原発性免疫不全症(PID)という病気が認知され始めています。この病気は、先天的に免疫系に障害を持ち生体防御機能に異常をきたす疾患群で、原因遺伝子や障害される免疫担当細胞の種類や部位により、現在までに300種類程度が報告されています。症状は、中耳炎・副鼻腔炎・肺炎を繰り返す反復感染、髄膜炎・骨髄炎・敗血症などの重症感染、真菌やウイルスの治癒が困難になる難治感染、抗菌薬の投与でも改善しない持続感染、日和見感染などの易感染性が特徴とされます。2008年の厚労省の全国調査では患者数は1.305人でしたが、米国の報告では有病率が1.200人に1人とされ、我が国でも調査の少なくとも10倍の患者が存在すると言われています。PIDの診断基準として「PIDを疑う10の徴候」という世界共通の基準があります。その中には耳鼻科医が日頃接する機会が多い徴候も含まれています。小児版では ○1年に4回以上中耳炎にかかる ○重症副鼻腔炎を繰り返す ○抗菌薬を服用しても2か月以上感染症が治癒しない ○1歳以降に、持続性の鵞口瘡、皮膚真菌症・広範囲な疣贅(いぼ)がみられる 成人版では 1年に2回以上中耳炎にかかる ○1年に2回以上重症副鼻腔炎を繰り返す ○2年以上1年に1回以上肺炎にかかる ○径静脈投与を要する感染症の反復 ○持続性の鵞口瘡や皮膚真菌症がみられる ○2回以上、髄膜炎、骨髄炎、蜂窩織炎、敗血症や皮下膿瘍、臓器内膿瘍なdの深部感染症にかかる などです。厚労省の研究班では、これらの項目の1つ以上該当すれば専門医のもとでの精査を推奨しています。耳鼻科の外来診療では、この条件を満たすケースは決して珍しくありませんので、基準に適応する患者様が外来に多い事には少々ビックリします。精査には、免疫グロブリンIgG,M,A値、T細胞数(CD3/4/8陽性リンパ球)、B細胞数(CD19/20陽性リンパ球)、血清補体値(CH50)、特異抗体などを調べます。治療は、重症複合型には造血幹細胞移植を、PIDの約半数を占める抗体不全症にはIgG値を1.000㎎/dl以上に保つ免疫グロブリン補充療法で、感染症の予防が可能となっています。私も免疫不全の視点を忘れないように診療を行いたいと思います。
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