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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科を専門とし、地域医療に貢献します。

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

2016年 今月の疾患情報

  30日  昨日は当院の仕事納めでした。1年は早いものです。1年を終えるにあたり、今年も医療過誤のトラブルなく診療を終えることが出来たことにまず感謝したいと思います。また、診察予定時間が長引きお待ち頂いた患者様や、様々な心配りをして夜遅くまで診療をサポートしたスタッフの皆に感謝したいと思います。
 例年より早く始まった子供達の冬休みですが、今年は冬休み入りしてもインフルエンザや感染性胃腸炎の発生が多かったようです。冬休みに入り、松山に帰省して、あるいは帰国して診察される方が目立ち、例年ながら年の瀬を感じました。昨日の診察で一番気になったのが、中耳炎が治りきらずに”年越し”になりそうな子供達です。年末年始は大人も休みに入ることから新たな風邪にかかることなく、お薬が効いてお休みの間に中耳炎が治って欲しいものです。休み期間中に中耳炎が急性化しないことを念じています。万が一、年末年始に夜泣きや発熱、耳を痛そうにする、耳だれ(耳漏)が出てきたなどでお困りの当院かかりつけの方は、院内掲示やお渡しいているパンフレット類に記載されている当院時間外の電話までご連絡下さい。
 「君の名は。」の興行収入が213億円を超えています。ひょっとしたら「アナと雪の女王」の興収を抜く? 「真田丸」の総集編の放映があり、明日は紅白歌合戦です。私も1年を振り返りながら年末を過ごしたいと思います。当ホームページを訪れた皆様の”来る年が良い年であること”を祈念したいと思います。 
  21日  昨日の午後、当院では急な高熱と全身倦怠感でぐったりした子供達が目立ちました。昨日、当院近隣の垣生小、余土中で学級閉鎖のクラスが出ました。これまで感染者のいなかった松前中の生徒にもインフル陽性が見られました。冬休みを前に、当院外来も冬本番です。
 現在、例年の2倍のペースで流行している感染性胃腸炎のノロウイルスですが、10年振りの遺伝子変異が疑われています。これまでのウイルスには免疫があるために発症し難かった大人でも、発症する可能性があるとのことです。4年振りに日本での発症が多かったマイコプラズマ感染症ですが、こちらも耐性菌の話題がありました。小児ではマクロライド系抗菌剤への耐性化が13%で見られたそうです。耐性菌が話題になった4~5年前には耐性菌が88%だったという報告もあり、私もびっくりした覚えがありました。今年の流行では”薬の効きが悪い”印象は無かったのですが、やはり耐性菌は存在しているようです。マイコプラズマの患者様の経過を診る上では注意が必要です。
 声帯の周囲に腫れもの(腫瘤)が出来た方の来院が続きました。声帯の腫瘤で最も注意しなければいけないのが喉頭癌ですが、その他にも前癌状態の白板症や、ウイルスによる乳頭腫、慢性炎症や機械的な刺激が誘因となるポリープや結節、先天的な要因が大きい嚢胞、感染による結核などがありますが、最近、肉芽(にくげ)と呼ばれる炎症性の腫瘤の目立った方が来院されました。ある方は声帯の後方中央部、後連合と呼ばれる場所に肉芽が見られました。逆流性食道炎による喉頭への胃酸の刺激が原因と考えられました。また、別のある方は、声帯から空気の通り道である声門に大きく張り出した肉芽腫で、全身麻酔による挿管の刺激が原因と考えられました。治療には胃酸の抑制剤(PPI)や吸入ステロイドを用います。 
  18日  当院の大掃除、忘年会ともに無事終わりました。一年を振り返る行事が終わると、当院の外来も一気に年末モードです。一年は早いものです。
 子供達の年末も今年は早くやってきます。例年より早く今週の木曜日22日には学童が終業式を迎えます。天皇誕生日が金曜日で、年明けの成人の日が9日の月曜日と例年より早いことから、今年の子供たちの冬休みはなんと18日もあります。幼稚園児や小学生達が長期休暇に入ると感染症は流行らなくなりますので、風邪の流行も今週末で一旦落着くと思われます。当院での感染症の発生をみると、インフルエンザの集団発生は広がっていません。ただし様々な地域での散発は見られます。全例がA型でした。中には家族内で集団発生したご家族もおられました。ノロウイルスと思われる感染性胃腸炎に伴う上気道炎がここ数日目立って増えました。溶連菌咽頭炎、アデノウイルス咽頭炎、RSウイルス感染症は散発、マイコプラズマ感染症が少なくなり、手足口病は見かけなくなりました。また、花粉症シーズンを前にスギ花粉症へのレーザー治療が増えてきました。
 昨年7月に指定難病が306疾患に拡大となりました。耳鼻科関連ではシェーグレン病、好酸球性副鼻腔炎、遅発性内リンパ水腫が主なもので、時にIgG4関連疾患や多発血管炎性肉芽腫症などが関連してきます。指定難病に申請すれば外来治療費の負担が3割から2割負担に減額されたり月の治療費の上限も設けられます。当院でも好酸球性副鼻腔炎やシェーグレン病で通院されて申請基準に該当する方もおられますが、1)入院治療や手術を要する方は限られ 2)月の薬剤費が多額になることが少なく 3)高齢者医療でもともと外来の負担率が2割以下の方もおられる 4)好酸球性副鼻腔炎のように申請の為にCT検査等を行う場合には別途検査代金の負担が発生する、などから申請のメリットが少ない場合がほとんどです。そのため、当院で実際申請するケースは年間数例のみとなっていますが、ここ数か月申請を検討する方が重なりました。出来る限りご本人のメリットとなるように申請のお手伝いが出来ればと思っています。

  頚部蜂窩織炎、突発性難聴、外耳道周囲の尋常性乾癬、顎関節症、メニエール病、遅発性内リンパ水腫、顔面神経麻痺など。 
  7日   今日、当院の診療予約システム「アイチケット」の更新が無事、終わりました。。当院がアイチケットを導入したのが2005年です。当時、診療予約システムは電話を用いるものでも黎明期でした。アイチケットは、インターネットを通じて予約出来て、時間予約ではなく順番や診察の進み具合を確認できるシステムだったために、当時は画期的でした。耳鼻科は外科系として、外来中に急を要する処置や小手術が入ることもあり、診察のペースに波があります。そのため当時の私は”時間”予約システムの導入には二の足を踏んでいたのですが、”順番”予約の「アイチケット」が発表されと直ちに導入を決定し、当院は「アイチケット」の設立早期の導入施設となりました。その後、アイチケットは全国の医療機関に支持を広げ、今では日本における診療予約システムのシェアNo.1となっています。私が支持した会社が伸びたことから、私もなんだか誇らしい心持ちです。
 当院が導入していた初期のシステムは、院内のパソコン上でソフトが動いてネット上のサーバーにデータを送るシステムでしたが、来年の春をもってサーバー上でソフトが動くクラウドシステムに全面転換することになったことから、この度のシステム更新となった訳です。更新してみると、細かい機能が多々追加されていました。更新の手法も、東京の会社からのパソコンのリモート操作で更新ソフトをアイチケットの担当者が次々にインストールし、リモート画面を通じて当院スタッフがガイダンスを受けるなど、なにかとハイテクな感じでした。また、院内の掲示用モニターに各種の診療に関する動画が流れたり、スマホアプリが活用できたりと、私が知らない間にシステムは大きく進化していました。(';') 明日以降来院される方は、掲示用モニターの変化に気付かれると思います。とにかく、今日のところはトラブルなく導入できてホッとしていますが、ややシステムが複雑になったこともあり、明日の運用第一日目が少し不安です。明日の運用がスムースに運びますように、、 また、今回の更新で、患者様が見るスマホやパソコンの画面も刷新されました。アドレスも変更になっていますので、これまで利用されていた患者様はブックマークの変更お願いいたします。(ただし、これまでのページからも自動でジャンプしますので従来のアドレスにアクセスしてもご利用頂けます) 
12月 4日   12月、師走になりました。初冬の趣で朝晩は冷え込んできました。診察室から見える落葉もピークを過ぎました。当院もささやかながらクリスマスのデコレーションです。診察室のBGMもクリスマスミュージックです。年末恒例の大掃除ですが、今年は例年より早く先週済ませました。また、インフルエンザが例年より早く流行入りしたこともあって、私は既に年末ムードです。
 年末恒例で私が楽しみにしているものといえば花園町のライトアップです。今年はまだ電飾の準備が無いので、今年は花園町の電線地中化工事の影響で中止かも?と心配していましたが、今年は時期が変更になり、例年より遅くクリスマスからバレンタインまでとになったそうです。今年で10回目のイルミネーションイベントは「光のおもてなし in Winter ~アクア・フェリーチェ~」として、これまでの花園町通りからエリアと期間を拡大し、松山市駅から花園町通り、“恋人の聖地”に認定された二之丸史跡庭園まで、12月22日から2月14日までライトアップするそうです。南堀端から城山公園を通って二の丸庭園までライトアップが続くのでしょうか? きっと素敵でしょうね。松山城は、本丸広場からの市街地の眺め、3つの趣の違う登山道、ロープウェイやリフト、広大な城山公園とそのな中には市民会館、NHK放送局、県美術館、県図書館があり、さらに、二の丸史跡庭園、堀端の周遊路と様々な顔があります。堀端は実は私の高校時代の通学路でもありました。松山城は私のとって様々な思い出の詰まった素敵な場所です。
 インフルエンザの流行は、流行地域は広がったものの感染者数ではやや下火のようです。当院周囲でもほぼすべての小中学校で感染者が出ていますが、学級閉鎖に至るような流行の拡大は見られないようです。 
     
  25日   愛媛県、全国ともにインフルエンザの流行入りです。11月20日までの週のデータから今日発表されました。新型インフルエンザが流行した09/10シーズンを除くと、過去10シーズンで最も早く、例年より2~3週早い流行入りです。先週のデータでは愛媛県下の98%がA型で、その前の週に県の衛生環境研究所で同定した松山市からの検体はA香港型(AH3)とのことから、どうやら現在流行入りしたインフルはA香港型の可能性が高いです。当院でも成人の方の陽性例も見られ始めました。先週までは松前町松前小学校区・北伊予小学校区、松山市の味生小学校区・双葉小学校区が主でしたが、今週当院では垣生小学校区、余戸小学校区、伊予市の方の発症も見られ始めました。やはり流行入りです。来週以降、中予全域に徐々に広がるかもしれません。体調の管理、手洗い・うがいなどの感染予防に努めて下さい。
 米国で承認済みのインフルエンザの点鼻生ワクチンのフルミストですが、私は今シーズン日本でも認可されると思っていたのですが、米国で新しい動きがあったようです。米国疾病予防管理センター(CDC)が、15/16シーズンに2~17才で検討したフルミストのインフルエンザ発症予防効果が注射の不活化ワクチンより低かったとして、今シーズンは”フルミストの接種を推奨しない”としました。点鼻は接種時の痛みがないことから子供に優しいワクチンとして期待していたのですが、どうやら認可の雲行きが怪しくなっています。代わってと言ってはなんですが、11月に日本の日東電工が阪大微生物研究所との共同開発で、経口の舌下免疫インフルエンザワクチンを開発すると発表しました。経口免疫では抗体が出来にくいのですが、日東光電が抗体の生成を促す補助剤の開発を担当するそうです。私は初耳だったのですが、既に臨床試験は始められており2020年以降の製品化を目指すところまできているそうです。スギやダニへの減感作だけでなく、ワクチン領域にも経口免疫の臨床応用が始まろうとしています。これも子供に優しいワクチンになりそうで、技術の完成が楽しみです。 

  鼓膜穿孔閉鎖術、扁桃縮小手術、鼻粘膜レーザー治療、反復性耳下腺炎など。 
  23日  勤労感謝の日で、当院もお休みを頂きました。肌寒いあいにくの曇り空でしたが、松山は今、紅葉真っ盛りです。紅葉狩りでスギ花粉を感じた方もいたかもしれません。日本気象協会も花粉の飛散予報の第一報を出しています。これによると、近畿(昨シーズン比360%)・四国(260%)・九州(270%)・東海(160%)・中国(170%)は「多い」、北陸(140%)は「やや多い」と予測され、北海道や東北・関東は昨シーズン比50~70%で、「少ない」「やや少ない」となっています。やはり四国は大量飛散しそうです。
 私はお休みを利用して、先日参加した専門医講習会のおさらいと、この冬に私の論文が小児科の学術雑誌に掲載されることを契機に自分の研究業績のおさらいをしました。ネット時代のおかげで研究のための文献検索も便利になっています。米国国立医学図書館の国立生物科学情報センターが作成しているデータベースPubMedでは世界の医学論文の抄録が無料で検索できます。J-STAGEでは国内で発行された学術論文全文を読むことができます。多くは学会毎の参加者がパスワードで入る必要があるのですが、「耳鼻臨床学会誌」に掲載の私の学位論文は無制限で公開されていました。未来に向かって私の足跡が残せると考えると感慨深いです。私が研究していた当時に最新の研究に触れることが出来たのは、大学図書館の研究雑誌か、有料で手配する論文検索しかありませんでしたので、隔世の感です。これを機会に 研究業績 のページを新設しました。
 もうひとつ、休日に2012年放映のテレビアニメ「坂道のアポロン」を観ました。YouTubeの”お勧め”になにげに出たのを少し見ただけで虜になりました。映画化されておらず、また、これまで私がアニメに縁が無かったこともあり全くのノーマークでしたが、実は「このマンガがすごい!2009」オンナ編で第1位、第57回小学館漫画症一般向け部門受賞などの受賞歴もある作品です。私は以前「ピアノの森」を紹介しましたが、「ピアノの森」が高校生がショパン・コンクールを目指すクラシックの音楽アニメなら、「坂道のアポロン」はジャズ・セッションを行う二人の高校生の物語です。音楽が流れるドラマが好きな人にはお勧めです。


 専門医講習会で私が得た知識を忘備の意味も込めて、以下に挙げたいと思います。普段の学会と違い、講習会は専門医としての知識を確認する場です。臨床医としての実践的な知識や技術の確認になりました。やや専門的な内容ですが、耳鼻科医療の現状やレベルが判ると思います。興味のある方はご一読下さい。

○乳幼児聴覚検査:新生児1000人に1人の割合で難聴。難聴児の聴能訓練を見つかってから6ヶ月以前に開始した場合とそれ以降の場合では習得語彙数に差が認められることから、早期発見・早期治療が重要。
1)スクリーニング
OAE(耳音響放射:DPOAE,TEOAE):耳に刺激音をいれ、これに反応して内耳から放射される小さな音を拾う。Passは、1kHz以上で25-30?、少なくとも40?に反応と考える。内耳障害だけでなく中耳や外耳障害でもRefer(要再検)。
AABR(自動聴性脳幹反応):脳波の誘発電位であるABR(聴性脳幹反応)を利用して、自動判定。6か月児まで適応。両側耳介にイヤーカプラを装着し700~5000Hzの35dBのクリック音で刺激し、前額部と項部と肩に装着した電極より記録。
2)精密検査
聴性脳幹反応(ABR):従来はクリック音式、500Hz tone pip音での検査装置あり。
3)乳幼児聴力検査
a)聴性行動反応聴力検査 (Behavioral observation audiometry: BOA) :対象は生後5ヵ月より。視界の後ろから大きな音を聞かせ定位反応の有無を見る。太鼓、鈴、紙のこすれる音も使う。
b)条件詮索反応聴力検査(Conditioned orientation response audiometry: COR):対象は1才児より。左右に設置したスピーカーと光源を組み込んだ装置を使う。音が聞こえると光に照らされるなどの方法で、どのくらいの音で反応するかを観察。反応すれば幼児を褒めるのがコツ。
c)PEEP SHOW:対象は3才以上。ヘッドホン着用無し。音に反応してボタンを押したら褒める。
c)遊戯聴力検査 (Play audiometry) :対象は3才6ヵ月以上。ヘッドホン着用。音が出ている時だけボタンを押すと玩具が見える装置を使って条件付けを行い聴力閾値を測定。
○顔面神経術中モニタリング:耳下腺腫瘍、真珠腫性中耳炎などの耳科手術、聴神経腫瘍などの側頭骨頭蓋底手術での顔面神経の確認、顔面神経麻痺への顔面神経減荷手術での神経麻痺の予後判定に使用。術中に筋弛緩剤は投与しない
○ナビゲーション手術:実視野に拡張現実(augmented reality)で内耳や顔面神経を映しこむ。手術器具先端の位置を決めるには光学式と磁気式がある。
○cadaver(ご遺体)による手術修練:平成24年に日本外科学会と日本解剖学会が「臨床医学の教育および研究における死体解剖のガイドライン」を策定。耳科学会でも策定中。ホルマリン固定と未固定がある。
○頭頸部腫瘍における緩和医療と看取りの医療
○鼓膜が正常な伝音難聴:耳小骨固着では聴力低下が低音域のみに限局する場合があり低音障害型感音難聴との鑑別に注意。固着が進むと低音域から中高音域に気骨導差が波及し2000Hzの骨導域値上昇(カールハルト・ノッチ)を伴う聴力像stiffness curve)となる。アブミ骨筋反射は伝音難聴の方が早い時期から抑制される。耳小骨周囲の軟部陰影では先天性真珠腫の合併も注意、その際はMRI拡散強調画像が有用。耳硬化症のCT所見では、前庭窓前縁や迷路骨包の微細脱灰像。0.5㎜以下で撮影すれば前庭窓前方に限局した脱灰硬化所見も半数で確認可能。迷路骨包全体に脱灰が拡大し高度難聴を呈する蝸牛型耳硬化症もアブミ骨固着を伴った耳硬化症の進展例と考えられている。耳硬化症では1000Hzの気骨導差dが20?以上拡大すれば手術を念頭においた聴覚管理となる。
○悪性外耳道炎:強い炎症による骨破壊を伴った側頭骨骨髄炎。夜間に増強する痛み、外耳道底部の肉芽、糖尿病合併、緑膿菌の検出。ANCA関連中耳炎、中耳結核、外耳道癌が鑑別疾患。病理検査で確定。
○副咽頭間隙腫瘍:迷走神経、舌下神経、交感神経由来の神経鞘腫と耳下腺深葉から発生する多形腺腫が多い。
○喉頭外傷;内腔の損傷が高度で癒着、狭窄が危惧される場合にはステント留置
○新専門医制度:専門医数の推移-過去20年で、麻酔科、精神科が増加、耳鼻科は減少した産婦人科、外科に続く横ばい。
○薬力学とドラッグデリバリーシステム
○頭頸部癌治療薬と副作用:白血球数1000、好中球500以下で顆粒球コロニー刺激因子G-CSF使用、ヘモグロビン8以下で濃厚赤血球輸血、血小板2.5万以下で血小板輸血。
○突発性難聴へのステロイド鼓室内注入ITS:デキサメサゾン2㎎連日8日投与。糖尿病などステロイド全身投与危惧症例でも安心して施行可能。軽度から高度難聴に対して有効かつ副作用の少ない安全な治療法。
○抗菌薬のPK/PDパラメーター:PK薬物動態-濃度変化のパラメーター、PD薬力学-抗菌作用のパラメーター
○時間依存性抗菌薬と濃度依存性抗菌薬:時間依存はβ-ラクタム系抗菌薬、濃度依存性はキノロン系抗菌薬、後抗菌薬作用がグラム陰性菌のインフルエンザ桿菌やモラクセラ菌にはセフェム系で無いことからβ-ラクタム抗菌薬は増量が必要。
○点耳薬:1回4-5滴、点耳後に耳珠を数回パンピングし外耳道に陽圧をかける。チューブ留置後の耳漏には抗菌薬とステロイドの点耳が有効。3%過酸化水素水2倍希釈液、0.2%ピオクタニン液をMRSAに。4倍希釈ブロー液を組織障害が強い場合やMRSAに。
○指定難病:遅発性内リンパ水腫-難聴耳に半規管麻痺かつ水平回旋混合眼振、若年発症型両側性感音難聴-40才未満発症、両側性70?以上原因遺伝子の特定が必要、好酸球性副鼻腔炎、アッシャー症候群、臍耳腎症候群、ミトコンドリア病、神経線維腫症、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、シェーグレン症候群、再発性多発軟骨炎、チャージ症候群、オスラー病、ベーチェット病、IgG4関連疾患
○身体障害福祉法:障害名 例)聴覚障害(内耳性難聴)、聴覚障害(語音明瞭度著障)、聴覚障害およびそれに伴う言語障害、平衡機能障害(末梢性平衡失調、中枢性平衡失調、小脳性平衡失調)、原因名 例)老人性難聴、慢性化膿性中耳炎、原因不明 発生年月日 不明な際には最初に医療機関を受診した日、0年頃 参考となる所見 言語獲得状況、日常会話の困難度、補聴器装用の有無、手術経過、介助での自立や歩行
○嚥下機能検査:反復唾液飲み検査-30秒間の嚥下回数、2回以下を異常とする、水飲みテスト-3mlの水嚥下、血中酸素飽和度モニター-食事中に2%低下、嚥下内視鏡検査VE-下咽頭梨状陥凹や喉頭蓋谷の唾液や食物残渣の有無、内視鏡先端で喉頭粘膜に触れる、嚥下造影検査VF
○嚥下機能改善手術:咽頭弁形成術、咽頭縫縮術、喉頭挙上術、輪状咽頭筋切断術、声帯内方移動術、声帯内注入術 
○難聴遺伝子検査:2012年保険収載10遺伝子46種類、2015年からは19遺伝子154種類
○言語発達遅滞:軟口蓋および舌の運動量不足-「か」発声時に舌背後半を挙上できる、筋機能療法 例)ふき戻しを吹いて伸ばす 音韻意識困難 発達ゲルストマン症候群 不器用をともなう発語困難症
○甲状腺エラストグラフィー:腫瘍の硬さを画像化するエコー検査
○甲状腺穿刺吸引細胞診:充実性結節では20㎜以上、10㎜以上で悪性疑う 5㎜以上で悪性強く疑う場合に施行。膿胞性では10㎜以上、充実性成分に悪性疑う場合に施行。22-23G針使用。エコーガイド下交叉法と平面法がある。組織は95%エタノールで湿固定。
○抗がん剤(分子標的薬)による副作用:間質性肺炎 他
○頭頚部癌への化学放射線併用療法
○頚部廓清術:頸動脈周囲270°以上または長径5㎝以上腫瘍が取り囲んでいれば切除不能。早期舌癌ステージⅠⅡでは口腔内部切により原発巣の制御は可能だが、術後1-2年で30%頚部リンパ節転移が後発してくる。舌への腫瘍の浸潤が4㎜以上では予防的頚部廓清術が推奨。センチネンタルリンパ節(原発巣から最初に腫瘍が流れ込むリンパ節)生検は頭頸部領域ではまだ保険収載されず。
○耳処置と中耳手術:鼓膜チューブ留置ではローゼン探針で押し込む。外耳道局所麻酔は1時の方向に1ml浸潤麻酔。
○耳鳴:遮蔽検査-遮蔽されて聞こえなくなる遮蔽音の細小レベルを求める。遮蔽音は2-3秒与える。音響療法-環境音、音楽、ラジオ放送、サウンドジェネレーター、補聴器
○音声機能検査:最長発声持続時間MPT-/a/発音、正常は男性15秒以上、女性10秒以上
○音声訓練:緊張を緩める-あくびため息法、咀嚼法、ハミング法、チューブ発声 緊張を高める-プッシング法、硬起声発声法 声を低くする-指圧Kayzer-Gutzmann法、硬起声発声法 声を高くする-裏声、地声変換発声 声門閉鎖を強める-プッシング法 呼気力を高める-呼吸訓練 包括的治療-発声機能拡張訓練、Lessac-Madsen共鳴協調訓練、アクセント法
○睡眠障害:小児の診断基準は1時間に1回以上の閉塞型や混合性無呼吸や呼吸低下といびき、吸気時の鼻圧波形の平坦化、胸部腹部の奇異呼吸、ビデオモニタリングも有用、小児の治療には噴霧ステロイドや抗ロイコトリエン剤も使用、成人のAuto-CPAPは閉塞性肺疾患やうっ血性心不全があれば適応にならない。CPAP導入拒否や使用率低下への対応法
○嚥下内視鏡検査:検査食は食紅やゼリー、プリンを3ml、検査は1.上咽頭をパピプペポ発声で軟口蓋挙上と鼻咽頭閉鎖を確認 2.声門閉鎖と唾液貯留確認 3.内視鏡先端を喉頭蓋や披裂部に接触させて防御反射をみる 4.着色水嚥下時の反射惹起をみる 5.嚥下後の咽頭クリアランス確認
○嚥下のリハビリ:頭部挙上訓練-仰臥位、肩を床につけて頭部をつま先が見えるまで挙上1分休憩1分3クール 嚥下おでこ体操-額に片手をあて臍を覗き込むように強く下を向きゆっくり5つ数える プッシング法ー壁や机を押す、肩からこぶしを振り下ろす動作とともに強い発声、音声が良くなれば徐々に上肢の力を減らす
○頚部エコー検査:顎下腺、口蓋扁桃、舌は口腔底方向を見上げるようにプローブ当てる 癌頚部リンパ節転移の所見-部分的均質高エコー、嚢胞状部分、リンパ門からの血流途絶、硬いリンパ節、被膜が保たれていれば境界明瞭平滑
○補聴器適合検査:実耳挿入利得測定、挿入型イヤホンも用いて聴覚域値、不快レベル、快適レベル測定 補聴器装用閾値 語音明瞭度曲線、雑音下語音明瞭度検査 環境騒音許容検査 
○良性発作性頭位めまい症:外側半規管型は後半規管型より眼振潜時短く持続時間長く、疲労現象少ない クプラ結石は1分以上持続で方向交代性上行性眼振、半規管結石では1分以内の下向性眼振 浮遊耳石置換法は後半器官型でエプリー法、外側半規管型でレンバート法
○メニエール病:蝸電図で-SP増大で間接的に水腫推定陽性率60-70%、ガドニウム造影MRIで直接的に水腫描出陽性率80%
○前庭神経炎:単純ヘルペスの再活性、健側向き眼振数週持続
○平衡検査:眼球圧迫Aschner試験-1分圧迫脈拍10減少で副交感神経亢進 眼振検査-注視眼振が自発眼振より強ければ、または垂直性など種類を変化させる眼振で中枢性由来 前庭誘発筋電位VEMP-胸鎖乳突筋の電極で同側の卵形嚢と下前庭神経、眼輪筋の電極で対側の球形嚢と上前庭神経の評価 重心動揺計は局在診断よりも経過観察に有効、綿製だけが開眼閉眼ともに多いパターンは心因性めまいも
○聴覚検査:ウェーバーテスト-音叉を頭蓋正中に当てると骨導聴力の良い耳が良く聞こえる 純音検査-クロスヒアリングは気道音で50?、骨導音で5? 聴性定常反応ASSR-500.1000.2000.4000Hzの周波数別域値検査可能な脳波検査
○喉頭下咽頭の検査、手術:前屈顎引きのKillianの頭位で下咽頭腔が広がる、フード付き内視鏡有効 喉頭ストロボスコピーは声門癌や声帯嚢胞で声帯振動の阻害 経口的直達鏡手術TOVS
○救急蘇生法:2015年ガイドラインで、胸骨圧迫は100-120回/分、静脈ルート確保できなければ骨髄ルートも
○顔面神経麻痺:ベル麻痺の6割が単純ヘルペス、2割が帯状疱疹ヘルペス 表情筋運動40点法(柳原法)の10点以下で完全麻痺 誘発筋電図ENoG発症後10-14日後40%以上で1か月で改善、20%以上で2か月で改善ただし病的共同運動の可能性も、10%以上で4ヵ月で改善、10%未満の半数治癒せず 治療はデキサメタゾン60㎎より漸減(高度例やハント症候群では120㎎より開始) 完全麻痺かつENoG10%以下で顔面神経減荷手術も、慢性期にミラーバイオフィードバック療法や表情筋マッサージ持続、1年後よりボツリヌス毒素注射も
○耳管:機能検査-耳管鼓室気流動態法、音響耳管法、加圧減圧法でダイバーや航空乗務員の適正判定、耳管狭窄開放の判定、慢性中耳炎の換気能術前検査、滲出性中耳炎難治例の推測 耳管内視鏡検査 耳管内薬液注入は0.1ml通気嘴管に注入 
○嗅覚検査:T&Tオルファクトメーター:労災自賠責の後遺障害診断 平均認知域値2.6以上で嗅覚低下、5.6以上で嗅覚脱失 静脈性嗅覚検査-20秒かけて静注 潜伏時間10秒以内持続時間60秒以上が正常 保険請求できない検査にニオイスティックOSIJ-T、カード式ニオイ同定能測定具Open Essenceあり。

  


 今回の講習会は、広島平和記念公園内の広島国際会議場で開かれました。新専門医制度の影響で参加者が増え、日本の耳鼻科医約1万人の内の3千人以上の専門医が参加しました。予想以上の参加者で国際会議場のキャパシティーを超えたことから、急遽サテライト会場まで造設されました。国際会議場は広島平和記念資料館の横に建てられています。講習会の合間には平和記念公園を散策できました。平和記念公園と資料館は丹下健三氏の案がコンペで採用され、1998年には公共建築百選に、1999年には日本の近代建築20選に、2006年には世界平和記念聖堂とともに第二次世界大戦後の建築物としては初めて国の重要文化財に指定されています。外国人による「日本における必見の場所トップ20」のリストでは1位が宮島で、広島平和記念資料館が2位、3位松本城、4位東京ディズニーシー、5位沖縄美ら海水族館、6位伏見稲荷大社となっています。原爆ドームを望む歴史の重さとともに建築学上も貴重な場所です。慰霊碑の前の広場は先日のオバマ大統領と安倍首相がスピーチした場所です。資料館は現在改装中で、資料館直下の発掘では原爆投下時の跡が発掘されています。(下写真) 戦禍の記憶と国際政治の重みを身近に感じました。 
  19日  松前町の北伊予小学校が、17日に今シーズン愛媛県下初のインフルエンザによる学級閉鎖となりました。当院近隣では、松前町の松前小学校、松山市土居田の双葉小学校、別府町の味生小学校でもインフルの発生が見られています。今シーズンのインフルは松山の西南方面から始まりました。今のところ北伊予小学校以外は学級閉鎖になる状況ではなさそうですが、当院に近い地区の子供達の集団発生に注意しています。

 18日に抗アレルギー剤の新薬2種、デザレックスとビラノアが処方可能となりました。抗アレルギー剤の分野では、ディレグラ配合錠が発売されて以来3年半振り、単剤としてはザイザル以来6年振りの新薬です。新薬は薬価が高いのが通り相場で、ディレグラの発売時に私は「こんなに高いの」とビックリした記憶がありましたが、当時と違い、薬価の承認基準が大きく変わりました。超高額な抗がん剤のオプジーボの公定価格見直しは、中医協の審議で、9月の時点では発売1年で例外的に薬価を25%引き下げるとの方針でしたが、官邸の意向もあり13日の協議では当初の予定よりもさらに引き下げ50%下ることで決定しました。今回発売された抗アレルギー剤にも新しい薬価算定の流れが影響しています。この2剤はいずれも既に海外で発売されており、特にデザレックスは以前から発売されているクラリチンの代謝活性物で、いわゆる改良品です。海外で既に発売されている薬剤は海外での薬価を参考にし、改良品は完全な新薬ではないとして新薬としての薬価上の加算をしないとうい新規定ができたことから、今回の新薬は画期的に安くなりました。既存の抗アレルギー剤よりも安い価格です! 予定していた価格よりも低い価格となったために製薬会社は大変ですが、実際に服薬する患者や、財政を負担する国は助かります。(^.^) デザレックス、ビラノアともに、○効果が高く ○速効性があり ○1日1回の服薬で済み ○眠気の発現が少ないことから添付文書に「眠気を催すことがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に注意すること」との注意書きはありません。特にビラノアは ○12才以上の小児も服薬可能です。今回の新薬の登場に際しては、私も、効果や副作用、費用負担のデメリットを考えずに処方できそうです。  
  15日  昨日は雨模様で拝めなかったスーパームーンが、今日は綺麗に見ることができました。意識して見れば確かに大きい、、気がしました。(^.^) 秋の日の澄んだ空気の中で眺める月はとても素敵です。子供の頃、簡単な天体望遠鏡で月のクレーターを見た際の感動は忘れられません。もうひとつ、夏の日の流れ星もロマンチックです。
「君の名は。」の興収が184億円を超えました。君の名は。ピコ太郎、BABYMETAL、今年の紅白を賑わせそうです。
 今日もA型インフルエンザ陽性のお子様を診ました。松山市西部、三津浜方面から受診された小学生でした。松前町の小学校のインフルも欠席者が増えているとのことです。学級閉鎖、どうなるでしょうか? 慌ててインフルの予防接種を検討する保護者の方も目立ちました。風邪や中耳炎の経過で、どの段階から予防接種が可能かどうかの問い合わせが多くなりました。 
  13日  昨日は専門医講習会出席による臨時休診でした。おかげさまで滞りなく受講できました。ご協力ありがとうございました。昨日の影響もあり、今日の外来は大変込み合いました。初診の方の中にはめまい発作の方が複数おられたこともあり、午後の診察ペースは予定より遅くなりました。夕食時間の予定がずれた方もおられたと思います。大変失礼致しました。
 今日の診察では、松前町の小学生2名からインフルエンザA型を検出しました。9月上旬に北条地区の方からA型を検出して以来、約2ヶ月振りの検出です。当院でのインフル初検出は、昨年今年と二年連続で9月でしたが、これは特別なケースだとすると、今年は例年よりやや早めに検出してシーズン入りとなったことになります。今日の小学生はいづれもワクチン接種前の発症でした。現在、松前町を中心に発生しているインフルのタイプがA香港型か? A2009年型か? 私の印象ではA香港型を疑うのですが、愛媛県感染症情報センターの正式な報告を待ちたいと思います。過去にはインフルエンザの流行が急に拡大するシーズンもありました。このような際は検査キットや抗ウイルス薬の流通が急にストップすることがあります。また、鳥インフルエンザからの変異など完全な新型の発生もいつも気に掛かかります。今シーズンが平穏なシーズンになりますように。 
  10日   12日土曜日は、日本耳鼻咽喉科学会出席のため臨時休診とさせて頂きます。土曜は学校やお仕事がお休みの患者様が多く、また、土曜日しか来院の都合がつかない患者様もおられると思います。土曜日の休診は誠に心苦しいのですが、何卒、ご理解ご協力お願い致します。当日、緊急の問い合わせには電話での対応は行います。また、翌日の13日日曜日の診察は通常通り行います。今回開催されるのは専門医講習会という形式の、講義や実習が主体の講習会で、広島で開催されます。例年であれば私は主に5月の総会学術集会に参加していました。今回、専門医講習会に参加することになったのは、私が再来年満期となる専門医資格の更新のためには、従来と異なり、新たな専門医制度の下での科を問わず全ての専門医資格に必要となった「医療倫理」や「医療安全」といった講習を受ける必要が出てきたためです。今回の学会出席は”宿題”を終わらせるためのようで、前向きとういよりは少々気が思いのですが、専門医資格は目に見えるライセンスとして重要ですので、しっかり受講してこようと思います。専門医講習会では必須の講義以外にも、実技講習があります。ここが従来の学会とはおおいに違うところです。ちなみに今回の講習会での実習を紹介してむると、以下の通りです。外耳・中耳疾患に対する耳処置と中耳手術の基本手技、嚥下内視鏡検査と嚥下障害の治療、 内視鏡下鼻副鼻腔手術の基本手技 、超音波検査と穿刺吸引細胞診の実際、耳鳴検査とリハビリテーション 、補聴器、音声機能検査とリハビリテーション、平衡機能検査とリハビリテーション、睡眠障害の検査・診断・治療、アレルギー性鼻炎の検査と治療、乳幼児聴力検査と難聴児の診断・治療・聴覚検査(聴性定常反応、耳音響放射を含む)。専門医制度は、医療技術を担保するものです。医学に関する座学だけでなく、広く技術を得るためには有用な制度です。今回私は、乳幼児聴力検査と難聴児の診断・治療・聴覚検査の実習を受ける予定です。聴力検査のスキルアップを目指してきます。(^^)/

 昨日、当院の近隣に位置する松前町の小学校で複数人のインフルエンザ陽性の報告がありました。また複数の保育園でも陽性の報告がありました。当院近隣の内科でも陽性者が出たそうです。この秋の松山の感染症は、マイコプラズマに続きインフルエンザも城西地区が先行しています。 当院でも熱型や上気道の所見から、怪しい患者様には迅速検査を行いましたが、陽性の方はまだ見られません。引き続き、インフルエンザの発生も念頭に診察を行いたいと思います。さすがにこの時期に本格的に流行することはないと思いますが、当院近隣でワクチン接種の時期に先行して発生し始めているということは、インフルに対する基礎免疫が集団として少ない時期の発生ということですので、早期の流行にも念のため留意したいと思います。先月のこのコーナーでも触れましたが、全国的にもインフルの発生が例年よりやや早いようです。沖縄の報告は引き続き群を抜いています。先週は遂に定点辺りの報告数が10を超えました。これは”流行発生注意報””警報継続”の基準値に当ります。沖縄は今の時期に注意報レベルの発生です。  
  6日  マイコプラズマやRSウイルス感染症が目立ちますが、急な発熱で咽頭炎の所見が強いのに病原菌が特定できない例が、小児でも成人でも結構目立ちます。上気道炎を引き起こすウイルスの中でも、ライノウイルス、コロナウイルス、エコーウイルスよりは粘膜の反応が強い傾向のあるパラインフルエンザウイルスが多い気がしています。
 秋の雑草花粉の季節は終わりました。ブタクサなどのキク科花粉の飛散は10月前半に、秋のイネ科も10月下旬にほぼ終息します。11月に入るとスギ花粉の秋の飛散がわずかに見られます。これから年末にかけての時期の花粉症症状がスギ花粉によるものかどうかの判断は難しいのですが、例年2~3月にスギ花粉症の反応が強い方で、この時期の天気の良い日の午後に室外で目や鼻が痒くなる方は、スギ花粉を感じているのかもしれません。紅葉狩りに行くと気付きやすいかもしれません。ハウスダストアレルギーと花粉症を合併してレーザー治療を希望される方がやや目立ちます。ハウスダストアレルギーがベースにある方はいつレーザー治療を受けても良いと思います。風邪などの急性炎症が上気道に無ければレーザー治療を行っています。


 3日の祝日、「ゆるキャラグランプリ2016in愛媛」の会場設営が終わった城山公園の入場ゲートです。愛媛県人にはなぜか認知度の高いゆるキャラグランプリですが、過去の成績を見れば納得です。ゆるキャラグランプリは2010年滋賀県の彦根で初めて開催されましたが、翌2011年以降の愛媛県勢の成績は素晴らしいです!
  2010年 1位 ひこにゃん
  2011年 1位 クマモン 2位 いまばりバリィさん
  2012年 1位 いまばりバリィさん
  2013年 11位 みきゃん
  2014年 3位 みきゃん
  2015年 2位 みきゃん
 一度優勝したキャラクターは次回からは参加しない決まりだそうで、「いまばりバリティさん」はすでに殿堂入りです。開催地のキャラクターである「みきゃん」は、全国から集まるゆるキャラやファンのおもてなしに専念するとしてエントリーしなかったそうです。今回のグランプリは2日間で5万1千人が来場、約1400体がエントリーし、会場には「くまモン」や「みきゃん」も含め約200体が集結したとのことで、今日の城山公園は凄い盛り上がりだったんでしょうね。結果は高知県須崎市の「しんじょう君」がグランプリ獲得です。四国勢大活躍です! 
 ここで私が気になったのは、あれっ有名人の「ふなっしー」はどうなっているの、、でした。調べてみると、ふなっしーは、2013年の日本百貨店協会主催の「ご当地キャラ総選挙 2013」で1位に輝いています。ふなっしーはある船橋市民が個人的に始めた梨がモチーフになったご当地ゆるキャラだそうで、当初は船橋市公認でないために公営の「ゆるキャラグランプリ」には出場できなかったそうです。2014年には船橋市とふなっしーの間に東京での梨のイベントでのすれ違いがありました。その後、人気の出てきたふなっしーに対し、なんと昨年3月には船橋市議会でふなっしーの市公認問題が議題に上っています。結果は、ふなっしー自身がもう公認を望んでいないことから、船橋市非公認が決定しました。続く6月の市長選で新市長が選出されると、市とふなっしーとの間の溝が埋まり、ふなっしーが市に迷惑をかけたことを謝罪し、市からは感謝状が贈られ和解に至りました。現市長の言では「公認にすると逆に活動に制限が出るので敢えて公認にしていないだけで、ふなっしーは非公認だけど船橋市がしっかり認めた存在」とのことです。船橋市とふなっしーにはいろんな経緯があったのですね。 
11月  3日    11月になりました。今日は天高い”文化の日”でした。この週末、愛媛ではゆるきゃらグランプリが開かれます。ちょっと気になっています。
 マイコプラズマ感染症が4年ぶりの流行です。マイコプラズマは細胞壁の無い小さな細菌です。マイコプラズマ「肺炎」というおどろおどろしい病名が付きますが、ゆっくりと増殖し、感染細胞内に活性酸素を蓄積させて粘膜を軽く損傷することから、細菌やウイルスよりも穏やかな炎症反応で終わることが多いです。マイコプラズマが下気道で感染する際は、下気道の線毛細胞で滑走運動という特有の運動でゆっくりと広がることから、至近距離での激しい咳や痰で大量のマイコプラズマに暴露することが必要です。抗菌剤の作用は静菌的といって増殖を抑える作用が主体ですので、4年前の薬剤耐性菌による流行時のデータによると、有効な薬剤であっても発熱に対する治療効果は2日間発熱期間を短縮するレベルです。(ちなみに、増殖を抑える抗ウイルス薬で治療するインフルエンザの治療による発熱短縮期間は1日です) マイコプラズマは細菌感染のように重症化しない代わりに劇的にも治らない病気です。基本的には3~4週間で自然治癒しますが、肺炎化する時は感染した人の免疫応答を介して重症化します。多くの人は気管支炎1ヶ月で自然治癒しますが、時に肺炎で重症化します。上気道粘膜を遡ると鼓膜炎や中耳炎も起こし、重症化すると内耳炎で聴神経を痛める場合もあります。風邪をひいて1週間経つのに微熱が取れない、咳がひどくなる、上気道炎もすっきりしない時はマイコプラズマ感染症の可能性が高くなります。初感染で基礎免疫のない幼児では高熱が出たり、不定形発疹などの皮膚症状や下痢などの消化器症状を起こすこともあり多彩な経過を辿る場合もあります。耳鼻科として気管食道科としも曲者の感染症です。

 国立がん研究センターによる平成28年度の全国がん検診従事者研修会の資料(159ページ7.8MBもありダウンロードは注意です)によると、胃・大腸・肺・子宮頸部・乳房でみると、はっきり推奨できるグレードAの有意な検査は大腸癌への便潜血検査だけとのことでした。推奨できるグレードBももちろんありますが、資料に目を通すと、健診で推奨項目が少ないことに私はびっくりでした。がん検診には早期発見による利益もありましが、被爆や検診で見つけられなかった偽陰性、正常なのに異常と判定してしまう偽陽性、過剰診断といった不利益もあります。ここ数年で検診の限界を指摘する論文が多くなってきました。例えば、乳がん検診では、カナダや米国で検診をしても死亡率に差がない、英国で43人/1万人が乳がんが防げても129人が過剰診断を受ける、米国で検診で発見された乳癌の1/3が過剰診断だった、日本では90人/1000人が要精密検査となるが癌は3人などのデータがあります。ピロリ菌抗体による検診と胃がんの死亡率のデータはまだ十分でない、英国では検診による放射線被ばくが発癌の大きな要因との報告あり、大腸癌検診としての便潜血検査で大腸癌の発生率は減ったが死亡率に差がなかった(つまり、大腸癌が見つかっても見つからなくても、体全体で見た寿命に差がない)などの論文もあります。平均寿命に近い75才以上に自治体の補助で癌検診を行って早期発見に努める意義はあるのか、などの論文もあります。同じく国立がん研究センターのがん統計によると子宮頚癌による死亡は3人/1000人です。子宮頚癌ワクチンの有効率が70%だとして2人/1000人のがん発症が予防できることになります。子宮頚癌ワクチンの対策費は年間数百~1千億円ですので、1人の発症予防(死亡の予防ではありません)に数百億円かかることになります。抗がん剤オブジーボの負担は限界があり75才以下に適応を限るとの意見も出ています。健診やワクチン、癌治療の有効性や対費用効果、国民医療費との議論もこれから活発になりそうです。 

 文化の日の自己啓発ですが、遺伝子治療に関する「ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃」小林雅一著(講談社現代新書)を読みました。ゲノム編集が、iPS細胞による再生医療、オブジーボなどの癌免疫療法薬などのトピックス同様にここ数年で技術のブレークスルーがあったことに驚きました。ノックアウトマウスという特定の遺伝子を欠損させた実験動物を作ることにより遺伝子組み換え技術が普及し、この技術がノーベル医学賞を受賞、免疫学や再生医療の発展に大いに貢献しました。しかし、この技術は遺伝子の編集には膨大な時間と労力がかかります。クリスパーという遺伝子配列を利用すると哺乳類の遺伝子も簡単に編集できます。クリスパーを発見したのは、なんと大阪大微生物研究所の石野良純氏らで1987年でした。クリスパーを使ってゲノム編集が可能と米国の研究者から発表されたのは2012年以降のことで、米国では熾烈な研究と特許の競争が繰り広げられています。ここ10年以内に、先天性遺伝性疾患の赤ちゃんに遺伝子改変の治療が行われるであろうと予測されています。医学の進歩は驚くばかりです。
 もうひとつ、ノンフィクション好きの私が読んだのは「殺人犯はそこにいる 隠微された北関東連続幼女誘拐殺人事件」です。作者の日テレ記者清水潔氏の以前のルポ「桶川ストーカー殺人事件 遺言」の印象もあり思わず手に取りました。この一連の仕事でも「日本民間放送連盟最優秀賞」「同テレビ報道番組優秀賞」「ギャラクシー賞」「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」などを受賞しています。半径10キロ圏内で5つの誘拐事件が重なったことに注目したことからの現場取材はさすがです。その中のひとつの事件「足利事件」の冤罪を暴きました。やはり組織や個人は知らず知らずに自己弁護してしまいます。冤罪が判った時点で検事や刑事の謝罪はありませんでした。判決時には、裁判官が頭を下げて謝罪しました。記者はさらに真犯人の目星をつけ、その本人に取材までするも、科捜研の問題もあり警察の追及の手は止まったままです。ミステリー小説ではありません、鬼気迫る実話です。   
     
  26日   秋冷の季節、インフルエンザ予防接種の時期になりました。当院では診療時間の関係から予防接種は行っていませんが、「風邪をひいたが予防接種は受けられるのか?」という質問を受けることが多くなってきました。その際は、中耳炎などの急性炎症があれば予防接種はしばらく見合わせるほうが好ましいとお伝えしています。感染症による発熱や粘膜の腫脹が鎮まっって1週間たてば、免疫力が回復してきたと考えて良いと思います。免疫力の低下による万一の副反応の発現に気をつけるならば、風邪症状が落ち着いて1週間後以降の接種をお勧めしています。
 全国の感染症情報では、RSウイルス、流行性耳下腺炎が目立ち、マイコプラズマやインフルエンザが例年より多くなっています。沖縄のインフルエンザはやはり流行といってよいレベルです。当院でも沖縄帰りで熱の出た方に念のためインフルの迅速検査を行いましたが陰性でした。この例も含め当院では10月以降インフルエンザ陽性の方はひとりも見ていませんが、中予での散発的な発生の報告もありますので、急な発熱や倦怠感でインフルエンザ様症状所見の方の診察では注意したいと思います。

  スギ舌下免疫療法、ダイビングによる滲出性中耳炎、顔面神経麻痺、突発性難聴、呼吸不全など。

 スティーヴン・ウィット著の新刊「誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち」を読みました。ゼロ年代に入り、音楽や映像メディアは、CD・DVD→有料配信→定額配信となりつつあります。特に音楽はYouTubeで流し聞きをする無料配信の時代に突入し、若者は無料配信が主流となっています。音楽業界の収益モデルは、CDや配信から得るよりもライブや関連グッズで得るモデルに劇的に変化しつつあります。この劇的な変化のオリジンが何か特定できるの?との興味から、ノンフィクション作品好きの私は一気に読みました。CD陣営オランダのフィリップス社とドイツの技術者のMPEGとMP3の規格標準化の闘い。ユミバーサルミュージック(現・米ソニー・ミュージック・エンターテインメントCEO)のダグ・モリス氏が仕掛け人ともなった黒人ラップ音楽やヒップホップ系の流行と、そのユミバーサル所属の人気ラッパー達の作品のMP3による違法コピーの普及とその顛末を、詳細に取材しています。インターネット普及による産業革命の一端が良く判りました。  
  20日   今日の午後診は、就学時検診出務により遅れて始まりました。お待ち頂いた皆様のご協力ありがとうございました。年々再々ですが、健診では、小学校という新しい舞台にちょっと緊張した子供達に、声援を送りました。また、私も元気をもらいました。健診時の先生との会話で、さくら小学校が教室へのエアコンの導入を準備していることを知りました。全国的には公立小学校へのエアコンの整備が広がってきているそうです。中学校でも、さくら小学校が校区の一部に含まれる西中学校では来年度からエアコンが整備されるとのことです。家庭や商業施設でこれだけエアコンが普及しているのですから、もうそろそろいいんでしょうね。全国の学校の冷房設置率のデータもちゃんとありました。文科省は3年ごとに調査しています。直近の平成26年度では、全国トータルで小中学校の普及率が30%、幼稚園が41%、高校が43%でした。小学校では東京都がダントツでほぼ100%導入です。意外だったのは四国四県でも差があったことです。徳島が26%、香川が81%、高知が14%で愛媛が5%です。私は今まで、小中学校はエアコンはないものと思っていましたが、愛媛県の設置率はなんと全国で43番目、愛媛以下の県は、北海道、青森、岩手、秋田だけでした。愛媛県の小学生は、夏の暑いさなかの授業を全国で一番耐えて受けていたんですね。(';')

 感染症の流行状況では、RSウイルスに続き、流行性耳下腺炎やマイコプラズマ肺炎の流行が目立っています。今週はマイコプラズマの流行がニュースで取り上げられていました。2012年より4年振りの流行です。2011年、2012年に発生が多く、特に2011年はマクロライド耐性という一般的な抗生物質への耐性菌の流行が研究者の間で話題となっていました。ここ3年は耐性菌は減少しているとの研究を私も目にしていましたが、今年の流行株はどんなパターンでしょうか? 耐性株が流行しなければよいのですが。

 東宝が過去最高益。ついに「君の名は。」がNHKニュース9のトップニュースです。観客層も広がったそうで、興収200億円、達成するかも!  私はもうひとつだけコミック漬けしました。「ピアノの森」、大人を唸らせる作品でした。読んでいるだけで”ピアノのコンクール会場”と”過去の記憶”と”共演者の動き”が音楽を奏でながら迫ってきました。まるで映画「砂の器」のクライマックスみたいでした。コミックで映画ばりの体験が出来てビックリでした。  
  15日   RSウイルス感染症、手足口病が益々目立ちます。子供さんからRSウイルスをうつされて咽頭炎の強いお父さん、子供さんから手足口病をうつされて高熱のお母さん、など大人の方の感染も目立ちました。RSウイルスは、全国総計のデータでも、冬に向かって過去最も早いペースで報告数が増えています。それにしても新潟県新井田の定点報告数にはびっくりします。先週急増した愛媛県平均の5倍です。全国レベルで他の感染症に目を向けると、麻疹・梅毒・結核も気になりますが、インフルエンザが沖縄では今年も秋にB型が定点当りの報告数が4と全国的にも突出して多いです。注意報レベルの10よりは低値ですが、それでも流行期レベルです。なぜ過去10年以上、沖縄だけが通年性でB型インフルエンザが発生しているのか? 地理的などんな要因が原因として関わっているのか。私の抱える疑問です。地理的な疫学上の疑問といえば、○10年ほど前までは愛媛県が喘息死が多かった ○徳島県で糖尿病が多い(車を使うために運動不足が目立つからとの意見あり) ○愛媛県でも伊予市のみC型肝炎感染者が多く、そのため肝硬変や肝癌の発生も多い などがあります。機会あれば詳しい方に教えてもらおうと思います。

 映画「君の名は。」が興行収入150億円を超えました。ちなみに歴代の興行収入ランキングは、1位304億 「千と千尋の神隠し」 2位272億 「タイタニック」 3位259億 「アナと雪の女王」 4位203億 「ハリー・ポッターと賢者の石」 5位196億 「ハウルの動く城」 6位192億 「もののけ姫」 7位173億 「踊る大捜査線2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」 8位173億 「ハリー・ポッターと秘密の部屋」 9位163億 「E.T.」 10位156億 「アバター」 です。アナ雪ほどではないですが「君の名は。」もリピーターが多いそうですので、200億、日本映画歴代2位獲得も夢では無くなってきました。映像作品に対して、過去に何度かマイ・ブームがありました。「24」を見て海外ドラマのお勧めランキングで、「プリズン・ブレイク」「ハウス・オブ・カード」や初期作品の「ツイン・ピークース」を。ブームも去った頃にひょっと1話見た「冬のソナタ」を見て、泣ける韓流ランキングの「悲しき恋歌」「ごめん、愛してる」「フルハウス」、次には鬼気迫るサスペンスの「オールド・ボーイ」「悪魔を見た」などなど。
 今回、新海監督の評判を聞いてYouTubeでみた「言の葉の庭」の映像美に感激して、レンタルビデオ等々で新海監督の全作品を見ました。ちなみに、最初期の「遠い世界」は新海監督の最初の個人ホームページ上で今も公開されています。「彼女と彼女の猫」は「ほしのこえ」のDVDの映像特典で入っています。私は往年のトレンディ・ドラマの、終盤でテーマ音楽が流れて一気に盛り上がるのがたまりませんでした。やはり「東京ラブストーリー」はその点で名作です。新海監督は、1/30秒単位のフレームで音楽と動画の連動を要求するそうです。新海作品の、音楽をバックに走馬灯のように流れる映像、たまりませんでした。(^^♪ 
 ということで、ここ1ヶ月のマイ・ブームはアニメやコミックでした。宮崎アニメを映画館で見たことのない私にとっては「宇宙戦艦ヤマト」以来のブームでした。続いて、泣けるアニメの「四月は君の噓」「聲の形」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」から、スポコンの「ちはやふる」アニメ版、2015年マンガ大賞の漫画家の自伝コミック「かくかくしかじか」(これは民放ドラマ「重版出来」、映画「バクマン」からの流れでもあります)まで堪能しました。へーっ、アニメも製作委員会方式で作成か。アニメのサントラも凄い! 作画が受け入れられれば、漫画やアニメにはカメラワークやロケ地・大道具小道具の制限がありませんから、自由に映像表現が出来ますね。実写映画よりも尺が長いだけに丁寧に物語が進行します。等々、遅ればせながらアニメに感服です。 
  13日   新設移転した余土中学校、道路越しに見ても素敵です。移転早々の体育祭も終わり、そろそろ新しい校舎に慣れてきたんではないでしょうか? 私も生徒たちの新しい通学パターンに慣れてきました。学校の横を通る際に、テニスの練習風景を見かけました。真っ新なコートに真っ新な部室、コートの皆さんは元気に練習していました。新しい体育館の天井が高くなったそうです。体育館での部活も気持ちいいんでしょうね。
 RSウイルス感染症が全国的に増えていることがニュースにもなりはじめました。9月26日からの1週間で、石川県では定点当たり5人、新潟の新井田保健所管内では20人、東京でもこの時期では過去最高とのことです。当院でも乳幼児で下気道の所見が強い場合には、適宜、小児科と連携しています。松山市の小児の感染症では、先週、RSウイルスとともに手足口病の増加が目立ちました。皮膚科からの報告では、現在流行しているタイプは、皮疹が全身に広がる傾向が強いとのことです。当院で経験した子供達にもこの傾向は窺えました。 
  12日   来年の話をすると鬼が笑う、、と言いますが、早くもスギ花粉飛散予想の季節になりました。スギ花粉の飛散量は、前年夏の気温や日照時間の影響が大きいことから、夏の気候が判った秋に来シーズンの飛散予想が出来るようになります。花粉情報協会が9月21日のセミナーで、西日本では過去10年の平均よりやや多く、今春に比べると約2~10倍の飛散量になるとの予測を発表しました。ウェザーニュース社は10月4日に、平年に比べ全国平均で1.2倍、近畿から九州にかけての西日本は多いところで1.5倍、関東は平年より少なく5~9割程度で、今年猛暑となった西日本では花粉の発生源となる雄花の生育がよく、花粉飛散量が少なかった今年と比べると、全国平均で4.3倍、近畿や九州で8~10倍と発表しました。今夏、愛媛でも猛暑で日照時間が長かったことから、来シーズンの花粉飛散は4年振りの大量飛散になりそうです。スギ花粉の舌下免疫療法を施行中の方は、来シーズンに有効性がはっきりすると思います。11月に2種類の抗アレルギー剤の新薬が登場しますが、来シーズンに早速新薬の真価が判ると思います。

 遺伝性難聴の具体的な病因を解明したとのニュースがありました。神戸大学京都大学のグループは、原因不明の難聴患者の遺伝子解析から特定の遺伝子の異常を抽出。続いてその遺伝子異常のあるマウスモデルの作成に成功。さらに、この遺伝子異常で内耳の中にある音を感じる有毛細胞の聴毛に過剰にアクチンという分子が過剰に供給することを突き止め、そのことで障害された聴毛の電顕像も発表しました。遺伝性難聴は新生児の千人に1~2人が発症するとされますが、臨床医からすれば、生後徐々に明らかになる先天性難聴のお子様を前にしたとき、その子の難聴が遺伝子異常で起こったのか、その他の要因なのかの原因の判別は、家族性難聴や内耳奇形などを合併していない限り困難でした。この研究の示唆するところは、将来、遺伝子検査で遺伝性難聴が特定された場合に、その病因遺伝子によって引き起こされる障害がピンポイントで治せる可能性があるということでしょう。素晴らしいexcellentな研究です!

 このような夢のある話題の後で恐縮ですが、10月に入り薬剤費を中心とした国民医療費の問題が、厚労省と財務省がまるで呼応したようなタイミングで複数報道されました。今月、私は新聞を見る度に、今日も医療費の話題が、、と目に留まりました。後世から見れば今が ”医療の進歩に際限なく医療費はつぎ込めない”政策が次々と実行されるターニングポイントになるかも知れません。
 厚労省が2015年度の概算医療費を発表しました。13年連続で過去最高を更新し、前年度比3.8%増、特に調剤が9.4%と大きな伸びでした。主因は、1錠6~8万円のC型肝炎治療薬のソバルディ、ハーモニーの使用が秋から増えたことです。4日の財務省財政制度等審議会では医療介護費抑制の議論が始まりました。かかりつけ医以外の受診時の定額負担や高齢者医療費、介護保険料の負担増、介護サービスの給付抑制とともに、高額薬剤の臨時での薬価引下げの方針が示されました。このターゲットとなったのが、本庶佑京大教授らが発見した業績を基に、日本の小野薬品が開発した免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボです。14年の最初の承認時には皮膚癌の悪性黒色腫のみの承認で、日本での年間適応症例が470人であるとの想定時の薬価でしたが、今年度、推定患者数1万人の肺癌の中の非小細胞癌への適応拡大が認められました。オプジーボは100㎎あたりの薬価が73万円、体重60㎏の人が1年使うと薬剤費は3500万円となります。審議会では年間5万人が使えば年間の薬剤費は1兆7500億円との試算が出されました。審議会では医師側の委員も、あまりに高額で医療財政が脅かされるとの意見が出ました。5日には薬価を決める厚労省の中央社会保険医療協議会(中医協)でオプジーボの価格を17年度に臨時で25%下げる事が決定しました。私も癌治療の講演会で聴いてビックリしたのですが、オプジーボは効果判定の難しい薬です。どのタイプの人に効くのか。オプジーボは投薬を止めても効果が残る場合もあります。効いているなら、いつまで投薬すべきか。自分が身近な人が肺癌になったら、少しでも可能性があるならオプジーボを試してみたいし、癌の進行が少しでも止まっているならば服薬し続けたいと思うでしょう。今の制度では高額療養費制度のおかげで、入院費や検査費も含めて月の医療費の個人負担の上限は数万円ですので、個人的には治療は続けられます。オプジーボが承認された時に私は、日本初のピカ新(ピカピカの新薬)が出て喜んだのですが、まさか1年でこんな問題になるとは思いませんでした。薬の開発には平均3000億円かかるともされています。これまでは新薬が出て、製薬企業が成長し、人類が豊かになる、、でよかったのですが、これからは、国民全体が生き残り、製薬会社が生き残るという立場で医療費問題を考えなくてはならなくなりました。審議会の委員である日赤医療センター医師の国頭英夫は、新聞の対談で「混合診療では家計が持たない、超高額医療の適応は公平に年齢で制限すべし」と提言しています。抗体医薬、遺伝子治療薬、iPS細胞による再生医療、自然免疫の免疫学等、創薬技術の進歩は日進月歩です。今年のノーベル医学賞のテーマであるオートファジーの医学からの創薬も夢ではありません。これからも数年単位で素晴らしい新薬が発売されるでしょう。超高額薬は保険診療から外して混合診療にするので高額な医療保険に入れない人は十分な医療を受けられない、、平均余命を過ぎた人への超高額薬の適応は認められない、、国家財政問題や年金問題、人口減少による過疎やインフラ整備の問題とともに、高額医療費の問題でも、ここ10年以内に我々はシビアな選択を迫られそうです。

  動脈性鼻出血、甲状腺嚢胞など  
  10日   澄み渡った秋空の体育の日でした。松山の小中学生は7日の地方祭から4連休でした。当院はお休みを利用して、内装&外壁の工事を行いました。私は”資料整理”でゆっくりさせて頂きました。(^^♪  
 先週の診察では、急の発熱で来院した方が目立ちました。発熱した方を診察してみると、上気道粘膜に発赤が広がっていることから感染性の上気道炎であることは分かるのですが、迅速検査でも病原が確定できない方が大半でした。恐らく、ライノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルスなどの一般的な上気道炎のウイルスによるものが大半だと思われました。病原微生物が確認できる例としては、小児では、エンテロウイルスによる手足口病や、RSウイルスによる気管支炎、所見の軽い溶連菌が見られました。学童~青年層では、マイコプラズマによる気管支炎やEBウイルスによる伝染性単核球症が、成人では百日咳も見られました。この夏には、解熱しないために総合病院に紹介したところ、サイトメガロウイルス感染症が判明したお子様の例や、自己免疫疾患である血管炎が判明した成人の例もありました。その場で感染が直ぐに確認できる迅速検査が年々増えてきたことから、外来での診断力は迅速検査の無い時代に比べると格段にアップしています。しかし、それでも感染性の上気道炎で病原体が確定できない場合は多々あります。病原菌が特定できないと病気の経過を予想することは難しいのですが、受診された方々には出来る限り”今後注意しないといけない経過”をお伝えしています。  
  8日   阿蘇山が36年振りの爆発的噴火です。愛媛や香川でも火山灰の降灰が確認されたそうです。診察が終わった時点で外は真っ暗だったために、私は降灰に気づきませんでした。明日の朝、スギ花粉や黄砂が大量飛散した時と同様に、車のフロンドガラスが汚れているのでしょうか。火山灰は直径2㎜以下の火山岩のことですが、鼻よりは眼や下気道での障害に注意します。PM2.5と異なり粒子が大きく硬いことから、眼では掻破することによる結膜炎や網膜剥離を惹き起こします。COPDなどの呼吸器系の基礎疾患や喘息体質があると気管支炎や喘息の増悪を惹き起こします。また、火山灰に結晶性シリカが多く含まれて長期間吸引すると珪肺症を発症する場合もあります。耳鼻科よりは眼科や呼吸器科的な注意が必要です。
 松山の秋祭りが終わりました。お母様手作りのかっこいい法被(はっぴ)での受診がありました。とってもcoolでした。松山では地方祭の日は小中学校や幼稚園は休校となります。クリニックも休診する施設が多く、総合病院の松山日赤も午後は休診でした。診察を行っていた当院には、救急病院から耳介裂傷や鼻出血の紹介がありました。逆に、当院から総合病院内科への紹介がスムースの行えない時間帯がありました。紹介のやり取りが少し交錯してしまいました。

 10月に入り、冷たい雨の気候が続いています。気道過敏症の悪化する方、メニエール病が長引く方、風邪の後に耳管狭窄症や滲出性中耳炎を続発する方が目立ちます。RSウイルスが全国的にも愛媛でも流行の立ち上がりが早いようです。先週も報告が増えています。RSウイルスは乳幼児で細気管支炎のように症状が重くなる傾向がありますが、終生免疫ではなく学童や成人でも繰り返し罹ります。罹るたびに免疫がついてきますので、大人は軽い上気道炎で終わるケースが多く、高齢者で反応が強くなる場合があるとされています。しかし耳鼻科の視点で診ていると、反応の強い扁桃炎を呈したり高熱が続く場合もあります。RSウイルスはインフルエンザに続いて気道上皮の障害が強くなるウイルスです。RSウイルスに対する免疫が十分でない場合にはインフルエンザ様の経過を辿ることもあります。

 抗アレルギー剤の新薬2種が承認されました。11月下旬に薬価収載され処方可能になる予定です。新薬2種類はいずれも第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬と呼ばれるお薬で、特に、鎮静作用が弱いといった安全性に特徴があります。1日1回服用で、医薬品の正式なマニュアルである添付文書上で「眠気による運転注意」の必要がありません。発表されたデータを見れば効果も高いようです。従来の抗アレルギー剤と比較して薬価も低く設定されそうとのことです。花粉症やアレルギー性鼻炎の新薬としては、眠気が出ずに効果の高いことから多いに期待が持てます。  
  3日   テレビニュースを見ていると、速報が二つ飛び込んできました。台風18号で沖縄本島が特別警戒警報発令です。久米島では最大瞬間風速が秒速80mと予想されました。時速換算では実に時速288㎞、走行中の新幹線の屋根に立っている状態です。秒速80mを超えれば、日本の過去の観測記録の第一位富士山山頂で秒速91m、第二位宮古島で1966年の台風時に85m、第三位1961年の第二室戸台風の室戸岬の84mに次ぐ速さです。秒速70mを超えると「壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車はもち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。」レベルだそうです。被害が甚大にならないことを祈ります。台風情報で落ち着かないところに、二つ目の速報です。ノーベル医学生理学賞に大隈良典氏が選ばれました。医学賞に日本人が2年連続で選ばれました。今年、私にとっては「リオ五輪で男子陸上400mリレーでの銀メダル」に次ぐ驚きです。共同研究者の水島昇氏との同時受賞でないのは残念ですが、今回は日本人の単独受賞です。大隈氏はインタビューで「人と同じことは絶対にしない」と仰っています。凄い信念です。

 近隣の小学校でマイコプラズマ感染症のクラス内での集団発生が見られました。クラス内の8人の感染が確認されたとのことです。当院でも複数の小学校の生徒さんの発症を確認しています。マイコプラズマは、1)潜伏期が2~3週間と長い 2)症状の進展がインフルエンザなどのウイルス感染よりも緩徐である 3)治療後も感染力が1~2ヵ月残る などの特徴から、集団内でも集中的に発生するよりは長期間にわたり流行する傾向があります。クラス内で8人同時に集団発症するのは珍しいです。ここしばらく松山市西部地区での発生に注意したいと思います。また、RSウイルス感染も引き続き目立っています。症状の強い手足口病のお子様も見られました。  
10月 2日   10月になりました。地方祭を前にして、市内の通りはZ型のひらひらした白い紙で飾られています。お払いの際の玉串やにもついている紙ですが、どんな名称でどんな意味があるのか、以前から気になっていたので調べてみました。名前は紙垂(しで)と言います。「神聖・清浄」を表していて、紙垂をしめ縄に垂らすと聖域を示す象徴となり、玉串の榊に紙垂をつけて初めて遷霊されるものとされます。由来は日本神話の神代天石屋戸条(しんだいあめのいわやどのじょう)で、この中に紙垂の原型「丹寸手(にきて)」が出てきます。「天の香具山のよく茂った榊を根こそぎ掘り取ってきて、その上方の枝に多くの勾玉を長い緒に通した玉飾りをつけ、中ほどの枝に八咫鏡を掛け、下方の枝には楮の白い幣と麻の青い幣を下げた」とあります。やはり深い由来があるのですね。(^^♪ なお、当院は例年通り地方祭は休診せず診察しています。
 小中学校の運動会のピークは過ぎ、10月は幼稚園や保育園の運動会シーズンです。朝から発熱していてもどうしても本人が運動会に参加したかったので、ダンスだけ参加して来院されたお子様もいました。頑張り屋さんです! 幸い、風邪をこじらせてはいませんでした。
 また台風が接近中です。一雨ごとにひんやりとしてきました。気道過敏症やメニエール病の悪化する人が目立ちます。
  頚部の癤、前庭神経炎、起立性調節障害、鼻茸摘出術、扁桃縮小手術、副鼻腔カテーテル療法など 
     
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 RSウイルスが全国的に例年同時期より多いとの報告です。RSウイルスは12月を中心に流行のピークを迎えます。寒い時期よりは暖かい時期に罹った方が下気道の反応は軽い傾向がありますが、やはりRSウイルスへの基礎免疫の無い0~1才児の感染は要注意です。小児科との連携を密にして診察を進めています。
 
 「君の名は。」、実は9月4日日曜に早くも一日動員数30万人越えだったそうで、今日、興行収入100億円越えがほぼ確定だそうです。公開28日目の早い100億円越えは洋画も含めて歴代2位。興行収入1位の「千と千尋の神隠し」は、消防法改正以前でネット予約もない”立ち見”の時代の2001年公開で、これは別格としても、「君の名は。」がどこまで伸びるのか? 業界関係者も含めて誰も予想しなかった大ヒットだそうですので、私も年末までワクワクが続きそうです。 
  20日  今日は朝から台風16号襲来による大雨でした。台風が四国の南を通過したことから、四国山脈の風下にあたる松山では主に雨台風でした。松山では大雨暴風波浪警報が午前1時3分から午後2時45分まで発令されたため、学校のほとんどが臨時休校となりました。午前11時までに警報が解除されれば休校措置が解除となる場合もあるとのことで、少し細かく警報発令時間をチェックしてみました。当院近隣の余土小学校の運動会が台風直前の17日に終わり、さくら小学校は24日の予定です。松山市全体で見れば小学校の運動会の開催日は24日、25日がピークです。松前町や伊予市の開催日のピークは10月前半です。連休の18日、19日に運動会を予定する小学校は恐らくありません。台風16号は松山の運動会には影響せずに去ってくれました。
 昼頃からは台風の雨脚が弱くなり、学校が臨時休校で、当院が休診日明けだったことから、当院外来は思いの外、子供達の診察が多かったです。”連休中に急に発熱して運動会前の体調が心配”な小学生の来院が目立ちました。
 先週発表の愛媛の感染症情報では、アデノウイルス感染症が増えています。例年ならば夏の間に流行のピークを迎えるアデノウイルス感染症ですが、今年は秋にピークがずれ込んでいます。当院でも9月に入ってもアデノウイルス咽頭炎に罹るお子様が減りませんでしたが、今日の診察では迅速検査陽性の方は目立ちませんでした。ライノウイルス、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルスなどの一般的なウイルスによる感染が多い印象です。

 映画「君の名は。」が社会現象化です。今日は遂に報道ステーションでも取り上げられました。日本のオリジナル作品での予想外の大ヒットには、私もワクワクです。作品の評価もさることながら、”業界の勢力図”や”売れ筋商品のシェア争い”などの数字が好きな私の注目は観客動員数です。公開25日目の昨日19日までの観客動員が428万人、この連休の動員が土曜21万人、日曜月曜が32万人でした。9月18日に公開以来初めて達成した1日動員数30万人はビックリする数字だそうです。確かに、その日だけで日本人の400人に1人が劇場で作品を観たことになります。世界配信も決定です! 長らくピクサーやディズニーに押され気味だった日本のアニメ映画ですが、「君の名は。」で、東京の美しい風景や日本人の信仰の原風景など、世界に広く発信できればいいですね!
  13日  虫の音が涼しいです。月初までの猛暑が、3度の雨で秋の気配になりました。関東関西で麻疹が広がっていますが、愛媛での感染の確認はありません。当院では、アデノウイルス、RSウイルス、溶連菌、マイコプラズマが散見されますが、流行といえる感染症は見られません。午後には診察が途切れる時間帯も出来て、おかげで院内の片付けや荷物整理がはかどります。残暑・夏バテ・気圧の変動で、炎症が広がる方も目立ちます。外耳炎からの頚部蜂窩織炎、咽頭扁桃炎からの頚部リンパ節炎や扁桃周囲炎、急性鼻炎からの滲出性中耳炎続発、歯性上顎洞炎、メニエール病、起立性調節障害よる立ち眩みの悪化など、普段ならこじれないちょっとした風邪(上気道炎)などの体調不良からの二次的な増悪が目立ちます。 
  7日  4日に当院に、A型インフルエンザ迅速検査陽性の方が来院されました。老人施設で集団発生していたとのことです。インフルエンザは9月から16/17シーズン入りとなり、形の上では当院での今シーズンの初観測となりました。もうこんな季節と感じながら、当ホームページのインフルエンザのコーナーを16/17シーズンに更新しました。1年は早いものです。昨シーズンを振り返ると、全国的にも愛媛でも流行のピークが極端に遅いシーズンでした。1月に流行らず、2月から流行入り、3月下旬が流行のピーク、ゴールデンウィークまで流行、5月末にやっと発生が終息しました。6、7月と県内でも発生はほとんどありませんでした。愛媛県感染症情報センターの定点報告によると、8月の発生は八幡浜でのA型1例だけでしたので、当院での観測はかなり早いものとなりました。全国的には、例年通り沖縄では夏にB型の発生が続き、鹿児島、神奈川での報告が目立ちましたが、今シーズン、集団発生の報告はまだありませんでしたので、松山での発生が全国ニュースになるかも知れません。

 はしか(麻疹)について、昨年、日本は排除状態にあると認定されましたが、9月に入り輸入麻疹の感染者が増えています。関空に帰国した麻疹感染者から、幕張メッセのコンサートに参加した若者と関空職員の2ルートで感染が拡大しています。麻疹の潜伏期は10日間で、解熱後3日目まで、およそ発症して10日間ほどは感染力が強いです。予防接種を2回接種することで確実な免疫を得ることが出来ます。20才代後半より若い世代は麻疹ワクチンが集団から個別接種になった年代のために,麻疹ワクチンの接種ができていないか,接種が1回だけで抗体が低下している世代です。そのため、日本では10~30才代の人に免疫が不十分な人が多いことから、2008年の春から夏にかけて大学生を中心に流行し、関東地方を中心に263校が休校しました。今回の輸入麻疹の発端地は国際空港と野外ライブですので、ここ2週間程は国内広域への感染波及が心配されます。テレビニュースでも取り上げられており、昨日、当院にも関空を利用した風邪症状の若者が麻疹を心配して来院されました。麻疹は発症4日後以降の、熱型や発疹、口内炎の様子をみたり、血液中の抗体の上昇を確認しなければ確定診断出来ません。診察の結果は、とりあえず普通の風邪、急性上気道炎でしたが、ここ数日の経過観察が必要です。

 先日のこのコーナーで睡眠時無呼吸症候群には肥満治療が大事とお伝えしましたが、気になって肥満症のガイドラインを確認しました。肥満症診療ガイドラインは日本肥満学会で2000年に初めて発表され、今年改定されたとのことです。診断基準ではBMI(body mass index)が基本となり、25以上で過体重、30以上で肥満としています。この基準には当然根拠があって、肥満による健康障害の代表である高血圧、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール血症、糖尿病の有病率が2倍となるレベルで設定したとのことです。さらに内蔵脂肪が100㎠の人の腹囲をウエスト周囲長の判断基準として、男性が85㎝、女性が90㎝としています。皮下脂肪ではなく内蔵脂肪が細胞活性が高くアディポサイトカインという脂肪細胞由来の生理活性物質が増えると血圧や血糖値に悪影響を与えることが分かってきたことから、BMIが35以上で内蔵脂肪の蓄積があり健康障害がある場合に高度肥満症とします。治療は、まず3%の減量を目標とした食事、運動、行動療法ですが、BMI35以上の高度肥満症では、中枢性食欲抑制薬サノレックスと腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険適応となっています。当院でも睡眠時無呼吸があり肥満傾向の方のBMIは記録しています。BMI35以上の高度肥満症の方には、今以上に内科肥満外来の専門医に紹介したいと考えています。

 健康雑誌「夢21」からの取材があり、2016年10月号に掲載されました。この雑誌は「わかさ」の姉妹誌で民間療法や代替治療も積極的に取り上げる雑誌です。10月号の特集は耳鳴・難聴・めまい関連で、「病院でも治らずつらい耳鳴り難聴などの新原因・自力対策から新療法・新薬までQ&A50問」の内の難聴関連7問の解答を担当しました。このような雑誌では”少し断定調の言い回し”を求められます。('_') 私の担当部分を なぜなに耳鼻科の病気の 難聴と治療、補聴器 のコーナーに掲載しました。

 キネマ旬報の特集記事に釣られて、映画「64(ロクヨン)」が気になりました。残念ながら映画館での公開は既に終わっていました。興行成績はなかなかのものでした(現在の興行成績、シン・ゴジラ、君の名は。は快調ですね)。 ロクヨンは「半落ち」「クライマーズ・ハイ」のミステリー作家、横山秀夫氏の7年ぶりの作品で、2012年の「週刊文春ミステリーベスト10」の第1位、2013年の「このミステリーがすごい!」の第1位でした。私はミステリー小説を読むことはほとんどないので、この作品も知らなかったのですが、レヴューを見るとえらい高評価です。NHK土曜ドラマとの共作で、テレビドラマの評価も高く、あるレヴューでは、2015年最高のテレビドラマ、全編を通して緊張感あり、ながら見は出来ない、など、素晴らしい評価です。映画のDVD化は年末のようですが、NHK版ロクヨンはレンタル店にありました! 確かに素晴らしいドラマでした。ピエール瀧氏の快演(私はBS番組「歴史発見 城下町へ行こう!」で最初に知ったのですが、「凶悪」や「ロクヨン」での怪演、恐るべしです)、5本位同時進行するストーリーが全て最終回で見事に回収され、エンドロールの最後の最後まで目が離せませんでした。私のミステリー映像作品の中では、映画版「砂の器」に次ぐ二番目の作品となりました。映画版との共作が続くNHKですが「クライマーズ・ハイ」「紙の月」など映画版より素晴らしい作品が目立ちます。WOWOWとNHKはスポンサーが煩くないから自由に作れるのでしょうか? ドラマ制作部門のレベルは高いです! 追)ついでに借りた「レヴェナント:蘇えりし者」、5度目のノミネートでディカプリオが念願の主演男優賞を初受賞との話題は知っていたのですが、監督賞、撮影賞も獲得しています。主演男優賞、実力で受賞は文句ない演技でしたが、私が驚いたのはとにかくカメラワークです。ほとんどが極寒の荒野でのロケだと思われます。このカメラアングルはどうやって撮ったの? これはドローンでの映像? これはCG? 物語は単純ですが、カメラワークでこれでもかこれでもかと見せてゆきます。 
  2日   9月は、残暑、朝の冷え込み、台風襲来による気圧の変化、ハウスダスト抗原が多い時期です。気道過敏症やメニエール病などの増悪にご注意下さい。
 鼻前庭炎からの反復性鼻出血のお子様も目立っています。9月は子供達にとっては、残暑の中での運動会の練習シーズンです。アレルギー性鼻炎の小児が、かさぶたが付着した鼻の入口を痒がって掻くことにより、かさぶたの下の粘膜の血管が拡張し、かさぶたが剥がれる時に鼻出血を来しやすくなります。時には夜間の睡眠時にも、無意識に鼻をこすったり布団が鼻に当ることが刺激になって出血します。鼻血が出た際の対処法ですが、多くは鼻の入り口をティッシュペーパーとともに内側に5分ほど圧迫すれば止まります。慌てずに抑え続けてみて下さい。しっかり圧迫したのに流れるような出血が止まらない場合には、病院で出血点の確認を行う必要も出てきます。何分ぐらいなら自宅で様子を見ても構わないか、、ケースバイケースで一概には言えませんが、大人、特に高齢者で高血圧や糖尿病の持病がある、血液をサラサラにする抗凝固剤を服用しているなどで止血困難が予想される場合や、拍動性を疑う出血が大量で大部分がのどに落ちる場合などは、救急病院の受診も必要になります。小児の場合は出血の多くが鼻の入り口からです。時に動脈性で止血が困難な場合もありますが、口の中から噴き出るような出血が持続するようなケースでなければ、まず30分前後は自宅での圧迫止血で経過を見るという対応で経過を見ることも可能だと思います。
 
 日本睡眠学会では睡眠時無呼吸症候群(OSA)のガイドラインを来年の公表を目標に策定中です。7月の学会ではガイドラインに関するセッションが設けられました。私が注目したのは以下の4点です。(1)閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)が二次性高血圧の主要な原因の一つであり、特に治療抵抗性高血圧や夜間早朝高血圧の原因となる。私も診察時に咽頭狭窄の患者様を診ると高血圧の有無には注意しています。高血圧の人の中には従来考えられているより高率に、OSAを治療すれば高血圧が軽減するケースも隠れていそうです。(2)OSAは成人になって発症する2型糖尿病やメタボリック症候群の発症リスクを高める。糖尿病の発症要因になるとは意外でした。今後は糖尿病の患者様にも積極的に、診察時の咽頭狭窄の有無を確認しSASを合併していないか確認したいです。(3)治療では、持続陽圧呼吸(CPAP)単独では不十分で、食事・運動療法による肥満に対する減量が重要である。私はOSA肥満体質の方には、減量を心がけるようお伝えしたり漢方治療をお勧めしていましたが、高度肥満の方には内科の減量外来を積極的に紹介するなど、よりいっそう積極的なアドバイスを行おうと思います。(4)CPAP療法が不眠で十分に行えない時には、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の服用がアドヒアランスを向上させる。(アドヒアランスという言葉が医療の現場では流行語といってもよいくらい一般的な言葉となっています。直訳すれば adherence=執着心という意味です。従来のコンプライアンス=順守という概念では、コンプライアンスは守らない場合は患者側に問題があるとのニュアンスですが、アドヒアランスでは患者自身の治療への積極的な参加というニュアンスで、治療者と患者が共に考えて治療を進めるとの考えが根底にあります)CPAP療法では3割の方が治療自身が不快で受け入れられません。CPAPのマスクが不快で不眠に陥ることはよく経験します。一般的な不眠症や入眠障害には睡眠薬も治療の選択枝ですが、従来の睡眠薬のベンゾジアゼピン系は舌根沈下や口渇などの副作用があることから一般的にはOSASの治療には用いられません。ここ数年でベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬が発売されました。ベンゾジアゼピン系以外ならばOSASの治療にも試みても良いとガイドラインが策定されれば、私も試みたいと思います。非ベンゾジアゼピン系で作用機序がベンゾジアゼピン系に似ているものには現在、マイスリー、ルネスタが、作用機序の全く違う薬剤では、メラトニン受容体拮抗薬のロゼレム、オレキシン受容体拮抗薬のベルソムラがあります。特にロゼルム、ベルソムラは自然な睡眠を得られるともされます。私も今後CPAP治療での活用を検討したいです。
9月 1日   9月になりました。診療が終わると外は真っ暗で虫の音が聞こえます。一気に秋の気配です。
 サッカーW杯最終予選、黒星発進。無念です。今大会の最終予選B組はFIFAランクがあてにならないくらいにシビアな組です。報道はどうしても楽観論に傾きますが、ドーハの悲劇を思い出してチャレンジしなければいけないくらいですね。「逆説の日本史」が代表作の歴史家、井沢元彦氏の提唱する「言葉に霊力を認め、それを口にすることによってその霊力を発動させ、言葉の内容の実現を祈る」言挙げ(ことあげ)を行うという日本特有の言霊(ことだま)信仰を元に日本の歴史を見れば新しい発見があります。氏は、日本人は、料金値上げを「改定」・全滅を「玉砕」・敗戦を「終戦」・侵略を「進出」と言い換える、”日米構造障害の初期協議”を「日米構造協議」と言い換えるなどの例をもとに、日本人が希望的観測に流される危険性を指摘しています。サッカーでもオリンピックでも、日本では勝つことにしか言及できない報道ばかりです。そして根本的な改革の提案は敗戦後までタブーとなります。サッカー報道を見て、日本人の心象風景に思いをめぐらせてしまいました。

 イヌ・アレルギーの方が来院されました。ペットのアレルギーではネコ・アレルギーが抗原性が強くて有名ですが、この夏、イヌのアレルギーによる顔面の湿疹の方の来院が続きました。ペットの毛の上皮やフケに対するアレルギーは抗体検査があります。アレルゲンに対するIgE抗体を介した即時型の抗原抗体反応による蕁麻疹は、抗体検査でアレルギーの有無が確認できます。しかし、ハプテンと呼ばれる分子量が少ないために単独ではアレルゲンになることが出来ない物質を原因とするアレルギー反応では、ハプテンがキャリアタンパクと呼ばれる体内のタンパク質と結合して抗原性を獲得してアレルギー反応が発現します。マクロファージ→ヘルパーT細胞→サイトカイン→ケミカルメディエーターという反応の流れで14~72時間という比較的長い時間をかけて反応するⅣ型アレルギーとなります。この反応ではツベルクリン反応が有名です。ネコの唾液等を介すると即時型の蕁麻疹だけでなく、接触性蕁麻疹や接触性皮膚炎のような機序も考えなくてはいけません。ペットに対する皮膚のアレルギー反応では、治療は慢性化しなければ同じではありますが、アレルゲンを介した即時型反応か、ハプテンを介した接触性皮膚炎の反応かに注意します。

 急性中耳炎に対する他施設共同研究の検体の検査結果が当院に返ってきています。昨日は鼓膜切開により得た鼓室内膿汁から「ペニシリン耐性肺炎球菌PRSP莢膜血清型35B」が検出されました。普段利用している検査センターからの検査結果よりも詳しく、細菌のサブタイプや遺伝子タイプが解かるために、臨床医の立場でも大いに役に立ちます。先の日耳鼻学会総会では、急性中耳炎の多剤耐性肺炎球菌に関する研究で、2010年から任意接種、2013年4月から定期接種として導入された7価結合型肺炎球菌ワクチン、2013年11月から導入された13価結合ワクチンでもカバーできない血清型15Aによる難治性急性中耳炎が2歳未満で多く同定されたとの発表がありました。肺炎球菌には90種の莢膜血清型があり、ワクチンには90種の中の一部で強毒性で髄膜炎を惹き起こすタイプの血清型を含んでいます。13価結合とは13種類のタイプの血清型を含んだワクチンということです。ワクチンの普及とともに、これまで髄膜炎化しにくかったとされたタイプの血清型で新たに髄膜炎を発症するケースもでてきており、細菌と人間の免疫のいたちごっこを示します。この研究では、急性中耳炎の領域でもワクチンでカバーされていないタイプの感染が増えてきていることを示唆しています。先日、当院で検出された血清型は35Bでしたが、15Aが当院でも検出されるかどうか、興味深いです。
 先の日耳鼻学会では、小児急性中耳炎への治療法として、和歌山県立医大から、マクロライド系抗菌薬CAMとペニシリン系抗菌薬AMPCの併用療法の有効性に関する研究がありました。3歳未満の急性中耳炎罹患児では、AMPC単独よりもAMPC+CAM5日投与の方が有用だったとの報告です。AMPCは細菌の細胞壁を破壊する殺菌的作用で肺炎球菌に有効、CAMは細菌の増殖を停止させて死滅させる静菌的作用でインフルエンザ桿菌やモラクセラ菌に有効です。両者を併用すると、確かに抗菌スペクトルは広くなりますが、CAM投与で細菌の増殖が抑制されることからCAMが有効な肺炎球菌への抗菌力が一部抑制されるきらいがあります。実際は肺炎球菌のほとんどがCAM耐性ですのでそこはクリアできるのでしょうか。また研究としては有用ですが、臨床データの蓄積がこれからですので、保険診療上での適応はまだ将来の課題です。この治療法がこれから普及してくるかどうか、今後の研究に期待したいです。 
     
  31日  昨日のこの欄で児童医療費について取り上げたところ、早速、新しい情報を教えて頂きました。なんと、話題を取り上げたその日に、東温市では中学生まで外来医療費を無料にする補正予算案を発表しました。施行は来年度からとのことですが、これで松山市以外の中予地区は中学生まで通院無料となります。

 当院で舌下免疫療法SLITを新たに始める方が少しづつ増えています。学生さんでスギのSLITを開始した方、成人でダニのSLITを開始した方がおられます。わが国で開始されて3年目となるスギのSLITは全国的にも重大な副作用の報告はいまのところ1例もありません。日本人は中途で脱落する例が少なく治療効果もまずまずとの学会報告が多いようです。昨年12月から12才以上を対象に開始されたダニのSLITは、これから発売後の臨床データが出てくる段階ですが、当院で開始された方が、安全に治療が進み、かつ症状が軽くなる有効例となることを期待しながら経過を診たいと思います。
 
 欧米では消化器の分野で「好酸球性食道炎」が注目を集めています。米国消化器病学会では2007年に早くも診断基準のガイドラインを策定しています。診断基準は、1.食物のつまる感じや嚥下障害などの食道症状 2.食道粘膜生検で好酸球浸潤が15/HPF以上 3.逆流性食道炎などの他疾患の除外 とされています。食道内視鏡で、縦走溝、白斑、輪状収縮、狭窄が見られます。30代から50代の男性に多いとされ、この病気が増えてきている原因として、専門的になりますが、胃へのピロリ菌感染が少なくなったことでヘルパーT細胞のバランスが、細胞性免疫のTh1より液性免疫のTh2の方が優位になって増えているとの考えがあります。好酸球は気道のアレルギー疾患でも重要な細胞です。アレルギー学はまず、IgE抗体・肥満細胞・ヒスタミンなどによる抗原抗体の即時反応を中心とした獲得免疫が解明されました。その後、遅発反応や自然免疫の機序の解明が進みました。アレルギー反応にも複雑なネットワークが構築されていることが次々と解明されています。好酸球は、そのネットワークでも重要な位置を占める細胞で、好酸球性炎症という機序で粘膜に障害を及ぼすことが解かっています。好酸球性中耳炎は難治で内耳障害を起こすことがあります。好酸球性副鼻腔炎はポリープ形成・高度な嗅覚障害・手術でも再発しやすいなどから難病に指定されています。気管支喘息でも好酸球性炎症が喘息発作に大きく影響し、好酸球性気管支炎、好酸球性肺炎という疾患分類があります。気道アレルギーの分野で好酸球性の病気が明らかになった後に、消化器の分野でも好酸球性食道炎や好酸球性胃炎という病気が注目を集めるようになりました。治療では、半数の方に胃酸の抑制剤PPIが効きますので胃酸の逆流も関与していると考えられます。難治例では吸入ステロイドの嚥下療法が試みられています。吸入ステロイドにはアレルギー反応だけでなく広く炎症を鎮める作用があります。耳鼻科領域ではアレルギー疾患以外でも、アデノイド肥大による幼児の睡眠時無呼吸症候群や、声帯ポリープ・声帯結節・喉頭肉芽腫症などの喉頭領域の慢性炎症みの用いられていますが、収入ステロイドのパウダーを嚥下して食道で直接作用させるという新たな治療法は、とても興味深いです。私も気管食道科医として食道内視鏡検査は行いますが、絶食を要する胃まで含む上部消化管内視鏡や食道粘膜生検までは対応していません。そのため生検による確定診断は出来ませんが、食道内視鏡検査や臨床症状で好酸球性食道炎が疑われた場合には、消化器内科と連携しながら対応したいと思います。 
  30日  二学期を前に余土中学校の移転が完了しました。旧校舎は早くも取り壊しが始まっています。余土中生にとっては、シンプルモダンなお洒落な校舎での新学期、楽しみでしょうね。ここ1週間、秋の花粉症の子供達がみられるようになりました。ヨモギなどのキク科花粉の飛散は9月に入ってからですので、今はイネ科の秋花粉です。学童の中には、アレルギー性結膜炎の中でも結膜乳頭増殖が高度な「春季カタル」と呼ばれるタイプのお子様も見られます。春季カタルのように反応が強い場合には角膜炎まで至る場合もありますので、適宜、眼科専門医との連携を行っています。秋の花粉症シーズンを迎えて、ふと余土中移転の件を思い出しました。余土中の移転先は坊ちゃんスタジアムのある松山中央公園の隣接地です。余土中グランドに接して伊予銀の女子ソフトボール練習場がありその横はもう石手川の土手になります。河川敷や土手は雑草の宝庫ですので、雑草花粉症の人にはちょっときつい場所かも知れません。ついでですが、、伊予銀女子のソフトボールチーム「ヴェールズ」は日本女子ソフトボールリーグ1部12チームの中の1チームです。2016シーズンの現在の戦績は3勝8敗の8位、上位4チームが11月末に神宮球場で行われる決勝リーグに参加できるとのことです。シーズンはちょうど折り返し地点ですので、「ヴェールズ」ベスト4目指してがんばれ!! 東京五輪ではヴェールズのメンバーの何人かは日本選手団入りでしょうか!! 

 一年で最も風邪が流行らないお盆明けですが、アデノウイル、RSウイルスによる感染症は散見されます。乳幼児では下気道の反応が強くなるRSウイルスですが、成人では咽頭扁桃炎などの上気道炎で終わるケースが多いです。

 今年12月診療分から伊予市が、来年1月診療分から松前町の外来分の児童医療費が中学生まで無料になります。これで中予地区の自治体では松山市と東温市を除いて外来医療費が中学生まで無料となります。無料となる家庭の家計は助かります。ちなみに、松山市は平成27年4月から入院医療費は中学生まで無料となりましたが、外来は就学前児童までです。子供の医療費の補助が、東京都世田谷区のように自治体単位で広がった最初の頃、財政赤字の事も考えると全額無料はやりすぎではと思っていたのですが、子育て支援の掛け声もあり児童医療費の無料化は全国に広がっています。診察を行う立場でも、保護者の方の金銭的な負担を考えずに診療を行えることから、十分な検査や治療が行えるメリットがあります。しかし、念のために検査しておこう、ジェネリックのない新しいお薬を積極的に使用する、、など医療のコストを軽視する方向にバイアルがかかる傾向もなきにしもあらずです。医療のコストの観点を忘れないよう自戒しながら診察したいと思っています。松山市民の保護者の方とこの話題になった際に、松山の人がエミフル(松前町にある中予最大のショッピングモールです)でお金を落とすことも、松前町が松山市より先に学童医療無料したことに影響しているのでしょうか。いやいや、やはり松前に東レの工場があるおかげですよ、、と雑談が弾んでしまいました。

 原発性免疫不全症(PID)という病気が認知され始めています。この病気は、先天的に免疫系に障害を持ち生体防御機能に異常をきたす疾患群で、原因遺伝子や障害される免疫担当細胞の種類や部位により、現在までに300種類程度が報告されています。症状は、中耳炎・副鼻腔炎・肺炎を繰り返す反復感染、髄膜炎・骨髄炎・敗血症などの重症感染、真菌やウイルスの治癒が困難になる難治感染、抗菌薬の投与でも改善しない持続感染、日和見感染などの易感染性が特徴とされます。2008年の厚労省の全国調査では患者数は1.305人でしたが、米国の報告では有病率が1.200人に1人とされ、我が国でも調査の少なくとも10倍の患者が存在すると言われています。PIDの診断基準として「PIDを疑う10の徴候」という世界共通の基準があります。その中には耳鼻科医が日頃接する機会が多い徴候も含まれています。小児版では ○1年に4回以上中耳炎にかかる ○重症副鼻腔炎を繰り返す ○抗菌薬を服用しても2か月以上感染症が治癒しない ○1歳以降に、持続性の鵞口瘡、皮膚真菌症・広範囲な疣贅(いぼ)がみられる 成人版では 1年に2回以上中耳炎にかかる ○1年に2回以上重症副鼻腔炎を繰り返す ○2年以上1年に1回以上肺炎にかかる ○径静脈投与を要する感染症の反復 ○持続性の鵞口瘡や皮膚真菌症がみられる ○2回以上、髄膜炎、骨髄炎、蜂窩織炎、敗血症や皮下膿瘍、臓器内膿瘍なdの深部感染症にかかる などです。厚労省の研究班では、これらの項目の1つ以上該当すれば専門医のもとでの精査を推奨しています。耳鼻科の外来診療では、この条件を満たすケースは決して珍しくありませんので、基準に適応する患者様が外来に多い事には少々ビックリします。精査には、免疫グロブリンIgG,M,A値、T細胞数(CD3/4/8陽性リンパ球)、B細胞数(CD19/20陽性リンパ球)、血清補体値(CH50)、特異抗体などを調べます。治療は、重症複合型には造血幹細胞移植を、PIDの約半数を占める抗体不全症にはIgG値を1.000㎎/dl以上に保つ免疫グロブリン補充療法で、感染症の予防が可能となっています。私も免疫不全の視点を忘れないように診療を行いたいと思います。 
  28日   この欄でも6月にお伝えしていましたが、今年の台風1号は7月3日発生と、過去2番目に台風発生が遅い年でした。ところが8月には逆に、北海道を中心に台風襲来回数が記録的となりました。現在、台風10号が接近中ですが、日本近海で発生した珍しい迷走台風となっています。東日本では台風襲来が重なりましたが、松山は8月中旬以降雨らしい雨が降っていません。おかげで当院玄関の豆つげが一部枯れてしまいました。今日、私自身で”枯れきった木”の植替えを行いました。やはり緑があると心が落着きます。今年の8月、松山は猛暑で日照時間が長くなりましたので、来年のスギ花粉の飛散は4年振りの大量飛散となりそうです。夏に少雨というと松山市民が気にするのが水不足です。気になって調べてみると、やはり最近はなんでもネット上で情報が得られます。松山市の水がめ、石手川ダムのリアルタイム貯水率の判るサイトがありました。国土交通省水文水質データベース 石手川ダムリアルタイムダム諸量一覧表 です。なんと10分単位のデータが発表されています。貯水率はなんと90.6% 今のところ水不足の心配は無用でした!

 週刊現代2016年6月11日号の「ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない薬」が波紋を広げています。この号は販売部数も多かったそうです。この前週の週刊ポスト2016年6月10日号にも「がん患者の8割は「栄養失調」で死んでいる」との記事もあり、週刊誌の話題提供はなかなか刺激的です。癌末期は悪液質という体質となることから栄養失調状態が死因の直接的な原因となりますので、週刊ポストの記事も真実といえば真実です。週刊現代の記事も識者がしっかりとコメントしていますので、真実を突いているといっても間違いではありませんが、大げさといえば大げさかも知れません。週刊現代は翌週さらに「現役医師が実名で証言する「アブない薬」〜売れている薬の半分以上は、飲み続けないほうがいい 薬漬け社会のタブーに切り込む」という特集も企画し、医療用医薬品の売上上位30品目の内20品目が「飲み続けることの危険性」や「その薬剤を選択することの積極的な意味が見いだせない」と指摘しています。その後、週刊文春でも追随する記事がでました。逆に週刊プレイボーイで、「「薬は飲むな」男性誌キャンペーンで診療不信の患者殺到、病院がパニックに...」というニュースや「「ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない薬」に騙されるな」みたいな企画もありました。当院の診察では幸いにも?これらの記事に関しての患者様からの問い合わせやパニックはありませんでしたが、今日は耳鼻科関連のお薬に対する私の考えを述べたいと思います。
 お薬を飲む必要があるのか? 飲んではいけないのか? その前提に、どの状況で医療を受けるべきか?を、その人その人の立場で明確にして議論すべきでしょう。一般的なコンセンサスとしては、悪化すれば死ぬかもしれない、日常生活が過ごせなくなる、病気の状態が不快でたまらない、などの状況で医療に頼り治療を受けようとする方がほとんどでしょう。耳鼻咽喉科気管食道科は気道を診断治療の主な領域としていますので、当院では風邪症状で受診する方が多いです。ところが、風邪は放っておいても治ります。インフルエンザでも治ります。ところがごく稀に死に至る病の前触れである場合があります。発熱や痛みのせいで仕事や学校生活が送れなくなる期間ができたりします。時に症状が慢性化して長期に渡って日常生活に制限が加わる場合もあります。どの時期にどの症状レベルで病院を受診して治療を受けるかは、その人の置かれた立場や考え方で千差万別です。風邪は放っておいても治るから治療なんかとんでもない、癌だって免疫力が高まれば自然治癒もあるから民間療法や代替治療を優先する、との論点が入れば議論がかみ合わなくなります。”医者に出された”お薬は、医者がお薬の効果を期待し処方したわけですから、その期待する効果を期待しないのであればお薬は飲む必要はない、となります。生物の反応性は複雑で多様なことから、病気の経過も一本道でないことがほとんどです。その時々で変化しますので将来の状態を確定して見通せることはほとんどありません。病気の悪化する可能性をどの程度まで織り込んで予防的な治療を受けるかという観点でも、個々人の考え方は千差万別でしょう。ウイルス一般の風邪っぽいので服薬なしで体力で頑張るという立場、扁桃腺が弱くてよく腫れるから今はウイルス性上気道炎で病原菌に直接効くお薬はないけど二次感染予防で抗菌剤を飲むという立場、大事な仕事・受験・試合を控えているので症状を抑え込むお薬を飲むという立場など、個々人のその時の立場で様々でしょう。その上で、ややこしいのが、お薬を飲んで効果を期待するということはヒトという生物に良い方向の変調作用を期待するということですが、多くの作用の陰にたとえ少なくても悪い方向への変調作用である副作用が潜んでいる可能性があることです。当院でも抗生物質や消炎鎮痛剤による薬疹、漢方薬による間質性肺炎や薬剤性肝障害などの軽くない副作用も経験しています。この副作用の可能性を許容できないレベルと判断すれば週刊現代の記事の立場になります。また生物学的な副作用以外でも、個人や社会全体での経済学的な損失の観点からの対応法も論点になります。
 週刊現代で取り上げられた薬剤の中で私が日頃処方している薬剤について、個別に言及してみます。(1)不眠症のお薬ベンゾジアゼピン系は、確かに一過性健忘や朝に効果が残る脱力、連用による依存や休薬時の反跳性不眠がありますので私は一時的な屯用としての処方です。 (2)抗インフルエンザ薬は”日本が大量消費して有熱期間が1日短縮するだけ”ですが、服薬直後から高熱や全身倦怠感が劇的に軽くなりますので生活の質を高める意味では服薬の”し甲斐”があります。(3)感染症に対する解熱鎮痛剤は確かに病原菌自体に効く訳ではありませんが、”免疫力を抑えて感染症が重症化し死亡率が高まる”というのは免疫力が当初から落ちている高齢者などへの注意喚起と捉えたいです。胃潰瘍の誘発も一般の人では目立ちません。ただし高齢者や抗凝固剤併用者に対しては注意が必要です。(4)感染症への抗生物質ですが、セフェム系抗生剤は上気道感染に対しては確かに耐性菌が増えていますし、経口剤の腸からの吸収は極めて少ない上に中耳や副鼻腔への組織移行も悪いことから、私も中耳炎や副鼻腔炎には主流では用いません。溶連菌咽頭扁桃炎やブドウ球菌による外耳炎などでは感受性もありますので処方しています。マクロライド系抗生剤は”ピロリ菌除菌などの限定されてしる場合以外は有害”とされましたが、組織移行が良く感受性のあるインフルエンザ桿菌やモラクセラ菌には良く効きます。やはり抗生剤はターゲットとする病原菌と臓器を出来る限り限定した後に投与すべきです。抗生剤乱用による耐性菌の発生も重要な観点ですが、家畜飼料への大量投与の方が実は問題になっていることも心に留めておきます。(5)花粉症への長期作動性ステロイドの注射は作用が遷延化することから私も投与には反対です。(6)アレルギー性鼻炎へのステロイド含有薬の投与ですが、私はステロイドであることをしっかり認識して短期の屯用のみでの使用としています。(7)片頭痛へのトリプタン系頭痛薬で薬剤連用頭痛が指摘されていますが、カフェイン含有の一般的な消炎鎮痛剤では注意しますが、トリプタン製剤での連用障害は少ないと思います。屯用としてであれば連用も可能だと思います。ただし頭痛の頻度が高ければ次のステップの片頭痛予防薬の適応になります。(8)下痢の止瀉剤は確かにウイルスや細菌が腸内に留まっている急性期の使用は控えめにすべきでしょう。ただし仕事に支障がでるような成人では短期の服用も致し方ないかもしれません。(9)胃酸過多へのPPI製剤も確かに年単位の服薬では副作用に注意でしょう。(私は消化器専門医でない立場上長期投与は行っていません)逆流性食道炎も青壮年の食後の酸逆流や高齢者の睡眠時の酸逆流など基本的には生活習慣に起因しますので、長期の維持療法では暴飲への注意やサポート枕での就寝などの対応も進めるべきです。
  26日   リオ五輪の余韻さめやらぬ中ですが、9月1日からはいよいよサッカーワールドカップ・アジア最終予選が始まります。日本のリーグ2位以内突破にはシビアなグループです。ハラハラどきどきしそうです。2025年の万博招致に大阪が立候補との報道がありました。昭和の東京五輪に続いての大阪万博は、夢のような盛況でした。夢をもう一度、、です。
 千葉県で麻疹が8例発生。14日の幕張メッセでのジャスティン・ビーバーのライブに参加した関西の若者も発症し、19日に確定診断されました。松山でも麻疹の発生に注意するようにとの連絡が医師会から入りました。私が麻疹を最後に診察したのは15年以上前の話です。松山からライブを見に行った人もいるでしょう。二峰性発熱に発疹、コプリック斑、心に留めて診察したいと思います。 
  24日  昨日の診察室、4才の男の子がスマホに集中していたのでなにかと思えば、、ポケモンを取り逃がしたとのこと。私が把握した初めての診察室内ポケモンGOのプレイでした。(^^♪ リオ五輪が終わりました。日本選手団の皆さん、感動をありがとうございます。私がライブでメダル獲得を見たのは錦織選手だけでしたが、ここ2週間、寝不足になった人は多かったでしょうね。それにしても陸上400mリレーにはびっくりしました。トラックで米国選手を追い抜いている!! 信じられません! これぞ日本人の勝ち方です。決勝シーン、50回は繰り返して見ました。!(^^)! トップアスリートを頂点に、その土台にはそれこそ何万人もの選手達やそれを支える関係者がいます。全ての皆さんにお疲れさまと伝えたいです。閉会式を見ていると東京五輪が待ち遠しくなりました。
 お盆を過ぎても36℃の猛暑が続いています。ひょっとしたら一番暑い夏なのでしょうか。診察室から聞こえる蝉の音が、例年より少なかった気がしています。あまり暑すぎると蝉も鳴かないのでしょうか? お盆後の8月下旬は1年で最も風邪が流行らない季節ですが、例年より感染症の方が多い印象です。お子様の急性中耳炎も今の時期にしては目立ちます。 
  19日  お盆休みが終わりました。ペルセウス座流星群の到来の後、今夜は満月が素敵です。当院ではお盆休みを利用しての改装工事を行いました。病院正面のアスファルト補修、待合室診察室のフロア改修がほぼ終わりました。お盆明けにはピカピカの床で診察開始です。気分も一新で診察に向かえました。秋には引き続いて、外壁や塀、職員出入り口の改装を予定しています。
 リオ五輪、甲子園と連日熱戦が繰り広げられています。五輪での日本選手の活躍素晴らしいですね。勝っても負けても、スポーツの涙は見ていて清々しいです。私も元気を沢山もらいました。私は学生時代はソフトテニス(軟式テニス)をしていたのですが、錦織選手の銅メダルのニュース記事で、我が国のテニスの歴史を改めて知りました。我が国にテニスが入ってきたのは明治11(1878)年頃で、英国から渡ってきたローンテニス(硬式テニス)が横浜外国人居留地に伝わったのが最初とされています。その後、明治13年に体育伝習所教官の米人医師で体育指導者が学生に教えたのが日本人のプレーの始まりとされました。当時の硬式ボールが高価だったために明治17年に日本独自のゴムボールを使用する軟式庭球が生まれ、明治23年、東京高等師範学校の要請によってゴム製品の製造会社がテニス用ゴムボール「赤Mボール」を製造し、以後日本独自の「軟式庭球」が普及したとのことです。私が学生時代に何気に使っていた「赤Mボール」にこんな歴史があったとは今の今まで知りませんでした。ちなみにソフトテニスにも4年毎に世界選手権があり、主要参加国は日本、韓国、台湾ですが、2015年のインドでの大会では実に42カ国もの国や地域が参加しています! では我が国の硬式テニスの歴史はどうなっているのでしょうか? 大正2(1913)年に慶応義塾大が「軟式では国際交流ができない」として硬式採用に踏み切り、軟式から転向した熊谷一弥が渡米し、米国のトップを次々に倒し、大正8(1919)年には全米3位になりました。翌年のアントワープ五輪でシングルスの銀メダルを獲得。柏尾誠一郎と組んだダブルスでも準優勝し、これが日本の五輪参加史上初のメダルとなりました。ここから、錦織選手が96年ぶりのメダル獲得という話に繋がります。軟式の打法はドライブ回転が主流です。当時の日本人のドライブの強くかかった返球には欧米人もビックリしたことでしょう。

 この秋、当院は「急性中耳炎の起炎菌に関する多施設共同研究」に参加することとなりました。中耳炎起炎菌である肺炎球菌の莢膜型というサブタイプが、肺炎球菌ワクチンの普及とともにどのように変化しているのかを全国規模で調査する研究です。中耳炎の膿汁を提供して頂く方には、私から研究の趣旨や方法、個人保護などついて直接お話をした上で、問診表へ記入頂き、さらに同意書を頂くという厳密な手順を踏みます。お手間を取らせることになった患者様や保護者の方には誠にありがとうございます。

 秋花粉を感じるかたも見かけるようになってきました。お盆前には、対象となる方は少ないもののお米(水稲)の花の花粉症の方が、お盆明けからは秋のイネ科雑草の花粉症の方を散見します。9月10日頃からは、ヨモギ、ブタクサとキク科の花粉の飛散が始まります。
 猛暑と夏バテによる免疫力の低下の影響で、外耳炎が高度になり耳介軟骨膜炎や頚部蜂窩織炎を続発する方、急性喉頭蓋炎により緊急の紹介転院を余儀なくされる方、ウイルス性咽頭炎から続発性細菌性扁桃炎や扁桃周囲炎を惹き起こす方など、症状が強く病状の変化の強い方も目立っています。

 この秋から年末にかけて発売される薬剤の情報も増えてきました。耳鼻科関連では、抗アレルギー剤の新薬2剤が年末に発売されそうです。眠気などの副作用が少なく効果の強い薬剤が出てきそうです。ジェネリック関連では、速効性があり効果も高い抗アレルギーのタリオン、好酸球性炎症に良く効くキプレス・シングレアの後発品が発売されます。タリオンやキプレスは私もよく処方しています。ジェネッリクの発売で、患者費用負担が軽減されることは朗報です。
 来週、好酸球性炎症の指標(バイオマーカー)である一酸化窒素濃度(FeNO)を測定できるガス分析装置が導入されます。小児も測定可能な装置です。秋からの当院のアレルギー診療に役立ちそうです。一方、先月導入した自動血球CRP測定装置ですが、特にトラブルなく稼働しています。白血球やその中の細分類である好中球やリンパ球などが自動で測定できる機械ですが、血液を送る細いパイプや洗浄機構などがいかにもメカニカルな精密機器ですので、初期の機種はささいなトラブルがよく起こりました。今回導入した最新機種は測定手順も簡略になり使いやすくなっています。発熱の長引く例や細菌性炎症かウイルス性炎症か見極めたい例、扁桃誘発試験などの結果を直ぐに判定してい際などにおおいに活躍しています。また、簡便な装置ですが指尖容積脈波の測定装置も導入しました。動脈硬化の程度が判りますので当院ではめまいの補助診断に活用しています。
 最近よく「ネットで当院の診察時間を検索すると毎日午後8時まで診察となっている」との問合がありました。当院のホームページではちゃんと平日月火木金は午後6時までなどとなっていますので、おかしいとおもい調べてみると、Googleマップ上の当院の案内がそのようになってました。グーグルでもフェイスブックでもインスタグラムでもIT関連はとにかく進歩が速すぎます。グーグルビジネスというものに事業所が登録すればこのようなネット上の案内が出来るというシステムが立ち上がっていました。とりあえずマップ上の営業時間は訂正することができました。グーグルの新しいビジネスモデルなんでしょうね。いや、、もう新しくないのかもしれません。ネットの進化についていくのは大変です。
 この秋、私の論文が久々に学会雑誌に掲載されることになりました。「口蓋扁桃とアデノイド肥大 ~特に手術適応について~」という、口腔咽頭学会関連の総説が小児内科に掲載されます。大学時代のような研究論文の投稿採択ではなく総説の依頼原稿ですが、臨床医の私にとっては久しぶりの論文です。執筆に当たっては、関連文献の掲載、検索ワードの設定や英語タイトルの設定、著者校正などを”懐かしく”行いました。当ホームページ上では、なぜなに耳鼻科の病気の 扁桃炎・扁桃肥大・アデノイド ~手術の考え方~ の末尾に掲載しておきます。
  11日  今日は山の日の祝日でお休みを頂いていました。当院のお盆休みは13日から16日の4日間です。明日は平常通り診察を行います。

 日本のメダル・ラッシュ、凄いです! 体操男子 内村航平選手の個人総合が終わった直後のインタヴューが心に残りました。”練習で100%成功していたので本番の鉄棒の着地もいけると信じて演技した”そうです。私の学生時代の経験からは ”練習で90%出来て、やっと本番で使えるかどうか”の感覚でしたが、トップ・アスリートは練習で100%なんですね。それでも無意識な緊張で体が動かなくなるような五輪の魔物はいるのでしょうが、、 内村選手の凄さの片鱗が伺えました。

 野菜の扁桃異物(珍しいです)、スギ花粉の舌下免疫療法、頚部腫瘤への細胞診、小児良性めまい症など。  
  9日  7日三津浜花火大会・リオ五輪開幕、8日鼻の日・夏の甲子園開会、今年の夏は例年以上に暑いです。昨夜は体操男子金メダル!おめでとうございます。やはり団体競技の金メダルは格別です。チームワーク、見ていて感涙ものです。柔道男子73㎏級大野選手、金メダルおめでとうございます。耳鼻科医としては柔道選手の耳介血腫、凄いです。練習の積み重ねがしのばれます。インタビュー映像を見るたびに目が釘付けになります。
 今週からお盆休み入りです。学生の夏休み入りに続いて、大人と保育園児の集団生活も無くなります。1年で最も風邪の流行らない季節になります。(^.^) ヘルパンギーナは下火になりました。当院では、アデノウイルス咽頭炎、マイコプラズマ感染症、溶連菌咽頭炎が散見されます。 
  3日  夏休みも本格化して、夏風邪も徐々に少なくなってきました。今年の夏風邪はヘルパンギーナが目立ちます。お子様で症状の軽いタイプがほとんどですが、高熱&口内炎多発の症状の強い大人の方も散見されました。また、手足口病が少しずつ増えてきています。当院でも大人の手足口病の方も見られました。アデノウイルス咽頭炎は多くもなく少なくもなくといった状況です。これからお盆休みの時期になると大人もお休み、集団保育もお休みになります。8月後半に向かって夏風邪にかかる方はグッと少なくなります。
 夏休みを利用してアレルギー性鼻炎のレーザー治療や舌下免疫療法の導入を希望する方も見られます。耳鼻科の夏は少し時間に余裕が出来ます。救急対応の院内研修を行いました。春に引き続き院内の整備も行っています。カルテ保管スペースの造設、病院正面の再舗装と排水溝整備、待合室診察室の床タイルの新装です。お盆休みを利用して診療に影響が出ないようにして整備を進めています。
 呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)測定装置NIOXを導入します。吐いた息に含まれる一酸化窒素(NO)の濃度を測定して気道の炎症状態が評価できます。好酸球性炎症のおおよその程度が判りますので、気管支喘息や咳喘息などの評価に有用です。また今年のアレルギー学会では、鼻腔の濃度を測定して好酸球性副鼻腔炎の評価にも用いようとの試みも報告されていました。当院でも好酸球性炎症の評価に活用したいと思います。 
8月 1日   8月になりました。猛暑が続いています。松山聖陵高校、甲子園初出場おめでとうございます。愛媛県大会では当院で見かけた野球少年達が複数参加していました。私としては知っている高校球児にはみんな甲子園に行ってもらいたかったのですが、こればかりはかないません。
 一昨日は土用の丑の日でした。この時期、耳鼻科ではウナギの骨がのどに刺さった方の診察が恒例です。今年は例年より少なく3人の方を診察しました。うなぎの骨は細く短いので刺さった骨を見つけられないケースもあるのですが、今年はどうにか全員の骨を摘出することが出来ました。ウナギは年々高級食材となってきています。立ち寄ったコンビニで見かけたうな重の値段の高いことにはびっくりしました。ウナギによる咽頭異物はこれから減ってくるかも知れません。(^.^) 
     
  25日  診察室は朝から蝉しぐれで賑やかです。益々蒸し暑くなっています。症状の強い外耳炎、外耳炎を伴う耳垢栓塞、外耳道真菌症、癤・汗疹(あせも)・乾癬の悪化による外耳炎の悪化、昆虫による外耳道異物、鼻前庭湿疹からの鼻出血、"はも"や"うなぎ"による咽頭魚骨異物など、夏らしい疾患が目立っています。夏休みの家族旅行やお泊り保育、帰省を前にしてお子様の体調を気遣うお父様お母様が目につきました。家族旅行は夏休み前から計画して楽しみにしていると思います。せっかくの旅行に計画通りに行けますように、私もこころして診察しています。

 ポケモンGOの人気は凄いの一言です。ここ数日にしてゲームの歴史を書き換えたみたいです。話によれば城山公園や道後公園は、いかにもという人達で一杯だったそうです。ネットでは早速、ポケストップ検索サイト なるものまで出来ています。気になって検索したところ、当院近辺では、余戸駅、鎌田駅、余戸郵便局、パルティ余戸がポケストップとなっていました。余戸の隣町の土居田町にある杉浦内科もポケストップです。病院の前ではバトルする人が集まっているのでしょうか?? ポケストップは公園や神社仏閣教会、交差点、大規模商業施設を中心に満遍なく散らばっています。恐らくコンピューターソフトでグーグルマップ上に自動的に設定しているのでしょうが、それにしてもグーグルマップがゲームにまで紐づけられるとは。私は時代についていけません。('_') 当院診察室でポケモンをゲットする人の登場も直ぐでしょうね。
  20日  18日に平年並みに梅雨明け、今日は終業式。いよいよ夏本番です。ここ1週間、感染症ではヘルパンギーナだけ大幅に増えました。それでも症状の軽いパターンがほとんどでした。猛暑到来とともに症状の強い外耳炎が目立ってきました。外耳炎が波及して耳介炎や鼓膜炎、頚部蜂窩織炎に至る方も見られました。早くも夏バテで免疫力がおちたせいか、急性上気道炎後に扁桃炎を独発するケースもやや目立ちます。メニエール病の方も目立ちました。メニエール病の本態は内リンパ水腫という内耳内にリンパ液が過剰に溜まる状態です。低気圧が影響する代表的な疾患ですので梅雨明けとともに症状が落ち着くケースが多いと思われがちですが、最近の研究では体の脱水も悪影響を及ぼすタイプがあるとされています。夏本番、熱中症など脱水を起こしやすい天気もメニエール病の増悪に関わります。メニエール病の発症はお盆明けに目立ちます。8月後半は夏バテによる自律神経失調と脱水を来しやすいからだと思われます。中耳炎を起こす小児は冬に多く夏に少なく、中耳炎の回復も夏が良いのですが、ハウスダスト・アレルギーがあると夏でも急性鼻炎の治りが悪くなります。アレルギー性鼻炎のお子様の中耳炎の直りは少し悪いようです。
 春の聴力検査室の整備に続き、夏も引き続き整備を進めていきます。自動血球計数CRP測定装置の更新を行います。院内での血液の迅速検査が今以上に早く結果がでます。病院正面の駐車スペースの舗装工事、排水溝の整備も行います。また、案内看板の更新、吸引通気ユニットの更新、診察室タイルの更新も予定しています。
 最近、上咽頭の消炎処置である「Bスポット治療」や「扁桃縮小手術」の問い合わせが続きました。Bスポットは鼻の奥の小児期のアデノイド遺残の部位です。ここに炎症が残ると頭痛の原因のひとつとなります。簡便な処置ですので、治療を受けてみたい方は診察時にお伝えください。扁桃縮小手術をネット検索で見て県外から問い合わせるケースも続きました。県外から来られて手術を受ける場合には、手術を予約する前に、まず、手術をする必要性があるかどうかと手術を受けることに対する問題が無いかを判断するための診察を受けて頂く必要があります。また、この手術は日帰り手術といえど翌日までは手術部位周囲の腫脹が強く、術後10日前後は口内炎の形成にともなってのどの痛みが続きます。そのため手術を行うに当たっては翌日までの松山滞在と術後7~10日後の再診による経過観察が必要です。愛媛県外に在住の方で手術を検討される方には、まずは最寄りの耳鼻科で口蓋扁桃全摘出手術を検討するようお勧めしています。 
  11日   今日は高齢者の耳垢(みみあか)について。軟らかい耳垢の人が多い欧米では、高齢者の3割が耳垢で耳の穴が詰まっている耳垢栓塞の状態であるとの報告があります。東洋人は乾いたタイプの耳垢の人の方が多く、欧米人よりは耳垢栓塞の人は少ないと考えられますが、国立長寿医療研究センターの研究では、1割に耳垢栓塞があるとされています。また耳垢を有する群では認知機能が悪いとの報告もあります。私が往診する機会のある高齢者施設でも、診察の度に耳垢栓塞の人が多い印象がありました。高齢者施設では認知症や寝たきりの人の割合が多いですので、耳掃除をする機会のない在所者が多いと思われます。80才代の方は、平均聴力50dBで話し声が聞き取りにくい位の聞聴力が標準的です。ここに耳垢栓塞が重なると聴力は90dB程度となり、耳元での大声の聞き取りが難しいレベルの聴力となります。認知症悪化の予防の為にも、耳垢栓塞の有無の確認は重要だと思われます。白内障のように目元が覚束ないと介護者も病気に気づきやすいのですが、難聴が徐々に進行する状態位では、介護者の方も加齢性難聴は治るものではないことから耳鼻科を受診させようとはなかなか思われないと思います。歯科領域では往診による口腔ケアの重要性の啓蒙がなされています。聴力の評価と補聴器適合、耳垢栓塞の治療、嚥下機能障害の評価と訓練など、これからは耳鼻咽喉科も介護の現場に積極的に関与することが望まれます。
  8日    今日は梅雨空に戻りました。急な発熱の場合、昨日の炎天では熱中症による発熱も鑑別診断しなければいけませんでしたが、今日の発熱はやはり夏風邪による方がほとんどでした。
 愛媛県の夏祭りの花火大会がもう始まりました。7月2日の吉田町きなはやサマーフェスタが最初でした。愛媛県下の花火大会の双璧は8月6日の今治市のおんまく花火と松山市の三津浜花火大会です。なぜ同じ日に開催するのか?のある説は、松山の人出が22万人、今治の人出が20万人で、開催日がずれるとお互い人出の整理が出来なくなるからだそうです。今年のおんまく花火は10.001発、三津浜花火大会が10.000発で、県下最大の花火大会はおんまく花火に軍配です。松山の実行委員会が大人の対応でしょうか。!(^^)!
  6日  今日、当院ではセミが初鳴きしました。診察室南側のシマトネリコが元気に生い茂り、白い房花は今が盛りで、涼し気です。(^^♪ 昼の気温は34℃、今日も猛暑日が近いです。石鎚連山の上空には入道雲が広がっています。真夏到来です。今週後半の雨の後、早ければ来週の梅雨明けもあるかも知れません。
 先日のコメントでは、今年のヘルパンギーナは症状が軽いとお伝えしていた矢先ですが、今日は症状の強いお子様を診ました。融合したような大きな口内炎が口の中に広がっていました。のど越しのよい食事で、のどの痛みが早く落ち着いて欲しいものです。
 大河ドラマ「篤姫」放映時に私は幕末維新の立役者たちの伝記を読み漁りましたが、今年は「真田丸」に感化されています。まずは司馬遼太郎戦国4部作のひとつ「関ケ原」を読み始めました。県立図書館の書庫から借りてきた古い新書版のレトロな本が戦国時代の雰囲気を醸し出しています。この本が実に面白い! 司馬作品も「坂の上の雲」など物語の進行が遅い時には少しイラッとしますが、「関ケ原」はテンポがいいです。「この国のかたち」などのエッセイ集の如く章ごとにテンポよく物語が進行します。さらりと豊臣家臣達の一族の生い立ちや江戸時代の境遇の説明が折に触れ入りますので、戦国時代から明治維新にかけての地方の歴史も把握できるために、とにかく判りやすいです。しばらく私のマイブームは戦国時代考証になりそうです。 


白い花が満開のシマトネリコです。
7月 3日   7月になりました。6月30日は集中豪雨で石手川ダムから緊急放流がありました。一転して昨日の松山は最高気温35℃の猛暑日となりました。今年まだ発生していなかった台風も、過去2番目の遅さながら2日に発生しました。今日は朝から30℃超えの気温で、病院の冷房も朝からフル回転です。松山は水不足解消とともに夏本番です。
 余土中学校の新校舎の外構工事が始まっています。移転は2学期からでしょうか? やはりシンプルモダンな素敵な校舎です。
 流行の立ち上がりの遅かった小児の夏風邪ですが、ここ2週間でヘルパンギーナの発生が目に見えて増えてきました。典型的なヘルパンギーナは、39℃レベルの急な発熱とともにのどの奥に口内炎が多発します。そのため、急な発熱とともに、極端に機嫌が悪くなり食事を摂らない、下痢気味になり時に吐くなどの症状で、看護するお母様が心配になることもあります。この病原ウイルスに直接効くお薬はありませんので、十分な水分補給で脱水に注意して経過を見ることになります。入院を必要とするような病状になることはまずありませんので、原因さえわかれば少し安心して経過を見ることのできる病気です。ヘルパンギーナの病態をとるウイルスも複数あります。コクサッキーウイルス(CV)-2.3.4.5.6.10とエコーウイルスが主なウイルスで、CV-4が代表的です。当院で見ていると、現在流行のウイルスは症状の軽いタイプと思われます。感染症に最も反応しやすい1~2才児でも、発熱が1日だけであったり、口内炎が数個しか見られないケースが目立ちます。
 その他の感染症では、夏風邪の手足口病の報告が愛媛県下でも出てきましたが、当院ではまだ1例も見ていません。溶連菌が多め、アデノウイルスがやや多く、流行性耳下腺炎、小児のヒト・メタニューモウイルス、成人のRSウイルス、マイコプラズマ、百日咳が散見です。 

  口唇粘液のう胞、中耳真珠腫、類天疱瘡、鼻茸摘出術、アレルギー性鼻炎のレーザー治療など。
     
  23日  今日はスマホの話題を。最近は診察室でスマホを上手にタップしてユーチューブ動画を見る子供達も珍しくなくなりました。診察が始まったのにスマホの動画から目が離せない、、そんな2才のお子様も目にします。(^^♪ 2016年度の携帯電話端末の出荷予想台数は3.420万台で、内スマートフォンが81%との業界予想がありますが、診察室で見ていると、若いお母様方が使う携帯電話のほとんどがスマートフォンになった印象です。スマホの普及とともに耳鼻科外来の診察に際しての利便性もでてきました。いびきや睡眠時無呼吸の確認のために家族に睡眠中の動画を取ってもらう、耳下腺やリンパ節など首が腫れた際や薬疹などの皮疹が疑われた際に写真で記録してもらう、などで、所見を動画や写真で記録して診察時に見せて頂くと、診断に大いに役立ちます。百聞は一見に如かず、正にそのままです。気になる症状や所見があればどうぞ記録して診察時に見せて下さい。特に、小児でいびきや睡眠時無呼吸が疑われた際には、パジャマの前を開けて、首やお腹の動きが分かる動画も撮ってみて下さい。首の付け根やお腹が吸気時に引き込まれる陥没呼吸があれば睡眠時無呼吸症候群の上気道閉塞の程度が判ります。近年、小児の睡眠時無呼吸と不登校の関連性が注目されています。小中学生で朝の寝起きが極端に悪い場合には、保護者の方が、就寝時間・起床時間・入眠時のいびきの有無にも注意して見て下さい。 
  19日  前日に続いて金曜日の午後は診察が途切れる時間帯がありました。空いた時間を利用して、受付スタッフは、頑張った子供達へのご褒美の「風船ヨーヨー」を作成してくれました。鼓膜切開や鼓膜チューブ留置、採血、迅速検査などの処置時の痛みや抑制のせいで、頑張り屋さんの子供でもどうしても泣いたり暴れたりすることがあります。そんな際の”ちょっとしたおもちゃ”は、子供達がにこやかになったり泣き止んだりする魔法のグッズです。子供達の笑顔が戻ると、お母さんだけでなく私達病院スタッフもホッとします。昨日土曜日は松山中心商店街である大街道銀天街の土曜夜市の初日でした。この夜市では長いアーケード街の端から端まで夜店が出ます。当院の”ちょっとしたおもちゃ”も夏祭りバージョンです。

 我が国の医学教育は戦後のGHQ主導による改変以来の変革期を迎えています。
 平成16年度に新研修医制度が始まり、2年以上の臨床研修が義務づけられました。それまでの、無給医局員がアルバイトしながら研修したり、医局講座制で教授を中心とした閉鎖的な権力構造といった弊害は無くなりましたが、研修医の大都市への局在が進み大学在籍の医師が少なくなったことから、地方の大学や公的病院の医師不足は深刻になりました。
 先月の学会出席時にも触れましたが、平成26年度より日本専門医機構が発足し専門医制度の認定基準が専門各科で独自に行われるものから統一されたものになります。今年がこの制度下の専門医が初めて誕生します。新制度に反対の立場の学会もあり、新制度には賛否両論が飛び交っています。私も来年度が耳鼻咽喉科専門医の更新年度に当りますので、今年1年新たな対応に迫られています。学会や講習会への出席義務が増え、研修レポートも提出しなければいけません。
 学生の医学教育に大きな影響を及ぼしそうな改革も始まりました。平成27年度に日本医学教育認証評価機構が発足しました。今年度から5年間かけて全国80大学が分野別国際認証を受審することになります。なぜ国際認証を取らなければいけないのか。ここでも米国の制度改定が契機となっています。背景としては、世界の医師養成状況をみると、世界には2600校の医学部があり卒業生は年間50万人で、この20年間で倍増しました。ちなみに最大はインドの300校、ブラジル200校、米国180校、中国150校で日本は第7位、人口比の医学部数は世界全体では人口260万人に1校、日本は160万人に1校、韓国120万人に1校、カリブ諸国は56万人に1校とのこと。日本にいるとピンときませんが、近年世界的に増えた医師は国境を越えて活発に移動しています。英語圏の米国や英国では医師の25%が国外から参入しています。従来の米国の医師国家試験では試験の成績がよければ国外からの医学生も合格させていました。そのため適性の無い医師が米国で増えているとの反省から、医師としての適性を、成績だけでなく医師を教育してきた医学部の質として担保したいとの考えから、2023年度からは医学教育基準に沿った教育プログラムの認証が得られていない医学部の卒業生には受験資格を出さないことになりました。このため日本の大学も国際認証を得る流れとなりました。TPP交渉など様々な制度で米国は自国の制度を押し付けて?きます。医療保険や新薬の承認だけでなく、医学教育の場でも米国基準がスタンダードになろうとしています。基礎教育よりも臨床実習により一層ウェートがかかるようです。これでドイツ式の医局講座制の医学部のシステムはほぼ米国式のシステムに置き換わりそうです。貿易や投資、財政などなど米国式の倫理観が全てにおいて善なのか、私としては怖いところもあります。では医学教育の場で何が不都合かといえば、私の中でも具体的な問題は思い当たらず漠たる不安だけですが、、さてどうなることでしょうか?

  耳介軟骨膜炎、耳介血腫、耳下腺腫瘍、頚部リンパ節炎、口腔底蜂窩織炎、副鼻腔カテーテル治療など。 
  15日  耳鼻科外来の処置の中でも曲者は鼻出血の止血処置です。小児の鼻出血は頻度は多いものの、そのほとんどはアレルギー性鼻炎などの鼻炎による鼻入口部の湿疹や痂皮形成による毛細血管の拡張によるものです。多くは鼻の入り口の圧迫止血で事なきを得ます。しかし、最近増えてきているのが、抗凝固薬を服薬中の壮年~高齢者の鼻出血です。血液が固まるのを予防するお薬を飲んでいる訳ですから、当然出血は止まりにくくなっています。そのような方は基礎疾患として高血圧を合併していることも多く、出血時の緊張で血圧も更に高くなっていますので、益々止血が難しくなります。また出血部位も、鼻の入り口だけでなく後方や上方の動脈からの出血もあります。
 血液をサラサラにするお薬、抗凝固薬は血栓性や塞栓性の疾患の治療に用いられ、ここ10年来、服薬する方が増えており、服薬患者は数百万人とも言われています。心臓弁膜症、心臓弁置換術、冠血管バイパス術、心房細動などの循環器疾患、慢性動脈閉塞症、深部静脈血栓症のような血管外科疾患、脳梗塞、一過性脳虚血発作などの脳外科疾患、川崎病による冠動脈瘤などの小児科疾患など多岐に渡ります。主な薬には、抗凝固薬(ワーファリン、プラザキサ、イグザレルト)、抗血小板薬(パナルジン、バイアスピリン、プレタール、エパデール、アンプラーグ、プラビックス、ドルナー)、冠拡張薬(ペルサンチン)、血管拡張薬(オパルモン)などがあります。
 坑血小板薬の服用では、胃潰瘍や胃出血が消化器分野の救急医療で問題となっています。 歯科領域では抜歯時の出血への対応が問題となることから「科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2010年版」などの治療指針も作られています。この指針や日本循環器学会の抗凝固・抗血小板療法ガイドラインでは、”抜歯時には抗血栓薬の継続が望ましい”とされ”出血時には止血処置で対応可能”とされています。しかし鼻出血では鼻腔の深部からの出血では、出血部位が確定出来ない場合があり、凝固や圧迫止血が十分に行えない部位からの出血もあります。そのため止血困難な抗凝固薬を服用中の鼻出血は、当院外来において処置が難しい病気の筆頭と言っても過言ではありません。鼻出血を起こしたからといって安易に休薬することは出来ません。抜歯時のワーファリン休薬は血栓塞栓症のリスクを増加させるとされて、ワーファリン休薬した1%に血栓塞栓症が生じたとの報告や、抗血小板薬を休薬すると脳梗塞発症のリスクが3倍になるとの報告もあります。特に心臓の弁置換術後は血栓が出来やすいために抗凝固薬の中止は一時的としても難しい場合が多いです。当院でも出血している患者様の心臓血管外科の主治医に一時的な休薬が可能かどうか問い合わせるのですが、極力休薬しないで欲しいと依頼させる場合が多いです。
 夏の気配で、今月に入り成人の鼻出血の方が増えてきました。その中で止血が難しいケースや再出血するケースのほとんどが抗凝固薬や抗血小板薬を服用している方です。抗凝固薬を服用している高血圧の鼻出血の方を前にすると、私も思わず気合が入ります。  
  14 日  今年はまだ台風がひとつも発生していないそうです。利根川水系では今日から取水制限が始まりました。そう思って空を見ると、今日は梅雨の合間の快晴です。松山市の水がめ、石手川ダムはまだ十分貯水されていますが、松山の都市としてのネックは水不足になりやすいことです。水害は嫌ですが、これから梅雨本番です。適度な慈雨は降ってほしいものです。
 今日はいつ以来でしょうか? 久方振りに診察の合間に患者様が途切れる時間がありました。私もスタッフもちょっとした掃除と雑用が出来ました。(^^♪ 
 当院では6日前にA型のインフルエンザが陽性の方を診ましたが、その後、インフル陽性の方は見られません。3日前に今年の夏風邪シーズン初めてヘルパンギーナのお子様を診ました。昨日にももう一人見かけました。例年だと5月中から散見される代表的な夏風邪のエンテロウイルス系のヘルパンギーナ、手足口病ですが、今年ははっきりした所見を呈した小児は3日前が初めてでした。インフルが遅くまで流行った代わりに夏風邪の流行が遅い、、なんだかそんな雰囲気です。ヘルパンギーナは急な高熱にお母様がビックリし、多発性の口内炎のおかげで急にのどが焼けるように痛くなってお子様本人がご飯を食べるのも嫌になるような病気です。ウイルス自体に直接効くお薬はありませんので、脱水予防などの対処療法が治療の主体です。エンテロウイルスは本来腸管で増殖しますので下痢や軟便も併発しやすいです。あまり効きませんが、トラネキサム酸で口内炎の充血をほぐし、整腸剤で腸内細菌叢を保護します。
 耳鼻科外来で夏の気配といえば、外耳炎です。汗ばんだ中で外耳道を掻破して毛穴が腫れあがる耳癤を起こし、耳たぶ周囲の皮膚が網目状に腫れて蜂窩織炎化したり首のリンパ節が腫れる方も見られるようになってきました。あまりに腫れが強くて疼痛が強い場合には注射で抗生剤を投与する場合もあります。セフェム系抗生剤は腸管からの吸収が悪いため経口剤は患部への組織移行率が悪いです。点滴や注射で投与すると高濃度で血中から組織に深達移行します。腫脹が強く増悪が怖い場合や痛みや発熱が強い場合にはやはり点滴です。外耳炎だけでなく、頚部蜂窩織炎や口峡炎、扁桃周囲炎でも積極的に点滴静注を行います。
  11日  先の伊勢志摩サミットでも「薬剤耐性菌」問題が議題となり、耐性菌研究の推進が首脳宣言に盛り込まれました。日本政府は抗生剤の投与を3割削減するとの目標を打ち出しました。この考えが医学界でも徐々に浸透しつつあります。ここ1年ほど、松山の小児科でも普通の風邪であるウイルス性上気道炎への抗生物質の処方は少なくなっていると実感します。強力な薬剤耐性菌の報告が増える一方で、抗生物質の開発は儲からないとの医療経済上の問題もあり、世界で新たに開発される抗生物質は30年前の1/5以下になっています。今後10~20年後、薬剤耐性菌が制御できなくなる可能性は否定できません。耳鼻科は外来レベルでは1990年代末から一足早く薬剤耐性菌の問題に直面していました。これまで良く効いていたセフェム系抗生物質が小児の中耳炎で目に見えて効かなくなったためです。小児の中耳炎は、小児の感染症の中でも細菌感染の割合が多い代表的な疾患です。抗生物質をいかに効かすか?鼓膜切開、鼓膜チューブ留置などの外科的治療をどのレベルで行うか? ここ20年来の耳鼻科外来は耐性菌との闘いの最前線でした。サミットで話題になったこともきっかけとして、私の「小児の中耳炎Q&A」の抗生物質の項を更新しました。

抗生物質について;
 飲み始めでは薬が合わないために起こるアレルギー(湿疹,かゆみ,下痢など) が無ければ心配はありません。大人は胃を荒らすこともありますが,小児ではまずありません。
 抗生物質特有の副作用としては,以下の3点に注意してください。
  下痢-腸内細菌を乱すことによる(特に血便には注意!)
  カビの繁殖-皮膚や粘膜の雑菌が死ぬ⇒雑菌を殺す白血球が皮膚にいなくなる⇒
        隠れていたカビが増殖する(抵抗力のまだ十分でない乳児)
  腸内細菌の乱れー腸内の免疫が乱され腸や皮膚のアレルギー反応を悪化させるとの考えもあります
 抗生物質で一番の課題は、抗生物質が効かない耐性菌の存在です。2016年の伊勢志摩サミットでも議題となり、政府は抗生物資の投与を3割削減するとの目標を打ち出しました。細菌は分裂時の遺伝子変異により抗生物質が効かなくなる耐性を獲得します。1964年にはメチシリンというセフェム系の抗生物質に耐性の黄色ブドウ球菌が出現、1996年にはバンコマイシン耐性のブドウ球菌が出現、2016年にはコリスチンというカルバペネム系の中でも最後の切り札とも呼ばれる抗生物質への耐性菌が米国中国欧州で見つかりました。耐性菌は養豚養鶏や魚養殖に用いる抗生物質や、人体にわずかに存在する抗生物質耐性菌が生き残り過増殖することによる広まるとされています。中耳炎なでの細菌感染の治療に際しては、細菌検査などで耐性菌の存在を確認しながら、有効な抗生物質を十分な量で充分な期間服薬しなければいけません。2010年代に入り我が国では小児用内服抗生物質の新薬が2種類発売されました。このおかげで、セフェム系耐性菌が蔓延して治りにくくなった小児中耳炎が以前よりも治り、その結果、鼓膜切開の施行回数が全国的に減ったことが保険統計上も確認されています。世界的な視点で薬剤耐性菌の発生の助長には注意しながら、個々人の細菌感染に対しては、耐性菌の有無を確認しながら、病原菌のしっかりとした除菌を目指して、中途半端でないしっかりとした抗生物質の服用が必要です。
 よく飲み続けると効きが悪くなると心配される方もいますが、病原菌が消失したのに漫然と同じ薬を長期に飲み続けて他の細菌が増殖して菌交代現象が起こる問題や、体内にわずかに存在する耐性菌のみが残って過増殖する耐性菌増殖の問題がありますが,耐性菌の市中での蔓延は、ウイルス感染による一般的な風邪の初期に二次的な細菌感染の予防のためとして抗生物質を全国的に頻用したために増加したものと考えられています。耐性菌が原因で難治性反復性中耳炎になった場合には、中途半端に効きの悪い抗生物質を服用しても効果は期待できません。有効な抗生物質を、十分な量で十分な期間服用する必要があります。「鼻水が止まったから」「元気で痛みもないから」と自己判断で服薬を中止しないようにして下さい。 

 元気が出るドラマとして評判の「表参道高校合唱部!」を見ました。いやー、合唱の力で様々な困難を乗り越える、、元気を貰いました。主人公が困難に立ち向かった時に行う”10秒ジャンプ”、見ているだけで元気が出ます。昨年9月期のTBSのドラマです。当時は低視聴率だったそうですが、ここ数年、ドラマはTBSですね!
 主人公は芳根京子さん、次のNHK朝ドラのヒロイン決定です。朝ドラオーデション合格はこのドラマのおかげでしょうか。
  5日  昨日、四国が梅雨入りです。ドンピシャ平年並みの日になりました。梅雨前線は沖縄にあり、と言っていた私の予想は見事に外れました。(^-^;
 松山市在宅医療支援センター主催の在宅医療連絡会に出席してきました。老年期の医療を病院だけに頼らず、介護保険を活用して在宅で看取る、、。 老人医療費の破綻を防ぐためにも、介護保険制度の創設は高齢化スピードが世界一の我が国にとって先見性のある政策だったと思います。それでもなお介護保険の医療費が予想を上回るペースで増えているのは悩ましい問題です。在宅医療を国が推進する中、松山市医師会も在宅医療への対応を進めています。在宅医療を担うとなると看取りをせねばなりません。そうすれば365日24時間の対応を医師は迫られます。私も大学時代には経験していましたが、看取るためには24時間待機してお酒も控えなければいけません。それでも総合病院であれば、主治医が学会出張などの”医学上已むを得ない”事情の際は診療チーム全体で対応します。総合病院の入院では専門領域以外で問題のある障害が発生すれば他科紹介の上の共診という制度もあります。しかしホームドクター制では、総合病院で行われるような診療チームにる医療や他科連携は困難です。在宅医療支援センターでは、副主治医制や専門往診の制度を作りました。主治医となるホームドクターが24時間対応できかねる時期に副主治医を依頼して連携する、専門外の問題があれば他科医に紹介する制度を設けました。副主治医制、他科往診依頼制という制度です。制度はまだ始まったばかりですが、在宅医療連絡会では耳鼻科も含めた他科への診察の要望も取り上げられていました。私はこれまで外来診療が主体で往診は已む終えない事情下のみで受けていたのですが、他科往診依頼制への協力は必要だと感じました。在宅医からの依頼には、当院の診療体制の許す限り出来るだけ答えたいと思います。

  耳介血腫、先天性耳瘻孔急性化膿症、難治性口腔内潰瘍、起立性調節障害、耳下腺腫瘍など。  
6月 3日   6月です。梅雨入りももう直ぐです。ちなみに四国の梅雨入りは平年が6月5日頃で、梅雨明けが平年で7月18日頃です。今日の梅雨前線は沖縄本島辺りで停滞しています。今年の四国の梅雨入りは6月9日頃でしょうか? 来週からはハウスダスト・アレルギーと気道過敏症や夏風邪の季節となります。
 伊予市と松前町の小学6年生は、6月入りとともに水泳大会に向けての水泳練習が始まりました。結構ハードな?練習らしく、今週の診察では、修学旅行帰り早々の水泳練習で疲れが溜まってますと訴える子供達の声を複数聞きました。伊予市小学校水泳大会は6月30日、松前町第48回小学校水泳記録会は7月4日の予定だそうです。松山市内の小学校ではこの時期、全生徒を対象にした校外の水泳大会はありませんので、なぜ伊予市と松前町で水泳大会が毎年開催されることになったのか? その経緯が興味深いです。今週はまだまだ水も冷たいでしょうが、受診された小学生達の検討を祈っています。
 今週の松山市医師会からの週間疾患情報では”インフルエンザは終息”との報告でしたが、当院では昨日までの4日間毎日、迅速検査でA型陽性の方がおられました。今シーズンのA型は2月を中心に2009年型が流行しましたが、当院で観測されたA型はAHpdm09の2009年型でしょうか? AH3の香港型でしょうか? 愛媛県の報告でも5月はB型の報告ばかりでA型の報告例はありませんでした。香港型は昨年9月から年末に見られた後、一時は見られなくなっていましたが、今月のA型はひょっとしたら香港型かも知れません。 
     
  29日  昨日今日と鼻出血、外耳炎の方が目立ちました。アレルギーを含めた鼻過敏症→鼻前庭湿疹の増悪→鼻前庭への痂皮付着→鼻入口部(キーゼルバッハ部)の血管拡張→鼻出血、アトピー体質による乾燥性湿疹やアレルギー性鼻炎→外耳道の乾燥性湿疹や鼻からの迷走神経を介した掻痒感→外耳道掻破→外耳炎の機序、によるに鼻出血や外耳炎が夏に目立ってきます。当院外来も少しづつ夏の気配です。 
  28日  連休明けとともに愛媛県下のインフルは散発レベルになりました。ここ1週間、ようやく当院でもインフルの迅速検査陽性の方は見られなくなりました。ヘルパンギーナや手足口病などのエンテロウイルス系の夏風邪ですが、例年ならば5月中旬から目立ってくるのですが今年はまだほとんど見かけません。6月に入ると少しづつ増えてくると思われます。アデノウイルス感染症も例年夏に多いのですが、ここ1年で見ると昨年末がピークで発生し、5月まで持続的に発生しています。溶連菌もここ1年、例年以上の発生が続いています。今年の風邪の流行は、冬にインフルエンザ、夏にウイルス性の夏風邪というパターンが崩れています。診察する私も季節感が崩れて調子が出ません。(';')
 気象庁が夏の3ヵ月予報を発表しました。四国では6月の気温が平年並みかやや高く降水量もやや多い、7月が平年並みの気温、8月はエルニーニョ現象と逆のラニーニャ現象が起きるとみられ平年より高い気温で降水量は多くない、との予想です。来シーズンのスギ花粉の飛散は、4年振りの大量飛散になりそうです。

 映画のランキング・サイトを参考にして、久しぶりにカウチポテトで映画三昧しました。私のお勧めの映画が増えました。特に「セントオブウーマン~夢の香り~」と「ライフ・イズ・ビューティフル」は私の感激した映画ベスト20に入ります。
〇元気になれる映画
セントオブウーマン~夢の香り~:こんな名作、見落としていました。1992年作アル・パチーノがこの作品でやっとオスカー最優秀男優賞を取りました。全く目を動かさない壮絶な演技、タンゴのダンスシーンは最も美しいダンスシーンともされました。盲目の退役軍人と名門寄宿学校の生徒の交流を描いています。寄宿学校でのアル・パチーノの演説、ラストシーンの余韻、元気になること請負です!
北京ヴァイオリン:2002年作 母の形見のバイオリンを携えて一流のバイオリニストを目指して北京に出てきた父と子の交流の物語です。中国の庶民の暮らし振りが窺えます。
レオン:1994年作 再見です。やはりジャン・レノがかっこ良すぎです。ニューヨークの香りも素敵です。
〇泣きたい時に観たい映画
ベンジャミン・バトン 数奇な人生:2008年作 老人で生まれて赤ちゃんで亡くなる。こんな設定がドラマになるんですね。
戦場のピアニスト:2002年作 泣けるというより、ユダヤ人居住区ゲットーの設立から崩壊までの過程が良く判ります。
ライフ・イズ・ビューティフル:1997年作 ジュゼッペ・トルナトーレ監督 再再見です。人物も風景も音楽も、何度見てもどのシーンを見てもいいです! 
海の上のピアニスト:1998年作 ライフ・イズ・ビューティフルの監督作品です。泣ける、というよりは不思議な映画です。
きみに読む物語:2004年作 女性から見た名台詞が満載です。 

 
 とても可愛い双子の女の子から似顔絵のプレゼントです。それぞれによく似ています。私の”薄くなりつつある髪”も良く描かれています。(^.^) ありがとう。 
  24日  20日金曜日は、当院休診の上、名古屋で開催された第117回日本耳鼻咽喉科学会総会学術講演会に参加してきました。幸い、かかりつけの患者様からの緊急の問い合わせはなく、私もホッとしています。ただ、当日来院されて休診を知り、日を改めて受診された方もおられました。大変失礼しました。

 今回の学会は平成29年度より開始される新専門医制度に則り講演会のスタイルも変わりました。これまでの専門医制度では各学会が個別に専門医を認定していたのですが、新制度では日本専門医機構という中立的な第三者機関が統一的に評価認定を行うこととなりました。新設される総合診療科を含む耳鼻咽喉科、内科、外科などの19基本領域専門医と臓器別内科(消化器 内科、呼吸器内科など)、心臓血管外科、消化器外科などのsubspecialty専門医からなります。新制度では、5年間に診療した耳鼻咽喉科疾患症例 200 症例(1症例/週)の報告、医療安全・感染対策・医療倫理などの専門医共通講習、耳鼻咽喉科領域講習などの講習受講が義務付けられました。今回の学会で初めて講習が開催され、私も参加しました。これまでは純粋にアカデミックな学会として参加できましたが、これからは講習会に参加するという点にもウェートをかけなければいけなくなります。私も一日の参加だけでは講習受講数が足りませんので、学会参加日数も増やさなければなりません。専門医制度がより信頼を得るための一里塚ですが、従来のアカデミックな学会の方が楽しいです。(-_-メ)
 今学会は名古屋市立大学耳鼻咽喉科頭頸部外科教室が担当しました。名古屋市大の村上教授は愛媛大学のご出身です。総会は全国の耳鼻科医約1万人の中の6千人程が参加する最も規模の大きな学会です。学会場では、普段お目にかかれない昔の同僚や先輩後輩とも話すことができ、機械展示で最新の医療機器に触れることもできました。
 学術集会としては、今年は耳鼻科関連領域のエポックメイキングな新知見は少なかったかな、、というのが私の印象でしたが、それでも興味深い新知見に触れることが出来ました。私が印象深かった報告を挙げると、鼻性NK/T細胞リンパ腫、顔面神経麻痺への神経移植術、耳鼻科領域の新しい指定難病(Usher症候群、好酸球性副鼻腔炎、若年発症型両側性感音難聴、遅発性内リンパ水腫)の扱い、内視鏡下鼓室形成・アブミ骨手術、顔面神経麻痺の病的共同運動の予防、睡眠時無呼吸症候群への手術適応、耳管開放症へのゼラチンスポンジ挿入・耳管内ルゴール塗布、聴神経腫瘍の手術、鼻中隔矯正術Wodak法、難治性急性中耳炎への対応法(クラリスロマイシン・アモキシリン併用療法など)、好酸球性副鼻腔炎による嗅覚障害へのステロイド投与、頭頸部扁平上皮癌への分子標的薬併用療法、経皮感作アレルギー、喉頭肉芽腫への音声治療、脳脊髄液減少症によるめまい、外リンパ瘻に対する外リンパ特異的蛋白の測定、中耳コレステリン肉芽腫、耳かき外傷によるアブミ骨損傷、超高精細CT(スライス幅0.15㎜)、結核性中耳炎、星状神経節近傍照射・補聴器による耳鳴治療、突発性難聴への3者併用療法(全身+鼓室内ステロイド+高圧酸素)、慢性浮動性めまい、ENT-DIB副鼻腔洗浄カテーテル療法、小児アレルギー性鼻炎に対する鼻洗浄併用療法、中高齢者IgA腎症への扁摘パルス療法、下咽頭梨状窩瘻による化膿性甲状腺炎、扁桃周囲膿瘍の細菌学的検討(ブ菌66%嫌気性菌3%で46%が合成抗菌剤5%がAMPC/SBT耐性)、IgG4関連疾患などです。これらの発表から私の外来での活用を考えると、中耳炎への静菌作用のクラリスロマイシンと殺菌作用のアモキシリン併用の有効性は? 耳管開放症へのルゴール注入を再評価する、副鼻腔洗浄カテーテル療法はより積極的に行うべき、化膿性甲状腺炎では梨状窩瘻の存在も念頭に、扁桃周囲膿瘍ではペニシリン系抗菌薬の活用などを考慮したいと思います。一度スライス幅0.15㎜の中耳画像をじっくり見たいものです。

 22日日曜日は愛媛県大洲で最高気温が30.1℃の真夏日となりました。松山でも22日、23日と夏日になりました。当院でも朝から冷房を入れ始めました。汗をかいて遊びすぎる子供達の午後の発熱では、熱中症の前段階のうつ熱に注意する季節になりました。イネ科雑草花粉症のピークです。野外活動で急に鼻水が止まらなくなる子供たちも見られます。あと2週間、6月5日頃には梅雨入りです。花粉症が終息し、ハウスダスト・アレルギーや冷房病の季節がやってきます。
 
  
 学会への旅程の一コマです。松山空港のミカンジュースのシャンパン・タワーです! 中部国際空港セントレアへはカナダ製双発ターボプロップ旅客機ボンバルディアDHC-8-Q400で向かいます。ちなみに価格は1機20億円、三菱重工業がパートナーとして開発に参加し、全体の半分近くの設計製造を行っています。この技術が昨年の国産ジェット旅客機MRJの初飛行に繋がっています。

 
 巡行高度は4500mで、ジェット機と違い地上が良く見えます。中部国際空港への飛行は初めてでしたので、空路が気になりました。眼下には四万十川(写真右上)、桂浜(写真左)、室戸岬(写真右)が手に取るように見えました。徳島から室戸に向かうシーサイドロードは全国的にも有数の素敵な道だと思います。大学時代にこの道を運転して、毎週海部病院までパート診療に出かけていたのが懐かしく思い出されました。三重では松坂から鈴鹿サーキット、長島スパーランド上空を飛びました。私は鈴鹿サーキットが校区の旭が丘小学校、白子中学校に小5から中1まで通っていました。これも懐かしかったです。

 
 中部国際空港の出発ロビーは国際線と国内線が同じフロアにあります。カウンターも国際線仕様ですので、おもわず海外旅行に出発する気分です。私が利用した日から、伊勢志摩サミットの特別警戒が始まりました。空港・名鉄・地下鉄、各所で警察官の巡回が目につきました。「サミット開催まであと6日」の掲示板の前にも警備のお巡りさんがいましたが、写真を撮りたいと伝えたら気持ちよく立ち位置を少しずらしてくれました。

 
 学会場は名古屋国際会議場です。写真は中庭から見た会議場です。やはり三大都市圏の国際会議場、りっぱな施設でした。空港は24時間運営の海上空港です。空港の向こうに自動車運搬船が外洋に向かって船出していました。東海地方にはホンダ、スズキ、ヤマハの工場もありますが、市内はやっぱりトヨタの車が目立ちます。
  16日   昨日は、やっとインフルの流行が収束とお伝えした矢先でしたが、今日1日で4名、インフルが疑われる方を診ました。市内の高校では、インフルが集団発生している学校もあるようです。本当に今シーズンのインフルはしぶといです。

 今日は、私が最近注目した医学ニュースをご紹介します。今回は専門的かつ長文になってしまいました。私の研修メモと思ってお許し下さい。(-_-;) 
〇米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会議が小児滲出性中耳炎のガイドラインを改定:診断を確実にするために気密耳鏡検査を推奨することとなりました。視診だけでは滲出性中耳炎の適切な評価は難しいものです。浸出液の有無や鼓膜の変形の評価のためには、拡大顕微鏡下の観察、気密耳鏡を通しての観察、チンパノメトリー、聴力検査が時に必要になります。また、滲出性中耳炎のリスクとなる疾患、口蓋裂やダウン症候群などでは、その疾患の診断時および生後12-18カ月に滲出性中耳炎の評価が必要とされました。さらに、滲出性中耳炎は再発しやすいことから、発症後3カ月間の経過観察も推奨されました。滲出性中耳炎の治療に抗生物質は必要なく、唯一の有効な治療法である鼓室内チューブ留置術の適応と、自然治癒にまかせた方がいいケースについても概説しています。急性中耳炎から滲出性中耳炎への移行期を除き、換気不良が主体の純粋な滲出性中耳炎では抗生物質は必要ありません。今回の改定の諸点は、私の臨床経験から見ても妥当なものと思われました。
〇米国内科学会と米国疾病対策センターは成人の急性気道感染症での抗生物質の処方について助言する勧告を発表:外来診療部門で処方される抗生物質の50%は不要または不適切な可能性があり、それによる余分な医療費は30億ドルを超えると推測され、また、抗生物質は医薬品関連の有害事象において最多の原因とのこと。一般的な風邪症状に対しては、抗生物質を処方すべきでないと明記。合併症を伴わない気管支炎に対しても、肺炎が疑われない限りは検査や抗生物質の処方を行うべきではないとしている。一方、持続的な発熱やその他の合併症状など、A群溶連菌咽頭炎が疑われる患者については、迅速検査または培養検査を推奨。A群溶連菌咽頭炎が確認された場合においてのみ、抗生物質で治療すべきとしています。また、合併症のない副鼻腔炎については、細菌感染であっても抗生物質を使用しなくても軽快すると説明。10日間以上続く発熱、3日連続で続く膿性鼻汁や顔面痛、および5日間継続する典型的なウイルス感染に続発する症状悪化が認められるまで、抗生物質は温存すべきとしています。私の感想は、確かに抗生物質の過剰な投与は薬剤耐性菌の増加を促し、国民医療費にも負担をかけますので、必要最小限にとどめるべきだと思います。ただし、発熱が10日以上続くまで、膿性鼻汁や顔面痛が3日続くまで経過をみるのは勇気が要ります。勧告では、嫌気性菌の混合感染、小児の常在細菌化した病原菌の活性化、マイコプラズマ、クラミジア、百日咳などの緩徐に発症する病原菌の初期への対応に対してやや及び腰のような印象です。臨床所見でウイルス感染後の二次感染の所見が認められた場合には、もう少し早期に抗生剤の処方を行った方がよいケースもあると思います。
〇米国救急医学会がマクロライド系抗生物質の心リスクを紹介:マクロライド系抗生物質の使用により心臓突然死および心室頻拍のリスクが増大するが、全死因死亡には有意差が見られないとする中国の研究を紹介しています。著者らは、マクロライド系抗生物質の使用群では使用しない群と比べて、心臓突然死、または心室頻拍の発症リスクが2.42倍高かったが、各研究間の不均一性(heterogeneity)があるとしています。ただし、100万回の治療につき増加する心臓突然死は118.1件、心室頻拍は36.6件と推測されており、実際のリスクは低かく、心血管系死亡リスクは31%増加したが、全死因死亡、非心血管系死亡、心筋梗塞、脳卒中のリスクは増加しなかったとしています。そのため、マクロライド系抗生物質の心血管に対する安全性をより明確にするには適切にデザインされた大規模なランダム化比較対照試験が必要と指摘しています。今回の結果で見られたリスク増大が薬剤によるものと結論するには早すぎるが、医師は心毒性の可能性についてもっと注意を払うべきだとのコメントもあります。この報告から私達が留意すべきなのは、リスクは極めて少ないと思われるが、副作用への留意は必要とのことだと思います。マクロライド系抗生物質は私もよく処方する薬剤です。心疾患のリスクのある方の投与では、副作用のリスクにも留意したいと思います。
〇米国小児科学会が小児の多剤耐性菌感染リスク増で警告:畜産動物への不必要な抗菌薬の使用により若年患者での致死的感染症における治療薬の効果が脅かされていると指摘する最新の報告書を学会誌に掲載しています。連邦統計データによれば、米国では毎年200万人以上が抗菌薬耐性感染症に罹患し、2万3000人以上が死亡しているとしています。子どもたちは、抗菌薬を与えられた動物への接触やその肉の摂取により、感染すると治療が非常に困難な多剤耐性細菌にさらされているとしています。人間間での抗生剤の過剰使用による薬剤耐性菌問題は有名ですが、実は根が深いのが、人間が使用しなくなった古いタイプの安価な抗生物質が畜産動物の飼育に大量に使われている問題です。経済的な問題でもあり、人間と家畜の感染症が直接リンクしないことから、畜産動物への抗生剤の使用の抑制はなかなか困難な課題です。発展途上国を含む世界の畜産業界への啓蒙になればと思います。
〇米国疾病対策センター(CDC)は、インフルエンザ疑い例では迅速陰性も治療を行うよう勧告:主な勧告は下記の通りです。1、今シーズン、ワクチン未接種者には予防接種を推奨する。生後6カ月以上でインフルエンザワクチンに禁忌でない者は全て該当 2、2歳以下、65歳以上、免疫抑制、慢性病患者などの合併症を引き起こしやすいハイリスク群でインフルエンザ様症状を呈した場合は、抗ウイルス治療の適応かを判断するため直ちに受診を促す 3、インフルエンザ疑い患者における抗ウイルス治療の判断は、検査結果を待つべきではない。迅速診断は偽陰性が多いため、陰性だった場合も必要であれば経験的抗ウイルス治療を遅滞なく行う 4、経験的抗ウイルス治療の適応と考えられる場合は、可能な限り発症48時間以内に治療を開始する。早期治療による臨床的利益は大きいが、48時間を過ぎた場合であっても、重症例や合併症を伴う症例、進行性の疾患を持つ患者に対して利益をもたらす可能性があるとのエビデンスが得られている 5、予防接種歴があっても疑わしい症状があればインフルエンザを除外せずに抗ウイルス治療の開始を検討すべき 私は以前、発熱第1病日つまり発熱が始まった当日の迅速検査陽性率は3割、2日目の陽性率8割との論文を読んだ記憶があります。今シーズンも、3日目でやっと迅速検査が陽性となったお子様を複数経験しました。臨床的な所見を総合するとインフルエンザが極めて疑われるが迅速検査が陰性の場合、10才代以下の小児でもタミフルの服用に際しては異常行動を観察する必要もあり、抗ウイルス薬を投与せずにまず1日経過を見ることが多いのですが、世界的に権威あるCDCの勧告が我が国でも認知されてくれば、我が国でも抗ウイルス薬をより早期から用いる方向になるかも知れません。
〇抗生剤によるせん妄が想定外の頻度と米国神経学会が報告:薬剤によりせん妄が引き起こされる頻度は高いが、せん妄の原因として最初に抗生物質を疑うことは少ないのが現状ですが、研究チームは、入手可能な報告書を過去70年遡り、抗生物質投与後にせん妄等の脳疾患を発症した患者391人の症例報告を特定し検討しています。その結果、抗生物質に関連するせん妄を3タイプ特定し、タイプ1は、突発的な発作が特徴で、多くの場合がペニシリンやセファロスポリンに関連。また、タイプ2については精神病の症状が特徴で、プロカインペニシリン、スルホンアミド、フルオロキノロンおよびマクロライドに関連。タイプ3は脳画像検査で異常所見が認められ、筋肉調整の喪失や脳機能障害などの徴候が認められている。唯一、メトロニダゾール投与に関連としています。私も抗生物質がせん妄の誘因となる認識は無かったのですが、今後は潜在的誘因原因として注意したいと思います。
〇米国救急医学会が知っておくべきギランバレー症候群(GBS)の8つの臨床兆候を紹介:GBSは乳児から高齢者までどの年齢でも発症する稀ではあるが重篤な麻痺を起こす末梢神経疾患で、治療が遅れると呼吸不全や生命も脅かす不整脈を発症することがあります。早期診断が重要ですが、脱力など一般的な症状を呈するだけで、診断のための簡易な検査もないことから、発症初期には見逃されやすい疾患です。GBSは年間10万人あたり1-2人に発症し、死亡率は3-5%に上る。患者の約3分の1には挿管や機械的換気が必要になり、20%には生涯にわたる後遺症が生じる。徐脈を呈することは稀だが、発症した場合は一時的にペースメーカーを要することがあります。救急医が疑うべきGBSの8つの臨床兆候は、・比較的最近(1日から3-4週間以内)始まった脱力 ・脱力は片側よりも両側性であることが多く、左右対称 ・典型なケースでは、脱力は上行性に進行し、「アヒル歩行(鶏歩)」、「階段をのぼれない」、「ベッドや椅子、床などから起き上がるのが困難」などの症状を呈する ・大腿や腰に生じる痛みなどの疼痛は、GBSの早期徴候で、初発症状となり得る ・知覚麻痺、刺痛、蟻走感などの知覚異常が早期に起こる。手足や四肢遠位に起こることが多いが、顔や歯肉にも起こることもある ・深部腱反射の消失または低下は、GBSの顕著な特徴 ・脳脊髄液のタンパク細胞乖離もGBSに特徴的 ・ウイルス性またはその他の感染症(上気道炎、のどの痛み、下痢など)の最近の既往は、GBS患者の3分の2に認められる です。専門的な記載で恐縮ですが、私が注目するのは最後の、上気道炎罹患後に発症するケースが多いということです。私が上気道炎を治療した後に経過をみてGBSと診断して神経内科に紹介したケースは過去に数例のみですが、実際の発生数はもっと多いと考えられます。多くの方は脱力が強くなった時点で内科や脳外科を受診していると思われます。上気道炎後に起こり得る疾患として、私も再度認識を新たにしました。
〇米国癌協会が「減る癌」「増える癌」2016年予測を報告:2009-2012年のデータを見ると、男性では新規癌発症が毎年3.1%減少したが、女性ではほぼ横ばいだった。男性で新規癌発症が減った原因として、前立腺癌の検診に過剰診断率が23-42%と高いと言われるPSA検査が推奨されなくなったことが挙げられている。一方、肺癌の発症は、喫煙者の減少に伴い男女ともに低下。大腸癌の新規発症も急速に減ったが、その一因として検診時に大腸ポリープを予防的に切除できる大腸スコープの普及が寄与したと分析している。一方、2003-2012年に発症率が上がったのは、白血病、舌癌、扁桃癌、小腸癌、肝癌、膵癌、腎癌、甲状腺癌だった。男女別で見ると、男性ではメラノーマ、多発性骨髄腫、男性乳癌、睾丸癌、咽頭癌および下咽頭癌が増え、女性では肛門癌、外陰癌、子宮内膜癌が増加した。
〇米国食品医薬品局(FDA)が未承認の耳科用薬について製造販売停止に乗り出した:ベンゾカインやクロロキシレノールなどを含有する製品だそうです。我が国では未承認の点耳薬はまず流通していません。米国では未承認薬が結構流通しているのでしょうか?
〇米国食品医薬品局(FDA)が小児へのコデイン製品使用の安全性を調査:コデイン含有製品については欧州医薬品庁(EMA)が、呼吸抑制や呼吸困難といった副作用が喘息や呼吸疾患の既往のある小児で懸念されるため12歳未満への使用禁忌を宣言しています。FDAは18歳未満の咳や風邪症状への使用に関する安全性データを調査中とのことです。コデイン含有製剤は本邦でも小児に承認されており、乾性咳嗽には良く効きます。しかし、喘息状態ではコデインは痰の排出困難などで呼吸困難を悪化させる恐れがあります。私も喘息状態への処方は控えています。
〇米国内科学会は一過性血尿の専門医への紹介を勧告:内科学会では肉眼的、顕微鏡的、無症候性の血尿の対応方法を提示しています。特に顕微鏡的血尿では全ての患者に肉眼的血尿の有無を確認しすべきとしています。当院でも溶連菌咽頭炎後の腎炎の確認や、感冒時の尿路感染や脱水、アセトン血性嘔吐症の確認などのために尿検査は行っています。肉眼的血尿は癌と強い関連性がありますので、尿定性検査の際には肉眼的血尿の有無も確実に確認したいと思います。
〇米国神経学会が片頭痛へのボツリヌス毒素の使用を取り上げる:ボツリヌス毒素は、一般の方にはボトックスとして美容外科領域でののしわ取りで有名だと思います。神経学会のこれまでのボツリヌス治療のガイドラインでは、痙縮、頸部ジストニア、眼瞼痙攣が適応疾患でしたが、今回、片頭痛への適応も取り上げました。まだ推奨レベルではないとのことです。本態性震戦、半側顔面痙攣、発声障害に関しても推奨レベルには至ってないとのことです。我が国の耳鼻科関連では、痙攣性発声障害(喉頭ジスキネジア)へのボツリヌス注射が一部の施設で研究として行われていますが、治療法として国の承認を得るまでは至っていません。痙攣性発声障害への承認適応はまだ先のことになりそうです。
〇我が国の溶連菌の薬剤耐性化状況:2004-2008年ではマクロライド耐性が45%、リンコマイシン耐性が6.3%。2009-2013年には、マクロライド耐性が62%に増え、リンコマイシン系のクリンダマイシン耐性も23%まで上がってきたと報告されています。扁桃肥大や慢性扁桃炎の方が繰り返し溶連菌咽頭炎を発症した場合には、除菌不良と健康保菌者化が問題となります。当院でも溶連菌の再発は珍しいことではなく、溶連菌の薬剤耐性の広がりには注目していました。以前からマクロライド耐性が多いのは判っていたのですが、ここ10年でさらに耐性が進み、ペニシリン耐性などでの除菌不良時に用いるクリンダマイシン(ダラシン)への耐性も進みつつあるようです。クリンダマイシンは嫌気性菌に良く効くため、慢性扁桃炎や誤嚥性肺炎に用いられます。私も嫌気性菌による感染が主体と考えられる扁桃炎にはよく用いています。溶連菌への耐性がこれ以上増えないことを願っています。

 
 先日紹介した、松前町の麦畑です。黄金色の穂が畑一杯に広がって、裸麦(六条麦)が収穫を待っています。あぜ道には、花粉の飛散が間近なカモガヤも見られました。

 
 可愛い女の子から四葉のクローバーの押し花のプレゼントです。私の似顔絵も頂きました。私の髪とメガネの雰囲気が良く出ています。診察の前のサプライズ・プレゼントでした。思わず診察の疲れが吹き飛びました。ありがとうございます。(^.^)  
  15日  防音室の工事が無事終わりました。診察中のご協力、ありがとうございました。改修で防音性能が上がりました。また、防音ドアを閉めていても空調が効くようになりましたので、夏場も暑苦しくなく快適に検査出来そうです。
 ここ4日ほど、迅速検査でインフルエンザ陽性の方はお一人もおいでませんでした。今シーズンの流行はゴールデンウィークを超えて続きましたが、ようやく終息が見えてきました。本当に長い長いインフルエンザのシーズンでした。 
  10日  今日から防音室の改修工事が始まりました。早速、診察中に大きな音が漏れて、説明が聞き取れない時もありました。工期は13日までの4日間の予定です。今しばらくご協力の程、お願い致します。
 
 松山の隣町の松前町は、四国における大麦の産地で有名です。大麦の中の、六条大麦や裸麦と言われる品種です。今がちょうど実りの季節で、畑は黄金に色づいています。この大麦も、実はイネ科雑草の植物です。イネ科雑草は共通性抗原ですので、カモガヤなどの花粉症の方は大麦の花粉にも反応する可能性があります。大麦の花粉が飛散するのは、松前町では4月初旬頃です。大麦の産地の松前町住民はイネ科花粉症の人が多い?? 住民を対象とした花粉症の抗体検査をフィールドワークとして行ってみたいです。


新緑がまぶしい松山城です。県立図書館の帰り道でした。爽やかな青空、思わず写真を撮りました。

 
撮りためていた病院の花々をアップします。左の写真は当院お馴染みの玄関に咲くハナミズキです。

  


今年もチューリップが鮮やかに咲きました。このチューリップ、実は、スタッフが昨年の花が終わった後に堀り上げて保存していた球根から咲きました。花が散ってからの球根に十分栄養補給させると、4~5年は毎年花を咲かせることができるそうです。
5月 5日   好天に恵まれ、初夏のような陽気のゴールデンウィーク後半でした。私もゆっくり過ごすことが出来ました。
 スギの飛散は、松山が4月20日に、近隣の山口県が15日に飛散終了しました。シーズン当初、私は二年ぶりの少量飛散の後で、昨年8月前半までが記録的な猛暑だったことから、少なくとも平年より多めの飛散を予想していましたが、どうやら”平年よりやや少ない”総飛散量となりました。ヒノキも昨シーズンが記録的な少量飛散だったことから、それなりの大量飛散を予想していましたが、ことらもスギに続いて少量飛散となりそうです。(^^♪ ゴールデンウィークとともに今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散シーズンは終了です。来シーズンに4年振りの大量飛散となるかどうか、今年の夏の気候に注意したいと思います。
 インフルエンザは4月17日までの週で、ようやく全県下で警報レベルを脱し、注意報レベルの発生となりました。当院でも、連休中盤でもまだ検出されましたが、漸く散見されるレベルとなりました。タイプ別ではほとんどがB型でした。

 連休の中盤、総合病院の耳鼻科に救急として紹介する例が続きました。最初の例は、魚の骨がのどに立った咽頭異物の幼児のお子様でした。大きな骨が舌の付け根(喉頭蓋谷)にありましたが、処置用ファイバースコープはなんとか挿入できたものの、泣くことによる喉頭の動きが大きいために当院での摘出は断念しました。次の例は、出血点が特定出来なかった鼻出血の大人の方です。出血箇所についてのある程度の目星はつきましたが、特定は出来かねました。周囲を広くパッキングし、一旦止血を確認しましたが、残念ながら当日の夜間から再出血が始まりました。耳鼻科医としての外来診療の中でも、出血点が特定出来ない鼻出血は難敵です。特に高血圧や抗凝固剤を服薬中の例では、止血困難や再出血することも珍しくありません。最初の例のお子様は、安全面からは全身麻酔下の処置が望まれました。次の例の方は、出血が止まらなければ入院下での管理が必要となります。患者様には力及ばす、恐縮しきりです。より最善の処置法があったのではと反省しながら、今後の診療の糧としたいと思います。休日や夜間にもかかわらず救急対応して頂いた当直担当医の先生方には、感謝の気持ちを伝えたいです。
     
  27日   ここ10日程、暑かったり肌寒かっったり、晴天だったり急に雨が降ったりと、気温や気圧の変化の大きな日が続きました。気道過敏症やメニエール病、天気痛の増悪した方が目立ちました。愛媛県のインフルエンザの流行は、先週の報告でやっと注意報レベルになりました。当院でも愛媛県感染症情報センターの報告でも、B型9割、A型1割の発生です。明後日からはゴールデンウィーク、インフルも含めてさすがに感染症は激減すると思われます。中学高校の早いところでは、4月から修学旅行です。当院では今のところ、感染症で修学旅行を欠席しなければいけない学生さんはおられないようです。昨年だったでしょうか? 修学旅行の前日にインフルエンザを発症して落胆した女の子の涙が忘れられません。今シーズンも昨シーズンに続き、修学旅行シーズンまでインフルの流行が続く嫌なシーズンです。このまま流行が劇的に収束して、学生たちが皆さん修学旅行に参加できることを祈りながら診察しています。

 今月25日に7万人目の初来院された方を診察しました。平成6年5月の開院後、9年後の平成14年4月に3万人目の方をお迎えし、その後、平成25年1月に6万人目の方をお迎えしていました。3年前にも述べましたが、松山市の人口が約52万人、中予圏の人口が約60万人ですので、住民の転入出はありますが、中予にお住いの方の9人にひとりを診察させて頂いた事になります。このホームページをご覧になったりして県外からの来院される方もおられます。開院以来20年、年間の受診者数もいまだに増えております。恐縮するとともに有り難く思っております。幸いにも開院以来医療紛争などのトラブルなく、私の病欠による休診は1日たりともなく診察を続けることができましたのも、患者様はじめスタッフや当院を支えて頂いている方々の協力の賜物だと思っております。今後の当院がどのような姿になっているのか? 医学や医療情勢が どのようになっているのか? 先を見通すのが難しい時代ですが、これからも私自身の健康にも留意しながら診察を続けたいと思っています。これからも山口耳鼻咽喉科クリニックを宜しくお願いいたします。これも3年前にも触れましたが、私の初心を再確認するためにも、今一度、開院の際に掲げた診療理念を挙げたいと思います。
 1、「説明と同意」の治療を基本とし、医の倫理に反しない。
 2、自己研讃を怠ることなく、常に最新の医学知識、医療技術を提供する。
 3、最短の時間・最少の費用で、最大の効果を上げるべく努力する。
 4、治療に際しては、不安や苦痛を与えない。
 5、安易に薬に頼らず、自然の治癒力を高める医療を実践する。
 6、最善の治療を行うべく、高次医療機関との連携を密にする。
 7、東洋医学の利点を取り入れる。
 8、地域の家庭医として、救急医療に対応する。
 9、病気と薬に関する情報を可能な限り公開する。
 私自身改めて見直し、気持ちも新たに診療に臨む所存です。開院以来、当院に通院される患者様の平均の再診回数は、全国の耳鼻咽喉科施設の平均よりかなり少ない回数を保っています。これからも、当院を受診された患者様が「最短の時間・最少の費用で、最大の効果が得られる」よう、「当院を受診して、安心を得られる」よう、日々、心掛けていきたいと思います。  
  20日  桜が散り、松山ではハナミズキが咲き誇っています。4月中旬を迎えてもインフルエンザの流行が続いています。先週、私は診察中に「さすがに今週はインフルの流行は注意報レベルに格下げでしょう」とお伝えしていたのですが、先週も愛媛県では全域で警報レベルのままでした。ゴールデンウィークを前にした今も、急に発熱した患者様にはインフルエンザの迅速検査を行っています。小さなお子様は嫌がって泣いてしまいます。本当に悩ましいシーズンです。

  頬粘膜粘液嚢胞 小脳失調など 
  9日  新年度にあたって新しく保育園に入園したお子様も来院されます。耳鼻科医として保育園入園が悩ましいのは、免疫力の十分でない幼児が初めて集団生活を行うということです。入園後直ぐに風邪に罹かってしまうことも珍しくありません。早く集団生活した方が社会性が身につくという意見もあります。風邪はこじれなければよい訳で、様々な病原菌に対する免疫を獲得するのも子供の仕事ですので、早期に病原菌に対する抵抗力をつけるのも悪くはありません。しかし、中耳炎になりやすいような耳の弱い幼児が頻回に風邪に罹り、その結果、耐性菌を保菌するようになると、反復性中耳炎や遷延性中耳炎を起こしやすくなりますので、このような意味で耳鼻科医としてはなかなか悩ましいのです。保護者の方の視点で悩ましいのは、風邪に罹った場合に保育園に預けるのを休まなければならないことでしょう。急な熱発などでは、お仕事を早退してお迎えに向かわなくてはなりません。その際に頼よれるのが病児保育施設です。中予地域でも徐々に定員は増えていますが、風邪の流行期には利用できないケースもみられます。集団保育を受ける子供たちが、出来るだけ保育園を休まずに済むように、また、健やかに成長することを祈りながら、診察しています。
  8日  昨日の春の嵐のせいで桜も散り始めました。今日は学校の始業式です。入学式の後に当院を受診された新1年生達には「入学おめでとう!」とお祝いのメッセージをお伝えしました。 
 4月に入っても県内全域でインフルエンザは警報が続いています。県内のタイプ別の報告では、3月はB型が70%でしたが、4月には88%です。当院でもここ1週間はB型の方がほとんどです。4月まで警報レベルの流行が続く特異なシーズンとなりました。

 「メルトダウン 連鎖の真相」 NHKスペシャル”メルトダウン”取材班著 2013年、「福島第一原発事故 7つの謎」 NHKスペシャル”メルトダウン”取材班著 2015年、「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日」 門田隆昌著 2012年 の3冊を読みました。私は、福島第一原発の事故の情報は、折々のNHK特集の番組で見る程度だったのですが、第67回文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門大賞受賞のシリーズ「メルトダウン」を、「メルトダウン 連鎖の真相」では豊富な写真や図を駆使して視覚的に分かりやすくまとめています。「福島第一原発事故 7つの謎」では、東電の原子力部門のトップで事故時に本社で指揮を執った武藤栄氏への初めてのインタビューも掲載されています。これらを読むと、3つの原子炉が同時多発的にメルトダウンするという未曾有の事態に見舞われた原発事故の時系列の流れが良く分かりました。当時の菅総理が原発に直接視察に行き、また東電本社に直接乗り込むといった行動のタイミングや、米国が在留アメリカ人に対して原発から半径80㎞以内からの退避勧告を出したタイミングにも、ある程度納得しました。東電の協力企業の社員で遺書をしたためた人もいました。東電社員だけでなく協力企業、警察、消防、自衛隊、命をかけた人たちの尊いドラマでもありました。
 医療者の目から見ると、原子炉格納容器を包むドライウェルという容器から圧を逃がすベントが100㎜つまり0.1シーベルトの放射能レベルに阻まれてできなかったのですが、医療の現場では、心臓カテーテル検査や脳動脈瘤のカテーテル手術では一度に2シーベルトの放射線を浴び、複雑な心臓血管手術ではさらに高レベルの放射線を浴びます。チェルノブイリ原発事故で石棺を作る作業に当たった軍人達の多くがその後亡くなったことから、拙速な被爆環境は許されませんが、シビアアクシンデント時にどのレベルまでなら一時的な被爆が許されるのか、医学的な再検証も必要と思われました。
 この原発事故で私が怖かったのは、原子力委員会の近藤駿介委員長が私人の立場で作成しその後官邸内でも機密扱いとされた「不測事態シナリオ」の内容です。メルトダウン→原子炉格納容器の破壊→作業員総退避→使用済み核燃料プールの燃料溶融 まで至れば、原発の半径170㎞までがチェルノブイリ事故の強制移住基準に相当し、250㎞圏内までが住民が移住を希望した場合の汚染地域になるとしています。250㎞圏内となれば、都心はもとより盛岡~秋田~長野~横浜までが含まれ3000万人以上の人が退避の対象となり、文字通り日本は3分割されます。小説「日本沈没」の如く国外移住の必要性にも迫られるところでした。様々な条件が重なって全電源喪失→3機のメルトダウンとなりましたが、逆に、幸運な条件が重なって最悪のシナリオも避けられました。しかし、なぜ避けられたのかの実態が、現在も事故現場で続く放射能汚染のせいで未だに判っていないのです。また、さらに私が最も怖いのが戦争事態です。本では、原子炉建屋が水素爆発した直後を見た東電社員が、”まるで空爆を受けたみたいだ”との印象を語っていました。もし原子炉格納容器に弾道ミサイルやトマホークミサイルがピンポイントで突っ込んだら、そこまで高度な武器でなくても、戦闘機からあるいは地上や海上戦力によるミサイルで原子炉建屋の屋上が破壊され使用済み核燃料プールの冷却が出来なくなったら、、原子力発電所一カ所への攻撃だけでも日本は壊滅的打撃を受けますが、2~4カ所に同時に攻撃されれば日本はほぼ全域で居住が不可能となってしまいます。各原発施設がミサイル攻撃を防ぐためには、それこそ半径数十キロレベルの防空圏を設定して侵略機にはスクランブル発進だけでなく高精度なミサイル迎撃システムも必要になります。福島原発の事故による全国の原発稼働停止のために、化石燃料の輸入が増大して日本の国富が年間数兆円余分に失われるようになりました。私はこれまでは、なにげなく代替エネルギーが確保されるまでは原発稼働もやむなしと感じていましたが、もし原発を攻撃目標とする戦争事態が起これば、核兵器による”短期的”な影響よりもさらに恐ろしい”広範囲”かつ”数十年にわたる長期的”な破壊を日本が受けることになります。自然災害による原発事故以上に、テロや戦争事態による原発攻撃が怖いです。
4月 2日   四月、新年度入りです。診療報酬改定にともなうレセプト・コンピューターの更新も無事終わりました。レセコンソフトの更新による目立ったトラブルは無く、ホッとしています。3月末の全日空に引き続き、昨日は日航の運行システムでもトラブルが発生しています。コンピューターシステムでは、どれだけ確認しても意図しないバグが潜みます。複雑すぎて全貌の解明がまだまだ不可能なファジーなシステムの人体などの生物では、意図しない現象が起こっても我々医師には”どうしようもない”との逃げ道があるのですが、コンピューターソフトの世界では逃げ道はありません。トラブルが発生した際のプログラマーの方の心労は大変だと思います。今回の改定の内容ですが、耳鼻科の外来関連では大きな変更はありませんでした。窓口での負担金額もほとんど変わりません。(^^♪
 松山市内の桜は5分咲といったところでしょうか。今日の当院は朝から暖房無しでした。昼からは蒸し暑いくらいで、窓からの外気が心地よかったです。春休み後半入りですが、まだまだインフルエンザの発生が目立っています。
 3月にお薬の、リゾチーム製剤などの坑炎症・蛋白分解酵素製剤の販売中止が決定しました。蛋白分解酵素製剤は、ムチンと呼ばれる糖蛋白を主に分解して痰の切れを良くします。そのお薬の中の”ダーゼン”が、プラセボ(偽薬)と比較して有効性がないことからメーカーが2011年に自主回収していました。”エンピナース”と”レフトーゼやノイチーム”も、有効性に係る再評価指定を受けて2012年から再評価のための臨床試験を行っていましたが、医療上の有用性が無いとの結論がでました。これらの製剤は、副鼻腔炎や気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症で広く用いられていましたので服薬された記憶がある方も多いと思います。今になって”有用性がない”とはどういうことでしょうか? 関連分野の医師が20年以上自信をもって処方していたお薬だったはずでした。やはり、過去の臨床試験の評価が甘かったと言わざるを得ません。臨床治験だけでなくその前段階の動物実験も含めて評価にバイアスがかかっていたのでしょう。私も投薬後の局所所見を見る際に、知らず知らずに良くなったと欲目で判断していたかもしれません。薬剤の有効性を評価する上での、今後の教訓にしたいと思います。
         
  23日  桜の開花が、20日に宇和島で、今日松山で宣言されました。道後温泉のソメイヨシノの標本木はお花見会場の真っただ中にあります。道後公園では開花宣言された桜を愛でながらお花見ができます。(^^♪ 明後日には学童の終業式、春休み入りです。耳鼻科の目で見れば、風邪が流行らず、小児の中耳炎が治るいい季節はもう直ぐです。インフルエンザはB型を中心にめだ発生は目立ちますが、流行のピークは2週間前に過ぎたようです。花粉の飛散も少なくなってきました。ただしシーズン後半期で、花粉の刺激が続いた方の中には、鼻閉が強くなったケースも目立っています。 

 
 春分の日、陽光に釣られて興居島の小富士山へ低山トレッキングしてきました。愛媛新聞の情報誌アクリートに低山トレッキングのコーナーがあり、県内のハイキング・コースが毎回紹介されています。ふと覚えていた記事につられてのハイキングです。興居島は忽那諸島の一番松山寄りにあり、高浜港からは直ぐ眼前に見えます。左の地図の左下隅に由利島があります。日テレ日曜日放映中の「鉄腕ダッシュ」でロケされている”ダッシュ島”です。右地図は地元の小学生達が作成した小富士山登山の案内図です。フェリーターミナルの待合室に展示されていました。なんとも微笑ましい地図に案内されて登山開始です。

  
 興居島の泊港の目の前に、興居島最高峰の小富士山海抜282mの小富士山が見えます。登山道では、まず昭和の雰囲気を残す民家の間の狭い路地階段を通ります。


 続いてミカン畑の中を縫う様に通っていきます。愛媛らしい登山です。

 
 山頂には石鎚神社があります。高浜港を始め三津の町が眼下に広がります。松山城や総合公園、空港も遠望できます。登ってみると松山城よりは結構高い印象です。当初、松山城に登る程度の気持ちでいたのですが、登山道は長さ700m足らずですが、ほぼ直線的に登っていきますので急傾斜の道が続き、結構きついです。私は休み休みの登山を余儀なくされました。(-_-;) すれ違うハイカーとは「この先まだまだきついですよ」「頑張ってください」などなど、挨拶の会話が弾みます。山頂の反対側に回ると西に海が広がります。右手に釣島、正面に由利島(ダッシュ島)、奥には山口県の周防大島が遠望出来ます。ダッシュ島について調べていると ダッシュ島の場所はどこにあるの?由利島が選ばれた本当の理由 というサイトがありました。そこから関西学院大学社会学部の論文がリンクされていました。由利島の民俗学的研究です。由利島が”困窮島”だということへの論説です。興味のある方は覗いてみて下さい。



 フェリーターミナルには島の住民達が持寄ったお雛様が飾られていました。写真は一部で、かなりの数で、賑やかな”桃の節句”でした。
  16日  春です。これから週末にかけては暖かなお天気との予報です。明日明後日が小中学校や幼稚園の卒業式卒園式のピークです。今週もインフルエンザは増えている模様です。保育園いよっては今が学級閉鎖のピークの施設も多いようです。このままいけば卒業式シーズンまでインフルエンザの発生増え続ける特異なシーズンとなりそうです。インフルエンザに罹って卒業式卒園式に出られるか心配する子供たち、卒業式に参列できるか心配する保護者の方、声がれが強く祝辞を綺麗に読むことができるかどうか心配される先生方、当院での診察に際しても、さまざまな立場での不安を訴えられます。。出来る限り早く症状がほぐれるように祈念しながらの診察です。年度末を控え転勤・転校するご家族もおられます。特に滲出性中耳炎が遷延化しているお子様に関しては、転居先でスムースに治療を継続できるよう紹介状をお渡ししています。スギ花粉飛散のピークはどうも先週の月曜日3月7日となりそうです。とすれば、今シーズンの飛散量は昨年の2倍はあるが平年並みかやや少ない程度になりそうです。来年が本格的な飛散の表年、大量飛散のシーズンとなりそうです。

 坊ちゃんスタジアムのある松山中央公園へのアクセス道路脇に余土中学校の第三グランドがあります。新年度に現校舎から移転する予定ですが、新しい校舎を覆う幌が取り除かれて、新校舎が姿を現しました。体育館も含めて統一感のあるおしゃれでモダンな建物です。現校舎は市道で3分割されて体育館や第二グランドへの移動へは一度校外に出なければいけませんでした。また部活や運動会は600m離れた第三グランドで行われていましたので、安全上の面からも校舎の移転統合が望まれていました。現第三グランドへの移転案は、当初、中学校が先に移転すれば競輪場が松山中央公園に移転できない、グランド上を特別高圧線の送電線が走るため電磁波の影響が心配(四国電力によると針田のNHK中波ラジオ送信所の発生する電磁波よりはるかに少ないとのこと)などの問題もあったようですが、約30億円の予算をかけての移転が最終段階となりました。国道56号線からもモダンな校舎が見られます。松山中央公園への取り付け道路周囲は一気におしゃれになりました。これまでは人通りの少ない地区でしたが、来年度からは中学生の登下校でにぎやかになりそうです。
  12日   今日の9時過ぎに診療予約システムがアクセス過多で一時的につながり難くなりました。 年に一二度、全国の病院が込み合いアクセスが集中するとこのようなトラブルが起こります。幸い、当院の予約受付開始時刻は午前9時30分ですので、サーバーに負荷がかかる時間は過ぎていることがほとんどのために、今回も当院利用の患者様には不都合はありませんでした。今日は、インフルの流行と花粉症シーズンが重なった土曜日でしたので、全国的に小児科耳鼻科が込み合っていたのでしょう。
 診療報酬改定の資料に目を通してみました。介護やかかりつけ医制度に縁が薄く、入院の無い耳鼻科クリニックでは、劇的な影響はありません。当院外来で少し影響すると思われたのは、「医薬品適正使用の推進」に関しての「長期投薬の取扱いの見直し」です。30日以上の長期の投薬は”長期の投薬が可能な程度に病状が安定し、服薬管理が可能である旨を医師が確認するとともに、病状が変化した際の対応方法及び当該医療機関の連絡先を患者に周知する”となり、上記の条件を満たさない場合は、30日以内の再診、200床以上の保険医療機関は200床未満の病院や診療所に紹介する、服薬管理が難しい場合には分割指示の処方箋を交付する などの対応を行うことが求められるようになります。また、他の項では、残薬がある場合には確認すべし、向精神薬を複数投薬した場合の減額率を引き上げる、定期処方してきた薬剤の種類を減らせば加算が得られる、うがい薬に続いて湿布薬にも枚数制限を設ける などの改定もあります。お役所言葉で判りにくい表現ですが、今回の改定で厚労省は、”むやみやたらな長期処方や過剰投薬の制限を、特に大病院に求めている”ということでしょう。病状に変化のない慢性疾患以外は30日処方まで、が医療制度上の標準になりそうです。
  11日  スギ花粉の飛散が落ち着き、当院外来もやや落ち着きました。(^^♪ 昨日は病院にホトトギスの鳴き声が聞こえました、日も長くなり日一日と春の訪れです。松山大学の観測データでは、ヒノキ花粉の初観測日が3月9日となりました。イネ科雑草花粉も観測され始めています。花粉飛散から見た季節も移ろっています。

〇本朝、遠足に向かう小学生の一団とすれ違いました。耳鼻科の私は、一団の中にマスクを付けている子供を見かけ、花粉症対策が出来ているのかな、インフルエンザ対策ができているのかなと、安心して見送ることができました。
〇今日は当院の玄関先で蚊を見かけました。この時期に、、と思っていたところ、診察ではおでこを蚊にさされたお子様を見ました。暖冬のせいで今年は蚊の繁殖が早まっているのでしょうか?
〇鼻アレルギー診療ガイドラインが3年に改訂となり2016年版となっています。今回の改定では、1、鼻噴霧用ステロイド薬の初期からの導入 2、中等症以上の鼻閉例で抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤の推奨 3、花粉症の中等症以上で、鼻噴霧用ステロイド薬+第2世代抗ヒスタミン薬+ロイコトリエン受容体拮抗薬またはプロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬の3剤併用療法または鼻噴霧用ステロイド薬+第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤との併用療法を推奨 4、舌下免疫療法を治療選択肢として位置づける などが主な変更点です。私にとっては、点鼻ステロイド薬を初期治療からの推奨に組み入れたのが注目点です。これは「minimum persistent inflammationの考え方から初期の炎症から使用することで飛散ピーク時の症状増悪を抑制できる」との理由からですが、やはり点鼻ステロイド薬は良く効きます。喘息や咳喘息、COPDなどの下気道疾患では、気道炎症「修復」と「再構築」を行うリモデリングという概念が1992年に提唱され、吸入ステロイド薬の有用性が広く認識されて、小児も含めて、気道のリモデリング作用のある吸入ステロイド薬が広く用いられています。点鼻も含めて吸入ステロイド薬は全身投与と異なりほぼ安全に使用できます。新たに開発された高力価(作用の強い)のステロイド薬でなくとも、従来からの薬でも十分な効果が得られます、薬価が低いことから対費用効果も高いです。私も中等症以上の方には、鼻噴霧用ステロイド薬+第2世代抗ヒスタミン薬+ロイコトリエン受容体拮抗薬またはプロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬の3剤併用を薬物治療の主体としています。

 東日本大震災発生から5周年を迎えました。震災当日、私はいつものように情報から隔絶されて診察を続けていましたが、待合室のテレビを見たスタッフから”大変なことになっているようです”と伝えられ、言い知れぬ不安がよぎったことを昨日のように思い出します。福島第一原発では、1号機の水素爆発に続き3号機が水素爆発しました。その後トラブルが前面に出たのが2号機です。そして2号機が我が国史上最悪の危機に瀕していました。もし原子炉容器への水の注入がもう少し遅くなっていれば、メルトダウンで格納容器が破壊されていました、、、政府は最悪時には”原発から半径170㎞圏内の強制避難と250㎞圏内の避難勧告”を想定していました。そうなれば首都圏を含む3600万人が避難しなければならず、まさに東日本崩壊、国家崩壊の危機の瀬戸際でした。原発事故では幾多の不運が重なりましたが、また髪の毛1本の際どさで幸運も重なりました。今この時に国が機能している幸せをかみしめながら、粛々と復興を進め、また、そう遠くない時期に必ず来るであろう数百年に一度の規模の南海トラフ地震や富士山噴火に備えたいです。
  10日  今日の診察も込み合いました。お待ち頂いた患者様とスタッフの皆に感謝です。昨日のツイッターみたいな書式、軽快に書き込めて私も気に入りました。今日は第二弾です。

〇花粉症飛散のピークを迎え、”花粉症デビュー”の方も目立ちました。スギ花粉症かどうかの確認や、ヒノキ花粉が準備状態でないかどうか、ハウスダストや好酸球性の過敏症が隠れていないかなどの確認のために、必要に応じて鼻汁好酸球検査や血液検査による抗体検査RASTを行っています。
〇花粉症の症状の発現様式も個々人で様々です。鼻粘膜の感受性が強い人、鼻中隔湾曲症や慢性副鼻腔炎、ハウスダストアレルギーの合併で鼻閉が強くなる人、春季カタルなど目の反応が強い人、顔面皮膚の反応が強い人、咽頭痛や咳などの症状も出る人、耳管狭窄や耳の掻痒感などの耳症状の出る人、インフルエンザなどの感染症が重なった人、ドライバーや学生で内服薬で眠気が出ては困る人、過去の服薬で眠気や倦怠感などが出た人、妊婦さんや授乳婦さん、医療費の負担が気にかかる方など、様々な方がいます。この時期の外来はどうしても診察時間が制限されますが、個々人の症状や要望に応じたオーダーメイドの治療を心がけたいと思います。来院された全ての方に満足頂けるのが目標です。
〇スギ花粉症への舌下免疫療法シダトレンが始まって1年半、今シーズンの大量飛散期に効果が判ります。当院で舌下免疫療法を行っている方は、今のところ強い症状の出ている方はいません。総じて有効な印象です。今後出てくるであろう学会報告の効果判定でも有効性が期待できそうです。
〇B型インフルエンザを発症した方を見ると、予防接種を受けたにもかかわらず高熱が出る方、抗ウイルス剤の吸入を行っても発熱が遷延する方、病期の後半に再度発熱して二度熱となる方がA型インフルエンザよりも目立っています。今年流行のB型の株と予防接種の株の一致率が気になっています。
〇小児滲出性中耳炎の治療ガイドラインによると、諸外国からは、中耳炎罹患児は塩素消毒されたプールでの水泳よりも入浴を制限するべきとの論文が発表されています。我が国では水道水は飲用できますが、外国では水道水は飲用せずにミネラルウォーターやワインを飲用する地域もあります。日本の水道水が清潔なことを、こんなところからも再確認できます。
〇耳鼻科と認知症、接点が無いようで意外な接点があるとの報告が東京医科大高齢診療科羽生教授からありました。アルツハイマー病では感音性難聴や嗅覚障害が前駆症状となり、アルツハイマー病の半数以上に嗅覚障害があるとされています。同じくレビー小体型認知症やパーキンソン病でも、嗅覚障害が前駆症状となります。加齢により嗅細胞は減少しますが、アルツハイマー病では海馬などの大脳辺縁系が初期から障害されることから、大脳辺縁系の嗅神経が障害されて嗅覚障害が早期から発現すると考えられているとのことです。また、レム睡眠行動障害は、10~15年後にパーキンソン病や認知症を発症する可能性も高いとのことです。嗅覚障害のある高齢者や睡眠障害例では、認知症の存在にも留意して診療を進めようと思います。同氏によれば認知症の簡易診断法として、”昨夜の夕食の献立を尋ねる”ことを紹介しています。1品しか答えられなければ認知症の疑いがあり、1品も答えられなければ認知症を疑うとのことです。これなら簡易スクリーニングとして、耳鼻科診療の中でも活用できます。
  9日  連日、外来が込み合っています。私も少しリラックスで、、今日は徒然なるままに書き留めてみます。

〇一昨日7日にスギ花粉の大量飛散がありました。昨年ピークの2倍ですが大量飛散の年ほどの大量飛散ではありません。今週末に寒波とのこと。一昨日が飛散のピークで平年並みの飛散で終わるでしょうか?
〇二年振りの改定となる平成28年度の診療報酬改定が確定しました。介護領域やかかりつけ医領域で大きな変化がありますが耳鼻科外来では大きな変化は無さそうです。それでも4月1日にレセプト・コンピューターが正常に稼働するかどうか、少し不安です。
〇インフルエンザの流行はまだピークが見えません。当院の診療の印象からは今週も流行は広がっているようにも感じます。 春休み前まで流行が広がる?なら例年にない流行のパターンになります。
〇初冬を中心に流行するRSウイルスが年末を中心に過去最高に流行しましたが、3月に入りさすがに流行は収束傾向です。代わって春はヒト・メタニューモウイルスの発生が増えます。当院でも今日初めて幼児の発生が見られました。
〇インフルエンザのワクチンが今年から4価と従来よりB型2系統とワクチンに入るタイプが増えました。おかげでワクチンの値段が上がったために接種費用が値上がりしました。子ども3人全員接種していたらお金の負担が大変なので、、と接種を見合わせたとの声を聴きました。確かに家族全員が特に小児が2回接種すると負担はばかになりません。接種を受けるか否か、対費用効果でも様々な意見があります。
〇当院設備面での話題では、在宅の睡眠ポリグラフ検査装置を増設します。これまで2台で稼働していましたが、検査待ち頂く場合もあり1台増設することとします。聴力検査室の防音補強工事を行います。経年変化もあり防音ドアなどの防音能力が落ちてきていました。より正確な聴覚検査を行うために工事を行いたいと思います。なお工事は診療しながら行う予定です。
〇病院前の県道の舗装が補修されました。新しいアスファルトが気持ちいだけでなく、今回の工事では病院正面の三徳電気さんの前に横断歩道が新設されました。踏切の出口前後に停止線も引かれました。当院前は電車の踏切を跨ぐ5差路になっています。また線路が微妙にカーブしているために踏切を出た車の見通しが良くありません。出合い頭の事故がままあり、そのような際には当院も診察を中断して怪我人の確認や応急手当に出向いていました。これから事故が激減することを祈っています。
〇小児科の専門雑誌から原稿執筆依依頼がありました。臨床医となって久しく、論文執筆は久々です。先だって「口蓋扁桃とアデノイド肥大」の原稿を編集室に送りました。後は校正を待つのみです。ここしばらく診療に時間が捕られていましたので、締切より早めに投稿を済ませて良かったと、ホッとしています。
〇私はよく外来で「冬に罹った子どもの中耳炎の9割がたは春休みに治る」とお伝えしています。暖かくなり、新しい風邪に罹ることがなくなることから、鼻炎の改善とともに、滲出性中耳炎や急性中耳炎の滲出性中耳炎へ遷延化したタイプの中耳炎が治っていきます。この冬に罹った中耳炎がなかなか治らないお子様がやっと治ってくるのを見ると私も元気が出ます。ただし、逆に1割のお子様が治りません。どのタイミングで鼓膜切開を行ったり鼓膜チューブを留置するか? これから桜の時期は悩ましくもあります。
〇今シーズンの松山の梅の開花は12月28日で例年より9日早いとのことでした。しかし梅の満開は例年並みでしょうか。堀之内の梅も今が満開のようです。エルニーニョ現象による12月から1月前半の記録的な暖冬(おかげで冬物衣料の売れ行きは極めて低調)、逆に、1月下旬は記録的寒波の到来。このメリハリのある気候のせいで、インフルエンザやスギの飛散が遅くなっているのでしょう。花粉症とインフルの流行が3月に入って同時重なる、、調子の診療ペースの乱れる冬でした。
〇大学受験も終わり、高校の卒業式も終わりました。残すところは今日明日の公立高校受験のみです。当院では今のところ受験日のインフルエンザ発症は聞いていません。(私の耳に入っていないだけであるとも思いますが、当院を受診した方がこじれていないと希望的に思いたいです(^-^; ) 受験生の中3生の皆さんが実力を発揮できることをお祈りしています。 小さい子供さんに目を向けると、幼稚園では発表会が、小学校でも春の遠足の季節となりました。インフルエンザで発表会に出られなくなった、、花粉症で目が腫れてIいるのに明日遠足だ、、などなど、全ての子供達が快調にというわけにはさすがにいきません。(-_-;) 
〇日本アカデミー賞の授賞式が放映されていました。米国のアカデミー賞の発表も終わりました。そういえば最近、映画館に足を運ぶ機会が減っています。キネマ旬報も少しご無沙汰です。いつかは脚本を書いてみたいという私の若かりし夢は、夢のままです。授賞式をみていると、また映画が観たくなりました。米国アカデミー賞の発表で私が一人で盛り上がったのは、脚色賞の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』、実は以前に原作を読んでいました。サブプライムローンの破綻に賭けてリーマンショックで巨万の富を得た面々のノンフィクション小説です。今年に入ってのリセッションは後々どんな名前が付けられるのでしょうか? 逆オイルショック、米国利上げショック、中国不況ショック、、、リーマンショックの起点の米国がほぼ完全雇用に近づき、リーマンショックで世界を助けた?中国が過剰在庫に喘いでいる、経済は多かれ少なかれ循環します。
  6日  インフルエンザに対して坑ウイルス薬を投与したにもかかわらず、解熱しないケースや再度熱発して二度熱となるケースが見られます。当院でもシーズン当初に成人の方でタミフルを服用したにもかかわらずなかなか解熱しないケースが続いた時がありました。そんなこともあり私は例年以上に坑インフルエンザ薬耐性株の存在が気になっていました。一昨日3月4日に国立感染症研究所から今シーズンの耐性株に対する速報がでました。それによるとA2009年型で1%でタミフル耐性が見られた以外は、A香港型、B型ともに、また吸入薬のリレンザ・イナビル、注射薬のラピアクタには耐性株は見られていないようです。どうやら耐性株の拡大はないみたいで、私も安心しました。
3月 5日   3日は桃の節句かつ「耳の日」でした。今日は啓蟄、松山の最高気温は20℃を超え暖房がいらない陽気でした。インフルエンザの流行が続き、花粉の飛散が本格化してきたことから、ここ1週間ほど、当院の診察終了時間がかなり遅くなっています。お待ち頂いた皆様のご理解に感謝するとともに、連日のハードワークにもかかわらず笑顔を絶やさないで診療に向き合っているスタッフにも頭の下がる思いです。
 インフルは、B型>A2009年型>>A香港型で流行しています。クラス内や家庭内でA型B型が混在するケースもあります。インフルの1シーズン2度罹りも見られ始めました。A2009年型はソ連風邪やスペイン風邪から変異した部分が多いインフルです。今シーズンこれまでは高齢者で反応の強い発症は少ないです。
 今週一杯暖かな陽気が続きます。スギの飛散時期に連動する梅も見ごろを迎えました。スギ花粉の飛散は今週後半がピークとなりそうです。ここ2シーズン、花粉自動測定器ポールンロボの感度が鈍いようです。当院設置のロボだけでなく各地のポールンロボも同様の観測結果ですので、”ダーラム法などの正式な花粉測定データより測定値が低い”としてデータを見なければいけないようです。

  下鼻甲介高周波電気凝固、鼻茸摘出術など。
     
  29日  スギ花粉が昨日、1回目の大量飛散だったようです。今日の診察は花粉症の方とインフルエンザの方で込み合いました。お待ち頂いた患者様にはご迷惑をおかけしました。診察へのご協力ありがとうございました。 
  25日  今週に入り、インフルエンザの発生が増え、スギ花粉の飛散が本格化し始めました。昨日までの当院でのインフルの検出割合はA型45%、B型55%の割合でしたが、今日は95%がB型でした。

  中間神経痛、急性顎下腺炎など。
  17日  椿まつりが終わりました。今年は本当に”椿さんとともに花粉症が始まり、インフルエンザがピークを迎えました” スギ花粉が松山大学のデータでは2月11日に飛散開始となりました。インフルエンザは2月15日に全国的な警報入りとなりました。インフルのタイプ別では、シーズン当初はA香港型とA09年型が主体(愛媛ではA型が93%)でしたが、シーズンピークの現在は、A09年型>B型>A香港型で発生し、特に2009年に新型として発生したA2009年型が3年振りに流行しています。2シーズン、世界で報告の少なかったタミフル耐性株ですが、今シーズンの発生が私は気になっています。
 リレンザとイナビルの15年8月の添付文章改定では、乳製品に対して過敏症の既往を有する患者には慎重投与となりました。この改定の根拠となった症例が紹介されています。10歳未満の小児2例で、1例で吸入後のアナフィラキシーと気管支痙攣、1例で嘔吐と下痢の誘発が報告されています。当院でも牛乳アレルギーの既往のあるお子さんにリレンザやイナビルを吸ってもらうケースも時にあります。慎重に処方するとともに、吸入後のアレルギー症状の発症に注意したいと思います。
  13日   今日、松山では春一番が吹きました。明日から椿まつりが始まります。松山の花粉症は”椿さんとともに始まり”、松山のインフルエンザは”椿さんの頃に流行のピークを迎えます”。 来週には本格的なスギ花粉の飛散が始まりそうです。ここ数日、当院のインフルエンザはA型B型混在して見られますが、B型の方がやや多いようです。例年2月上旬が流行のピークとなりますが、ピークの時期にB型の方が目立つシーズンも珍しいです。インフルエンザの迅速検査で陽性と判定できるのが、発熱初日が3割、2日目で8割との報告もありました。今日の診察で、他院の検査で2日続けて陰性で、発熱3日目にB型が陽性となった小学生を診ました。検査のタイミング、検体採取用綿棒の擦過方法などに注意しながら診察を進めます。
  11日  インフルエンザの流行が松山市内全域に広がってきています。先月もお伝えしましたが、これまでA香港型、A2009年型、B型の混在した流行でしたが、全国的にも愛媛でもA2009年型が頭ひとつ増えてきているようです。ここ二日程で、A型が陽性の大人の方2名、同じくB型の大人の型1名で、タミフルを服薬して2日経っても体温が38度以下に下がらない方を診ました。3シーズン前のA2009年型が流行していた当時には、A2009年型のタミフル耐性、B型のタミフル耐性が日本でも世界的にも検出されていました。その後の2シーズンは日本でも世界でもタミフル耐性の報告がありませんでした。インフルがタミフル耐性株で無いならば、成人ならばタミフルが全身的に作用することから、吸入タイプの坑ウイルス薬よりも全身倦怠感や筋肉痛、消化器症状に有効な印象があります。そのため今シーズンは、成人に坑ウイルス薬を投薬するケースでは、まずタミフルを第一選択枝としていたのですが、ひょっとすると3シーズン振りにタミフル耐性株が流行してきているのかもしれません。今後の研究機関からの報告に注意したいと思います。
 今週に入り花粉を感じ始めた方が目立ってきました。スギ花粉の飛散状況についてですが、毎日飛散状況を公表している新居浜の十全総合病院では2月3日が飛散開始日に、山口県医師会のデータでは2月8日が飛散開始日となりました。松山大学のデータでは2月8日が飛散開始日にわずかに及ばずの飛散量でした。当院ポールンロボのデータでも2月5日より観測数が増えていることから、当院でのスギ花粉の飛散開始日は2月5日とします。松山大学の観測による松山の正式な飛散開始日は今週後半になりそうですので、私の当初の予想に反して、例年より遅めの飛散開始日になりそうです。


 松山の一大イベント、愛媛マラソンがこの日曜日に終わりました。当院でも、出場前に風邪気味で体調の悪化を心配して来院された方、マラソン出走後に体調不良となって来院された方など、出場ランナーの方も来院されました、ということで当院の診療でも少しは愛媛マラソンの雰囲気が伝わります。聞くところによると、愛媛マラソンは数あるマラソン大会の中でも沿道の応援が途切れないとのこと。ランナーの皆さんはゴールまでずっと励まされることで、元気が出るんでしょうね。マラソン大会の最中、私はずっと診察中ですので大会自体の雰囲気は伺いしれなかったのですが、今年は初めてテレビ中継を録画して後ほどみました。ランナー達の笑顔や汗を見ていると、私もなんだかうらやましくなりました。友人知人の完走の報を聞くと思わずおめでとう!と私も嬉しくなります。いつかは私もエントリーをとも思いましたが、ふと我に返ると、、とても完走できる体力はありません。(-_-;)
 写真はスタートの準備が始まった県庁前です。スタッフの皆さんが手際よく、道路に誘導用のコーンを並べていました。大会運営、交通整理、医療などなど、スタッフの方たちのしっかりした準備や対応にも頭が下がります。
2月 4日   今週に入り初期治療薬を希望する方の来院が急に増えましたが、スギ花粉が毎日飛散し始める「飛散開始日」はまだのようです。当院のポールンロボでも、年末年始のほうが少量ではありますが飛散していました。昨日発表の桜の開花予想では四国は例年よりやや遅くなるとのことでした。先月私は、飛散開始日は1月下旬だろうと予想していましたが、この度の寒波の影響が大きかったため、桜の開花予想同様、飛散開始日は予想より遅れ、例年並みの2月初旬になりそうです。初期治療薬同様、レーザー治療を希望する方も目立ちます。レーザー治療では照射後10日程は鼻粘膜にかさぶたが付いて鼻詰まりが強くなります。そのためレーザー治療は花粉が本格的に飛散する前に終わらせるのが原則です。本格飛散前の今週までが、レーザー手術を行うタイミングです。

  扁桃縮小手術、唾液分泌機能低下など。
     
  30日  先週までの集計で、インフルエンザの流行が全国レベルで注意報入りとなりました。流行入りの時期は年明けで、9年振りの遅いシーズン入りでしたが、注意報入りの時期は例年並みでした。発生の多い県は新潟、沖縄、青森、千葉、福岡で、流行は全国的に広がっているようです。愛媛県で検出されたインフルエンザの型は、9月の松山市の中学校がA香港型、1月18日に学年閉鎖となった宇和島の小学校はA2009年型でした。今年は愛媛でも3年振りにA2009年型(当時の新型)が流行しそうです。09年型はAソ連型とブタインフルエンザなど4種のインフルの混合型でしたが、主にAソ連型の変異型とされます。09年型となって後は変異が無かったために、予防接種のタイプはこれまで合っていました。今シーズンも変異が無ければ、予防接種のタイプが合っていることから、接種を受けた方は軽い症状で終わっりそうです。しかし、ここ2年間日本で流行しなかったことから、日本人のA2009年型に対する基礎的な免疫は落ちていると思われます。予防接種を受けていない方がA2009年型に罹った場合には、症状が強くなる心配があります。今日は寒さも緩みました。これから春にかけての天候は、エルニーニョ現象の影響で、また暖冬傾向に戻るとのことですが、それでも明後日からは一年でもっとも寒い2月です。暖冬ながら本格的なインフルの流行入りです。うがい、手洗い、マスク着用、睡眠をしっかり取るなどで抵抗力を落とさない、などの感染予防を心がけて下さい。
  28日  先日の寒波では九州地方を中心に水道管破裂による断水が29万世帯でした。愛媛県でも久万高原町や南予で積雪が目立ちましたが、当院周辺では幸いにも雪も積もらず路面凍結や水道管の凍結もありませんでした。診察も滞りなく続けられました。ホッとしています。
  世の中の ひつそりとなる 寒さ哉  子規

 松山市内全域でインフルエンザが徐々に増えています。当院でも小学生から壮年層まで幅広い年齢層でインフルを検出しています。当院ではA型B型ともに見られますが、A型がやや多いです。来週、2月入りとともに本格的な流行期に入りそうです。
 ウェザーニュース社の「花粉症ch」が今シーズン版に更新されました。愛媛県では当院を含め観測点は6地点です。今シーズンから、スマホで位置情報を送信すると最寄りの観測点が表示されます。ということは中予で「花粉ch」を見ると自動的に当院の観測データを参照することになります。昨シーズン以上に、中予の花粉症の方のお役に立てればと考えています。これからヒノキ花粉症シーズンの4月まで、当院でも「花粉症観測データ」のコーナーでの花粉飛散グラフの更新を定期的に行います。
 突発性難聴の程度の強い方が複数見られました。突発性難聴の重症度分類では、初診時聴力レベルで判断して、Grade1:40dB未満、Grade2:40dB以上60dB未満、Grade3:60dB以上90dB未満、Grade4:90dB以上(5周波数の閾値の平均、発症後2週間までの症例に適用、初診時めまいのあるものをaないものをbをとして区分)となっています。ここ2週間ほどでGrade4aの方を複数診ました。やはりGradeが高いほうが予後がよくないことが多く、発症後1ヵ月以内の改善が不十分だと難聴や耳鳴が後遺症となる可能性が高くなります。突発性難聴は、神経麻痺の原因を特定することが困難なことから”突発性”と称されます。原因が特定できないことから治療は総合的な神経炎の治療となります。発症早期にステロイドや末梢循環改善剤の点滴による十分な投与が望まれます。発症後の急性期でGradeが高ければ、総合病院耳鼻咽喉科に可及的早期に紹介しています。

  下咽頭異物、鼓膜穿孔閉鎖術、鼻茸摘出術、舌小帯形成術、後鼻孔出血など。 
  23日  日本をすっぽり覆う最大級の寒波到来です。松山でも夕刻には雪がちらつきはじめています。沖縄では観測史上初めての雪が降るかも、と話題です。記録的な暖冬から一転、記録的な冷え込みです。明日の診察に向けて、スタッフの通勤事情や水道の凍結、エアコンの効きなど、気にかかっています。
 寒波とともに感染症が増えると思われましたが、当院ではインフルのA型はその後検出せず、B型も散見程度です。当院近隣の中学校でインフルが発生との情報もありますが、学級閉鎖になるレベルではありません。年末に目立ったRSウイルス、アデノウイルス、溶連菌なども最近は散見される程度です。12月よりも1月のほうが風邪が流行らない、例年にないパターンです。 寒波のおかげでスギ花粉はほとんど飛散していません。風邪の流行と同じパターンで、スギ花粉の飛散も、12月や年初のほうが1月後半よりも多いです。気候も感染症も花粉飛散も、全て例年にないパターンで、私もへんてこな気分です。 
  20日  週末はセンター試験でした。受験生の印象が強いのか、センター試験の時期は決まって寒波の印象です。その週末から続いて、全国的に第1級の寒波が到来しています。松山では一昨日に初雪、昨日は暴風雪警報で学校が休校でした。松山近郊の久万高原町では39㎝の積雪です。当院からも冠雪した石鎚連邦が望めます。寒さの本格化とともにインフルエンザが徐々に増えています。先週、愛媛県でもインフルの流行入りが宣言されました。松山市の桑原では小学級が学級閉鎖です。一昨日、当院では今シーズン初めてB型も検出しました。先日もお伝えしましたが、今シーズンはこれからA香港型、A2009年型、B型の混成した流行となる可能性があります。一方、寒波のせいでスギ花粉の飛散開始日はまだのようです。それでも花粉を感じる方が徐々に増えてきました。 
  16日  当院では昨日、1月に入って初めてA型インフルエンザを検出しました。厚労省は昨日、インフルエンザの全国的な流行入りを発表しました。年明け後の流行入りは9年振りで、A香港型とA2009年型が主体とのことです。東京でも発生が増えてきており、今月後半から本格的な流行期に入りそうです。昨シーズンに続き、今シーズンも迅速検査はA型とB型の判定が可能なタイプのみで、以前のようなA2009年型を判定できるキットは出ていません。今シーズンは、シーズン入り当初から過去2シーズン発生の少なかったA2009年型が発生してきています。今シーズンはA型の二度罹りに注意しなければいけないかもしれません。 
  13日  今日は肌寒い一日でした。年初からの暖冬も一服し、これから1週間、特に来週前半は寒波襲来との予報です。1月も半ばとなりましたが、当院では年初からインフルの検出はありません。1月のこの時期まで検出しない冬は記憶にありません。昨年の感染症発生の特色を要約すると、年末にむけてRSウイルスが史上最高に流行、例年ならば夏に流行を迎えるアデノウイルスが年末に1年のピークを迎えた、1年を通じて溶連菌感染症の発生が多く高齢者を中心とした激症型の報告が史上最多だった、新型もみられたノロウイルスによる感染性胃腸炎も年末に増えた、伝染性紅斑も年末に流行、などがありましたが、新春にインフルが発生しないのも珍しいことです。でもさすがに、学童の3学期入りとこの寒さで、様々な感染症が増えてくると思われます。 スギ花粉の飛散が、当院の初観測は2日でしたが、山口県でも元旦に初観測、松山大学でも6日には観測されています。この暖冬でやはり花粉の飛散開始は早くなり、かつ飛散数も多くなりそうです。ひょっとすると、2月に花粉飛散とインフル流行のピークが重なるかもしれません。
  4日  2016年の初仕事も無事に終わりました。年末年始に体調の悪化が無かったと祈念しながらの診察でしたが、幸いにもこじれた方はおらず、取りあえずほっとしながらの診察になりました。一年前の年末年始にはインフルエンザが流行していました。救急病院の待ち時間が8時間という話も聞きました。今年はインフルエンザはほとんど発生せず、乳幼児の間ではRSウイルス感染症が目だったようでした。12月は例年に比べると極端に少ないインフルエンザの発生でしたが、1月の後半にはさすがに流行ってくるのと思われます。暖冬でスタートした1年ですが、1月後半からはさすがに寒さも厳しくなり様々な感染症が流行すると思います。これからが風邪の季節です。皆様のご健康をお祈りしたいと思います。
 このお正月は記録的な暖かさでした。福井県は過去67年で最高の気温を観測、鹿児島でも17年ぶりの暖かさと朝のニュースで取り上げられていました。年末のこのコーナーで触れましたが、暖冬が進むようだとやはりスギ花粉の飛散開始日はかなり速くなると思われます。過去松山で最も早く飛散開始日を迎えたのは2006年の1月17日でした。例年なら2月5日~10日頃の飛散開始が最も多いのですが、今シーズンは1月下旬の飛散開始もあるかもしれません。当院ポールンロボでは、11月後半から12月にも、昨年より目立って多く花粉の飛散が観測されていました。1月に入って初めての花粉観測日が初観測日と定義されていますが、当院データでは1月2日になりました。当ホームページでのポールンロボの観測データの更新も開始しました。ご活用頂ければ幸いです。お正月に初詣などで鼻や目がムズムズした方もあったと思います。そのような方は花粉症の初期治療(予防投薬)を1月中旬から始めても良いかもしれません。
 また、レーザー治療を希望する方も増えてきました。スギ花粉症に対するレーザー治療を行う時期ですが、効果を最大限発揮するために、花粉の飛散が本格化する前に治療を済ませることをお勧めしています。レーザー治療を受けた後10日間位は、かさぶたの付着などで逆に鼻づまりが強くなります。粘膜が落ち着いたところで花粉の飛散が本格化する時期を迎えるのが最良だと考え、1月前半にレーザー治療を済ませることをお勧めしています。
 昨年12月にダニアレルギーに対する経口免疫療法SLITが開始されました。一昨年10月にスギの経口免疫療法が開始された時と比べると、マスコミの注目が低いようで、当院でも問い合わせはわずかです。ダニの舌下免疫療法もスギ同様、今のところ治療を受けられるのは12才以上ですが、7才以上を対象とした臨床治験が進められています。ダニアレルギーは通年性ですので、もし症状が抑えられれば、スギ花粉以上に生活の質が向上します。現在の経口免疫療法は”アレルギー性鼻炎”のみが治療を行える適応疾患ですが、今後、気管支喘息やアトピー性皮膚炎まで適用が広げられると対象とする方も増えてくると思われます。ダニに対する経口免疫療法は我が国では始まったばかりです。この治療法に興味がある方はぜひ診察時にお尋ねください。

 お正月はゆっくりできました。おかげで録りためていたドラマをいくつか見ることができました。感動したのが1年前の作品ですが、TBS日曜劇場の「流星ワゴン」です。タイムトラベルの設定の斬新さに感心しました。また千住明氏のサントラ盤とても美しいメロディメロディーで心に残りました。
 もう一つ、お正月に読んだ本の紹介をしたいと思います。実はある経済雑誌のオススメで挙げられていた「検証 バブル失政――エリートたちはなぜ誤ったのか」軽部 謙介著 2015年、を読もうと思ったのですが、図書館が貸し出中だったこともあり、少し古い本ですが「検証バブル 犯意なき過ち」日本経済新聞社編 2000年、を読みました。日本は1990年のバブル崩壊から今に至るまでまだ失われた20年から脱出出来ていません。アベノミクスが持続するかどうかの評価もこれからでしょう。本書は経済バブル発生の原因とその後の対応の適否についての検証行っています。経済バブルはそれを経験している渦中の人にはわからず、バブルが崩壊して初めてバブルだとわかると言われます。この本の巻頭言にとても興味深いフレーズがありましたので、以下に紹介します。
○「どうしてあんなことをしたのか」「なぜ人々は間違えたのか」-。現在という高みから過去を批判するのは簡単だが、安易な批判はしばしば真相から微妙に遊離する。バブルに踊った人もバブル崩壊後の処理を誤った人も、あえて「失敗を犯そう」と思ってやった人はまずいまい。多くの人たちは「これで何とかなるかもしれない」「今の状況ではこれしか手立てがない」と思い、それぞれの決断をしたに違いない。なぜ仕方がないと思ったのか。その人が置かれていた立場は、その人が属した行政や企業を支配していた当時の論理は、社会の空気はどうだったのか....。そうした要素を丹念に拾い、そういう判断に至った経緯を探ることで、日本が犯した失敗の本質をえぐりだす。それが我々取材班の目指した手法であり、そこから浮かんできたのは人間の愚かさであり、人間の弱さだった。「犯意なき過ち」というタイトルにはそんな思いが込められている。
 もとより、犯意がなかったから過ちが許されるというのでは、バブルの教訓は生かされない。他人を気にする横並び意識、保身、あきらめといった人間の弱さや、興奮と熱狂を喜ぶ人間の業。問題のねっこにあるそれらをどう補うか。我々は一定の答えを出したつもりだ。
 このフレーズは、経済だけに留まらず、過去の歴史や人間の本質を考える上での普遍的で大切な点が述べられていると思います。昨年は戦後70年、集団的自衛権の法制化や慰安婦問題の合意など歴史の転機となるニュースがありましたが、バブルに対する対応の仕方はこれら歴史問題全てに通じるものだと思います。戦争が終わった後でその時代を批判することは簡単です。でも人間の本質はそう変わるものではありません。その時代の空気や背景をしっかりと理解していなければ、結局同じ事が起こり得るのです。今年は参議院議員選挙の年です、18歳から選挙権が持つことになります。私も歳をとりました、、、若い世代の人はどうか、時代の背景をしっかり把握するという視点を持ったうえで歴史の勉強をして下さい。その上で、これからの日本の進むべき道を決めてもらいたいと思います。
1月 1日   明けましておめでとうございます。来院される皆様のお力になれるよう心を新たにしております。今年も当院をよろしくお願いいたします。

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医療法人 大輝会

山口耳鼻咽喉科
クリニック

院 長 山 口 幹 夫

〒790-0045
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松山市余戸中1丁目2-1

  TEL 089-973-8787