えた耐性菌やカビが感染症を起こしたり、他人に感染症を起こす原因になったりすることがあります。つまり、抗生物質(抗菌薬)は不要の人には悪い効果しかありません。そして、世の中に抗生物質(抗菌薬)を飲む人が多ければ多いほど、人々(抗生物質を飲む人も飲まない人でも)の身体には耐性菌が多く住み着いている状態になります。そうすると、これから先、あなたやあなたの近くの人が細菌感染症に罹ってしまった場合に、本来効くはずの抗生物質(抗菌薬)が効かない、という状況に陥ってしまいやすくなります。このような状況は以前から指摘されていて、この数年、全世界的な問題になっています。その対策としては、抗生物質(抗菌薬)を本当に必要な場合のみに使う(不要の場合は使わない)ということが求められています。

質問6. 以前に風邪や下痢になった時に抗生物質(抗菌薬)を出してもらったことがありますが、それはなぜでしょうか?
回答6. これまで同じような症状の場合には抗生物質(抗菌薬)をもらっていたのがどうしてなのか、疑問に思われるかもしれません。これまで私たち医師が、同じような症状の時に抗生物質(抗菌薬)を出していたことがありますが、それにはいくつか理由が考えられます。
① 入念な診察の結果、単なる風邪か下痢ではなく、抗生物質(抗菌薬)が必要な細菌による感染症だと診断した。
② 抗生物質(抗菌薬)が必要な細菌による感染症か、抗生物質(抗菌薬)が不要なウイルス感染症かの区別をすることが不十分だった。
③ 抗生物質(抗菌薬)を出したら患者さんが良くなったという経験から、抗生物質(抗菌薬)が効いたから良くなったように感じてしまった。
④ 抗生物質(抗菌薬)を出してほしいという患者さんからの強い要望に応えようとした。
 この手引きは抗生物質(抗菌薬)を使わないためのものではありません。抗生物質(抗菌薬)が必要かどうかを見極めるためのものです。診察の結果、①の場合は今後も私たち医師は抗生物質(抗菌薬)を処方して飲んでいただきます。私たちはこの手引きを使って慎重に診察することで、抗生物質(抗菌薬)が必要な感染症か不要かをできる限り区別し、②の理由による抗生物質の使用を減らそうとしています。私たちはこの手引きの内容に従って入念に慎重に診察を行い、投与すべきではないと判断した場合には抗生物質(抗菌薬)を処方していません。ただ、これまで、③や④の理由で抗生物質(抗菌薬)を処方していたとも言われています。
 感冒やほとんどの下痢は抗生物質(抗菌薬)を飲まなくても自然に軽快します。仮にあなたの“かぜ”が、発熱や気道症状が3 日間続いた後に解熱して改善する“感冒”だったとします。1 日目、2 日目は市販の感冒薬を飲んで自宅で休んでいたのですが良くならないので3 日目に病院を受診しました。医師の指示した抗生物質(抗菌薬)を飲んだところ、翌日には解熱して症状が良くなってきました。この時、患者さんにとっても医師にとっても抗生物質(抗菌薬)が良く効いたように見えるでしょう。しかし、実際に起きたことは、順序として、抗菌薬を飲み始めた後で症状が良くなってきた、ということであって、抗生物質(抗菌薬)を飲んだことが理由で症状が良くなった、ということではありません。医師は「ウイルスには抗生物質(抗菌薬)は効かない」ということが頭ではわかっています。しかし、患者さんは「抗生物質(抗菌薬)を飲んだから良くなった」と思うことでしょう。医師はそのように、抗生物質(抗菌薬)を処方した翌日に症状が良くなったという患者さんをたくさん経験していますから、「効いていないにしても患者さんが良くなったのだから、抗生物質(抗菌薬)を出してよかった」という記憶が残ってしまいます。このような経験を繰り返しているうちに、医師自身、抗生物質(抗菌薬)を出した方が患者さんに喜ばれるのではないか?という気になってしまっていたのです。
 結果として「風邪を引いたらお医者さんで抗生物質をもらったら治る」という思い込みができても仕方ありません。まれですが「以前に飲んだらすぐに治ったから、今回も抗生物質を出してほしい」と強く希望される患者さんもいます。医師は患者さんに満足してもらうことを優先しますから、そういう希望を聞いたり、会話の中で感じ取ったりして、患者さんに安心していただくために抗生物質(抗菌薬)を出していたことがあるかもしれません。

質問7. これからは、風邪や下痢の時に抗生物質(抗菌薬)を出さないのですか?
回答7. 風邪や下痢には抗生物質(抗菌薬)を出さないということではありません。風邪や下痢の時に、抗生物質(抗菌薬)が必要かどうかを正しく診断できるように診察を進め、必要がないと診断した場合には出さないということです。抗生物質(抗菌薬)が出ていないことで心配に感じられるのであれば、是非お申し出ください。どのように診察して診断したかをご安心できるように詳しく説明いたします。
 今まで、医師と患者さんの経験と行動の積み重ねから、抗生物質(抗菌薬)の使いすぎを生じ、そして現在の薬剤耐性(AMR)問題をもたらしてしまいました。これまで医師は、このような「抗生物質(抗菌薬)は、本当は不要でも有害ではないのだから良いだろう」という考えで抗生物質(抗菌薬)を処方していたかもしれません。しかし、これからは違います。この手引きを使って本当に抗生物質(抗菌薬)が必要な状況と不必要な状況をしっかりと区別し、抗生物質(抗菌薬)が必要な患者さんにだけ抗生物質(抗菌薬)を投与する方針をとりたいと考えています。そのようにしないと、薬剤耐性(AMR)問題は悪化する一方で、抗菌薬が効いてほしいときに効いてくれない薬になってしまう可能性があり、既にある程度、そのようになってしまっていることがわかっています。
 私たち医師はいつでもすべての患者さんの速やかな回復を願って診療しています。抗生物質(抗菌薬)の良く効く細菌による感染症の場合にはもちろん抗生物質(抗菌薬)を飲んでもらいます。そのような感染症を見逃さないように慎重に診察を行います。その上で抗生物質(抗菌薬)が必要ないことを確かめた場合には私たちは抗生物質(抗菌薬)を処方しません。抗生物質(抗菌薬)がいざという時(本当に細菌による感染症だった時)に皆さんに良く効く薬であるためですのでご理解ください。

(2) 抗菌薬の延期処方とは
 近年、急性気道感染症における抗菌薬使用削減のための戦略として、抗菌薬の延期処方(Delayed Antibiotics Prescription: DAP)に関する科学的知見が集まってきている114-116。DAP は、初診時に抗菌薬投与の明らかな適応がない患者に対して、その場で抗菌薬を投与するのではなく、その後の経過が思わしくない場合にのみに抗菌薬を投与する手法であり、不必要な処方を減らすためにも有効であることから、英国では急性気道感染症に関する国の指針においてDAP が推奨されている157,158。日本においてDAP を行う場合は、初診時は抗菌薬を処方せず、症状が悪化した場合や遷延する場合に再度受診をしてもらい、改めて抗菌薬処方の必要性を再評価するという方法が考えられる。
 海外の事例を一例として挙げると、スペインで行われた多施設無作為化比較試験では、18 歳以上の急性気道感染症(急性咽頭炎、急性鼻副鼻腔炎、急性気管支炎、軽症から中等症の慢性閉塞性肺疾患急性増悪)で、抗菌薬の明らかな適応がないと医師が判断した患者について、初診時に抗菌薬を処方し内服を開始する群(すぐに内服群)と、経過が思わしくない場合に抗菌薬の内服を開始する群(DAP 群)注16、抗菌薬を処方しない群(処方なし群)に割り付け、その後の状況について比較した研究結果が示されている116。
 この研究では、実際に抗菌薬を使用した割合はすぐに内服群で91.1%、DAP 群で23.0%~32.6%、処方なし群で12.1%である一方で、症状が中等度又は重度の期間はすぐに内服群で短いものの、中等度の期間又は重度の期間の差はそれぞれ平均 0.5~1.3 日、0.4~1.5 日と臨床的に意味のある差とは言いがたく、一方で、合併症、副作用、予期しない受診、30 日後の全身健康状態、患者の満足度については差が見られなかったことが報告されている116。
 以上のようなことを踏まえ、DAP を行うことで、合併症や副作用、予期しない受診などの好ましくない転帰を増やすことなく抗菌薬処方を減らすことができると考えられている114-116。
 ここで大事な点は、患者を経時的に診るという視点である。患者の医療機関へのアクセスが比較的良い日本では、症状が悪化した場合や数日しても症状が改善しない場合に同じ医療機関を受診するように説明しておき、再診時に抗菌薬の適応を再検討するほうが現実的かつ望ましいと考えられる。普段の忙しい診療のなかでの「一点」のみでは急性気道感染症等に対する適切な診断が難しい場合があることを認識し、急性気道感染症等の通常の経過はどのようなものか、また、今後どのような症状に注意してもらい、どのような時に再診をしてもらうべきか、どのようになった場合に抗菌薬の適応となりうるか、という「線」の時間軸で診療を行い、その内容に沿った患者への説明を行うことが重要である。外来診療では、この「線」の時間軸による考えが適切な感染症診療にも役立ち、抗菌薬の適正使用にもつながる、と再認識してもらえれば幸いである。
  (厚生労働省 抗微生物薬適正使用の手引き 第一版 2017より引用) 
     
  28日   アデノウイルス感染症の中の咽頭結膜熱(プール熱)が、全国的には過去10年で最も最多となっていますが、松山ではまだそんなには目立っていません。当院も含めて、むしろ溶連菌感染症が目立っています。
 幼稚園や保育園でもそろそろ水遊び、プール遊びが始まりました。急性中耳炎のお子様はプール遊びはしばらく控えます。鼓膜チューブを留置したお子様は、2015年版小児滲出性中耳炎ガイドラインに沿って、出来るだけ耳栓なしで水泳に参加できるよう個々の子供たちの状態に応じてアドバイスしています。

 NHK特集のAI(人工知能)の番組を見ました。IT(Information Technology)の最近の注目は、AI(Artificial Intelligence)とIoT(Internet of Things モノのインターネット)です。医療ではさらに遠隔診療の実用化が始まります。
 NHK特集では、すでに実用化されたAIの事例が紹介されていました。数千分の1秒単位で判断する株式市場での投資システム、どこを走れば効率よくお客が捕まるのかルートを示すタクシーのシステム、面談の会話記録から辞職しそうな人を割り出す人材管理システム、受刑者の再犯率を示すシステムなどです。機械学習で人間なら数千年かかる対局を自ら行い自己学習する囲碁や将棋のシステムからは、開発者ですらコンピュータが何を学習した上で指示を出すか分からなくなっていることから、AIのブラックボックス化が示されていました。米国のなかなか仮釈放が認められない受刑者は、AIで再犯率が高い可能性があることを告げられても、どのような根拠で自分の再犯率が高いと判定されたかが示されなかったことに困惑していました。ブラックボックス化したAIでは、トータルで見れば有効性が示されるものの、個々の事象ではバラツキがでることが問題になりそうです。このバラツキをどれだけ許容するかがAI活用のキモになりそうです。また、今後AIが普及してくると、ブラックボックスの中を悪意をもって無断操作して、意図的に結果を変える犯罪も起こりそうです。
 AIの領域の中でも医療の分野は、早く実用化される分野かも知れません。画像診断の分野や、問診に始まりいろんなデータを積み重ねて診断をつける外来の診療現場は、AIが得意とする分野となりそうです。私は、IT企業の中でもGoogleやAmazonの情報収集と処理に対する貪欲な向上心には恐れすら感じます。昨日、往診に向かおうとGoogle mapで住所地番を検索すると、地図の上の位置情報とともにその家の玄関の写真が掲示されたのには驚きました。そう遠くない時代に、スマホ上の音声認識で症状を伝えると、疑われる疾患の可能性のパーセンテージと、身近な医療機関の紹介がたちどころに示されるようになりそうです。病院でも、診察前の問診の段階でAIがまず判断して、医師の診察が始まる前にあらかじめAIが求めた検査が行われる、となるかも知れません。
 日本発のAIのベンチャー企業プリファード・ネットワークスは、ディープラーニングを利用して乳がんの早期発見精度を99%以上に高める技術を発表しました。多数の乳腺組織の顕微鏡画像を機械学習して乳癌組織を発見します。同社は眼底鏡所見から人間が見落としそうになる所見を捉える技術も開発しています。いずれも病理医や眼科医が判断するよりも何倍も速く判定し、件数もこなし疲れを知りません。画像認識はAIの得意とするところですので、耳鼻科関連の病理診断でも、AIの診断を見た上で病理医が最終確認する、鼓膜や鼻腔・口腔咽頭・喉頭の画像所見よりAIが鑑別すべき疾患を挙げるようになりそうです。これらの実用化はいつ頃になるのでしょうか。Googleの開発スピードを見ていると、案外数年で実用されるかも知れません。
 その他のITの医療関連の話題を挙げます。厚労省は今年、遠隔診療を普及させる方向に舵を切りました。福岡市では市、医師会、病院が参加する遠隔診療の試行が始まりました。来春の診療報酬改定で誘導があれば、遠隔診療が本格的に始まるかもしれません。これまで医師法では、離島や僻地以外では対面しない診療は無診察治療になるとされ禁じられていましたが、インターネット上のタブレット端末などで対面していればかまわないとするようです。耳鼻科では、一般診療でも、耳や鼻、のどの奥などの深い部位を覗く必要がありますので、直ぐに遠隔診療がオールマイティーに可能とはなりませんが、血液検査を必要としないような内科的慢性疾患では、自宅で診察をすませて処方箋だけ添付ファイルで受け取るなどの診察風景は直ぐにやってくるかも知れません。 
  23日   厚生労働省が、咳止め成分の「コデイン」の12才未満での使用を禁忌とすることを昨日決定しました。
 コデインは中枢性鎮咳薬または麻薬性鎮咳薬と呼ばれ、脳内に作用して”痒い咳こみ”を抑えます。市販薬OTCでも認められた薬剤ですので、咳止め成分として風邪薬など約600種類の市販薬にも広く使われています。コデインによる有害事象としては、これまでにも、成人における大量長期服用による精神依存や薬剤耐性が問題となっていました。これはモルヒネ様作用があることによりますが、咳止めとして使われるリン酸コデインは低濃度で投与されることから、通常の服薬量や服薬頻度では依存性の心配はありません。またコデインには鎮咳作用とともに、モルヒネの1/6の鎮痛作用や腸蠕動の抑制作用もありますので、成人でも便秘を誘発する場合があります。さらに、中枢性に咳を鎮めることから生理的な防御反射である咳を必要以上に抑え込むことになり、喀痰の排出力の弱い乳幼児や高齢者では肺炎や喘息を悪化させる可能性もあります。
 このように注意点はもろもろあるものの”安全に咳を鎮めることができる”ことから市販薬でも古くから使われてきた経緯がありました。ところが、今年4月に米国で、コデイン服用により呼吸困難を引き起こすケースがあることから12才未満への医師による処方が禁止されました。我が国でもこれを踏まえて専門家会議で検討した結果、7年間でコデインを含む薬を処方された少なくとも24人に呼吸困難などの症状が出ていたことから、副作用が生じるケースは少ないとしながらも、「特に子どもはまれに呼吸困難などの重い副作用が出るおそれがある」として、12才未満への使用を禁止すべきだとする見解をまとめました。これを受けて厚労省は2年後をめどに、市販薬と処方薬の両方について12才未満への使用を禁止することを決めたとのことです。
 私もこれまでコデイン含有薬は、主にフスコデ配合薬として処方していました。フスコデにはシロップ剤、散剤もあり、添付文書上も小児での投薬が認められていたことから小児へも処方していました。市販薬としてはこれまでも2才未満への投与は禁じており、また乳幼児は喀痰排出能も弱いことから、私は2才以上の気道アレルギーの素因があり咳喘息的な病態の小児に処方していました。また、フスコデは、ジヒドロコデインリン酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩という3つの成分の合剤でした。1剤型に複数の薬効が含まれた医科用薬は少なく、エフェドリンが入っていたことから気管支拡張作用もあって重宝していました。細気管支炎や気管支肺炎、気管支喘息まで至らない聴診所見で問題の無い小児の、夜間の咳込には良く効きます。日本人では西欧人以上に呼吸困難になるケースは稀だとの報告ですが、中枢性?と思われる呼吸困難が引き起こされる可能性があるのであれば、やはり投薬は控えるべきでしょう。小児用の”便利な”お薬がひとつ減ることになりますが仕方ありません。エフェドリンのみの成分の処方薬の散剤もありますが、小児薬用量も規定された薬剤はありませんので、これからは小児用の気管支拡張剤はホクナリンテープをはじめとしたβ刺激剤が主体となります。フスコデの無い処方を工夫していきたいと思います。
 過去の振り返れば、小児用薬で使用が制限されたものでは、インフルエンザへの抗ウイルス薬タミフル、インフルエンザ脳症への消炎鎮痛解熱剤ボルタレン・ポンタール、発熱時のキサンチン製剤、熱性痙攣へのジアゼパム坐薬、痙攣体質へのザジテンをはじめとした抗ヒスタミン剤などが思い浮かびます。脳や体の発達が未熟で薬剤の代謝能力も弱い小児に対しては、効果が弱くても安全が確立されたものを処方することが必要です。今回の厚労省の通達で、再認識再確認したいと思います。
  19日   6月7日に梅雨入りして2週間が経ちましたが、毎日、爽やかな晴れ空が広がっています。今日の松山は30℃越えの真夏日でした。まるで梅雨が明けたような空でした。そのせいか気道過敏症やメニエール病など低気圧で増悪する病気は少ないようです。明日からはさすがに梅雨前線が北上してくるようです。低気圧に弱い方は、疲れをためたり体を冷やしたりしないなど体調を崩さないよう心掛けて下さい。
 当院でインフルエンザB型が最後に検出されてから10日経ちました。さすがに今度でインフルの流行は終息のようです。
 夏風邪のアデノウイルス感染症が全国的に目立ってきていますが、当院や愛媛県では目立っては増えていません。同じく夏風邪の手足口病が徐々に増えてきていますが、やはり現在流行のタイプは症状が軽いようです。お子さんからうつされて発症したお母さんも見られましたが、やはり大人で発症する方はごく少数です。現在の流行のタイプについてですが、5月末に松山で検出されたタイプはコクサッキーA6型でした。このタイプは2009年から日本で検出されるようになったタイプで、治癒期に爪が剥奪するケースもあります。2009年当時は欧米で最初に報告されました。私も初めて見たときは少々驚きましたが、今シーズンのA6型ではそのようなケースはまだ見当たりません。梅雨明けの夏本番にウイルスの活性が強くなると見られるかもしれませんので、これからは少し留意して診察してみます。手足口病ではエンテロウイルス71型が無菌性髄膜炎を引き起こします。幸いここ数年、71型の流行はありません。今年も流行せずに推移して欲しいものです。

 先週末は、いびきの治療装具であるナステントの指示書を希望して来院される方が目立ちました。大多数の方は、以前に使用経験があり先週の販売再開による新規の指示書を希望する方でした。ほとんどの方が、以前使用していたタイプで挿入する左右、長さ、硬さなど適切にフィッティングできており、指示内容を変更する必要なある方はおられませんでした。当院では今後とも主にフィッティングのみを行う予定です。愛媛県内の大手ドラッグストアでは今後以前のように取り扱いが再開されるとの情報もありますので、患者様の定期購入はそちらでお願いする予定です。

 学校健診の結果通知書を持って来院する学童達も目立ちます。プールの時期の中耳炎や鼻血、細菌性副鼻腔炎では、しっかりした治療を進めます。アレルギー性鼻炎は「体質」ともいえる病気ですので、環境改善や生活指導とどのようなレベルで治療を行うべきなのか、本人や保護者へのアドバイスを主に行います。頭痛や集中力不足などがあれば積極的な治療も考慮します。学童嗄声や起立性調節障害を中心としためまい症でも、体質としての留意点をお伝えした上で、治療の必要性についてアドバイスしています。耳あか(耳垢栓塞)では、来年の健診で指摘されないようにするための耳掃除の仕方のアドバイスを行っています。

 2016年度の携帯電話の総出荷台数に占めるスマートフォンの割合は82.6%、従来の「ガラケー」であるフィーチャーフォンは17.4%だったそうです。携帯電話の世帯普及率も95%で頭打ち、PHSが新規契約を中止しました。当院の待合室でも老若男女を問わずほとんどの方がスマホで通信や検索を行っています。このような背景から、当院では今年度からタウンページでの広告掲載を取りやめました。院内の公衆電話も撤去しました。時代の移り代わりを実感します。(なお、院内からの公衆電話の利用を希望する方には、県内の通話程度であれば無料で電話を利用して頂くことにしました)

  精神疾患に伴う耳鳴症、頚部腫瘍、耳下腺腫瘍、咬筋筋炎、おたふくかぜ、耳管開放症、味覚異常、嗅覚異常など 
  13日   昨日、今日と「ナステント・クラシック」の問い合わせが相次ぎました。ナステントはいびきや閉塞型睡眠時無呼吸の治療器具で、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社という我が国の会社が開発しました。シリコーン製の軟らかいチューブを鼻からのどに通すことによって、睡眠中に軟口蓋が落ち込んでも気道が確保されることにより、いびきや睡眠時無呼吸を軽減します。治療器具ではありますが、ドラッグストアでも購入できます。就眠前に患者さん自身で鼻に挿入するセルフメディケーションに近い医療器具です。昨年、装着中に間違ってチューブを誤嚥するという事例があったために製造会社が販売中止していました。治療のための管理体制を見直して、昨日6月12日より販売が再開されました。今後は治療開始時に、ナステントのサイズや硬さを医療機関でフィッティングした上で、医師から指示書を入手、その指示書が購入に際して必要となりました。私は、先月の日本耳鼻咽喉科学会の機械展示会場で、ナステントの会社からの説明を受けて販売再開を知りました。その際、引き続き当院が、取り扱い医療機関となることを確認していました。そのため、昨日の販売開始に伴い、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社のナステントのホームページ上で取り扱い医療機関が公表されましたが、当院がいち早く掲載されたようです。昨日から急に愛媛県全域から問い合わせが寄せられるようになったのですが、理由は愛媛県での掲載医療機関がまだ当院だけだったためでした。私はフィッティングのマニュアルや指示書の準備をそのうちに、、と思っていたところ、急に問合せが来たために応対に当ったスタッフも困惑したようです。私の準備不足が原因でした。問い合わせた患者様、スタッフに失礼しました。今日の診察終了後には、書類やフィッティングの機材を用意しました。明日からはしっかり対応致します。(__)  
  8日  昨日、当院近隣の余土小学校の生徒さんからB型インフルを検出しました。聞けば複数の学年でインフルが発生しているとのこと。昨日の生徒さんを診察するまでは、「六ヵ月半に渡ったインフルの流行がようやく終わり、夏風邪の季節です」とお伝えしながら診察していたのですが、、 16/17シーズンのインフルエンザは実にしぶといです。 
  7日    ここ一ヵ月ほど、嚥下困難な方の診察が相次ぎました。嚥下障害の方には当院でも嚥下内視鏡検査で、嚥下機能を評価しています。
 嚥下障害の40%は脳梗塞後に発症しているとのデータもあるように、嚥下障害の治療は、耳鼻科だけでなく、神経内科、脳外科、リハビリ科、歯科や在宅医療、介護、栄養師などの様々な立場が集まって行う集学的な領域です。耳鼻咽喉科は、誤嚥にもっとも影響をあたえる咽喉頭の機能を中心に、嚥下運動を総合的に評価します。耳鼻科領域でも、ここ10年ほどで高知大学耳鼻咽喉科の兵頭教授を筆頭にして嚥下障害の診断治療への取り組みが活発になっています。兵頭先生が提案された嚥下内視鏡検査の評価基準である兵頭スコアが優れもので、嚥下障害の客観化が容易になっています。
 また、高齢者の誤嚥性肺炎も注目を集めています。65才以上の高齢者の約半数が睡眠中に唾液を肺に誤嚥しているともされています。高齢者に睡眠中に唾液が気道に流れ込む“不顕性誤嚥”があると、夜間に唾液分泌が止まり唾液の浄化作用が落ちる→細菌が夜間に急激に繁殖する→口腔内のバイオフィルムで固まった細菌塊が過剰に形成される→誤嚥→肺内で細菌が増殖 の機序で肺炎を引き起こします。特に、免疫力の落ちた高齢者で、口腔内に汚れがあり、日常的に誤嚥があると、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくなります。誤嚥性肺炎は、一般的な感染性の細菌性肺炎と異なり、初期症状が原因不明の発熱や食欲減退程度で、最初は肺炎と気づかれないケースもあります。しかし、免疫力が落ちている場合には、ARDS(急性呼吸促迫症候群)を発症して急に重症化する危険性もあります。当院のような外来中心の診療所でも、嚥下障害を早期に発見、評価して、適切な生活指導や食事指導、嚥下訓練が行えればと思っています。また、将来の重症化が心配されるケースでは、出来るだけ早期から、在宅医療や介護の現場との連絡を密にしたいと思います。
 先に私が参加した日耳鼻総会の講習会も参考にして、当ホームページのなぜなに耳鼻科の病気のコーナーに「嚥下障害・誤嚥性肺炎について」のページを作成しました。また、当院では嚥下機能評価用紙を基にして、嚥下内視鏡検査を行いたいと思います。
  5日  今日は当院のオンライン受付・待ち時間確認システム「iTicket」のシステム障害が起こりました。午前9時の段階で不調が始まり、一時復旧しかけましたが、昼前より再度不調となったため、当院では今日一日、運用を中止しました。当院でこのシステムを導入して12年になりますが、運用中止は初めてです。夕刻に運用会社から届いたFAXによると、サーバーの増強で改善を図るとのことでした。iTicketはオンライン予約システムでは日本でトップシェアを誇ります。加入する医療機関の増加とともにサーバーの増強を繰り返しておられるようですが、月曜日の朝のアクセス過多による障害だったのでしょうか? 当院はiTicketが立ち上がった早い段階から利用しています。当院が関わる事業者が頑張っていることで、私も誇らしい気持ちでした。iTicetさん、システム障害を乗り超えて下さい。今後の発展を祈っています! (^^)v

 その後も当院でのインフルエンザの検出はありません。代わって夏風邪のアデノウイルス咽頭炎と手足口病が小児の感染症では目立ってきました。昨年流行した手足口病のタイプは、皮疹が体幹や頭部まで広がるタイプでした。数年前には手足の先で皮膚がむける落屑を生じるタイプも見られました。また数年に一度は無菌性髄膜炎を起こしやすいタイプも流行します。このようにエンテロウイルス系の感染症である手足口病も流行のタイプによっては侮れません。今夏、流行し始めたタイプは、今のところ口内炎も皮疹も軽いタイプですが、これから暑い季節になるとウイルスの活動性が高まり症状が強くなる可能性もあります。今後の症状の出方に注意したいと思います。

  甲状腺癌、好酸球性副鼻腔炎、耳介皮様嚢腫など。 
6月  2日    6月に入りました。沖縄・奄美では5月13日に梅雨入りしましたが、松山も来週には梅雨入りでしょうか? 松山市医師会からの報告では、先週でインフルの流行はほぼ終息したとのことです。当院でもインフルエンザを検出しなくなって今日で5日目です。2016/2017シーズンに当院では、9月上旬にA型を検出後、11月13日に松前町の小学生から検出以来6ヶ月半、長かったインフルのシーズンもやっと終わったようです。


 院内の改装に引き続き、課題だった正面玄関脇の植栽を整えました。来院された方の中には気付かれた方もおられるのではないでしょうか。玄関前の階段周囲は夏には直射日光が照りつけますので、毎年水やりをしっかり行っていても少しずつ豆つげが枯れていました。そこで今年は、植木屋さんお勧めの、乾燥に強い”シャリンバイ(車輪梅)”を植えました。台湾から東北南部まで分布するバラ科の常緑低木です。乾燥や大気汚染に強いことから道路脇の分離帯などに植栽されたり、艶のある常緑葉が美しく刈り込みに耐えるため庭木として利用されるそうです。4-6月に花をつけ、10-11月に直径1cm程の果実をつけるそうです。どんな花かどんな果実か、今から楽しみです。 
     
  26日   当院では先週を通して、インフルエンザが検出されています。梅雨入りを前にした今の時期に、A型、B型ともに見られるのシーズンは初めてではないでしょうか? 愛媛県の報告でも先週もインフルエンザは前週比横ばいで発生し無くなっていません。全国的には、やはり沖縄で例年通り定点当たり8人と流行が続いています。本州も徐々に沖縄化しているのでしょうか? 小児の夏風邪の代表的な疾患の手足口病が先週から当院でも見られ始めています。一部の保育園で流行っているとの情報もありました。インフルエンザが残りながら夏風邪が増えてくる、妙な感覚の梅雨入り前です。
 松山の梅雨は、平年平均では、梅雨入りが6月5日、梅雨明けが7月18日となっています。早い知歯は5月19日には梅雨入りし、遅い年は6月21日の年もありました。梅雨入りとともに、イネ科花粉症が目立たなくなり、ダニやカビが増殖してハウスダストアレルギーが目立つようになります。梅雨入り頃に、小学校がプール開きし、オフィスで冷房がかかりますので、気道過敏症が強くなります。メニエール病や片頭痛など低気圧で悪化する病気も目立り、夏風邪も流行ってきます。もう1週間ほどで梅雨入りです。

 私の診療では漢方薬も大きなウェイトを占めています。まず西洋医学に則り診察や検査を行い、診断をつけて治療を行いますが、西洋医学的な治療によるアプローチだけでは解決しない場合に、ことのほか東洋医学的アプローチが有効な場合もあります。例えば、西洋医学の解熱剤は熱中枢のセットポイントを変えて熱を下げますが、漢方薬では発汗により熱を逃がします。時には漢方薬の方が生理的に作用する場合があるのです。私が汎用する漢方薬に五苓散がありますが、体の余分な水毒を速攻で除きますので、嘔吐下痢症やメニエール病などにしっかりと効きます。小児の風邪や中耳炎でも漢方薬を活用しています。小青竜湯、麦門冬湯、神秘湯、柴苓湯などなどよく使います。ところが、小児にとって漢方薬は鬼門でもあります。なんといっても味が苦くてうまく服薬できない場合が多いのです。無理やり飲ませると、他のお薬まで嫌いになってしまうことも心配しなければいけません。漢方の飲ませ方にいい方法はないのかと思っていたところ、良い本がありました。「フローチャート こども漢方薬 びっくり・おいしい飲ませ方」(坂崎弘美、新見正則著 振興医学出版社、2017年)です。小児科医の坂崎氏が、いかにおいしく漢方薬を飲ませることが出来るのか、子供目線に立って、様々な工夫を紹介しています。特に、”単シロップ割り”と言う、お湯で溶かして単シロップで甘くして、冷やして飲む、という処方は、本当においしそうです。当院でも、早速試してみたいと思います。


 広島での耳鼻咽喉科学会総会に向けて、朝4時過ぎにマイカーで出発しました。ちょうど来島海峡大橋を通過中に、真正面に朝日が登ってきました!


 平和記念公園内にある会場の広島国際会議場には午前7時過ぎには到着です。昨年秋の専門医講習会と同じ会場でした。こんなことはめったにありません。


 早朝で原爆死没者慰霊碑に人影はまばらでした。あの8月6日と同じような雲ひとつない快晴の朝でした。青空の下、その時を思うと感無量でした。


 5月、修学旅行のシーズンです。大人はまばらでも、朝から、慰霊碑をめぐる修学旅行の学生さんが研修ノート片手に集まっていました。


 帰り道、しまなみ海道の因島大橋上で夕日に遭遇です。朝日とともに向かい、夕日とともに帰りました。


 5月の連休、父母を連れて同じ”しまなみ”を通りました。大島、亀老山展望公園から見た来島海峡大橋です。絵葉書でもよく見るアングルです。足腰の弱った父は登れず、私ひとりでの登楼でした。


 県境に架かる多々羅大橋です。いつ見ても美しいフォルムです。




 今治は造船と船主企業の町です。しまなみ海道からはいくつもの造船所が見られます。今治市出身の丹下健三氏が設計した今治市公会堂の横には巨大な船のスクリューのモニュメントが据えられています。 
  23日   松山地方気象台の発表では、昨日の松山の最高気温は27.8℃で今年最高、6月下旬並みでした。今日も27℃台で、当院は朝から冷房を入れての診察でした。同じく松山地方気象台から「ほたるの初見」が5月17日と発表されました。こんな観測もあるのですね。観測地点がどこなのか気になります。10年ほど前までは私も、道後の温泉旅館ふなやの日本庭園で、石手の町中の用水路で、市内中心部にほど近い石手川湯渡橋でも見たのですが、最近でも市街地で見ることができるのでしょうか?

 19日金曜日、無事、広島での学会に出席してきました。幸い、かかりつけの患者様からの電話問い合わせはなく一安心でした。しかし、翌日以降の診察でお聞きしたところ、臨時休診を知らずに直接当院を訪れた方もおられました。大変失礼しました。
 当日は新専門医制度で出席が必要となるモーニングセミナーの開始が午前7時45分開始で、遅刻は認められません。朝一番の高速艇でも間に合いませんので、しまなみ海道(西瀬戸自動車道)経由で、車を運転して向かいました。松山を午前4時20分頃に出発、朝もやの中、石手川ダムや玉川ダムを望みながら小鳥のさえずりを聴きながらのドライブでした。無事、事故や遅刻もなく学会に出席、必要とされる講習会も全て受講することができました。新専門医制度の影響で、学会の雰囲気も昨年から随分変わりました。日本耳鼻咽喉科学会総会は、耳科学会、めまい平衡医学会、頭頸部外科学会など17ある分科会の高位の学会ですので、宿題報告という大学教授を先頭に教室一丸となって大きなテーマを研究した業績を発表したり、学位論文としてまとめられた研究業績の集大成を発表したり、研究機関や公立病院の中心的な研究業績や臨床成績を発表する場です。そういうプログラムも続いていますが、新専門医制度の一環としての講習を受ける場にもなりました。講習会会場は大きな箱が用意されてはいますが、受講者が会場いっぱいとなり、ごった返します。講習会ですので質疑応答はありません。研究業績の発表時のような、発表者とフロアの聴衆の間の質疑応答のような緊張感は見られません。私も早朝から出席で、受け身の受講したので、若干眠気にも誘われました。総会以外の分科会への頻回の出席が難しい私のような立場では、講習会を優先的に受ける必要がありますので、従来の学会発表への出席時間は大幅に減りました。以前のような学会形式が懐かしい、、と感じる学会風景でした。ともあれ、注目された臨床研究は、私の知識の整理の為にも、おいおいこの場でまとめたいと思います。

 休診後も3日間、インフルエンザ陽性の方を見かけなくなりましたので、今日の外来では、「昨年11月から半年間、ダラダラ続いたインフルの当院での流行もようやく終わのようです」とお伝えしていたのですが、夕方、B型陽性のお子様が見られました。今シーズンは、なかなかしぶといインフルエンザです。今年は遂に愛媛でも通年性でインフルが発生した、、となりませんように。
 汗ばむ気候のせいで、外耳炎や鼻前庭湿疹の方が少しづつ目立ってきました。1年で一番気候が良く風邪の流行らない5月です。冬からの難治性滲出性中耳炎がようやく治った!お子様も診られますが、この時期になっても治らないので、鼓膜留置チューブ挿入に踏み込むお子様も見られます。慢性副鼻腔炎が改善しない大人の方もおられ、薬物治療や副鼻腔カテーテル療法で治らない方で手術を検討する方も見られました。気候の良すぎる5月です。全ての皆さんが服薬などの保存的治療で治って欲しいものです。

  急性乳様突起炎、歯性上顎洞炎、先天性中耳真珠腫、成人流行性耳下腺炎、突発性難聴など。
  18日   当院ではこの時期になってもA型、B型インフルを検出しています。愛媛県感染症情報センターの報告でも、先週に愛媛県全体でインフルの報告数が定点当たり0.9人、松山市が1.0人となり流行終息となりました。A型が70%、B型が30%の割合です。インフルエンザの流行はほぼ終息しましたが、この時期にA型が検出されるのは珍しいです。

 今週19日の金曜日は、日本耳鼻咽喉科学会総会出席のため休診とさせて頂きます。今年度の総会は昨年の専門医講習会に続き広島で開催されます。専門医制度が新しくなったことから講習会への参加が必須となっています。これまでの学会では、新しい研究成果や知識の収得のために参加していましたが、新専門医制度では、学会は従来通り学術講演会のプログラムが主体ですが、専門医資格の維持のために講習会に参加しなくてはいけません。講習会は義務的なもので受け身で参加することに対して忸怩たるものもありますが、そうは言っていられません。専門医としての知識や技術の収得のためにも参加してきます。ご迷惑をお掛けしますが、何卒、協力の程、お願いいたします。なお、当院かかりつけの患者様で病状が思わしくない方や、経過に不安のある方は、院内に掲示してある電話番号まで遠慮なくご連絡下さい。 
  13日   今日は母の日です。ゴールデンウィークは終わりましたが、当院は込み合い気味です。お待ち頂いた患者様にはご協力ありがとうございました。
 今週水曜日から学校健診出務が始まりました。私は小学校2校と中学校1校を担当しています。秋の就学時健診は各科合同で、他科の病院の午後の休診日が木曜日に多いために、健診も木曜日に行われることがほとんどです。そのため当院では木曜午後を時間休診にして対応しています。春は耳鼻科単独の健診ですので、当院では午後休診の水曜日を利用して行っています。10日の水曜日は、午前の診察が長引き、診察終了後も健診出務に院内改装工事や院内清掃(フロアのワックス掛)が重なり午後はてんてこ舞いでした。今月、あと2校健診が残っています。水曜日は健診開始時間に遅れないよう気合を入れて診察します。健診が始まれば、元気な学童、学生達から私も元気を貰えます!
 CT設置をはじめとした当院のリニューアルもほぼ終わりました。駐車場や塀、建物外壁の工事に引き続き行っていた、院内の内装工事も12日で終わりました。やり始めると、3階のスタッフ専用スペースのクロス・フロアカーペット・コンセント類の新調、電灯のLED化、棚の交換、建具の調整などなど、広範にリフォームしました。連休など当院の休診日も利用して、細やかに作業して頂いた内装工事の関係者の皆様には心より感謝いたします。12日看護の日は当院の開院記念日でした。リニューアルして気分も新たに、診療を続けたいと思います。  

 7日に黄砂が、関東以西で初観測されました。松山の霞んだ光景がNHKの全国ニュースでも流されていました。例年だと3月に初飛来して、スギの飛散や春一番とリンクすることの多い黄砂ですが、今年は遅い初観測です。タクマラカン砂漠などの黄河中上流域から飛散して、4日に北京に飛来、7日に日本に飛来という訳です。北京では北京市気象局が外出の自粛の警報を発令しています。写真で見ても砂漠に近い北京の黄砂は半端ではありませんね。黄砂の砂は硅酸が含まれているためにそれ自体刺激があります。さらに飛散中にPM2.5や有機物が付着するため、化学物質といえる側面も持ちます。車の塗装が傷むなどの現象とともに、化学物質としての要因も報道されたためか、当院でも「鼻炎の悪化は黄砂のせいですか?」との質問も複数寄せられました。当院の診察では黄砂だけで気道過敏という方は目立ちませんが、気道過敏症の増悪因子としては無視できない存在です。
 修学旅行もシーズンのピークを迎えました。やはり学生さんにとって最大のイベントでしょうか。旅行を前に、鼻炎や喘息などの気道過敏の悪化や車酔い、鼻血などを心配されて受診される子供さんが見られました。
 山口県のヒノキの飛散終了が6日に、松山の飛散終了が8日頃になりそうです。1月から始まったスギ・ヒノキの花粉症シーズンも今週で終わりです。山口県医師会が5月1日付けで今シーズンのスギ・ヒノキ花粉飛散の総括を報告しています。それによれば、今年のスギは予想よりは少なかったものの4年振りの大量飛散に、ヒノキはスギ以上の目立った大量飛散となりました。松山の飛散数も山口県の状況に近似しているようです。当院の今シーズンは、1日辺りの飛散数で極端な大量飛散が無かったおかげで、顔面や目が腫れあがるような高度に反応して短期作用のステロイドに頼るような方は少なかったのですが、2才で花粉症デビューや、3才でスギだけでなくヒノキ花粉の抗体が陽性だったお子様も診ました。花粉症にも例年、様々なドラマがあります。5月に入り、代ってイネ科花粉症の方が目立ってきました。雑草花粉はスギやヒノキより粒子が大きいこともあり、抗原性もスギ花粉より強い傾向にあります。お子さんの花粉症では、スギ花粉よりも、イネ科花粉症で顔面が腫れあがる人が目立ちます。これから6月上旬の梅雨入りまで、”天気のいい日に公園や草むらで急に腫れる”花粉症にご注意下さい。
 急性喉頭蓋炎を発症し、松山市の3次救急体制に頼る必要のあった方の来院がありました。直ぐに命にかかわるような救急搬送が必要なケースではありませんでしたが、喉頭蓋炎や喉頭炎では一気に呼吸困難に陥る場合もありますので油断はできません。診察までの待ち時間が長い場合には、どのようなケースで救急を疑い、早めに診察する必要があるのか。スタッフ・ミーティングで改めて確認しました。

 最近、当院にネット予約したとして受診される方が少しづつ増えてきました。当院では、”ネットでの時間予約”は行っておらず、”ネットでの受付順での受付”を行っています。ネット予約した方に事情を伺うと、間違って”県外の山口耳鼻科”でネット予約しています。そのような場合は恐縮ながら、改めて当院の受付をして頂いています。ウェブ検索すると、いきなり予約画面がでるために、確かに私でも間違えそうです。間違えて予約すると他の医院さんにも迷惑がかかります。当院は、山口耳鼻科”クリニック”で、iTicketの順番予約だけですので、受付の際にはご確認をお願いします。調べてみると、全国には、山口県の「山口赤十字病院」「山口宇部医療センター」「山口県立総合医療センター」とは別に、個人立のクリニックが7件程あります。時間予約している医院さんも、当院以外でiTicketに登録している医院さんもありました。全国の耳鼻咽喉科医が約1万人、個人立の診療所は約5000件程度でしょうか。恐らく人口2.5万人に1件程度だと思います。私の記憶にある遠い昔の苗字の調査では、”山口”は全国で20番目に多い苗字でした。”山口”名のクリニックが全国に7件?、、耳鼻科医の中で”山口”は、多いのでしょうか?少ないのでしょうか?
5月 5日   ゴールデンウィーク前半を中心とした4月28日、30日~5月2日の当院は大変込み合いました。お待ち頂いた患者様にはご協力ありがとうございました。また遅い時間まで診療を支えてくれたスタッフの皆には感謝です。明日から当院の診察が始まります。前後に日曜日をはさむ曜日の並びのせいで今年のゴールデンウィークは、日曜診療を行っている当院は、明日明後日も患者様が集中することが 予想されます。この3連休、私ものんびりして英気を養うことができました。明日からの診察は出来るだけスムースに進むよう心掛けたいと思っています。
     
  29日  ゴールデンウィーク入りです。新緑が一層まぶしいです。ニュースでは9連休の人もいるとのことですが、当院は1日+3連休のみです。30日日曜日から5月2日まで平常通りに診察致します。
 新生活が始まっています。毎年4月の診察では、子供さんや学生さんが入園したのか入学したのか、はたまた何年生になったのか思わず確認しています。久方振りに来院された場合には、もう○年生! 社会人ですか! 松山に帰ってきたのですね! などと驚かされます。新学年の学生さんやフレッシュマンの皆さんの活躍を祈っています。
 学生さんの中には、4月に修学旅行の学校もあります。旅行中に風邪をこじらせたくない、気道過敏症を悪化させたくない、車酔いが心配だ、などの理由で受診される方も見られ始めました。ちなみに、車酔いは専門的には「動揺病」と称し、我々耳鼻科医の専門領域です。車酔いが酷な方は遠慮なくご相談下さい。 
  19日   新緑が目にまぶしいです。
 私が毎シーズン気になっている「インフルエンザの抗ウイルス剤への耐性」についてですが、NIID(国立感染症研究所)から今シーズンの薬剤耐性株に関するサーベランス報告が出されました。それによると、一番最初に発売された抗ウイルス剤シンメトレル(アマンタジン)に対しての耐性化率を見ると、A型では100%耐性があり効かなくなっています。現在主に使われている薬剤を見ると、A香港型でタミフルとラピアクタに1.6%が耐性でした。なお、A2009年型とB型では耐性株の報告はありません。吸入薬のリレンザ、イナビルはA香港型も含めて全く耐性はありません。4~5年前までは日本でも世界でもB型やAソ連型、A2009年型へのタミフル耐性株の増加が懸念されていましたが、その後、耐性化は進んでいません。世界的にタミフルは使われ続けていますので耐性が進まないのがどういう要因によるのか気になっています。しかし、耐性が進まないのはなによりです! 来シーズン、我が国の塩野義製薬が新しい機序の経口抗ウイルス剤を発売します。日本オリジナルでの開発です。これまでの抗ウイルス剤はウイルスの増殖を抑える静菌的作用のお薬でした。こんどの塩野義のお薬は殺菌的に作用します。来シーズンのインフルエンザの治療は”早く良く効く”治療になりそうです!
 先週のNHKニュース9では赤ちゃんの百日咳を取り上げていました。予防接種歴のない0才児が百日咳に罹って人工呼吸を必要とするような重篤な状態になった例が紹介されていました。当院でも成人小児ともに時に遭遇しています。昨年から今年にかけて百日咳の診断と予防が大きく変わります。診断では、これまでは百日咳毒素のIgG抗体(PT-IgG)を測定していましたが、問題は予防接種による抗体上昇があるために中等度の抗体量では現在の感染か否かの判断が難しかったのですが、菌自体に対するIgM抗体と、気道の局所免疫として誘導されるIgA抗体を測定する血液検査と、百日咳菌の遺伝子をインフルエンザの迅速検査同様に鼻汁から測定するLAMP法という遺伝子検査が可能になりました。この検査法の進化は、マイコプラズマ感染症での検査法の進化に準じています。マイコプラズマのように15分で判定できる迅速検査はまだ開発されていませんが、将来はその場での判定も可能になりそうです。予防に関しては、早ければ今年から11~12才へのジフテリアと破傷風への二種混合ワクチンに百日咳も加えた三種混合ワクチンになります。米国では2005年には既に追加接種が始まっていましたので、日本はやっとの感がありますが、このワクチンの接種が始まれば成人の百日咳患者が減ることが期待できます。それでもワクチンの効果は最短4年で切れると言われていますので、強い咳込が続く方の診療では今後も注意が必要な疾患のひとつではあります。

  下咽頭腫瘤、突発性難聴、反復性耳下腺炎、外傷性鼓膜穿孔、好酸球性副鼻腔炎など。


 新緑が爽やかな当院のケヤキです。診察室からの眺めも緑鮮やかになってきました。


 当院正面玄関のハナミズキも花が開き始めました。5月ももうすぐです。
  18日   鹿児島の桜が観測史上最も遅く15日に開花しました。今年の桜は東京が最も早く開花して、鹿児島は開花が遅く、満開も東北地方並みの遅さでした。日本気象協会によると、昨年11~12月に西日本を中心に平年より気温が高く、花の芽が低温にさらされて目覚める「休眠打破」がスムーズに進まなかったことによるとのこと。冬暖かいと開花が早まると思ったのですが、開花が遅れる条件もあるのですね。桜だけでなくスギも今年は関東地方が全国で最も早く飛散が始まりました。松山の花粉の飛散パターンでみると飛散開始もピークも平年より約2週間程遅れました。飛散の終了に向かってペースは徐々に早くなっていますので、飛散終了が2週間遅くなることはなさそうですが、今年の4月は例年より飛散数が多めです。スギ花粉の飛散数も、シーズン前の予想の「例年の1.5倍」からシーズン中盤の「平年並み」からシーズン終盤でみると「平年よりやや多い」になりそうです。まだまだスギ花粉を感じる方の来院もみられるなと思っていたところ、今年はヒノキが急に大量飛散しました。松山大学のデータでは4月9日に、当院のデータでは9日と13,14日に大量飛散しました。ピークでの飛散数はスギの飛散のピーク量を超えました。スギの1日あたりの最大飛散数よりもヒノキの最大飛散数が多くなるのは珍しいケースです。今年のインフルエンザの流行は、4月に入ってもA型とB型の両方がダラダラと発生する珍しいパターンです。スギ・ヒノキの飛散パターンも4月にスギがダラダラと飛散してヒノキがポンと大量飛散する珍しいパターンです。私にとっては調子の乱れる?シーズンでした。
 昨日、A型インフルエンザで40℃以上の熱が続く成人の方が来院されました。治療には点滴の抗ウイルス剤ラピアクタを用いました。ここ数年のインフルの流行ではラピアクタや経口剤のタミフルへの耐性株は世界的にもほとんど報告されていません。注射で体内に投入すると、組織移行の観点からも経口剤よりも早く確実に効きます。ラピアクタはタミフルが使用できない10才代や0才児でにも適応が認められています。費用負担の点からは経口剤や吸入薬よりはやや割高ですが、私は感染症状の強さをみながら点滴用剤のラピアクタも選択肢のひとつとしています。また昨日は、インフルエンザからの熱せん妄と熱性痙攣、脳症の初期の鑑別が難しい子供さんも来院されました。大事をとって総合病院の小児科で経過をみて頂くことにしました。インフルエンザは”普通の風邪”であって”普通の風邪でない”病気です。全身状態や呼吸器症状、神経症状の経過は慎重に診なければいけない感染症です。 
  12日   葉桜っぽくなってきました。桜が終わるとスギ花粉症も終わりです。(^^)/ 急な高熱の出る方がまだ目立ちます。B型インフルに罹った大人の方や、この冬A→A→Bと3回インフルに罹ってしまったお子様が見られました。今シーズンはインフルに二度罹るケースは少なかったです。三度罹ったのは、いまのところ一人だけです。松山市医師会の休日診療所ではB型インフルが結構目立っていたそうです。まだ後1ヵ月程はインフルエンザへの注意が要りそうです。


 耳鼻科医局への所用があり愛大重信キャンパスに立ち寄りました。満開の桜越しにみる病院正面です。
訪れたのは水曜の午後で、まだ授業中の時間帯でした。研究棟を歩いていると、何回か実習中の学生グループとすれ違いました。学生さん達も指導する若手の教官も目が輝いていました。


 愛大図書館の医学部分館のロビーから望む桜です。やはり医学部分館だけに専門書の宝庫です。閲覧室(ここでは学習コーナーと称していました)で、学生たちに交じって、しばし勉強しました。


 帰り道にふと目をやると山際に桜並木が、、 ちょっとお花見気分をということで東温市総合公園に初めて立ち寄りました。湖畔からみる桜です。春の陽光で霞んでいました。


 同公園内にあるツインドーム重信越しにみる道後平野です。この公園は平野扇状地の北端にあります。道後平野をこの視点からみたのは初めてでしたので新鮮でした。
  7日   松山大、愛媛大の入学式が終わりました。社会人フレッシュマンは研修入りです。週明けには学童の入学式始業式です。暦の関係で例年より長かった春休みももうすぐ終わりです。当院のケヤキも芽吹いてきました。ハナミズキもつぼみが膨らみ初めました。桜も5分咲、春到来です。
 一昨日、当院では1ヵ月振りにB型インフルの方が来院されました。某保育園では12名がインフルエンザ発症とのこと。春休み後半で感染症は少なくなっていますが、インフルエンザを含め急に発熱する感染症もまだまだ見られます。

 当院でCTを導入して早いもので2週間以上経ちました。トラブルなく安定して稼働しており、真珠腫や腫瘍の検出など、早速威力を発揮しています。CT製造メーカーのRAY JAPAN社より放射線被ばく量のレポートが届きました。気になって私が要望していたデータですが、成人や小児の体格別、部位別の詳細なデータを頂きました。なかなかしっかりしたメーカーさんです。(^^♪ 以前まとめた被ばく線量の表に、当院のRAY SCAN耳鼻科用CTのデータを加えました。以下に掲載しています。当院のデジタル撮影では、鼻や胸部の撮影で東京~ニューヨーク片道の航空機内で受ける線量の約1/4、CTでは2~4倍となります。側頭骨を広く撮影する中耳~内耳のCTではそれなりの放射線量になります。検査では少なからず被ばくすることを改めて肝に銘じて検査を行いたいと思います。電気事業連合会のデータを見ると、当然、検査を受ける状況からは被爆のデメリットよりも検査を受けるメリットの方が遥かには大なのですが、心臓カテーテル検査の局所の被ばく量はさすがに凄いです。緊急作業の被ばくへの制限は最大100ミリシーベルトでした。福島の原発事故の対応のドキュメンタリーの緊迫した情景を思い出しました。

被ばく線量について:
 国際放射線防護委員会(ICRP)では年間の放射線の被ばく量の限度として、年間約1mSv(ミリシーベルト)が理想的であると勧告しています。以下に、被ばく線量の目安を挙げます。
  0.006:歯科デジタル撮影(フィルム撮影0.01)
0.01~0.05:RAY SCAN耳鼻科デジタル撮影(フィルム撮影0.02)
      歯科デジタルパノラマ撮影(フィルム撮影0.04)
   0.06:RAY SCAN胸部デジタル撮影(フィルム撮影0.09)、胸部X線検診 
0.11~0.19:東京~ニューヨーク往復の航空機内
0.21~0.79:RAY SCAN耳鼻科用CT(成人副鼻腔0.28 成人耳0.78)
   0.6:胃X線
    1.0:一般公衆に対する制限(年間)
   2.0:頭部CT
   1.5:日本での1人当たり年間自然放射線量
   2~10:PET検査
   2.4:世界平均での1人当たり年間自然放射線量
2.4~12.9:CT(頭部CT2.0 胸部CT6.9)
    3.0:胃造影X線検診
    10:ブラジル・ガラバリ市、イラン・ラムサール地方の年間自然放射線量
     50:発電所作業員への制限(年間)
    100:緊急作業への制限
100~6200:心臓カテーテル検査(皮膚)
   200:臨床症状が確認される被ばく線量
   500:全身被ばくで末梢血中のリンパ球減少
  1.000:全身被ばくで10%の人が悪心嘔吐
  7.000:全身被ばくで100%死亡
(単位はmSv、RAY JAPAN社ならびにアールエフ社、国連放射線影響科学委員会、電気事業連合会のデータに加筆) 
4月  2日  新年度入りです。東京の桜は満開ですが、松山はまだ2分咲といったところでしょか。それでも遠目に見えた城山南斜面の桜は桜色に染まっていました。診療報酬改定のある年の新年度入りではレセコンソフト更新になにかしらの不都合が生じることが多いのですが、今年は大きな改定の無い年でしたので、当院は穏やかに新年度を迎えることが出来ました。
 学童の春休みも佳境に入りました。集団生活の機会が減ることから総じて感染症は減っています。それでもA型インフルエンザを家族やクラブで発症するケースが見られます。

 3月に当院前の交差点に信号が設置されるとお伝えしていましたが、工事の案内をよく見ると”交通信号機”の設置ではなく、”交通信号装置設置工事のご案内、車両感知器設置工事”でした。VICS情報などに利用される車両感知器でした。愛媛国体を前に、環状線と県道の渋滞情報のための設置でしょうか? 交差点の車両感知式信号機が設置されると思ったのは私の早とちりでした。交差点の事故が減ると思っていただけにがっかりです。(-_-;) それでも当院前の県道の渋滞情報が精緻に公表されそうで、少し便利になりそうです。 


 病院南側駐車場のチューリップです。スタッフが球根から丹精に育てました。


 城山公園東堀端から望む5分咲の桜です。正面のビルは伊予銀本店です。私は経験していませんが、松山城を眺めるならこのビルからの眺めが一番の絶景の気がしています。
 由緒あるビルの由来をみると、伊予銀は第二九国立銀行と第五二国立銀行が前身で、このビルは昭和27年に落成しています。この辺りは空襲で県庁本館を除きほぼ焼野原になりましたので、当時は復興のシンボルのような威容だったのでしょう。伊予銀の歴代頭取は生え抜きで財務省や日銀からのいわゆる天下り役員が一切いないとのこと。なんだか好感が持てます!
     
  29日   春休み入りです。25日に宇和島で桜が開花しました。松山でも明日明後日に開花すると予想されています。3月が肌寒かった影響で開花は例年より少し遅いとのこと。スギ花粉のシーズン終了ももう直ぐです。
 インフルエンザは、当院では3月に入っても結構発生しています。感染症情報センターの報告では松山市では先週でようやく注意報レベルを脱しましたが、宇和島はまだ注意報レベルです。情報センターの報告ではA型95%、B型5%ですが、当院での検出は100%A型です。家族でA型に2回罹るケースも見られます。A香港型に続いてA2009年型に感染したと思われます。東予では流行性耳下腺炎の発生が増えています。流行性耳下腺炎では、片方の耳が高度難聴になってしまうムンプス難聴がおよそ千人に1人に発症するとされています。中には400人に1人発症するとの報告もあります。残念ながら発症しても回復は困難です。日本耳鼻咽喉科学会では、正確な発生率を探ろうと全国的な統計をとり始めています。なかなかにいやらしい感染症が流行性耳下腺炎です。東予での発生は過去に比較してもかなり多いです。これから中予でも流行化してくるかどうか注視しておきます。
 
 年度末も押しせまりました。診察に際して転勤転校で県外に出られる方とのお別れの挨拶も多くなりした。製薬会社の医療情報担当(MR)の方々とお別れする機会も増えました。担当MR諸氏の新任地での発展を祈っています。小さな子供達とのお別れの挨拶は、最近とみにハイタッチが増えています。小さな手のひらとタッチすると、子供達の暖かさが直で伝わってきます。子供達の新生活に幸あれと念じています。
 3月後半に当院前の交差点が信号化されるとお伝えしましたが、工事が始まりません。(*_*; 工事に伴う交通規制の予告の回覧板を見た積りだったのですが、、 私の勘違いだったかも知れません。楽しみにしていたのですが、、

  頚部嚢胞、肺腫瘍、ポリープ様声帯、声帯結節、扁桃周囲炎、術後性頬部嚢腫、天気痛など。 
  22日   昨日、3月21日に全国で最も早く東京で桜が開花しました。宇和島も高知も開花一番乗り出来ませんでした。今年の東京は、スギ花粉の飛散も全国で一番乗りでした。都会が温室効果で暖かいといっても、今年の東京は特別です。どのような気候変動が影響したのでしょうか? ちょっと気になっています。日本気象株式会社の予想では、松山の開花が3月25日頃で例年並み、満開が4月5日頃で平年より1日遅いとの予想です。最近の開花予想は精緻です。松山城山公園の開花予想日は3月29日、道後公園が3月28日です。あと1週間で桜が開花します。スギ花粉の飛散もわずかになります。今シーズンのスギの飛散総量は、飛散の極端に少なかった2年前よりは多いものの、昨年よりも少なくなりそうです。今シーズン、花粉症の初期治療を希望された方には、新薬も含めて2種類の薬剤を試して頂くことが多かったのですが、再診時にはどちらの薬剤が良かったかお聞きしています。患者様それぞれに印象が異なっていますが、これまでのところ、従来からのお薬も新薬も、甲乙つけ難い印象です。
 今日の午後、診察終了後に、CT操作法のスタッフミーティングを行いました。また私もインストラクターの方から、画像処理ソフトの使い方のレクチャーを受けました。いよいよ本格的な運用が始まります。 
  21日  祝日明けで診察が込み合いました。診察のペースも遅れました。お待ち頂いた患者様、診察の日を改めて頂いた患者様、時間に余裕がなく他の医療機関の受診に変更された患者様にお詫び致します。診察終了も夜間にずれ込みました。眠たい中診察してくれた小さな子供さん達や診察を支えてくれるスタッフの皆にも感謝です。 
 CTの設置が昨日無事終了しました。今日は放射線の漏洩試験も行われました。CTメーカーのレイジャパン、耳鼻咽喉科機械メーカーの永島医科器械、当地の代理店の協和医理器の方々にはお世話になりました。迅速的確な設置で、トラブルもなく、今日から運用を開始することが出来ました。あと数日のガイダンスを経て本格的な運用に入りたいと思います。今日は早速、好酸球副鼻腔炎や術後性頬部のう腫の評価に活用出来ました。その場で的確な判断が下せますので、患者様からも喜んで頂けました。放射線を用いる検査装置ですので、今後も放射線被ばくのデメリットを十分に理解して頂いた上で、検査を行なっていきます。CT導入に際して、このホームページ上に、コーンビームCTの説明や耳鼻咽喉科領域での活用点、放射線被ばくなどについて説明するページを設けました。
 コーンビームCTについて へ

    
当院レントゲン室のCT 
  18日   高校、中学の卒業式が終わりました。小学校でも、お別れ遠足、6年生を送る会に続き23日に卒業式です。24日の終業式が終わると、私が”冬に中耳炎が治りにくかったお子様の9割が治る”と良くお伝えしている春休みです。(^^)/ 例年通り、転勤で県外に転居される方もおられます。転勤転校される方の新転地でのご健康をお祈りしています。
 当院では、明日の夕方より祝日明けまで、休診を利用してCTの設置工事を行います。これからは、診察中に気になる所見があった時には、すぐにCTで確認できます。決して闇雲に撮る訳ではありませんが、必要な時に直ぐにCT所見が得られる状況は、私としては前任の県立病院で勤務していた時以来です。CT精査を目的に高位の病院に紹介する機会が減りますので、患者様のメリットにもなると思われます。医療費負担が増えることを忘れないようにして、有効活用したいと思います。
 スギ花粉の飛散ピークはやはり3月6日となりました。ここ数年の花粉飛散数を当院のデータで比べてみると、17年の最大飛散217個 今日までの総飛散1920個、16年514個 2662個、15年218個 1778個、14年608個 3169個、13年2196個 8035個でした。当初の飛散予想では、平年の1.5倍以上、前年の2倍以上の4年振りの大量飛散を予想していましたが、このままいくと今年の飛散数は、昨年よりも少なくなりそうです。飛散予想は難しいものです。(-.-) ヒノキの飛散開始日が、山口県で3月3日、松山で3月15日となりました。ヒノキは4月上旬のピークに向けて、今後、飛散が増えていきます。
 インフルエンザは減りましたが、当院でも罹った方が毎日来院されています。某高校でB型が流行との情報もありましたが、当院で検出されるのは全例がA型です。昨シーズンと異なり、今シーズンはA香港型がダラダラ流行するシーズンとなっています。 
  14日   スギ花粉飛散のピークは3月6日になりそうです。飛散のピークも遅いシーズンになるかと思いましたが、飛散のピークは例年並みとなりました。シーズンも後半に入り、短時間の花粉暴露でも鼻づまりが強くなる方、顔面皮膚炎が目立つ方も見られます。今後10日間ほど大量飛散が続き、桜が散る4月10日頃まで少量の飛散が残る見込みです。山口県ではヒノキの飛散が始まりました。スギ花粉を有する方の8割が共通性抗原であるヒノキの花粉症も発症します。ハルガヤなどの早期のイネ科雑草花粉の飛散も始まった模様です。雑草花粉症の小学生の来院も始まりました。またハンノキ花粉も4月を中心に2月から5月まで飛散します。4月になっても花粉症の症状が続く人は、ヒノキやイネ科雑草、ハンノキの花粉症の合併にも注意して下さい。 
  8日    7日は少し肌寒い気候となりましたが、スギ花粉は前日に続いて大量飛散しました。症状の強い方が多数来院されるようになりました。中には粘膜や顔面皮膚の腫れが強く短期作用のステロイド注射を行う方も出てきました。限られた診察時間ではありますが、外でお仕事をされている社会人の方、農業や林業に従事されている方、学生さんで室外でのスポーツをされている方には花粉を被らない心構えや注意点をアドバイスさせて頂いています。鼻詰まりなど鼻の反応の強い方、眼の反応が強い方、顔の皮膚の反応の強い方、のどや気管も反応する方など、個々人で反応の現れ方も一様ではありません。花粉症に風邪を合併した方、ハウスダスト・アレルギーや好酸球性副鼻腔炎・薬剤過敏症などもベースにある方、妊婦さん、授乳婦さん、妊娠を考えている方、職業ドライバーや受験生で少しでも出ては困る方、様々な立場の方がいます。出来る限りその人に合ったオーダーメイドの処方を心がけています。
  6日   今日の午後3~4時にかけてスギが大量に飛散しました。今シーズンの最初の飛散のピークと思われます。顔面に大量に暴露して顔が腫れた方も見られました。明日からの3日間は冬型の気圧配置で冷え込みますので、次の飛散のピークは今週末になりそうです。今週は幼稚園や小中学校でお別れ遠足が予定されています。スギ花粉症のお子様はマスクやメガネ、フード付きの上着などで花粉の吸引や付着を防いで下さい。
 保育園児を中心にヒトメタニューモウイルス感染症も見られ始めました。RSウイルスやアデノウイルスも見られますが、少なくなってきています。例年、RSウイルスが初冬に流行し、ヒトメタニューモウイルスは春に流行します。ウイルスの流行も春の気配です。
  
  真珠腫性中耳炎、小児睡眠時無呼吸症候群、突発性難聴、鼓膜穿孔閉鎖術など。
  2日   今日の正午頃に今シーズン初めてのスギ花粉の大量飛散が見られました。午後からは、「水鼻が止まらない」「目が腫れた」などの急性症状の方が来院されました。花粉症を2才で発症したお子様も見られました。両親が花粉症などで遺伝的に花粉症の素因のあるお子様は、まだ発症していなくてもスギ花粉の大量飛散の時期には、スキー遊びや山際の公園へ出向くなどで不用意に花粉を被らないよう心掛けてみて下さい。将来的な”花粉症デビュー”を遅らせることができるかも知れません。スギ花粉の舌下免疫療法では、新しい臨床研究として、花粉症を発症していない人に対して舌下免疫を行って発症を防げるかどうかの研究が始まっています。 医療保険上どこまで対象患者を広げるかの意見は将来出てきそうですが、花粉症の発症が予防できるかどうか、今後の治験の行方が興味深いです。
3月 1日   日一日と春の気配です。3月になりました。20日の祝日を利用してCTの導入を行う予定です。今のところ設置に向けた準備は順調です。 今シーズン、スギ花粉の大量飛散はまだ見られません。飛散時期の遅いシーズンとなっています。明日は雨の予報です。さすがに明後日の雨上がりに、大量飛散の第一波が訪れそうです。
     
  26日   国公立大2次試験前期日程は終わりましたが、来週には公立高校入試や国公立大後期日程が始まります。受験生の皆さん、本番で風邪に罹らないよう体調管理に気をつけて下さい。インフルエンザは、当院ではA型に二度罹りした方も見られましたが、A香港型の発生が減り、B型も増えてはいません。昨シーズンのようなB型が長く流行するシーズンにはならない気がしています。
 スギ花粉の飛散が16日に始まりましたが、まだ軽度の飛散です。当院でもお薬を希望される方が増えてきましたが、まだ”顔面が腫れあがる”ような大量暴露の方は見られません。飛散開始も飛散のピークも例年より遅くなりそうです。それでも大量飛散の第一波がここ数日中に訪れそうです。現時点で花粉を感じている方は、これからの1ヵ月、大量暴露しないように注意して下さい。大量暴露を避ける心構えを挙げてみます。○マスクだけでなく、出来ればフード付きの服やゴーグルの着用も検討する(伊達メガネや女性では前髪を下すだけでも違います) ○市街地では夕方に花粉の飛散が増えることから、部屋の換気は午前中に済ませ、午後からの外出は控えめにして、洗濯は午前中に済ませるか部屋干しにする(野外で部活する中高生が花粉にやられやすいです。運動の合間の休憩時間に頭にスポーツタオルを巻くだけでも違います)  
  19日   当院のデータではスギの飛散開始日が2月16日となりました。1988年以来の松山市の過去のデータと比較すると、2012年の2月23日、2011年の2月21日に次ぐ過去3番目に遅い飛散開始となります。16日に続く昨日は春一番が吹き、今日は朝方の雨が上がった後は3月下旬のような陽気でしたので、午後にまとまった飛散が見られました。今日の飛散数は22時現在で68個ですので、いきなり高度飛散のレベルとなりました。飛散開始が遅かった分、暖かくなると一気に飛散し始めたようです。今日の外来では、二日前から花粉を感じ出した方々が多数来院されました。まだ大量飛散ではありませんので、ここ数日で花粉を感じた方はやはりスギ花粉にかなり敏感なタイプです。来週以降の大量飛散時に大量暴露しないよう注意して下さい。 
  16日  インフルエンザでA型に2回目に罹る方、A型についでB型に罹る方もでてきました。当院でのインフルエンザの流行のピークは先々週の2月始めになりそうですが、11月後半からのA香港型の流行に続いて、A2009年型も発生しているようです。B型の流行は昨シーズンに続き春まで続きそうです。
 今日は昼から小春日和でした。当院のポールンロボの今日の花粉飛散数は15個でした。今シーズン最高の飛散数です。山口県でも13日から花粉の観測地点が増えています。新居浜のスギ花粉の飛散開始日は11日になった模様です。松山の飛散開始日も14日頃になったと思われます。私は当初、2月6日頃の飛散開始を予想していたのですが、、 2月14日が飛散開始日ならば観測史上一番遅い飛散開始となります。

 昨日、大手ドラッグストアに立ち寄る機会がありました。花粉症対策コーナーも覗いてみました。おしゃれで個性的なマスクが並べられていてビックリです。お薬のコーナーではスイッチOTCと呼ばれる医療用から一般販売用に移行した抗アレルギー剤が最も目立つ場所に陳列されていました。患者様の立場から見て、病院でお薬をもらうのと、薬局で直接買うのとどちらがいいのでしょう? 気になって対費用効果を調べてみました。今年のOTCで最も目立つのがエスエス製薬の「アレジオン20」です。薬のパッケージにも「医療用と同量配合」と謳っています。私も”医療用”をよく処方しています。この薬は1日1回1錠の服用です。薬局で購入するとセールス品1錠が165円でした。ネット通販では送料やポイント割引を勘案して安いもので115円でした。医療用の先発品の薬価が146円、3割負担で44円。後発品(ジェネリック医薬品)が30円~105円(アレジオンの後発品は薬価だけでも9通りの価格があってビックリしました)で、3割負担で9円~31円です。忙しい時にさっと買えるという点からはドラッグストアも便利です。しかし費用面では長期の処方ならば、ジェネリックを利用すれば病院の診察料や薬局での調剤料を加算しても処方薬の方がお安くなります。今シーズンから発売された新薬のビラノアが80円(3割負担で24円)、デザレックスは70円(同21円)ですので、”眠気が少なく効きが良くて速効性のある”新薬も安価に手に入れることができます。診察では、ベースとなる鼻炎の状況を確認して現在の粘膜の状態に応じて複数の機序の薬剤(内服薬、点鼻薬、点眼薬、注射薬)などを処方します。診察に時間は要しますが、「やはり耳鼻科でお薬をもらって良かった」と思って頂けるような診療を心がけたいと思います。!(^^)! 
  12日  昨日が休診だったこともあり今日の診察終了は遅くなりました。お待ち頂いた方々にはご協力ありがとうございました。
 今日は雲ひとつない快晴で、風がおだやかな絶好のマラソン日和でした。診察が終わって愛媛マラソンの模様を録画でみました。普段よく通る道がマラソンコースですので、箱根駅伝などの中継と違って親しみがあります。「最強の市民ランナー」川内優輝さんが大会新記録の2時間9分54秒で初優勝しました。録画でみても、早い!早いです。自転車で走る感覚よりも早く中継映像は流れていきます。川内優輝さんの自己ベストは2時間08分14秒で日本歴代17位、50 kmのウルトラマラソンは2時間44分07秒で日本最高記録・世界歴代3位相当とのこと。埼玉県の学校職員としてフルタイムで仕事をしていることから、普段の練習では実業団のランナーみたいには走りこめないそうです。凄いランナーです。テレビで伝えていたサブテン、初めて聞いた用語でした。サブ10とは記録が2時間10分以下の意味だそうです。初マラソンを歩かずに完走ならサブ5(時間)、あるていど走れる市民ランナーはサブ4がステイタスで、サブ3.5(3時間代前半のタイム)、サブ3(2時間台、サブ3で走れる人は全競技者の数%)、世界トップ選手なら男性ではサブ10(2時間00分台)、女性ではサブ20(2時間10分台)で、このレベルでは歴代記録ランキングに載るのだそうです。録画といえど、身近なコースでサブ10を見ることができたのはラッキーでした。
 2月9日に当院で今シーズン初めてB型インフルエンザを検出しました。今日までの診察で大人の方も子供さんも複数の方でB型を検出しました。先週は今治を中心にB型迅速検査陽性も報告も始まり、松山市内からの報告もありました。今後はA香港型感染の後の、A2009年型やB型によるインフルの二度罹りにも注意して診察を行う必要がありそうです。
  10日   高校入試が始まりました。残念にも入試の直前や第一日目にインフルエンザを発症した受験生が見られました。受験生に不利な扱いがないよう配慮されることを希望します。
 今日から日曜日にかけて寒波襲来です。四国でも山間部で積雪するとの予報です。12日日曜日の愛媛マラソンは雪混じりの天候になるかもしれません。沿道で応援するサポーターの方は、しっかり防寒して応援して下さい。スギの飛散開始日についてですが、私は今週初めに飛散開始日を迎えると予想していたのですが、松山の飛散開始日はこの寒波で予想よりさらに遅くなりそうです。ひょっとしたらバレンタインデーまで遅れるかもしれません。山口県など愛媛近隣ではスギ花粉の飛散開始は例年より早めでした。松山でも梅の開花は12月22日と例年より15日も早かったのですが、スギの飛散開始は過去最も遅い時期に近くなりそうです。 
  3日  今日は節分です。同時に椿まつりも始まりました。同じく松山では冬の風物詩ともなった愛媛マラソン(12日開催)の交通規制の掲示が始まっています。 今日、山口県医師会は、スギ花粉の飛散開始日が1月30日で前年より9日早かったと発表しました。ウェザーニュースは、30日に神奈川、千葉、茨城、宮崎、大分、31日に埼玉で本格的な飛散が観測されたと発表しました。(ウェザーニュースのポールンロボ観測網恐るべしです。関東と九州からの花粉シーズン開始を見事に予想しました) 同じく今日、厚労省はインフルエンザの全国的な警報入りを宣言しました。
 今日の椿まつりは小春日和のような陽気となりました。松山の花粉飛散開始もここ数日内と始まると思われます。今年はまさに「椿さんの頃にインフルエンザが流行し、椿さんとともにスギの飛散が始まる」となりました。
  2日   愛媛県、松山市ともにインフルエンザの警報が発令されました。1月29日の日曜までの週のデータからです。全国レベルのデータは明日発表ですが、全国レベルでも警報入りした模様です。全国的にはA香港型が最も多く、次いでB型、A2009年型です。松山でも今後、A2009年型はあまり流行せずに2月後半からB型が増えるかもしれません。今シーズンは今のところ抗ウイルス薬や検査キットの供給不足は見られませんので、安心して診療が進められます。今日の全国ニュースで、東京の内科系医院でのインフルエンザの迅速検査の模様が放映されていました。ここだけの話、やはり耳鼻科は上気道のエキスパートです。耳鼻科で検査した方が検査は痛くない? 陽性率は高い? 気もしました。!(^^)! 
2月 1日   当院の目の前の交差点に、昨年の横断歩道の設置に続いて、念願の信号機が設置されることになりました! 来院された方はご存知のとおり、病院前の交差点は、県道に電車軌道が並走した5差路です。踏切を超えて侵入しなくてはいけない東側の道路は見通しも悪く、年に数回は接触事故が起こっていました。松山ICから繋がる外環状インター線が12月に全線開通しましたが、今年9月30日に開催される愛媛国体までには、県道と伊予鉄を高架で超えて外環状線が空港方面に空港線として伸延します。当初は側道だけの開通ですが、すでに高架部分は余戸まで繋がりました。空港線延長の事故対策で予算が下りたのでしょうか? 昨年夏に余土中学校が南に移転したために病院前の交差点を通学で利用する中学生が増えています。その対策のためでしょうか。どちらにしても、なんだか危なっかしかった交差点が安全になるのでホッとしています。信号は車両感知式とのことで、県道以外の側道の車両を感知すれば青信号になるのだと思いますが、踏切と信号の連動、当院東側の側道からの侵入の制御など、どうなるのか興味津々です。

スギの飛散開始日が、山口県では1月30日となったもようです。当院のポールンロボも今日初めて、軽度飛散にあたる10個以上の飛散となりました。松山の飛散開始日も今週後半、椿さんの開催時期に迎えそうです。
 ウェザーニュース社が今日、花粉情報を更新しました。宮崎、大分、神奈川、東京、千葉、埼玉が1月30日までに、愛媛の南予、高知の南、山口西部が2月10日、愛媛の東中予が2月15日までに飛散開始と予報しています。黒潮の当たる南予や伊豆半島が飛散開始が早いのは把握していましたが、関東平野中部の埼玉まで飛散開始が早いとの予報は意外です。首都圏は温暖化の影響が顕著になりつつあるのでしょうか? これまで私は、愛媛に比べ大阪では1週間、湘南以南の神奈川を除く東京では2週間遅く飛散するとお伝えしていましたが、これからは、関東地方中部までは愛媛と同時期に飛散するとお知らせしたほうがよいようです。今シーズンは全国の飛散時期にも目を向けて飛散情報を追いかけてみます。
 花粉症の初期治療を希望される方が、当院でも目立ってきました。今年は値段の安い新薬が出たという初めての花粉症シーズンとなりました。新薬が役立ちそうな方には、適宜お勧めしています。例を挙げると今日は、これまで内服薬で眠気を感じやすいため眠気の出ないクラリチン(成分名ロラタジン)を処方していた方に、クラリチンの活性代謝物であるデザレックス(成分名デスロラタジン)への変更をお勧めしました。クラリチンが肝臓で活性化されてデザレックスになります。つまり速効性があって効果も高いのです。クラリチンは日本では2002年に発売され15年の歴史がありますので、特許も既に切れており、後発品も薬局で購入できるスイッチOTC薬もあります。そのため薬価も徐々に安くなり、現在は先発品で86.7円、後発品は40.2~44.7円です。2ヵ月前に発売された新薬のデザレックスの薬価が69.4円です。基本構造が同じで改良された新薬のデザレックスが効果が高く速効性持続性があるのに、15年前から発売されている薬剤と遜色のない値段で購入できる!ので、私も薬価を初めて聞いたときにはびっくりでした。欧米では既に発売されており、クラリチンの改良品だから薬価が低くつけられた(フランスで20円台で発売されているそうです)そうです。既に欧米で服用されていることから安全性は確立されていますので、患者様には安心してお勧め出来ます。 
     
  30日    インフルエンザは、当院に来院される患者様の住所からみても中予全域に広がっています。発症年齢も、乳幼児から高齢者まで幅広く見られるようになってきました。今後、学級閉鎖が各地で広がりそうです。インフルエンザは感染力が強く、体内でのウイルスの増殖スピードも早く、細胞障害性も強いことから、思いもよらず重症化する場合があります。やはり経過をしっかり見る必要のある侮れない感染症です。インフルエンザの重症化は、「インフルエンザ−サイトカイン−プロテアーゼサイクル」によって引き起こされることが解ってきました。(徳島大学疾患酵素学研究センター 木戸 博氏)このサイクルの活性化によって血管内皮細胞が障害されインフルエンザ脳症や呼吸不全を起こし最悪では多臓器不全に陥ります。インフルエンザウイルスが体内で増殖する際には、体内の細胞を破壊しながら増殖しますが、インフルエンザの重症化はこのようなウイルスによる細胞障害が主体ではなく、サイトカインによる免疫系の破城が主体となります。感染時や発症時に免疫力が落ちていると重症化しやすくなりますので、感染時の体調管理が重要です。インフルエンザが流行のピークを迎えようとしています。栄養をしっかり摂り、ゆっくり休養して、十分な睡眠時間を確保するなど、免疫力を高めるよう心がけて下さい。
 愛媛県下も山口県下も、現時点ではまだスギ花粉が毎日観測される飛散開始日は迎えていないようです。松山では昨日の雨の後、今日は朝から暖かくなりました。ひょっとするとここ数日中に飛散開始日を迎えることになるかもしれません。花粉症の初期治療(予防投薬)を行う方は、そろそろ服薬を開始する時期になりました。

 書評をひとつ。2016年10月発行の新刊「精神障がい者の家族への暴力というSOS 家族・支援者のためのガイドブック 蔭山正子編著」です。編者は阪大保健看護科の准教授で、保健所勤務の際には精神障がい者の受診援助や通報対応などの危機介入の経験があります。”無視されている研究領域”と言われ、家族の6割が受けるとされる精神障がい者から家族への暴力について、実態と結末、原因、対策等、様々な提言を行っています。編者が保健師だった際の対応を振り返って、組織人となってしまっていたと述懐しています。組織のルールを守って支援するのを良しとせずに、既存のルールや支援の在り方に疑問を投げ続けることだったと反省しています。危機介入の実態についても、精神病院入院前、保健所、民間移送サービス、警察、精神病院入院後の課題やそれぞれの立場に限界があることを例示しています。家族が途方に暮れ、障がい者本人が最も苦しんでいること、本人を病院に連れていくことがいかに大変であるか、本人が強制的に病院に入院させられることの苦悩も指摘しています。私が最も再認識させられたのが、医療者は待つ身であることです。私はクリニックで毎日待っています。患者様本人や家族の方から表面的な情報しか得ていません。耳鼻科領域の病気でも社会生活が脅かされる病態はいくらでもあります。患者本人や家族のかかえる背景に少しでも寄り添えるよう余裕を持って診察しなければいけないことを再認識させてくれました。
 映画評もひとつ。マーティン・スコセッシ監督作品「沈黙-サイレンス-」です。江戸時代の長崎地方の隠れキリシタンと宣教師の”棄教”の意味をテーマとした重い映画です。以前、私はこの映画の原作の遠藤周作氏の「沈黙」を読み始めたものの途中で挫折したことがありました。今回、原作をほぼ忠実になぞった映画であるとの情報を得て、読む時間を考えれば3時間弱の映画も短いものかなと考えて観てきました。窪塚洋介やイッセー尾形など日本の俳優陣の誰もが名演で唸らせます。日本人の宗教弾圧シーンが惨いとの意見もありましたが、私からみれば、映画では日本人を思慮深いと人々として描いており、むしろ監督の日本人へのリスペクトを感じました。多神教の日本人と一神教の欧米人の思索が交差します。多神教と一神教の交錯を描くためには、世界的にも最も節操の無い?八百万の神を無意識に信仰の対象とする日本人が最適なのかも知れません。私の映画鑑賞歴で、最も字幕を食い入るようにみた作品となりました。オープニングからエンドロールまで凝視しながらあっという間の時間でした。この映画で”踏み絵”の時代の日本人に触れることができました。スコセッシ監督は時代を捉えるのが上手い監督だと思います。「ギャング・オブ・ニューヨーク」では、南北戦争時代のギャングの創始を、「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」では禁酒法時代のギャングの生態を、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」ではウォール街の喧騒の雰囲気を、「クンドゥン」ではチベット民族の生きざまを、私は歴史小説のように捉えることができました。
  25日   山陰は大雪です。松山も雪こそ降りませんが底冷えが続いています。松山の冬といえば椿さんです。椿まつりは伊豫豆比古命神社の春の例祭で、旧暦の正月八日に行われることから「お八日」とも呼ばれます。今年は2月3~5日の開催で、金曜から日曜ですので例年以上の人波になりそうです。私はよく「椿さんとともにスギ花粉症が始まり、椿さんの時期にインフルエンザが流行する」とお伝えしています。今年はドンピシャの時期の開催になりそうです。 
  22日  21、22日と当院ではインフルエンザの患者様が急激に増えました。急に高熱が出て全身倦怠感が強い典型的なパターンの方も目立ちました。迅速検査で再度A型が陽性となり、A型への二度がかりが疑われる方も複数見られました。愛媛県内で最もインフルの患者数が多いのが今治ですが次に多いのが西条です。その西条ではA2009年型が報告されています。全国的にも今シーズン、A2009年型が茨城県を筆頭に四国の愛媛、徳島、高知でも検出されています。B型も、神奈川県を筆頭に愛媛の近隣では広島でも検出されています。今日、当院でA型の二度がかりが疑われた方は、A香港型とA2009年型に罹った可能性もあります。今シーズンの迅速検査キットはA香港型とA2009年型を区別して調べることが出来ません。3シーズン前みたいにA2009年型を検出できるキットがあればよいのですが、現状ではA2009年型が流行しているかどうかは保健所の発表を待たねばなりません。愛媛県感染症情報センターの報告では、今シーズンのインフルエンザは97%がA香港型ですが、今後、A2009年型やB型との二度かがかり、三度がかりにも注意して診察を進めてみます。 
  20日   1月19日付で睡眠時無呼吸症候群の治療器具である鼻チューブ「ナステントクラシック」を自主回収するとの連絡が発売元の医療メーカーからありました。健康被害はなかったものの誤嚥の事例が1例出たことへの対応です。ナステントは2014年夏に発売された新しい概念のユニークな治療法です。口峡部狭窄によるいびきや軽度舌根沈下による閉塞型睡眠時無呼吸には、簡便かつ劇的に症状が改善する例もあることから、当院でも治療の選択枝のひとつとしていました。ただし医療保険の適応外で患者費用負担が大きいこともあり、当院でのいびきや軽度閉塞型無呼吸の治療としては、主に歯科マウスピースの装着や鼻炎治療をファーストチョイスとしていました。ナステントは一般医療機器として届け出られ、治療開始時はまず医療機関でフィッティングを行ってから開始するのが原則ですが、ネット通販でも気軽に購入できることから、適正に使用されているかどうかの判断が難しいケースもあるのかも知れません。形状からみると、気道異物としてにわかに気道が閉塞するような危険な形状ではありませんし、消化管異物としては自然排出が期待できる形状ですが、口腔内に脱落すると様々なトラブルが心配されます。いびき症や睡眠時無呼吸に対してナステントが有効なケースはありますので、装着中の安全性の確保が再確認された上で再発売されることを期待します。
  19日   当院が研究協力施設になっている「急性中耳炎・全国サーベイランス研究」(慶應義塾大学医学部感染症学教室)の中間報告が発表されました。この研究は全国の医療施設から中耳炎の膿汁を集めて、ウイルスや肺炎球菌のタイプ(莢膜型や遺伝子型)まで詳細に測定します。慶應大の研究で学会発表前でもあり、私からの詳細な言及は控えますが、例えば、肺炎球菌ワクチンの普及後にワクチンに含まれないタイプの耐性菌が増えてきている、など、興味深い知見が多数得られています。この研究成績が、今後の中耳炎のガイドラインに反映されたり、世界に向けて公表されることを期待しています。
  18日   1月8日までの週でインフルエンザが全国でも愛媛でも注意報レベルとなりました。15日までの週で今治が警報レベル、16日には当院近隣の余土中学校で学級閉鎖となりました。当院でも年末年始と発生の続いたインフルですが、当院が校区に含まれるさくら小学校ではほとんど発生がありませんでした。しかしここ数日、さくら小学校やたちばな小学校の校区の小学生や幼稚園児にもインフルの発生がみられました。いよいよ来週辺りがインフルエンザの流行のピークになりそうです。当院で検出するインフルは全例A型で、A香港型と思われます。今シーズンは1月下旬にA香港型がピークとなり、2月後半以降でB型が流行するパターンになりそうです? 基礎免疫のある成人を中心に、発熱が無く咽頭痛と声がれだけで終わるインフルもありますので、声がれを呈する方の診察では声帯や気管の所見をしっかり診ています。
 14日からスギ花粉の観測が始まった当院のポールンロボですが、その後毎日花粉を観測しています。やはり今シーズンはスギ花粉が多く飛びそうです。昨年末に6年振りに抗アレルギー剤の新薬が2種類(デザレックスとビラノア)発売されました。特徴は、1)1日1回の服用でよく運転注意などの眠気にたいする警告がない 2)新薬といっても欧米では既に発売されてることもあって低薬価である、となかなか優れものです。これまでの私の処方の感触でも、眠気の副作用は全く見られていません。新薬は発売後1年は2週間処方までしかできませんが、あと2週間後に迫ったスギ花粉飛散シーズンに大いに活用したいと思います。

 当院では、頭部・胸部のレントゲンも撮影できる頭部CTの導入を検討していましたが、今日、既存のレントゲン室に収まることが確認できましたので、導入を決定しました。なんと国内で最初の導入施設になるとのことです! 当院では久々の大型投資となります。副鼻腔炎の手術適応の判断、鼻鼻骨折や顔面外傷の評価、唾石の確認、睡眠時無呼吸での咽頭腔の評価などに活用できるものと思います。思えば私が開業する前に勤務していた病院では、必要があれば放射線部がすぐにCTやMRIを撮影してくれていました。患者様のメリットも大きかったと思いますが、私の診療スキルの向上にも貢献してくれていました。気になる所見に対してすぐに答えが出ることは、私の”若かりし頃”の診療スタイルに戻れそうで楽しみです。画像診断を敢えて積極的に行ってない当院の診療スタイルからすれば、恐らく投資資金を回収することにはならないと思いますが、その場で直ぐに評価出来て総合病院に紹介する頻度も少なくなると思われますので、患者様にとってのメリットも大きいと思います。コーンビームCTですので被ばく量も少なくて済みます。詳細は追って紹介したいと思います。

 あれっ、今年の花園町の電飾は少ないなと思っていた冬のライトアップですが、今日の夕刻、”お堀の図書館”県立図書館に立ち寄った際に城山公園の電飾を見ることができました。今年のライトアップは「光のおもてなし in Winter ~アクア・フェリーチェ~」とのこと。“恋人の聖地”二之丸史跡庭園のライトアップが素敵だそうです。気になりましたが時間と気合の関係で、県美術館周囲のライトアップだけ見ました。(-_-;)

 

  
 写真右上は県美術館の電飾です。奥に位置する(写真左上)松山市民会館まで輝きが続いています。写真右下はNHK松山放送局の前庭の電飾です。雪だるまがかわいいです。写真左下は”夜の”県美術館図書室です。開館時間中は無料で、眼前に松山城を望みながら、ゆったりと画集や写真集を閲覧できます。いつか時間を忘れて、こころゆくまで過ごしたい場所です。 
  14日  今季最大の寒波襲来です。松山も夜間は薄っすら雪化粧でしょうか? 今日はセンター試験初日です。今年は幸いにも試験直前にインフルエンザ発症の受験生の受診はありませんでした。センター試験の時期は、やはり真冬です。全国ニュースでは毎年、雪の試験会場が紹介されますね。受験生、あと1日、頑張れ!

 今日、診察終了後に新しいポールンロボを設置しました。当院での花粉観測開始です。早速今晩も、花粉が観測されていました。ポールンロボは花粉様粒子の自動観測ですので実測ではありませんが、花粉飛散の強弱は分かります。そしてなにより時間単位のリアルタイムデータが得られますので、「昨日雨で今日は暖かいから朝から花粉が大量飛散だな」とか「今日の日中は寒くて飛散は少なかったが、夕方から夜にかけて結構花粉が落ちてきたな」などと判断できます。生活リズムや外出の時間帯をみてマスク着用の有無を判断したり、お洗濯を干す時間帯の参考にして下さい。
  ウェザーニュース花粉ch. 山口耳鼻咽喉科リアルタイムデータへ
 松山耳鼻咽喉科会でも花粉症飛散データの発表が始まりました。以前は愛媛県立中央病院耳鼻咽喉科&検査部からデータの提供を受け、2012年度からは松山大学薬学部難波先生から提供されたデータを基に発表されています。松山耳鼻咽喉科会のメンバーの一人として難波教室の皆さまに感謝いたします。松山大学のデータでも1月6日にはスギが観測されています。1月6日”までには”初観測となりました。 
  11日  子供たちの新学期が始まりました。中学受験が始まり、今週末には大学センター試験です。インフルエンザや感染性胃腸炎の流行拡大が懸念されています。十分な休養と睡眠、手洗いやマスク着用など 感染予防に留意して、試験頑張って下さい。
 松山と飛散時期や飛散レベルが似通っている山口県のスギ花粉の初観測日が1月4日になりました。年明け以降も天気のいい日が多いものの、山口県の花粉の飛散は初観測日のみでした。松山の市街地でも、スギ花粉の飛散を感じる方はまだほとんどおられないと思います。なお、当院の花粉観測は1月下旬開始の予定です。 
  6日   新年の診察が始まりました。年末の診察で経過が思わしくなく年末年始での悪化が心配されていた患者様もおられましたが、私の把握できたところでは皆さん経過良好のようで、ホッとしています。
 2年前の年末年始はインフルエンザが大流行し救急病院は大変な待ち時間でした。今年はそのようなことはありませんでしたが、例年並みよりはインフルエンザの発生が多かったようです。12月25日からの週には今治、西条、宇和島で注意報レベルの発生となりました。当院の診察でも、年始に発熱して、年明けの診察でインフルエンザが判明した方が目立ちました。インフルエンザへの基礎免疫があったり、予防接種による免疫の獲得で、咽頭痛、声がれ、咳き込み程度で高熱の出ない方も多数見られています。年末の中予での学級閉鎖は、結局、余土中3年生の1学級だけでした。当院は年末、インフルエンザの流行地の真っただ中だったことになります。11月に学級閉鎖だった北伊予小学校を含め集団発生したインフルのタイプはすべてA香港型(AH3)だったようですが、愛媛県下でもB型の発生が1~8%ほどはありました。一昨日、患者様から聞いたところにとよるとある職場で流行っているのはB型とのことでした。今シーズン、当院で検出したのは全てA型でしたが、B型の存在にも留意していこうと思います。
 年明けからは、マイコプラズマや感染性胃腸炎の発生は減っていますが、溶連菌咽頭炎はある程度目立ち、アデノウイルス咽頭炎も見られました。

 小児の睡眠時無呼吸症候群(SAS)についてですが、2005年の睡眠時無呼吸国際分類の第2版からは、成人の無呼吸低呼吸指数(AHI)とは独立して記載されるようになりました。成人では1時間当たり5回以上無呼吸発作のみられるAHI5以上で軽症のSASとされますが、小児では1以上で軽症、10以上で重症と分類されます。小児の睡眠時の低換気が脳細胞や発育に及ぼす影響を成人よりはシビアに見ています。当院では小児のいびき症でも睡眠時無呼吸が疑われる場合には、まずスマホ動画などによる確認を行いますが、重症度を判別するためには在宅の睡眠ポリグラフ検査も積極的に行っています。年末年始に行った検査でも、小児で高度無呼吸に分類される例が続きました。小児のSASの大部分が口蓋扁桃+アデノイド肥大による閉塞型SASで、その大部分が手術(口蓋扁桃摘出アデノイド切除術)で劇的に改善します。深睡眠が妨げられているお子様に対しては積極的な手術治療をお勧めしています。

 今日は、午後から暖かい日差しの穏やかな陽気となりました。今年の年始も穏やかな快晴のお天気だったこともあり、松山も既にスギの初観測日を迎えた可能性があります。松山でスギ花粉の飛散数を実測して頂いている松山大学や、当地近隣の山口県の飛散情報がまだ上がってきていませんが、今後の発表を待ちたいと思います。今日は花粉症が怪しい方も来院されました。今の時期はまだかすかな飛散だけですので、軽い風邪(上気道炎)や温度変化などによる過敏症との区別は困難なのですが、スギ花粉症の強い方は、1月中も花粉を感じ始めると思います。スギ花粉が毎日飛散する飛散開始日を松山では、1月末~2月前半に迎えます。中央値は2月7日頃でしょうか。スギ花粉が本格的に飛散する時期もあと一ヵ月に迫りました。当院の花粉測定器ポールンロボの運用開始は1月下旬の予定です。

 今、この文章をパソコンの前で、インターネットラジオ”Suono Doruce”を聞きながら、米国雇用統計の発表を気にしながら書いています。このラジオは、キーAM局のニッポン放送が運営主体のメロウサウンドが24時間が流れっぱなしの無料放送です。「東京・丸の内から1日中甘く切ないラブソングをお届けするラブソングステーション」です。作業用BGMとして、私のお気に入りです。スマホアプリもあり、様々なデバイスでの聴取が可能です。 インターネットラジオ  ”Suono Doruce” へ  
1月 1日   明けましておめでとうございます。本年も当院を宜しくお願い致します。今年が皆様によって良き1年でありますように。 


道後温泉「ふなや」のお正月飾りです。

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