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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科を専門とし、地域医療に貢献します。

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〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

院長の徒然草 過去ログ~17年12月

「今月の疾患情報」のコラムも一部再掲しています。
  「院長の徒然草」過去ログ ~17年 7月 へ
  「院長の徒然草」過去ログ ~17年 1月 へ
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  「院長の徒然草」過去ログ ~15年 1月 へ

  「院長の徒然草」過去ログ ~13年 3月 へ
  「院長の徒然草」過去ログ ~12年 12月 へ

声がれ  17年12月1日
 当院ではここ半月程、大人の人を中心に、のどの強い痛み、声がれ、軽い咳、微熱が主な症状の上気道感染症の方が目立ちます。特に声がれ(嗄声させい)でお困りの方が多く見られます。声を使う仕事なので一刻も早く声がれを治したいという切実な訴えの方も多いです。私はどうもこの病原微生物はパラインフルエンザ(HPI)ではないかと予想しています。
 現在、外来で迅速検査が可能な病原菌には、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、溶連菌、肺炎球菌、マイコプラズマがあります。その他の代表的なウイルスは血液検査の抗体量の変化で感染の有無を確認したり、PCR法などの遺伝子検査で感染の有無を確認できますが、パラインフルエンザの確定診断は保健所や研究所レベルでの遺伝子検査が必要で、一般外来での検出は残念ながら出来ません。パラインフルエンザは専門的には一本鎖RNA-(マイナス)鎖ウイルスと呼ばれるグループのウイルスです。1本の遺伝子からなるウイルスで、感染した相手の細胞の遺伝子を奪って増殖します。インフルエンザも同じグループに属します。ヘルペスやアデノなどの2本鎖の構造を有することから安定しているDNAウイルスと比較して、RNAウイルスは変異しやすいのが特徴です。パラインフルエンザは1~4型に分類され、ヒトで感染症を起こすのが1~3型です。国内で最も報告の多いのが3型で、初夏から秋にかけて検出の報告が多くなっています。
 最も有名な病型は小児の声門下喉頭炎(クループ)です。人の声帯直下の内径はその人の指の大きさ程度とされます。母親からの移行免疫が減弱した1~2才の幼児の声門下腔は細く軟らかいことから、パラインフルエンザの感染で”じわりと”声門下の粘膜が腫れると、 息を吸い込む際にヒーヒーとのどが引き込まれる吸気性喘鳴が聞こえます。パラインフルエンザ以外のウイルス、インフルエンザやRSウイルス、ヒトメタニューモウイルスや細菌のインフルエンザ桿菌(HiB)でも声門下喉頭炎になる場合がありますが、パラインフルエンザによるものが最も多く、75%がパラインフルエンザによるとする報告もあります。インフルエンザはパラインフルエンザ以上に粘膜表面での増殖が速いために、気道粘膜が薄赤くただれて気管支炎の反応が強くなり激い咳込が特徴的症状です。大人のパラインフルエンザウイルスでは、ライノウイルスやコロナウイルスのような病原性の弱いウイルスより強いのどの痛みと声がれが目立ち、インフルエンザのような病原性と増殖力の強いウイルスよりは発熱や下気道の反応が弱い傾向になります。
 ここ数日、私は外来で、「この声がれの原因は、外来で出来る検査が無いので確定は出来ませんが、パラインフルエンザというウイルスによる感染かも知れません。一般のウイルス感染同様に直接効くお薬はありませんので、治療は対処療法が主体となります。出来るだけ早く腫れを引かせるお薬をお出ししますが、明日になったら劇的に声が出る、、というのは期待しないで下さい。むしろ声を無理すれば声帯に血豆のポリープが出来るかもしれません」と少しばかりプレッシャーをかける説明をしています。(^^ゞ

空海の風景  17年11月28日
 私のお気に入りの番組「ぶらぶら美術・博物館」の京都国立博物館の国宝展の作品紹介や、ブラタモリの高野山編で、空海の出家宣言書「三教指帰(さんごうしいき)」が紹介されていました。日本の歴史上でも最も才能豊かとされる空海の人となりが気になって、司馬遼太郎氏の「空海の風景」を手にしました。弘法大師空海、お大師さんは四国の人間にとっては身近な存在です。至る所に伝承の地があります。それにしては私はお大師さんをよく知りませんでした。私はよく石手寺を散策しますが、四国八十八箇所霊場では、曼荼羅や大日如来、大師像はよく目にしますが、お釈迦様の影が割と少ないのです。仏教寺院なのにどうしてだろうという違和感を持ち続けていたのですが、空海の足跡を辿るとよくわかりました。司馬氏の筆致はさすがです。読者を奈良時代の讃岐へ、室戸岬へ、平安京へ、長安へと招いてくれます。空海が遣唐使船で長安に向かったところから始まる大天才の活躍には胸がすきます。いわゆる司馬史観に対しては、明治や昭和時代を中心に様々な意見や立場がありますが、さすがに奈良時代では限られた古文書しかないために、読者は司馬氏とともに半ば空想の世界に没入出来ます。インドの行者から始まった密教が仏教と融合して、ヒンズー教やチベットのラマ教に影響を与えました。小乗仏教の奈良仏教から、大乗仏教に近い比叡山の最澄の天台宗、空海の真言宗への流れが追体験できます。おかげで、親鸞上人をはじめとした鎌倉仏教への理解も深まります。空海は若かりし頃、三教指帰で中国固有の儒教、道教とインド伝来の仏教の比較を行い仏教が最も優れていることを記して修験の道に入りました。その後、空海は長安で、大日如来を中心とした東洋の宗教では唯一の一神教に近い密教の後継者を任じられ、京都の東寺や高野山金剛峰寺を開きました。空海の足跡をたどることで、宗派が多くやもするとややこしい仏教への理解が深まります。

医療の話題あれこれ  11月26日
 Medical Tribuneなどの医療情報誌から耳鼻科関連の話題を拾ってみます。
〇閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS):OSASへの代表的な治療法である持続陽圧呼吸療法(CPAP)の降圧効果が過小評価されているとスイスのグループが発表しました。睡眠学会でも、今後のガイドラインでOSASが高血圧の重要な因子であることを強調するようです。私もOSASが気になる患者様にはよく血圧を測定しています。病院で緊張して血圧が上がる白衣高血圧の要因もありますが、OSASで無自覚に高血圧が隠れている方が多い印象があります。別の米国のグループは、睡眠呼吸障害が認知障害の危険因子であるとの解析結果を発表しています。確かにOSASでは昼間の傾眠が代表的な症状であるのは以前から知られています。認知症分野でもこれから注目されるのでしょうか。
 また世界睡眠会議からは、新たな治療法として、アラームで側臥位を維持する体位療法、植込型デバイスによる舌下神経刺激により舌を挙上する治療、換気コントロールの感受性を高めるために酸素補充+非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ルネスタの併用療法、上気道の筋緊張を高めるカリウムチャンネル阻害薬(開発中)の服薬などが報告されています。睡眠薬はベンゾジアゼピン系でなくても睡眠時の筋弛緩作用は多少はあると認識していました。OSASの治療にルネスタが用いられるのは意外な感があります。実際どれほどの効果があるのか、今後の報告に注目したいです。
〇帯状疱疹:帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる病気は、高度な神経麻痺や後遺症を残しやすく、耳鼻科関連でも顔面神経麻痺や突発性難聴、めまいなど多数あります。帯状疱疹は80歳までに3人に1人が発症し、患者の20%が頑固な痛みが続く帯状疱疹後神経痛に移行します。21世紀に入り我が国の帯状疱疹患者は増加しています。その要因としては、超高齢化、水痘ワクチンの定期接種化、抗がん剤や免疫抑制剤の使用の増加があるそうです。興味深いのは水痘ワクチンとの関連です。2014年から水痘ワクチンの定期接種化が始まったために、帯状疱疹ウイルスへの初回感染により起こる疾患である小児の水痘は激減しています。しかし大人が水痘に罹った子供と接触することにより免疫力が高まる免疫のブースター効果が起こりますが、小児の水痘が減ると大人のブースター効果が無くなるために、大人の帯状疱疹ウイルスの体内からの再活性化で起こる帯状疱疹が増えるのです。幼児と接触している保育士や子育て世代の大人の帯状疱疹の発生率が低いのもこのためだとされます。私も診察で水痘患児に濃厚に接触し続けていますのでいまのところブースター効果は抜群そうです。!(^^)! 昨年から任意接種ですが日本でも50歳以上で、帯状疱疹の発症予防のための水痘生ワクチンの接種が行われるようになりました。しかし生ワクチンであるために、免疫機能に異常のある人や免疫抑制の治療中の人には接種できず、効果も10年で切れてきます。現在、我が国では生ワクチンでない不活化ワクチンが申請中ですので、ワクチンが成人でも普及すれば帯状疱疹は予防可能な病気になるとのことです。また、水痘ワクチンを2回接種して帯状疱疹への免疫力が強い現在の幼児が大人になった時には帯状疱疹は激減しそうだとのことです。ワクチン接種には必ず副反応の問題が生じますが、安全なワクチンで帯状疱疹が激減した世界を見てみたいものです。
〇潜在性甲状腺機能亢進症:認知症の発症リスクが高まるとの報告がスイスからありました。これまで顕性の甲状腺機能亢進や機能低下が認知症のリスクになるとされていましたが、潜在性の段階でもリスクがあるとの報告も出てきました。潜在性の甲状腺機能障害を治療すべきか否か、まだ研究段階の部分も多いのですが、このようなデータが蓄積されてくると、今後より早期から治療するべきとの考えが広がりそうです。
〇電子カルテ:最近はほとんどの公的病院が電子カルテで診療を行っています。当然、新規開業のクリニックもほとんどが電子カルテです。私は未だ紙カルテに拘っています。(^^ゞ 耳鼻科の所見を図で入力したり、複数人の家族を同時に診察する際には、紙カルテは便利だと感じているからです。米国医師会の調査では、外来担当医師は患者と向き合う時間の2倍近くを電子カルテの入力やデスクワークに費やしているそうです。日本語入力の電子カルテではもっと時間がかかっているかも知れませんね。日本語音声入力は、診察室で子供さんが大声で泣くと認識出来なくなります。この報告をみて、私はまだまだ紙カルテで、と思ってしまいました。
〇咽頭痛へのステロイド投与:ステロイド投与が有効であるとの報告がカナダから発表されました。急性扁桃炎や咽頭炎に対して救急部やプライマリケア医への受診を対象に調査したところ、プレドニゾロン10㎎までの投与で、24時間後の疼痛緩和が2.2倍高く、48時間後の疼痛消失率が1.5倍高く、ステロイド投与による有害事象の増加は認めなかったとのことです。のどの痛みが強ければ非ステロイド系の消炎鎮痛剤を処方するというのが外来診療の定番ですが、最近は消炎鎮痛剤で炎症が遷延化したり、抗凝固剤服薬者が増えていることもあり胃潰瘍などの有害事象にも注意する必要があるとの考えもあります。扁桃周囲炎、仮性クループ、喉頭蓋炎でない単純なウイルス性咽頭炎にステロイドまで、、とも感じましたが、本来炎症を抑える為に体内からステロイドの分泌が高まります。生理的な作用を増強するという機序を考えると、咽喉頭の所見が強ければステロイド投与も選択枝のひとつです。
〇嗅覚:嗅覚障害と認知症の関係を白人でも黒人でも認めたとの報告が米国からありました。人種別の研究を行うのは、欧米ならではの報告です。大脳皮質の萎縮が大脳の中で嗅覚を認識する嗅覚野から始まる傾向があり、その為、嗅覚低下がアルツハイマー病などの認知症の先行指標として活用されつつあります。また違うグループから、嗅覚減退がパーキンソン病の前兆との報告もありました。パーキンソン病の前兆となるのは、どのような機序のためでしょうか。興味があります。また、この報告では、黒人より白人、男性より女性に傾向が強く出たそうです。人種や性別による差異の興味深いです。
〇救急車依存症:これはびっくりです。日本臨床救急医学会で、東京都の救急車出勤件数の調査から、同一個人が年間30回以上頻回に救急車を要請する人が88人、平均の要請回数が60回、最高200回要請した個人もいたそうです。年間10回以上の要請者は対象が多く検討から除外しています。8割以上が精神疾患の既往があるそうです。不安のために要請し、救急隊が来るとホッとして症状が治まる「救急車依存症」のケースが紹介されています。救急車を安易にタクシーのように使う人もいることから、救急車を有料制にしようとの意見もあります。適切な救急医療体制を構築するには、課題が多いです。
〇培養検査:日本外科感染症学会より、頭頸部では下顎領域の感染症で嫌気性菌の存在に注意して、嫌気培養も行うべきとの提言がありました。嫌気性菌と好気性菌の混合感染にも注意すべきとのことです。多くの病原菌は空気のある環境で増殖する好気性菌です。しかしガス壊疽など酸素のない環境で増殖する細菌(嫌気性菌)による感染症にも注意しなければいけません。糖尿病や誤嚥性肺炎では、局所の免疫力が落ちて、本来病原性の弱い嫌気性菌が病原性を表す場合があります。頭頸部の深部感染症では嫌気性菌の存在も忘れてはいけません。
〇喘息:喘息と診断された成人患者の1/3がその後の再評価で喘息が否定されたとの報告がカナダからありました。この報告では、この中の2%は喘息ではなく重度の心肺疾患だったとしています。喘息でないとされた群は初期に肺機能検査の施行率が低かったとのことです。鼻炎でも喘息でも、初期にしっかりとした検査や評価が重要なようです。
〇自己炎症性疾患:自然免疫系の異常で、全身に炎症反応が起こり臓器障害を引き起こす疾患のことで、遺伝子異常が同定されているものもあります。小児で原因不明の周期性発熱が続き、抗菌薬が奏功しない場合には専門施設へ紹介するように、とのことです。小児の”原因不明の周期性発熱”には注意したいと思います。
〇オテズラ錠:テラーゼ4阻害剤という尋常性乾癬の25年振りの経口薬が発売されます。乾癬は皮膚の角質が異常角化して惹き起こされる病気で、耳鼻科の目で見ると、外耳道入口部や耳介周囲の頑固な角化として見られます。私も以前から乾癬が疑われる方は皮膚科に紹介していました。昔は湿疹の治療だけだった乾癬やアトピー性皮膚炎の治療も進歩しています。慢性湿疹が治らないとあきらめている方には、今一度皮膚科で相談するようにアドバイスしていきたいと思います。
〇おたふくかぜ:自然感染の合併症とワクチンによる副作用の発生頻度を比較すると、耳下腺腫脹が自然感染65%;ワクチン3%、顎下腺腫脹が10%;0.5%、精巣炎が30%;なし、卵巣炎5%;なし、膵炎が4%;なし、髄液細胞増多が50%;不明、無菌性髄膜炎が1-10%、0.1-0.01%、脳炎0.1%、0.0004%、難聴0.01-0.5%、不明 でした。ワクチン接種による無菌性髄膜炎は適切に治療すれば後遺症を残さないのに対し、自然感染によるムンプス難聴は有効な治療法がなく高度な後遺症が残ることから、おたふくかぜワクチンの定期接種化が妥当との報告が国内からありました。自然感染では髄膜炎化しないでも髄液でウイルス性の炎症が高率に起こることを私も再認識しました。
〇小児のタミフル:今年3月の改定でインフルエンザの治療薬であるタミフルが新生児や1歳未満の乳児への投与が認められました。1歳未満への投与量は一歳以上への投与量の1.5倍です。また、小児、幼小児共に予防投薬も認められました。日本小児科学会では新生児のインフルエンザへの新対応案を発表しました。新生児への予防投薬は行わず、低出生時体重児や生後2週未満の新生児には使用経験が得られていないことから下痢などを含めた副作用に十分注意することとしました。また、学会ではインフルエンザ発症による早産や新生児への感染を防ぐために妊婦へのワクチンの接種を勧めています。タミフルの添付文書でも新生児への投与を認めていますが、添付文書上でも「国内外の臨床試験において、低出生体重児又は2週齢未満の新生児に対する使用経験が得られていないことから、副作用
の発現に十分注意すること」とされていました。国内だけでなく国外でも使用経験がないけど認められているのですね。
〇重症喘息薬:日本アレルギー学会が、生物学的製剤ヒト化抗インターロイキン(IL)-5受容体αモノクローナル抗体製剤ベンラリズマブの早期承認を求める要望書を厚労省に提出しました。気管支喘息の約半数は、好酸球という生物学的エフェクター細胞によって気道炎症および気道過敏性を起こすとされ、ベンラリズマブは自然免疫システムの構成要素であるナチュラルキラー細胞を動員し、直接的、速やかかつほぼ完全に好酸球を除去するモノクローナル抗体製剤です。重症喘息薬では2009年に抗IgE抗体薬ゾレアが登場し、抗IL-5抗体製剤のメポリズマブ(商品名ヌーカラ)が続きました。いずれも注射薬です。新しい製剤はヌーカラを投与してもコントロールできない患者に重要とのことです。残念ながらこれらの製剤は全て国外で開発されています。薬価も高額です。生物学的製剤は耳鼻科関連では抗がん剤が主ですが、もともと生物学的製剤は2003年の関節リウマチへの経口薬が最初でした。将来は耳鼻科の外来でも生物学的製剤が活躍するようになるのでしょうか? でもそうなると国民医療費は大変です。
〇アレルゲン免疫療法:喘息診療に従事する医師へのアンケートで、ダニアレルゲンへの皮下注射免疫療法(SCIT)での症状改善は75%ながら、合併する鼻炎や結膜炎への効果があるのは28%にとどまったとのことです。内科医小児科医の視点から見た鼻炎や結膜炎への効果ですが、舌下免疫(SLIT)より効くイメージのあるSCITで鼻炎の改善が少ないという報告は、耳鼻科医や眼科医が直接粘膜を診て判定する効果よりも患者さんの自覚的な効果を反映していそうです。これは、私が以前行っていた鼻炎に対するSCITの効果の印象とほぼ同じです。SCITの患者さんの自覚的なよう効率は3割程度のようです。
〇川崎病:ここ10年、日本でなぜか増え続けている川崎病ですが、病気の本態が血管炎であることが判ってきました。当院でも発熱が続き粘膜の反応が強い小児に対しては、常にその存在を念頭に置いておかなければならない疾患です。この治療に、日本が世界に先駆けて2015年12月に承認された生物学的製剤抗ヒトTNFαモノクローナル抗体の有効性と安全性が確認されました。これまでは免疫グロブリンやステロイドが治療の中心であった川崎病も、関節リウマチのような生物学的製剤で治療する時代となりました。耳鼻科領域の血管炎で有名なのはANCA関連血管炎性中耳炎です。将来はこの疾患に効く生物学的製剤も開発されるのでしょうか。

めまい学会の新分類と頭頸部癌の個別化治療  17年11月23日
 週末に愛媛耳鼻咽喉科臨床研究会に参加してきました。新専門医制度では専門医資格を維持するには、決められた単位の講習を受講しなければいけなくなりました。地方学会の研究会や講演会の多くは日曜日に開催されますので、日曜診療を行っている私にとって土曜日に開催される今回の研究会は便利な機会でした。
 セミナーの一つめは、Barany学会という国際的なめまい学会の新分類の試案の紹介でした。これまで心因性めまいとされていたものをより細かく分類しています。その中に、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)という概念を取り入れています。3ケ月以上続くめまいで、耳の障害からの前庭性めまいや神経疾患・内科疾患が先行して、精神的な要因だけでない心因性めまいの中にPPPDとされる病態があるのではないかとしています。最近、例えば整形外科領域では、椎間板ヘルニアが手術で劇的に治っても腰痛が続くケースでは、椎間板ヘルニアが起こっていた際の痛みを脳が覚えていて、原疾患が治っても痛みを感じるという病態があります。このようなケースに、脳内の神経伝達物質を賦活させる抗うつ剤を投与すれば痛みが劇的に完全するケースがあることが判ってきました。慢性の神経痛や片頭痛でも抗うつ剤が有効との考えも確立されてきています。PPPDでもこのような機序の存在が疑われます。治療には副作用の少ない抗うつ剤SSRIやSNRIが有効であるとの研究も始まっています。めまいに抗うつ剤?私はうつ病ではありません!というケースでも、今後、副作用の少ない抗うつ剤SNRIを試みるような治療ガイドラインが出てきそうです。
 二つめは、頭頸部癌の個別化治療に関するセミナーでした。個別化治療とは、これまで癌が発生した部位別に診療ガイドラインを作成し、腫瘍の大きさや浸潤の程度、転移リンパ節や遠隔転移の有無を基にTNM分類という分類を作成して癌の予後や治療効果を判定してきましたが、個別化治療はより細かな癌のタイプによって治療方針を変えていこうという治療です。扁平上皮癌である、腺癌である、肉腫である、高分化である、未分化であるなどの組織検査を基にした細分類により治療方針を考える治療は、血液系の癌を中心に以前から行われていましたが、今回のセミナーで紹介されたのは、今後は癌の遺伝子まで把握して治療を細分化させるというものです。頭頚部癌で遺伝子による個別化治療が始まりつつあるのが、扁桃癌のような中咽頭癌です。中咽頭癌の中にはヒト乳頭腫ウイルス(HPV)により癌化したものが多く、これは頸部リンパ節転移が多くてもむしろ治りやすい(予後がよい)という研究データが集積されてきています。今後正式に発表される予定の2018年版の頭頚部癌TNM分類では、中咽頭癌を、HPVの遺伝子であるp18があるものとないもので治療方針を変えるように変更する予定です。米国ではHPVへの感染から中咽頭癌が発生することが判ってきた結果、男性へのHPVワクチンの接種も始まっています。日本ではHPVで誘発される癌の代表である子宮頚癌にたいするワクチン接種での副作用の問題から、HPVのワクチン接種を広めることは現時点では困難な状態です。HPVワクチンの接種を中止している日本では女性の子宮頚癌の発生率が、一旦減りつつあったのが増える傾向が出てきたとの報告もセミナーでは紹介されました。遺伝子治療の今後と、ワクチン接種の評価の難しさを考えさせられたセミナーでした。

看護師さん募集  1年11月10日
 先日、長年勤務して頂いた方が退職しました。パートタイムでの勤務で、忙しい日曜診療に大活躍して頂きました。残念ですが家庭の事情もあり致し方ありません。このため、新たなパートタイムの看護師の方を募集することとなりました。このコーナーでも募集内容を紹介します。
 募集はパートタイムの看護師さんです。平日午後、土曜日、日曜日に出勤可能な方を求めています。週1回の勤務など勤務の曜日と時間は個別に相談致します。出来れば月1回程度日曜出勤出来る方を特に求めています。正看、準看は問いません。応募される方の耳鼻科経験は問いません。当院にて耳鼻科診療に必要な研修は行います。お子様好きの、健康的で明るい方を求めています。当院では耳鼻咽喉の日帰り手術、レーザー治療、めまい診療、気管食道科領域の診断治療など、実地臨床レベルでは高度な医療を行っていると自負しております。この3月には耳鼻咽喉科クリニックとしては先進的にCTの導入も予定しております。常日頃の診療に際しては、小さなお子様からお年寄りの方まで幅広い年齢の患者様に対して、暖かな治療や看護、心の交流が出来るよう心がけております。ぜひ当院で、私およびスタッフと、共に働いて頂けることを心待ちしております。

モンテルカストの副作用  17年11月3日
 私が処方しているお薬で気になる情報がありました。医学雑誌 Pharmacology Research and Perspectivesの9月20日版に、モンテルカスト(商品名キプレス、シングレア)でうつ病、攻撃的行動、悪夢、頭痛などの副作用が疑われるとの研究報告が掲載されました。世界的なデータベースによる副作用報告の解析から、小児および成人でうつ病のリスクが6.93倍に高まる、小児では攻撃的行動の報告が多くそのリスクは29.77倍、あるデータベースでは頭痛のリスクが2.26倍、小児成人合わせて自殺念慮のリスクが20.4倍、悪夢のリスクが22.46倍で小児でその傾向が大きい、などショッキングな報告です。
 モンテルカストは小児向けもあるアレルギー反応を抑えるお薬です。アレルギー分野や小児科領域で世界的に広く処方されています。私のこれまでの印象では副作用の少ない安全な薬剤でした。日本では昨年12月に小児用にも後発医薬品が広く発売されたため、小学生などの医療費の自己負担が減って処方しやすくなっています。この薬剤で精神症状の副作用が出やすいという現象は、世界的にもまだ一般的ではありませんが、追試論文など今後の情報に注意したいと思います。私の処方した範囲では、現時点まで特に精神神経系への有害事象例は認ていませんが、私も患者様・患児の保護者も同時に見過ごしているケースがあるかも知れません。私も状況がはっきりするまでは、慎重に対応します。
(11月6日追加)
 モンテルカストによる精神症状に関する副作用について、製薬会社の学術担当に問い合わせました。実はこの報告の第一報は2010年に既に報告されており、2010年3月には我が国の薬剤情報の基本となる薬剤添付文書も改定されていました。「本剤との因果関係は明らかでないが、うつ病、自殺念慮、自殺及び攻撃的行動を含む精神症状が報告されているので、患者の状態を十分観察すること」と追加されています。2009年の米国の論文で9929例中1例に自殺念慮が認められたことからFDA(米国食品医薬局)が精神症状に関する注意喚起を追記するよう指示しています。我が国でも10歳未満の女性1例で夢遊症が見られたとの副作用報告があり、我が国の添付文書で夢遊症が副作用報告として掲載されました。その後、国内でのうつ病の報告も非重篤な1例のみで非常に稀な副作用と考えられています。今回のうつ病の発生率が6.93倍高まるとの論文と、これまで集積されてきた副作用報告とのギャップは大きいようです。今後の情報にも注視しますが、私の印象ではモンテルカルストは現時点では、精神症状の副作用に注意はするべきものの小児も含めて服薬への問題は少ないと思われます。

ハローウィン  17年11月3日
 31日のハローウィンが終わった翌日には早速、テレビCMはクリスマスモードです。一年の楽しい行事と言えば、お正月→バレンタインデー→ひな祭り→ホワイトデー→子供の日→母の日→父の日→夏休み→運動会・秋祭り→クリスマスでしょう。秋祭りとクリスマスの間にピタッとハローウィンがはまりましたね。仮装をしたまま診察してくれた愛らしい女の子が、当院を受診してくれました。(^^)

小学校の生徒数と学校健診  17年10月14日
 12日木曜日の診察は小学校の就学時健診のために午後の診察開始を遅らせていました。当日は午前の診察が長引いたことから、健診後への診察時間の変更をお願いした患者様もおられました。変更を快く受けて頂いた方々には本当にありがとうございました。12日はさくら小学校での健診でした。先生方や引率の在校生のおかげで、スムースで落ち着いた健診を行うことができました。引率の5年生達は、泣いたり怖がっている新1年生がいると、優しく声掛けしていました。頼もしいです。来週19日は2校目の垣生小学校の健診です。午後の診察は12日同様、午後3時半頃からの開始を予定しています。受診を予定されている方々にはご迷惑をお掛けしますが、ご協力お願いいたします。
 健診の際に先生に教えて頂いたのですが、さくら小学校は来年度、1年生のクラスが4クラスから5クラスに増えるそうです。少子化の中、松山市でも生徒の減る小学校がほとんどですので、クラス増には少し驚きました。数年前には垣生小も1年生のクラスが増えています。どうやら私は松山市の中でも生徒の増える小学校の校医を担当していることになります。平成28年度の松山市の地区別人口動態を調べてみると、1年間で全市トータルで1175名の人口減少でした。44地区の内35地区で人口が減っています。地区別に増加数の多い順に挙げると、石井(+162)、東雲(+149)、味生(+141)、垣生(+97)、生石(+81)、堀江(+77)、新玉(+31)、伊台(+14)、小野(+2)、素鷲(-2)、余戸(-8)となっています。残念ながら松山市の資料では地区別かつ年齢別の統計はありませんでしたので、学童の年齢だけの増減数は分かりませんでしたが、垣生小学校区と余土地区の西に位置するさくら小学校区は松山市でも目立って子供の人口が増えている地区になっていると考えられます。当院は余土小学校区とさくら小学校区の境に位置する余土中学校区です。当院の周りでは、朝夕の時間は登下校の子供たちの元気な声が響いてきます。当院の周りは”若い活力のあふれた”地域なのですね。

インフルエンザワクチン  17年10月14日
 11月に入るとインフルエンザの予防接種の時期となります。インフルの予防接種による抗体は約2週間でついてきます。4週間開けて接種すると効果が最も高まります。抗体は接種後小児で約4ヶ月、成人で約6ヵ月で減じます。インフルの発生は例年12月後半からで流行が1月上旬から3月下旬までですので、私が考える予防接種の最適な時期は、小児であれば11月下旬に1回目12月上旬の2回目を、成人では12月上旬だと考えます。10月中などあまり早く接種すると春には接種の効果が減弱します。近年は5月までインフルが発生することが多くなっていますので、やはり接種は11月後半からがお勧めです。
 今年のワクチンの供給体制ですが、供給不足が心配されています。ニュースでは、当初予定していたA型の製造株の増殖効率が著しく悪かったため、別の製造株に変更したために製造量不足が生じたとのことです。ワクチンの株によって増殖力に違いがあるとは知りませんでした。厚労省は、今年は小児も1回接種のみとすることを推奨しています。

カルボシステインによる固定薬疹  17年10月6日
 カルボシステイン(先発薬名ムコダイン)は、最近。スイッチOTC薬として市販の風邪薬にも配合が始まった去痰剤です。気管支の痰を切る作用だけでなく、副鼻腔や中耳の粘液を切る作用もある唯一の去痰剤ですので、医療の現場でも風邪薬的な処方では汎用されています。小児の中耳炎や副鼻腔炎でも用いられますので、全国的に見ても耳鼻咽喉科の処方のトップ薬ではないでしょうか。
 作用機序はマイルドで副作用には縁のない印象のあった薬剤ですが、固定薬疹の作用機序で注目されています。データベースではカルボシステインによる副作用は約100人に1人、薬疹の発現は1000人に1人とされますが、曲者の固定薬疹を起こします。固定薬疹とは、特定の薬剤を服薬する毎に同一部位に円形で赤い発疹が生じる病態です。原因薬剤の投与が続くと新たな部位にも生ずるようになります。全身に広がれば、Stevens-Johnson症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)、多形紅斑など重症化する場合もありますが、多くは原因薬剤を中止すれば軽快します。また、多くは原因薬剤を服薬後数時間で発症しますが、数日間内服を繰り返して初めて誘発されることもあります。カルボシステインはこの遅発性の固定薬疹を引き起こすことが最新の研究で明らかになりました。
 カルボシステインによる固定薬疹を引き起こす原因物質はカルボシステイン自体ではなく、カルボシステインが体内で分解されて出来た、パーマ液の還元剤の成分と似たチオグリコール酸という中間代謝産物が原因です。カルボシステインは、昼間には主に主代謝経路で酸化カルボシステインになりますが、夜間には違う代謝経路が主となってチオグリコール酸が多く産生されます。今年のノーベル医学賞は体内時計の研究に与えられましたが、代謝経路にも日内変動があるとは驚きです。カルボシステインによる固定薬疹は、”夜間を中心に2~3日以上服用すれば発現しやすい”のです。私の外来でも治療の経過中に皮疹が出ることはままあります。それが薬疹なのか、薬疹ならば服薬した薬剤の中のどれが原因薬剤なのか、自律神経などの体調から引き起こされた蕁麻疹や中毒疹なのか、ウイルス性発疹症や猩紅熱・マイコプラズマ感染症などの感染によって引き起こされたものなのか、接触性皮膚炎のようにⅣ型アレルギー反応によるものなのか、多形滲出性紅斑のような免疫異常が隠れているのか、紫斑のような血液の異常が隠れているのか、私なりに考え、判断がつかない場合や重症の場合は皮膚科にコンサルトしています。私もカルボシステインはそれこそ多数処方してきましたので、カルボシステインによる薬疹を結構見逃してきた気がしてなりません。原因が特定できない、抗菌剤が原因の可能性が高い、とお茶を濁していたかも知れません。今後は、カルボシステインの薬疹が疑われた場合には、患者様とも相談の上、チオグリコール酸に対する薬剤リンパ球刺激試験(DLST)やパッチテストを行こなった方がよいかどうかも含めて皮膚科専門医に紹介したいと思います。

提灯行列  10月6日
 昨日今日と、当院の周りを秋祭りのちょうちん行列が通り過ぎました。診察が終わる頃合いに、子供たちの「もーてーこい!」の掛け声が診察室まで響いてきました。今年の提灯行列は二日続けてあいにくの雨でしたが、子供達の掛け声は元気そのものでした。秋祭りの提灯行列では、会津若松市の会津まつりが有名ですが、全国的にもそう多くないそうです。提灯行列の由来については、松山市立鴨川中学校の「ふるさと鴨川」に、”宵祭りからの子供の提灯や、各家庭の提灯に明かりをともすのは「神さまがおいでになります。そのために道々を明るくしてお迎えしましょう。」という意味を込めているそうです。私は、提灯行列に参加するととにかくお菓子がもらえると、由来を深く考えずにとにかく喜んでいたのですが、神様をお迎えするためと知ると行列にありがたみが増してきます。
 昨日私は三番町で神輿の行列にも出会いました。雨の中、法被姿のいなせなお兄さん達が、神輿の上にも乗りながら威勢よく練り歩いていました。今日の診察では、昨日のお祭りの準備で冷たい雨に打たれて体調を崩した方の受診がありました。心配されたお天気ですが、明日の本宮は天気も回復し気温も上がるようです。明日の地方祭、当院は平常通りの診察を行います。当院の周りを練り歩くであろう子供神輿を担ぐ子供達にもいい日和になりそうです。(^^)

潜在性甲状腺機能低下症  17年10月4日
 潜在性甲状腺機能低下症の方の受診がありました。喉ぼとけの下にある甲状腺では甲状腺ホルモンという”体を元気にする”ホルモン(遊離サイロキシンFT4など)を分泌しています。脳下垂体からはこのホルモンの分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌されます。潜在性甲状腺機能低下症とは、T4などのホルモン自体の分泌は正常域ながらTSHが高値で、体のホルモンバランスの上では甲状腺機能低下が隠れている状態です。TSHの測定が可能になった1970年代から認知されるようになった病態で、頻度は成人の3~5%で60才以上の女性に多いとされています。甲状腺の働き自体は正常ですので治療を行う(介入する)べきか様子を見るだけでよいのか、2004年に米国から指針の発表がありましたが、日本ではまだ研究会で検討中の段階です。
 甲状腺機能低下で問題になるのは、機能低下がわずかでも胎児への悪影響があること、高コレステロール(特に悪玉菌のLDLコレステロール)血症から動脈硬化を悪化させ心筋梗塞などの冠動脈疾患が悪化することです。そのための治療として、甲状腺ホルモン(チラーヂンS)を少量服薬してTSHを低下させるホルモン補充療法があります。ただし服薬で甲状腺ホルモンが過剰な傾向になると、ふるえや体重減少などのバセドウ病のようなはっきりした甲状腺機能亢進症状まで至らなくても、女性では骨折を起こしやすくなる骨粗鬆症や心房細動などの不整脈を招くリスクもあります。
 この疾患に治療を行うべきかどうかについては様々な立場の論文があります。2012年、ホルモン補充療法を行った結果、70歳未満では有意に心血管イベントが抑制された(Razvi S,et al.Arch Intern Med.2012)。2013年、甲状腺機能低下が認められた患者のうち、抗うつ薬を処方されていた患者の半数以上はホルモン補充療法によりうつ症状が改善した(五十嵐健祐氏、老年病研究所附属病院)など治療が有用であるとの報告があります。ところが今年、格式の高い医学雑誌New England Journal of Medicine 誌に「高齢の無症候性甲状腺機能低下症患者に対するホルモン補充療法は、明らかな利益をもたらさない」との論文も掲載されました。医学は理学と違って100%再現性があるものではありません。母集団を吟味して統計上の有意差で判断します。さらに医療では社会的な観点の考慮も加わります。そのため物理学や数学の論文と違って、データの改ざんなどの不正も可能になるのです。話は脱線しましたが、潜在性のケースに治療を行うべきか、今後、”私の好きな”日本の学会の治療指針の発表に期待しています。現時点での治療のコンセンサスは概ね以下のようです。
 TSH値が10μU/mL以上や、妊娠中・妊娠を希望している女性には治療を行い、TSHが10μU/mL以下でも高LDLコレステロール血症など動脈硬化のリスクを有したり、甲状腺機能低下症の症状所見があれば治療を考慮してよい、その際はTSHのモニターを続けながら骨粗鬆症や不整脈などの副作用に注意する、高齢者(特に85才以上)には治療しない。
 私もこの方針で、内分泌内科とのコンサルトも考慮に入れながら治療してみたいと思います。

新しい国際頭痛分類  17年10月2日
 頭痛の診断基準としては「国際頭痛分類ICHD」が最もスタンダードです。1988年の初版は世界初の分類・診断基準として片頭痛の疾患概念が統一標準化され、疫学研究や臨床研究のバイブルとなりました。その後、2003年に第2版が、2013年に第3版の先行版ともいえるβ版(ICHD-3β)が発表され2014年に日本語版が発表になりました。(β版はWindousの正式版が出る前のβ版と同じ意味で、まずβ版を公表した後に改良版を正式版とします)
 頭痛は神経内科が専門としますが、耳鼻科でも頭痛を主訴とする患者さんは多数来院します。耳痛、咽頭痛、頚部痛なども含めて痛み自体は見えるものではありませんので、頭痛の観点から頭頸部の痛みを評価することは大事です。今回、私もICHD-3βに目を通しました。診断基準の本といっても241ページもの分量があり、詳細な分類と説明がなされています。ICHDの目次を読むだけで、頭痛の概観が出来ます。( )内は私の補足です。

 一次性頭痛
  片頭痛
  緊張型頭痛頭痛
  三叉神経・自律神経性頭痛(以前の群発頭痛)
  その他
 二次性頭痛
  頭頸部外傷による
  頭頸部血管障害による
  非血管性頭蓋内疾患による
  物質またはその離脱による(薬剤性やアルコール、薬剤乱用や依存によるものを含みます)
  感染症による
  ホメオスターシス障害による
  頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口その他顔面頸部の障害による頭痛顔面痛
  精神疾患による
 有痛性脳神経ニューロパチー、他の顔面痛頭痛(三叉神経痛などの神経痛がここの範疇です)
 付録(これまでの研究ではまだ十分確証の得られていない新しい疾患概念について研究のための診断基準をしめす疾患を挙げています)
  月経関連片頭痛
  慢性片頭痛
  乳児疝痛、小児交互性片麻痺
  前庭性片頭痛(これまで片頭痛関連めまい、片頭痛関連前庭障害、片頭痛性めまいとよばれてきたもの)
  一過性表在頭痛
  頭部外傷による遅発性頭痛、持続性頭痛、放射線手術による頭痛
  てんかん発作による頭痛
  真菌または寄生虫による持続性頭痛
  HIVによる頭痛
  起立性低血圧によつ頭頚部痛
  宇宙飛行による頭痛
  上位頚髄神経根症、頸部筋筋膜痛による頭痛
  鼻粘膜、鼻甲介、鼻中隔の障害による頭痛
  うつ病、分離不安障害、パニック障害、限局性恐怖症、社交不安症による頭痛

 付録の章では、興味深い疾患が並んでいます。宇宙飛行による頭痛という”夢のある”疾患名もあります。最近、肩こりの原因として筋膜痛が注目されていますが、このあたりの概念もしっかり取り込んでいます。今回の版の耳鼻科医としての注目点は、これまで片頭痛関連めまいと呼ばれていた領域を、初めて前庭性頭痛という分類で「付録」として掲載したことです。付録の各疾患の中でも「前庭性片頭痛」には特に多くのスペースがさかれています。
 前庭性片頭痛の診断基準は、以下のように規定されています。
1、現在または過去に「前兆のある」または「前兆のない」片頭痛の確かな病歴がある 
2、頭痛の5分~72時間の間で持続する中等度または重度の前提症状がある
3、頭痛時の少なくとも50%は、3つの特徴のうちの少なくとも1つをともなう
 1)頭痛は、片側性、拍動性、中等度または重度、日常的な動作により頭痛が増悪するのういちの少なくとも2項目を満たす
 2)光過敏と音過敏
 3)視覚性前兆
 つまり耳鼻科医としては、明らかな片頭痛発作の直後から3日後までの前庭性めまいでは片頭痛の治療も考慮せよ、とのことでしょう。治療には片頭痛予防薬のカルシウム拮抗薬ミグシス、トリプタノール、バルブロ酸、プロプラノロールを用います。特にミグシスは副作用が少ないことから耳鼻科医にも処方しやすい薬剤です。ただし効果が出るかどうか2週間程度は経過をみる必要があります。ミグシスでも片頭痛がコントロール出来ない場合には私はやはり神経内科にコンサルトしようと思います。
 ICHDではさらに前庭性片頭痛と小児の良性発作性めまいとの関連性やメニエール病の重複についても今後の課題としています。将来の改定では「前庭性片頭痛/メニエール病重複症候群」という疾患名が組み入れられる可能性があるとも言及しています。頭痛とめまいの関連性は神経内科の研究でも今後注目されるでしょう。耳鼻科の平衡神経学会でも、メニエール病で頭痛を併発するケースについての研究発表が増えるかも知れません。

ムンプス難聴  17年9月30日
 9月5日に日本耳鼻咽喉科学会がムンプス難聴の全国調査に関する報告を発表しました。日耳鼻としては”力の入った”記者会見を開いています。昨年末までの2年間で全国の耳鼻科5565施設を対象にした調査の結果、336人のムンプス難聴が報告されました。当院も対象施設に入っていますが、幸いこの2年間ではムンプス難聴は経験しませんでしたので報告は上げていません。ムンプス難聴はムンプスウイルスに感染して起こる「おたふくかぜ」で引き起こされる難聴で、一度発症すると高度難聴化して、たとえ突発性難聴に準じて積極的な点滴治療を行ってもほとんど回復しません。日本はムンプスの予防接種を先進国で唯一定期接種化していません。過去に麻疹・風疹・ムンプスの三種混合(MMR)ワクチンとして定期接種していましたが、1993年に無菌性髄膜炎で国が訴えられるなどの経緯があり定期接種が中止されています。現在は任意接種として行われていますが接種率は30-40%程度にとどまっていることから、日本では周期的な流行を繰り返しています。これまでも複数の論文でムンプス発症時のムンプス難聴の発生が、ムンプス400例に1例、1000例に1例などと報告されていました。しかし発生率が少ないために、多くの症例を集めた検討が我が国でこれまでなされていなかったことから、日耳鼻が主導して全国調査を行いました。
 報告では、336人のうち、詳細が得られた314人の約80%、260人(内100人以上が入院治療)に高度以上の難聴の後遺症が残りました。また、260人中の14人、4%は両側性でした。我が国のムンプス発症者は年間20-30万人。その他に、まったく症状が出ずに感染する不顕性感染者が6-9万人です。今回の調査回収率が64%で中には耳鼻科に罹らないケースもあるとすれば、ムンプス難聴の年間発症者は450人程度でしょうか。とすると、ムンプス発症者の0.15-0.23%(700-450人に1人)が難聴を発症する割合になりますので、過去の欧米の報告とも似通っています。両側難聴も6000人に1人が発症することになります。
 両側性で発症した人のほとんどが人工内耳や補聴器を使用しているとのことです。両側性のケースを、私は耳鼻科医として一度も経験していませんが、両側性で発症すれば急性に大きな物音も聞こえないほどの高度難聴になります。その多くは幼児ですので、家族の心労も大きなものとなります。予防接種を受けずに発症した方は接種を受けなかったことに後悔するとの話も伝わっています。ワクチン自体は無菌性髄膜炎が報告された当時からは大きく改良されておらず、接種を受けても10%は抗体がつかないともされますので、国は定期接種化にまだ慎重なのだと思います。
 ワクチンの定期接種化の費用が年間50億円程かかります。ワクチンを定期接種化することで得られるムンプス難聴やムンプスによる無菌性髄膜炎の後遺症の予防効果のメリットと、接種の副作用としての無菌性髄膜炎の発症率と年間費用のコストがかかることのデメリットと、どちらを優先するか? ムンプスのワクチンに限らず予防接種事業化の判断は実に難しいです。

抗インフルエンザ薬耐性株  17年9月24日
 先週後半に砥部町の小学校でインフルエンザが集団発生したとの情報がありました。当院を受診された砥部町在住の学生さんも含めて当院ではまだインフルは検出していませんが、9月からのインフルの新シーズン2017/2018シーズンは、全国的にもインフルの集団発生が早いようです。厚労省の9月15日の発表では定点あたり報告数総数は昨年同期の約3.5倍、保育所・幼稚園・学校での患者報告数は昨年同期の約5.7倍となり、A香港型、A2009年型、B型ともに検出されており今季は例年より流行が早まる傾向がみられるとのことです。A香港型、A2009年型、B型ともに検出されており千葉、東京、大阪、鳥取、島根、沖縄の9施設(幼稚園1・小学校5・中学校3)では学年・学級閉鎖も報告されています。当院でも例年より早めの集団発生が見られないか注意したいと思います。一昨日に国立感染研から発表となった昨シーズンの耐性株のサーベランスでは、タミフルと注射薬ラピアクタに対してはA2009年型の1.3%に耐性が見られたものの、A香港型、B型への耐性は検出されませんでした。吸入薬のリレンザ、イナビルへの耐性は全く見られませんでした。数年前には抗ウイルス薬への耐性化が心配されていたインフルですが、なぜか耐性株の増加は見られていません。よい方向の”なぜか”です。

ドーピング薬  17年9月12日
 先日の松山耳鼻咽喉科会で、愛媛FCチーフチームドクターを務める森実和樹氏によるドーピングに関する講演がありました。愛媛国体を前にして、一般医家に必要な知識を教えて頂きました。当院でもプロの選手や国体級の選手、国際試合に参加する選手を診察する機会もあります。今後の診察に役に立ちます。
 ドーピング薬の検索にはJADA(日本アンチドーピング機構)の検索サイトglobal DROが便利で市販薬についても調べることができます。
 注意すべき禁止薬剤としては、
1、ホルモン剤 
 ステロイド(副腎皮質ホルモン):内服、点滴を含む静注は不可、局所注射も避ける。皮膚・眼・鼻・耳・口腔内などへの外用薬は可。吸入は、フルタイド、キュバール、オルベスコ、パルミコート、アズマネックスは可。
 テストステロン(男性ホルモン)、成長ホルモン:筋肉増強作用があり不可。
 エリスロポエチン:酸素運搬能を高めるため不可。
2、β刺激剤
 気管支拡張薬だが交感神経興奮作用、筋肉増強作用があり内服、テープ剤など基本的に不可。例外で吸入薬のサルタノール、オーキシス、セレベント、吸入ステロイドと合剤のシンンビコート、フルティフォーム、アドエアは可。
 あらたにヒゲナミンが追加されたことから注意が必要である。植物から抽出されるβ刺激作用のある成分で、漢方の附子(当院の処方では八味地黄丸、麻黄附子細辛湯など)、丁子(SM酸、KM酸など)、細辛(小青竜湯、麻黄附子細辛湯など)、南天実、呉茱萸に含まれる。その他、キャベジや太田胃散、タケダ漢方胃腸薬、第一三共胃腸薬、宇津救命丸、薬用養命酒、エスタック鼻炎カプセル、プレコール鼻炎カプセルなど多くの市販薬がある。
3、エフェドリン類
 交感神経興奮作用があり不可。市販の総合感冒薬のほとんどに含まれる。漢方の麻黄、半夏にも含まれる。
4、サプリメント
 服用しないこと。JADA認定商品マークがあっても商品認可時にしか検査していないため服用しない方がよい。
 これらの薬剤を見ていると、赤ちゃん用の夜泣き疳の虫用の宇津救命丸もドーピング薬になったのにはびっくりです。宇津救命丸は1597年、秀吉の慶長の役の年に生まれました。丁子など8つの生薬が配合されています。赤ちゃん用で極少量含まれているだけなのでしょうが、やはり有効だからこそ歴史を乗り越えてきたのでしょう。ちなみに、歴史的な日本のお薬で今も使われていると言えば正露丸でしょう。強力な殺菌力を持つ劇薬クレオソートが含まれています。日露戦争当時はまだ原因が不明で、未知の感染症が原因として疑われていた脚気に対して有効と考えて日露戦争の戦役で使用したことから、当初の商品名は”征露丸”でした。劇薬であるために抗生物質の無い時代の感染性胃腸炎や虫歯によく効きました。成分は消毒薬クレゾールに類似したクレオソートで解毒剤のない劇薬ですので、過剰摂取は危険です。これも効くから歴史を乗り越えてきたのでしょう。

IgA腎症と扁桃摘出手術  17年9月9日
 この6月、厚労省の研究事業として行われた難治性腎疾患に関する調査研究班から「エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2017」が発表されました。IgA腎症は、検尿で見つかる血尿の1/3を占める代表的な腎疾患で、重症化すれば腎臓死=透析導入に至ります。耳鼻科医としての関心は、新しいガイドラインで口蓋扁桃摘出手術の位置づけがどうなったのかです。今回のガイドラインでは初めて扁桃摘出術についてしっかり記載されています。成人で、扁摘+ステロイドパルス療法も扁摘単独も共に推奨度は2C(弱く推奨(提案)し、推定に対する確信は限定的)、つまり治療選択肢として検討してもよい、とされました。薬物療法の、尿蛋白が多量に排出される重症例ではステロイドとRA系阻害薬のみがはっきり推奨され、軽症例ではステロイド、RA系阻害薬、抗血小板薬、n-3系脂肪酸ともに扁摘と同様の検討してもよいレベルとなっています。今後、IgA腎症に対する扁摘が増えることが予想されます。
 耳鼻科領域では1980年代から扁摘の有用性は認識されていたのですが、内科的な認知はなぜ今になってからなのでしょうか。その答えもこのガイドラインで判ります。IgA腎症に扁摘を行う論文は、21世紀になってから中国からの報告も出始めましたが、当初は日本からの報告がほとんどでした。1983年の岡山大と札幌医大の報告を初めとする耳鼻科からの報告では、比較となる対照群を置かずIgA腎症に何例有効だったという症例集積の報告しかないので、エビデンス(根拠証拠)レベルでは不十分でした。しかし1996年に扁摘+ステロイドを点滴で短期間に大量投与する治療法が腎臓内科分野から出され始めたことから、エビデンスレベルの高い論文が多くなったために比較検討が可能になったことで、今回のガイドラインで取り上げられることになったようです。ちなみに、海外のガイドラインではエビデンスが不十分なおとから現時点では施行しないことを推奨しています。本ガイドラインでの経緯を見ると、1980年代の日本の耳鼻科に見る目があったと言えるかも知れません。私もIgA腎症の患者様で埋没型扁桃のような慢性扁桃炎のある方には、これまでも、扁桃誘発試験を行ったり、患者様自身で腎臓内科の主治医の先生に扁摘の考えを聞いてみるようにアドバイスすることが多かったのですが、これからはこのガイドラインを根拠に、私からしっかりと紹介や相談をしたいと思います。

ミカンによるアレルギー  17年9月9日
 今月の日本アレルギー学会誌にいかにも愛媛県的な論文が掲載されていたので紹介します。「温州みかんによる食物依存性運動誘発アナフィラキシーの1例 神奈川県立こども医療センターアレルギー科 田中 裕ほか」です。新たな知見であることから、論文として採択されています。運動で誘発されるアレルギー反応では、小麦による運動誘発喘息が有名ですが、私も柑橘類でアナフィラキシーまで進むケースがあることは意外でした。学会誌に”温州みかん”と出ていたので思わず注目してしまいました。(^^ゞ この症例は10才代女児ですが、複数回のアナフィラキシーでアドレナリン筋注も行っています。抗原の解析には、血清を用いたイムノブロット法というしっかりとした解析手法を用いており、柑橘類間の交叉抗原性と運動誘発を引き起こす未知の抗原の存在を推定しています。と、研究的な話はここまでで、私は柑橘類の分類も勉強になりました。柑橘類は、オレンジ類(オレンジ、ネーブルなど)、グレープフルーツ類、好酸柑橘類(柚子、カボス、スダチ、レモンなど)、雑柑類(夏ミカン、ハッサクなど)、タンゴール類(伊予柑、デコポンなど)、ミカン類(温州みかん、マンダリンオレンジなど)に分類されます。温州みかんの兄弟分だと思っていた伊予柑は実は違う系統だったんですね。

小児医療費の公的補助  17年9月3日
 子供への医療費の公的補助に対して、日経新聞が警告を発しています。自治体が歯止めのない補助競争を行っていると指摘しています。入院費では中高校生まで対象とする自治体が全自治体の9割を越え、一部は大学生にも対象を広げています。通院医療費でも中学生以上を補助する自治体が8割、高校生まで補助する自治体も2割に達します。公的補助はこの10年で一気に拡大しました。新聞によれば、優遇範囲拡大の震源は東京23区とのことで、07年に都が都内自治体を対象に15歳まで医療費を助成する制度を導入したのをきっかけに独自に上乗せする形で無料化が広がり08年度には23区すべてで無料に、さらに千代田区が11年度に大都市圏の自治体で初めて18才まで無料化したそうです。地方への波及も加速しており北海道南富良野町は11年、22歳までの学生に対象を拡大しています。松山市では現在、入院費では中学生まで、通院医療費では就学前までとしています。松山市のような補助は就学前までの自治体は全自治体の11.6%しかありません。もちろん私も医療費の負担を気にしなくてよければ、薬価は高いけど新しい便利なお薬を選択したり、十分に病状を把握するためとして検査を積極的に行えます。便利で患者様の利益になるのは間違いないのですが、やはり国の財政を考えると、医師は”コスト感覚のない医療”を行い、患者は”コスト感覚のない受診”を行う傾向がでてしまいます。
 自治体の補助競争の果てに、全国町村会が医療費補助部分に国の財政支援強化を求め始めています。補助拡大が自治体財政を圧迫しているのが理由ですが、新聞はこの補助自体が本来、市町村の自助努力として始まった仕組みであることから過剰サービスへの力添えを国に求めるのは本末転倒と批判しています。自己負担分を自治体が補助しても、医療費の残りは国の税金や企業の健康保険組合などの保険料で賄っていることから、過剰受診が増えれば国や健保財政も圧迫します。医療費の公的補助は自治体の意向だけで決めるのではなく国レベルで制御すべき時期と主張しています。私も、自治省が自治体にふるさと納税の過剰な返礼品について指導したように、子供医療費の補助についても財政の観点から厚労省や財務省が指導してもいい時期に来ていると思います。

ロシアW杯出場決定!  17年8月31日
 サッカー日本代表 ロシアW杯出場決定 おめでとう!! 私はいまだにドーハの悲劇の、あれっ、ロスタイムも終わりだけどひょっとして負けたの? を鮮明に覚えています。私のマイナス思考が悪いのか、日本人はいざという時に弱いイメージがある上に、今回の最終予選でも日本の初戦負けで予選敗退のジンクスも頭から離れず、今日の試合も無意識に”期待せずに”テレビ観戦していました。1点リードの後半はひやひやして見ていられませんでした。私としては珍しく、後半37分の井手口選手のゴールでは思わず声を挙げてしまいました。来年6月14日開催のロシアの本選、日本のグループステージ敗退でも私は本望です。(^^ゞ
(9月2日追加)
 今日は医療とは全く関係ないのですが、、 一昨日のサッカーの日本対オーストラリア戦ですが、私は戦術など語れる知識はないのですが、これまでで見た日本代表の試合の中でも一番凄く感じました。背の高い相手がボールを回すところに果敢に近寄りボールを奪っていました。ディフェンスも見事でした。一昨日のオーストラリアの試合運びは、ボールを回してもゴールできないひと頃の日本代表を見ているようでした。試合から1日経って語ったハリルホジッチ監督の会見の全文があります。義姉の健康状態を押しての指揮だったようですが、戦術や選手の操縦術についても語っています。全文を読むと新聞報道では得られないものが見えてきました。切れる指揮官の片鱗が伺い知れます。ハリル監督は会見でこう述べました。「今現在のチームの状況では、ワールドカップでは結果を残せません。でも8カ月後、それは変わっているかもしれません。」 先日私は、W杯に出られればグループステージ敗退でもいいやと思いましたが、ハリル監督の言葉を聴けば、何かやってくれそうな期待が膨らんできました。!(^^)! 
(9月3日追加)
 サッカーW杯、日本VSサウジアラビアは6日未明2時30分キックオフです。アウェーの試合ですが、なんとサウジでは「チケットをムハンマド王子がすべて買い上げ、自国サポーターにスタジアムを無料開放する」そうです。さすが産油国の王族です。スケールが違います。スタジアムで日本はこれまでにないアウェー感覚に陥いるでしょう。サウジの必死さも伝わります。つくづく日本は先のオーストラリア戦で本選出場を決められて、本当に本当に良かったです。私は録画で翌晩にゆっくり観戦することにしましょう。(^^)

マイナートランキライザーでの薬剤依存  17年8月23日
 睡眠薬や精神安定剤であるマイナートランキライザーの中心となる薬剤はベンゾジアゼピン系(BZD)薬です。1960年に最初の薬剤が開発された後、同系統の薬剤が多数開発されました。日本でも多く処方されており、耳鼻科領域でも耳鳴症やめまい、咽喉頭異常感症などで広く使用されています。ここ15年程で世界的にもBZDへの依存症が注目されるようになりました。英国の医学雑誌(NEng J Med)に掲載された総説を紹介します。BZDはわずか1ヶ月の使用で半数が依存症になります。短時間で効き始める薬剤ほど依存性が高くなります。耳鼻科関連ではBZDは睡眠時無呼吸や慢性肺疾患での使用は禁止です。依存症の離脱症状が、短時間作用薬で休薬後2~3日で、長時間作動薬で5~10日で出てきます。離脱症状としては痙攣が最も一般的で、聴覚過敏や羞明(眩しく感じる)がBZDの離脱症状に特徴的です。このことから、聴覚過敏の人を診察した場合にはBZD服用歴があるかどうかの確認も行いたいと思います。BZDの作用には、抗不安作用や催眠作用以外にも筋弛緩作用、抗痙攣作用、健忘作用もあります。BZDが高齢者の転倒や交通事故にも影響しているとの指摘もありました。
 我が国ではBZDの依存症に注意しなければいけませんが、米国では現在、オピオイドの依存症が大きな社会問題になっています。先週の日経新聞土曜版の1面特集では米労働市場への影響が特集されていました。オピオイドはアヘンと同じケシ由来の化合物から作られる麻薬などで、モルヒネやヘロインを含みます。米国では90年代に医療用鎮痛剤として普及しました。同新聞では米国の25~54才の労働参加率は90年代初頭の93%から16年には88%台に落ちています。その間、日本は97%から96%にわずかに減っているだけです。米国の低迷は日米欧5ヵ国の中でも際立っています。その主因と見られているのが米国でのオピオイドの蔓延です。米疾病対策センターによると、2015年の過剰服用による死者数は3万3千人で00年の4倍、同じく15年の調査では12才以上の米国民の36%9750万人が直近1年でオピオイド系の医療用鎮痛剤を服薬し、その内の1250万人が不正使用、203万人が依存症とされました。働き世代なのに労働力でない男性の半分弱が鎮痛剤を日常的に服用し、その3分の2がオピオイドなどの医療用鎮痛剤でした。トランプ大統領は今月10日にオピオイド依存症の問題で国家非常事態を宣言する用意があると表明しています。BZDよりも深刻な依存症が米国で進行しているのです。幸い日本ではオピオイドは主に癌性疼痛の治療薬で、その処方や管理は厳しく規制されています。日本でもBZDの闇取引はニュースになったこともありましたが、オピオイドの依存症はまだ顕在化していません。日本でオピオイドの違法使用が蔓延しないよう厚労省には、医療用薬剤のこれまで通りの厳格な管理と違法薬剤の国内への入り込みの摘発を続けてもらいたいです。

小児の中耳炎の話題  17年8月23日
 小児中耳炎関連の話題では、肺炎球菌ワクチン導入の影響の研究が、米国でも慶応大と同様に行われています。米ロチェスター総合病院研究所の発表では、小児の急性中耳炎が大幅に減少ました。ワクチン導入前の1989年の研究では、3才までに80%が1回以上中耳炎にかかり3回以上が40%でしたが、ワクチン導入で1回以上かかった例が60%に3回以上が24%にと目に見えて減っています。しかし、肺炎球菌以外のインフルエンザ菌やモラキセラ菌によるものが起炎菌として増えていることから、これまでの治療指針のペニシリン系抗生剤アモキシリンをファーストチョイスのではなく、アモキシリンとクラブロン酸の合剤またはセフェム系のメイアクトを使用する頻度が増えたそうです。当院でも炎症反応が強い肺炎球菌が起炎菌の中耳炎が減り、その代わりに遷延化して治りにくいインフルエンザ菌やモラキセラ菌によるものが増えた印象があります。このため、鼓膜の腫脹などの反応が強い中耳炎が減ったことで、外科的治療である鼓膜切開に頼るケースも減ってきているものと思われます。
 また、米国小児科学会の論文では、テキサス大が0才児を1年間モニターしたところ、やはり80年代や90年代より中耳炎の発生率は減ってきています。発症のリスクとして、頻回の上気道感染症の罹患、母乳保育の不足、たばこへの暴露の関与が認められました。この論文では、乳児の中耳炎発症率が低下した理由として、母乳保育の増加や喫煙率の減少、小児呼吸器感染症を起こす細菌やウイルスに対するワクチンの普及によるものと考えています。私は母乳保育が中耳炎予防に良いとの直接的な論文は初めて目にしました。興味深かったです。
 さらに、米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会議が小児滲出性中耳炎診療ガイドラインの改訂版を出しました。これは2004年に同会議と米国小児科学会が共同で作成したガイドラインの13年振りの改訂版です。このガイドラインの主な改訂内容は、診断を確実にするために気密耳鏡検査法とティンパノメトリーを行うべきとしています。気密耳鏡検査というのは日本では「ブリューニングの拡大耳鏡」を使って鼓膜を見る検査の事です。外耳道を密閉するような形の耳鏡の横からゴム球を使って外耳道に陰圧陽圧を掛けて鼓膜の可動性を見るものです。顕微鏡や気密耳鏡を用いるのはやはり耳鼻科医が主流です。この指針の意味は、米国の家庭医は耳鼻科専門医並みにしっかり鼓膜所見を取りなさいということですので、耳鼻科医としては大いに支持できる改定です。さらに改訂版では、鼓室内チューブ留置術を最も有効な治療法として位置付けています。滲出性中耳炎を診たら3ヵ月保存的に経過観察(watchful waiting)した後のチューブ留置を推奨しています。今後、我が国でもこの流れに沿ってより積極的にチューブを留置する症例数が増えるかもしれません。米国の耳鼻科の話がでたついでのよもやま話ですが、現在の米国では研修医が研修終了後に専攻する進路の難易度は、心臓外科や脳外科の偏差値が高いのではなく、1.皮膚科、2.耳鼻咽喉科頭頸部外科、3.美容外科の順に人気が高いとのデータを見たことがあります。耳鼻科は米国では難関専攻科です! 
 私はよく診療ガイドラインを取り上げますが、それは医療の現場でおおいに役立つからです。そんなガイドラインを集めたサイトが開設されています。EBM普及推進事業Minds(マインズ)が、各科のガイドラインを広く公表しています。私にとっては便利なサイトです。厚生労働科学研究費補助金により財団法人日本医療機能評価機構が運営するという、おもいっきり公的なサイトです。専門的なガイドライン以外にも、一般の方向けに判りやすく解説した「ガイドライン解説」も多数公開されていますので、一般の方もこのサイトでさまざまな病気の現在の医療水準や治療方針が分かることから参考になると思います。 

オフィスのレンタルサービス  17年8月23日
 初めてオフィスのレンタルサービスを利用しました。コニカミノルタの関連会社として始まった、キンコーズの松山千舟町店です。昨年3月に開店しています。四国では1号店です。中待合に掲示してある「診察時のお子様の介助の仕方」の写真ポスターですが、10年以上前から掲示していたこともあり、ラミネートしていても退色して古臭くなっていました。どうにかせねばと思ってキンコーズを日焼けしたポスターを持って訪ねてみると、A2版の大きなポスターもしっかりスキャンの上、PDF&JPEGにファイル化してくれました。これを自分でワードに落として文章も少し改変、コンビニのカラーコピー機で拡大すると、新品のポスターの完成です。いやー、感激しました。便利です。キンコーズでは、商業用の大きなポスター製作や製本も行っています。名刺の原本を持っていけばその場で名刺も複製してくれます。都会のオフィス街ではお馴染みのサービスかも知れませんが、私にとっては新鮮でした。


耳鼻科での小児の診察  17年8月23日  
 お子様を診る際には、保護者の方の協力がかかせません。お母様方も小児科の診察には慣れていますが、耳鼻科の介助のしかたはちょっと違います。耳をよく見るために、保護者の方にお子様の手をおへその前で抑えて頂くことにより、お子様の肩が下がってもらいたいのです。この体位を写した一目瞭然の写真をこれまでは中待合にのみ掲示していたのですが、今回2部作成しましたので、診察椅子から見える壁にも新たに掲示したいと思います。ちょうど、のど(喉頭)を診るための姿勢の取り方を図示したポスターの横に掲示したいと思います。以前、耳鼻咽喉科医会から配布されたポスターを参考にして、当院のポスターにはこんな説明を加えています。「お子さんは、正面向きで、手をおへその位置で抱えて、肩が下がるように、しっかりと、やさしく抱いてください。診察はすぐに終わります。小さなお子さんは、お母さん・お父さんのやさしさが、いちばんの励みです」 診察がスムースになればと期待しています。

日耳鼻総会より得たもの  17年8月15日
 先の日耳鼻総会の私の忘備録を挙げておきます。日耳鼻総会と専門医講習会の出席でどうにか今年度、耳鼻咽喉科専門医の更新が出来ました。新専門医制度では、以前にもまして学会の講習会への参加が義務付けられています。次回の更新は5年後です。診療との折り合いをつけながら、学会に出席していこうと思います。今年はさらに気管食道科認定医の更新年度にも当たっています。気管食道科認定医はメジャーの専門医制度からは外れていますが、私にとっては大事な資格です。日本気管食道科学会にも出席しなければいけません。

平衡:
・内リンパの吸収産生には水代謝が関与し、内リンパ嚢で吸収される
・音響外傷では強大音により血管条の血管が攣縮し、虚血再灌流によりフリーラジカルが過剰に生じる
・メニエール病発作の本態は、慢性内リンパ吸収機能低下に急性水代謝障害が加わり起こる
・両側前庭障害は有病率28人/10万人とまれ
・VEMP(Vesutibular Evoked Myogenic Potential):胸鎖乳突筋で記録するcVEMPで球形嚢機能を、下眼瞼で記録するoVEMPで卵形嚢機能を評価
・外側半規管型BPPVの半規管結石症では方向交代性下向性眼振、クプラ結石症では方向交代性上向性眼振
・片頭痛関連めまい-5-15%、心因性めまいが5-30%
・3テスラMRIで造影剤注入後4時間後の内リンパ水腫描出
顔面神経:
・水痘帯状疱疹ウイルスVZVのVZV岡株ワクチンによりHunt症候群の罹患頻度の減少が期待される
・後遺症治療にボツリヌス毒素の局注、神経再生誘導チューブ(ナーブリッジ)の応用
・顔面神経麻痺診療の手引き:作成して6年経過、完全麻痺患者での顔面神経減価術の推奨度はC(行うよう考慮してよいが十分な科学的根拠なし)
鼻副鼻腔:
・嗅覚障害は人口の1%とされてきたが、米国では40才以上の23%、80才以上の32%との報告あり。嗅神経性の感冒後嗅覚障害には神経成長因子を誘導する当帰芍薬散が導入され、連日においを嗅ぐことで神経の軸索伸長とシナプス再形成を促進する嗅覚刺激療法で改善率は70-80%となった。中枢性の外傷性嗅覚障害の改善率は50%。
・鼻腔機能のバイオマーカーとしての呼気中NO濃度(FeNO)-下鼻甲介表面のNOは鼻アレルギー群で有意に高値
・嗅覚障害診療ガイドライン公開間近-基準嗅覚検査が行えない施設でも診断できるよう作成
・ENT-DBI副鼻腔炎治療用カテーテル

書評「ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA」  17年8月12日
 昨日、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備え、陸上自衛隊松山駐屯地に地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備されました。松山と北朝鮮の間には韓国があるので、ミサイルの打上げ失敗で同胞の韓国への誤着を考えると松山はミサイルの標的になり難いと勝手に想像していたのですが、極東の地図を見ると違いました。北朝鮮東部からグアムに向かって発射すれば、韓国を避けて打ち上げることが可能です。確かに愛媛も飛行ルート上になります。冷戦終結の平和ボケに冷や水です。
 そんな状況に、たまたまピッタリの本を数日前から読んでいました。ここのところ、図書館の新着本コーナーで偶然見つける本に衝撃を受け続けています。アニー・ジェイコブセン著「ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA]です。日本では翻訳本が今年4月に出版されました。
  アメリカ国防総省の最先端の軍事研究を行う国防高等研究計画局DARPA(ダーパ)は、1958年の創設以来、インターネット、GPS、ステルス機、ドローン、暗視装置、レーザー、軽量ライフル銃はじめ多くの革新的技術を生み出してきました。本書は軍事機密のベールに包まれているこの組織の実態にせまる史上初めてのノンフィクション作品で、米国では2016年度のピューリッツアー賞ヒストリー部門の最終選考作品になっています。軍事技術からみた戦後国際政治史の本とも言えます。冷戦後の核開発競争、べトコン(ゲリラ)と戦うベトナム戦争、ハイテク兵器による戦争となった湾岸戦争とイラク戦争、9.11などテロとの戦いの軍事史です。またミリタリーだけでなく戦後の科学技術史の本ともいえます。IBMやマイクロソフト、アップル、グーグルなどの民間企業の技術史には触れる機会は沢山ありますが、民間に転用されたものも含めてこれだけ多くの軍事技術を1冊の本で読めるとは思いませんでした。およそ10ページにひとつくらいのペースで、数々の衝撃のエピソードを知ることになりました。2010年公開の映画、イラク戦争中の即席爆発装置IEDの米軍処理班を描いた「ハートロッカー」や、今年1月公開のアメリカ国家安全保障局の盗聴記録を公表しロシアに亡命中のスノーデン氏を描いた映画「スノーデン」の技術のルーツはみなDARPAが開発しています。映画の背景の理解が深まること請け合いです。
 本書は1954年の世界初の水爆実験のルポから始まります。水爆開発の技術者がDARPAの基礎を作っていたのです。原爆の開発史は知っていましたが、水爆の開発史は知らなかった私は最初から知的好奇心で引き込まれました。ビキニ環礁で行われた水爆の爆発は当初予想された6メガトンではなく15メガトンでした。実は実験前までは、100万分の1の確率で地球の大気に引火する可能性も否定されておらず、科学者の中には世界が終わるかどうかの賭けをしていたものもありました。爆発後の閃光が収まった60秒後のキノコ雲の幅は65㎞、最終的には傘の直径は113㎞まで達しました。松山がグランドゼロならば新居浜までキノコ雲に覆われたことになります。想定以上の爆発かつ風向きが実験前の気象予報と違ったために、爆心から30㎞に設置された最も近い観測点の科学者たちは一瞬死を覚悟し、警告のない海域で操業していた日本の第5福竜丸が被爆、後に無線長の久保山愛吉氏が死亡、また2日後には爆心から480㎞離れたロンゲラップ等の環礁の住民を避難させなければなりませんでした。この爆弾の設計には、後にDARPAに加わる数学者のノイマンが関わりました。ノイマンはコンピューターソフトの原理を作ったことが一番有名ですが、実は原爆開発のマンハッタン計画にも参加しており、広島長崎の原爆がどの高度で爆発したら最も殺傷能力が高いかの計算を行い、結果高度550mでの爆発が設定されました。
 1957年10月、ソ連が史上初の人工衛星スプートニクの打ち上げに成功。実はスプートニクは大陸間弾道ミサイルICBMの技術で打ち上げられてたために、米政府は核攻撃の面でも大きなショックを受けました。ドイツのV2ロケットを始めとしてロケット技術はつまるところ軍事技術そのものです。このわずか5週後、アイゼンハワー大統領はDARPAの前身であるARPAの設立を許可しました。アイゼンハワーは当時陸軍と空軍がICBMの製造を競い合っている非効率性にいらついており、各軍の上部組織としての研究機関を設立することになったのです。その後、キューバ危機時に実は米国が2発、ソ連が2発、大気圏外核実験を行っています。この事実も本書が初めて明らかにしました。大気圏外で核爆発を起こすことによってICBMの被弾を食い止めるクリストフィロス効果の実験のためでした。もしこの時の核実験を他方の国が実際のICBM発射だと誤認していたら、本当の核戦争が起こってたかもしれません。本書はNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)の開発初期に月の影響で誤作動が起こり、フルシチョフ共産党第一書記が当時ニューヨークに滞在していたこともあって人間の判断でICBMの発射でないことを確認したエピソードも伝えています。その後、9.11テロ後に米国が最も恐れていたのは生物兵器によるテロでした。いまだに犯人は分かっていませんがワシントンでの炭疽菌汚染も同時期起こっていました。10月にホワイトハウスでは、DARPAが開発した誤作動しないとされていたバイオ兵器の警報装置であるボツリヌス毒素のセンサーが警報を発しました。ボツリヌス毒素はわずか1gで100万人を殺すことができる毒素です。実はセンサーの誤作動だったのですが、翌日まで誤作動かどうか判明できなかったため、ブッシュ大統領が翌日に死亡するかもしれない恐怖を味わっています。このような科学技術史の秘話が満載で、戦後の国際政治や科学技術が好きな私は、もう読むのを止められませんでした。
 DARPAでは、幾人ものノーベル賞を受賞した科学者が守秘契約のもとで研究に協力しました。国の頭脳が軍事力を進化させることがシステムとして確立されていました。軍産連携をよしとはしませんが、今の米国がインターネットをはじめとする軍事技術を基に、技術の分野で世界的な覇権を得て、ひいては政治的な覇権を得ている実態を見ると、日本が今後どのような科学立国を目指せば世界に伍していけるのか複雑な気持ちになります。また、この本では技術的なエピソードだけでなく、科学者の引き抜きや官僚の人事面での抗争や、ダラス委員会などの軍産複合体の予算獲得競争も描いています。予算獲得の欲と軍事技術の進歩がリンクしている怖さも判ります。
 湾岸戦争以降を記した本書の後半では、機密解除された公文書や関係者からのインタヴューを基にこれでもかと新しい技術の一端を紹介します。すさまじいスピードで軍事技術が進歩している様に怖さを覚えました。戦士を不眠不休化し痛みを感じなくするなどの精神へ作用する薬剤、昆虫サイボーグやトンボ並みに小さい超小型ドローンによる軍事行動、スノーデンが明らかにしたような自国民のメールや電話の会話すらたちどころに検索できるシステム、イラクやアフガニスタンの成人男性の顔認証ファイル化などの巨大な監視システム(現在米国に入国するには通関時に写真を撮られますが、当然すべてファイル化されていると思われます)、殺人ロボット、恐怖という感情のない世界、人間の脳にセンサーを挿入して思考するだけで機能するコンピューター(脳性麻痺の人がシュミレーターで飛行機を操縦する実例が本書で紹介されています)など、SFの世界が既に実現していることに驚かされます。
 医療者としての私にとって特に興味深かったエピソードを挙げれば、ソ連では秘密裏に生物兵器の研究開発がソ連邦崩壊まで続きその代表的な科学者が米国に亡命してさらに研究を進めたこと、ベトナム戦争でDARPAの開発した枯草剤のオレンジ剤を兵士の兵站などの農業へ作用する薬であって生物兵器ではないということにしてケネディー大統領が承認したこと、今も生物兵器の研究は粛々と進められていること、などです。例えば、エボラウイルスと麻疹の伝染性を組み合わせて治療が困難になるよう変化し続ける病原菌を作る、遺伝子組み換え技術で作成した細胞内に入って増殖するベクターを使って当初は症状が出ず長期間潜伏するステルスウイルスを作る、このような研究がたやすいことを元亡命者の科学者が指摘しています。遺伝子組み換えなどの先端技術を駆使して人為的に猛毒の病原体を作る、これには当然相手国には解毒剤はありません。なんだか、乱用にともなう抗菌剤の耐性化問題が馬鹿らしく見えてしまいます。
 DARPAでは、開発の見込みが立たない研究にも多額の予算が認められます。今も機密の下で多くの研究が進められていると思われます。自動車業界は今後わずか10年でエンジンからモーターに原動機が変わる大変革の時代に入りました。トヨタの経営陣の危機感は相当なものでしょう。だが軍事研究の大変革は民生機関の比ではありません。人類にとって好ましくない未来をもたらすかも知れません。しかしそこから人類に有用な実用技術も生まれます。AIも軍事分野では既に恐ろしい進化を遂げている気がしてなりません。
(8月29日追加)
 東日本では早朝のJアラートで大変でした。今回の警報が太平の眠りを覚ますことになるのでしょうか。先日このページでも触れましたが、米国が行った世界初の水爆実験でさえ松山市が爆心だとすれば新居浜までキノコ雲で覆われます。もう少し威力のある水爆ならば伊方原発もキノコ雲に覆われます。もし格納容器ごとメルトダウンすれば西日本では数十年間人が住めなくなります。小松左京氏の「日本沈没」を思い出しました。映画版とは違い小説では、国民を国外に避難させるための政府や政治家の危機対応を細かく描いています。皇室はスイスに移住、国外に脱出できた国民6500万人の内で世界が正式に受け入れたのは3000万人、それも大半が移民ではなく難民としてです。私が中学生の頃に読んだ作品に妙にリアリティーを感じて空恐ろしくなります。
(9月3日追加)
 先月、「ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA」の書評で世界初の水爆実験キャッスル作戦について取り上げましたが、その威力は広島型原爆1.000個分の1.500キロトンでした。今日の北朝鮮の核事件について、先ほど、規模が推定70キロトンとの見方を小野寺防衛大臣が示しました。北朝鮮の水爆?は米国の初代よりもまだ規模は小さいものの、それでも広島型原爆16キロトンの4.5個分の威力はあります。先日の書評では、松山に米国第一号の水爆が落ちたとすれば新居浜までキノコ雲覆われる規模とお伝えしましたが、70キロトンでも松山市中心部に落とされれば道後平野は壊滅します。Jアラートの「直ちに頑丈な建物や地下に避難して下さい」ですが、ほとんど地下施設の無い松山では、、想像もしたくありませんが、現実はレッドラインに近づいています。(*後に140キロトンと推定されると新たに報道されました)

仮想通貨ビットコイン  17年8月7日
 8月1日に仮想通貨ビットコイン(BTC)の分裂騒動がありました。2日未明に中国のマイナー(後述します)が分裂させて新通貨「ビットコインキャッシュBCC」が誕生しました。ビットコインや流行語ともいえるFinTech(フィンテック、FinanceとTechnologyを合わせた造語で金融ITとも訳されます)は、私にとっては”なんぞや”の領域で、今回の分裂騒ぎの報道で気になり調べてみました。図書館にはプログラミング言語まで紹介した書籍もありましたが、私には敷居が高く、、 そんなところに私にぴったりの本が見つかりました。日銀出身の早稲田大学大学院教授の岩田 充氏による「中央銀行が終わる日 ビットコインと通貨の未来」です。ビットコインの仕組みと開発の歴史を解りやすく紹介するだけでなく、各国中央銀行が発行する銀行券ではない新たな国際通貨ともいえる仮想通貨の出現で金融政策にどんな影響が出るのか、日本のような低金利下では「流動性の罠」に陥って次の有効な金融政策が打ち出せない中どのような策があるのかなど、フィンテックと経済理論(ケインズ、フリードマン、クル―グマンといった経済学者の理論、流動性の罠、限界価格、コースの定理、フィッシャー方程式など)、日銀の政策(インフレターゲットによる異次元緩和、マイナス金利など)を広く論じた経済学者ならではのBTCの解説書です。
 ビットコイン(BTC)はインターネット上の仮想通貨の代表格です。わずか8年前にサトシ・ナカモトという日本人っぽいニックネームの人が提唱して(このあたり日本人としてはプライドをくすぐられます。しかし無料パソコンOSのリナックスのように匿名の開発者が集まって進化させており、提唱者のナカモト氏でもソフト全体の11%しか書いていないそうです)、コロンブスの卵ともいえる技術が始まりました。取引履歴が一度作成されたら改ざんが不可能な暗号技術で作られたブロックチェーン(分散台帳)という仕組みにして、これを10分ごとに作成保存することで、ネット上に改ざん出来ないデータ化した通貨が作られます。台帳の新しいページを無償で作成するマイナー(採掘者)が新たなBTCを得ることができます。現在のマイナーは巨大産業化しており、スーパーコンピュータ並みの装置が必要です。そのためBTCの価値の源泉はコンピューターを動かす電気代から生まれるともされます。
 本書はBTCの歴史を第二次大戦時のドイツ軍の暗号機エニグマから始めます。現在ネット上で一般的になっている秘密鍵・公開鍵・SSL暗号化通信などの技術も利用しています。本書では、BTCを取引の正当性の確認に暗号技術が使われていることから暗号通貨(クリプトカレンシー)と呼びんでいます。BTCはインターネット上のP2Pネットワークと呼ばれるネット上の共有台帳(ブロック)に証拠性を保存するためのハッシュ値を埋め込んで、10分毎にチェーン化して保存していきます。中央銀行のような管理者を置かずに共有台帳で管理できるのがキモです。ハッシュ関数のハッシュ値を見つける作業(プルーフ・オブ・ワーク)であるマイニング(発掘を意味する)に成功したマイナー(発掘者)が、ブロックを閉じる権利として新しいBTCを獲得できます。つまり、貨幣の流通確認と保存を証明する作業自体が、新しい貨幣の源泉となっています。不特定多数のマイナーに利益を与えることでBTCが運営されます。同時に獲得できるBTC数は4年毎に半数になると創始グループのナカモトらが規定していることから、BTC利用者の拡大に対応するためには、BTCのデータ数を少なくするか、マイナーの利益を確保するためにブロック数を減らさないで運用を続けるかの運用方針の対立によって、今回の分裂騒動が起きました。
 現在の日本銀行は低金利下の流動性の罠に陥っているために有効な政策が打てません。潜在成長率に類似し景気に安定的な影響を及ぼす自然利子率は人口や技術進歩などの基礎的な条件(ファンダメンタルズ)によって決まるので中央銀行によって操作できません。人口減少社会に入った日本では高金利にはなりにくいのです。金融政策で無理やり低金利とすれば、これは将来の利益を先取りしたことにしかなりません。しかし低金利、特にマイナス金利に銀行間だけでなく、本来ゼロ金利である貨幣にも適応できれば金融政策を「流動性の罠」から開放できます。著者はシルビオ・ゲゼルの「スタンプ付き貨幣」を発展させた新貨幣システムを提案しています。日本銀行券をデジタル銀行券とアナログ銀行券に分ける、デジタル銀行券には日々変更可能な「貨幣利子率」を付け、アナログ銀行券は「投資信託」として扱います。そうすれば流動性の罠を乗り越える金融政策が可能になります。日銀が円と交換可能な仮想通貨を作れば、マイナス金利の貨幣も作れるのです。BTCの話が国別の貨幣を流動化させる話になりました。BTCの登場は貨幣経済のブレークスルーになりそうです。
 BTCとの関連ではありませんが、筆者は流動性の罠に陥った日本は将来、”物価のジャンプアップ局面”とデフレが交代で起こる金利現象を予想しています。日銀には残念ながら制御するパワーはないと見ています。怖い話ですが、急激なハイパーインフレも夢物語ではないようです。ハイパーインフレは国家にとっての徳政令みたいなものです。銀行に預けているお金の価値が一気に減るだけでなく、国の借金である国債を年金基金や銀行預金で知らず知らずに保有している庶民全てが損実をこうむることになります。ある日突然、数日間生活費レベルの預金の引き出ししか認められず残った預金は全て新円に置き換えられる預金封鎖(実際、終戦直後に行われ、財産税導入・戦時国債の無力化とともに国の借金をチャラにしました)も夢物語ではないかもしれません。
 ここから蛇足ですが、BTCも金融商品のひとつになっています。BTCが分裂しなければ、BTCの総量には限界があることから外部から資金が入れば価値が上昇するからです。今夏、日経平均株価は36年振りの価格変動の無いステージ(ボラティリティが少ないといいます)を迎えています。BTCは今年初頭から約3倍に値上がりして並みいる金融商品のなかでは一番の運用成績です。でも民間のBTCの交換業者で売買しようと思うと、売買時に2.5%近くは鞘(スプレッド)を抜かれます。BTCは送金手段としては手数料がほとんどかかりません。金融商品としてよりは外貨送金手段として有用ですね。

上気道炎と続く発熱  17年8月5日
 上気道炎で発熱が1週間以上続く方が複数見られました。このようなケースでは、ライノウイルスのような一般的な弱病原性のウイルス感染の後の細菌による中耳炎や副鼻腔炎、扁桃炎や肺炎などの二次感染に注意しなければいけません。また、ウイルス性では今の時期であれば、アデノウイルス、成人のRSウイルス、ヒト・メタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスなどが考えられますが、10~30才代で注意しなければいけない感染症にヘルペスウイルス科によるものがあります。
 単純ヘルペスウイルスの初回感染では10%に長引く発熱、歯肉口内炎が見られますが、90%の人は不顕性感染といって明確な症状がなく終わります。
 さらにヘルペスウイルス科ではEBウイルスやサイトメガロウイルスによる伝染性単核球症があります。EBウイルスによるものが80%、サイトメガロウイルスによるものが20%とされます。EBウイルスによるものは、日本人の80%が出生時には母親からの移行抗体を有していることから乳児期に感染すれば軽い扁桃炎程度で終わりますが、10~30才代に初感染すると症状が強く長く現れます。典型的所見は白苔形成性の扁桃炎・頚部リンパ節炎ですが、発熱が10日以上続いたり肝機能障害、脾腫を来すこともあります。一方、サイトメガロウイルスによるものは、抗体の無い胎児(先天性CMV感染症)や移行抗体が十分でない早産児や低出生体重児で重症化します。サイトメガロウイルスの方がEBウイルスよりも乳幼児期に不顕性感染で終わることが多いとされていましたが、近年、我が国の妊娠可能年齢の女性におけるCMV抗体保有率が90%台から70%台に減少していることから先天性CMV感染症や10~30才代の人の感染症が増えています。これらの感染の有無を見るには血液検査で、EBウイルス急性感染期の抗体(EB-VCA-IgM)やサイトメガロウイルス急性感染期の抗体(サイトメガロ-IgM)を確認しますが、発症後1週間以降にならないと陽性化しませんので、早期診断出来ないのがネックです。
 上気道炎後の発熱が1週間以上続き原因が特定できない場合には、当院でもEBウイルスやサイトメガロ感染症の確認は行いますが、免疫不全や自己免疫疾患、肝炎腎炎やカビ(真菌)や嫌気性菌による深部感染症など重篤な経過となる病気が潜んでいることも考えられますので、経過を見ながら総合病院レベルの内科小児科へ紹介することとなります。

愛媛国体とブルーインパルス、松山外環状道路  17年8月2日
 診察室では朝から蝉が喧しいです。当院から松山ICと松山空港を結ぶ自動車専用道の松山外環状道路空港線の高架が見えています。国体を前にした9月18日に側道部分がいよいよ開通です。当院からわずか150mで松山自動車道に直結することになります。そうそう機会はありませんが私も診療後に愛媛大重信キャンパスや徳島大蔵元キャンパスに向かう際には結構な時間短縮になりそうです。開通後は院内から高架を通る車の明かりが眺められそうで、少し都会っぽい気分を味わえそうで今から開通が楽しみです。判りにくいのですが、病院から横に白く伊予鉄郡中線を跨ぐ外環状道路空港線の高架が見えます。こちらから工事車両が見えますので、路肩のフェンスは低そうです。
(9月1日追加)
 9月、当院近隣では大きなイベントが控えています。9月18日、松山外環状道路空港線がいよいよ松山空港まで伸延します。当院からも高架を走る車を間近で見ることになります。いやー、都会っぽくなります。9月26日、道後温泉の別館、飛鳥乃湯がオープンします。「女性一人旅で行きたい温泉地全国ランキングトップ」の道後道後の温泉風情がまた高まります。9月9日の会期前実施競技から始まり9月30日の開会式から10月10日の閉会式まで愛媛国体の開催です。国体不要論も聞かれますが、参加人員延べ24万人は毎年開催されている行事ではやはり我が国最大のイベントです。私も初めて経験します。私はほとんどのスポーツがテレビ観戦ですので、この機会に生観戦にもチャレンジしてみます。手元の市の広報紙をみると、水球、テニス、自転車、ゴルフ、体操、柔道、ボウリング、ハンドボール、高校野球は水曜午後か祝日を利用して観戦できそうです。この内の一つか二つは出来れば会場に行ってみたいです。また、9月30日の国体開会式では航空自衛隊ブルーインパルスの展示飛行が行われます! 9月30日土曜日の13時50分頃、県総合運動公園の上空を飛行します。前日の午前にも予行飛行が予定されています。私は以前、岩国の航空祭で一度だけブルーインパルスのスモークたなびくアクロバット飛行を見たことがあります。道後平野で曲技飛行が見られるなんて強熱です! 当院からは総合運動公園方面となる道後平野の南が広く見渡せます。東から来るか?西から来るか? ジェット戦闘機の轟音が聞こえたら、しばし数分間、恐らく1分以内でしょうか? あっという間に過ぎ去ると思いますが、診察の手を止めて、子供達や患者様とともに雄姿を見たいです。
(9月9日追加)
 今日のから愛媛国体の会期前実施競技の弓道が始まりました。愛媛国体のマスコットキャラクターは「みきゃん」です。松山空港にはみかんによるシャンパンタワーがあります。愛媛のお土産はみかんづくしです。関東での愛媛のイメージは、ポンジュースのCMのせいでなんといってもみかんジュースだそうです。なんだか誇らしいような微妙なような、、です。
(9月23日追加)
 朝夕はめっきりひんやりしてきました。来週には国体開催と行幸を迎えます。天皇皇后両陛下は松山空港に特別機で御着の後、県総合運動公園での開会式にご臨席され、県美術館、県武道館、道後温泉本館をご視察、お泊所は松山全日空ホテルです。県武道館の取り付け道路周辺などの整備も進んでいます。私もおかげで快適にドライブできます。国体開催を前にして、外環道空港線側道部が開通しました。市駅前の花園町通りの整備もほぼ完成です。老朽化していたアーケードが無くなり、電線が地中化され、遊歩道が広がり、東側のお店にはロープウェイ街のような庇状の天幕が設置されたことから、街歩きが楽しくなりそうです。早速今日は遊歩道で青空市が開かれていました。一昨日からは低床式の新型市内電車5000系も走り始めました。道後温泉別館の飛鳥の湯もまもなく開業です。市内随所が新しくなって、私の気分も一新です。市内中心部では紙垂(しで)の白い紙がたなびくようになりました。2週間後には地方祭です。
 当院から見える外環道の、伊予鉄郡中線上の高架部の夜景です。昔気質の私からすれば自動車専用道の街灯はオレンジ色のナトリウム灯の方が”らしかった”のですが、白色のLED灯でもちょっと都会気分になりました。開通後に心配していた当院前の県道の混雑化ですが、今のところ全くありません。(^^)
(9月28日追加)
 愛媛国体総合開会式もいよいよ明後日です。今晩は行幸ルート沿線道路の放置自転車の移動や路肩の清燥が急ピッチで進められていました。
 ついに明日は、航空自衛隊ブルーインパルスの展示飛行の予行が行われます。ブルーインパルスは宮城県松島基地所属の第11飛行隊です。松島基地のジェット戦闘機の津波被害は記憶の方もおられると思います。飛行隊は恐らく今日には福岡県の瀬戸内海沿岸の築城(ついき)基地にスタンバイしているものと思われます。明日の予行は9時50分(天候によっては11時50分)に予定されています。国土交通省航空局航空情報センター(AISセンター)からの航空情報NOTAM(ノータム)によると、
 E)AIR DISPLAY BY BLUE IMPULSE:
  1.FLT AREA : WI A RADIUS OF 8NM OF 334605N1324751E
   (SOGO-UNDO-KOEN,UENO-CHO MATSUYAMA-SHI IN EHIME)
   ALT: 1500FT-5000FT AMSL
  2.HLDG AREA : AROUND AIRSPACE SW OF 334639N1322335E
   ALT: 3500FT AMSL
  3.USING ACFT: T4 X 6
  4.WX COND : VMC ONLY
  5.RMK : VFR ACFT FLYING AROUND ABV AREA CTC IWAKUNI APCH128.0MHZ
 F)1500FT AMSL
 G)5000FT AMSL
県営総合運動公園の上空、海抜457mから1520mで有視界飛行の展示飛行を行います。総合運動公園の海抜が50m程ですので、開会式上のわずか400m上空を轟音とともに駆け抜けることになりそうです。築城リモート岩国交信で、私の勝手な飛行ルート予測は、瀬戸内海から砥部に向かって西から東への飛行ですが、明日、東か西かどちらから雄姿を現すか?楽しみです!
 1964年の東京五輪の開会式では初代ブルーインパルスF-86がカラースモークで大きな五輪の輪を描きました。1988年の長野冬季五輪の開会式では会場上空で扇方に展開しました。当時のTVドキュメンタリーを見たことがありますが、山岳地帯を数秒の誤差もなく展示飛行した当日の緊張感がよく伝わりました。実はカラースモークは1998年に車に色が付いたとのトラブルから使用されていません。2020年の東京五輪に向けて航空自衛隊ではカラースモークの復活に向けての技術開発が行われています。2020年の開会式の展示飛行がどうなるか、開会式はこれだけでも楽しみです。愛媛国体の開会式次第は分単位で進行します。11時50分の開会宣言の直後にブルーインパルスが登場の予定です。少なくとも10秒単位での正確さが要求されそうです。運動公園上空で扇方に展開の後、石鎚連峰に向かって上昇する? 診察中の私はこれは録画で確認することにします。
 私の周りではブルーインパルスが来ることを知っている人は少ないようでした。松山上空で展示飛行が見られるのは今後数十年ありません。29日の予行は9時50分か11時50分、30日の本番は11時50分です。中予地方の方は轟音に気付いたら空を見上げてみて下さい。
(9月30日追加)
 国体の総合開会式が無事終わりました。先ほど録画で見ていましたが、ブルーインパルスの展示飛行は私の予想とは違っていました。厳かなで静かな編隊飛行でした。飛行ルートも道後平野を東西に直線的に横断するのではなく、会場の総合運動公園の東側をカーブしていました。重信川の下流にある当院の近くには飛んできませんでした。民間航空機の松山空港への侵入ルート周辺を避けたような飛行コースでした。私なりに調べて飛行ルートを予想していたのに、大外れで恥ずかしい限りです。展示飛行自体も、私は航空祭や五輪のようなアクロバット飛行を期待していたのですが、実際は低速で重厚な飛行でした。そうでした、市街地上空での派手な高速の飛行は、危険で騒音の問題も起こります。昨日の予行(11時49分頃でした)では当院でもかすかに轟音は聞こえましたが、今日の本番では風向きも影響したのか音さえも聞こえませんでした。一人で盛り上がって期待していただけに、ちょっと脱力感です。('_')(10月1日追加)
 今日から愛媛国体の競技が始まりました。朝は富山県選手団を見かけました。診察では某県の国体選手が受診されました。やはり選手の方はドーピング薬について気にしておられました。早速、講演会で得たドーピーングの知識が役に立ちました。
(10月4日)
 今日は中秋の名月です。澄んだ秋空にお月様が輝いています。中秋の名月は太陰太陽暦の8月15日で、本当の満月は明後日ですので、天文学的には13夜なんですね。日中も澄んだ秋空でした。水曜の午後の休診を利用して、時間があれば男子ゴルフの国体観戦をと考えていましたが、診察終了が午後を回り、月初めの医療事務に時間を取られ、念のため夕刻ゴルフ場に電話で問い合わせたところ既に競技は終わっていました。秋空のゴルフ場はさぞ気持ちよかったでしょう。残念でした。
(10月7日)
 愛媛国体も早いもので11日間の日程も3日残すだけとなりました。ブルーインパルスの飛行経路が私の予想と全く違っていて、当院で見えなかったのは心残りでしたが、あれだけ一人で盛り上がっていましたので、記念の生写真を挙げておきます。よんやくの竹内氏が、ブルーインパルスの飛来前に私が話題にしていたこともあって、写真を撮ってくれていました。
 YouTubeではえひめ国体関係の様々な動画が早々とアップされています。ブルーインパルスの展示飛行だけでも様々な場所から、前日の予行も当日の祝賀飛行もアップされています。総合開会式会場から、えひめこどもの城から、重信川の土手から、松山城から、松山総合公園からなどがありました。回りの人達の歓声が聞こえるのも見ていて楽しいです。さらに、ブルーインパルスの松島基地の出発の様子や、築城基地の離発着、松島基地への帰投まで、様々な動画がアップされていてびっくりです。乗り物関係でいえば、天皇陛下の特別機の離発着や車列も様々な場所のものがアップされています。当日、ブルーインパルスがこの目で見られなかった私も少し気が済みました。
 YouTube ブルーインパルス 愛媛国体 愛顔つなぐえひめ国体 開会式 祝賀飛行 へ
 スモークをたなびかせて編隊飛行するブルーインパルスです。機影が小さいので疾患情報のコーナーとしては大き目な写真にしています。
 天皇皇后両陛下のお泊所の松山全日空ホテル前で行われた提灯奉迎の人波の写真も掲載しました。私は予定を知らずに偶然一番町を通っていました。ホテル前の松山地方裁判所の中庭から奉祝していました。

悪性外耳道炎  17年7月29日
 連日の猛暑です。汗ばみます。外耳道の湿疹の悪化→綿棒や耳かきで掻き過ぎてブドウ球菌が増殖して外耳道炎化→外耳道の奥(骨部外耳道)に炎症が波及して痛みが強くなる→鼓膜に炎症が広がり慢性化すると肉芽性鼓膜炎、皮膚に元から隠れているカンジダやクリプトコッカスというカビ(真菌)が広がり外耳道真菌症化、外耳道の入り口の毛穴から感染が広がり耳癤(じせつ)化、皮膚の深部に炎症が広がり蜂窩織炎化や頚部リンパ節腫脹化 などの方が見られます。今日は特に外耳道真菌症が悪化した方が来院されました。
 外耳道は皮膚の深部で骨に接している部位ですので、時には炎症が周囲に広がり重症化する場合があり悪性外耳道炎と呼ばれます。悪性といっても癌ではありません。壊死性外耳道炎や頭蓋底骨髄炎とも言われます。高齢者や糖尿病などで外耳道局所の免疫力が落ちている人の外耳道底部から炎症が周囲の骨組織に広がることによって発症します。専門的には炎症が前方の顎関節周囲に広がると開口障害、内方から茎乳突孔に広がると顔面神経麻痺が、頚静脈孔に広がると舌咽迷走副神経麻痺が、舌下神経管まで広がると舌下神経麻痺が起こります。さらに頭蓋内まで広がると細菌性髄膜炎、脳膿瘍、S状静脈洞血栓を生じます。このように死に至るケースもあることから悪性と呼ばれます。治療では抗菌薬を少なくとも6週間、時には半年投与しなければいけません。手術で中耳周囲の腐骨部を清掃しなければいけないケースもあります。単純な外耳炎だけでも痛みは相当不快ですが、悪性外耳道炎となればシビアです。外耳道も侮れない場所です。

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