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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科を専門とし、地域医療に貢献します。

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

院長の徒然草 過去ログ ~15年1月

「今月の疾患情報」のコラムも一部再掲しています。
  「院長の徒然草」過去ログ ~13年 3月 へ

  「院長の徒然草」過去ログ ~12年12月 へ

AEDの導入と二次救命処置の講習会   14年8月22日&14年8月5日&15年1月19日
 お盆前に、当院のAEDの導入と講習が終わりました。AEDは毎日自動で、機器に異常がないか自己診断してPHSでデータをメーカーに送信します。異常があれば当院にも即座に連絡が入るというシステムです。改めて、万全なサポート体制に感心しました。AEDの世界的な普及率をみると、人口比では日本が1番だそうです。それでも救急時のAEDの活用率は3%とのことで、もっと活用できれば救命救急率が上がることが期待できます。改定された救急マニュアルでは、全く意識が無い、全く呼吸をしない、心拍動がない、この3点が確認できれば即座にAEDを装着して、自動判定の上で除細動を行います。しかし、公共の場で人が倒れていた場合に、周囲の一般の人(救命救急ではバイスタンダーと呼びます)が即座に意識・呼吸・脈拍を観察して、冷静にAEDを取りに行き装着するというのは、なかなか難しいと思います。実際は、”直ぐに119番通報して、救急車が到着するまで付き添っていてあげる”のが一般的な対応だと思われます。日本臨床救急医学会では2010年に「心肺蘇生の指導方法、指導内容に関するコンセンサス2010」という提言を行い、その中で、小学校中高学年の低年齢でも「安全を確認しつつ、救命の連鎖を理解し、実技によって友だちと協力して心肺蘇生を実施することができる。心肺蘇生に必要な知識とともにAEDを使用することができる。実技が必ずしも十分伴わなくても容認する。」ことを目標としています。今後、義務教育の場で、心肺蘇生やAEDの講習の機会が広まれば、日本で年間6万件を超える心原性心肺停止の救命率が上がるものと期待されます。 

 当院外来も本格的な夏休み入りです。例年、当院ではこの時期を利用して、救急体制の再確認を行っています。今日はまず新しい救急マニュアルの輪読を行いました。
 日本ではAED(自動式体外除細動器)が医師以外でも使用可能になって10年になります。最近では公共施設の至る所でAEDを見かけるようになりました。また、2010年にアメリカ心臓協会(AHA)の心肺蘇生ガイドラインが改定になったことから、我が国の救急処置や心肺蘇生のマニュアルも、ここ3年で大きく変わりました。従来はABC(A=Air Way(気道確保) B=Breathing(呼吸) C =Circulation(循環))の順番でしたが、CABと循環機能の処置が最優先とされるようになりました。意識消失&呼吸停止&脈拍の認められないケースでは、人工呼吸より先に、直ちに100回/1分間のペースで胸骨圧迫を行います。それでも心拍動が戻らない場合には、AEDで自動判定の上、除細動を行うことが求められています。当院ではこれまで一般的な除細動器を備え付けていましたが、バッテリーの更新時期を迎えたことから、この夏にAEDも新たに設置することとしました。(ちなみに従来の除細動器も、コンセントからの給電で心電図モニターとしての使用は可能ですので、心電図モニターのバックアップとして外来には備え付けておきます) 当院では開院以来、幸にも挿管を含む人工呼吸や除細動を必要とする機会はありませんでしたが、今後も万一に備えて、救急処置のトレーニングや救急器具の整備点検は、怠らないように心したいと思います。

 先日12日の成人式の日、当院の休診を利用して、医師会が主催する二次救命処置の講習会に参加してきました。この講習会は日本救急医学会認定のICLS(Immediate Cardiac Life Support)コースという、本格的な講習会でした。受講生30名余に対してインストラクターが40数名。朝8時半開始、昼食時にもランチョンセミナーをしながら午後5時過ぎまで。座学は計30分程度で、後は実技講習の連続でした。街中での心肺停止患者に対するAEDによる対応や、心電図波形を確認した上でのチーム医療による除細動、挿管による気道管理など、実践に即した実技講習でした。私も耳鼻科のはしくれ、、気管内挿管には自信があったつもりでしたが、幸か不幸か開院して以来、心肺停止や意識消失の救急は経験せずじまいでしたので、人形モデルを用いた挿管手技ではおもわず手こずってしまいました。頭では解っているつもりでも、やはり訓練を重ねていないと素早い対応が出来ないことを再認識させられました。今回の実技講習は、体の感覚を思い出すその意味でも、大いに有意義でした。心肺蘇生中は除細動を行うわずかな時間以外は、基本的に胸骨圧迫(心臓マッサージ)は続けます。挿管処置中も胸骨圧迫を停止するのはたかだか10秒です。救命処置中は、チーム医療で交代しながら胸骨圧迫を続けます。朝から繰返される実技講習で、私も含め受講者みんなが汗だくでした。講習の前に講師の先生からは「明日はみなさん筋肉痛ですよ」と言われましたが、講習中に思わず納得です。翌日、私の手の甲はうっすらと内出血でした。  


インフルエンザ脳症の発症機序   15年1月8日
 インフルエンザ脳症の発症機序の研究が進んでいます。徳島大学疾患酵素学研究センターの木戸教授によれば、インフルエンザ脳症は ”乳幼児の脳血管内皮細胞のエネルギー代謝不全を原因とする血管透過性亢進から惹き起こされた脳浮腫”とのことです。乳幼児期に多いのは、乳幼児は脳血管内皮細胞のエネルギー代謝を脂肪酸の代謝に依存する程度が強く、高熱でこの代謝が不全状態になりやすいためと考えられます。また、東アジア人種で多いのは、脂肪酸を代謝する酵素が遺伝的に熱に不安定なタイプが東アジア人種に多いからとのことです。この機序は、インフルエンザだけでなく、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)脳炎や脳炎ウイルスにも共通した病態と考えられます。このため、脳炎予防の為の治療としては、頻回の哺乳により飢餓状態を避け、高熱を避けて代謝酵素の失活を防ぐことが大事です。これまで小児の発熱については、高熱でも脳にダメージは与えないので解熱剤は使用しすぎない方が良いとの考えが広く普及していましたが、脳炎発症の機序がさらに解明されれば、栄養補給の重要性とともに、クーリングの重要性も再認識されるかもしれません。


耳鳴に対する診療ガイドライン   14年9月20日
 今月1日、米国耳鼻咽喉科頭頸部学会が、エビデンスに基づいた耳鳴に対する初の診療ガイドラインを学会誌に発表しました。私は、耳鳴の原因は多岐に亘るとともに原因の確定が困難な事が多く、また精神的な要因も多いため、ガイドラインの作成は困難と考えていました。今回のガイドラインがどのようなものか、私も興味深々でした。この学会による耳鳴診療のアルゴリズムを紹介すると、18才以上の耳鳴患者に対して、耳鳴の原因疾患の存在や重度の気分障害があればそちらの検査治療を優先します。原因の特定できない片側性や拍動性、難聴の合併のある耳鳴では聴覚検査を行こなった後に治療します。耳鳴が6ヶ月以上続き、原因が特定できない場合には、補聴器装用や認知行動療法、音響療法を勧めます。この段階では、漫然とした薬物療法、反復径頭蓋時期刺激、食品サプリメント、ルーチンの画像検査は勧められません。このガイドラインで私が注目するのは、最後の部分です。つまり、原因が特定できず慢性化した耳鳴症には、難聴例では補聴器装用を、無難聴例では耳鳴り順応(TRT)療法を試すことが推奨され、薬物療法や頻回の画像診断は勧められないという部分です。思いのほか大雑把な?ガイドラインですので、すぐに日本の診療の現場に反映されることはないと思われますが、従来よりもより積極的に耳鳴り順応療法を行う機会は増えるかもしれません。

アメリカの医療事情   14年9月15日&15年1月3日
 昨日当院に、翌日より米国に移住のために出発するという患者様が来院されました。今日はアメリカの医療事情についてお話します。
 2007年、マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画「シッコ」が公開されました。高額医療で6人に1人が無保険のアメリカの医療事情を皮肉った映画です。病院が医療保険を持たない患者を他の救急病院の裏口に”捨てる”、キューバに不法入国してまで医療を受けるアメリカ人、など衝撃的なエピソード満載の映画でした。当時は医師会でも上映会を開いて話題になりました。 現在TPP交渉は、日米の農産物と自動車の交渉が行き詰まっています。交渉中は報道規制しますので、私たちの耳にはまだ入りませんが、医療をはじめとする保険分野の交渉もどこまで進展しているのでしょうか? 1994年に日米保険協議がまとまり日本の保険の自由化が始まり、これによって第3保険と呼ばれる医療保険や介護保険の自由化が認められました。続くTPPによって保険診療と自由診療を同時に行う混合診療がどのように解禁されるのか。日本のありように大きく関わるTPPを理解するためにも、アメリカの医療事情をおさらいしてみました。
 アメリカには日本のような国民皆保険制度はありません。会社負担あるいは個人で、高額な民間医療保険に入ります。65才以上の高齢者と障碍者にはメディケア、低所得者にはメディエイドという公的医療保険制度がありますが、15%の国民が無保険です。中途半端に収入があって保険料の支払えない(支払わない)人は無保険となってしまいます。加えて米国人口3億1千万人に対して1千万とも2千万とも云われる不法入国者には当然医療保険の恩恵はありません。民間医療保険はマネージドケアという制度で運営されています。これは、従来の医師からの求めによる出来高払い制度の基で保険料の高騰と保険加入率の低下が起こったことから、保険会社が医療の決定権を持つという制度です。民間保険には様々なタイプがあります。保険加入者は自分の保険で契約している初期医療を行うプライマリケア医(ゲートキーパー医)を受診します。入院や専門医への紹介は、プライマリケア医や保険会社が契約している病院に限定されます。救急病院も契約の病院に限定されます。保険でカバー出来る疾病や処方薬もあらかじめ契約で制限されています。保険がカバーする地域も同様に制限されます。病院側の立場では、患者がどの保険に加入しているか確認できなければ医療費は支払われません。そのため、アメリカでは”急病の時は、金持ちそうな身なりをして、クレジットカードをもって倒れろ”との話もあります。
 アメリカは医学研究と医療技術の先進国ですが、平均寿命や疾患治癒率、医療過誤の発生率、患者満足度などでは先進国とは言えません。高額医療と医療訴訟の国です。2011年度のアメリカの医療費は 2 兆 7,007 億ドル(約210兆円)で、対GDP比16%。フランスのGDP総額と同額です。過去30年間経済成長率を2%以上上回って増加しています。ちなみに日本の医療費は対GDP比7%です。医療費が高い原因については様々な要因があります。高額な医薬品費、医療訴訟経費、乳児や高齢者の終末期医療経費、医療保険会社の利益などです。そのなかで最も顕著なのは、意外に事務経費とされています。複雑な医療保険に対応するための事務経費が医療費の14%、36兆円も費やされています。事務経費の軽減を目指して、アメリカでは2015年に向かってIC保険証の導入、請求の完全電子化を目指しています。
 医療訴訟に目を向ければ、医療過誤による死者が年間20万人、医療過誤の補償金は1件当たり平均48万ドル(約5000万円)、示談例の補償金は平均46万ドル(約4800万円)です。裁判では補償金の78%が裁判と弁護士費用、示談でも54%が弁護士費用とのことで、訴訟大国の一端が伺えます。アメリカでは現在、医療過誤の賠償金に上限額を設定する検討がされており、2003年にいち早く規制法を制定したテキサス州では、医師登録希望者が殺到しているそうです。アメリカの医師は、毎年7.4%が訴えられ、65才までに外科医では100%、医師全体でも75%が一度は訴訟を経験します。
 医薬品の流通にも問題があります。抗がん剤を中心に高額な医薬品が毎年発売されることから製薬メーカーは少量多品種の生産ラインとなり、また、特許の切れたジェネリック医薬品は製薬企業の利益が少なければ製造を中止することから、供給不足が恒常的に起こっています。投機的な買占めも起こり、抗がん剤の供給不足で治療が延期になるケースもあります。
 振り返って日本では、敬老の日にちなんで発表されたデータでは、なんと100才以上の方が5万8800人とのこと。健康長寿社会は喜ばしい限りですが、これからの超高齢少子化社会に対して、どのような保険制度がよいのか? 消費税を含めてどのような負担をしたらよいのか? TPPはどこまで受け入れるべきか? 近視眼ではなく長期的な視点で検討したいものです。(すいません。批判だけして提言しないマスコミみたいになっていまいました。日本の金融資産1400兆円の75%を50才以上が保有し、内60才以上が60%持っています。この金融資産で間接的に日本国債を買い支えています。金融資産は当然富裕層に偏在化していますが、高齢者の方が若者より豊かです。日本は一丸となれる国民性を持っています。お金は墓場まで持って行けません。相続税を調整して、死蔵している金融資産を国に還付する。高齢者もお金のある人には負担してもらい、公的援助は現物支給を原則とする、、などの方向性はどうでしょうか)

 昨年9月にこのコーナーで、米国の医療事情を紹介しました。米国はその後、2010年に署名され2014年に施行されたオバマケアで国民皆保険制度となった訳ですが、その実態が気になっていました。米国は民間医療制度を糾合して民間保険上での国民皆保険になりました。国民皆保険といっても、日本やカナダのような単一支払医療制度という政府関連機関が保険料を徴収し政府がすべての医療費を負担する制度とは異なっています。オバマケアを策定した保険会社出身の保健福祉省副長官はまず最初に単一支払医療制度を除外しています。日本も今後、政府による公的な国民皆保険制度が財政上行き詰まると、部分的な混合診療や保険制度の民間への部分開放を行わざるを得なくなっていきます。もしTPPで保険の開放が始まれば、日本の制度も米国的な要素が入ってくるものと考えられます。この休みを利用して、堤 未果著「沈むゆく大国 アメリカ」を読みました。2014年11月初版、オバマケアの様々な影響を教えてくれました。
 オバマケアを筆者は、現場医師の手の届かないところで、最大利益団体である医療保険会社が書いた法案だと紹介してゆきます。2008年のリーマンショック以降増え続ける個人破産の半数が医療破産でしたが、オバマケアでついに無保険者が保険に入れるようになりました。オバマケアは既往歴や病気を理由にした加入拒否を禁止したのです。ただし、医療費の膨張を防ぐために、以下のような様々な制約が新たに付けられました。△定額だった薬剤費を値段ごとに7つのグループに分けて患者の自己負担率を定率制に替えた、抗がん剤やAIDS薬などの高価な薬剤の自己負担比率を50%とし、AIDS患者を保険に加入する代わりに高価なAIDS薬20種の半数以上を処方薬リストから除外した、△慢性疾患薬の多くが処方薬リストから外された、△国内トップレベルのがんセンターは保険のネットワークからは外された、△オババ大統領は処方薬の2%の薬価引き下げと引き換えに薬価交渉権という選挙公約を放棄したために薬価の決定権は製薬会社に残ったまま、△企業は50人以上のフルタイム労働者がいれば従業員全員の保険加入が義務付けられたために、中小企業はもとより一般大学でも常勤労働者の多くが週29時間以下労働のパートタイムに格下げされた、△産業別労働組合で条件のよい医療保険制度を勝ち取っていた労組の提供する保険はオバマケアより充実しすぎているとして今後40%が課税対象になるために労働組合つぶしにつながる、△最低所得者用のメディケイドの加入可能条件を緩めた(子供の有無や資産・口座チェックをなくし収入額の要件も33%緩和)代わりに死亡時などにはこれまでの医療費を自宅の差し押さえなどで回収する、△高齢者医療費の3割をカットすることから赤字病院は高齢者を診なくなる、つまり高齢者医療制度メディケアの財源カットでオバマケアの医療費を賄おうとしている、△オバマケアでは医薬品、医療機器の値段に制約はもうけていないために保険料は上がり続けるために中流層の家計が苦しくなる、△これまでの民間医療保険の支払いが100%とすればメディケアは7.8割、メディエイドは6割の支払いで、オバマケアの支払いも下げるために指定医療機関リストを大幅に縮小した、△事務手続きの煩雑化(オバマケアの医療費請求は電子式になりそれまで3000通りの治療コードが8万7000に、1万4000の診療コードが7万にと事務作業が大幅に煩雑化したものが義務化された)と支払い減少のために全米医師の66%がオバナケア保険に入らない、△オバマケアで介護施設や在宅介護サービスの予算は大幅カット  以上のように決してバラ色ではありません。保険会社や製薬企業の利益が損なわれないようにして、中間層や高齢者の医療費負担が跳ね上がるようになっています。
 日本で財政負担に耐え切れなくなった時には、新薬や先進医療は公費で支えられなくなる⇒規制緩和で公費部分を縮小する代わりに自由診療部分を拡大せざる得なくなる⇒民間医療保険のビジネスチャンス⇒国民皆保険で保険加入義務に慣れている日本人は外資系医療保険に入る⇒公的と民間の医療保険の二重加入の一般化でオバマケアと同じビジネスモデルが完成、と著者は指摘しています。国がお金を出せない中で、高額な先進医療とフリーアクセスな医療の両立は今後困難になっていきます。この春に妥結できなければ漂流するとも言われているTPP交渉ですが、私も交渉の行方は注視したいと思います。
 同書には訴訟大国の一端も紹介されていました。米国の医師は、手厚く治療すれば罰金、やらずに死ねば訴訟専門弁護士から訴えられるとのことです。米国の訴訟弁護士費用は成功報酬のため、患者関係者はだめもとでも訴訟を起こしやすいことが前提にあるとのことでした。フロリダのある外科医が、年収は2000万で平均的だが、訴訟保険料が1750万手取りが250万で、山のような事務作業で寝る暇もないとのこと。訴訟大国としての米国にもやはり考えされられます。


小児急性中耳炎難治化のリスクファクター 14年12月5日
 小児急性中耳炎の難治化のリスクファクターに関する論文を目にしました。2歳未満、集団保育、鼻副鼻腔炎合併、両側罹患では有意に中耳炎が反復化遷延化しやすいとの研究です。当院での臨床のイメージもまさに同じです。2歳未満ではまだ免疫能が十分発達していません。アレルギー素因や扁桃肥大の素因があると鼻の感染が難治化しやすくなります。わが国では病児保育が普及していないこともあり、集団保育の環境ではどうしても感染する機会が多くなります。さらに、現代の保育児はセフェム系抗生物質を多く服用した世代に続く世代であることから、世界の中でも薬剤耐性菌保菌児が多いのが現状です。このような条件が重なると、上気道粘膜が弱い2歳未満の集団保育児に細菌の持続感染が起これば、中耳炎も初回の急性片側性で終わらずに、反復性両側性になりやすくなります。私も、このような条件に合致して難治化のリスクのある児童に対しては、初診時でも、鼻汁の細菌検査を積極的に行うなどにより、適切な抗生剤の選択が早い時期に行えるように心掛けています。

血管炎と耳鼻科 14年11月26日
 今年の日耳鼻総会に私が出席した折の報告でも触れましたが、血管炎と耳鼻科疾患の関連についての研究が進みつつあります。抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎と、好酸球も関与するチャーグ・ストラウス症候群(Churg-Strauss syndrome: CSS)がその代表です。最近当院でも、難治性滲出性中耳炎と全身性の血管炎が合併した方が見られました。”一見脈絡のない多彩な全身症状を呈する発熱患者では血管炎を疑え”とのアプローチもあります。発熱に対する耳鼻科の診療では、まず急性の上気道感染やその後の中耳炎、副鼻腔炎、扁桃炎などの二次感染を念頭に診断治療を進めていきますが、中耳炎などの上気道炎が難治性遷延性で発熱が続く場合には、全身性の血管炎に伴う腎炎や間質性肺炎などの合併も念頭に置きます。炎症スクリーニングとして一般血、CRP、尿定性検査を確認することの重要性と、総合病院内科との連携の重要性を再認識しました。

ガイドライン:睡眠時無呼吸症候群とIgA腎症 14年11月23日
 医学会では、エビデンス(証拠)に基づいた疾患ガイドラインの策定が大きな事業となっており、毎週のように新しいガイドライン策定の発表があります。今日は、最近私が注目したガイドラインの話題をふたつほど。
 睡眠時無呼吸症候群について、米国内科学会が成人の診断についてのガイドラインを発表しました。ガイドラインでは「原因不明の日中の眠気が見られる患者に対して睡眠検査の施行を推奨する」となりました。昼間の眠気に対して、内科学会でも睡眠時無呼吸を視野に入れた診療の必要性に言及しています。耳鼻科の目で見ると、首が短かい、首がふくよか、顎が小さい、扁桃腺が大きい、のどの奥が狭い(口峡部狭窄や舌根扁桃肥大)などがある方は、中年期以降は高率にいびき症や睡眠時無呼吸症になります。その際、自覚症状で発現頻度が高いのが昼間の傾眠傾向です。内科診療の場で、一般的な睡眠覚醒障害だけでなく閉塞型睡眠時無呼吸症候群も視野に入れて診察するように今後なっていくことが期待されます。また、このガイドラインでは「高血圧、糖尿病、心筋梗塞などの冠動脈イベントに対する持続的陽圧呼吸療法(CPAP)の有効性についてのエビデンスは不十分である」とされました。CPAPを行っても、ベースに肥満や動脈硬化などのメタボリックな要因があると、CPAPを行うだけで血管障害が改善する訳ではありませんので、私の診療における印象とも一致しています。
 原発性糸球体腎炎の中でも頻度の高いIgA腎症について、厚労省研究班と日本腎臓学会が診療ガイドラインを発表しました。なぜ耳鼻科医が腎臓病に注目するのかと言われそうですが、IgA腎症は、「扁桃腺や腸管を中心とした粘膜免疫の異常により循環血漿中で多量体IgA1が増加し、高分子IgA1が腎臓に蓄積して発症する」という機序が想定されているからです。(ちなみにIgA1は、小児が青あざや腹痛で発症することの多いシェーンラインヘノッホ紫斑病の原因物質としても注目されています)そのため、難治性のIgA腎症に対する扁桃腺摘出手術(扁摘)が有効な症例もあることから、耳鼻科医が把握しておくべき腎疾患なのです。IgA腎症に対する治療方針は、日本と諸外国で大きな違いがあり、日本は世界の中でも特に扁摘を積極的に行っています。2011年に糸球体腎炎に対する国際ガイドラインが作成された際には、「扁摘はエビデンスが十分に確立されていないことから推奨しない」となっていました。しかし日本では、健診で見つかる早期のIgA腎症が多い事、IgA腎症に対して扁摘が多く施行されている事などを踏まえて、日本独自のエビデンスに基づいてガイドラインを新たに作成することになりました。今回のように国際ガイドラインが策定された後に本邦で再作成するケースは少ないので、この発表には私も思わず目を引きました。結果、日本のガイドラインでは「扁摘は検討してもよい」となりました。ただし、根拠となったデータは、扁摘群40例、未扁摘群40例の治療1年後のデータだけとのことですので、日本でも世界でも更なる症例の蓄積が待たれます。耳鼻科の立場から見れば、同じ扁摘でも、慢性扁桃炎や病巣感染が疑われるような所見がある扁桃腺に対して選択的に扁摘をすれば、扁桃腺とIgA腎症の因果関係がより高くなると思われます。

死ぬまでに読むべき1001冊の本 14年9月22日
 「世界の小説大百科―死ぬまでに読むべき1001冊の本」に目を通しました。著者はピーター・ボクスオールという英文学者で、千夜一夜物語から現代小説まで、無数の小説の中から選んだ1001冊のあらすじや書評を、出版年順に紹介している労作です。日本人では、川端康成、三島由紀夫、遠藤周作、吉本ばなな、村上春樹、宮部みゆきなどが選ばれていました。年代順に、9世紀のアラビヤ文学「千夜一夜物語」が最初に挙げられていますが、続いては、10世紀の「竹取物語」、11世紀の「源氏物語」、14世紀の「三国志」、16世紀の「西遊記」と続きます。改めて源氏物語の偉大さに気付かされました。

RSウイルスと中耳炎 14年9月13日
 RSウイルスは0~1才児の細気管支炎が有名ですが、耳鼻科領域では、RSウイルスによる上気道炎の約半数で急性中耳炎を発症したとの論文があります。ウイルス感染と急性中耳炎の関係を調べた論文では、RSウイルス以外でも、インフルエンザウイルスで1/3~1/2が発症した、アデノウイルスによる3才児以下の上気道感染では約半数で発症した、ヒトメタニューモウイルスでは約1/4で発症したなどの報告があります。このように耳鼻科の立場で見ると、ウイルス感染が中耳炎を惹き起こすことは珍しくありません。特にインフルエンザを筆頭に上気道粘膜の反応が強いウイルス感染の初期には、水疱性鼓膜炎化した中耳粘膜自体の反応が強い中耳炎を惹き起こすことがあります。さらにこのような場合、中耳炎から内耳炎が惹き起こされて耳鳴、めまいを続発する場合もあります。一般的には、急性中耳炎は細菌性がメインとのイメージがありますが、小児のウイルス性上気道感染では中耳炎の続発にも注意して診察しています。さらに、小児の反復性や遷延性の中耳炎の約1/3でウイルスと細菌の混合感染が見られたとの報告もあるように、中耳炎の診療では、”抗生物質の効く”細菌性中耳炎と、”抗生物質の効かない”ウイルス性中耳炎がどの程度かかわり合っているのかにも注意する必要があります。
 医療の現場では1990年代後半から、様々な疾患で治療指針や診療ガイドラインが提唱されています。最初は癌領域で普及してきた手法ですが、医師個人の経験に基づく医療ではなく、蓄積されたデータや論文を基に”根拠に基づいた医療(EBM)”で医療を標準化することは大切なことです。例えば耳鼻科でも、2004年に米国で小児急性中耳炎のガイドラインが作成されて2013年に改定されています。日本でも2006年に発表されて2013年に第3版が発表されました。米国では1994年には小児滲出性中耳炎のガイドラインが提唱され、2004年版が世界的に活用されています。ちなみに中耳炎に近い領域である鼻副鼻腔炎では、2000年に米国急性細菌性鼻副鼻腔炎の抗菌薬治療ガイドライン、2007年に欧州鼻科学会やベルギーのガイドラインが出され、2010年には我が国でも急性副鼻腔炎のガイドラインが出されました。
 私も当然、ガイドラインを念頭に置いて診療をすすめていますが、一筋縄ではいかないのが実際臨床の場です。また、ガイドラインも適宜改定されていきます。小児急性中耳炎の治療指針に関して挙げれば、2000年初頭にベルギーから90%は抗菌薬を投与しないで治るので、まずは消炎鎮痛剤のみで経過を見るべきとの提唱がありました。その当時は、わが国でも耳鼻科は抗生物質を使いすぎるとの内科領域からの批判があったのを覚えています。2004年の米国のガイドラインでも軽症例はまずは抗菌薬なしで経過を見るとの指針でした。ところが米国ではガイドライン策定後も、小児に抗菌薬が使用される疾患として急性中耳炎が最多のままであり、抗菌薬の処方率も変わらないままでした。2004年版では検討データに滲出性中耳炎の子供も急性中耳炎として登録されていたり、鼓膜の明確な観察がないままに急性中耳炎が診断されていたことなどを反省して、2013年の改訂版では、厳しい鼓膜所見による診断基準が提唱されました。また、2才未満では抗菌薬投与が原則となり、年長児で軽症であっても、抗菌薬投与なしで経過を見る場合には、保護者との相談による意思決定に基づくこととされました。欧米のプライマリケアでは、まず家庭医が初期治療します。乳幼児で鼓膜の評価が難しい場合には、症状の訴えだけでも中耳炎と診断せざるを得ません。それに比べて日本では、耳鼻科医がプライマリケアしていることから鼓膜所見を基に診断されます。また、海外と日本では薬剤耐性菌の検出率に大きな違いがあります。中耳炎の代表的な起炎菌である肺炎球菌は、北欧では耐性化率は10%以下、日本では50%前後。また、インフルエンザ桿菌の耐性化率も日本は特に高い、との報告もあります。あくまでも海外のガイドラインを厳格に踏襲するのではなく、ガイドラインの作られた時期、地域、背景を考慮して、診療にガイドラインを活用したいと思います。

精神科関連の書評 14年8月9日
 現代新書「精神医療ダークサイド」は、読売新聞記者 佐藤光展氏の精力的なルポルタージュで、統合失調症と強迫性障害・解離障害・発達障害の間における誤診、過剰投薬の問題、強制入院(措置入院)の問題、うつ病における過剰診断の問題、精神安定剤への薬剤依存や離脱症状の問題、暴言面接の問題などを鋭く取り上げています。記者ならではのアプローチで、違う病院で誤診が疑われた患者の前医である大学病院担当医と教授へのインタビューには目が離せませんでした。治療で良い結果が得られないことから患者自身の意思で医療機関を変えた場合には、前医にはその情報は入ってきません。ドクターは治療が上手くいかなかったケースほどフィードバックがかからないものです。これは耳鼻科でも言えることですので、記者が前医にインタビューして初めて前医が経過を知る、という流れは読んでいて”興味深い”ものでした。また、小児の言語発達遅滞を扱う私としては、10代の若者の10数%は統合失聴様の幻聴・妄想体験があるとの論文の紹介、若者が強度のストレスで幻聴・妄想体験が結構得出現するとのレポートは参考になりました。また違う章では、”暴言面接”という表現で、精神医療の現場で患者を怒鳴りつけたり見下す医師の実態とそうなってゆく背景を紹介しています。混み合った診察の中で15分間患者の”ダラダラ”とした訴えを聞いていて怒り出した医師の紹介もあります。私も診察が込み合っている時には、実は10秒単位で時間は気になっていますので、”暴言面接”という表現は、私の心にも深く滲みました。
 ここ数年、精神安定剤や睡眠薬への依存症が注目されています。 私も、耳鳴症には長時間作用タイプの精神安定剤を、入眠障害には睡眠導入剤を屯用で処方していますので、最近気になっている領域でした。精神安定剤や睡眠薬として広く用いられているベンゾジアゼピン系薬剤は薬物依存を惹き起こします。依存症には、精神的に欲求が強くなる精神依存、体内の薬物量が減って苦しい離脱症状が起こる身体依存、薬の効果が減ってきて使用量が増える薬剤耐性があります。この本では2年前に翻訳版が出たベンゾジアゼピン依存症離脱の手引書である「アシュトン・マニュアル」(ネットで公開中)とその著者のコメントを紹介しています。このマニュアルを読むと、依存発生の機序、治療の実際が良く判りました。(ただし治療法については否定的な意見も一部にはあります) 私も精神安定剤を複数回処方する場合には、依存の傾向が生じてないか確認するための問診、依存症という病態があることについての啓蒙を行ってきましたが、改めて依存症の気配がないかどうかの確認の重要性を認識しました。
 雑誌「こころの科学」3月号の特集は、「自閉症スペクトラム」でした。精神科領域では、米国精神医学会の診断マニュアル(DSM)が標準的な診断指針となっています。2013年にDSMが20年振りに改定されDSM-5が出されました。DSM-3で発達障害、自閉症の領域ができ、DSM-4で、広汎性発達障害の下位分類で高次脳機能障害であるアスペルガー症候群などが位置付けられました。DSM-5では、神経学的発達障害の下に、自閉症スペクトラム障害、知的症障害、注意欠陥/多動性障害、チック障害などが置かれ、アスペルガー症候群の記載が無くなりました。高次機能障害でない自閉症の多くが、1~3才頃に言葉が遅いことから明らかになってきます。聴覚障害や音声言語障害の診断治療にもこの分類の変更はこれから徐々に影響していくと思われます。今回の特集で発達障害の考え方の変遷が良く判りました。

好酸球性食道炎 14年7月31日
 今年の日本気管食道科学会専門医大会では、好酸球性食道炎の講演がありました。アレルギー性鼻炎の領域では、アレルギー反応の解明は、ヒスタミン・肥満細胞・IgE抗体による即時型反応の解明、ケミカルメディエイタ―を介した遅発性反応の解明、好酸球を介した過敏症の解明と研究が進んできましたが、消化器内科の領域でも、食物アレルギーに対するIgA、IgEを介する即時型反応の解明から、好酸球を介する反応の解明へと研究のstageが進んできています。気管食道科領域でも今後、好酸球を介した反応が注目されてくると思います。好酸球性食道炎・胃腸炎はヘルパーT細胞の中のTh2細胞を介して消化管粘膜に好酸球細胞の浸潤が起こる疾患です。厚労省研究班の診断指針案では、嚥下障害やつかえ感を有する患者で、食道生検で上皮内に好酸球が20/高視野以上あることが必須で、食道粘膜の白斑や狭窄・食道壁の肥厚・血中好酸球増多を認め、胃酸を止める薬剤であるPPIが無効でステロイドが有効な傾向があるとされています。また、40~50才台の男性が8割を占め、逆流性食道炎と似た症状を呈するとされます。PPI抵抗性の逆流性食道炎の4%は好酸球性食道炎であるとの報告もあります。そのため、逆流性食道炎を疑う症例でPPIに抵抗性であれば、好酸球性食道炎も疑う必要があります。好酸球性食道炎を誘発する食物は、牛乳、小麦、大豆、卵、ナッツ類、海産魚類が多いことから、治療は、それらの除去、吸入ステロイドを口腔内に噴霧して30分かけて徐々に嚥下する、などがありますです。日本ではピロリ菌感染者の減少にともなって逆流性食道炎が増えてきていますが、好酸球性食道炎も増えてくることが予想されています。私も逆流性食道炎や咽喉頭酸逆流症を疑いアレルギー素因も有する方に対しては、好酸球性食道炎の存在も視野において診断を進めたいと思います。

外傷性鼓膜穿孔と咽頭異物 14年6月11日
 ここ3日、気圧外傷による外傷性鼓膜穿孔の方が立て続けに来院されました。鼓膜が傷ついて穴が開く場合で多いのは、耳掃除の最中に他人の手が当たったり、小さなお子様が自分で棒を突っ込んで傷つけてしまうケースですが、ここ数日はなぜか様々なパターンの圧外傷による方の来院が重なって、これも少しビックリしました。水泳、ダイビング、平手が当たる、テニスボールが当たるなど誘引が多岐に亘っていました。
 もうひとつ、昨日の外来で印象深かったケースをご紹介します。前夜の食事で魚の骨がのどに刺さった方ですが、一見すると骨は見えませんでした。嚥下時の首への痛みの響き具合から骨のある場所を類推してピンセットで探ると、扁桃腺の下(下極)に堅い部分がありました。周囲を圧排すると骨の頭が見えて、無事、摘出する事が出来ました。咽頭異物が疑われるのに異物の位置が判らない場合も往々にしてあります。ウナギの小骨が扁桃腺に埋もれてしまったりすると、見つけ出すのもなかなか困難です。先日の学会発表でも、CTでやっと異物の部位が判った舌根扁桃異物の報告もあったぐらいです。埋もれている小骨をが摘出出来ると、私も思わずホッとします。

小児の中耳炎 初夏の注意 14年5月27日&14年6月1日
 昨日今日の診察では、これだけ気候が良いのに中耳炎の治りが悪い子供たちが目立ちました。私としては、がっかりです。(;_;) 先日の学会でも、中耳炎が遷延化すると乳突洞という中耳の奥の含気腔が発育しないために、さらに悪循環に陥るとの発表がありました。10才の時点で乳突洞が十分発育していないと、成人になっても中耳炎の体質を引きずることになります。小学生が今の季節に中耳炎が難治化していると悩ましいです。まだ急性期で細菌感染をコントロールすれば治癒していくstageなのか? 耳管狭窄が主体の換気不全のstageなのか? 鼻炎としてアレルギーの要因は? どこまで副鼻腔炎化していて細菌感染が主体科か? アレルギー性副鼻腔炎が主体か?  アデノイド遺残の大きさはどの程度なのか? 様々な要因を勘案して、抗生剤、消炎酵素剤、抗アレルギー剤、点鼻ステロイド、鼻洗療法、耳管通気、鼓膜切開、鼓膜チューブ留置などの治療法を適切に選択できればと思っています。また、6月中旬からはスイミングの授業も始まります。どのような点に注意して水泳の授業に参加すべきかなども、お伝えできればと思います。

 気候が良く、風邪の流行らず、ハウスダスト・アレルギーによる刺激も少ない5月は、小児の中耳炎が最も治りやすい季節です。しかしながら、アデノイド肥大やアレルギー性鼻炎、集団保育による薬剤耐性菌の持続感染などの要因のために中耳炎が治らないお子様もいます。中耳炎が難治化すると、難聴が持続するだけでなく、中耳の奥に広がる乳突洞という含気腔の発育不良・鼓膜の陥凹・菲薄化・硬化により中耳炎がより遷延化する悪循環に陥ります。時には高度な換気不良と粘液排出不良により中耳粘膜の”内出血”から粘稠な滲出液が充満するコレステリン肉芽腫化するケースもあります。コレステリン肉芽腫では、鼓膜チューブを留置しても中耳腔が乾燥化しない、感音難聴を続発する、乳突洞の最深部である錐体尖炎を起こす場合があります。また、中耳への換気不良が持続し鼓膜の部分陥凹が強くなると中耳の骨を徐々に破壊する真珠腫性中耳炎化する場合もあります。このような観点から、中耳側頭骨発育の長期的視野から鼓膜チューブ留置が望ましいお子様がいます。耳には良い季節でも難治化しているお子様には、残念ながら今の時期に鼓膜チューブ留置術を行うなっています。

日耳鼻総会に参加して ~演題メモ~   14年5月28日
 第115回日本耳鼻咽喉科学会学術講演会の私の忘備録です。学会では毎回2大学が宿題報告として教室の主要研究テーマの報告を行います。今年は長崎大学「換気能から見た中耳疾患の病態と治療」、千葉大学「上気道粘膜の免疫応答とその治療 ―アレルギー性鼻炎と頭頚部癌に関してー」でした。耳鼻科のメインの学会ですので、演題も宿題報告2題、シンポジウム2題、パネルディスカッション1題、特別講演1題、招待講演1題、セミナー19題、一般演題693題と膨大でした。(ちなみにアレルギー学会は基礎医学、内科、小児科、耳鼻科、皮膚科、眼科、コメディカルなどの集まりですのでさらに大規模です)宿題報告も含めた学会発表のなかで、気になった内容をメモしています。専門的で恐縮ですが、私がどのような点に注目しているのかお判りになると思います。
 今年は、ANKA関連血管炎性中耳炎と、2000年代に入って本邦で提唱されたIgG4関連疾患の演題が複数あり、目立ちました。また、小児の中耳炎を多く診ている私としては、「小児の重症中耳炎が減ってきている」との発表は特に興味深かったです。抗インフルエンザ薬のおかげでインフルエンザ罹患時の急性中耳炎が劇的に少なくなっているのは実感していましたが、集団保育児では薬剤耐性菌保菌児が増加していることから、小児中耳炎は難治化や反復化がやや増えているものと思っていました。オラペネム、オゼックスのような新しい抗菌薬の登場と、ペニシリンの再評価、セフェム系一辺倒の抗菌薬使用の減少、肺炎球菌やHib(インフルエンザ桿菌)ワクチンの小児への普及などにより、基幹病院レベルでは小児の中耳炎は軽症化してきています!

<中耳>
・乳突蜂巣の発育が悪いと中耳炎に罹患しやすく治りにくい。9-10才までに鼓膜チューブを留置しなければ遷延する中耳炎が残る可能性あり
・慢性穿孔性中耳炎の耳管閉塞にマクロライド少量長期3ヶ月投与で半数が改善
・コレステリン肉芽腫は肉芽腫性反応で抗菌薬の効果は期待できない。コレステリン肉芽腫にチューブ留置しても滲出液の流出が続きやすい。プレドニゾロン0.5-1.0mg/kg10-14日漸減内服後の鼓膜チューブ留置で10歳未満は改善
・錐体尖コレステリン肉芽腫
・中耳真珠腫の術後に鼻すすり癖を直すと半数で経過良好。中耳真珠腫の一次的原因は乳突腔の換気障害で、鼓室頬部ブロックは結果である。中耳真珠腫に5-FU軟膏1回/2週、2-5回で半数でdebris消失
・長期に強い耳痛を来す中耳炎では悪性外耳道炎やANCA関連血管炎性中耳炎も念頭に
・好酸球中耳炎では中耳限局好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss症候群)、好酸球増多症候群に注意。初期にはステロイド定期的鼓室内注入が有効
・ANCA関連血管性中耳炎でANKA陽性率は78%、急速な骨導域値悪化や顔面神経麻痺に注意
・コーンビームCTで鼓索神経小管が描出可能
・内視鏡下中耳手術
・外リンパ瘻診断基準で「外リンパ特異的蛋白コクリントモ蛋白CTPを検出」が追加
・小児の重症や反復性中耳炎は、ガイドラインの普及や新規抗菌薬、ワクチンの普及で著明に減少。集団保育、2才以下の低年齢、鼻副鼻腔炎併発が有意な危険因子。肺炎球菌迅速診断キットが診療に有用小児肺炎球菌ワクチン(PCV7)導入が重症化を抑制
・急性乳様突起炎のほとんどが3才児以下
・ヒト幹細胞臨床研究としての中耳移植用細胞シートの開発

<内耳、平衡、顔面神経>
・モルモットでiPS細胞の内耳有毛細胞への分化に成功(2013年)、マウスでiPS細胞から内耳幹細胞様細胞への分化誘導(2010年)、マウスで前庭と蝸牛有毛細胞様細胞への分化誘導が可能
・顔面神経麻痺のBell麻痺は単純ヘルペスHSV-1が主原因90%が早期治療で治癒、Hunt症候群は帯状ヘルペスHZVが原因70%が早期治療で治癒
・Bell麻痺の1/4は潜在的VZVの再活性化
・耳鳴 米国で人口の5-15%、高度耳鳴が1-3%。本邦の高齢者で12-13%。内耳由来の自発性音響放射がみられるのは一部。PET、MEG,fMRIなどの脳機能画像解析の研究すすむ。反復径頭蓋時期刺激法2011年。血中神経栄養因子BDNFとの関連2012年。サリチル酸耳鳴動物モデル2002年。
・人口内耳がわが国で開始されて25年。従来の適応両耳90dB以上から、残存聴力活用型人工内耳(高度難聴の中鉱音域を人口内耳で、残聴のある低音は音響刺激で)へ。埋込型骨導補聴器が2014年から我が国でも承認。両側外耳道閉鎖症、耳硬化症、真珠腫、耳小骨奇形の骨導聴力45dB以内、18才以上が適応。
・内耳奇形の分類はCT画像上の内耳発育停止の観点から分類したSennaroglu・Saatciの分類が標準。CT上蝸牛基底部と内耳道をつなぐ蝸牛神経管がチェックポイント
・内耳自己免疫病―急速進行感音難聴で免疫抑制剤が奏功
・大動脈炎症候群で内耳血管炎
・一過性前庭機能障害には動脈硬化との関連が示唆される
・加齢性平衡障害と骨密度低下は有意に関連
・片頭痛の57%、緊張性頭痛の34%にめまい
・外側半規管クプラ結石症では患側の決定が困難
・メニエール病に対する鼓膜マッサージ機による中耳加圧療法。メニエール病の原因として球形嚢落下耳石も
・耳硬化症の内耳骨包蝸牛骨包の骨病変の観察に0.16mmスライス・コーンビームCTが有用
・突発性難聴のステロイド鼓室内注入はデキサメタゾン1回/週 4回まで。90dB以上の高度例で有意に有効と有意でないとの両報告
・筋性他覚的耳鳴―耳小骨筋攣縮、アブミ骨筋性耳鳴、口蓋筋攣縮
・耳鳴に対する抗うつ薬投与
・ラバー負荷重心動揺検査
・椎骨脳底動脈循環不全VBIのめまいは多彩(自発性、頭位変換性、起立性)、随伴脳神経症状は霧視、顔面のしびれ、構音障害でめまいと異時の発現も40%

<鼻>
・急性副鼻腔炎で成人小児ともに12-16%でウイルスと細菌が同時に検出。ウイルスのみ検出は無く、ウイルスは初期のみ影響
・進行性鼻壊疽はEBウイルスによる鼻性NK/T細胞リンパ腫である
・鼻副鼻腔乳頭腫にHPVの関与は平均33%(0-89%と報告にばらつき)
・激烈な頭痛を来す急性副鼻腔炎では頭蓋内膿瘍も疑いMRIを
・国際頭痛分類第二版で鼻粘膜接触点頭痛が追加。姿勢の変化によるうっ血で痛みの変化。中鼻甲介の局所麻酔で痛みの消失。ただし十分なエビデンスはまだ得られていない。
・内視鏡化副鼻腔手術ではマイクロデブリッターでの視器障害に注意
・好酸球性副鼻腔炎の術後再発は6年後に50%、末梢好酸球5%以上が有意な検査所見。好酸球性副鼻腔炎に抗核抗体が関与
・副鼻腔真菌症は急性浸潤性、慢性浸潤性、慢性非浸潤性、アレルギー性真菌性副鼻腔炎に分けられる。日和見感染に注意。鼻脳性ムコール病では黒色分泌液。糖尿病や透析時のケトアシドーシスで重症化。MRI T2強調画像で無信号。浸潤性では外切開拡大手術
・鼻副鼻腔の乳頭腫は47%が内反型
・静脈性嗅覚検査で反応が無くても基準嗅覚検査で反応があれば改善する例も、静脈性嗅覚検査では潜時が嗅上皮障害の程度に反映か
・睡眠時呼吸障害、アレルギー性鼻炎に対する複合鼻科手術
・ボスミン・キシロカイン加ガーゼ上からの鼻出血止血法
・慢性副鼻腔炎にマクロライド少量長期療法+鼻噴霧用ステロイドで有用

<アレルギー、免疫>
・山梨県農村部の小学生の50%がスギに感作、40%がハウスダストに感作
・スギ花粉に40才までは感作陽性化する。50才以降は新規の抗体獲得の可能性は少ない
・花粉暴露により喉頭アレルギーが惹き起こされる
・花粉症の初期治療で抗ロイコトリエン薬も有用だが速効性に乏しく、鼻噴霧ステロイド薬の方が効果が高い
・舌下免疫療法では遅発相の症状抑制作用あり。スギ花粉の舌下免疫療法でヒノキ花粉症にも一定の効果
・小学生以上のアレルギー性鼻炎に下鼻甲介粘膜下切除と下鼻甲介焼灼術、家庭での鼻汁吸引が有用

<咽喉頭、唾液腺>
・咽頭領域の慢性疼痛では、舌根部癌、ベーチェット病、咽頭クラミジア、扁桃放線菌症、難治性口腔咽頭潰瘍、過長茎状突起に注意
・嚥下障害のリハビリ嚥下訓練には咽頭寒冷刺激、頭部挙上訓練、息止め嚥下法、複数回嚥下、頚部回旋法あり。手術では機能改善手術として輪状咽頭筋切断術、喉頭挙上術、声帯内方移動術、咽頭縫縮術があり嚥下内視鏡検査が不可欠
・IgG4関連ミクリッツ症候群が2004年に報告。3ヶ月以上の対称性唾液腺腫脹、涙腺腫脹と高IgG4血症135mg/dl以上、生検で著明なIgG4陽性形質細胞浸潤、ステロイド治療に良く反応
・安静時喉頭に異常が認められない機能性発声障害には、痙攣性発声障害(内転型(声帯の過内転と前後径短縮)8割、外転型2割、25%に心因的な誘引、努力性嗄声の非周期的出現)、喉頭振戦(70才以上に多い、発声に周期性)、心因性発声障害(発声努力が不十分で無力性嗄声)、変声障害(変声期前の声の高さを続けようとする、成人ではピッチ障害、喉頭を下げて本来の声の高さを獲得するKayzer-Gutzmann法の音声治療)がある。声帯麻痺、声帯溝症、声帯萎縮での誘発もあり。音声治療は、過緊張タイプにはリラクゼーション法、低緊張タイプには咳払い誘導による有響音発声、発生時呼気調節低下には呼吸エクササイズ。
・小児睡眠時無呼吸症候群ではアデノイドより扁桃肥大の程度が相関。簡易睡眠検査とポリグラフ検査の無呼吸指数もよく相関。
・3才までの初回アデノイド手術で再増殖の傾向
・口蓋扁桃摘出術で20代で術後出血多い傾向
・喉頭真菌症、咽頭放線菌症で悪性腫瘍との鑑別が困難
・口腔乾燥症にM3ムスカリン作動薬を常用量の1/3から開始
・下咽頭梨状窩瘻の術前に直達鏡で開口部確認、外切開で摘出
・高齢者の嚥下障害では、往診による嚥下内視鏡検査が有用
・若年性喉頭乳頭腫は持続する嗄声と吸気性喘鳴
・扁桃周囲膿瘍の83%が上極型、17%が下極型。下極型の53%で頚部膿瘍の外切開を要した。検出菌は嫌気性菌ないしは嫌気性菌と好気性筋の混合感染
・魚骨異物摘出後の咽後膿瘍
・深頚部膿瘍にCLDM耐性菌感染、糖尿病の合併に注意
・頚部リンパ管腫にOK-432硬化療法
・唾液腺内視鏡による唾石摘出
・局所麻酔下喉頭内視鏡手術
・口腔白板・赤板は段階的に悪性度が変化
・慢性型喉頭アレルギーでは喉頭粘膜に好酸球が分布

<腫瘍>
・扁桃癌でHPV(ヒト乳頭腫ウイルス)陽性が我が国でも漸減、欧米では70-90%。HPVによる扁桃癌は陰窩基底細胞へのHPV感染が起源であるために小病変では同定困難で、原発不明癌頸部リンパ節転移の像をとる。側頚嚢胞の形をとる膿胞性リンパ節転移で、嚢胞内にHPV感染を証明できれば扁桃や舌根に原発巣の可能性高い
・頭頸部癌に対する粒子線(重粒子線、陽子線)治療の試み
・頭頚部癌再発転移症例にCDDP+FU+分子標的薬セツキシマブ
・頸部リンパ節の針生検では悪性リンパ腫、結核の診断は困難
・頭頚部癌の経過観察には、腫瘍マーカーSCC抗体とCYFRA21-1の同時測定が有用

<感染症その他>
・EBウイルス初感染の20%で肝脾腫や全身リンパ節腫大を伴う伝染性単核球症発症
・ムンプス難聴は流行性耳下腺炎1人/15000人発症。突発性難聴の5-7%でムンプス初回感染示唆するIgM抗体陽性
・痛みの障害性受容性疼痛では急性炎症や癌に注意、神経痛などの神経障害性疼痛には消炎鎮痛薬よりも中枢神経用薬リリカや抗うつ薬、抗けいれん薬が有用。心因性疼痛には抗精神薬や心理療法
・後頚部痛で解離性頭頸部動脈瘤に注意
・結核は正常免疫あれば90%で排除ないしは潜伏化、HIVで結核リスクが20-37倍、糖尿病で3倍
・淋菌、クラミジアでは無症候性咽頭感染が多い。淋菌では咽頭炎・扁桃炎、クラミジアでは上咽頭炎が時に生じる。診断は核酸増幅PCRの咽頭うがい液で。淋菌は治療1週後、クラミジアは2週後に陰性化を確認。

名前のサイト   14年5月6日
 私の気になったサイトをご紹介します。最近は姓名判断もネットで簡単にできるのですね。また全国の同性同名探しもできます。私も思わず自分の名前を入力してしまいました。ただし、同性同名探しの母集団はNTTの固定電話帳掲載者です。30才台以上の世帯主が主でしょうから、若い方の名前はあまり反映しないと思われます。
 赤ちゃんの名づけ命名 へ 
 同姓同名探しと名前ランキング へ 

頭頸部癌 ~特徴と早期診断~   14年5月3日
 連休を機会に、TVドラマWOWOW「パンドラ」を一気に見ました。夢の抗がん剤”パンドラ”をめぐるサスペンスです。もし世界から癌が克服されれば、世界の平均寿命は30年延びるとのこと。「パンドラ」の主人公は18年間、抗がん剤の開発に没頭していました。このドラマに触発されて?今回は、頭頸部癌の特徴について述べてみます。

1、癌とは:まず前提として、悪性腫瘍と良性腫瘍の境界はありません。自律を失って自己増殖して組織を破壊していくのが悪性腫瘍で、局所に留まるのが良性腫瘍ですが、増殖力や転移のしやすさの有無で、悪性度も様々です。わずかな増殖能で留まった前癌状態、粘膜の浅い部分にわずかに発生している上皮内癌、組織検査の細胞の増殖能でみた悪性の準備状態など、悪性度にも様々なものがあります。癌として発見できた時点で転移は否定できない、癌であっても転移していなければ治療を必要としないものもある、との”癌もどき”理論に準ずる癌も存在します。このように悪性と良性の境界が無い中で、組織を破壊して進行する悪性腫瘍=癌を見逃さないように頭頸部の診察を行います。各種癌の中でも頭頸部癌は、臓器の表面から発生することが多いことから、扁平上皮癌などの分化度の高い=悪性度が低く、放射線治療が有効な癌が比較的多い部位です。さらに、口腔内や喉頭は軽い慢性刺激が持続することの多い部位ですので、白板症などの前癌状態が目立ちやすい部位です。体の中でも重要な臓器である心臓は不思議と癌は発生しません。脳も悪性のものよりは良性腫瘍が多いです。

2、癌の種類:癌の分類を大きく分けると、固形癌と血液癌に分けられます。固形癌は、臓器細胞が変化して発生します。血液癌は血液を作る骨髄から発生する白血病とリンパ組織から発生する悪性リンパ腫があります。白血病は全身症状が主体です。正常白血球の減少からの発熱、正常赤血球の減少からの貧血、正常血小板の減少からの出血・皮膚の紫斑などが初期症状です。耳鼻科でも、鼻血で白血病や血友病を心配して来院されますが、鼻血だけでは直ぐには白血病は疑いません。悪性リンパ腫は、リンパ組織で増殖します。頭頸部は扁桃腺、アデノイド、頚部リンパ節などのリンパ組織が、体表から目立つ部位にありますので、早期に悪性リンパ腫を発見できる場合があります。初期には感染による炎症と区別がつきませんが、治療を行っても感染症としての治癒の傾向が無い場合には、悪性リンパ腫も疑います。

3、頭頸部癌の早期診断:癌の局所における大きな特徴は、正常組織を破壊しながら増殖することです。その結果、癌周囲の正常組織の血管や神経を蝕んでゆきます。体の局所で、持続的に出血したり、持続的な自発痛がある場合には、癌も視野にいれなければいけません。当院外来では、よく2~3日前からの痛みや違和感、しびれ感で癌を心配して受診される方がおられますが、発症後2~3日ではそのほとんどが感染症や一時的な刺激による組織障害です。2~3週間以上症状が持続し、かつ、進行する傾向のある場合には、癌も否定できないとして診察を進めてゆきます。

4、頭頚部癌の検査:頭頸部は頭蓋内や胸部、腹部とは異なり、体表に露出しているために早期発見が可能です。視診、鼻腔・喉頭ファイバー、触診で腫瘤の存在は早期から認識できます。エコー検査、CT、MRIによる画像診断は検診的な意味合いではなく、腫瘤の存在が疑われた後に、腫瘤の性状や進展具合、隣接臓器との因果関係を見極めるために行います。

 以下に、頭頸部の部位別に、私が診察時に注意している癌の早期発見の注意ポイントを挙げます。いずれも1~2週間、症状が持続し、かつ、徐々に悪化する傾向があるという前提の上です。
  
外耳道癌、中耳癌:無理な耳掃除や以前からの耳の掻痒感、鼻風邪症状が無い耳痛、耳出血。頭頸部の中でも癌の発生頻度は極めて少ない部位です。むしろ、骨破壊性の良性疾患である中耳真珠腫や外耳道真珠腫に注意します。
  
鼻腔癌、副鼻腔癌:血性の鼻水、目の周囲の痛み、頬のしびれ。ごく稀に悪性黒色腫のような悪性度の高い癌も発生します。またウェゲナー肉芽腫のような組織破壊をともなう自己免疫疾患にも注意します。
  
上咽頭癌:血性の鼻水、鼻閉、片側性の滲出性中耳炎、複視などの視神経障害。ほとんどが扁平上皮癌ですが、悪性リンパ腫にも注意します。東南アジア、日本では太平洋岸を中心にEBウイルス感染による癌もあります。
  
扁桃癌:扁桃表面の片側性の白苔付着や潰瘍形成、血痰、咽頭痛、頭痛。リンパ組織ですので、悪性リンパ腫が発生しやすいです。
  
舌癌、歯肉癌、頬粘膜癌、中咽頭癌:進行する口内炎、出血、痛み。口腔扁平苔癬も前癌状態のひとつとして経過に注意します。
  
下咽頭癌、頚部食道癌:血痰、嚥下痛、嚥下困難、声がれ。頭頸部の上皮癌の中では、下咽頭の食道入口部より下は喉頭ファイバー検査でも確認出来ません。食道入口部の唾液の貯留や声帯の動きに左右差がある場合には、下咽頭食道ファイバー検査で確認します。喫煙、大量の飲酒習慣がリスク・ファクターです。
  
耳下腺癌、顎下腺癌:痛み、皮膚との癒着、顔面神経麻痺。唾液腺組織のため様々な悪性度の癌や良性腫瘍が見られます。良性腫瘍と悪性腫瘍の発生率は10:1ですが、良性の多形腺腫は悪性変化する場合もあり注意します。
  
喉頭癌:声がれ、痛み、血痰。喫煙が大きな発生要因です。
  
甲状腺癌:痛み、反回神経麻痺(声帯麻痺)を介した声がれ、甲状腺組織の破壊による甲状腺機能亢進。悪性度の低い癌が多いですが、悪性度の高い未分化癌、良性からの悪性変化もあります。
  
頚部リンパ節癌:皮膚に癒着して硬いリンパ節。多くは頭頸部癌の転移ですが、原発巣不明の転移リンパ節もあります。頭頚部癌の転移であれば、原発巣も同時に摘出しなければ後の制御が困難になります。そのため転移リンパ節が疑われた場合には、上気道のファイバー検査、エコー、CT、MRI、PETなどで頭頸部に原発巣がないかまず確認する必要があります。頭頸部に原発巣がなければ、異常なリンパ節の針生検や生検を行い確定診断します。もし転移リンパ節であれば全身の検索を徹底的に行います。悪性リンパ腫や白血病にも注意します。悪性腫瘍以外でも、壊死性リンパ節炎、リンパ節結核、伝染性単核球症などでも遷延化するリンパ節腫大を認めます。

トランスルミネーター   14年4月6日
 採血用のトランスイルミネーターを導入しました。トラスイルミネーターは、赤色LED光を皮膚に照射することによって皮下の血管の走行を浮き出します。当院ではアレルギー検査などで幼児でも採血する機会は多いですので、血管の同定な困難な患者様の採血に活用したいと思います。

結核   14年2月19日
 今日は松山保健所の結核対策講演会を聴講してきました。私も大学病院時代に頚部リンパ節結核や喉頭結核を目にする機会があり、結核の多様性は実感していたのですが、今日は改めて結核の現状について勉強することができました。
 わが国ではいまだに年間21.000人以上の新規登録患者が発生し、欧米先進国の中でも高い罹患率で、70才以上の高齢者が半数を占めています。高齢者では小児期に潜伏感染して、免疫が落ちて発症する内因性発症がほとんどで、20才以下では新規に感染して発症するならば2年以内に発症します。結核はヒトーヒト感染しますが、非結核性抗酸菌症は土や水からの感染でヒトーヒト感染は起こしません。結核菌は喀痰が乾燥しても空気中に浮遊して死滅しないために、麻疹、水痘とともに空気感染します。結核に特異的な症状、所見はなく、症状では無症状から長引く咳・痰、微熱、寝汗、体重減少から呼吸困難まで多彩で、胸部聴診音も正常であることが多く、レントゲンでも、典型例では上葉の空洞や撒布陰影ですが多彩な所見を示します。確定診断は喀痰からの塗抹培養や結核菌の核酸をみるPCR法で行います。ツベルクリン反応は評価が難しく、近年は血液検査のQFTやTーSPOTで感染の有無の確認が可能となりました。ただし感染後8週以降でないと陽性化せず、過去の感染でも陽性(20才台の3%、50才台の10%、70才台の30%が陽性)ですが、潜在性結核の診断が可能となり、発症の早期発見や医療従事者の検診に役立っています。高齢者の難治な誤嚥性肺炎の中に結核が隠れている場合などは、喀痰培養を行って初めて確定診断できます。結核は人体の様々な部位で増殖し、肺結核以外にも、気管支結核、喉頭結核、結核性胸膜炎、粟粒結核、腸結核、尿路結核、結核性脊髄炎(脊椎カリエス)、結核性髄膜炎、結核性リンパ節炎などがあります。この中で隔離が必要なうつる結核は、肺結核、気管支結核、喉頭結核です。頭頸部癌患者は比較的結核に発症する例が多いようです。
 講演会を聴講して、耳鼻科でも、気道の炎症所見の軽い長引く風邪や高齢者の痰には注意が必要なことを改めて認識しました。また日常診療で、喉頭結核や頚部のリンパ節結核の存在にも改めて注意したいと思います。

花粉症の注射とステロイド   14年2月8日
 診察時に花粉症治療についての希望をお聞きした際に、注射を希望される方が時々おられます。花粉症の注射とステロイドについての述べてみます。
 花粉症の減感作(免疫)療法として、スギ花粉の抗原エキスがあります。皮下注射で、徐々に増量した後、維持量で2~3年続けます。花粉症の症状が減弱するという有効率は60~70%という報告が多いですが、私の印象では50%程度です。やはり注射の度に、アナフィラキシー・ショックの発現に注意する必要がありますので、私は季節性アレルギーであるスギ花粉症に対しては積極的には勧めていません。この6月に認可される予定の経口剤の有効率と副作用発現率が今後どうなるのかは注視しています。
 花粉に特定せず広くアレルギー反応を押さえる非特異的減感作療法に分類されるものとして、国内献血者の人免疫グロブリンを抽出したヒスタグロビン、アレルギー性疾患患者の尿から抽出・精製した抗アレルギー性物質のMSアンチゲン、8種類の細菌の菌体及びその自家融解物質を抽出したブロンカスマ・ベルマがあります。ちょっと長くなりますが、ヒスタグロビンの公式な添付文書の注意書きの一部を転記してみます。
 ヒトの血液を原材料としていることに由来する感染症伝播のリスクを完全に排除することができないことを患者に対して説明し、その理解を得るよう努めること。本剤の成分である人免疫グロブリンの原材料となる国内献血者の血液については、HBs抗原、抗HCV抗体、抗HIV-1抗体、抗HIV-2抗体及び抗HTLV-I抗体陰性で、かつALT(GPT)値でスクリーニングを実施している。さらに、プールした試験血漿については、HIV、HBV、HCV、HAV及びヒトパルボウイルスB19について核酸増幅検査(NAT)を実施し、適合した血漿を本剤の製造に使用しているが、当該NATの検出限界以下のウイルスが混入している可能性が常に存在する。その後の製造工程であるCohnの低温エタノール分画及びウイルス除去膜によるろ過工程は各種ウイルスに対して不活化・除去作用を有することが確認されているが、投与に際しては以下の点に注意すること。 血漿分画製剤の現在の製造工程では、ヒトパルボウイルスB19等のウイルスを完全に不活化・除去することが困難であるため、本剤の投与によりその感染の可能性を否定できないので、投与後の経過を十分に観察すること。肝炎ウイルス等のウイルス感染症のリスクについては完全に否定出来ないので、観察を十分に行い、症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。現在までに本剤の投与により変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)等が伝播したとの報告はない。しかしながら、製造工程において異常プリオンを低減し得るとの報告があるものの、理論的なvCJD等の伝播のリスクを完全には排除できないので、投与の際には患者への説明を十分行い、治療上の必要性を十分検討の上投与すること。となっています。
 イギリスで広まった狂牛病の原因が、従来の感染症の常識だったウイルスよりももっと微細な異常蛋白質のプリオンであることが判って以来、どんなに注意しても血液製剤では未知の感染症の否定ができないことになりました。このことからMSアンチゲンとブロンカル・ベルナは2000年代前半にいずれも製造元の意向で販売中止となりました。花粉症の注射薬ではありませんが、似たような製剤に、人由来の胎盤エキス製剤があり、国内でも2剤流通しています。この胎盤エキスは、異常蛋白質のプリオンは高圧蒸気滅菌によって蛋白質がアミノ酸に分解されるために無害であるとされていますが、アミノ酸まで分解されれば薬効自体も期待できないのではとの意見もあります。このようにプリオンの伝播などの未知の感染症が否定しきれないことから、当院ではヒスタグロビンは採用していません。
 当院で現在採用しているのは以下の2剤です。1)ワクシニアウィルスという安全なウィルスをウサギの皮膚に注射し、炎症を生じた皮膚組織から抽出分離した非タンパク性の活性物質を含有するノイロトロピン。下行性疼痛抑制系という神経伝達路を活性化する事によって疼痛を軽減する事から慢性の痛みに用いられますが、アレルギー反応も抑制するとされています。2)11β-OHSDという酵素の作用を阻害することから生体内で生理的に分泌しているステロイドの分解を抑制することで、結果的にステロイドの効果を増強する強力ネオミノファーゲンシ―(強ミノ)。肝機能障害の改善に広く用いられていますが、11β-OHSDという酵素は表皮細胞に多いために湿疹や蕁麻疹の改善にも使われます。当院では、注射薬の治療を希望される方にはこの2剤を、屯用ないしは1~2回/週で2~4週間続ける、の用法で用いています。
 アレルギー疾患への注射では、ステロイド(副腎皮質ホルモン)が最も強力に効きます。ステロイドは本来、体が肉体的精神的なストレスにさらされた時に体の恒常性を保つためのホルモンです。体を守る為のホルモンが体内の副腎皮質という臓器で調節されながら産生されています。強力な抗炎症作用や免疫抑制作用がありますので、膠原病や喘息重積発作、ショック、急性神経炎などの重篤な状態では強力に使われます。当然、アレルギー反応も強力に抑制します。膠原病でステロイドを持続的に内服していると、花粉症などは簡単に抑え込まれます。ただし、体本来の至適範囲以上に使われると、真菌(かび)の感染を含めた感染症を誘発する、糖尿病や高血圧、骨粗鬆症、胃潰瘍、精神障害、脂肪代謝を悪化させる方向に働きます。急にステロイドを休薬すると、本来の副腎皮質の働きが一時的にストップしているために、逆にステロイドの欠乏状態になり命にかかわる(副腎クリーゼ)という状態にもなります。このようにステロイドには劇的な効果と副作用があります。花粉も抗原性は強いので、大量に暴露すると局所での反応は強くなります。花粉を被って顔面や気道が腫れあがった際には、やはりステロイドでないと劇的には効きません。当院でもリンデロンのような水溶性で短期作用のステロイドを、急性の強い反応の場合のみ、屯用の注射として使用しています。
 またステロイドの注射にはデポメドロールケナコルトAなどの持続的作用のものもあります。これは効果が3~4週間持続しますので、一旦体に入るとホルモン調節が1ヶ月近く出来なくなってしまいます。重篤な副作用以外にも、注射部位の脂肪がやせて窪む、皮膚がニキビ様になる、生理のリズムが不調になる、などの軽度の副作用が出る可能性もあります。その為、耳鼻咽喉科学会では、花粉症治療としては長期作用型のステロイドの使用は推奨していません。当院でも花粉症治療としては行っていません。
 注射でない局所作用の点鼻液(スプレー)のステロイドは全身への移行がわずかなために、逆に花粉症の治療では選択薬として位置しています。ステロイドの力価の強いもの、パウダータイプで点鼻時の刺激の少ないものなど様々な剤型が出ています。呼吸器系では吸入ステロイドと呼ばれています。耳鼻咽喉科学会の花粉症ガイドラインの策定では、次回改定時には、予防薬として位置付ける、との検討もありました。局所ステロイドの作用として、血管拡張作用があります。その為、ステロイドの点鼻スプレーの多くには添付文書の注意事項として鼻出血が記載されています。ただし強力な血管拡張作用ではなく、鼻炎により惹き起こされた鼻前庭湿疹周囲からの鼻出血の方がはるかに多いですので、ステロイドを点鼻したら俄かに鼻血が出やすくなるとういことはありません。
 同じく外用剤としてステロイド点眼液や眼軟膏もあります。花粉症も、鼻腔の反応が強いタイプ、顔面の皮膚の反応が強いタイプ、口腔や喉頭まで反応しやすいタイプなど様々な反応形がありますが、目の反応が強い春季カタル(ドイツ語やオランダ語で、粘膜が炎症して多量の粘液を分泌する状態)というタイプもあります。このような場合にはステロイドの点眼薬が著効します。ただしステロイドの点眼で、緑内障が悪化して眼圧が上がる、真菌性角膜炎を誘発するなどの副作用があります。成人の20人にひとりが緑内障で、失明の原因疾患の各20%が緑内障と糖尿病性網膜症とされていることからも、緑内障を見過ごす訳にはいきません。当院では、春季カタルなど結膜炎の状態が強い場合は眼科専門医への紹介を原則として、低濃度ステロイド点眼液や眼軟膏を屯用かつ短期使用で用いています。
 最後に、皮膚科領域でのステロイドの軟膏やクリームの作用を述べてみます。耳鼻科でも外耳炎、耳介炎、鼻前庭湿疹、頚部蜂窩織炎などに抗生物質と合剤になった軟膏をよく用います。点鼻スプレーの項でも述べましたが、ステロイドを塗り続けると、血管拡張作用で皮膚が充血し、皮膚や脂肪組織が萎縮するために皮膚が薄くなってきます。花粉症などの吸入性抗原による気道の反応と異なり、アトピー性皮膚炎はドライスキンのような皮膚のバリアが弱い素因の上に、接触性抗原や食餌性抗原、感染、炎症、自律神経の作用が複雑にからみあって発症するという鼻炎以上に複雑なメカニズムがあります。アトピー性皮膚炎でもステロイドはやはり特効薬的な位置づけです。ところが、体内でも特に敏感で人目につく顔面の皮膚にステロイドを過剰に使用すると、先ほど述べたような副作用がステロイド使用後のリバウンドとして目だって出てきます。その為、アトピー性皮膚炎にステロイドは怖いとの認識が一般に広く普及しました。その後逆に、医学的な有効性が確認されていない高価なサプリメント的なものを購入することによる治療費の高額な負担や副作用という問題も、アトピービジネスと呼ばれて顕在化しました。現在の皮膚科の治療は、皮膚のバリアを保つ保湿をベースに、原因アレルゲンの除去、免疫抑制剤の局所使用とともに、ステロイドとうまく付き合っていくとの方向です。当院でも、難治性湿疹では、ステロイド連用による真菌感染や、角質の異常肥厚が病態の主因の尋常性乾癬など、皮膚科が専門となる慢性疾患が隠れていないかに注意しながら、軟膏はあくまでも短期使用との方針で用いています。 

アレルギー検査   14年2月6日
 当院で行う血液検査のアレルギー検査についてですが、複数の抗原をチェックする検査を、従来の33種類同時に調べるタイプから、新しく発売になった36種類調べるタイプに変更しました。従来の検査よりチェックするアレルゲンが増えました。卵白の中の耐熱性蛋白質で加熱卵の摂取の可否の指標となるオボムコイド、口腔アレルギーの代表的フルーツであるリンゴとキウイ、食品の特定原材料に準ずるゴマ、青魚の代表で鮮度の落ちた食材からヒスタミンが遊離されることで起こる仮性アレルゲンとの鑑別に役立つサバ、皮膚常在菌の好脂性酵母で思春期以降のアトピー性皮膚炎の増悪因子であるマラセチア、初夏と秋に空中抗原量が多くなり喘息や鼻炎の原因となるガ、糞や死骸が抗原となり丹毒の原因抗原となり得るゴキブリ、の項目が増えました。私から見てもなかなか考えられた36種類の組み合わせになっています。マルチアレルゲンの検査は、血中好酸球なども含めると検査の自己負担費用が6.000円弱もかかりますので、なかなか気楽にオーダーできる検査ではありません。当院でも医療費のかかる立場の方には、出来るだけターゲットを絞った必要最小限の項目のみを調べるようにしていますが、やはり広く調べられる検査は魅力的です。特に小学校入学前のお子様に以下のような体質がないかどうか知るのは有意義です。小学生の年代に生後増えてきた抗体の量が安定するダニやカビのハウスダスト・アレルギーがどの程度のレベルなのか、花粉症がどの程度準備状態なのか、1~2才で抗体が出来ても6才頃に摂取しながら慣れてきて耐性ができる(経口免疫寛容)卵・牛乳・小麦の抗体がどの程度あるのか、耐性ができにくく成人になっても反応が強くなりやすいエビ・カニ・そば粉などの抗体が出来てきていないか、接触性抗原の代表のラテックス(ゴム)のアレルギーが出てきていないか、などです。幸いに未就学児は、公的補助もあり自己負担の費用がかかりません。当然、自己負担分はその地域の市民の税金なのでやみくもに調べるとお叱りを受けますが、アレルギー素因が強い小児の体質を具体的に把握できれば、対策も立てやすいので、マルチ・アレルゲンの検査は大いに役立ちます。お母さま方には、小学校入学前の3月までが、費用負担の面からも検査にはお勧めの時期であるとお伝えしています。


ニュースな話題
       14年1月30日
 ウェザーニュース社がポールンロボのデータを基に、1月26日に東京始め関東6県でスギ花粉が飛散開始したと発表しました。同時にポールンロボを記者会見で紹介。今後はPM2.5も測定する予定であることも発表しました。ポールンロボはあくまでも花粉状粒子を測定したものですが、スギ花粉しか飛散していない今の時期のデータでは、スギ花粉の飛散を結構的確に把握できます。正式なスギ花粉の観測が1日当たりの花粉量を測定するのに対し、時間当たりの飛散量が全国レベルでリアルタイムに分かります。「2日連続して花粉を1個以上観測した最初の日を花粉飛散開始日とする」という従来の花粉飛散の定義とは異なりますが、今年は関東地方が全国でも最も早くまとまった花粉の飛散があったことは間違いないと考えられます。今後も花粉観測ロボットの精度があがると、花粉飛散予報も変わっていくかもしれません。当院のポールンロボは、まだわずかな飛散のみですので、松山の飛散開始日は2月に入ってからになると思います。とりあえずウェザーニュース社の取り組みは画期的です。ウェザーニュース社やグーグルは無料のコンテンツばっかりでどうやって収益を上げているのか不思議になる方も多いと思います。グーグルはいまや検索の上位に広告を載せるアフェリエイトやアドセンスで莫大な収益をあげるようになっています。ウェザーニュース社の一番の収益源は海洋気象予報だそうです。船舶がその情報を基に最も燃費の少ない航路を選択するそうです。先進企業の収益機会はどんどん進化していますね。
 今日は愛媛新聞の1面もSTAP細胞の記事でした。弱酸性の刺激を与えるだけの簡単な方法で、あらゆる細胞に分化できる万能細胞STAP細胞を作製することに理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの小保方リーダーがマウスで成功し、29日付のネイチャーに掲載されました。iPS細胞とは異なる新型の万能細胞で、再生医療の研究に役立つと期待されています。日本の再生医療はまた進化しそうです。頼もしいかぎりです。
 28日には、東京大医科学研究所などの研究チームが花粉症患者の細胞を使ってiPS細胞を作製し、このiPS細胞を、さらにアレルギー反応を引き起こす原因となる肥満細胞に変化させることにも成功したとの報道もありました。耳鼻科医にとっては、京都大が高度難聴のサルにiPS細胞から作成した内耳細胞を移植して中等度難聴に改善した、というニュース以来のニュースで、私も少し興奮気味です。特定のアレルギー疾患に感作された細胞が簡便に作成できれば、薬の効果や副作用の判定が迅速かつ安全にできます。アレルギー分野の創薬医療にも再生医療が一気に入ってきそうです!

スギ花粉 免疫療法 その2        14年1月20日
 スギ花粉症への経口免疫療法のお薬が、1月17日に製造販売承認を得ました。保険診療の制度上では、今後、薬価収載という過程を経て発売されていくことになります。予定は未定ながら、今のところ、今年4月に発売、保険診療での使用が可能になる見込みです。 開発した鳥居薬品のプレリリースによれば、薬剤は、シダトレン:スギ花粉舌下液200ボトル、2.000ボトル、2.000パック。効能効果:スギ花粉症(減感作療法)。適応年令:12才以上。服薬方法:1日1回、舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込む。その後5分間は、うがい・飲食を控える。1週目増量期; 200ボトル 0.2-0.2-0.4-0.4-0.6-0.8-1 と毎日増量 2週目増量期;2.000ボトル 0.2-0.2-0.4-0.4-0.6-0.8-1 と毎日増量 3週目維持期;2.000パック 全量。とのこと。この療法での具体的な費用や副作用は、情報を得次第にお伝えします。花粉症診療に携わるものとしては、近年にない画期的な薬剤です。発売はちょうど今シーズンのスギ花粉シーズンが終わる時期に当たります。花粉症の症状が厳しくて積極的に体質改善に取り組みたい患者様とよく相談する形で、私も取り組みたいと思います。鳥居薬品では、一般の人向けの情報提供サイトを1月27日にオープンするとのことです。  トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ

追記:2月15日
 経口免疫療法の情報が集まってきています。製薬会社の情報では、対象者は12才以上で、65才以上の高齢者への使用経験はなく慎重に判断する。妊娠中や授乳中の安全性は確立していない。スギ花粉以外のアレルギーを持つ患者への有効性、安全性も確立していない。患者は、アナファラキシー等の発現の恐れがあるために、かかりつけ医療機関と緊急搬送先医療機関を明記した患者携帯カードを常に携帯する必要がある。とのことです。副作用への注意としては、国内臨床試験266例ではアナフィラキシーショックなどの重大な副反応は報告されていないが、発現の可能性に対して、観察を行い適切な処置を行うことが求められるとしています。36例13.5%に口内炎、舌下腫脹、口腔内腫脹、咽喉頭掻痒感、耳掻痒感、頭痛などの副作用が認めらとのこと。アレルギー学会のアレルゲン免疫療法の手引きからは、80%が症状軽減、20%が改善なしとの報告です。月に1回(発売後1年間は2週間に1回)は必ず診察すること。投与30分間、治療開始後1ヶ月間、スギ飛散時期には、特に副作用の発現には注意し、アナフィラキシーの発現の可能性が皆無ではないことを明記せよ、とのこと。このように、製薬会社も学会も慎重な対応を求めています。これらを踏まえると、経口で副反応が少なそうと言っても、やはり減感作療法ですので、医療機関内ではなく自宅で服薬することから、注射による減感作以上に注意が必要とのスタンスですね。実際に運用が始まると、ドクターは患者様にアナフィラキシーへの注意を喚起した上で、喘息患者や食物アレルギーの患者に準じて患者携帯カードを常に携行してもらい、花粉症シーズンはさらに副反応の発現に注意してもらう必要があります。もろもろ説明を行うと、患者様もドクターも、治療を開始することに”怖くなったり、億劫になりそう”です。1ヶ月(当初は2週間)に1回は必ず診察を受け、薬価はまだ発表になっていませんが、2年間で10万円??近くの自己負担が必要で、従来の注射の減感作治療に準じるなら、2~3年後に自覚的に有効と感じる人が2人に1人程度(あくまでも私の実感からきた主観ですが)、雑草花粉症やハウスダスト、食物アレルギーを合併している人はさらに効果が低いならば、経口減感作も注射減感作同様あまり普及しないかも知れません。私も、情報を集めながら、慌てずに対応していこうと思います。

ハートフルな映画       14年1月16日
 年末の総集編でやっと「あまちゃん」を観ることが出来ました。通の人からは総集編ごときでは魅力は解らないとお叱りをうけそうですが、流行の周回遅れでハートフルなドラマに触れることが出来ました。年始は、ネットのレビューから脚本の良さそうなのを私なりに厳選して、ハートフルな映画をDVD鑑賞しました。「舟を編む」:「そして父になる」は見ていませんが、今年の日本アカデミー賞の発表が楽しみになってきました。私は「舟を編む」を大賞に押したいです。山田洋次監督いわく、こんな邦画ができるなら日本はまだまだ捨てたもんじゃない、と言わしめた映画です。「最強のふたり」:フランス映画で、全編を通してすこしウルウルしながらニコニコできます。本当にハートが暖かくなります。私の映画鑑賞歴の中でもベスト20には入りそうです。「鍵泥棒のメソッド」「アフタースクール」:コメディータッチのサスペンスです。今が旬な俳優が勢ぞろいで、痛くないサスペンスの脚本が秀逸です。「きっと、うまくいく」:ハートフルなインド映画ですが、スイマセン、レビュー程には私はホッコリとはしませんでした。途中脱落でした、、、

うがい薬と医療保険
       13年12月30日
  来年4月は消費税増税とともに、2年に一度の診療報酬改定の年です。年末のニュースで、うがい薬のみの処方は保険診療から外すとの厚労省の方針が発表されました。ただし他のお薬との同時処方では、引き続き保険診療扱いとのことです。うがい薬だけで年間医療費が60億円!とのこと。厚労省のこの方針には、とりあえず私も賛成です。耳鼻科の立場で見ると、口腔カンジダ症や口内炎、扁桃炎の治療としてのうがい薬の処方はありますが、全科的に見ればうがい薬単独での処方で最も多いのは”風邪予防”のための処方だと思います。医療費、介護保険、年金など、このままでは若い世代につけが回るのは見えていますので、治療を主目的とする健康保険から予防医学的な治療を外すのは合理的です。以前から、うがい薬だけでなく、湿布薬や漢方薬なども保険適応外とする検討が漏れ伝わっていました。漢方も西洋医学的にな薬効評価が難しいですので、医療保険外とする意見にも一理あります。これからは先進医療をどの程度まで医療保険に含めるか?これまで保険で認めていた医療のどれを外していくのか?という段階になっていかざるを得ません。日本の医療は国民皆保険、フリーアクセス(自分の希望する病院に自由に罹れて、病院は患者を選択できない)です。もし国保を滞納していても、大病したら、その月から保険料を支払えば保険で事後的に認めてもらえます(だったと思います?)。アメリカでは病気になったらまずは自分が加入している保険で契約している家庭医を受診しなければいけません。重症化した際も保険の認めている範囲の制限があります。アメリカでは保険未加入者の数も半端ではありません。国民皆保険は日本が世界に誇る医療制度ですが、高齢人口の増加による医療費の増加とともに、医療の進歩による医療費の肥大化も宿命です。従来の治療は健康保険で、先進医療は個人の医療保険でまかなうという混合診療もどこかでは認めていかざるを得ないと思います。今、TPP交渉で議論となっている分野のひとつが医療保険の自由化です。TPPの行方も、混合診療の行方を大きく左右します。私も国民皆保険が良いのは分かっていますが、国の財政を考え、かつ医療の進歩を考えると、どこかで混合診療を加えていかざるを得ないと思っています。うがい薬の保険適応除外はその第一歩となりそうです。

クリスマス・イブ       13年12月24日
 携帯の普及とともに、ドラマでは劇的な出会いが描きにくくなったそうです。話題のドコモのCM、Line世代のクリスマス・シーズンの出会いを描いていて、なんだかほこっとします。シンデレラエクスプレス@わたせせいぞう&ユーミンに続くクリスマスエキスプレス@山下達郎、スマホ前世代の駅での出会いもどうぞ。(山下達郎のクリスマス・イブには89年のJR東海CMに出演した牧瀬理穂がちょこっと出ています)
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迅速検査       13年12月15日
 当院では、アレルギーや感染症、炎症を診るための血液検査は行いますが、予防接種は行っていませんので、来院の度に注射を怖がるというお子様はいません。反復性中耳炎で、鼓膜切開や鼓膜チューブ留置のための麻酔による鈍痛や、抑制帯に巻かれることを嫌がるお子様は以前より見られました。以前、あるお母さまから「車が当院の方向に曲がったとたん、子供が泣き出します」と聞いた時には、心苦しがったです。さて、以前はインフルエンザだけでしたが、溶連菌、アデノウイルスから最近はマイコプラズマ、メタニュウーモウイルス、肺炎球菌まで、年々、感染症の迅速検査が増えています。当院でも、発熱した場合や、咳が長引く場合など、迅速検査をする機会がめっきり増えてしまいました。また当院では積極的に鼻の細菌検査を行っています。さらにアレルギー検査のひとつである鼻汁好酸球検査では鼻粘膜を擦過する必要があります。診察ユニットにすわるなり鼻を抑えて嫌がるお子さんが年々歳々増えてきました。中には「今日は鼻のこちょこちょない?」と座るなり私の機制を制するしっかりしたお子様もいます。特に感染症の迅速検査では、採取した検体が少量だと偽陰性(感染しているのに検査では陽性に出ない)となる可能性もありますので、ある程度しっかりと鼻の奥の上咽頭粘膜を擦過する必要がありますので、大人も含めてどうしてもツンとした痛みを頭の奥に感じてしまいます。診断には非常に有用な検査ですが、悩ましい検査です。子供達が出来るだけ嫌がらないようにするには、どうしたらいいのだろう、、と暗中模索の毎日です。検査用の綿棒も、最近は毛先の柔らかいものが出てきています。このような綿棒を活用して、また幸にも耳鼻科医は迅速検査の前に鼻腔の中のどちらが広いか確認できることから、出来る限りツンとしない検査を心掛けたいと思っています。

映画 ゼロ・グラビティ       13年12月15日
 今年最高の3D映画との評判を聞きつけて、地上600㎞の宇宙空間に放り出された宇宙飛行士の運命を最新のVFXと3D映像で描いた映画「ゼログラビティ」を、IMAX3Dで観てきました。脚本も無駄がなく、これはあり得ないだろうという無理すぎる設定も目につかず、緊張の90分間でした。くやしいけども、ハリウッド映画は邦画よりVFXに掛ける費用が桁違いのようです。地球を背にしての宇宙遊泳、緊迫の大気圏突入などが疑似体験できます。「アバター」が3Dのエポックメイキングならば、この映画も3Dの新境地を開きました。SF好きな方にはお勧めの映画です。
 YouTube 映画『ゼロ・グラビティ』予告4 絶望編 へ

新い花粉症治療ガイドライン       13年12月4日
 以前は予防投薬と称していたスギ花粉症の初期治療ですが、臨床データの蓄積とともに少しずつ方法論が変わってきています。今年、花粉症治療のガイドラインも4年振りに改定になっています。花粉飛散1ヶ月前から抗アレルギー剤を服用する集団と花粉を感じ初めてから服用する集団で比較してもシーズン中の症状抑制率には変わりが無かったとの報告があります。抗ヒスタミン作用の薬剤は速効性があるので症状発現時からでも十分であるとの意見もあります。初期治療の標準的治療は、従来標準的とされた「毎日飛散する飛散開始日の2週間前から服薬する」から「予想される飛散開始日の1週間前から服薬、ないしは、初観測日以降で飛散開始日の前でも、目や鼻が痒くなるなどの症状を感じ始めた時点で服薬を開始する」となりそうです。臨床医の私の印象でも、後者の方法で十分花粉症の初期治療になると思われます。

恋するフォーチュンクッキー       13年11月24日
 恋するフォーチュンクッキー、いろいろなご当地版で盛り上がっているようです。シンガポールに留学している日本人大学生4人が作ったPVです。現地のマスコミでも話題になっているとのこと。広がれCool Japan!(でも、どうしてジム・ロジャーズが出てくれたのでしょう??)  
 YouTube:恋するフォーチュンクッキー Singapole Ver.  

99.9%が誤用の抗生物質       13年11月11日
 岩田健太郎氏の「99.9%が誤用の抗生物質」を読了しました。ショッキングなタイトルの本ですが、第5章でも触れている通り、「経口第3世代セファロスポリンは、99.9%が誤用」というのが著者の伝えたいことのようです。岩田氏は臨床の立場から研究機関の教授を務めています。この本は専門書でなく一般向けの新書ですが、しっかり文献を明示して明確に論を進めています。ここかしこに当意即妙な例えも満載で、きっと医学生に大人気なのでしょう。氏の、研修医時代に[とにかく8剤以上使っている場合はなんでもいいから減らせ」と上級医に鍛えられた。(ちなみに研修先は、研修医に大人気の沖縄中部病院です) CT検査するならば、医師も患者と堅く抱き合って一緒にCT検査をうけなければならない、というルールを作ればCT検査のオーダーは激減する。臨床データを基にした治療(EBM)や薬剤治験のデータは、結論のみをうのみにせず、EBMの母集団や薬剤データの背景を見極める。患者に良いと思って薬を増やす医師には日本人らしさが背景にある。医師が新薬を使いたくなる心根とMR(製薬会社の薬剤提供担当者)との関係の是非。大学病院外来の質の低さは治療者と患者さんの共犯。基礎医学と臨床医学の距離は離れてきている。など、広く偏らない視野からの指摘には、私も大いに感心しました。
 この本では、風邪に抗生物質は必要か? 抗生物質やCRPのような検査を乱用していないか? というテーマが取り上げられています。著者も、”抗生物質を必要とする(こともある)急性咽頭炎、急性副鼻腔炎、急性中耳炎は、「かぜ」と間違えかねない。「かぜ」同様、抗生物質を必要としない急性気管支炎も「かぜ」と間違えやすく、抗生物質を必要とする肺炎は急性気管支炎と勘違いしやすい。”と述べて、病気の連続性を指摘し、慌てず経過を診ることの大切さを訴えています。必要に応じて、効果の確立された薬剤を使用する、という論旨には、私も大いに賛同します。経口第3世代セフェム剤をあまり処方しない私としては、タイトルにも大いに納得です。
 ここからは、耳鼻科医である私から臨床論を述べてみます。
1、風邪に抗生物質は必要か?
 風邪を”咳、鼻汁、咽頭痛の症状が同じバランスで出ているもの”とすれば、もっとも多いのが、”ライノウイルス、エコーウイルス、コロナウイルスや時にRSウイルスなどに以前罹った免疫があるところへの上気道感染”によるウイルス性急性上気道炎だと思います。当然、放っておいても治ります。インフルエンザなどの反応の強くなるウイルスでも、溶連菌や肺炎球菌などの細菌感染、マイコプラズマなどの肺炎でも、はては癌でも、免疫力が上回れば放っておいても治ります。ただし、世界的には肺炎や下痢症で命を落とす患者は決して少なくありません。発展途上国の小児では、中耳炎からの髄膜炎でも命を落とします。耳鼻科医は、咳、鼻汁、咽頭痛に対して、目を皿のようにして、中耳粘膜、鼻腔粘膜、咽頭粘膜、喉頭粘膜、気管粘膜の状態を見て、病状の経過も勘案しながら、現在の局所の状態が、どの病原菌によるどの程度の活動性の病態かを推し量ろうとします。ウイルス性上気道炎には抗生物質は必要ありません。熱が高いから、CRPが高値だから、だけで抗生物質の適応ではありません。私は、上気道に抗生物質が有効な病原菌の存在が疑われ、かつその人に悪影響を及ぼす可能性がある場合に抗生剤を投与しようと思います。
2、持続感染からの急性増悪
 乳児は血管や脳脊髄関門のバリアが弱く、菌血症、細菌性髄膜炎、SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)などの重篤な細菌感染症を発症することがあります。未就学児は、鼻や咽頭の免疫力が弱く持続的な細菌感染叢を持っていることが多く、除菌しても集団保育の環境下では、直ぐに再感染します。この細菌叢は必ずし病原性を示すという訳ではありません。私は外来でよく「鼻に細菌を飼っていても元気ならいいけど、中耳炎を誘発したり、下気道に悪影響を及ぼしているならば、こじれた状態ですよ」とお伝えしています。成人の口蓋扁桃も持続感染の巣です。IgA腎症や掌蹠膿疱症のような病巣感染と呼ばれる体の他の部位に悪影響を及ぼす感染を誘発することがあります。高齢者は、免疫力が低下して、かつ、粘膜の修復力が弱いために、感染症が増悪したり、病原性の弱い微生物から発症する日和見感染を惹き起こしやすくなります。感染で体質がアレルギーに傾かないというような感染の利点もないことはないのですが、持続感染している臓器や粘膜では、ウイルス性上気道炎の後の二次感染だけでなく、持続感染叢からの急性増悪化には注意したいと思います。
3、風邪の初期に抗生物質は必要か?
 ウイルス性上気道炎に抗生物質は必要ありませんので、二次感染を来しにくい初期は、よりいっそう抗生物質は必要ありません。しかし、上気道の細菌叢が悪影響して反復性中耳炎や難治性中耳炎の段階の小児、副鼻腔に慢性感染を来して副鼻腔気管支症候群の状態の高齢者などには、時として持続感染からの急性増悪のために抗生物質を必要とする場合があります。また、社会的要請ともいえるのですが、本来ならば2~3日経過を見た上で細菌感染が確定した段階で抗生物質は投与されるべきものですが、重要な人生のイベントを前にして、マイコプラズマやクラミジアなどのように発症初期は診断の確定することが難しい感染症の発症初期が疑われたり、持続感染からの急性増悪”予防”のために、抗生物質を投与する場合があります。この場合の処方に対しては、国民医療費の負担の観点や、全国レベルでの耐性菌誘導の視点からは、批判されるものです。社会的要請からの抗生物質投与は、私にとって最も気を使います。
4、急性中耳炎の初期に抗生物質は必要か?
 医学論文やデータを見る場合には、物理学のように前提となる母集団が一致するのではなく、母集団が一致しないことに留意が必要です。国別で比較しても、データを集計した病院のランクによっても母集団の背景が異なります。様々な病気の診断基準や治療指針を見る際にも、その辺りへの注意が必要です。肺炎は、感染の背景の違いが、診断基準や治療指針を策定する段階から反映されています。市中肺炎と院内肺炎に分けて治療指針は策定されています。中耳炎も、国別に、また耳鼻科や内科、小児科などの科別に様々な診断基準や治療指針がありますが、治療指針の元になる母集団の違いには注意しなければいけません。日本よりもアメリカの診断基準の方が、家庭医が判断した発熱による中耳粘膜の発赤や、軽度のウイルス性の中耳粘膜の発赤、耳管狭窄よる中耳への換気不全による滲出性中耳炎、などの病態の割合が多くて、日本の耳鼻科専門医が判断するよりも細菌性中耳炎の割合が少なくカウントされている恐れがあります。アメリカの治療指針によれば、急性中耳炎は3日程度は対処療法のみで抗生物質は服用しないで経過をみる、となっていますが、小児で上咽頭に細菌感染叢があれば初期から細菌性中耳炎化する頻度は高くなります。中耳炎でも中耳だけを見るのではなく、上気道全体や過去の経過も勘案して、抗生物質を必要とするかどうか判断する必要があります。2~3日経過をみることも重要ですが、自分が今発病している立場だったら、今の経過を抗生剤なしで2~3日みることが出来るか、耐えることが出来るか、という視点も必要です。私は、明らかなウイルス性中耳炎や鼓膜炎の初期でなくて、細菌感染の可能性があると判断された場合には、可能な限り病原菌も類推して、抗生物質を処方しています。そのために、細菌培養同定検査は積極的にオーダーしています。(ちなみに私は、副鼻腔も含めてレントゲン検査は、どうしても判断材料にしたいと思う最低限のレベル以外は行っていません)
5、急性喉頭蓋炎はインフルエンザ桿菌による感染?
 喉頭蓋炎の代表的な病原菌はインフルエンザ桿菌です。急性喉頭蓋炎は救急的に命にも関わる病態ですので、喉頭蓋喉頭面や喉頭披裂部、声門下の浮腫を来し気道狭窄を来す可能性が少しでもあれば、予防的な意味も含めてインフルエンザ桿菌に必要な抗生物質を入院管理化で投与する必要があります。しかし、喉頭蓋炎も実は様々な病原菌で起こります。RSウイルスやインフルエンザウイルス、EBウイルスなどのウイルス感染でも起こります。舌根から喉頭披裂部までの粘膜の反応の程度も様々で、舌根扁桃肥大の体質があるために、感染の影響は軽度でも二次的な粘膜の反応が高度な場合などもあります。このように原因菌も重症度も様々です。下咽頭、喉頭を直接診察できるのは耳鼻科医の特徴です。的確な早期診断、早期治療、高次病院との連携に心掛けています。

スギ花粉症の舌下免疫療法 その1     13年11月2日
 スギ花粉に対する舌下免疫(減感作)療法が薬事法上で認可され、今後順調に薬剤が承認されれば来シーズンからは保険診療が可能となります。日本耳鼻咽喉科学会でも、11月の専門医講習会、2月の耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会、5月の総会学術集会の折に講習会が開かれます。新しい治療法でこれだけ大規模に講習会を開くのは、日耳鼻学会としては初めてではないでしょうか。それだけ耳鼻科診療の世界でもepoch-making なのだと思います。
 当院でもこれまで保険診療の認められていたスギやハウスダストに対する注射による減感作療法は行っていましたが、ごくまれにアナフィラキシー・ショックなどの重大な有害事象がある、私の印象では3年程度治療を続けても有効率は半分以下、長期の通院を必要とする、などから、当院の患者様には主に、ハウスダストなどの通年性過敏症の方にはレーザー治療や化学剤治療を勧めて、花粉症の方には、予防投薬(初期治療)などの薬剤でコントロールして頂くことをお勧めしていました。当院でも、今後保険診療が認められれば、この経口免疫療法の導入を検討します。
 さて、スギの舌下免疫療法ですが、これは舌下のパンに含ませるなどで、スギ・アレルゲンを、低濃度、少量から連日投与し、徐々に増量、高濃度へ移行させ、最高用量に到達後その用量を維持用量とする治療方法です。アレルゲン免疫療法、減感作療法とも呼ばれるアレルギーに対する変調療法で、アレルゲンに対する過敏性を減少させる治療法です。世界的には既にWHOも有効性を認め、米国、英国、フランスなどの諸外国で既に行われています。一方日本では、予防接種も含め副作用に対して慎重な国民性の為か、臨床研究や承認が遅れていました。来シーズンのスギから、ようやく国が承認する治療法となる見込みです。
 作用機序自体は十分解明されている訳ではありません。”原因物質を摂取することによって体が慣れて再調整される”のですが、作用機序の説明として、1)この再調整により調節T細胞の一種であるTh2細胞が増加する、2)アレルゲン特異的IgE産生の代わりにアレルゲンと結合し中和するアレルゲン特異的なIgG誘導が起こる、3)特にIgGの中のIgG4がIL-4やIL-13を介してIgEを産生するB細胞からIgG4を産生するB細胞に切り替わるためにIgEの作用が減弱する、4)Th2細胞や肥満細胞に作用するIL-10の産生を増大させIL-10を介してTh2はロイコトリエン産生を抑制しヒスタミン分泌を予防するように働く、、 などの様々なデータが報告されています。アレルギーの遅発性反応では、ひとつの機序だけでなくアレルギー性炎症を鎮める方向で様々なネットワークが働きます。恐らく免疫療法でも、様々な機序が複合的に作用しているものと私は考えます。もともと生物は遺伝子レベルで固体を守る方向に進化します。進化した個体が生き残っていきます。アレルギー反応はもともと個体を守る為の反応です。過剰に反応し過ぎることがアレルギーという”病気”になります。免疫療法ではマイルドに個体を守る機序が遺伝子レベルで総合的に起こっているものと思われます。ちょうどiPS細胞が山中因子の活性化で作られるように、アレルギー体質も、根源ではどこかの遺伝子にトリガーによる刺激が加わってカスケードとしてのネットワークが働き出すのかもしれません。将来、そのような遺伝子が特定できれば、遺伝子治療でピンポイントで体質を変えることができるかも知れませんが、現時点では、この免疫療法が最も体質改善に近いものと言えます。
 経口免疫療法は、これまでも食物アレルギーの分野では経口減感作療法が、研究的な機関で行われていました。急速減感作と呼ばれる短期間で高容量を投与するヒトに対する研究的治療も行なわれていました。(急速減感作はスギやハウスダスト対して注射では試みられています)しかしこれらの治療では、ショックなどの副作用の可能性があるため、入院の上厳重な管理のもとで行う必要がありました。今回のスギに対する経口免疫療法は家庭での服用が前提となっています。今のところ国内での臨床研究データでは、注射による投与とは違い、重篤な有害事象は報告されていません。その意味では安全な治療法のようですが、有効率は注射による投与よりはやや劣っているようです。つまり、副作用の可能性は少ないが有効性は低い?これまで重篤な副作用の報告はないが全く起こらないわけではない?などの心配があります。これから、講習会の開催や経口減感作薬の承認に伴って、より詳細な情報が得られると思われます。私も情報をよく吟味して、舌下免疫療法を実際に行う否か、対象となる個々の患者様とよく相談したいと思います。
 P.S. 13年1月13日:アレルギーの原因抗原の検査試薬や、当院でも用いている減感作療法用抗原エキスの注射液を製造している鳥居薬品が、昨年7月にダニ・アレルギー治療用の経口減感作(免疫療法)の舌下錠の臨床治験を始めると発表しました。舌下錠とは舌の裏側に含ませて溶かせる内服薬に準じたお薬です。この治験では薬の安全性、有効性、至適使用量を調べるフェーズ2だけでなく、実用前の最終試験である多くの患者さんを対象にするフェーズ3も計画に入っています。また、昨年のクリスマスには、スギ花粉症治療用の舌下経口減感作薬のフェーズ3の治験が終了して、発売に向けた最終段階である承認申請を行ったと公表しました。遂に、経口減感作薬の実用化の可能性が見えてきました。うまくいけば2、3年以内に当院でも使用できるようになるかもしれません。今の医学では、遺伝子治療が実用化汎用化するまでは、減感作療法が最も体質改善に近い治療法と言えます。しかし、従来の注射薬を用いる治療法は、治療期間が長期に渡ること、確実な効果が保証できるものではないこと、ごくまれながらショックなどの重大な有害事象を惹き起こすリスクがあることなどの理由で、臨床の場で普及はしませんでした。舌下減感作療法が副反応が限りなくゼロに近い条件で行えるようになるのであれば、スギ花粉症を初めとするアレルギー疾患に対する治療の選択枝が増えます。アレルギーを専門とする私にとっては、クリスマス・プレゼントとなるニュースでした。

耳鼻科からみた世代分類      13年11月2日
 テレビで得た豆知識ですが、マーケティングの世界ではターゲットの世代を絞って戦略を練っています。アラサ―、アラフォー、F3(30代女性のこと)など様々な分類がありますが、博報堂の世代分類が目に留まりました。以下、耳鼻科診療の観点を私なりに追加して挙げてみます。当院通院の皆様はどの世代に当てはまりますか。20才以下の世代には今後、どんな名称が付けられるのでしょうか? 失われた20年世代、日はまた昇る世代、どうでしょう?
 青春映画世代  67-70才 小児期は国民皆保険(昭和36年)の前で、
               結核、小児細菌性中耳炎副鼻腔炎遷延、
               ピロリ菌感染の世代。鼓膜穿孔、細菌性中耳炎の後遺による
               内耳性耳鳴症、副鼻腔の発達不良の世代
 団塊      62-66才 ピロリ菌感染の世代
 ポパイ・JJ世代 53-61才
 新人類     47-51才 この辺りから下がアレルギーを有する人が増える世代
 バブル     43-47才 高蛋白高カロリー食、ピロリ不在で、
               胃酸過多からの逆流性食道炎が多い世代 
 団塊ジュニア  31-47才
 ゆとり     21-30才  小児期に贅沢に抗生物質を服用できた世代
(名称まだ)   20才以下 第三世代セフェム系抗生剤服用世代の下で
               未就学児に耐性菌中耳炎・副鼻腔炎が多い 

桶川ストーカー殺人事件ー遺言      13年10月30日
 本の紹介をひとつ。「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞」「日本ジャーナリスト会議大賞」受賞、記者の教科書とも言われる清水 潔著「桶川ストーカー殺人事件ー遺言」です。補章のある文庫本が事件のその後の経過にも触れている完結版です。ちなみに清水氏はここ2年でも、日テレ記者として足利事件の報道で「日本放送連盟最優秀賞」「日本ギャラクシー賞」を受賞、受刑者の無罪が確定しました。前職の雑誌フォーカス記者時代のこの事件がきっかけでストーカー規制法が立法化されました。自称”3流雑誌記者”が事件を追い記事にするという行動がどういうことなのか、まるで追体験したかのような読後感です。
 ノンフィクションの本が大好きな私ですが、不覚にもノンフィクションで私が涙したのはこの本が初めてです。被害者の方の遺言、そのご両親や記者の考え、色々な面で心に迫るものがありました。私も多くは語りません。被害者のご冥福をお祈りします。

情報開示と治療法の選択      06年1月9日
 院内のLED照明化が完成しました。やはり照明が明るくなると、晴れやかで清潔感に溢れます。もうひとつだけLED化を検討しているものがあります。それは、私が診察時に頭に着けている額帯鏡です。今はハロゲンライトの光源をファイバーで導光しているタイプを用いているのですが、最近、LED光源のものが複数の医療器具メーカーから出るようになりました。高輝度の製品も出てきています。問題は、従来と色調が異なることです。その辺りの問題がクリアできれば、当院でも導入しようと思っています。また、BGM用のスピーカーや環境ビデオ用のモニター、トイレのハンドソープの自動スイッチも更新しました。スピーカーは念願のBOSE社製です。これまで喫茶店に行くと、いい音質のお店のスピーカーが気になっていたのですが、BOSE製にしてダイナミックレンジの広がりを実感しています。こっそりと悦に入っています。(^.^) 

院内のLED化      13年11月30日
 先日、ある大手製薬会社の本社より、社内研修用に当ホームページの使用許諾の依頼がありました。当ホームページの「今月の疾患情報」を元に、耳鼻咽喉科診療所の1年を把握しようとするものだそうです。当ホームページは当院かかりつけの患者様はもとより医療従事者の方々の閲覧も想定していましたが、インターネットの時代、このような利用の仕方もあるのだなと、感心してしまいました。もちろん医療関係者に活用して頂けるのは本望ですので快諾しました。
 時たま、旧友や昔お世話になった方から、当ホームページを介してメールを頂く事があり、びっくりするやらうれしいやらという時があります。昨今は学校や職場の名簿も無くなる時代ですが、個人情報の開示も悪いことばかりではないですね。

コンサートホールのランキング     13年11月21日
 山下達郎コンサートのMCで仕入れたランキング情報です。多目的ホールの定員では、ひめぎんホールは日本で3番目とのことです。私も大きいホールとの認識はありましたが、全国で3位とはビックリです。 1位の東京国際フォーラム ホールAが5012席、2位のNHKホールが3746席、ひめぎんホールが3000席です。ひめぎんホールを満杯にすれば人気アーティスト!とのことでした。気になりついでに調べてみると、愛媛県武道館の収容人数は6532人、福山雅治ライブの座席表を参考にするとアリーナツアーライブでは、アリーナ席に立見を入れて5600名収容程度でしょうか。松山市民会館が1999名、アスティー徳島が5000人収容、香川のアルファあなぶきホールが2001名、高知県民文化ホールが1504名、坊ちゃんスタジアムが3万人収容です。松山には野外ライブを行える場所が、ニンジニアスタジアム、城山公園と近隣にあります。以前、松山は、街、城、温泉、港、飛行場、スキー場、海、山がすぐ近くにあるのが良いところだと書いたのですが、ライブ環境でも結構いい線を行っているのですね。しかし、、さすがにドームツアーは難しいでしょうね。
 P.S. 気になってさらに調べてみると、、 TOKYO DOME シティホール3000席、パシフィコ横浜国立大ホール4538席、名古屋国際会議場3012席ですので、ひめぎんホールは正確には全国で5位タイでした。それでも全国の県庁所在地の中心的なホールの定員は1800~2000席が標準ですので、さすが、ひめぎんホールです!

今年のノーベル賞     13年10月1日
 来週はいよいよノーベル賞の発表です。今年日本人で受賞する可能性のある人は、科学分野で3名、文学賞で1名との報道も目にしました。昨年は山中教授の受賞で湧きましたが、今年はどうなるでしょうか? 
 山中教授のインタビューで、私が感銘をうけたものがありました。「生涯に2度、実験仮説と逆の結果が出た実験があり、その時はものすごく興奮した」そうです。私の現役時代を思い出すと、予想と違う実験結果が出た時には、あたふたとして、まず実験の機材や手法が拙かったと考え、必死で結果を出そうとしていました。このような心構えでは、予想された結果を証明するだけで、びっくりするような新しい知見は出てきません。(;_;) 山中教授のこのような心構えが、ES細胞を追いかけるのではなく、細胞の初期化を目指すという挑戦につながったのだと思います。山中教授の右腕で、2006年のマウスのiPS細胞発見の論文の共著者の高橋特任助手(現京都大講師)の実験エピソードも心を打ちます。細胞の初期化に必要な遺伝子が24個に絞られたあと、どうせ教授に言われるだろうなと思いながら、実験計画にない24の遺伝子をすべて組み込むという実験を”ついでに”行ったことが、2~30年はかかるかも知れないと思われていたリプログラミング遺伝子(山中因子)の同定を、わずか1年で成し遂げるという業績に繋がりました。山中氏の言によれば「高橋氏はとにかく実験が好きで、へこたれなかった」とのこと。今この時間にも、へこたれずに実験している研究者が日本中の研究室に大勢いるはずです。へこたれない研究者に幸運の女神が舞い降りますように!
 P.S. ノーベル賞の発表も自然科学分野が終わり、今日は文学賞でした。私は日本人の受賞に結構期待していましたので、速報を聞いてはがっかりする毎日の繰り返しでした。しかし、物理学賞のヒッグス氏の業績は南部陽一郎氏の理論を発展させたもので、化学賞の「計算化学」の受賞では、重要な貢献をした7人に京都大福井謙一記念研究センターの諸熊奎治氏の名前も挙がりました。研究の実践化で評価すれば猪熊氏が受賞してもおかしくなかったとのこと。医学賞は生物の教科書にも載っている内容で、昨年の山中氏がスピード受賞過ぎるのが異例で、受賞待ちの研究が沢山あることを再認識しました。平和賞は取らない国の方が平和?、経済学賞はまだまだ欧米とのギャップが大きく日本人の受賞は至難の業? ですので、日本人受賞の楽しみは来年以降に持越すことにします。私にとって10月は、やはり文化の秋です。
  秋高し 雲より上を 鳥かける  子規

「半沢直樹」と「国債の歴史」     13年9月29日
 明日はTBSドラマ「半沢直樹」の最終回です。私の地上波の視聴はもっぱら録画です。気になった紀行もの、ドキュメンタリー、大河ドラマを、録画で早見しています。スポーツはライブで見ますが、最近のドラマをリアルタイムで見ることはまずありませんでした。ところが評判を聞きつけて「半沢直樹」は第三話から録画視聴。第八話は遂にリアルタイムで見てしまいました。ドラマの結末も気にはなりますが、それ以上に気になっているのが視聴率です。^^; ちなみに昨年の平均視聴率第一位が紅白第二部の42.5%、次がW杯サッカーのアジア地区最終予選の日本ーオーストラリア戦の35.1%。一昨年は紅白第二部が41.6%、次が家政婦のミタ最終回の40.0%です。昭和時代の70%台とはいきませんが、やはり紅白はおばけ番組です。平成に入っては、紅白以外で年間最高視聴率を記録しているのは、W杯サッカー本選の日本戦だけです。私は「家政婦のミタ」はチラッとしか見ていないので偉そうには言えませんが、「半沢直樹」の方が老若男女で話題にできそうです。日本中がひとつになり共通の話題ができる、、黄金期のトレンディードラマのようで、なんだか楽しいです。今年の最高視聴率は初めてドラマが紅白を抜くか?? 少し大袈裟ですが五輪招致前日のようなワクワク感があります。
 「半沢直樹」のドラマのベースに”恨み”があるのは気になりますが、主演に合わせて企画するいかにも視聴率を狙ったドラマでなく、脇役に有名でない名演技怪演技の役者を揃えたドラマです。今回のドラマで、今の時代でもしっかりとした作品ならば支持が得られることが実証されて ”Japan Cool" が盛り上がって欲しいものです。
 私は”技術者ががんばる”話が好きです。探査機ハヤブサ3部作のような映画は脚本が甘くても許してしまいます。「半沢直樹」の原作者、池井戸潤氏原作直木賞受賞の「下町ロケット」は、WOWOWドラマで見ていました。東京の下町工場の技術者達が工場の経営問題も含めて難問を解決して、遂にロケットを打ち上げるドラマです。お勧めです。
 経済雑誌、週間ダイヤモンドの今週号の特集は「半沢直樹はどこにいる? 頼れる銀行頼れない銀行」です。キャッチ・コピーを少し紹介すると「半沢直樹原作者の池井戸潤氏が明かす銀行マンの実像」「銀行員は人事がすべてーー。そして人事をめぐる出世レースは一度でもこければはい上がれない過酷なトーナメントレースだ。」 私もこれまで、キャリア官僚や上場企業役員人事の動向や銀行の運営は、報道や書籍で目にしてきましたが、銀行の人事についてこれだけ詳しい特集記事には初めて触れました。メガバンクの出世レースはキャリア官僚以上に窮屈で過酷かもしれません。出向などの人事に関してはドラマ「半沢直樹」は決して大げさではなさそうです。この雑誌もお勧めです。
 P.S. いろいろなメディアで取り上げられ、菅官房長官までコメントを求められた「半沢直樹」の視聴率は、ご存知のように42.2%(関東地方)と高視聴率でした。マスコミではミタを抜いたと話題になっていますが、私としてはやはり、紅白との年間最高視聴率争いが気になります。今年の紅白は「あまちゃん」勢を総動員させるでしょうね。大晦日の視聴率は正月2日に発表されます。半沢の42.2%は紅白のここ数年の視聴率と比較しても絶妙な数字です。「半沢」VS「あまちゃん」、史上初めてドラマが紅白を抜くか? お正月にささやかな楽しみが増えました。
 先に銀行員の出向に触れましたが、金融庁検査や疎開資料の件も、現実に起こった事件を題材にしているようです。某メガバンクが金融庁検査で引当金を積み増されて時の頭取が退陣、某メガバンクの合併前の非主流派の銀行出身者が主流派の疎開資料を内部告発して、主流派の役員が退任。一昨日も、みずほ銀行の反社会勢力への融資が金融庁検査で発覚したとの報道がありました。私はメガバンクの合併時の秘話に興味がそそられました。誰ひとり悪い人の登場しない「とんび」の視聴の前に、高杉良 作「金融腐蝕列島」を先に読もうと思います。
 経済の話題ついでに、この夏、私が読んだ本で最も印象深かったものを紹介したいと思います。「国債の歴史」富田俊基著 2006年度日経経済図書文化賞受賞の専門書で、県立図書館で貸出可です。国債のリスクプレミアムや調達の観点から見た壮大な中世~現代史です。なぜイギリス名誉革命が成功したのかに始まり、フランス革命、ナポレオン戦争、アメリカ独立戦争&南北戦争、帝政ロシアからロシア革命、ワイマール共和国からナチスドイツ、ポルトガルからオランダ、イギリス、アメリカへと覇権が移る構造、冷戦終結までの西洋列強の財政史が網羅されています。また、東インド会社などによる植民地経営や、日本の明治維新や昭和恐慌、現代日本の超低金利の財政史でもあります。お金の観点から見た歴史ですので、民族学、地政学、宗教、軍事の観点以上に人間の普遍性が露わになります。私は読み進める度にトレビア状態でした。例えば、戦争の帰趨は長期金利が予言してきた、王権ではなく議会の信任で国債償還が担保出来た英国が最も低利で戦費の調達が可能だった、日本は明治4年にはポンド建て国債を発行して借換債が今でも市場にあり円建て国債よりリスクプレミアムが高い、などです。明後日には安倍首相が消費税に関する発表を行います。消費税増税が是か非か? 日銀の金融緩和が是か非か? アベノミクスが是か非か? 日本の実験を世界の経済学者が見守り、誰も答えは知りません。本書はアベノミクスの後に来るものを予想するものではありませんが、通読することで長期金利というものの奥深さと歴史を知る事の重要性を感じ取ることが出来ました。

東京五輪 開催決定!     13年9月9日
 東京オリンピック開催決定おめでとう! 当日は生中継にかじりついて寝不足となりました。都心の空に再びブルーインパルスが舞う? 7年後には新東京駅から甲府までリニア新幹線でいける??? 夢は広がります。7年後に向けて日本中が明るくなった感じです。これを機会に、院内の照明をLED化して、当院も明るくすることにしました。!(^^)!
 最終プレゼンもロビー活動も最高でしたが、プロモーション・ビデオも3都市の中では1番ではなかったでしょうか? ”Japan Cool” と ”おもてなし” が世界に広がりますように! 
  YouTube TOKYO2020 FINAL Presentation FILM へ
  YouTube Tokyo 2020 International Promotion Film:Tomorrow Begins へ  ちなみにこの動画にはトルコの方からこんなコメントがアップされています。 ”Turkish people are not sad. We are happy as much as to have won ourself. Congratulations from Turkey! We love Japan."

頭痛     13年8月31日
 頭痛の原因は多岐にわたります。耳鼻咽喉科でも頭が痛い、首が痛いとの主訴で来院される方は少なくありません。耳鼻科の視点で見ると、鼻炎が強いと副鼻腔炎まで至らなくとも副鼻腔の陰圧で目の周囲に痛みを感じる”副鼻腔ブロック”という病態があります。鼻炎の強いお子様の中には頭痛を感じるケースも少なくありません。よくお母さま方にお伝えするのですが、鼻炎も体質のひとつとも言えますので、症状が軽ければ治療をせずに様子を見てもいいです。しかし、小学生高学年以上で、鼻炎が強く鼻閉からの集中力不足や頭痛のようなような強い症状が続くようであれば、治療した方が生活の質が高まります。また別の視点では、大人で頭痛はなくめまいが主訴で来院するケースの中には、片頭痛の機序が隠れていてめまいを誘発する場合もあります。痛みは目に見えませんので、広い視野からの鑑別診断が求められます。
 最近、私の外来で興味深いケースがありました。個人情報の問題もあり具体的な例示は差し控えますが、ある頭痛を訴える患者様で、耳鼻科の一次的な診察では、副鼻腔ブロックや、めまいの代表的な疾患が痛みの原因と考えられましたが、医療用の各種鎮痛剤では痛みが軽減せず、市販の頭痛薬の中でも特定銘柄のものだけが有効だと訴えられました。念のため、その市販薬の成分を調べたところ、ベースとなる消炎鎮痛剤に市販薬レベルの軽い精神を鎮める成分が含まれていました。頭痛が、精神的な疲弊で強く感じたのか、鬱病や抑うつ状態でなくても抗うつ剤が脳内の精神伝達物質の疼痛刺激のブロッカーとして働く機序と同様に、精神安定剤(マイナートランキライザー)的な成分が中枢神経内で疼痛の伝達をブロックしているとも考えられました。この患者様には、医療用の消炎鎮痛薬と短期作用の精神安定剤を屯用として処方しました。(今後、症状が続いたり痛みのコントロールが難しくなった場合には、片頭痛、緊張性頭痛、神経痛、心因性頭痛、脳腫瘍、脳血管障害などへのアプローチが必要で、神経内科や脳外科、麻酔科、精神科へのコンサルトも考慮することは当然です) 耳鼻科の限られた診察時間で精神科的なアプローチはなかなか出来ませんが、患者様の服薬の経緯を調べるだけで治療のヒントになりました。広い視点で患者様の病態を探る重要性を改めて再認識しました。

耳鳴の薬物治療     13年8月22日
 耳鳴の薬物治療薬には、ビタミンB12、アデノシン酸、末梢血流改善剤、抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬などがあります。当院でも種々活用してきましたが、ストミンAという薬も再活用することにしました。ストミンAは内耳の蝸牛血流量を増加させるとともに、騒音刺激による内耳電解質変動に対して予防効果を示します。保険適応の点では、唯一の耳鳴緩和剤です。市販薬のナリピタンも同等の成分ですので、ネットではいろいろな口コミを見ることができます。私はよく「耳鳴、肩こり、腰痛は健康雑誌にも毎回特集が出るくらいで、特効薬は無いです」とお伝えしているのですが、ナリピタンの評価も、やはり様々です。ナリピタンを自分で購入して長期間服薬するくらいなら、病院の処方で試してもらった方が安くつきます!という観点からも、古いお薬ではありますが、ストミンAを再評価して活用したいと思います。

最高気温    13年8月16日
 猛暑についての11日のコメントの後、12日に四万十市で41.0℃と観測史上の最高気温となりましたね。過去に記録の出た熊谷、多治見、甲府は盆地ですので気温が上がるのは納得していたのですが、なぜ太平洋岸の四万十市で史上最高??と思いましたが、観測地点の地図を見て納得しました。観測点は四万十市でも内陸、愛媛県との県境に近い盆地のような地形でした。うれしくない記録?かもしれませんが、愛媛に近い四国で日本一が増えるのは悪い事ではありません。(^'^)

マイコプラズマの迅速診断  13年8月7日
 今月からマイコプラズマ迅速キットが保険適応になりました。当院ではこれまで、血液検査によるIgM抗体(急性期の抗体)検査をいち早く導入、昨年夏からは鼻汁から高感度に迅速検査できるLAMP法も取り入れていました。IgM抗体検査は病初期5日程度は陽性にならず、また、IgM抗体は6ヶ月から時に1年血中に存在しますので直接的な感染を確認できる訳ではありませんでした。マイコプラズマ自体(抗原)を測定するLAMP法も検査センターに提出するために、結果が判定するのは最短でも翌日でした。新しい迅速キットはインフルエンザの検査キット同様、5~15分でその場で判定が可能です。
 マイコプラズマ感染症は、咳が長引く場合の代表的な感染症のひとつですが、多彩な症状を惹き起こします。大人では微熱が持続する場合が多いが小児では急な発熱で発症する場合がある、皮疹を認める場合がある、下痢などの消化器症状が出る場合がある、中耳炎化する場合がある、などの様々な症状を併発する場合があり、かつ、重症化すれば肺炎から呼吸不全に至る、2年前からはマクロライド系といわれる一般的な抗生物質の耐性菌も増えてきているなど、風邪の経過を診る上では”曲者”の感染症です。
 新しい迅速キットはのどの粘膜を採取してマイコプラズマの存在を判定します。マイコプラズマは主に下気道で増殖します。上気道での菌濃度は下気道の100~1000分の1程度ですので、検査キットの感度以下だと陽性化しません。また増殖速度がマイコプラズマに比べて圧倒的に早いインフルエンザですら発症後2日目でも陽性化しない場合があり、インフルエンザ以上に病初期には検出出来ない可能性が高いと考えられます。これらのことから、検査が陰性だからといって必ずしも感染していないとは断定出来ませんが、検査が陽性であればマイコプラズマに現在感染していると判断出来ます。以上のことからその場で検査結果が得られる新しい迅速キットは、臨床の場では大いに活用出来そうです。

耳鳴りの最新の研究    13年8月3日
 和歌山医大の耳鼻科、精神科、生理学、解剖学の共同研究で耳鳴りの関連部位を明らかにした、との報道がありました。MRIを用いた研究で、重度の耳鳴患者ほど、耳鳴の音は聴覚とは関係なく脳内の尾状核や海馬、前頭葉のネットワークに異常が見られたとのことです。臨床の立場の私の経験では、急性の内耳障害で急に耳鳴が発生する場合が多く、発症後2~4週間以内の急性期であれば改善する可能性があり、そのようなケースでは積極的に神経炎の治療を行っています。しかし、発症1ヶ月以上、特に6ヶ月以上耳鳴が治らない場合には難治となるケースがほとんどです。近年は脳内神経伝達物質に働く薬剤も開発が進んでいます。和歌山医大のような研究がすすめば、慢性で重症の耳鳴り患者への新たな治療法も見つかるかもしれません。

良性発作性頭位幻暈症の治療器具  13年6月4日
 良性発作性頭位幻暈症(BPPV)の治療法として、三半規管に浮遊する耳石を再配置するエプレイ法があります。このエプレイ法をサポートする治療器具 DizzyFIX を導入しました。今日は私も被検者になりこの治療法の訓練を行いました。当院におけるBPPVの治療でおおいに活用したいと思います。 

鼓膜チューブ  13年6月3日
 中耳炎が1年で一番治ってほしい5月も終わりました。6月になっても滲出性中耳炎が軽快しないお子様を前にすると、私も心苦しいです。中耳炎が両側で滲出液が粘稠なため中等度難聴が続く場合、鼓膜の陥凹などの変形が強く癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎への移行の可能性がある場合、鼓膜の菲薄化が進行する恐れのある場合、耳小骨の関節の硬化による伝音性難聴の進行が疑われる場合などには、已むを得ず鼓膜チューブ留置術を行っています。チューブを留置しても、耳栓着用でスイミングは可能です。夏本番はもう直ぐです。止む無くチューブを入れた子供達も、しっかりと夏のプールを楽しんでもらうよう、生活のアドバイスを行っています。

学校健診の検診病名  13年5月22日
 今日水曜日は午後から”さくら小学校”の学校健診を行いました。健診は午後の5時間目の時間帯を中心に行います。昼休みに元気に校庭で走り回って、健診の際にも汗だくの子供たちも多かったです。今日は200名強の児童を健診しました。耳鼻科の校医は基本的に1校に1名ですので、毎年在校生全員を検診することは実際的ではありません。”選別健診”といって、保護者からの問診表を基に、耳鼻科疾患が疑われる児童を検診します。今日は学校健診の健診病名についてお話ししてみます。
 現代の小学生の約半数はハウスダストの抗体を有しているとの報告もあるぐらいですので、問診表の段階で鼻炎症状がある児童の大部分はハウスダストを中心としたアレルギー性鼻炎があります。しかし健診では軽度のアレルギー性鼻炎の児童には病名は付けません。鼻詰りタイプの鼻炎で日常生活に明らかに影響が出ていると思われる児童に病名を付けます。健診は、1年の中でハウスダストの刺激が最も少ない5月の、自律神経の状態が最も安定している午後の時間帯に行っていることになりますので、健診でアレルギー性鼻炎と指摘された児童は、一部の雑草花粉症の児童を除き、高温多湿でダニ・カビが繁殖し、クーラーなどで外部環境の温度変化が大きくなり、プールの塩素で粘膜が刺激されるこれからの6月から9月にかけては、より一層鼻炎症状が強くなる可能性が強いと言えます。健診で病名がついた児童はあくまでも症状の強い児童だけですので、健診で異常無しと判定されたとしても鼻炎がないということではありません。検診終了後にはこの辺りのことを養護の先生にもお伝えしました。
 アレルギー性鼻炎以外にも、耳垢栓塞、滲出性中耳炎、副鼻腔炎、扁桃肥大、アデノイド増殖症、音声言語異常など様々な健診病名の児童が見られましたが、いずれも程度の強い所見のはっきりした児童に病名を付けました。特に両側の滲出性中耳炎の児童は、中耳炎になりにくくかつ治りやすい5月でも中耳炎で、また、今回は問診表から現在も耳鼻科に通院中であることが判っている児童は健診は行ってないことから、本人も保護者も気付かないままに難聴が続いている可能性があります。検診で「滲出性中耳炎&難聴疑い」との報告書をもらった児童の保護者の方は、ぜひ一度耳鼻科を受診してみて下さい。

ヒト・メタニューモウイルス感染症  13年5月20日
 今年2月よりヒト・メタニューモウイルス(hMPV)の迅速検査が行えるようになりました。聴き慣れないウイルスですが、少し紹介してみます。hMPVは2001年にオランダで同定されたウイルスですが、以前から存在していたと考えられています。RSウイルスに似た病原性を示し、RSウイルス同様に直接効く抗ウイルス薬はないため、治療もRSウイルスに準じます。ウイルス性の呼吸器感染症の中で、小児の5~10%、成人の2~4%はhMPVが原因と推測されており、母親からの移行抗体が消失する生後6ヶ月くらいから感染が始まり、2歳までに50%、10歳までにほぼ全員が感染し、その後何度も再感染を受けます。初感染はRSウイルスより遅い傾向にあります。重症例は乳幼児、高齢者に見られることが多いのですが、全ての年齢層に上気道炎から細気管支炎、肺炎まで引き起こす可能性があるウイルスです。流行時期は3~6月とされていますので、今の時期がちょうど流行シーズンと言えます。迅速検査が出てきたおかげで、今の時期の幼児で発熱が長引いたり、咳症状が強いケースでは、鑑別診断に役立ちます。当院でも必要に応じて活用し、小児科との連携に役立てようと思います。

急性喉頭蓋炎  13年5月12日
 立て続けに成人の急性喉頭蓋炎の方が来院されました。いずれもインフルエンザ桿菌などの細菌性の高度な炎症が疑われました。喉頭蓋は声を出す声帯と舌根の間に位置する軟骨で、声帯の上のひさしみたいなものです。嚥下時に誤嚥しにくくしたり、異物が気管に入るのを防ぐような働きがあります。喉頭蓋や声帯周囲が腫れると呼吸困難を起こします。成人の急性喉頭蓋炎と小児の声門下喉頭炎は、耳鼻科領域の救急では最も注意しなければいけない疾患のひとつです。幸、呼吸不全で一刻を争う状態ではありませんでしたが、応急処置の上、入院施設のある耳鼻咽喉科病院に紹介しました。喉頭蓋の内側(喉頭蓋喉頭面)や声帯の下(声門下腔)、食道と気管の境目(喉頭披裂部)に浮腫を認める際には、呼吸困難に至らないよう最善の注意を払います。

スギ花粉症はなぜ増加?  13年4月24日
 今年のスギ花粉は予想以上の大量飛散となりました。関東では、1日あたりの飛散数で観測史上最多を数えた観測点も多かったようです。スギの植林事業は昭和50年代からは縮小していますが、スギ花粉の飛散数はここ10年全国的に増える傾向にあります。植林されたスギの樹勢のピークは過ぎていることから、花粉の飛散も年々減ってもよさそうなものですが、なぜ増えているのか? 私も各方面からの報告に注目したいと思います。アレルギー疾患全般に言えるのですが、スギ花粉症の有病率も増加傾向にあり、今年は大量飛散した関東でスギ花粉症の初発年齢の低年齢化が話題になっています。アレルギー疾患の増悪因子については従来から言われている説とともに、今年はPM2.5に代表される大気汚染物質の関与も話題となりました。この点でも今後の研究成果に注目したいと思います。

子供の異物症   13年4月21日
 子供が耳や鼻に物を詰める外耳道異物や鼻腔異物は、耳鼻科外来では珍しくありません。ビーズ玉やBB弾、おもちゃの部品、消しゴム、粘土、紙切れ、ティッシュペーパーなど子供達は様々な物を自分でなにげなく詰めてしまいます。大人では、耳掃除用綿棒の先の綿が残ったり、様々な昆虫、ときにはゴキブリやムカデなどが入り込んで取れなくなったりします。今週、かわいらしい女の子が鼻に自分で物を詰めて受診しました。詰めていたのは”花のつぼみ”でした。春らしいちょっとおしゃれな鼻腔異物でした。(^^) 
 小さな子供さんが異物を詰める場合の原因としては、意味もなく詰めるよりは、アレルギー素因による鼻炎や皮膚の乾燥性湿疹がある⇒鼻の奥から耳の奥が底痒くなる⇒おもわず異物を入れてしまう というケースがほとんどです。異物を除去するだけでなく、誘引となる体質がないかどうか、滲出性中耳炎や耳管狭窄症、副鼻腔炎が隠れていないのかも確認して、保護者の方にはお子様の今後の生活上で注意すべき点をお伝えしています。特に留意する異物には、ティシュペーパーやボタン型電池があります。ティシュペーパーによる鼻腔異物では、ティシュが嫌気性菌の培地となり2週間程たってから鼻からの異臭が徐々にひどくなり、時に副鼻腔炎を誘発します。ボタン型電池は鼻中隔穿孔を来すことがあります。ただし電池の異物はごみの分別収集対策で家庭内で放置されることが少なくなったためか、最近はめっきり少なくなりました。また、外耳道異物では一応、お友達のいたずらにも注意を払います。

中国の新型インフルエンザと12/13シーズンインフルエンザの流行のタイプ  13年4月7日
 3月31日に中国からWHOに報告された鳥インフルエンザのヒトへの感染は、最近報告の主流だったH5N2型と異なるH7N9型でした。一昨日のWHOの発表では、いまのところヒトーヒト感染への兆候はないとのことです。万が一、ヒトーヒト感染が広がりパンデミックになると、20才代の若者でも40℃の発熱が1週間続くような人類が恐れている本格的な新型インフルエンザになります。(ちなみに2009年型はAソ連型とブタインフルエンザが合併した新型”もどき”といえるかもしれません)中国は地理的にも日本に近いため、従来のインフルエンザも中国での流行が日本の流行に反映していました。今のところ過剰な心配の必要はないですが、感染拡大への注意は必要です。ちなみに厚労省は新しいワクチン開発の検討を始めました。心強い限りです。
 これも一昨日、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センターから、今シーズン流行のインフルエンザの流行株の抗原性および薬剤耐性株の検出状況についての途中経過の報告が発表されました。発生の割合はA2009年型が2%、A香港型が85%、B型が13%で、B型は山形系統とビクトリア系統が3:2の割合とのことです。薬剤耐性については、A2009年型にわずかにタミフル・ラピアクタ抵抗例が検出されたとのことですが、A香港型、B型ともに耐性株は見られなかったとのことでした。予防接種との関連では、今年の流行株は2009年型、A香港型、B型山形系統で構成されたワクチン株と類似しており、B型ビクトリア系統も昨年のワクチン株に類似していたとのことです。また別の報告で愛媛ではB型はビクトリア系統が最近報告されたことと、ワクチンの効果は大人で6ヶ月、小児で4~6ヶ月で減弱することを考え併せると、愛媛の方は、1、今シーズン予防接種しているか昨シーズンA香港型に感染していれば、今年流行の主体だったA香港型は軽い症状で終わり、仮にB型山形系統やA2009年型に罹っても軽い症状で終わった可能性がある 2、昨シーズンB型ビクトリア系統に感染していれば、今シーズンB型ビクトリア系統に罹っても軽い症状で終わった可能性がある とまとめられます。
 今シーズン中予地方では、1月から2月にかけてA型、B型が混合的に流行し、3月24日まで警報レベルで発生していました。4月に入ってもB型を中心とした発生がまだ続いています。今シーズン、当院でみたインフルエンザの特徴は、A型、B型ともに、症状が強い例と軽い例の混在が例年のシーズン以上に目立ったことです。インフルエンザウイルス研究センターの報告を基に考察すると、昨シーズンにインフルエンザに罹ったかどうかと今シーズンに予防接種していたかどうかの組み合わせで、例年以上にB型の感染に対しての症状発現に差があったことが解りました。A型の流行はもう終わりそうですが、B型の発生は、昨年同様5月まで残りそうです。今しばらくのインフルエンザの診断や治療にこの報告データを活用したいと思います。

医者に殺されない47の心得  13年4月6日
 新聞の広告欄で、近藤 誠氏の第60回菊池寛賞受賞作「医者に殺されない47の心得」が目にとまりました。一度に3種類以上の薬を出す医者を信用するな、軽い風邪で抗生物質を出す医者を信用するな、等の内容が紹介されており、私も気になり購読しました。一読すると、なるほど、、確かに、、と共感できる点も多々ある本でした。ネット上では様々な反響が起きますので、あえてこのホームページでは具体的な書評はしないことにします。通販サイトのアマゾンにはこの書籍への様々な立場からの書評が掲載されています。アマゾンに登録した会員からの投稿ですので、匿名掲示板の書込みよりは重みがあると思います。気になる方はアマゾンのサイトを覗いてみて下さい。ちなみに私はアマゾンのレビューの中で特に ”手術や抗がん剤治療などの積極的な治療を行わない人が増えれば、国民医療費が少なくてすむ”との意見が、治療や検診を受けるか受けないかという論点とは違った観点で印象深かったです。 アマゾン カスタマーレビューへ
 ここから少し、私の”治療を受けるということは”に対する徒然を述べてみます。私の処世訓を挙げれば「しょうがない」「物事に絶対の正解はない」です。人生でも仕事でも病気でも、意に沿わないことだらけです。起こったことはしようがない、けど、後悔はしたくないので出来る限り次の一歩は自分で決断したいと思っています。けれども状況は刻一刻と変化します。視点を変えれば答えは変わります。後悔しないために、出来る限り多角的な視点から物事を判断できるべく情報を収集して、前向きに進みたいと思っています。外交交渉も立場が替われば利害が180度違います。自然科学で絶対ともいえる数学でも、高校レベルの幾何代数より上のレベルでは答えがない命題は多々あります。物理学でも、量子力学までゆけば最後はゆらぎをどう捉えるかとなり答えは一つではなくなります。原発問題でも、人類の歴史が2万年で、40万年前の活断層をどう捉えるのか。震災問題でも、千年に一度の災害にまで備えるのか。法学、経済学に基づく政治や市場経済などの社会科学ならばなおさら答えはひとつではありません。リフレ政策で、将来長期金利急騰の副作用が起こるのか。GDPが増えるインフレ社会が本当に幸せなのか。社会保障と国民負担のバランスをどうとるのか。幸福を感じるとは、絶対的なことなのか、相対的なことなのか。行き着くところは哲学です。医学は自然科学分野、医療制度は社会科学分野で、やはり答えはありません。これは私の主任教授から叩き込まれたことなのですが、医学論文でも母集団の取り方や検定の仕方で有意差判定は変わってきます。医学論文ですら絶対的な答えはないぐらいですので、症例報告レベルの意見はあくまでも意見として、偏った見方にならないように自分の中に取り込む必要があります。一言で、癌や風邪と言っても、100人いれば100人の多様な病態があり、病気の治療を受けるということは、確率論的な医学をどう活用するか、社会科学的な医療をどう活用するか、やはり画一的な答えはありません。
 癌や感染症は異物と体の戦いです。癌は自分の体から発生しして過増殖する細胞の塊です。風邪は病原菌が体内に入って体内の細胞に障害を及ぼします。普通は風邪は自然に治りますし、癌だって自分の免疫力で抑え込むことができますので、笑いの絶えないような朗らかな生活で免疫力が高まれば、癌の自然治癒もあり得ます。大病院でご遺体を病理解剖させて頂くと、死に至った原疾患以外にも、隠れた癌は結構見つかります。耳鼻科関係では甲状腺の隠れた癌は珍しいものではありません。一言で癌と言っても、種類は様々で、実は悪性と良性の間に境界はありません。病巣の細胞の分化度や増殖能力をみて、病巣部で過増殖をして正常組織を破壊していくのか、他の部位に転移して増殖する能力があるのかを判断します。私も含めて外科医は、生検や手術で摘出された病理標本を観察した病理医のレポートを基に、どのよう治療するか判断します。手術中なら、摘出した病巣を術中迅速診断で病理医が悪性度を判断します。術中に外科医も摘出範囲をどうするかシビアな判断を求められますが、実は、病理医はそれ以上にシビアな判断を求められます。癌細胞は正常な細胞より元気なことが多く、正常な細胞を破壊して体内の栄養分を奪い取りますので、癌が重症になった場合には体はやせ細ってゆきます。抗がん剤による治療もつきつめれば”癌細胞が先に死ぬか、正常細胞が先に死ぬか””自分が死ねば、自分を苦しめた癌も死ぬ”との、ぎりぎりのところでの治療です。そのために、当然毒物の抗がん剤ですが、いかに癌細胞だけにダメージを与えることができるか、いかに標的の臓器でのみ働くかを目指して、開発が進められています。手術で取りきれたかにみえても、術創周囲の血行やリンパの流れが阻害されて僅かに残った癌細胞が局所で再発する、すでに転移しており手術を受けたこと自体や術後の経過で免疫力が落ちて、逆に残った癌細胞が勢いづく場合もあります。自分の免疫力で抑え込んでいて放っておいても過増殖しない癌もあれば、前癌状態ともいえる本来の正常細胞よりも未分化だが増殖能が進化しない境界型の癌、悪性度は高いものの血行性やリンパ行性で遠隔転移しにくく手術で取れ切れる癌、など様々なタイプがあり一概に言えません。
 かぜの治療も答えはありません。治療をする立場として私は、可能な限り病原菌を特定したいと思います。特定できなくても出来るだけどのような病原菌が疑われて、どのような経過で治っていくのかを考えて処方しています。インフルエンザも含めてかぜは自然に治ることが多いけれども、時には命にかかわる事もあり得ます。風邪がきっかけとなって本人が以前から持っていた中耳炎や副鼻腔炎、扁桃炎、気管支炎などの慢性病変が悪化したり長引いたりして、風邪+αでデメリットが大きくなることもあります。学校でも職場でも早く復帰できた方が本人にメリットがあるのか、社会全体でメリットがあるのか。医療費がどれだけ高額だと本人の許容範囲を超えるのか、医療保険の観点で社会全体の負担にどれだけ影響するのか。薬剤を使うことによって自然の免疫力が落ちたり、薬害を誘発しないのか。様々な観点から、抗生物質も含めて薬が患者個々人に有用かどうか判断して処方します。「軽い風邪で”やみくもに”抗生物質を出す医者を信用するな」は本当でしょうが、「軽く見える風邪でも体に負担をかける病原菌に感染しているかどうかを想定して、必要に応じて抗生物質を出す医者」は信用してもいいのではないでしょうか。
 治療を受ける患者の立場から見ても、様々な要望があります。会社や学校の都合で待ち時間が許せない方。再診はしたくない意向の方。費用負担は極力少ない方がよい方。病院で別の病気をもらう可能性のリスクに耐えられない方。重大な病気でなければ体力で頑張る方針の方。とにかく早くスッキリ症状が無くなってほしい方。せっかく病院を受診したのだから風邪をこじらさないとのイメージで抗生物質の処方を希望する方。実に様々な方がいます。私の診察の言い訳になってしまいますが、待ち時間が長くなった時に診察時間を短くする事を優先して、十分に患者様の要望を捕えきれていない時があります。問診表で得た情報に関する受け答えは省略して、誘導尋問みたいに次のステップの問診を進める場合があります。初診の患者様にしっかりと自己紹介している訳ではありません。これも言い訳ですが、病院勤務時代は、もちろん入院患者様や家族にはしっかり挨拶していたつもりですが、、 この冬も、まずご自身の考えを伝えたい患者様の話の腰を折って、苦言を呈されたことがありました。反省しきりです。またある授乳婦の患者さまから赤ちゃんへの影響が怖いので薬は最低限にとの要望があり、授乳に影響がないことを説明して3種類の風邪薬を処方したところ、その後様々なやりとりがあって結局1剤になったこともありました。抗がん剤ほどではありませんが、一般的な処方薬も体内に自然ではない変調を来すことによって薬効が発現されますので、お薬も”体の毒”には違いありません。薬は相互作用で変調が増幅されることもありますので、”ひとつの病態”ごとには最低限のお薬が好ましいのはもちろんです。「一度に3種類以上の薬を出す医者を信用するな」はある意味その通りです。ただし一方で、薬剤数を気にするならば、例えば市販の風邪薬には1錠に複数の薬効成分が入っています。(たとえばコンタックかぜ総合には6種類の薬効成分、13種類の添加物が入っています) 病院処方薬にも配合剤はありますが、原則として1剤型1薬効ですので、病院でお薬をもらうとどうしても種類が多くなり薬漬けの印象を受けます。厚労省や医師会もこのあたりの点の誤解を解くようにキャンペーンをしたらとも思うのですが、こんなキャンペーンは見たことがありません。

風疹  13年4月2日
 関東地方を中心に流行の広がる風疹ですが、愛媛県でも感染の報告がでてきました。風疹も発症初期は、首の後ろのリンパ節の腫れだけのことがあります。また発疹や発熱がでても、初期であれば溶連菌感染症やウイルス性発疹症との区別がつかない場合があります。耳鼻科医としても、風疹の初期症状に留意して診察したいと思います。

花粉症の余ったお薬  13年4月2日
 スギ花粉の飛散も、先月の27、28日と2日続けて観測しない日がありました。3日続けて観測しないと飛散終了日となります。今週後半、ないしは来週早々には飛散終了日を迎えそうです。ヒノキ花粉症を合併していない方や、ハウスダスト・アレルギーや他の鼻粘膜過敏症がなくてここ数日花粉症症状をほとんど感じない方は、そろそろ服薬を止めてもよい頃合いです。当院で処方した内服薬は、まず来シーズンまでは有効期限内だと思いますので、今シーズン用で余ったお薬は、来シーズンの飛散開始の1週間前(平年並みならば1月下旬が目途です)から服用し始めると初期治療用のお薬になります。

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