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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科を専門とし、地域医療に貢献します。

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

’18年 今月の疾患情報

  30日   昨日は当院の仕事納めでした。今年1年、当院を受診頂きありがとうございました。
 年末を迎え、マスコミやネットでは1年を振り返る記事で賑わっています。今年は平成最後の年末でもあり、平成を振り返る記事もみられます。私も、今回はいろいろ振り返ってみたいと思います。

 今週は、クリスマス明けから冬休み、年末と、当院も忙しい外来続きでした。お待ち頂いた患者様にはご協力ありがとうございました。またスタッフにも感謝したいと思います。
 例年、クリスマス明けには子供達に「サンタさん来たかな? プレゼントもらったなら、きっと1年いい子だったんだね」と尋ねます。中にはいい子だったかどうか返事に困ったような子供さんもいますが、「いい子だったんだよ」と励ましています。いつもなら全員にサンタさんはやってくるのですが、今年はひとりだけ来ませんでした。私が困惑しているのを見て、その子のお母様が横から「おばあちゃんを通じてのプレゼントが間に合わなかった」と教えてくれました。ホッとしました。サンタさんの宅配も、今年は人出不足で大忙しだったのでしょう。(^^♪ クリスマスプレゼントといえば、以前、プレゼントにおじいちゃんおばあちゃんから、喘息の吸入器をもらったか子供さんがいました。吸入器も2万円前後しますので、お父さんお母さんからすれば気の利いたプレゼントですね。
 インフルエンザは3週間前に全国的に流行入りしました。全国でも隣県の香川が多かったのが気になっていました。2週間前に愛媛も流行入り、八幡浜地区で多く見られました。中予は先週まで発生が少なく、当院での検出もここ1ヵ月ありませんでしたが、今週に入って、家族内発生も含めて複数の方からA形を検出しました。例年より立ち上がりの遅いインフルの流行ですが、今週の増え方からすると、今シーズン4年振りに年末年始に流行するかもしれません。4年前に流行した時のお正月は、休日診療所が7時間待ちと聞いて他の休日当番の病院に向かったところ、診察が10時間後の翌日未明になったという話も患者様から聞きました。年末年始にインフルが流行すると大変です。皆様も、年末は疲れをためずにゆっくりとお過ごし下さい。
 例年だと12月に多いRSウイルス感染症が少なく、夏に多いアデノウイルス感染症が全国的にも目立ちました。当院でも、RSウイルスも散見しましたが、アデノウイルスの方が目立っていました。また、例年よりも溶連菌も多かったようです。アデノウイルスも溶連菌も学校伝染病で保育園には一定期間預けられません。いつもなら病児保育が確保出来なければ仕事に支障のでる働くお父さんお母さんも、お休みに入りますので、しっかりとご家庭で看病してあげて下さい。
 先日このコーナーでお伝えした、診察で私がプレッシャーをかけてしまった方が再診されました。ご本人は意識にないかもしれませんが、私にとって今週最もうれしい診察でした。この患者様に限らず、ひとりひとりの方の気持ちやニーズをくみ取り、安心して診察をうけて頂けるよう心を新たにしました。鼻出血の止血処置をしたにも関わらず時間外に再出血して、再度、止血を行った方もその後は出血がなく一安心でした。今年の年末は、今後の症状悪化を危惧する患者様は少なかった印象です。年末に診察された方々が穏やかな年末年始を過ごされるよう祈念しています。万が一、症状の悪化が見られた際は、遠慮なく当院時間外用の電話にてご相談下さい。また例年ながら、年末は難治性中耳炎のお子様の経過も気になります。昨日は、5月から治らなかった滲出性中耳炎がやっと治った子供さんもいましたが、やはりこの時期”中耳炎が年越し”になる子供さんの方が多かったです。3学期に入ると本格的な風邪の流行期で、中耳炎が治る前に風邪に罹って中耳炎が逆に悪化するケースの方が多いです。年始からは、少しでも多くの子供さんやそのご家族が、風邪がこじれずに中耳炎が悪化せず快適に過ごせるような治療を目指したいと思います。

 今年1年を振り返ると、病院では2名のスタッフが、結婚退職しました。ひとりは来年にはお母さんになる予定です。ふたりのこれからの幸せと発展を祈っています。また、新たに2名のスタッフを迎えました。年末の忙しさで研修がまだ十分できていない新人さんもいますが、来年早々にはしっかりと指導しますので、宜しくお願いします。
 私事では、昨年末に父を亡くして以来、私の人生でも激動の1年でした。私の処置により多大な負担をかけてしまった患者様がおられました。来年、今より少しでも体調がよくなるよう心して対処したいと思っています。私は仕事柄、感染症に少しずつ罹ることによるブースター効果で病原菌への免疫が高いせいか、医者になって32年、おかげさまで、研修医1年目に自分の職場の大学病院で扁桃摘出術を受けた時以外は病欠はありません。過去に尿管結石はありましたが診療に差し障ることはありませんでした。しかし今年、加齢による頚椎症が出てしまいました。こちらも幸いにも内服薬で落ち着き、診療に差し障ることはありませんでしたが、運動不足や不摂生には心してかからなければいけません。大いに反省です。
 次は、私の立場から医療の1年を振り返ります。
 インフルエンザの新薬ゾフルーザが3月に発売になりました。ウイルスの増殖抑制作用が強いことから、私はこのシーズンから主流で使いたいと思っていますが、薬価が成人の40㎎で4789円で、タミフルのジェネリック1360円の3.5倍です。タミフルに劣らない(非劣性)というデータはありますが、発売後の有用性のデータはこれからです。投与後にアミノ酸変異のあるウイルスが小児の23%、成人の10%でみられたとのデータもあります。患者や国の医療費負担も考えながら、今後の副作用や耐性化のデータにも注意しながら処方したいと思っています。
 梅毒が年末にかけても流行が続いています。耳鼻科でも咽頭梅毒とういう病態があります。今年、気になった方には検査してみましたが、当院での検出は1例もありませんでした。恐らく見逃しはあったと思います。今後も、梅毒が流行していることを念頭に診察したいと思います。
 1月に百日咳が感染症法の全数把握に指定されました。百日咳は、国が感染症の発生動向の調査を行い、その結果に基づいて必要な情報を国民一般や医療関係者に情報提供・公開していくことによって,発生・まん延を防止すべき5類感染症です。全数把握疾患となったことで、患者の3割が成人であることが確認されました。昨日の診察でも、発作性の咳き込み・吸気性笛声・咳き込み後吐きそうになる に該当する成人の方を診ました。当院でも血清PT-IgG抗体検査は行っていますが、発症後3週間以内であれば遺伝子検査である核酸増幅法(LAMP法)が感度が高いです。当院でも核酸増幅法によるチェックも検討してみます。百日咳は3週間以上たった遷延性咳嗽の時期には抗菌薬の効果は乏しくなり、必ずしも抗菌治療は必要としなくなります。急性のカタル期か?遷延期か?にも注意しながら、成人の百日咳も少なくないことを念頭に置いて、診断治療、呼吸器内科との連携を進めたいと思います。
 1月に水痘帯状疱疹ウイルス抗原検出キット(デルマクイックVZV)が発売されました。当院ではまだ採用していませんが、皮膚科以外での有用性も広がってきています。耳鼻科では、顔面の三叉神経領域の帯状疱疹、鼻背部側方からの眼帯状疱疹、外耳道や軟口蓋の水泡形成から内耳に広がるハント症候群などが重要です。顔面皮膚や眼へのヘルペスでは、皮膚科眼科へ紹介しますが、びらんや潰瘍が主体の帯状疱疹での早期診断や単純ヘルペスや耳せつとの鑑別のために、今後、耳鼻科外来での用意も検討したいと思います。
 4月の診療報酬改定で新設された妊婦加算が12月末まででの運用凍結が決まりました。SNSでの妊婦さんの投稿が話題になってわずか3ヵ月あまりでの異例の速さでの決定です。政治も早く動くときは動きますね。
 8月に、メニエール病への非侵襲的内耳加圧装置が保険収載されました。富山大で開発され、徳島大武田教授が総括研究者代表者となっています。従来ある鼓膜マッサージ器を改良したものですが、保険点数は在宅自己導尿指導管理料1,800点に準じています。今後、 学会の定める適正使用指針に沿って使用した場合に限り算定するとのことですが、患者負担は3割負担で月5.400円と高価な治療法となります。今後どの程度、メニエール病治療の場に普及するのか注視したいと思います。

 平成最後の年末となりました。最後は30年を振り返ります。私は昭和62年大学卒業ですから、医者人生の大半を平成とともに送ったことになります。日経平均は平成元年大納会の39.815円をピークに、平成7年の拓銀、山一証券破綻にかけてバブルが崩壊、さらにサブプライムショック、翌年のリーマンショックから10年になります。失われた10年がいつしか失われた30年と呼ばれるようになりました。アベノミクス後もデフレ解消にはまだ至っていません。私の小学生時代に経験したオイルショック後の狂乱物価もまずいですが、適度な物価上昇は経済発展にはかかせません。学生時代のバブル期とはいえ適度な物価上昇時の、経済が発展している雰囲気が忘れられません。
 今年12月の変調で、世界の株式も債権も原油などの商品も全てが減価した過去にない年となりました。この変調の原因のひとつが米国と中国の関税競争ですが、これが安全保障上の問題として長期化することも世界市場の変調の要因のひとつになっています。今日、私は米国家安全保障局の盗聴を告発したエドワード・スノーデンを描きアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した2014年のドキュメンタリー映画「シチズンフォー スノーデンの暴露」を見ました。2016年の映画「スノーデン」は以前見ていましたが、やはりこちらはドキュメンタリーで、スノーデン氏や記者の実写です。情報ネットワークを握る国が、全ての個人情報を握ることの出来ることがよくわかります。中国は国内問題だけで国外とのネットの遮断を行っていると思っていましたが、米国のネットに支配された国が、情報をいとも簡単に抜かれることもよくわかりました。検索履歴を把握されるだけでも思想信条趣味は把握されます。米国が今後、逆に新情報規格g5で中国に覇権を握られると、安全保障が立ち行かなくなることも分かりました。今後の米国と中国の覇権争いは決定的に長期化しそうです。平成後の新しい御代はどんな時代になるのでしょうか? 
  24日   メリークリスマス! 以下、クリスマスとは全然関係ありません。(#^.^#)

 痙攣性発声障害の治療として、今年からボトックスが保険適応になり、四国の大学病院でも治療が可能になりました。
 痙攣性発声障害は、ジストニアと呼ばれる自分で制御できない比較的長い筋肉の収縮により生じる運動(不随意運動)が声帯筋に集中して起こったものです。ジストニアで代表的な疾患は、斜頸、顔面痙攣、書痙などで、脳内の大脳基底核に病気の主体があると考えられています。
 声帯が内側に寄って起こる内転型、外側に広がって起こる外転型、稀ですが両者の混じった混合型があります。症状は、主に言葉を発する際に目立ちます。内転型では、不随意的に発声時に声がつまったり、途切れたり、非周期的にふるえたり、のどを詰める努力性発声です。母音が出しにくくなります。外転型では、不随意的、断続的に息が漏れる声がれ(気息性嗄声)、失声、声の飜転、ささやき声(無力性発声)です。サ行、ハ行が出しにくくなります。いずれも高音、笑い声、鳴き声、歌声では軽減し、電話や人前での発言など緊張状態で悪化する傾向があります。内転型が8割を占め、日本では20~40才代の女性に、欧米では40才以降に発症することが多いです。
 よく似た疾患(鑑別疾患)としては、本態性音声振戦(4-5Hzの周期的な声のふるえで、裏声でも改善しない)、過緊張性発声障害(症状が音声治療によって改善することがある)、心因性発声障害(精神的ストレスで急激に発症し、緊張で症状が極端に変動する)、吃音(語頭で発語困難、構音動作の途絶、音の引き伸ばし、繰り返し)があります。歌手で時に報道される歌唱時機能性発声障害には、痙攣性発声障害を含めて上記のような鑑別疾患も当てはまります。
 治療として、今年からボツリヌストキシン(ボトックス)が保険適応となりました。また、内転型で喉頭の枠組みを形成する甲状軟骨を前方で離断して広げることにより声帯を少し外方に変位させる甲状軟骨形成術Ⅱ型がありますが、これに用いるチタンブリッジも2016年より特定医療用材料として保険適応になりました。これからは四国内の大学病院でも十分な治療が行えます。過去には当院でも、音声障害の手術やボツリヌス治療を先進医療として行っている京都や東京の専門病院・大学病院に患者様を紹介したことがありましたが、これからは、当院での音声治療で改善が困難な患者様には、時間的距離的な制約の少ない病院を紹介することが可能となりました。(^^) 
  23日   診察の前に、クリスマス会が楽しかったと伝えてくれる子供さんや、診察室のクリスマスソングのオルゴールのBGMに合わせて口ずさむ子供さんがいました。明日はいよいよクリスマスイブです。

 この連休、私は年賀状作成に勤しみました。一年を振り返り、来春への気構えが徐々に出来てきました。
 年が明けとともにスギ花粉症シーズンです。来シーズンも当院がウェザーニュース社の花粉プロジェクトの実施施設になりました。来シーズンも当院でポールンロボによる花粉のリアルタイム測定をお届けします。
 「西郷どん」の最終回、まさに”神回”でした。ドラマの明治編では、ナレーターと思っていた西田敏行が、西郷の奄美遠島時代の妻、愛加奈の子菊次郎として登場しました。菊次郎が西南戦争で片足を失ったエピソードも上手く取り上げられていました。史実上はいろいろなI意見のある西郷の最後の言葉「もう、ここらでよか」も、実に含蓄のある胸に迫るシーンで取り上げられていました。勝海舟や徳川慶喜だけでなく、きっと大久保利通も、西郷の最後は無念だったのだろうと思います。この点も実に印象的に表されていました。私にとっては、「篤姫」以来の素晴らしい大河ドラマでした。
 新聞に無料で楽しむ新年のカウントダウンの名所の特集がありました。西日本の1位は、なんと道後温泉本館でした。当日は、ライトアップの中、おやじダンサーズのショーで幕開け、0時は本館最上階の刻太鼓で無遭えるそうです。年が明けるとミカンやお汁粉が無料で振舞われるとのこと。石手寺や伊佐爾波神社のカウントダウンは経験したことがありますが、道後温泉本館が盛り上がっているのは知りませんでした。
 厚労省は来年の即位に伴う10連休中の医療態勢調査を行うことになりました。確かに祝日と振替休日を休診としている当院では、暦通りにすれば9連休となります。当院は日曜が重なった年で長くても、お盆前後がの4~5連休、年末年始が5~6連休ですので、当院始まって以来の長期休診となります。公立病院が歴通りに休めば10連休です。10日病院が開かないと、慢性疾患が急性増悪した場合にも困るケースが出てくると思われます。救急の現場も大変になりそうです。別の報道では、株式などの市場機能への影響も懸念されています。長期連休の医療体制をどう構築するか、祝事の中にも検討課題です。

 インフルエンザが、9日に全国で流行入り、愛媛も16日に流行入りしました。先日、愛媛はほとんど発生が無く流行入りが遅くなるかもとお伝えした矢先ですが、全国でもなんと香川で一番発生していました。愛媛では、八幡浜で急増しています。中予での発生はまだ少ないですが、それでもA型の散発が伝わってきます。過去には5~6年に一度ぐらいは、年末年始にインフルが流行します。数年前には、医師会の休日診療所が7時間待ちだと聞いて他の休日診療の病院を受診したところ10時間待たされた、というエピソードも耳にしました。平成最後の年末年始が穏やかでありますように。また、5月の連休の医療態勢がスムースに運営されるよう祈ります。
 
 年末に向かい、当院の診療も忙しくなってきました。先日、これまでの患者様の病状を立て続けに質問したところ、患者様が悲しそうな表情をされました。私の診察の進め方におおいに反省しました。その夜、外来診療における医療面接に関するレクチャーを見てみました。まず1分間聞き耳をたてることが重要で、そうすれば患者様の意向が判りメンツをつぶさない、と教えていました。この姿勢は大事なことだと思います。忙しい外来だと、1分間でさえなかなか長いですが、私ももっと聞く姿勢を持たなければと、猛省です。他のレクチャーでは、子供さんの診察や吸入時の工夫を教えていました。お母さんを子供さんの前でほめると、この人は敵じゃないんだと子供さんも安心するそうです。吸入では、紙コップの底から吸入のノズルを差し込んで、紙コップで口の周を覆って吸入すると、赤ちゃんでしっかり吸入できるとのこと。大いに参考になりました。 
  15日   来シーズンの花粉飛散予想が出そろってきました。日本気象協会第2報では、愛媛は例年、昨年比ともにやや多いとの予想です。中予の飛散開始時期は、2019年の1~2月が暖冬のために、スギの雄花の休眠打破が遅れて、例年より遅い2月17日と予想しています。この予想だと過去最も遅い飛散開始となります。ウェザーニュースは、愛媛は例年の1.3倍、昨年の3.4倍と予想しています。
 昨シーズン、松山ではスギが少量飛散で、ヒノキが記録的に大量飛散しました。愛媛の気象は、前年夏が猛暑で、日照時間が長く、豪雨もありました。スギは今シーズンが表年にあたります。
 これらのことを踏まえると、私の来シーズンの予想は、「スギが例年よりやや多く、昨年よりかなり多い。飛散開始日は遅くなる。ヒノキは、例年よりやや多く、昨年より少ない」としたいと思います。さて、実際にはどうなるでしょうか? 
  14日   当院では、先々週に大掃除が、今週、送別会忘年会が終わり、年末の診察に備える態勢になりました。(^_^)/

 ここ10日ほどで、冷え込む→汗ばむ陽気→底冷えと、気温が大きく変化しました。さらに低気圧も7回ほど通過しました。気温の変化と気圧の変化が大きかったことから、自律神経失調からのめまい、メニエール病、片頭痛、耳管狭窄症、咳喘息、気管支喘息が悪化した方が目立ちました。
 当院では12月に入り、RSウイルス、マイコプラズマがやや目立ちますが、インフルエンザは1名のみでした。愛媛県下でも、例年12月に流行るRSウイルスが今年は8~9月に流行したせいで、発生は少ないようです。インフルエンザの報告もほとんどありません。10日後のクリスマスが学童の終業式で、集団生活の機会が減りますので、風邪は流行しなくなります。今年はこのままインフルエンザが流行せず冬休み入りしそうでいいなと思っていたのですが、今日、9日までの週で全国レベルでインフルエンザが流行入りしたとのニュ―スがありました。例年並みで昨年より2週間遅い流行入りです。A型が中心で、7割がA/H1N1型(Apdm09 2009年新型)でした。愛媛県でも、少ないながら10~11月はA2009年型の方がA香港型よりもやや多いとの報告でした。以前、冬休み入りした後にA2009年型が急に流行したシーズンもありました。今年も年末まで、インフルの流行には注意したいと思います。

 今シーズンのインフルエンザ治療薬として、私はこの3月に発売されたゾフルーザを第一選択と考えています。以前、お伝えしたように、他の抗インフルエンザ薬と比べても、ウイルスの排出が早期に抑えられることがこの薬剤を選択するポイントと考えています。さらに、ゾフルーザは新薬だけに、まだ臨床的な耐性菌の報告がないことも利点と考えられます。
 しかし、ゾフルーザにも治験データでは、ゾフルーザの投与によって同薬に低感受性を示すアミノ酸変異株という変異ウイルスが発生することが報告されています。臨床治験段階で、小児の23.4%にA型感染時に変異株が発生したとのことです。アミノ酸変異株は、これまでの薬剤耐性株とは違う機序の変異で、私はこのゾフルーザの治験データの報告で初めて知りました。塩野義製薬のMRさん(医療情報担当者)からの報告では、変異株が出来ても感染力が弱いために、実際の臨床の現場では、変異株は新たな感染は引き起こさず死滅する可能性が高いとのことでした。市販後の臨床データとしては、まだゾフルーザへの耐性株による感染の報告例はないとのことです。この変異株については、日本感染症学会インフルエンザ委員会でも「アミノ酸変異による臨床効果への影響は不明であり、これからの検討が必要」としていますので、今シーズン、世界的にゾフルーザが多く処方されるようになった時点で、耐性株の報告がでてくるかどうかに注目しておきたいと思います。 
  9日   1ヶ月後には、スギ花粉がパラパラ飛散する季節になります。日本気象協会が来年のスギ花粉の飛散予想の第1報を出しています。それによれば、愛媛は、今年の夏が、猛暑、長い日照時間、集中的な大雨だったこともあり、愛媛のスギ・ヒノキ花粉は、例年比、前年比ともにやや多いと予想しています。これから、各地の研究者が実際の雄花の着花具合も観察しながら、より詳細な予想を発表します。今年の松山は、スギが予想以上に少量飛散で、ヒノキは全国的に過去最大規模の大量飛散でした。なぜ、これほどまでにヒノキが大量飛散したのか? 予想した人はほとんどいなかったと思います。研究者の目で見て、今シーズンの大量飛散がなぜ起こったのか、今後の研究レポートに注目しています。

 堀口修先生の「つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい」という本が、20刷58000部売れているそうで、医学の新書では異例のヒットになっています。12月には四国の書店の共同企画で書店員さんが推薦する本のブックフェアでも本書が取り上げられるとのことです。その本に、当院が治療可能な施設にとして紹介されている(四国では2施設のみです)ことから、結構、遠方から患者様が来院されます。昨日も、今治も含めて3名が本をみて来院されました。遠方の方は、週1~2回のBスポット治療(日本病巣疾患研究会がこの治療法を上咽頭擦過治療(EAT(EpipharyngealAbrasive Therapy イート、上咽頭擦過治療)と呼称を統一しました)はなかなか難しいですので、来院された方々の意向を確認して、代替の治療をしたり、患者様のお住いの近くで、この治療を受けられるかどうか、各地の耳鼻科に相談しています。

 2015年の小児滲出性中耳炎のガイドラインの改定に続き、今年は小児急性中耳炎のガイドラインも改定になりました。それを踏まえて、当院の「鼓膜切開を行う目安」も更新しました。
 急性中耳炎は、
1、痛みや発熱、腫れが強く、消炎鎮痛解熱剤や抗生物質の効果がすぐには期待できない時 2、鼓膜に高度な腫れ(水疱性鼓膜炎など)があったり、上鼓室の反応が強いなどで、中耳の奥(乳突洞)から髄膜方向への炎症の波及(乳様突起炎、髄膜炎)や、感音難聴などの内耳炎が起こった時 3、□発熱や全身状態の不調が続き、原因の可能性のひとつとしての中耳の炎症をはやく確実に取り除きたい時
★2018年の小児急性中耳炎ガイドラインでは 「軽症では経過観察か抗生剤を、中等症では初日に高度鼓膜所見で鼓膜切開、または抗生剤2種を6~10日服用で改善ない場合に鼓膜切開、重症では初日に鼓膜切開」が推奨されています。
急性中耳炎から滲出性中耳炎への移行では、
1、0,1歳児:3週間たっても中耳のウミがなくならない時 2、2歳児以降:10日たっても中耳のウミがなくならない時 
★上記は2004年度日本耳鼻咽喉科学会総会報告の提言より。ただし、09~10年に耐性菌に有効な小児用抗菌剤2種が登場したとや、肺炎球菌ワクチンの開始で、内服薬で治るケースが増えています。
滲出性中耳炎では、
1、難聴、不快感の持続(特に両側の場合)2、鼻の治療をしても耳管通気の正常化が期待できない時 a;鼻炎・副鼻腔炎自体が難治な場合 b;鼻炎が改善しても中耳炎が改善しない場合 3、好酸球性中耳炎、ANCA関連血管炎性中耳炎で感音難聴などの内耳炎化が疑われる時 4、中耳内の陰圧が強く、癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎、コレステリン肉芽腫への移行が心配される時 5、中耳炎が数ヶ月以上続き、中耳の骨の発育が抑制されたり、鼓膜が薄く弱くなる恐れがある時
★2015年の小児滲出性中耳炎治療ガイドラインでは「滲出性中耳炎が3ヶ月以上遷延し、鼓膜の
病的変化や両側性の難聴が強い場合にはチューブ留置」が推奨されています。
以上のようにしました。この方針に従って、保護者の方に説明しながら、鼓膜切開や鼓膜チューブ留置術を進めたいと思います。

 今日は小児の頭痛についてお話します。
 頭痛の治療は国際頭痛分類に則って行われます。この分類では、頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛、神経痛に大きく分けられています。一次性頭痛は、頭痛自体が疾患であるもので、片頭痛や緊張性頭痛、群発頭痛をはじめとする三叉神経・自律神経性頭痛などがあります。二次性頭痛は原因疾患のある頭痛で、脳血管障害、脳腫瘍、薬剤乱用頭痛などの物質によるもの、髄膜炎などの感染症、副鼻腔炎や顎関節症などの周囲臓器に原因のあるもの、心身症など精神疾患によるものなどがあります。神経痛には三叉神経痛、舌咽神経痛や帯状疱疹後神経痛などの顔面痛やニューロパチーが含まれます。
 小児の頭痛の有病率は、片頭痛が7%、緊張型頭痛が13%と少なくはありません。耳鼻科で思いのほか多いのが、アレルギー性鼻炎による頭痛です。はっきりとした細菌性副鼻腔炎まで至らなくても、鼻炎が強いとアレルギー性の篩骨洞炎や副鼻腔の換気ブロックにより、目の周囲に鈍痛を感じます。私が学校健診でアレルギー性鼻炎で来院した学生さんの保護者の方に診察でよくお伝えしているのは、「小学生の半数がハウスダストによるアレルギー性鼻炎持ちですので、特殊は病気ではないですし、基本的には体質で治るものではありません。症状が軽ければ治療の必要はありませんが、小学生で頭痛がひどい、中学生で集中力不足を感じるなら治療した方がよいです」との趣旨です。その他にも、耳鼻科で注意するのが、低血圧の体質による起立性調節障害による頭痛です。朝の寝起き不良時の頭痛は、時には不登校のきっかけになったりします。
 また、小児の片頭痛も大人と違った特徴があるので注意しています。小児では「片頭痛に関連する周期性症候群」という病態があります。これは国際頭痛分類第2版から取り上げられています。周期性症候群では、周囲性嘔吐症候群、腹部片頭痛、小児良性発作性めまい、良性発作性斜頚が現れ、頭痛の症状は表に出ません。これが成人の片頭痛の準備段階と考えられています。乗り物酔いや、まぶしい光を嫌がる光過敏や、音に敏感で不機嫌になる音過敏などがあれば、より一層、片頭痛体質が隠れていないか注意する必要があります。小児は、頭痛を頭痛と自覚しないことも多く、体調不良や風邪に罹った際の低血糖からケトン体が丁寧に増えて吐き気を催す自家中毒の中にも、片頭痛体質が隠れている可能性もあります。
 小児の頭痛の治療薬は、イブプロフェンとアセトアミノフェンが主体です。その他にも、年長者には抗うつ薬のアミトリプチリンを、年少者には抗ヒスタミン薬のシプロヘプタジンを用います。しかし、 成人の片頭痛の特効薬であるトリプタン製剤は、、国際頭痛分類では12才以上または体重40㎏以上に制限しています。このように、小児で頭痛が慢性的に起こり日常性生活に支障をきたすようであれば、治療は専門的になります。私は小児科専門医にコンサルトしています。 
12月 2日   師走入りです。当院でも暖房を入れるようになりましたので、加湿器の活躍が始まりました。つい先日まで猛暑だと思っていたのに、季節の移ろいは早いものです。

 冬に入りましたが、当院では、夏に多い手足口病やヘルパンギーナもまだ散見されます。例年の流行状況では、夏にアデノウイルスが、12月にRSウイルスが多いのですが、今年は夏にRSウイルスが多く、最近になってアデノウイルスが目立ってきました。例年とは逆のパターンで流行しています。
 全国的には風疹と梅毒の発生が多いようです。関東だけでなく福岡など西日本でも発生が目立つ地域が増えているようです。松山でも先月も成人男性の風疹の報告がありました。当院でも引き続き、風疹に注意したいと思います。

 今週初めに伊予市の小学校でインフルエンザの集団発生がありました。13人が欠席して、内何人かはインフル陽性だったそうです。まだ学級閉鎖の報告は上がっていませんが、どうなったのでしょうか? 松山市の11月のインフルの発生は、A2009年型>A香港型で散見される程度でした。当院では11月初旬に1名インフルA型陽性の方の来院がありましたが、その後は見ていません。しかし、例年12月後半には学級閉鎖の報告が本格化します。今後はインフルの発生にも注意しながら診察を進めたいと思います。
 全国的に一時供給不足だったインフルエンザワクチンですが、12月には供給が安定するようです。当院では診療時間の関係から、インフルエンザワクチンの接種は行っていませんが、中耳炎や急性感染症で接種が可能かどうかの判断はお伝えしています。予防接種の問診の際に、接種が可能かどうか判断のつきかねる方は、遠慮なく当院に電話でご連絡下さい。 
     
  17日   今日の朝はめっきり冷え込みました。
 秋の雑草花粉のシーズンが終わりました。ブタクサやヨモギなどの雑草の飛散は10月中旬まで、イネ科の飛散も11月初旬に終わりました。今年は秋花粉で”顔が腫れ上がった”方は見かけませんでした。(^^) 
 今日のような快晴では、”秋のスギ花粉”も飛んでいるかもしれません。ごく少量ですが、季節外れのスギ花粉の飛散は例年10月下旬から見られます。スギの雄花が開花して花粉が飛びます。雄花は7月から10月にかけて成長し休眠状態になります。ほとんどの雄花は、2月後半から3月中旬にかけての寒さが温んだタイミングで開花しますが、ごく少数の桜が秋に開花するのと同じように、高温の日と低温の日を繰り返す気象条件で開花しやすいことから、秋でもこの条件の気候では少量の飛散が見られます。松山では7年前まで県立中央病院で秋もスギ花粉の測定を行っていました。そのデータを見ると、11月を中心に飛散が観測され、時には3~4日連続して観測される年もありました。ここ1週間ほど、朝の冷え込みは強くなってきたものの、昼間は動けば汗ばむ陽気でした。スギ花粉への感受性の強い方の中には、ここ数日、夕方を中心に、くしゃみがでたり、目がかゆくなった方もおられたかもしれません。

 受付で始業前の準備していると、待合室のテレビでは「妊婦加算」が物議を醸しだしているとの話題を取り上げていました。テレビでは、妊婦に優しくないとの街頭インタビューの声を紹介していました。妊婦加算は、この4月の診療報酬改定で、診察料に新たに追加された追加料金です。自己負担3割の場合、初診で約230円、再診で約110円負担が増えます。診察では、妊娠予定日をお聞きした上で加算料金を頂くことになっています。病院の待合室には厚労省より配られた妊婦加算の案内を掲示して、妊婦さんと分かった時点で、診察時には私から、受付では事務から妊娠予定日をお聞きしています。しかし、テレビでも取り上げていたように、この春の税制や公共料金の改定のニュースではほとんど取り上げられていなかったように私も感じていました。妊婦の方の多くは、病院を受診して初めてこの制度を知ったのではないでしょうか。妊婦加算は医療制度の立場では、妊娠の適切な管理という注意を払う診療に対する報酬との位置付けで、背景には薬の処方時に胎児への影響を恐れ妊婦さんを診察するこを敬遠する医療機関が少なくないこともあったようです。妊婦に対する医療の体制を強化する目的としての妊娠加算ですが、これまでの診察と何が違うのと感じて”妊婦税”と感じる方もおられると思います。診療報酬改定は加算加算で制度が変更されてきました。周産期医療の充実と診療報酬での負担の仕方、今後の制度設計に変更が出てくるのか注目しておきます。私も妊婦さんに対しては、このような制度の出来たことを説明して、丁寧に診察を進めたいと思います。

 街はもうクリスマス・デコレーションで華やいでいます。当院も来週かにはポインセチアやシクラメンを飾ろうと思います。
 YouTube Christmas Eve 2018 山下達郎 素晴らしいビデオコラージュです。東京が本当に素敵な街に見えます! 

  副甲状腺腫瘍(高カルシウム血症) 鼻骨骨折、前庭神経炎、アレルギー性鼻炎への化学剤手術など。


 当院の自慢は診察室から見える緑です。新緑、蝉の声、紅葉、冬木立、、四季の移ろいを窓越しに感じることが出来ます。窓越しに見える紅葉も今が盛り。ちょうど、みかん色に新塗色された伊予鉄電車が紅葉の向こう側を通過中です。 当院ではよく、診察中の小さなお子さんが「あっ、電車」と教えてくれます。 
  6日   昨日5日、当院で今シーズン初めてA型インフルエンザが検出されました。成人の方でした。抗インフルエンザ薬はゾフルーザで対応しました。
 国立感染研による11月2日付の今シーズンの抗インフルエンザ薬に対する耐性株サーベイランスでは、これまでのところA香港型59例、A2009年型20例、B型10例について、経口薬タミフル、注射薬ラピアクタ、吸入薬リレンザ、イナビル全てに耐性株は検出されていません。昨シーズン登場の新薬ゾフルーザに対する耐性株サーベイランスの報告はまだ始まっていません。気になるゾフルーザに対する耐性株の存在ですが、ゾフルーザ開発段階でのin vitro(試験管内)検査では、他の抗インフルエンザ薬同様に感染力の弱い耐性株の発生が見られたそうですが、臨床ではまだ耐性株が出現したとの報告はありません。今シーズンは幸いにまだどの薬剤に対しても耐性株は発生していないようですが、抗インフルエンザ薬の選択として現時点では、新薬で臨床的に耐性株が報告されておらず、また、ウイルスの増殖を抑える作用の最も強いゾフルーザを中心に処方していこうと思っています。 
11月  2日  文化の日、抜けるような秋晴れでした。夏の猛暑が嘘のようで、日に日にひんやりとしてきました。急性上気道炎に急性副鼻腔炎を続発する方、急性中耳炎反復化したり滲出性中耳炎が遷延化するお子様も徐々に増えてきました。残念ながら滲出性中耳炎が遷延化するために鼓膜留置チューブを選択するお子様も増えてきました。

 9月にこのコーナーでも触れた最新の知見を基に、好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎の患者さん向けパンフレットを更新しました。
 好酸球性副鼻腔炎:好酸球という細胞が主体となって炎症を起こしている副鼻腔炎で、一般の炎症性の副鼻腔炎よりも治療抵抗性かつ再発の傾向の強い副鼻腔炎です。インターロイキン4.5.13というサイトカインがIgE産生、好酸球性炎症またはムチン産生などを惹起する2型炎症反応であることが解ってきました。この病気の特徴は、①多発性のポリープ ②嗅覚障害の合併 ③一般の副鼻腔炎よりもマクロライド系抗生物質の抵抗例が多い ④ステロイドの有効例が多い ⑤しばしば喘息の合併が認められる ⑥ハウスダストやスギなどの特定の抗体を持つものタイプも持たないタイプもある ⑦手術しても再発例が多い。治療は、ポリープの増殖に対応しながら、悪化させないことが基本です。難病医療助成制度の対象疾患で、市役所に申請すれば”医療費自己負担2割に減額””所得に応じた月負担額の上限設定”などの優遇があります。全身の小血管が障害される好酸球性多発血管炎性肉芽腫症EGPA(自己抗体MPO-ANCA陽性)の初期症状の可能性にも注意します。
 好酸球性中耳炎:成因の部分を更新しました。気道粘膜の一部としての中耳粘膜に好酸球が浸潤して慢性炎症化し、にかわ状の滲出液がたまる中耳炎です。インターロイキン4.5.13というサイトカインがIgE産生、好酸球性炎症またはムチン産生などを惹起する2型炎症反応であることが解ってきました。一般的なアレルギーの治療に難治性であり、多くの場合、鼻茸を伴う好酸球性副鼻腔炎や、気管支喘息が合併します。喘息のタイプでは成人発症型やアスピリン喘息合併型が多いです。好酸球性中耳炎と鑑別すべき疾患の欄も更新しました。
 ANCA関連血管炎性中耳炎:好中球細胞質抗体(ANCA)による壊死性血管炎で微少血管が障害される成
人発症の自己免疫疾患です。原因は十分解明されていませんが、ANCAが風邪などの上気道感染の後に炎症によって産生されたサイトカインとともに好中球を活性化し、各種の有害因子を放出し血管炎や肉芽腫を起こすと考えられています。血液検査でMPO-ANCA、PR3-ANCAが陽性となります。難治性中耳炎と急速に進行する感音難聴を認め、高率に顔面神経麻痺や肥厚性硬膜炎を合併します。進行すれば、肺の壊死性肉芽腫や全身の壊死性肉芽腫性血管炎,壊死性半月体形成性腎炎などの全身性疾患となります。治療はステロイドと免疫抑制剤の長期投与です。以下に細分類されます。
 1.顕微鏡的多発血管炎
 2.多発血管炎性肉芽腫症;発熱、全身倦怠感、食欲不振などの炎症を思わせる症状と、眼、耳鼻(ウエゲナー肉芽腫)咽喉頭などの上気道、肺、腎の3つの臓器の炎症による症状
が起こってきます。
 3.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA 旧チャーグスストラウス症候群);好酸球性副鼻腔炎、気管支喘息(重症例の3%で合併)が先行し、著明な好酸球増多と全身の虚血症状で発症し、種々の血管炎、肺浸潤が出現します。発熱、体重減少、関節痛、筋肉痛、紫斑などの全身症状とともに多発性単神経炎を起こします。ステロイドと免疫抑制剤が治療の中心ですが、2018年より抗IL-5薬ファンセラが保険適応となりました。

  熱性痙攣、好酸球性中耳炎、耳下腺ワルチン腫瘍、鼻骨骨折、副鼻腔カテーテル療法など。

 今日は少しざっくばらんなお話も、
 今日のニュースを読むと、昨日、出入国管理法改正案が閣議決定されたとのこと。私は言い知れぬ不安な気持ちになりました。これをきっかけに島国日本の国柄が大きく変わるかもしれません。短期的には人材不足の解消につながるかもしれませんが、新たな制度では、長期滞在や家族の呼び寄せも可能となります。先日、このコーナーでも紹介した英国の国営保健サービスですが、誰しもが地域の家庭医で無料の治療を受けられる優れた制度ですが、ここ5年、移民の増加で制度が破綻の危機にあります。私は、将来少子化で日本の人口が減って経済成長が止まっても、過去のインフラの維持に努めて一人当たりGDPが減らない社会であればいいのかなと思っていましたが、20~30年後の日本が、国際化の中で文化の軋轢や福祉制度で大きな負担を抱えないか心配です。
 私はお酒の銘柄には無頓着です。唯一、日本酒でなぜか旨いと感じるのが新潟の地酒「久保田」ですが、地酒の利き酒などとても出来ません。特に焼酎はプレミアムなブランドがいっぱいありますが、私には違いがさっぱり判りません。そんな中、今日の新聞広告特集で、九州沖縄の焼酎を紹介していたので思わず勉強にと県別の紹介を読んでみると、ふと、受験生思考で、焼酎の暗記の仕方を思いつきました。ご紹介すると、まず、九州沖縄地方の地図に斜め右下に3本の線を入れます。一番上の線の上、福岡と大分、長崎の壱岐が麦焼酎が中心、その下の佐賀、熊本、宮崎北部が米焼酎、二番目の線の下、鹿児島と宮崎南部が芋焼酎、三本目の線の下、奄美が黒糖焼酎、沖縄がタイ米による泡盛です。使われる麹で分けると、雑菌の繁殖を防ぐクエン酸の多い黒麹が暑い沖縄の泡盛で使われ、次にクエン酸の多い白麹が芋焼酎で使われ、クエン酸を含まない黄麹が米焼酎、麦焼酎、日本酒で使われる。どうです、この豆知識があれば地酒を飲むのが楽しくなりませんか。(^^)/
 よく大河ドラマで歴史に触発される私です。この11月は、司馬遼太郎の西郷隆盛を中心に明治維新期を描いた小説「翔ぶが如く」に挑戦してみます。山崎豊子の「二つの祖国」、私にとってはついに「源氏物語」、ドキュメント好きとして「フランス革命」「渋沢栄一」にも挑戦です! 
     
  29日   朝晩もひんやりしてきました。紅葉の色鮮やかな季節です。病院のケヤキも赤く染まってきました。ライノ、コロナ、エコーウイルスあたりでしょうか。普通の風邪、ウイルス性上気道炎が徐々に増えています。これらの風邪の中には、1~3才児が罹るとクループ(声門下喉頭炎)を来すパラインフルエンザウイルスも混じっているものと思われます。しかしこのウイルスは迅速検査がありません。パラインフルエンザかもしれませんね、とお伝えしながら診察を進めています。クループは、声門下だけでなく喉頭蓋まで腫れが広がり急性喉頭蓋炎まで進行すると、最悪、呼吸困難から死に至ることもあり得る病気です。当院では、吸気性喘鳴や犬吠様咳嗽、声がれ(嗄声)を来した乳幼児には、細径のファイバースコープで声門下や喉頭蓋の腫脹の程度を確認して、アドレナリンの吸入やステロイドの投与を行います。気道狭窄が強く吸入への反応が悪い場合や今後の増悪が心配な場合には、入院の出来る小児科に紹介しています。

 当院も開院して24年経ちました。いつの間にか四半世紀が過ぎようとしています。先日、当院を2才から受診していた女の子、失礼、お嬢さんが、赤ちゃんを連れて親子で受診しました。お母さんに2才児当時のカルテを見せるとビックリしていました。私もうれしいやら、なにやら寂しいやら、、時の流れを感じた診察でした。

 31日はハロウィンです。昨年は、幼稚園帰りにハロウィンの仮装のままで当院を受診した子供達もいました。とてもかわいかったのを今でも覚えています。週末には渋谷の喧騒がニュースになるなど、いつのまにか日本の風物詩になっています。私は”取り残された”世代ですが、新聞に「ハローウィンはなぜ日本に定着?」の記事を見つけて、勉強になりました。日本のハロウィンは、1983年にキティランド渋谷の企画で仮装パレードが行われたのが最初で、前年の映画「E.T.」も日本で知られるきっかけになったそうです。1997年には東京ディズニーランドのハロウィンイベントと、川崎市のカワサキハロウィンがスタート。当時は大人が昼間に仮装するのはあり得なかったことから、カワサキハロウィンは、500人の予定に応募したのは30~40人でした。その後、2010年代以降に急速に大人の仮装が広がったそうです。記事では、室町時代の松囃子、豊臣時代の豊国祭礼、江戸時代の山王祭、京都で自然発生したちょうちょ踊りなど、古来から日本人は仮装を楽しんでいたと伝えています。日本人はシャイだが、仮装で発散する素地がありそうです。アニメのコスプレなど、日本の文化にも通じるものがあります。日本人は、節操がないくらいに外国の文化、制度、風習、宗教を巧みに取り入れて昇華してきました。ハロウィンの急速な普及は、日本人の進歩性を表しているのかもしれません。子供達にとっては、お菓子をゲット出来る楽しいイベントが増えました。私は置いてけぼりのままですが、子供達や若者の進化が見ものです。そのうち、世界で最もおしゃれなハロウィンは日本発になるかもしれませんね。 
  26日  今年、皆様に配布するインフルエンザのパンフレットを今シーズン版に更新しました。
 今シーズンのインフルの動向ですが、沖縄では17年連続で1年中B型が発生しています。全国的には9月で既に15の学校施設で学級閉鎖が報告されました。全国的にも少しずつ通年発生の傾向が出てきています。愛媛では、9月10日に湯山小の2学年各1学級で学級閉鎖となり、愛媛県では過去20年で15/16シーズンに次ぐ早さとなりました。松山ではA香港型、A09年型が検出されています。その後、八幡浜での散発があるも集団発生は見られていません。松山では、今シーズンは例年より早い流行入りも危惧された影響からか、予防接種を例年より早く始める医療機関が増えています。
 治療薬の動向では、今シーズンからタミフルの10才代での服用中止の勧告は無くなり、すべての抗インフルエンザ薬で「小児は全ての薬剤で、発熱から2日間は保護者は転落等の事故防止対策を講じること」となりました。タミフルの後発品が発売になることから、医療費の負担が軽減されそうです。昨年発売されたゾフルーザは今のところ異常行動などの有害事象はまだ報告されていないようです。ウイルスが検出されなくなる時間は、無治療で4日、タミフルで3日、ゾフルーザで1日と、ゾフルーザが群を抜いて良いようです。タミフルの後発品と比べると薬価は高いのですが、私の今シーズンのファーストチョイスはゾフルーザにする予定です。 
  17日   キリンチャレンジカップ 対ウルグアイ戦勝利! いやー本当に見ていて爽快でした。ウルグアイも本気モードに見えました。新生森安ジャパン、期待大です。いつもは新居浜出身の長友選手の走力に驚かされていましたが、この試合では長友選手がかすんでみえるくらい、各選手の走力、瞬発力は凄かったです。まるで欧州リーグやワールドカップ決勝トーナメントを見ているようでした。私も一生に一回は日本代表の試合を、6万4千人収容の日本最大のサッカー専用スタジアム、埼玉スタジアムで見てみたいものです。

 インフルエンザワクチンの接種の季節になりました。当院では例年通り予防接種は行っていませんが、中耳炎や風邪で当院に罹っているお子さんの保護者の方から、接種」が可能かどうかの問合せが始まりました。松山では9月にインフルの学級閉鎖があり、シーズン入りが早いとの予想もありました。幸い愛媛では10月に入って流行の兆しは無くなりましたが、全国的にも早めに接種を受けた方がよいとの意見も出ていますので、今シーズンの接種はやや早めに始める小児科も多いようです。
 インフルのワクチンはいつ頃接種すれば良いのか? 効果はどれぐらいもつのか? 私への問合せもありましたので、調べてみました。
 ワクチンガイドライン(日本環境感染学会が出しています。いいろいろな学会があるものです)によると、効果は接種後2週間で現れ、約5か月持続するようです。発症予防効果は、米国のデータでは、0才児が66%、3-9才が26%、15才以下が80-90%、60才以上で58%、65才以上で70-90%だが老人施設では30-40%です。わが国データでは、1-5才で20-30%、65才以上で45%です。興味深いのは、小児の1回接種で68%、2回接種で85%、死亡阻止効果のデータもあり65才以上で80%です。
 接種回数は、日本では6ヶ月~12才が2回、13才以上が1~2回。米国では6ヶ月~8才が2回(ただし過去に接種歴があれば1回でも可)、9才以上が1回としています。
 気になる妊婦さんへの効果ですが、インフルワクチンは病原性を無くした不活化ワクチンですので胎児には影響しないと考えられています。国内の成績調査は小規模なものしかないことから確定的な意見は出されていませんが、接種により先天異常の発生率が高くなることはない、接種を受けると生後6ヶ月までの乳児への発症予防効果ありとの報告もあり、米国ではワクチン接種が推奨になっています。しかしこのガイドラインでは、自然流産が起こりやすい妊娠14週(妊娠4ヶ月)までは被接種者の理解を得て行うとしています。
 これらを踏まえると。有効期間は接種後5ヶ月ですので、流行していないのに早く接種すると春には効果の減弱が気になりますが、インフルの流行中にブースター効果で免疫が高まることを考えると、本格的な流行シーズンの12月後半までには効果を得ていた方が良いようです。13才以上は基礎免疫が高いと考えて、2回目の接種は4週開けた方が効果が高いとすると、12才以下は11月前半までに1回、12月前半までに2回目を済まる。13才以上は12月初旬までに1回済ませるのが良さそうです。 
  14日   今日は、秋晴れ。幼稚園の運動会がこの秋一番多い日曜日でした。幼稚園児達もしっかり演技ができたことと思います。お父さんお母さんのビデオ撮影もバッチリだったのではないでしょうか。ここ数日、風邪に罹ったお子さんのお母さまから「運動会には出られるでしょうか?」との質問をよく受けました。多くの子供達が、風邪から回復して元気に運動会に参加できたことと思います。

  人もなし 我ものにして 月見哉  子規

 イギリスの家庭医(総合診療医)の現場をレポートしたグレアム・イーストン著の「医者は患者をこう診ている 10分間の診察で医師が考えていること」を読みました。私の診察は、今日も時間が押してしまいました。家庭医が10分間でどのような診察を行っているのか、大いに参考になりました。
 イギリスの医療制度は、家庭医General Practitioner(GP)による国営保健サービスを基盤にしています。GPは医学部卒業後3年間の専門研修を受けた後、筆記と臨床の両方の試験をパスして家庭医学会専門医として認定されます。イギリスには4万人のGPがおり、多くはグループ診療を行っています。市民だれもが自宅そばのGP診療所に患者登録をしなければいけません。フルタイムで勤務するGPは1500~2000人の患者登録のリストを持ち診療に当たります。そしてGPが対処できないと判断した際に、病院や専門医に紹介します。このプライマリケア制度で、医療予算の9%で医療の90%をまかなっています。GPは費用のかかる専門的な医療が必要か判断するゲートキーパーの役割を果たしています。しかし、2015年の調査では、GPの7割が仕事が多すぎて継続が不可能だと訴えています。
 この本で紹介された診察の流れに応じた患者への対応の仕方、鑑別疾患の進め方は、勉強になりました。イギリスの医学生は、診断の80%を問診で下せるよう訓練されます。診察による診断が5~8%で、残りが検査によって下されます。
 診察は、イエスかノーの答えを求めるクローズ型の質問ではなく、”オープン型の質問”で始めるよう教えられます。ベテランGPは自分が口を開く前に、患者さんの訴えを平均51秒聞きます。(研修医のGPは平均36秒です)積極的傾聴で、まず患者に訴えを述べさせます。
 また、診察ではICE(患者さんのIdea解釈、Concerns気になっていること、Expectations医療機関への期待)を探ります。患者さんが何を期待して診察に来たのかを無視して診察すると、患者さんは満足感を得られません。
 GPは診断を下すまでに5つの中間地点を通過します。1、”つながる”患者さんと信頼関係を築く 2、”要約する”ICE、来院した理由を探り、患者さんの解釈、懸念、期待を探るためにスキルを活用し、それを要約して患者さんに戻す 3、”手渡す”医師と患者双方が満足できる計画を練る 4、”セーフィティネットを設ける”万が一に備えて最悪のシナリオを練る 5、”自己管理”患者さん達のために医師として自分をケアする こうすると、すがすがしい気持ちで次の患者さんの診察へと気持ちを切り替えて前向きになれます。
 上のようなスキルを用いて、ひとりの患者に10分かけて診察を進めていきます。この本では、午前の18名の様々な疾患の患者さんとのやり取りを、実際の具体的な医師患者間の会話や医師の考えの独白も交えて詳細に記録しています。
 さて、当院ではひとりに10分かけて傾聴して診察すれば、たちまち診察はパンクします。耳鼻科は見てわかる病気が多いので、百聞は一見に如かずと問診の前にまず局所の所見を取りたくなってしまいます。この著者のような家庭医のスキルを取り入れて、ひとりひとりの患者様の診察が終わった後に、いかに安心して満足して頂けるか、少ない待ち時間で診察を受けて帰って頂けるか、私の長年にわたる大命題です。ICEを念頭に置き「患者さんが何を期待して診察に来たのかを把握して、患者さんに満足感を得てもらい、私もすがすがしい気持ちで次の患者さんの診察に向かう」よう、常に心掛けて診察を進めたいです。 
  11日  秋祭りも終わり、めっきり秋らしくなってきましたが、今日、当院では夏風邪のヘルパンギーナのお子様が2名来院されました。秋のような夏のような外来でした。

 今日の午後診は時間を短縮して、垣生小学校での就学時健診に行ってきました。耳鼻科健診は少し暗くした保健室で行いました。未来の新1年生は、みんな少し緊張した面持ちで保健室に入ってきます。健診に動じない子もいれば、泣き出してしまう子もいます。引率の5年生は、あやしたり勇気づけたりしてくれました。5年生達の頼もしさが印象に残りました。垣生小は、隣接していた旧垣生中の移転に伴い広々とした敷地を持っています。グランドも体育館も二つあります。5年生の子達に教えてもらったのですが、クラスの増加に対応して、この5月に新しい校舎が完成しました。旧校舎の中間に新しい職員室が移っていました。ドアや窓枠が木で出来ている暖かな校舎でした。垣生小は来年度も生徒が増えるそうです。垣生町内には新しい住宅が続々と建っています。松山でも数少ない人口増加地域です。 
  10日   高血圧の評価は耳鼻科でも大切です。めまいや睡眠時無呼吸症候群、鼻出血の方には、当院でもほぼ全例の方で血圧をチェックしています 高血圧の診断基準は、至適至適血圧<120/80≦正常血圧<130/85≦正常値高血圧<140/90≦Ⅰ度高血圧<160/100≦Ⅱ度高血圧<180/110≦Ⅲ度高血圧 です。当院での処置や検査で家庭血圧よりも血圧が高くなる白衣高血圧や、早朝夜間高血圧、血圧サージなど非医療環境下で血圧が高くなる仮面高血圧など、当院での診察時の一時点だけの血圧で高血圧の状態を判断できる訳ではありませんが、やはり鼻出血時など極度の緊張状態でも血圧が極端に高ければ降圧が必要です。めまいでは日内変動も気になってきます。高血圧の評価や管理が望まれる患者様には、家庭血圧を記録するとともに循環器内科への紹介も適宜行っています。
 日本高血圧学会が、治療に直結する高血圧治療目標値を来年度から変更する予定になりました。臨床試験の最新データから、脳卒中や心血管障害のリスクを考えて従来より基準を下げます。変更予定の治療目標値は、一般成人130/80(従来140/90)、75才以上の高齢者140/90(150/90)、糖尿病患者130/80(従来と同じ)、脳血管障害患者140/90(従来と同じ)、冠動脈疾患疾患患者130/80(140/90)、蛋白尿陽性の慢性腎臓病患者130/80(従来と同じ)となります。当院でも高血圧のお薬を服用している患者様は多数おられます。新しい目標値では、高齢者でも140以下にしなさい、糖尿や狭心症、腎臓病の人は若者並みの130にしなさい、となります。私の昔のイメージからすると、”血圧120台でも降圧剤飲んでるの”という印象の方が増えそうです。”下げ過ぎではない”との認識で対応しようと思います。

 世界の医療保険制度も様々です。国民皆保険制度の日本や医師の多くが公務員待遇の英国の対極に、民間医療保険が主流の米国や国民医療費が無料の湾岸諸国があります。以前、私は趣味?で各国の医療保険制度や米国の制度を調べていました。米国のオバマケア、トランプ政権下のオバマケア廃止法案に対する共和党内の不調和など、トランプ大統領の動向は医療政策面でも目が離せません。
 米国とともに世界的に注目されそうなのが、インドのモディ政権が導入した、来年の総選挙に向けたばらまき政策との批判もある巨大医療保険です。この新医療保険では1億人の低所得者に日本円で年間最大78万円の医療費を支給するというものです。インドは、中国の次に急速な経済発展を遂げることも予想されていますので、案外、この政策も上手く回っていくかもしれません。しかし、一部負担金の無い制度なら、平均寿命が短く乳児死亡率も高いインドの医療費の急膨張は凄いことになりそうです。もう今の日本では試すことの出来ない政策です。オバマケアの代替法案ヘルスケア・フリーダム・アクト(スキニー法案)とともに、遠い東洋人の私ですが成り行きに注目です。

 3面記事(スマホ時代には古い言葉になってしまいました)によると、ロンドン・サザビーズオークションで、路上芸術家バンクシ―の有名な絵画が1億5500万円で落札されたとのこと。ニュースになったのは、なんと落札された直後に額縁に仕掛けられたシュレッダーで絵が自動裁断されたためです。絵は半分ほど裁断されて止まったようですが、この様子を作家自身がSNSに動画を投稿しました。面白いのは、このことで作品の価値が増し今後倍近い価値になるとの予想があることです。数多いる路上芸術家でサザビーズに登場するほどですから、凄いオリジナリティーが作品にあるのでしょしょうが、この遊び心も凄いオリジナリティーです。氏の画集を見たくなりました。
 
  8日   医師向けの情報サイトにこんな記載が、、”院長も年を重ねたせいか、我慢の限界点が低くなったようだ” 記事では、ストレス社会で不定愁訴を訴える患者さんが増えてきており、医学的に説明のつきにくい症状の患者さんも多いことから、院長にイライラした様子があるなら診察を小休してみたら、と述べていました。この記事を読んで、私も身につまされました。早口でまくしたてるように説明する、患者さんの言いたいことを遮って説明を始める、私も自覚があります。半年前、実際に患者様から指摘されたこともありました。(その患者様には有難かったです) 予定の待ち時間より時間が押している時でも、いかに慎重に、いかに余裕を持って診察するか、そして患者様が安心して治療を終えることが出来るか、心して診察したいと思います。

 10月2日の「Windows10 October 2018 Update」でアップデートを実行すると、ファイルが勝手に削除されてしまう不具合が一部で確認されたことから、Updateがマイクロソフトのサーバーレベルで中止されています。思えばこの春、前のパソコンがWindows10の再起動ループに陥って起動しなくなってしまいました。話題にもなった更新KB4056894の不都合に当たったみたいです。パソコン工房で見てもらったところ、初期化しか手はありませんでした。完全初期化は再設定が大変です。おかげで丸2日間は復旧に時間をとられてしまいました。WindwsのUpdateは鬼門です。Windows10のエディションHomeにはProのような自動更新をユーザーが勝手に止める設定はありません。ハーっ、Updateが怖いです。

 昨日7日、奈良興福寺の中金堂の落慶法要が始まり、同夜には落慶記念コンサートも行われました。これほど大規模な木造建築の建立は、世界的にも今世紀はもう無いだろうといわれています。
 私が学生時代に抱いていた日本の町のイメージでは、標準語圏は落ち着かないこともあり、若いころ住むなら神戸が、年老いて住むなら奈良がいいだろうでした。私にとって奈良は憧れの町でした。思えば京都で浪人時代を送っていた1980年10月17日、受験を前にしながら東大寺落慶記念コンサートを見に行きました。(-_-;) あの時の大仏様のお顔、東大寺の匂いや流れる音楽はま心に残っています。
 興福寺は藤原氏の氏寺で、平安時代には南都7大寺の中でも最も勢力を誇りました。源平合戦時の平重衡の南都焼討で一時勢力は衰えましたが、武士の時代の鎌倉室町時代にも僧兵を有して強大な力を持っていたために幕府は守護を置けませんでした。応仁の乱の発端にも興福寺支配下の大和国の情勢が大きく関わっていました。奈良公園を散策する際には、奈良時代を巡るには東大寺ですが、鎌倉室町戦国時代に思いを馳せるなら興福寺です。”鹿と猿沢の池、五重塔”も奈良らしいですが、中金堂の復元で、近鉄奈良駅から東大寺に向かう散策がまた楽しくなりそうです。今後、南大門や経蔵、鐘楼、回廊基壇の復元も進むそうで、完成すれば奈良公園に東大寺級のお寺がふたつ並ぶことになります。いかにも壮観です。
 落慶記念「明日を拓くコンサート」の出演歌手は、泣きっぱなし歌姫、ショッピングモールの歌姫、半崎美子さんです。私も半年前「情熱大陸」で知って気になっていた方です。少しハスキーな歌声は、手嶌 葵さん、門脇 麦さん、松崎ナオさん(NHKドキュメント72時間の主題歌「川べりの家」)とともに、癒されます。3年後くらいには紅白に出場して、お父様を泣かせてほしいです。
  YouTube 半崎美子 「感謝の根」 「明日を拓こう」(北海道の自然が優しいMVです)  
  7日   注射によって抗原を負荷する皮下免疫療法(SCIT)が欧米で報告されて100年、舌下に負荷する舌下免疫療法(SLIT)が始まって30年経ちます。抗原を負荷する免疫療法は、現時点では唯一、長期寛解や治癒が期待できる治療法です。我が国では、2014年10月にスギのSLITが、2015年11月にダニのSLITが始まりました。スギのSLITが始まって丸4年経ちました。当院でもこれまで、3年経って治療を終了した人、転勤で他院に紹介した人を含めて約20名の方にSLITを行ってきました。この治療は、認定医の下で1ヶ月毎に必ず診察で経過を見ることが定められていますので、当院で治療を脱落した方はおられませんでした。治療開始によって全国的な臨床成績も明らかになってきました。今日は、SLITの作用、有効性、副作用をまとめたいと思います。
 SLITの作用も様々な研究成果が出てきています。口腔粘膜の樹状細胞に作用して、抗原提示機能からIgAやIgGが産生され阻止抗体となる、炎症抑制性サイトカインが産生されるなどの考えがあります。治療開始に伴って一時的にIgEは増加しますが、数か月~1年で減少に転じます。遅延型反応はより早く減弱します。
 効果では、市販前調査では、スギで、10%が症状消失、70%が症状軽減、20%が改善なし。治療開始1年後の改善例が75%、2年目が85%。40%でヒノキ花粉時期も有効。ハウスダストなど他のアレルギーもあれば効果弱いとされていました。ダニでは、ミティキュアダニで3ヶ月後より症状軽減、1年後に有意な症状軽減。アシテアダニで1年後に有意な鼻症状軽減、総合評価で著明改善22%、軽度以上改善58%とされていました。スギの2年目の中間解析では、1/4で寛解、1割は治療効果なしとの報告があります。予防的に行われた例では、スギで新規感作の予防効果あり、ダニのSCITでも1/4で喘息の予防効果ありとの報告があります。効果の持続に関しては、スギのSLITを3~4年行うと3年間は効果が持続との報告や、4~5年間の治療で7~8年間の寛解維持を期待するとの考えもあります。このような背景から、薬剤の添付文書上は、スギで2年間(3年間が望ましい)、ダニで3年間が推奨と記載されていますが、WHOも治療期間は3~5年が良いと発表しました。
 副反応では、SCITで全身反応の副作用が0.025-0.13%、アナフィラキシーが1000-4000回に1回、2330万回で死亡例1例。スギのSCITでは副反応が0.86%、SLITでは2.3%ですが、SLITでの副反応は軽度のものが多いとの報告が欧米から出ています。わが国のSLITでは、スギで、市販前調査では重篤な副作用報告は無く、13.5%に口内炎、舌下腫脹、口腔内腫脹、咽喉頭掻痒感、耳掻痒感、頭痛などの副作用が認められ、発売後2年半では1069例の副作用報告があり、ほとんどが口内の軽い腫れやのどの違和感だが、5例でじんましんやアナフィラキシー症状などの重篤例あり。ダニでは、国内臨床試験では、ミティキュア627例・アシテア989例ではアナフィラキシーショックなどの重大な副反応は報告されず、ミティキュア63.%・アシテア68%で口内炎、舌下腫脹、口腔内腫脹、咽喉頭掻痒感、耳掻痒感、頭痛などの副作用が認められています。
 スギとダニの同時治療(併用治療)についてですが、国外でも同時治療の確立されたデータがないことから、わが国の添付文書上でも「他の減感作療法薬との併用の経験はないが、併用によりアナフィラキシー等のアレルギー反応を含む副作用の発現が増加するおそれがあることから、併用する場合には十分注意すること」とあり同時治療は勧められていません。しかし、今年の日耳鼻総会でも、同時に投与する試みが大学病院より出てきました。今後、大学病院を中心とした多施設での併用による効果と安全性を評価する共同臨床試験の実施が待たれます。
 SLITを新たに希望する患者様とは、以上のような最新の知見を基によく相談したいと思います。 
  6日   台風25号の影響で晴れているのに風の強い1日でした。昨夜はひんやりとした雨模様で、今日の松山の最高気温は32℃と真夏日並みです。夏から続いて乱れた気候が続いています。秋の気候では落ち着く人の多いメニエール病ですが、今日は悪化により来院された方が目立ちました。

 最近、私がチェックした話題を。

 水痘帯状疱疹の迅速キットが発売されました。耳鼻科領域でも顔面の三叉神経領域の帯状疱疹による顔面痛は、極早期には疱疹が出ないことから病気の鑑別に苦慮するケースがあります。顔面神経麻痺や反回神経麻痺も、帯状疱疹ウイルスの再活性化によるものは回復が悪い場合が多ことから、早期に診断できれば抗ウイルス薬の投与で悪化が防げます。顔面神経麻痺では、発症初期に耳介や外耳道、軟口蓋に疱疹が生じる場合があります。私も必ず確認する所見ですが、早期の水泡の診断にも、今回の迅速診断キットも役に立つケースがあるかもしれません。今後、学会報告や論文で耳鼻科領域での活用事例が出てくれば、私も迅速キットを活用するかどうか検討したいと思います。

 中耳炎から検出された肺炎球菌の82%がマクロライド系抗生物質に耐性であると、新潟大学より報告されました。当院でもマクロライド系の、クラリス、クラリシッド、ジスロマック、ルリッドは活用しています。小児の急性中耳炎で症状が強いのは肺炎球菌によるものですが、肺炎球菌ワクチンの普及により、中耳炎の起炎菌では、肺炎球菌が減りインフルエンザ桿菌によるものが増えています。肺炎球菌によるものにはペニシリン系が有効で、インフルエンザ桿菌によるものにはマクロライド系が有効です。当院では中耳炎が遷延化するケースでは、出来る限り起炎菌を同定して抗菌剤を選択するようにしています。

 睡眠時無呼吸症候群SASに関して、興味深い疫学調査が京都大学より報告されています。30~80代の男女7千人の中で、12%が中等から高度のSASで、高血圧が健常人の2.4倍見られました。糖尿病も、男性は関連はみられなかったものの、女性では閉経前で28倍、閉経後で3倍見られたとのことです。当院でもSASが疑われる方には、必ず血圧もチェックしています。私の印象でも、メタボリックな体形の方では高血圧との相関はかなり高いです。今回の報告では、女性で糖尿との相関があるとされています。このあたりの疫学的な因果関係も、今後、注目してゆこうと思います。

 この11月までに、2007年より続いているタミフルの10代への使用の制限が解除されます。厚労省の研究班で、タミフルと異常行動の因果関係は、服薬の有無や他の薬剤との大きな差は無かったとのことです。10代の異常行動についての発生頻度も報告されており、興味深いものでした。タミフルによる異常行動は処方100万件当たり6.5件、他の3種の治療薬は3.7~36.5件、服薬のないケースで8.0件でした。インフルの自然経過でも、12万5千件に1件の割合で異常行動が発現する計算になります。服薬してもしなくても、10代の男性の発熱後2日間に起きやすいことも報告されました。当院でも服薬の有無に関わらず、発症後2日間は異常行動の発現に注意するよう、本人と保護者の方には注意喚起したいと思います。 
  5日   今日は地方祭初日、子供たちの提灯行列の勇ましい声が診察室まで漏れてきました。心配されていた空模様ですが、夕方には雨は上がっていました。子供達の願いが届いたのでしょう。

 のどの診察をしていると、時々、口の中に白い乳頭状の腫物のある方を見かけます。このために症状の出る人はありません。外来では珍しいものではありません。これは乳頭腫という良性腫瘍です。
 耳鼻科領域では、副鼻腔の中に出来る内反性乳頭腫があります。局所浸潤性が強く、骨を圧排吸収して広がることから手術的に取り除きますが、再発が多いことと、まれに癌化することで問題となります。また、喉頭に出来る喉頭乳頭腫もあります。徐々に声が出にくくなり日常生活にも支障がでます。これも再発し易く、癌化の可能性もありますので、レーザーなどで焼灼します。
 乳頭腫の多くはヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の感染によって起こります。微細な粘膜損傷部位から80%が感染しますが、免疫の力で暴露から1~2年で多くは消失し、持続感染するのはその内の10%です。持続感染している粘膜や皮膚に外的刺激が加わって乳頭腫が発症します。子宮頚癌の主要な原因となっています。 耳鼻科領域では前述のように副鼻腔乳頭腫や喉頭乳頭腫が以前から問題になっていましたが、近年、扁桃癌との関連性も明らかになっています。従来から解っていた飲酒喫煙が引き金と考えられる扁平上皮癌は壮老年に多いのですが、HPV感染に伴う扁桃癌は青壮年に多いです。リンパ節転移が扁平上皮癌より目立ちますが、遠隔転移は少ないために予後が良いとされています。
 口の中の乳頭腫を口腔内乳頭腫症と呼びます。私も以前は”悪さはせず、大きくならないもの”との認識で特に切除はせずに経過を見るだけのことが多かったのですが、最近の扁桃癌への新たな知見との兼ね合いから、扁桃腺の表面に生じた乳頭腫をどのように扱うべきか気になっていました。文献を検索してみると答えが得られました。HPVには皮膚で増殖するタイプと、粘膜で増殖するタイプがあります。粘膜で増殖するタイプも悪性化しやすい高リスク型と低リスク型があります。扁桃癌などの咽頭癌で検出されるHPVの多くが高リスク型のHPV16で、口腔で検出されるものの多くは低リスク型のHPV6やHPV11です。低リスク型が20~30年後に高度細胞異型を起こすのは5%、癌化するものは1%で、口腔内乳頭腫が癌化する可能性は無いか極めてまれと考えられています。私もホッとしました。これからも経過観察を主体にしたいと思いますが、増殖傾向が顕著な場合や希望される方には、切除や焼灼、組織検査を行う方針で臨みたいと思います。 
10月 2日   10月です。台風一過の秋晴れが爽やかです。経済も秋晴れです。日経平均株価は27年振りの高値です。市内の通りには地方祭に向けて紙垂(しで)が飾られています。台風の暴風雨を乗り越えて、市内を”清浄”にしています。5日の宵宮、6日の本祭には提灯行列が始まります。子供たちの”もてこーい”の元気な掛け声が待ち遠しいです。

 冷え込みとともに、少しづつ鼻かぜの治りにくいお子様が増えてきました。連動して滲出性中耳炎になったり、治りにくくなってくる小児も徐々に増えつつあります。中耳への換気が悪い体質の小児は冬本番には本格的に治りにくくなる傾向があります。秋の滲出性中耳炎は、鼓膜切開や鼓膜チューブ留置まで至らずに鼻炎の治療だけで治って欲しいです。

 10月はノーベル賞の季節でもあります。本庶佑先生、医学生理学賞の受賞、おめでとうございます。オプジーボの登場で、頭頚部癌の治療の選択肢も増えました。4年前に登場したオプジーボの最初の適応は、皮膚科領域の悪性黒色腫でした。頭頸部でも鼻腔悪性黒色腫など原発する場合もまれにはあります。悪性黒色腫は癌の中でも最も悪性度の強いものでごく初期でなければ予後は悪かったのですが、オプジーボの登場で5年生存率の改善は目を見張ります。続いて非小細胞性肺癌、頭頸部癌、切除不能胃癌と適応が広がりました。頭頚部癌でもステージ4などの手術が出来ない進行癌での劇的な治療効果も報告されています。私が直接癌治療に携わっていた当時は、ステージ4であれば、医師の立場でも祈るような気持ちで副作用との利害を天秤にかけて抗がん剤を投与し、対処療法、全身管理を行うのが精一杯でした。オプジーボをはじめキイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害剤の登場で、ステージ4でも寛解に持っていけるケースが出てきました。基礎医学から臨床の癌治療への応用、本庶先生の研究は素晴らしいと思います。オプジーボの薬価は、当初、1瓶(100mg)約73万円でしたが、今年の11月には17万円にまで下がります。それでも高価で、効果には個人差が大きく、有効例は適応疾患に限っても2割程度です。欧州では高薬価なために費用対効果の少ない薬剤は保険適応にしないとの方針も出てきています。薬価が下がったことから適応外の癌でも自費で試したいというケースも増えると考えられます。増え続ける国民医療費の中でどこまで医療保険で負担するのか、これから国民的議論が必要となってくるでしょう。本庶先生のPD-1の研究が、いかにして創薬に結び付いたのか。このあたりの医療経済学的なドキュメンタリーにも興味があります。
 今日はノーベル物理学賞も発表されました。米仏加の研究者によるレーザー研究が受賞対象でした。研究業績は視力回復手術のレーシーックにも応用されています。レーシックもノーベル賞級の技術革新で可能になっていたのですね。

  反回神経麻痺、顔面神経麻痺、術後性頬部嚢腫、扁桃乳頭腫、クループ症候群など。 
     
  30日   今日診察された方々の帰路は如何だったでしょうか? 診察時間帯には、当院までも石手川の放流の警告サイレンが聞こえてきました。松山は”石鎚山に守られて”暴風の無い台風24号でしたが、西条を中心とした東予の水害が心配です。その後、台風は伊勢湾台風のコースよりは北寄りの進路を辿っています。私は小学5年~中学1年を三重県鈴鹿の朝日ヶ丘小学校、白子中学校で過ごしました。日曜日になると鈴鹿サーキットのバイクレースの轟音が聞こえてくる土地柄でした。当時はまだ中京地方では、日本の台風観測史上5098人という最大の死者数を出した伊勢湾台風の経験談が多く聞かれました。台風24号で中京地方の高潮被害が無ければ良いのですが。

 秋花粉の季節もピークを迎えています。5月を中心とした春はイネ科花粉が中心ですが、秋はイネ科とともにキク科の花粉も飛散しますので、花粉の種類が多いのが特徴です。イネ科花粉で代表的なのはカモガヤですが、イネ科は共通性抗原の部分が多いために、4月上旬の裸麦の花粉に始まって、4月のハルガヤ、5月のカモガヤ、オオアワガエリと梅雨入りまで続き、さらにお盆明けから11月初頭まで長期に飛散しますので、長期間症状の続く方もいます。一方、キク科花粉は共通性抗原の部分もあるものの完全には一致していないために、ヨモギやブタクサを個別に感じることになります。また、キク科はイネ科よりも背丈が1m前後と低く、花粉粒子も大きいために遠くには飛散しません。イネ科が100~200m飛散するとすれば、キク科は数10mです。このため雑草に近づかなければ、イネ科よりも予防できるのがキク科です。
 花粉抗原と食物抗原が共通性抗原であることから起こる口腔アレルギー症候群(OAS)は最近、花粉食物アレルギー症候群(PFAS)とも呼ばれます。OASでは、春のハンノキやシラカンバ花粉が有名ですが、秋花粉にもOASはあり、ヨモギはセロリ・ニンジンなどの野菜類、ブタクサはスイカ・メロンなどのウリ科で反応します。多くは学童期以降に発症します。抗原性は低いことが多いので、エビ・カニ・そば粉・ナッツ類・ゴマのようにアナフィラキシーのような激症のアレルギー反応を起こすことは少ないとされます。私もOASで喉頭浮腫や喘息発作は経験したことはありません。OSAの方は、必要以上に神経質になって原因食材を完全除去しなければいけない必要性は少ないのですが、体調の悪い時に大量に摂取してアレルギー反応が強くならないように注意はしていて下さい。この病気が疑われる方は、特異的IgE検査という血液検査で個別にアレルギーの有無が確認できます。検査を希望する方は診察時にお伝えください。 
  29日   記録的な暴風が予想される台風24号が明日午前中に松山に最接近します。既に沖縄では観測記録史上の最大瞬間風速を記録しています。明日、受診予定の方はくれぐれも足元にご注意下さい。

 ここ数日、めっきり冷え込んできました。2日前の夜は肌寒い雨で、その後もひんやりとした朝晩です。今日も午後から台風接近で気圧が低下してきました。気道過敏症やメニエール病、片頭痛、天気痛の悪化した方が目立ちます。
 先々週、湯山小学校で学級閉鎖が報告されたインフルですが、その後、愛媛県での流行の広がりはありません。しかし全国的には、9月からの今シーズンで既に15の学校施設で学級閉鎖が報告されています。昨年より多いという訳ではありませんが、全国各地より報告されています。インフルも少しずつ通年発生の傾向が出てきています。
 大流行のRSウイルス感染症は、先週ピークを越えました。当院でも目に見えて迅速検査陽性の方は減ってきました。

 先日、googleストリートビュー(インドアビュー)のために院内の撮影を行いました。キャンペーン中ということで、掲載を決めました。1~2ヶ月後には、Googleマップ上で、当院の待合室まで入れるようになります。撮影機材を見せてもらいましたが、リコー製のスマホサイズの360度魚眼レンズで、あっという間に撮影は終わりました。通りを撮影する車の写真は見たことがありました。こちらは車上にソフトボール大の目立つカメラが付いていたのですが、こんなにコンパクトなカメラで撮影していることに驚きました。また、撮影担当の若い方の、タブレット端末を扱う指さばきの速さにも驚かされました。若い人のIT機器への順応に比べ、私は置いて行かれています。

 今日は”耳掃除”のお話を。
 昨年1月、米国の耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会が臨床診療ガイドラインの中で耳掃除に関するガイドラインを発表しました。耳掃除までガイドライン?とも感じましたが、耳鼻科臨床の中で、耳掃除のトラブルで傷をつけたり聞こえなくなって来院する患者数は少なくはありません。当院でも同様です。耳を描き過ぎて外耳炎や鼓膜炎の痛みで来院する方、柔らかい耳あか(軟耳垢)を綿棒で押し込んだり、お風呂の水が入って急に聞こえなくなる方は珍しくありません。また、風邪症状で来院した小児の耳を診察する際に、保護者の方が少しずつ耳垢を押し込んで、鼓膜が見えなくなっている乳幼児も珍しくありません。この臨床ガイドラインを読むと、私も耳掃除の問題点を改めて再認識しました。
 このガイドラインは、柔らかい耳垢の人が多い欧米人を基礎にしています。白人と黒人の3/2は軟耳垢、黄色人種は1/3が軟耳垢です。英語では耳垢を”イヤーワックス”と、日本では”耳あか”と表現しますが、このあたりにも人種の差が出ているようです。ガイドラインでは、明確に耳掃除を否定したということで話題になりました。一時、日本でも流行ったイヤーキャンドルも使用すべきでないとしています。
 耳垢は鼓膜の皮膚層が線毛運動で外耳道の外側で剥奪して生じます。耳垢には、ほこりなどの異物を捉えて奥に入らないようにすることによって外耳道を清潔にして保護する働きがあるとしています。正常時は、外耳道皮膚の線毛運動と咀嚼時の顎関節の刺激、入浴時の加湿などによって、耳垢は自然に外に出てきます。ガイドラインでは、過度の耳掃除は、外耳道を傷つけたり耳垢を蓄積する可能性があるとしています。
 耳掃除のポイントとして、1)耳掃除をし過ぎない 2)外耳道に異物を入れない。綿棒、耳かきで外耳道や鼓膜、耳小骨、内耳を障害する可能性がある 3)難聴、耳閉感、排膿、出血、耳痛があれば受診する 4)自分で耳垢の詰まりを除去しても良いか医師に相談する。特定の全身疾患または耳疾患がある場合は、耳掃除が安全でない場合がある 5)耳垢による不快感があれば、布で優しく耳をふき取る 6)痛みがあれは、診察処置の必要がある としています。
 間違った耳掃除で耳垢により難聴を来す例が、小児で10%、成人で5%、特に高齢者や発達障害を抱える人の間で高いとのことです。私も高齢者施設を往診した際に、耳垢栓塞の方の割合が多いことにビックリしたこともありました。このガイドラインは、耳掃除の重要性と問題点をよく啓蒙していると思いました。 
  24日    22日土曜日は、医事会計ソフトであるレセコンが、開院以来初めて突然ダウンしました。急遽、会計は頂かない方針で診療を続けさせて頂きました。当院では電子カルテは採用していませんので診療は続けることが出来ました。当院のレセプトも8年目になり更新の時期でもあるのですが、電子カルテ化しないのであれば現在のスペックで必要十分でしたので、半年前にハードディスクを更新したので大丈夫だと思っていました。急ぎ保守の方に見て頂くと、ハードディスク以外のトラブルもあり重症だったとのこと。代替機で対応しましたが、前日診療終了時のミラーリングのデータまでバックアップされていましたが、当日のデータはダウン前の分も含めて消えていました。連休が明けて紙カルテから入力し直します。受付スタッフにとってはかなりのストレスだったと思います。スタッフの皆に感謝です。恐らくマザーボードまでダメージを受けていたのだと思います。レセコンの更新をいつにするか。課題が増えました。(*_*;


 大河ドラマ「西郷どん」が佳境に入ってきました。前回が大政奉還、今回が鳥羽伏見の戦い、次回が江戸城無血開城です。今年は明治維新150年、遠いような近いような時代ですが、時代の変革期であるこの時代の歴史の登場人物達には、一人一人に凄いドラマがあります。
 「篤姫」放映時には。維新に登場する人物の伝記を読み漁っていましたが、今回も少し。岩波新書1345「勝海舟と西郷隆盛」を読みました。勝は、西郷が西南戦争で敗死した翌々年、まだ誰も朝敵となった西郷の記念碑など言い出せない時期に記念碑を建立しました。表には西郷の詩を、裏に勝自らの文を彫っています。そのなかで勝は、誰よりも自分が西郷のことを知ると刻んでいます。その後も勝は、生涯を通して西郷の名誉挽回と、西郷の遺児達への援助を惜しみませんでした。上野の南洲像の建立にも尽力しています。この本では、江戸開城談判を行った際には敵味方だった両者の交流と、勝の晩年や西郷の子息のその後を伝えています。
 西郷の奄美遠島時代の妻、愛加奈の子菊次郎は西南戦争で片足を失った後、隆盛の弟、西郷従道の下に寄宿した後、台湾の庁長(県知事)として公共工事に功績を残し、晩年は京都市長を務めました。西郷の弟で戊辰戦争の新潟で戦死した吉二郎の遺児 隆準と、菊次郎、西郷の後妻 お糸の子 寅太郎の3名は勝の尽力もあり、3人で同じ船で留学しています。西郷どんの登場人物のその後を思いながらドラマを見ると、より面白くなります。
 少し維新の歴史談義でも、、
 江戸幕府の公家諸法度により、天皇は京都市内の行幸も基本的に認められていませんでした。つまり江戸時代はずっと御所に幽閉されていたとも言えます。
 維新の三傑は西郷、大久保、木戸ですが、世間の人気投票では、西郷、木戸に人気があり、大久保は腹黒い印象から人気は低いです。しかし私はこの中では、大久保利通が最も好きです。私が尊敬する政治家は、中学生時代には足尾銅山の鉱毒事件を死を覚悟で明治天皇に直訴した田中正造でしたが、今、私が凄いと思うのは大久保です。維新の流れの中で、国家を導くビジョンは誰よりも凄かったと思います。その後を継いだのが伊藤博文です。
 軍事面での維新の立役者は、西郷と坂本龍馬が有名ですが、私が一番凄いと思うのは、岩倉具視です。西郷どんの鶴瓶さん演じる関西弁の岩倉はご愛敬ですが、慶喜追討の偽?密勅作成など、肝が据わっています。維新期の陰謀論には色々あります。竜馬暗殺に、幕府も含めた合議制を目指した竜馬を疎ましく感じた西郷が関わったというのもありますが、岩倉具視が孝明天皇の毒殺に関わったとの論もあります。それがあながち嘘ではなさそうと感じる凄さが岩倉にはあります。私は浪人時代に京都の岩倉で1年過ごしました。近くには岩倉具視の幽棲旧宅もあり、身近に感じていました。
  19日   昨日の外来では、小学校低学年や幼稚園の子供達に手足口病が目立ちました。県下で今シーズン検出されているタイプは、コクサッキーウイルスA16型(CV-A16)です。髄膜炎を誘発しやすい最も鬱陶しいタイプはエンテロウイルス71(EV71)ですが、幸いにもこのタイプは2014年以降流行していません。2011年以降にはCV-A6が主流で流行しました。CV-A6は手足の水疱が目立ちます。体の中心部まで水疱が広がったり、爪の周囲が剥がれたりします。今年流行のCV-A16は最もおとなしいタイプです。来院した子供達も、口内炎は目立ちましたが手足の水疱はわずかでした。それでも、口の中に口内炎が20~40個もできればかなり痛いです。時には舌に大きな口内炎も出来ます。手足口病のウイルスに直接効くお薬はありませんので治療は対処療法が主体となりますが、トラネキサム酸やアズレン含嗽、口内炎の状態によっては軟膏、手足口病のウイルスはエンテロウイルス系で腸内で増殖するために軟便にもなり易いですので整腸剤など、お子様の状態に応じて処方しています。

 昨年6月に、わが国の「成人に対する人工内耳の適応基準」が変更されました。人工内耳は、人工臓器の中でも最も成功した臓器と言われます。わが国でも1994年に保険適応となって25年になります。これまでの適応基準では、従来ほとんど音の聞こえない「純音聴力90dB 以上の重度感音難聴」から、耳元で大声の聞こえる「平均聴力レベル70dB 以上の高度感音難聴」まで適応が拡大されました。ただし「適切な補聴器装用を行った上で、装用下の最高語音明瞭度が50%以下」との条件は付いています。また、これまで適応外だった「CT やMRI 画像で蝸牛に電極を挿入できる部位が確認できない場合」や「活動性の中耳炎、重度の精神障害、聴覚中枢の障害、重篤な合併症などの感染症や疾患」も慎重適応となり、場合によっては適応出来ることになりました。つまり、音はわずかに感じるが補聴器をしても会話は聞き取れないケースで、人工内耳の選択肢が増えました。人工内耳は、内耳の中に多チャンネルの電極を埋め込んで直接内耳の細胞を刺激して音を認識させるシステムです。埋め込み手術の1~3週間後に、個人に合わせて「マッピング」した音を「音入れ」して、言語聴覚士の方と共に訓練していきます。訓練する必要はありますが、多くの方が会話が聴き取れるようになって感激するといいます。治療を受けられる実施施設は全国で114か所、四国では各県の大学病院の耳鼻咽喉科のが、愛媛県では愛媛大が人工内耳の治療施設となっています。当院でも、”補聴器を付けていても徐々に聞こえなくなって”会話がほとんど聴き取れなくなった”方には、資料をお渡しして、人工内耳の適応が可能か?適切か?を大学病院に紹介して判断して頂こうと思います。 
  17日   昨日は、運動会で体調を崩した小学生が来院されました。今週、来週が運動会のピークです。猛暑も去り、子供達は元気で運動会を迎えて欲しいです。

 先週の10~12日に湯山小学校でインフルによる学級閉鎖が報告されましたが、番町小学校や、当院近隣の余土小学校でも発生しようです。集団発生には至っていないようで、今シーズンまだ当院ではインフルの患者様は見られていません。

 14日、松山市保健所より松山市内で40才代男性の風疹発生の報告がありました。関東を中心に5年振りに流行している風疹ですが、松山での発生は初めてのようです。全国的には、風疹報告患者の9割が成人で、男性が女性の3.5倍、男性は20~40才代に多く、女性は20才代に多くなっています。妊婦さんへの感染予防が重要ですので、妊娠可能年齢の女性が近くにいる男性も予防が大事です。当院では、もう10年以上、麻疹は診ていませんが、特に成人男性の方の風疹には注意したいと思います。
 風疹は、風疹ウイルスによる飛沫感染で感染し、潜伏期は約2~3週間、耳介後部のリンパ節腫脹の2~3日後に、発赤を伴った小丘疹が2~3日かけて全身に広がります。半数の例で発熱が同時に出現します。多くの例で口腔内にフォルヒハイマー斑(Forchheimer spots)という点状の紅斑・紫斑が見られます。結膜充血も見られます。全く症状の出ない不顕性感染も2割あり、皮疹は溶血性連鎖球菌による猩紅熱、伝染性紅斑、修飾麻疹、エンテロウイルス感染症、伝染性単核球症、薬疹との鑑別が必要になります。診断には、発疹出現4日後以降であれば、風疹IgM抗体陽性となり診断がつきます。有効な抗ウイルス剤はないため、治療は対症療法です。妊娠20週までの抗体を持たない妊婦さんが感染すると、先天性難聴などを来す先天性風疹症候群(CRS)を起こす可能性があることから、妊婦さんの感染には最大限注意します。

 一昨年に当院が参加した「急性中耳炎の起炎菌に関する全国サーベイランス研究」の論文別冊が研究グループ(慶應大感染症学教室と国立がん研究センター中央病院)から送られてきました。Pediatric Infectious Disease Journal(PIDJ)に6月に掲載された「 Etiology of Acute Otitis Media and Characterizarion of Pneumococcal Isolates After Introduction of 13-Valent Pneumococcal Conjugate Vaccine in Japanease Children 」です。長いタイトルですが、肺炎球菌ワクチン導入後の急性中耳炎起炎菌としての肺炎球菌の変化を解析した研究です。当院もこの論文の中で協力施設として記載されています。当院の臨床データが世界に発信されたことは、私としても協力のし甲斐がありました。当時、急性中耳炎の中耳滲出液の提出に協力頂いた方には、改めて感謝します。

  急性喉頭蓋炎、ワルトン管内唾石による急性顎下腺炎など。 
  10日   一昨日このコーナーでも紹介していた松山市のインフルの情報ですが、昨日10日より3日間、湯山小の2年と4年の各1学級で学級閉鎖となりました。愛媛県では97/98シーズン以降では2015/2016シーズンに次ぐ早さだそうです。昨日は市内中心部の小学校でもインフルが発生したとの情報もあります。松山市西部の当院周辺ではまだ情報はありませんが、インフルの発生には警戒したいと思います。

 ここのところ当院では、良性発作性頭位めまい症(BPPV)の方が目につきます。
 BPPVは回転性のめまいを起こす病気の中では最も頻度が多いものです。頭を動かすと、急に激しいめまいが起こりますので、体験された方は言い知れぬ恐怖を覚えます。しかしBPPVだと確定診断されると、命に関わる病気ではありませんので、患者様は安心します。耳石置換法という体操を行うと劇的に改善するケースもあり、耳鼻科の神の手と紹介されたこともあるこの方法で患者様が劇的に治ると、私も医者冥利につきます。このようにBPPVは”希望の持てる”病気です。
 体の加速度を感じる三半規管はお互いに直角に3つの管が位置していて、その中はリンパ液で満たされています。半規管の根元にはクプラという部分があり、ここにある細胞がリンパの流れを感知して加速度を認識します。三半規管と内リンパ液で繋がる卵形嚢は重力を感じる器官ですが、重力を感じるために細胞(平衡斑)の上に耳石が乗っています。この耳石が剥がれて三半規管に脱落・迷入することにより、頭を動かすと急な回転性めまいが起こります。耳石が剥がれる原因は多様で、内耳の血流不全や、なでしこJAPAN澤穂希選手で有名になったような頭部打撲、50~60才代の女性に多いことから更年期障害やカルシウム代謝異常からの耳石粗鬆症もあるといわれます。半規管内に迷入した浮遊耳石による内リンパ流動によるものを半規管結石症、クプラに付着した耳石によるクプラの偏移によるものをクプラ結石症といいます。耳石が脱落する半規管でみると、立った時に最も低い位置にあり耳石が落ちやすい後半規管が最多で、水平(外側)半規管は10~30%,高い位置にある前半規管は2%とされます。
 1~4週間で浮遊耳石が吸収され、本来の耳石が再生されることにより自然治癒しますが、治療では、頭を動かすことによって半規管内に迷入した耳石を卵形嚢に排出させる頭位治療(浮遊耳石置換法)が行われます。後半規管型にはEpley(エプリー)法、Semont法があり、水平半規管型には主にLempert(レンパート)法が用いられます。当院でも、頭位眼振検査で外側半規管型が水平半規管型がを判断して、Epley法を中心に積極的に行っています。この耳石置換法で3人に1人は直後に治るとの報告もあ、当院でも劇的に治るケースもよく経験します。
 しかし、水平半規管型および前半規管型では、専門的には検査で方向交代上向性頭位眼振や下眼瞼向き頭位変換眼振が見られることもあり、この場合、小脳出血のような後頭蓋窩の脳疾患の可能性もあります。BPPVの中に命の関わる病気が隠れていないか、このあたりにも注意して診断を進めなければいけません。また、一度
起こると後半規管型で30~40%は再発するともされますので、BPPVを起こしやすい体質が無いかどうかも確認する必要があります。内耳より頭蓋内に近い内耳道に良性腫瘍が出来る聴神経腫瘍でも頭位性めまいが引き起こされることがあり、この場合は徐々に進行するため癌ではありませんが悪性発作性頭位めまい症と呼ばれます。このような場合はCTやMRIなどの画像診断により精密検査が必要となります。




 当院でお世話になっている花屋さん、トップフローリストさんから、珍しいので病院で飾ってくださいとレインボーローズのプレゼントがありました。レインボーローズ の花言葉は「奇跡 」です。パッと見ると文字通り奇跡の花です。天然の花ではなくて、ホワイトかクリーム色などの淡い色のバラの茎を割いて食用着色料の入った瓶に生けておくと,茎が色がついた水を吸って花びらに色素が染みわたって着色して、出来上がるそうです。最近は結婚式のブーケにも用いられるそうです。なんとも素敵なブーケです。 
  9日   大坂なおみ選手、全米オープン女子シングルス優勝おめでとう! 大阪への台風襲来、北海道での地震と日本が大変な時に、大坂選手は希望を与えてくれました。東京五輪のテニス競技も楽しみになってきました。
 松山は秋雨前線の影響で昨夜から大雨が続いています。松山の今年の夏は、梅雨終盤の台風7号による西日本豪雨、猛暑、台風による雨、猛暑、台風による雨、猛暑、台風21号まで、恵みの雨ともいえる夕立が一切なく、見事に台風以外では雨が降りませんでした。秋雨前線通過でようやく涼しくなり本格的な秋が訪れそうですが、今回の雨も松山市内では避難勧告が出ているくらいで、なかなか穏やかな秋の訪れとはなってくれません。
  雲やどる 秋の山寺 灯ともれり 子規

 新学期の当院外来は、RSウイルス、手足口病、溶連菌咽頭炎が目立ち、ヘルパンギーナやヒト・メタニューモウイルスが散見されます。猛暑の名残で、外耳炎やメニエール病も目立っています。愛媛県のRSウイルスは、このまま推移すると、この夏が過去最高の発生頻度となる勢いです。
 堀田 修先生監修の「つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい」が早くも第4版となりました。この本で、慢性上咽頭炎の治療法「EAT(bスポット療法)」を実施する医療機関の一覧に当院が掲載されている関係もあり、遠方から受診される方が増えています。

 インフルのシーズンも9月から2019/2020シーズン入りとなりました。2年前と異なり全国的にはまだ沖縄以外でのインフルの発生はまばらのようです。もう17年連続になるでしょうか、やはり沖縄では1年中B型が発生しています。沖縄はRSウイルスも数年前から夏に多く発生する傾向にありました。感染症の流行パターンも、温暖化とともに?変化してきているようです。8月の愛媛県の報告でもインフルの発生は月初に1例のみでしたが、今週、松山市東部の小学校でA型インフルエンザが複数人発生したとの情報がありました。さすがに9月に学級閉鎖はなかなか起こらないと思いますが、私もインフルの存在も心にとめて診察を進めたいと思います。
 人工知能AIによるインフルエンザ早期診断法の開発に関する報道がありました。アイリス株式会社が8月27日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募したシード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援に採択されたとのことです。アイリスは機械学習の一つであるディープラーニング(深層学習)を用いて、インフルエンザに特徴的な所見の咽頭後壁のリンパ濾胞(インフルエンザ濾胞)の画像を解析することで早期診断を目指します。既にAIによる画像診断技術としては、眼底所見から緑内障や糖尿病性網膜症を判断したり、マンモグラフィー(乳房X線撮影)から乳癌を識別する、などの領域では実用化も目前となっています。遠くない将来には、CCDカメラで咽頭を撮影してパソコンに読み込ませて、病気の診断をAIで行うことも可能になるかもしれません。この写真では”インフルの可能性が65%、ライノウイルスの可能性が50%、アデノウイルスの可能性が45%、溶連菌の可能性が5%、ヘルパンギーナの可能性が1%、梅毒の可能性が1%、クラミジアの可能性は判定不能”などと回答がでてくるかもしれません。臨床医の私としては、リンパ濾胞を中心とした咽頭所見でインフルエンザが怪しいとは判断できますが、それだけでインフルか、他のウイルス感染か、細菌感染か判断するのは困難だと感じています。投資の世界では、AIを用いて日本株を運用した投資信託では、今年は軒並み運用成績が振るわないそうです。AI VS 専門医、私が臨床医を続けていられる時代に、医療の現場でどれだけAIが活用されるようになるのか、興味深々です。

 側音化構音、咽後膿瘍、急性顎下腺炎、シェーグレン症候群、扁桃縮小手術、鼻レーザー手術など。 
9月  3日   9月になりました。今日は始業式です。夏休みで真っ黒に日焼けした子供達も、これからは運動会の準備です。当院でも、夏休みは午前中の診察が込み合いましたが、これからは夕方に来院する子供達が多くなります。診察室のイメージビデオも花火や南の海から、コスモスや紅葉の番組に代わります。
 25年振り、第2室戸台風並みとされる台風25号が接近中です。松山は、コリオリの力のおかげで台風の風下になりそうですが、明日の朝には激しい雨や強風も予想されます。来院を予定されている方は、くれぐれも気を付けてお越し下さい。 
     
  28日   9月1日の土曜日は、当院スタッフの結婚披露宴が開かれます。そのため、当日は一日休診とさせて頂きました。土曜日が通院の都合の良い患者様も多いと思いますが、この節は、何卒、ご理解ご協力お願いいたします。翌日の日曜日は、しっかり診察させて頂きます。(^^♪

 今日は、好酸球性副鼻腔炎のお話を。
 大学時代にアレルギーを専門のひとつとしていた私にとって、好酸球の働きが徐々に解明されてきたここ30年の医学の発展は、とても興味深いものでした。好酸球性副鼻腔炎は、多発性の鼻ポリープ(鼻茸)を特徴とし、成人になっての気管支喘息も伴った増悪や、難治性で時に神経性の難聴の進行も見られる好酸球性中耳炎を合併することもある、耳鼻科領域でも一筋縄ではいかない病気のひとつです。
 30年前までは、副鼻腔炎と言えば蓄膿症であり、細菌性のものが大多数でした。当時はニューキノロン系の切れのいい抗生物質がありませんでしたので、難治性の副鼻腔炎では手術がオーソドックスでした。また、細菌性副鼻腔炎の慢性刺激ににより上顎癌などの副鼻腔の癌も目立っていました。CTが普及する前夜までは、片方の副鼻腔にだけ頑固な影がある場合には、癌の可能性も否定できないことから、片側性陰影があるだけでも積極的に手術を行っていました。その後、効果の高い抗生物質の普及、CT検査の一般化、内視鏡手術の導入などで、細菌性副鼻腔炎の多くはコントロールが可能となりました。
 その後、アレルギー性鼻炎の有病率が高まるとともに、アレルギー性鼻炎が基礎にあって細菌性の急性副鼻腔炎が慢性化する例が目立ってきました。その中に、細菌感染が目立たずに、アレルギー性鼻炎様だけれども一般的なアレルギー性鼻炎よりも粘膜の浮腫が強く、鼻のポリープが出来やすく、手術しても再発することの多いという特徴のある難治性の副鼻腔炎が注目されてきました。その粘膜やポリープの中には、顕微鏡で見るとアレルギー性鼻炎よりも明らかに好酸球が多いのです。このことから好酸球性副鼻腔炎という疾患概念が学会でも一般的となってきました。好酸球性副鼻腔炎で再発しないような手術手技はいかようか、などの学会発表も目立ってきました。
 アレルギー学の観点からは、この好酸球の役割がどうなのかが研究の対象になってきました。好酸球はもともと寄生虫感染で目立つ細胞ですが、一般的なアレルギー反応のある粘膜でも見られます。しかし、寄生虫感染でもないのに好酸球が目立つ好酸球性副鼻腔炎はどのような機序で発症するのかが問題となったのです。私は今でも、「好酸球は善玉か?悪玉か?」を論点としたシンポジウムが印象深く記憶に残っています。研究が進むにつれて、どうも好酸球は細胞障害性の悪玉であるということが明らかになってきました。
 1990年代のサイトカインの発見の後に基礎研究が始まると、好酸球性副鼻腔炎の発症機序も徐々に明らかになってきました。サイトカインは、細胞が分泌する細胞間の情報伝達を仲介する液性因子です。その中でも、インターロイキン(IL)と呼ばれるグループは免疫系細胞から分泌されて免疫のネットワークの伝達に重要な役割を担います。サイトカインを分泌する免疫細胞の代表がヘルパーT2(Th2)細胞です。これは、白血球の中のリンパ球に含まれ、リンパ球にはB細胞とT細胞があります。T細胞はさらにキラーT細胞とヘルパーT細胞に分類され、キラーT細胞はがん細胞やウイルスに感染した細胞などを攻撃し、ヘルパーT細胞がサイトカインを分泌し、B細胞やキラーT細胞の働きを助ける役割を担っています。ヘルパーT細胞は分泌するサイトカインの種類によってTh1細胞、Th2細胞、Th17細胞に細分されます。このTh2細胞が2型サイトカインと呼ばれるIL-4、IL-5、IL-13を分泌し、アレルギー炎症を起こしていることが解明されてきました。この反応を2型炎症(免疫)反応と呼びます。ここ数年で新たに、病原性記憶2型Th2細胞の存在も分かってきました。これは日本の研究グループによる大きな成果です。
 これらの研究成果をもとに、喘息領域では、気道過敏性亢進、好酸球やTh2細胞の気道浸潤、気道リモデリング、粘液産生などの病態解明が一気に進んでいます。続いて耳鼻科領域でも、好酸球性副鼻腔炎の病態が2型炎症反応によるものであることが明らかにされてきました。IL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインがIgE産生、好酸球性炎症、ムチン産生などを惹起することにより鼻ポリープが形成されることも分かってきたのです。私も長年の臨床上の疑問点が解けたような気持ちです!
 これらの研究を基に、アレルギー診療にも大きな変化が起こり始めています。抗体医薬の進歩にともない、ここ1~2年で、生物学的製剤のヌーカラ(メポリズマブ、抗IL-5モノクローナル抗体)や、ベンラリズマブ(ファセンラ、抗IL-5受容体αモノクローナル抗体)、デュピルマブ(デュピクセント、抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体)などの製剤が臨床応用されるようになってきました。これらは、まだ既存の治療が効かない重症喘息や重症アトピー性皮膚炎への治療として始まったばかりですが、つい最近ヌーカラが、難病の血管炎である好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)への治療薬として追加適応が認められました。このEGPAは従来、アレルギー性肉芽腫性血管炎やチャーグ・ストラウス症候群と呼ばれていたもので、原因不明の全身性血管炎でした。アレルギー領域だけでなく自己免疫疾患への病態解明も進み、その治療法としても広がってきたのです。
 残念ながら好酸球性副鼻腔炎への保険適応はまだですが、2016年1月の科学雑誌Natureには、好酸球性副鼻腔炎にヌーカラを投与して手術成績が上がったとの欧米の論文が掲載されました。ヌーカラやファセンラを月1回注射すると血中の好酸球はほぼ無くなります。効果は1ヶ月ですので、体質が変わるわけではありません。残念ながら全て欧米の製薬会社が開発した輸入品で、保険上の薬剤費も月17~18万円かかる大変高価な薬剤です。色々な課題はありますが、今後、これらの薬剤が好酸球性副鼻腔炎にも適応されれば、この病気の治療成績も大きく変わると思われます。我が国の大学病院でも、研究的な臨床治験が既に始まっているのではないでしょうか。数年後には研究成績も発表されると思われます。私の外来でも治療に難渋しているのがこの病気です。長年、鼻ポリープの摘出手術を当院で受け続けている患者様も複数おられます。好酸球性副鼻腔炎の治療が大きく変わるその節目に、臨床医でいられることを幸いに感じています。 
  24日   台風19号と台風20号のダブル襲来、幸いにもコースから外れた松山は風が強い程度でしたが、今日も暑い日が続きました。
 当院でも8月に入り目立ってきたRSウイルス感染症ですが、国立感染研の発表では8月6日までの週に全国集計で昨年同時期の5倍の発生で、愛媛県も発生の多い地域になっています。2年前までは”12月にRSウイルスが流行り、1~2月にインフルエンザが流行る”というのがスタンダードでしたが、昨年は8月9月にRSウイルスが大流行しました。これまで沖縄では夏にもRSウイルスの発生が目立っていましたが、昨年今年と愛媛でも夏にRSウイルスが流行するようになってきました。B型インフルはもう16年以上沖縄では1年中発生していますが、RSウイルスも通年性に見られるようになるのでしょうか? フグの水揚げ港がここ数年海水温の上昇とともに北日本にシフトしてきたとの報道がありました。台風や豪雨の被害が地球温暖化で21世紀に入り大きくなってきたとの報道もあります。感染症流行の季節が変わってきたことにも温暖化の影響があるのでしょうか? 
  16日   お盆休み、私もゆっくりさせて頂きました。松山は梅雨明け前の西日本豪雨以来、台風襲来時以外は見事に雨が降りません。夕立も一切なしです。四国の水瓶、早明浦ダムも取水制限が始まりました。豪雨と少雨、なんともな夏です。
 山口県で行方不明だった2歳児、見つかって良かったです。それにしても見つけたボランティアの方、本当に凄いです。頭が下がります。8月に入ってからも当院では、西日本豪雨の災害復旧ボランティアの方の来院が続きました。体調を崩されての来院ですが、ほとんどの方が、疲れや熱中症気味で夏風邪のウイルス性咽頭炎に罹っていました。復旧ボランティアは相当に体力を使うんでしょう。災害ボランティアの方々にも頭が下がります。
 お盆前の診察では、暑さで夏バテによる抵抗力の落ちた方が目立ちました。ウイルス性咽頭炎に続発して扁桃周囲炎化、外耳炎が増悪して耳せつ・頚部蜂窩織炎・頚部リンパ節炎を続発するなどが見られました。これらから抗生剤の点滴を受ける方も例年よりは多かった印象です。 
  7日   7日 松山の最高気温は37.2℃。今日も猛暑が続きました。大人も保育園児もお休みとなることからお盆休み以降は1年で最も感染症が少なくなる季節ですが、お盆休みを前にして、まだ保育園児の間では手足口病とRSウイルス感染症が目立っています。

 小児科学会が百日咳に関する推奨する予防接種スケジュールを変更しました。ジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン(DTP)の小学校就学前と中学校就学前の任意接種を推奨としました。今年1月からの百日咳の全数調査で生後6カ月未満と5~15歳に発生のピークがあることが明らかになったことが背景にあります。厚労省も百日咳ワクチンの追加接種の定期接種化を検討しているそうですが、いち早く追加接種が可能になっている米国と違い、わが国では百日咳だけのワクチンはまだ確保できていません。そのためまず確保できるDTPワクチンの任意での追加接種をまず推奨としてようです。当院でも、咳が長引き百日咳を疑う方には血液検査で確認をしています。時に百日咳への感染が明らかになる場合もあります。私も百日咳はわが国でも結構多いと感じています。百日咳の追加接種は必要だと思います。

 最近の東京医科大の不正入試問題では、私も最近の入試問題について色々考えさせられました。私の辿ってきた時代とは、医学生の教育制度や医師の研修医制度、医局制度、専門医制度も大きく変わりましたが、入試制度も大きく変わっています。私は一期校二期校世代の後の共通一次世代です。面接や地域枠の制度はありませんでした。今回の問題を契機に受験生の掲示板も見てみましたが、入試や進級の雰囲気の大きな変化にはびっくりです。私の卒業した徳島大学は当時、全国でも年配の人の入学が多いことでもニュースになっていました。私のひとつ上の学年には56才の入学生が、同期では46才の方がおられ、30才代の人は珍しくありませんでした。同期だけれども敬語で接し、社会の先輩として尊敬尊重するといった雰囲気のクラスでした。2年生までは教養課程で医学教育は全くなく、部活にバイトに精を出す人がほとんどでした。下宿で朝まで酒を酌み交わしながらソ連の崩壊問題を論じる、、などこの2年間は人間形成の上では有意義な猶予期間だと感じていました。しかし現在の徳島大は、地域枠や面接の影響からか多浪生や再受験生は数える程になっています。私の時代の試験は、過去問をチェックしていれば留年などめったにない状況でした。ところが21世紀に入り、医学教育はどんどん前倒しで早くなっています。医学部受験のHPをみると徳島大学は学生の留年率は”理不尽級”で、国公立では弘前大とトップ2を争う留年率になっているではありませんか。6年間で卒業できるのは半数強です。新1年生は1年目で20人近く留年しており、入学した途端に受験前よりも過酷な勉強に追われています。医師国試とはほぼ直結しない内容の基礎医学の試験での留年です。数年前に送られた私の属していたクラブの部誌に、勉学に影響するので部活を制限するとの記載がありました。私は当時何も知らず、今の後輩はそんなに遊びまわっているのかと感じましたが、この理不尽級の留年率の影響があったのですね。徳島大学では学生時代に研究室に配属し学位を取るMD-PhDコースの制度も始まり学生カリキュラムがタイトになっていたり、基礎医学の教室が国試ではなく研究者養成レベルの知識を要求しているなど、決して学生のレベルの問題だけではないと感じています。今年は幸いにも留年者は減っているとのこと。私の時代は、卒後はこれこれの関連病院のあるこの医局に就職するという感覚でしたが、今の卒後研修は卒業大学とは関係ないマッチングで決まります。今度同門の人間と話す機会があればには、現代の学生事情や、卒後研修の本音を教えてもらおうと思っています。


 患者様のお見舞いで松山日赤を訪ねる機会が増えました。松山日赤は現在再開発の真っただ中で、外来や手術室は新しい建物になっていますが、入院病棟はこれから建て替えです。病棟の独特な匂いを嗅ぐと、私も勤務医時代を思い出しました。日赤正面玄関の斜め真正面には愛媛大城北キャンパスの正門があります。写真は以前から私がよく利用している大学本館の図書館です。キャンパスの中庭には、、古事記の因幡の白兎の説話で有名なガマの穂が咲いていました。咲いていたというのも、ガマの穂は実は花だからです。上半分の細い部分が雄花で、穂の部分は雌花の集まりです。城北キャンパス一帯は文京遺跡です。5500年前の縄文時代の遺跡から昭和の遺跡まで発見されています。キャンパス一帯は戦前は陸軍歩兵第22連隊の練兵場でした。訓練用の塹壕からは鉄砲の弾や薬莢も発掘されています。
(徳島大学医学部青藍会HPより)
 私の卒業した徳島大学蔵本キャンパスも旧陸軍第43連隊の跡地でした。私が卒業した当時には最後に残った兵舎が学生の部室として残っていました。隣接する徳島県立中央病院も陸軍病院の跡地です。私は5才の時にこの病院で鼡径ヘルニアの手術を受けています。当時は2階建ての木造の病室だったことをおぼろげながら覚えています。これも陸軍病院の建物だったのでしょうか。写真は私が入学する少し前のキャンパスの写真です。当時の外来や病棟は全て建て替わってしまいました。夜中の薄暗い外来や病棟の匂いが懐かしいです。大学キャンパス前にあった「ニコニコ食堂」が最近店を閉めたと聞きました。学生御用達の食堂でした。愛大の城北キャンパスの周りには学生向けの食堂がたくさんあります。売りはやはり美味しさとともにボリュームと安さでしょうか。


 写真は愛媛大城北キャンパスと松山大キャンパスを隔てるキャンパス通りです。松山日赤のある愛大正面玄関のちょうど反対側にあたります。しっかり「キャンパス通り」と命名されて案内標識も立っています。周囲には学生食堂や不動産屋、リサイクルショップもあり、市内電車もキャンパスをかすめるように走っています。以前もこのコーナーで触れましたが、文教地区には東中学、松山北高、清水小、私の母校の勝山中も集積しており、学生食堂や不動産屋、リサイクルショップ、コインランドリーなども多く、昭和の香りの漂うホッとする町並みです。写真にはキャンパス街らしく学生さんカップルが映ってしまいました。後ろ姿なのでいいとしましょう。(^▽^;)  
8月  2日   8月になりました。西日本豪雨の影響はまだまだ続いています。農業や漁業への影響も甚大でした。着実な復興を祈っています。
 保育園を中心とした手足口病やヘルパンギーナなどの夏風邪も、8月に入り少なくなっています。例年よりは夏風邪の流行らない夏になりそうです。(^-^) RSウイルス感染症は、例年12月を中心に乳幼児の間で流行しますが、昨年は愛媛でも関東でも9月を中心に大流行しました。今年は1年を通してRSウイルスの発生が見られます。この夏は夏風邪が少ない分、RSウイルスの発生が逆に目立ちます。
 豪雨の後の記録的な猛暑のせいか、熱中症も多いですが、耳鼻科では夏風邪によるウイルス性咽頭炎に続発して扁桃周囲炎を引き起こす大人の方が目立ちます。免疫力が弱っているせいで、ウイルス感染で障害を受けた扁桃組織や咽頭粘膜の中に隠れていた嫌気性菌やインフルエンザ桿菌が活性化されて扁桃周囲炎化します。扁桃周囲炎の中にウミが溜まると扁桃周囲膿瘍となります。特に扁桃腺の下に向かってウミが広がる下極型扁桃周囲膿瘍から喉頭蓋や声門に腫脹が広がると、急性喉頭蓋炎や声門下喉頭炎を来し、呼吸困難を引き起こします。この夏これまでのところ当院では救急搬送を必要とするような急激な症状の方は見られていませんが、まだまだ猛暑が続くことが見込まれていることから、咽頭炎を来した方の診察では、ノドの奥に腫れが広がる可能性がないかどうかに注意したいと思います。 
     
  24日  今日午前は、先だってからお伝えしていたように、NTT回線工事に伴い、電話の一時不通と、iTicketの運用を休止させて頂きました。おかげさまで目立った不都合は発生しませんでした。ご協力ありがとうございました。夏休みに入り、一部の保育園では手足口病が大流行していますが、例年同時期よりも夏風邪の発生は少ないようです。当院外来も、例年より早めに夏休みモードに入りそうです。おかげでスタッフ研修の時間が取れます。

 全国的な猛暑が続いています。気になってアメダスのデータを覗いてみました。市街地の松山気象台では13時に最高気温34.2℃ですが、海沿いの南吉田(これは空港に設置されているのでしょうか)では18時に31.0℃でした。ちなみに沖縄の宮古島は13時に31.3℃でした。関東も内陸部の北関東の暑さが際立っています。やはり海沿いは極端には暑くならないのでしょう。当院のある余戸もどちらかといえば海に近いので、劇的な猛暑にはならない気がしています。
 松山市の過去の「1日の最高気温」のデータでは、1967年(50年前)の7月が30.7℃、1987年(30年前)が30.7℃、2017年が32.6℃でした。昭和の時代は上がらなかった気温が、平成に入り1.9℃も上昇しています。私が小学生の頃よりは目に見えて地球温暖化が進んでいるようです。私の常識では、公立小中学校にはエアコンは無いものと思っていました。冷房どころか暖房も無いのが私の常識でした。私が勝山中学3年在学時はまだ建て替え前の木造校舎だったこともあり、冬に窓を閉め切っていても粉雪が教室内に舞っていたことを思い出します。この猛暑で、安倍首相は全国の小学校へのエアコン設置を進めると表明しました。県別のエアコン設置率を見てみると、私の常識が古いかがよく解りました。普通学級へのエアコン設置率第一位は東京の99.9%です。へーっ、東京都の小学生はエアコン完備が常識だったのですね。四国を比較すると、徳島県38.9%、香川県97.7%、愛媛県5.9%、高知県19.0%と四国四県でも差があるのにはびっくりしました。愛媛県はなんと、涼しい東北、北海道、長野を除くとエアコン設置率が全国一低い県でした。こんなところで全国一位とは驚きです。子供の学校にエアコンなんて贅沢だ、、との私の常識が非常識だったみたいです。 
  22日   子供たちが待ちに待った夏休み入りです。それにしても暑いです。診察室に漏れてくる蝉の声が恨めしく聞こえます。猛暑による夏バテで免疫力が落ちるせいか、ウイルス性咽頭炎をきっかけに細菌性扁桃炎を続発する成人の方が増えてきました。
 当院でもこの度の西日本豪雨により被災された方や、災害復旧にあたられた自衛隊やボランティアの方々の来院がありました。復旧に尽力された方々には本当に頭が下がります。罹災された方には、医療費の自己負担分の免除などの制度活用が始まっています。当院でも確認され次第、適応させて頂いています。
 
 当院でも熱中症の方を見かけます。熱中症重症度分類は、
Ⅰ度(軽度) :脳血流が一時的に不十分になってめまい・立ちくらみ、頻脈、呼吸数増加、顔面蒼白を来す“熱失神”と、発汗に伴う塩分ナトリウムの欠乏による局所の筋肉痛・筋肉硬直(こむら返り)を来し、意識障害や体温上昇の見られない“熱けいれん”
Ⅱ度(中等度):体温上昇と体の末梢の血液循環が悪くなり、 頭痛・吐き気・嘔吐・下痢・倦怠感・虚脱感・失神・気分の不快などの全身症状が引き起こされる“熱疲労”
Ⅲ度(重度):体の深部から高体温になり全身の意識障害・けいれん・手足の運動障害・せん妄・過呼吸・ショック症状が起こる“熱射病”
に分かれますが、当院を来院されるのは、熱中症の重症度分類でいえばⅠ度でめまい・たちくらみを感じる程度の”熱失神”レベルの方がほとんどです。このレベルでは、体を冷やし水分と塩分の補給で事なきを得ることがほとんどですが、より重度になると、播種性血管内凝固症候群(DIC、全身の細小血管内で微小血栓が多発する)やショックなど全身状態が急速に悪化します。この場合は、深部体温の急速冷却やショック予防などの救命救急センター並みの管理が必要になります。歴史的な猛暑です。当院では過去にこのレベルの方の来院はありませんが、当院でもこの病態は念頭に置いておこうと思います。

 


 松山城西堀端の白鳥です。この写真で涼んで頂ければ幸いです。(^-^) 西堀端には


 伊予国の五大街道交通の起点である里呈になった「札の辻」があった場所です。傍らにある記念碑には、金毘羅街道が金毘羅まで31里、土佐街道が25里、大洲街道13里、今治街道11里 高浜街道2里と刻まれています。短い距離ですが高浜行きも街道だったのですね。 
  16日   昨日の診察は、鼻骨骨折の方や、鼻出血の方が重なったこともあり、診察のペースが遅くなってしまいました。お待ち頂いた方々にはご迷惑をおかけしました。ご協力ありがとうございました。
 今日は海の日。当院もお休みを頂きました。1週間前の梅雨明け直前の集中豪雨に続き、梅雨明けととともに全国的に記録的な猛暑です。今日の松山市の最高気温は33.6℃。久万高原町は、高原と言えど34.5℃で今年最高でした。今週末からは子供たちが夏休み入りです。プールに海に川に、これだけ暑いと水に親しみたいですね。また子供たちは、夏のお泊り保育や宿泊研修、合宿、スポーツの遠征、家族旅行と、お出かけの機会が増えます。当院では、中耳炎や風邪ひきのお子様の水泳の可否や、車酔いの対処法を受ける機会も増えています。 
  11日    一昨日、当院のケヤキで蝉が初鳴きしました。昨日10日には松山が平年より8日早く梅雨明けです。今日は朝から猛暑です。南予では気温が34℃とのこと。上水道の復旧がまだの中、瓦礫のかたずけは本当に大変だと思います。当院近くの空港周辺でも山肌の崩落がありました。今回の西日本豪雨では松山も降り始めからの雨量が415mmに達しました。私の実感では台風襲来時の方が豪雨のように感じましたが、やはり大変な雨でした。 
 W杯準決勝、ベルギーはフランスのがっちりした守備的布陣に阻まれて0-1で敗退しました。どうせならベルギーがW杯優勝して、日本も優勝に近いレベルだったかもしれないとなって欲しかったのですが、、 たらればですが、もし日本がベルギー戦で2-0時点で守備的布陣にしていたら結果はどうだったでしょうか?? 
 夏本番ですが、当院外来では、急に高熱が出たり口内炎ができる夏風邪は例年よりはまだ少ない印象です。

 当ホームページの「なぜなに耳鼻科の病気」の「味覚障害」を更新しました。「味覚障害と舌萎縮・舌痛症」としてまとめ直しました。2016年の日本臨床栄養学会ミネラル部会による亜鉛欠乏症診断基準では、亜鉛欠乏症を血清亜鉛60μg/dL未満、潜在性亜鉛欠乏を60~80μg/dLと定義しています。同基準では亜鉛補充療法を、成人50~100mg/日、小児体重20kg未満で25mg/日、体重20kg以上で50mg/日としています。私はこれまで亜鉛欠乏による味覚障害や舌痛症にはプロマックを用いていたのですが、プロマックの亜鉛含有量は1日34mgですので、亜鉛欠乏症にはより亜鉛を補充する方がよいとされました。昨年2月に、これまで銅の代謝障害ウィルソン病の治療薬であるノベルジンの適応疾患が拡大されて低亜鉛血症も適応となりました。ノベルジンならば1日50~100mgまで亜鉛の投与が可能になります。欠点は薬価が結構高いことです。ちなみに25mg錠1日2錠で1ヶ月で薬価が16.170円、50mg錠で25.338円で3割負担の人で薬剤費だけで月4850円から7600円とびっくりする負担となります。プロマックには後発品もありますので、これなら薬価は月1002円で負担は330円です。そのためもあり私はその後もプロマックをメインで使ってきたのですが、高度な亜鉛欠乏にはノベルジンも選択枝として検討しようと思います。 
  8日   梅雨明け前の豪雨、今日も松山は雨が続きました。晴れ間は全く見えません。幸い当院は避難勧告地域ではありませんでしたが、松山市内も多くの地域で避難勧告が続いています。7日午後4時現在で愛媛県の死者19名、安否不明8名と甚大な被害が出ています。被害に遭われた地域の方々にはお悔やみを申し上げます。これだけ活発な梅雨前線が停滞し、線状降雨も激しいものでした。温暖化による海水温上昇も影響しているのでしょうか? 大きな気圧の変化で、めまい発作や喘息が悪化した方が目立ちました。
 当院での往診での対応ですが、診察時間の関係で私は主に夜間しか動ける時間がありませんので、往診については他の医療機関からの依頼があった場合に受けています。その場合、人工呼吸器を装着されているなどで外来受診が難しい方がほとんどです。施設に長期入院されて病床で過ごすことが多い方には耳垢栓塞が多い傾向があります。また急性感音難聴やめまいのケースもありましたが、中には滲出性中耳炎が慢性化した方もおられました。人工呼吸器で管理されている方は鼻粘膜が萎縮様になることが多く、そのため滲出性中耳炎化するケースもあります。そのため、鼓膜切開や鼓膜チューブ留置術を必要とする場合もあります。在宅でのチューブ留置では外来のように顕微鏡下での処置ができないのですが、その場合、拡大鏡が役に立ちます。最近、私が便利だと感じているのが民生品のメガネ型拡大鏡「ハズキルーペ」です。渡辺謙さん菊川怜さんという大物を起用したCMをご覧になった方も多いのではないでしょうか。これが実は医療用としても優れモノです。拡大倍率も大きいものでは1.6~1.85倍で、被写界深度も深いために、子供さんのような体動が無ければ、処置は十分可能です。民生品にも優れモノはあります。(^-^)

  喉頭アミロイドーシス、遅発性内リンパ水腫、嚢胞性頚部腫瘤、鼓室硬化、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、表皮水疱症、小児ストロフルスなど。 


可愛い子供さんからメッセージを頂きました。私も元気がでます! ありがとう。
  7日  ベースボールマガジン社の雑誌「健康生活マガジン健康一番 けんいち Vol.15」の、耳鳴順応療法(TRT)を行っている全国の主要病院・診療所リストに掲載されました。ちなみに四国では掲載された医療機関は当院のみでした。当院での耳鳴への音響療法は、マスカー療法、サウンドジェネレーターを用いたTRT療法、補聴器装用、家庭でホワイトノイズや環境音を聞く音響療法などを、その方の年齢・聴力や音響療法への反応を見ながら選択しています。またキシロカイン静注療法も取り入れています。TRT療法も時間をかけても効果が無かったというケースも珍しくはありません。慢性の耳鳴を完全に無くすことは難しいのですが、患者様に様々な選択肢をお示しした上で治療を進めています。 
  4日   侍ジャパン、終わってしまいました。残念でしたが、選手たちの流した涙は美しかったです。愛媛出身の長友選手、やはり全試合、全期間フル出場で、疲れを知りません。それにしても凄いパワーでした。4年後のW杯も、長友選手ならまだ日本代表現役でしょう!

 日耳鼻総会からの私の注目点のまとめはこれでおしまいにします。学生のメモ書きみたいで見苦しいのですが、私の勉強のメモ、備忘録としてお許し下さい。
〇中枢性めまいに関するセミナーもありました。脳幹の障害では前庭神経核や小脳脚の障害でめまいが出現します。同部を中心に延髄外側症候群では構音障害、同側の顔面神経麻痺、対側の温痛覚障害、ホルネル症候群を来します。眼振所見としては、内側縦束の障害で単眼の内転障害と健側向き注視眼振、純回旋性や純垂直性の眼振、眼位の保持障害で左右や上下の注視方向性眼振など多様な眼振が見られます。小脳の障害では、半球の障害で四肢の運動失調、指鼻試験異常、企図振戦を認めます。前下小脳動脈の血行障害では難聴耳鳴、方向固定制眼振など末梢性めまい類似の所見も出ます。脊髄との繋がりの深い小脳虫部では開眼閉眼にかかわらず失調が続くロンベルグ陰性の体幹失調が主体となり起立不能となります。眼振では中枢性頭位めまいを示します。先日、当院でも小脳出血によるめまいの方の来院もありましたので、知識の再確認が出来ました。
〇新しい半規管機能検査であるHead impulse test(HIT)は、被検者に指標(検者の鼻)を注視させた状態で、頭部を受動的かつ急速に10~20°回旋させます。機能が正常であれば前庭眼反射VORが機能し指標を注視できます。半規管機能低下ではVORが機能せず、眼位と指標のズレを補正するためにcatch up saccade(CUS)
と呼ばれる急速眼球運動が生じます。
〇甲状腺乳頭癌のリスクを腫瘍径で分類すると、超低リスクは1㎝以下、低リスクが2㎝以下、高リスクは4㎝を超えるとされます。エコー検査の普及による甲状腺癌過剰診断の観点から、日本乳腺甲状腺超音波診断会議では、充実性病変では5mm以下は経過観察、5-10mmでは悪性を強く疑う場合に細胞診を行うとされ、米国甲状腺学会のガイドラインでは、1㎝以上で癌を疑うもの以外には強く細胞診は勧めていません。この判断基準で、当院でも細胞診や高位病院への紹介を行いたいと思います。
〇小児難聴について、先天性両側重度難聴児は1.000人に1~2名。新生児聴覚スクリーニングNHSでは1.000人に4~5名が要精査となります。要精査の30%が正常、逆にスクリーニングを正常としてPassした中の3%に両側難聴を認めます。NHS機器には聴性脳幹反応を用いたものと内耳有毛細胞の反応を測定する耳音響放射を利用したものがあり、後者では中枢の疾患を見逃す場合があります。診断には、生後1ヶ月までにNHSを行い、難聴疑い例では3ヶ月までに精密検査を行い、6ヶ月までに補聴器装用を行う「1-3-6ルール」が広く認識されてきています。また、1才以降の早期に両側人工内耳装用を開始すれば就学時には健常者と同等の言語性IQを獲得できます。聴性脳幹反応ABRなどの他覚的検査が無反応であっても実際の聴力の範囲には幅があることから、実際の聴力の評価は音刺激による児の聴性反応(行動反応聴力検査BOA、条件詮索反応聴力検査COR)等で複数回評価することが望ましいとされます。
〇2017年の本邦のめまい平衡医学会のメニエール病診断基準に、「聴覚症状のある耳に造影MRIで内リンパ水腫を認める」が追加されました。MRIでメニエール病を診断するのは名古屋大を中心とした我が国の業績でもあります。メニエール病の確定診断を画像診断で行えるようになったのは画期的だと思います。
〇メニエール病の外科的治療について。抗菌剤のゲンタマイシンが前庭を選択的に障害することを利用したゲンタマイシン鼓室内投与は、1日数回連日投与法と週1回投与法があり、新たな眼振出現または10-15dBの聴力域値上昇(悪化)まで治療を続けます。治療成績は、めまい肝前抑制は、前庭神経切断術で90%以上、ゲンタマイシン80%以上、内リンパ嚢手術60-80%、非手術25-75%。聴力温存成績は、内リンパ嚢手術60-90%、前庭神経切断術とゲンタマイシンがともに50-60%、非手術25-50%です。
〇閉塞型睡眠時無呼吸は、睡眠障害国際分類第3版より「症候群」の言葉がとれました。自宅で行う簡易検査での最終診断も可能とされました。脳波を測定しない簡易検査では、実際より睡眠時間が長いとカウントされることから無呼吸指数が実際より低値に出る傾向に注意するようにとのことです。咽頭拡大手術は従来の咽頭口蓋口蓋垂形成術UPPPから側方咽頭形成術に移行しつつあります。小児の閉塞型睡眠時無呼吸は2005年の国際分類第2版から定義が明確化され、治療の第一選択はアデノイド切除口蓋扁桃摘出術ですが、まだ手術適応の明確な基準が確立されていません。点鼻ステロイドやキプレス内服による保存的治療と定期的な再評価も重要とされます。
〇誤った発声習慣に基づく機能性発声障害には、筋緊張性発声障害(過緊張性、低緊張性)、心因性発声障
害、変声障害(変声期を過ぎても以前の高さの声を出そうとする)があります。
〇小児滲出性中耳炎のチューブ留置の経過観察は最長1回/3-4ヶ月で、チューブ留置期間は難治化のリスクがなければ2-3年まで、耳漏が止まらない場合やチューブ周囲の肉芽形成では抜去します。
〇耳管開放症診断基準案(2016年日本耳科学会)は、1.自覚症状 自声強調・耳閉感・呼吸音聴取 2.耳管閉鎖処置での改善 臥位前屈などの体位変換、綿棒ゲルでの耳管咽頭口閉鎖処置 3.他覚的所見 鼓膜の呼吸性動揺、鼻咽腔圧に同期した外耳道圧変化 音響法による提示音圧100dB未満か開放プラトー型 です。治療の耳管ピン挿入術の副作用として滲出性中耳炎化15%、鼓膜穿孔の残存20%があります。鑑別疾患として上半規管裂隙症候群に注意します。これは1998年にMinorにより初めて報告され、上半規管を覆う頭蓋骨が欠損するために圧変化や強大音によりめまい,自声強調,耳閉感,耳鳴が誘発されます。上半規管と頭蓋底の間の骨欠損が見られることから、診断には高分解能CTが有用で、瘻孔症状としてのTullio現象(強大音聴取時や発声時にめまいやふらつきを自覚する現象)、瘻孔現象(Valsalva 法などの圧負荷刺激により回旋成分を伴った垂直性眼振を示す)、Hennebert徴候(瘻孔のない瘻孔現象、内耳梅毒で有名)を認めます。前庭誘発筋電図(Vestibular evoked myogenic potential VEMP)で患側のVEMP振幅の増大かつ80dB以下の反応閾値低下がみられます。純音聴力検査で低音部に気導骨導差を認めることから耳硬化症やメニエール病との鑑別も必要となります。耳管開放様の症状にめまいを合併している際には、当院でもCTでの上半規管周囲の骨欠損にには注意したいと思います。
〇味覚障害の治療で唯一エビデンスを持つ治療法は亜鉛内服療法です(プロマック亜鉛34㎎3ヶ月投与で80%改善の報告あり)が、サプリメントも含めて過剰摂取にも注意が必要です。亜鉛過剰で、血清鉄や血清銅が低下します。口腔内乾燥症にアシノン、サリグレン、サラジェン投与もあり。
〇頸部リンパ節腫脹について。結核の穿刺吸引検体からの陽性率は、塗抹0-60%、培養20-80%、PCR50-96%とばらつきがあるため、鑑別がつかない場合には切開生検が必要です。悪性リンパ腫のリンパ節腫脹は、弾性硬、圧痛なし、両側性、多発性、内部は比較的均一な軟部濃度です。原発巣不明遠隔転移癌では、左内深頸領域から左鎖骨下にかけて多数の腫大リンパ節を触知し、造影CTで内部に低吸収域を持ち周囲がリング状に造影され、リンパ節結核と似た所見にまります。
〇頸部の良性腫瘍では、耳下部は、耳下腺腫瘍・木村病(アジア特に日本の10-20才代に多い、軟部好酸球性肉芽腫で末梢血好酸球及び血中IgE の増加を特徴とする)。頤(オトガイ)部は、甲上舌管嚢胞・皮様嚢腫。顎下部は、顎下腺腫瘍・皮様嚢腫・ガマ腫・木村病。前頸部は甲上舌管嚢胞・甲状腺腫瘍。側頸部は、側頚嚢胞・神経鞘腫・血管腫・頸動脈小体腫瘍に注意します。
〇耳鳴のリハビリテーションでは、耳鳴順応療法TRT以外でも、耳鳴の説明を行うことによるカウンセリングと家庭での音響療法(耳鳴が際立つ静かな環境を避け、なるべく音の豊富な環境を作るために、テレビ・ラジオ・音楽・FMラジオのホワイトノイズ雑音、自然音CDなど患者の好むもので可や補聴器装用)。
〇ムコ多糖症児は中耳炎や鼻汁過多を繰り返し、感音伝音難聴を認めるために、乳児早期から耳鼻科を受診している可能性が高いです。耳介の肥厚、指の関節が固いわし手、腕や肩の関節拘縮で手が上げにくい、広い蒙古斑、腹筋が弱いことによる臍ヘルニア、中耳炎や睡眠時無呼吸に注意します。
〇味覚障害の検査には、電気味覚検査と濾紙ディスク法があるが、4種の味覚5段階を舌前方の鼓索神経領域と後方の舌咽神経領域両側を行うと80回、30分要するために、簡略化のために舌前方のみや舌中央のみの検査も検討されています。
〇嗅覚障害ガイドライン(2017年日本鼻科学会)では、感冒後嗅覚障害への当帰芍薬散は弱い推奨レベル。投与3ヶ月で改善率40%、12ヶ月で80%(自然改善率も3ヶ月で10%、1年で30-40%)との報告あり。当帰芍薬散は中枢神経の神経成長因子を賦活化させることからアルツハイマー病に有効との報告もあります。
〇遅発性内リンパ水腫でも、メニエール病同様に中耳加圧療法を検討するとの報告あり。2011年、富山大より鼓膜に陰陽圧パルスを加える鼓膜マッサージ器でも、国外で開発された鼓膜チューブを介して陽圧パルス波を加えるMeniettと同等の効果ありとの論文を発表、2017年には中耳加圧装置として新型鼓膜マッサージ機が作られました。メニエール病以上にめまいが難治な印象のある遅発性内リンパ水腫でもこの治療法の有効性が確立されればと思います。 
7月  2日  7月になりました。関東は梅雨明けです。松山も梅雨明けを思わせる猛暑ですが、明日には台風が近づいてきます。猛暑による熱中症に気をつけなければいけない気温ですが、クーラーを夜間につける家庭も増えてきたと思います。幼稚園や保育園でもプール遊びが始まりました。体温の変化や気圧の変化の大きい気候です。気道過敏症やメニエール病の方は、体調を乱さないようご注意下さい。
 この未明には、いよいよ8強をかけてベルギーとの対戦です。本気の強豪チームとガチンコ勝負できるのはW杯決勝トーナメントならではです。侍ジャパンの健闘を祈りたいと思います。先のポーランド戦終盤のパス回し、皆さんはどう感じたでしょうか。私はありだと思いました。ブーイングの中、統率をとってパス回しをする。日本人は猪突猛進のきらいがありますが、結果に向かって冷静に行動する姿勢はたのもしくもありました。ラフプレーの少ない日本だからこそ選択できたプレーですし、歴史に残るプレーは決して恥ずかしくないと思います。ただし、今後このようなケースが増えれば、一定時間以上戦意がないと判断すればチームにイエローカードを出せるなどのルールの変更はあるかもしれませんね。

 日耳鼻総会のシンポジウムやセミナーからの話題を。
〇今年度の宿題報告のひとつは、鹿児島大学からの病原微生物の細胞壁に存在するホスホリルコリンと上気道炎症の関連に関する研究でした。ホスホリルコリンに対して生体はCRPを産生して、CRPとホスホリスコリンが結合して補体経路を活性化して自然免疫を介して生体防御し、ホスホリルコリン特異的IgM抗体も自然免疫系の細胞B1細胞で産生されて自然抗体として感染症などの炎症を抑制するとのことです。今回の報告では、ホスホリルコリンの観点から、急性上気道炎や滲出性中耳炎、IgA腎症、アレルギー性鼻炎と病態を調べました。ホスホリルコリンを用いたワクチンによゆ感染予防の可能性についても研究を進めています。耳鼻科局所の感染症を自然免疫の視点から眺める、新たな視点の研究です。
〇明治黎明期の耳鼻科の歴史をみる特別企画もありました。日本の西洋医学はオランダ東インド会社から派遣されたドイツ人外科医シーボルトが出島外の鳴滝塾で診療と教育を始めたのが最初ですが、江戸幕府は中国医学のみ許可していたものの、外科と眼科だけ例外で西洋医学を認めたそうです。そのため明治維新になっても、当初は眼科が人気で、耳鼻科を学ぶものが少なく、耳鼻科は取り残された科になったそうです。また、明治維新期に導入する西洋医学をどうするかの歴史も紹介されています。戊辰戦争で官軍の医療を担当したのが英国人だったことから当初は英国医学を導入する方向だったものの、佐賀藩出身の蘭学医相良知安の調査で当時最も進んでいたのがドイツだとの報告から維新政府はドイツ医学を導入するよう方向転換したそうです。たまには、こんな歴史秘話の講演もいいものです。
〇今世紀に入り癌と腫瘍に関して注目されている乳頭腫ウイルスHPVのパネルディスカッションがありました。中咽頭口蓋扁桃・舌根扁桃では高リスク型HPV16型による癌が、喉頭では低リスク型HPV6と11型による扁平乳頭腫が、鼻副鼻腔ではHPVのタイプに傾向の見られない内反性乳頭腫が問題になっています。
〇日帰り手術の手技について、鼻副鼻腔手術後のタンポンガーゼとしてソープサンが有用とのこと。カルシウムキレート作用で創部に軽く当てるだけで止血でき、水溶性のために洗浄と吸引で軽く除去できます。当院でも採用を検討したいと思います。喉頭の局麻下手術に関して、やはり咽頭喉頭反射の強いケースでは困難なケースが多いとのことです。舌根部狭窄が強い例では、やはり全麻手術が最善でしょうか。
〇当院でも行っているイビキに対する軟口蓋形成術のパネルディスカッションがありました。1990年にフランスから報告されたレーザーを用いるLAUP(Laser-assisted uvuropalatoplasty)について、単純性いびき症への改善率は報告により大きな差があり、嚥下障害、咽頭違和感などの後遺症が問題となるとしています。手技の実際では、術前に仰臥位ファイバースコープで上咽頭舌根喉頭を評価する、局麻はキシロカインビスカスを15分口腔内に含むというのが参考になりました。
〇内視鏡関連のパネルでは、経外耳道的内視鏡手術(TEES)が取り上げられました。唾液腺内視鏡に関して、唾石Sialolithの9割は顎下腺に発生とされてきたが、最新の欧米の報告では耳下腺唾石が30-40%との報告があるようです。唾液腺内視鏡でレーザーを用いて唾石を破砕する試みも始まりました。
〇教育セミナーでは、突発性難聴の治療に関して、2012年のAAO-HNSのガイドラインでは、ステロイド全身投与、高圧酸素療法が選択枝、ステロイド鼓室内投与のサルベージ療法、抗ウイルス薬、血栓溶解剤、血管拡張剤が推薦、となっています。 
     
  28日   これからW杯 対ポーランド戦です。心なしか市内の車の流れが少なく感じます。今日の中継は視聴率50%越えでしょうか。グループで見る人も多いでしょうから、試合中は日本人の3人に2人はテレビにくぎ付けでしょう。
 ボルゴグラードも暑いですが。今日の松山は熱帯夜のようです。暑さの影響で、症状の強い外耳炎や、鼻血を伴う鼻前庭炎の人が増えてきました。
 また、夏は虫刺されの季節です。ムカデに耳の穴の中をかまれた方の来院がありました。ムカデの毒素はヒスタミン様物質です。来院された方は鼓膜周囲の腫脹が強く水疱性鼓膜炎のような所見を呈していました。顔面を中心とする皮疹では耳鼻科でも対応を求められます。
 虫刺症を来す主な病原を挙げてみると、1)イエダニ:体長0.7mm。ドブネズミの巣に寄生するのでネズミが住む家で、6-9月に注意します。夜にパジャマの中の腋窩周囲や股などの柔らかい部分を吸血し、遅延型アレルギーを起こします。2)トコジラミ(南京虫):カメムシの一種で独特な臭いを発します。成虫の体長は5mm、幼虫で1~4mm、畳、ベッド、柱、家具から夜間に出てきて吸血します。近年増加傾向にあり、近高級ホテルでも被害が増えています。唾液に対するアレルギーを起こし、皮膚の露出部が噛まれます。3)ツメダニ:畳やじゅうたんに生息し、体長0.5~0.8mm程度。遅延型アレルギーを起こします。4)ブユ:野外レジャーの際に露出部を刺され、刺し口に出血斑を生じます。吸血時の自覚症状がなく、掻痒がかなり強烈で長引き慢性痒疹化することもあります。5)マダニ:脳炎や血管内凝固症候群(DIC)を引き起こすウイルスやリケッチアを媒介することから、重症化に注意が必要です。遊走性紅斑(ライム病)を認めることもあります。その他に虫刺様の皮疹を呈する病気には、多発性毛包炎、伝染性軟属腫のモルスクム反応(みずいぼ周囲の湿疹化)などもあり、注意が必要です。

 日耳鼻総会の注目の演題、三つ目です。
〇扁桃周囲膿瘍を上極型と下極型にわけて特徴を検討した報告がありました。上極型は穿刺切開などの外科的治療が可能ですが、下極型は困難です。やはり下極型は喉頭浮腫の合併率が高いようです。下極型の扁桃周囲膿瘍は増悪の可能性も考えて入院施設で経過を見るのが好ましいと思います。
〇2011年の結合型肺炎球菌ワクチンPVCによる小児急性中耳炎への影響についての報告がありました。当院が研究協力施設となった研究は慶応大によるものでしたが、今回、広島大から報告がありました。広島大の報告では、対象年齢をより細分化して検討しています。その結果、1歳以下の急性中耳炎の重症化を抑制していると結論付けています。
〇無莢膜型インフルエンザ菌NTHiは感染局所粘膜でバイオフィルムを形成し、感染の難治化遷延化に関わります。細菌の宿主細胞への接着を抑制することによってバイオフィルムの産生を抑制する研究が報告されました。
〇舌扁平上皮癌T1T2症例の頸部リンパ節転移と術前画像診断を検討した報告では、術前の画像診断では転移の予測は困難であったとのことです。
〇前庭神経炎の体平衡機能の経時的変化の報告がありました。初期には重心動揺検査では患側に偏倚する傾向がありましが、1ヶ月後には代償機能により正常化するとしています。ただし、利き足側が患側であると回復が遅いというデータになる傾向があることから、右前庭神経炎では正常化が遅くなるとのことです。当院で重心動揺検査を行う際にもこの経時的変化は頭に入れておこうと思います。
〇加齢性平衡障害へのヨガと理学リハビリによる訓練の試みがありました。加齢性でもリハビリ効果があるか? 今後、このような報告が学会レベルで続けて出るようになって有効性の評価がなされることを期待します。
〇前庭代償の動物モデルによる研究発表がありました。前庭機能が障害されると著しい眼振や平衡障害が生じます。前庭機能は聴覚機能と異なり代償機能で次第に軽快します。この前庭代償は、小脳を介した健側前庭神経核の抑制による前期過程と、患側前庭神経核の回復による後期課程があります。今回、一側内耳核を破壊したラットモデルでの、前期過程を自発眼振での経時的変化で、後期課程を前庭神経核のニューロンの経時的変化でみる研究報告です。前庭神経の機能の可視化が可能になってきました。
〇外耳道外骨腫、サーファーズイヤーへの外耳道拡大手術では、手術器具としてはバーを用いると皮膚を巻き込む場合があるので、ノミと鋭匙を用いるが良いとのことです。
〇鼓膜チューブ留置術に関して、鼓膜輪下チューブ挿入術の報告がありました。菲薄化、硬化、陥凹化した鼓膜を介さずに外耳道皮下から換気を行う方法です。小児の菲薄化鼓膜や鼓膜穿孔閉鎖後の滲出性中耳炎の再燃が懸念される例に有効とされました。
〇今年の国際頭痛学会のガイドラインで新たな疾患として提唱された前庭性片頭痛とメニエール病を鑑別する報告、メニエール病に中耳加圧療法としての鼓膜マッサージ器が有効であるとの報告、感覚過敏症と長角過敏症の鑑別などの報告がありました。
〇耳鳴診療ガイドライン策定に関する報告がありました。今年2018年の完成を目指している慢性耳鳴に関する我が国初のガイドラインです。評価や治療が困難な耳鳴ですが、どのようなガイドラインになるのか。今から私も大いに注目しています。
〇聴神経腫瘍に対する手術適応の検討がありました。聴神経腫瘍は以前は増大した場合は耳鼻科が耳から脳外科が頭蓋内から手術することが多かったのですが、ピンポイントの放射線であるガンマナイフの開発で放射線治療の適応が増えてきました。ところが最近になって、放射線治療後は瘢痕癒着が起こるため腫瘍が再発した場合の再手術が困難であるとの報告が世界的に出てきています。手術を行うか、放射線治療するか、聴神経腫瘍は良性腫瘍ですので腫瘍のサイズが小さい場合は経過観察のみとするのかなどを検討した報告がありました。
〇顔面神経麻痺の程度を評価する麻痺スコアでは、1995年当時の愛媛大柳原教授の提唱した40点法が一般的です。当初、8点以下が予後不良の完全麻痺としていましたが、その後の顔面神経学会での検討で2016年に10点以下を完全麻痺とすると改定されました。新しい判定基準の評価に関する報告がありました。
〇非典型的な結核性中耳炎の症例報告がありました。中耳結核は血行性に感染し、耳介周囲リンパ節腫脹、多発性鼓膜穿孔、一側性顔面神経麻痺、早期の高度難聴、骨壊死を来します。私も結核性中耳炎は久しく経験していません。認識を新たにしたいと思います。
〇耳垢遺伝子と真珠腫性中耳炎の関連性についての報告がありました。湿性耳垢の遺伝子を持つ人方が真珠腫性中耳炎の発生率が高いとの報告がありました。湿性耳垢の方が乾性耳垢より多い欧米人やアフリカ人の方が真珠腫性中耳炎の罹患率が多いとされています。報告はこの結果を裏付けています。私の診療の印象では、軟性耳垢の小児の方が滲出性中耳炎も多い印象がありました。耳垢の性状と中耳炎のなりやすさには関係は無いだろうと思い、これは単なる私の印象かと長年一人合点していました。湿性耳垢の小児の方が診察に時間がかかることから、中耳炎になっている印象も無意識に強くなっていたのだと思っていました。しかし今回、湿性耳垢と真珠腫性中耳炎の因果関係があるとなると、真珠腫性中耳炎の準備状態ともいえる滲出性中耳炎でも軟耳垢との関連性があるかもしれません。私の長年のなんとなくの印象が当たっているかもしれません。
〇新生児聴覚スクリーニングで正常とされ1歳以降に片側難聴になるケースでは蝸牛神経管狭窄が多かったとのことです。乳児の片側性難聴では、やはり画像診断が必要です。
〇水痘ワクチンの小児への接種が2014年に定期接種化されましたが、小児の水痘発生率の低下にともない、自然感染によるブースター効果が弱まった青年層での帯状疱疹ウイルスの再活性によるハント症候群が増加してきました。
〇スギへの舌下免疫療法ではヒノキ花粉症への効果は無いとの報告がありました。スギとヒノキは共通性抗原なのでヒノキへの効果も期待できるとの報告もありますので、今後の調査研究が待たれます。
〇感冒後嗅覚低下を来す特定のウイルスを指摘することは困難だったとの報告がありました。特定の感染症が原因ではなく、やはり宿主であるヒトの鼻粘膜局所の要因が大きいようです。
〇上咽頭擦過療法時の心拍変動解析の結果、擦過療法に自律神経調整作用のあることが報告されました。Bスポット療法への医学的な研究報告も出てきました。
〇過長茎状突起症(Eagle症候群)では、疼痛部位の触診と3D再構築CTが有用でした。
〇小児口蓋扁桃摘出術後の術後出血の統計的報告がありました。術後出血が1.5%にみられ、術後5日目の退院後が83%でした。多くは就寝中か起床時に出血しており、口腔内乾燥が影響しているとしています。
〇口蓋扁桃摘出術の長期的変遷についての報告がありました。1970年までは局麻が、1987年以降は全例全麻下の手術になっています。1960年代までは小児が多く、1970年代からは成人が増えて、1990年代には成人の方が多くなり、2000年代からは小児が再び増えています。小児の扁桃肥大と習慣性扁桃炎が対象から、抗生剤の普及などで炎症の頻度や程度が強いものへの限定から、成人のIgA腎症などの病巣感染への適応、小児睡眠時無呼吸への適応などで、手術対象の変遷が示されました。
〇鼓膜所見が正常な一側性伝音難聴には、片側性耳硬化症、片側性耳小骨奇形などがあり、手術による改善率が高いとの報告がありました。
〇耳硬化症のCT所見として、蝸牛の脱灰とアブミ骨底板の肥厚について、有所見率45%との報告がありました。当院でもCTでの有所見は半数しかないことを踏まえて、高位病院での精査を依頼しようと思います。
〇メニエール病の原因のひとつとして外リンパ瘻もあるとの報告がありました。外リンパ瘻は、鼻かみによる中耳圧の上昇や脳脊髄圧の上昇で、内耳窓(前庭窓、蝸牛窓)や極小間隙に瘻孔が生じて神経の障害を起こすものです。診断にはこれまで顕微鏡や内視鏡で瘻孔を直接確認することが必要でしたが、内耳特異的蛋白(cochlin-tomoprotein:CTP)というバイオマーカーを中耳から検出することで診断が可能になりました。内耳性めまい症,原因不明のめまい症,メニエール病,突発性難聴,進行性や再発性の特発性難聴の中に外リンパ瘻が含まれていることが解明されつつあります。今回の報告もそのひとつに属します。変動性のめまいや難聴の症例では外リンパ瘻の存在も常に念頭に置きたいと思います。
〇メニエール病への手術治療の経過報告がありました。難治性メニエール病で内リンパ嚢開放術でのめまい制御率は短期で80-90%、長期で60-70%です。術後もめまい発作を繰返す症例には再手術や前庭神経切断術、迷路破壊術も検討します。
〇頸動脈エコーの検討が耳鼻科の報告でもありました。高齢者のめまいには椎骨脳底動脈循環不全VBIが多いとされますが、MRIでは10%程度しか所見は得られません。今回の報告では28%に椎骨動脈の血流速度低下、後下小脳動脈の狭窄閉塞、鎖骨下動脈盗血症候群が見られたとのことです。私も施行していますが、やはり頚動脈エコー検査がVBIの診断には有用です。
〇鼻出血に次没食子酸ビスマス(デルマトール)を用いる報告がありました。デルマトールは内服で下痢症に、外用でそのまま撒布剤そして収れん、防腐、乾燥作用により皮膚のびらん潰瘍を修復します。当院の趾出血や鼻内手術でも活用できるかもしれません。
〇PFAPA症候群への口蓋扁桃摘出術の有用性にかんする報告がありました。PFAPA症候群は、小児に周期性発熱、口内炎、咽頭扁桃炎、頚部リンパ節炎を認める自然免疫系の異常が疑われる小児科領域の新しい疾患概念です。当院でもPFAPA症候群が疑われたお子様の来院もありました。今後、耳鼻科領域からも扁摘の有効性に関する報告が増えてきそうです。
〇成人紫斑病性腎症への口蓋扁桃摘出+ステロイドパルス療法が有効だった症例報告がありました。IgA腎症に対する扁摘パルス療法の有効性は確率されていますが、IgA腎症同様にIgA血管炎と病巣感染の機序が疑われる紫斑病性腎炎でも扁摘パルス療法が有効な症例は多いと思われます。
〇マイコプラズマ感染症に対する咽頭初見の報告がありました。最も典型的なタイプは、発熱・咽頭痛の後に咳が遷延していきますが、鼻・咽頭初見だけのタイプやと突然の発熱でインフルエンザ様の症状を来すものもあります。咽頭炎のみのタイプでは1週間で収まります。上咽頭は若年者では無症状のことがおおいものの、高齢者では咽頭違和感が続く傾向があるとのことです。保菌状態も数ヶ月続きます。耳鼻咽喉領域の所見は大いに参考になります。
〇MTX関連リンパ増殖性疾患と放線菌症の報告がありました。関節リウマチに用いる薬剤のMTXによる反応、放線菌感染症、いずれも診断は難しいと思います。放線菌にはペニシリンが有効でした。
〇結核による奇異性反応の報告がありました。奇異性反応は結核治療中に急激に死滅した大量の結核菌に対する局所の免疫反応です。 
   23日  今日は午後から臨時休診とさせて頂きました。事前の周知のおかげか午前の診察もスムースに終えることができ、おかげで滞りなく会議に出席できました。ご協力ありがとうございました。

 引き続き、日耳鼻総会の演題の紹介を。
〇涙嚢鼻腔吻合術は、慢性涙嚢炎や鼻涙管閉塞で行う手術です。眼科的に行う鼻外法がスタンダードでしたが、内視鏡下副鼻腔手術の適応拡大で耳鼻科による鼻内手術の報告が増えてきました。手術適応の判断には眼科との協力が必要ですが、耳鼻科からのアプローチも選択肢に入ってきました。
〇学校健診での構音障害を検討した報告がありました。小学1年生で構音障害と診断されてのが13%。内、側音化構音疑い7%、発達途上の構音の誤りが6%でした。側音化構音は、機能性構音障害のひとつで、運動麻痺などの明確な異常のない発音の異常です。「き ぎ し じ ち」などのイ段が言いにくいのが特徴で、「し」が「ひ」に聞こえるなどが目立ち、周囲からは滑舌が悪いと指摘されます。原因は、舌の先端や周縁の筋肉の力が弱いことで、成長期に筋肉をあまり使わないと起こりやすいとされます。就学前に扁桃肥大などで口呼吸の傾向があったり、歯の生え変りで前歯が空いているなどで舌先を上あごにつける動きが弱くなります。この”舌足らずな”発声は小学校中学年頃から目立たなくなりますが、側音化構音障害は大人になっても改善しない場合も少なくありません。治療は舌の筋力を強くする訓練と発声訓練です。「さひすせそ」「たきつてと」などの発声になればこの病気が疑われます。私も健診時や診察時には注意して確認して、ことばの教室の先生とも連携したいと思います。
〇痙攣性発声障害の音声評価にモーラ法があります。これは「むかしあるところにジャックというおとこのこがいました」という25モーラ文を発声して、声帯の痙攣による音質・音韻・流腸性の障害発生数から評価します。筋麻痺を引き起こすボルリヌストキシンの声帯周囲への注射の治療効果をモーラ法で評価する報告がありました。痙攣性発声障害でも外転型のタイプにはこの方法では評価が難しいとの指摘もありました。
〇レーザーメスを唾石や扁桃周囲膿瘍切開に用いた報告がありました。出血が少なく傷口も早期には閉じない利点があります。
〇唾石摘出に対する唾液腺内視鏡の限界に関する報告がありました。咬筋後縁や咬筋より後方に位置する唾石や直径5mm以上での摘出は難しいようです。
〇自己免疫異常による血管炎で発症するANCA関連血管炎性中耳炎の病態に関する報告もありました。やはり感音難聴、顔面神経麻痺、肥厚性硬膜炎を発症したものの予後が良くないようです。成人の症状の強い中耳炎では、この病気の存在を常に念頭に置かなくてはいけません。全身性に血管炎が広がりますので、リウマチ膠原病内科や腎臓内科との早期の連携が大切になります。
〇好酸球性中耳炎に、2016年より重症喘息に使用可能になった抗体医薬である抗IL-5抗体製剤のメポリズマブを使用した症例報告がありました。好酸球性中耳炎はANCA関連血管炎性中耳炎とともに神経障害も来す難治な中耳炎です。治療の選択肢が増えてほしいものです。また、好酸球性中耳炎の鼓室内にステロイドのゼラチン貼付剤ジェルフォルムを留置して有効だったとの報告もありました。やはりステロイドが有効です。
〇経外耳道的内視鏡下耳科手術TEESの症例が全国的に増えています。従来の耳後切開によるアプローチのよりも骨を削除する範囲も少ない低侵襲手術です。この手術用の鉗子などの器具の開発も進んでいます。
〇2009年に開発された新しい前庭機能検査であるvHIT(video Head Impulse Test)は、回転刺激で半規管機能を評価できることから、従来の温度刺激によるカロリックテストと異なり、耳科手術の直後から検査が可能です。手術後の前庭機能の評価に用いる試みも出てきました。
〇鼻副鼻腔内反性乳頭腫の手術にかんする報告がありました。内反性乳頭腫は、典型例では顆粒状乳頭腫様腫瘤やCTでの限局性骨肥厚像を呈するとされていますが、このような所見を呈さない症例もありました。この腫瘍は良性ですが、不完全な切除では再発を生じ、悪性転化の可能性もあります。当院でも単純X線写真で限局性の副鼻腔炎様のケースではこの疾患の存在も意識しておきたいです。また、再発性の喉頭乳頭腫にワクチンを接種して再発を予防する報告もありました。ヒト乳頭腫ウイルスHPVによる乳頭腫は、子宮頚癌が最も有名ですが、耳鼻科領域でも、中咽頭癌や喉頭乳頭腫、副鼻腔乳頭腫などがあります。現在、日本ではワクチンの副反応の評価が確定していないことからワクチン接種の義務化は中止されたままです。ワクチンの有用性の検討が、耳鼻科領域でも出てきました。
〇カプサイシンには知覚神経を刺激する作用があります。この軟膏を外耳道に塗ると迷走神経鼓室枝を介して咳反射が惹起されます。このことから嚥下性肺炎を予防しようとの臨床応用の報告が徳島大学からありました。耳鼻科の観点から嚥下性肺炎の予防薬を開発できればと期待します。
〇慢性上咽頭炎とマイコプラズマ感染症の関連性を示唆する報告がありました。今回、私が最も注目した演題です。報告では、上咽頭擦過治療(Bスポット療法)を行う状態では後鼻漏やのどの違和感が続くことから、マイコプラズマ感染症との類似点が多いことに注目して、慢性咽頭炎患者のマイコプラズマ感染の有無を調べたところ、有意にマイコプラズマの抗体価が高いと報告しています。私も上咽頭炎の亜急性期にはマイコプラズマやクラミジア感染もトリガーになっているケースがあるような気がしてなりません。
  19日   日本2-1コロンビア やりました! 信じられません!!

 落ち着いて、引き続き演題のチェックです。
〇耳管開放症の検討で、診断には耳管鼓室気流動態法(TTAG)が有用ですが、これを機械測定ではなく視覚的に捉える方法が提唱されています。方法は鼓膜鏡で鼓膜の所見を記録しながら、バルサルバ法(患者自身が鼻に陽圧をかけて中耳へ空気を送り込む方法)の後に中耳の陽圧が嚥下運動なしで解消される、鼻深呼吸時に鼓膜が振動する、鼓膜動揺があれば鼻すすりによる陰圧ロックがある、などがあれば耳管開放と判断します。当院でも応用可能と思われました。
〇癒着性中耳炎には隠蔽性耳管開放症が潜むとされ、術後の再癒着の防止には術前にTTAGなどでの耳管開放の評価が必要との報告がありました。
〇耳硬化症や鼓室硬化症のアブミ骨固着に対する手術に、耳内切開法やレーザー併用手術の報告が増えてきました。
〇側頭骨由来の炎症性腫瘤性病変は従来、炎症性偽腫瘍と呼ばれていましたが、近年疾患分類が細分化されてきています。炎症性筋繊維芽細胞性腫瘍、IgG4関連硬化性病変が挙げられます。ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)も骨破壊性や腫瘤形成性を基に分類の細分化が提唱されています。
〇圧外傷後に難聴、めまいを生じる疾患に外リンパ瘻がありますが、確定診断法として外リンパ瘻特異的蛋白CTPを中耳で検出する手法が開発されました。今回、圧外傷後の難聴・めまい症例の20%でCTP陽性との報告がありました。保存的治療法としては、 瘻孔が自然閉鎖する可能性があるので、まず脳脊髄圧を下げる目的で頭を30度挙上した状態で安静を保ちながらステロイドを使って治療します。突発性難聴や内耳性めまい症とされるものの中には、外リンパ瘻を発症機序とする症例は想像以上に多いかもしれません。私も急性の難聴やめまいでは、圧外傷の既往が無いかどうか問診段階でしっかり確認したいと思います。  
〇血液検査や皮膚テストでアレルギーの存在が出来ないのに鼻粘膜内に特異的IgEが存在する局所アレルギー性鼻炎という概念が提唱され、その報告がされました。
〇スギ・ヒノキによる春季花粉症の30~60%に咳嗽の合併が報告されています。
〇小児の抗原感作の検討で、ダニや動物抗原は0才より、スギなどの花粉抗原は3才から抗体上昇がみられる傾向がありました。
〇舌下免疫療法で、スギとダニの2剤併用を行う施設からの報告がありました。1剤で開始した後、副反応がなければ2ヶ月後に2剤目を開始。先行剤を夜に、追加剤を朝に舌下し、1ヶ月後に副反応なければ5分間隔での服用としています。
〇歯性上顎洞炎がインプラント治療の増加や不完全な根管治療で増えています。CTで根尖のう胞、溶骨変化、上顎洞歯根部の交通があっても診断が困難なことが多いとの報告がありました。
〇乾癬やアトピー性皮膚炎で用いられているナローバンドUVB光線をがアレルギー性鼻炎モデルラットの鼻粘膜に照射すると、鼻粘膜H1受容体遺伝子発現更新を抑制したとの研究報告がありました。徳島大からの報告です。
〇頚部リンパ節転移を発見の契機とした甲状腺内に微小な原発巣が後に見つかる甲状腺オカルト癌の報告がありました。
〇中咽頭癌は、ヒト乳頭腫ウイルス関連中咽頭癌と喫煙飲酒関連頭頸部癌のタイプがありますが、エピゲノム解析による層別化や放射線照射感受性に関する遺伝子の同定の報告がありました。これからの頭頚部癌の治療に、遺伝子解析が重要な武器になってきそうです。  
  17日  梅雨明けのような暑い日が続いています。石鎚連山の上には入道雲もかかり始めました。例年より流行の立ち上がりは遅いものの、ヘルパンギーナのお子様も見られ始めました。
 少し専門的にはなりますが、今月行われた日耳鼻総会学術講演会の演題から私が注目したものをピックアップしてみます。

〇人工中耳手術VSBが保険適応となり、小耳症を伴う外耳奇形症例への適応が報告されました。VSB(Vibrant Soundbridge)は従来型補聴器の装用効果が十分に得られない感音難聴患者を対象にしたキヌタ骨を直接振動することで聴取能を改善する半植込型電磁式人工中耳です。2015年に我が国の13施設での検討を基に日本耳科学会からマニュアルが出されました。愛媛大もこのワーキンググループに参加しています。
〇成人の人工内耳適応基準が2017年に改定になりました。平均聴力70dB以上90dB未満かつ補聴器装用下の最大語音明瞭度50%以下の症例が追加適応となりました。言語習得前や言語習得中の失聴例には慎重に対応するようにとの記載があるために、小児への適応は直ぐには広がりませんが、成人の手術件数は確実に増えそうです。
〇残存聴力活用型人工内耳(EAS)も2014年に保険適応になり、その報告も増えてきました。EASは蝸牛内に電極を挿入して中高音部を電気刺激する人工内耳と、低音域を音響刺激するハイブリッド型のシステムです。
〇術中コーンビームCTによる人工内耳手術の評価が行われています。当院に設置されているコーンビームCTですが、コンパクトで骨の分解能が良いことから、耳や鼻の術中の評価にも有用です。
〇新しい抗がん剤ネダブラチンに使用経験が発表されています。従来の頭頚部癌領域で最も一般的で有用な抗がん剤は白金製剤のシスプラチンですが、これは腎機能障害や心機能障害があると投与に制限がありました。ネダブラチンはシスプラチンより毒性が少ないとされています。シスプラチンと同等の有効性が認められれば腎機能障害の患者にも広く使えそうです。
〇耳科領域でのステロイド投与時のB型肝炎対策が取り上げられました。2017年のB型肝炎治療ガイドラインでは、免疫抑制作用の薬剤を投与した際にB型肝炎ウイルスが再活性化することによって起こるde novo B
型肝炎が取り上げられました。顔面神経麻痺やめまい、突発性難聴など耳科領域では免疫抑制作用のあるステロイドをよく使用します。報告施設ではステロイド使用例には全例B型肝炎のスクリーニング検査を行っています。耳科領域で使用するレベルのステロイドの量では肝炎の誘発は少ないとされていますが、臨床の場での慎重な取り組みも必要だた感じました。
〇突発性難聴に対する高圧酸素療法の開始時期に関する検討がありました。潜水病の治療に用いられる高圧酸素治療施設は労災病院系に備えられることが多く、全国的にも設置施設は限られています。愛媛では松山済生会病院に設置されています。当院からも突発性難聴の治療のために患者様を紹介したことがありました。私も紹介のタイミングが難しいと感じました。発表では発症12日以内の開始が高い効果が得られるとしています。やはり治療のゴールデンタイムは2週間以内です。
〇遺伝子の異常による難聴の報告がありました。小児期の難聴の50~70%が遺伝的で、非症候性難聴の原因として既に約100種類の遺伝子異常が報告されています。今後も新たな遺伝子異常の報告が続くものと思います。これらのデータが蓄積されると、今後、遺伝子治療によって難聴が治療できる例も出てくるかも知れません。
〇皮質聾の診断にMRIが有用だったとの報告がありました。皮質聾とは大脳の損傷により聾を来す中枢性聴覚障害ですが、どこが障害されれば聾となるのかといった責任部位はこれまで同定さていませんでした。かすかな脳の障害をMRIで判断して皮質聾の部位診断が今後可能になりそうです。 
  16日   ついにロシアW杯開幕です! 開幕戦、ロシア5-0サウジアラビアでした。サウジはランキング格下のロシアに大差で敗れました。私はサウジの実力は日本と同レベル程度と感じていたのですが、アジアのレベルはやはり低いのでしょうか? 開幕戦が行われたモスクワのルジニキスタジアムですが、モスクワ五輪の主会場、世界陸上の会場から改装してW杯メインスタジアムになっています。収容人数は8万1千人とのこと。改装されてサッカー専用競技場仕様となっていますので、野球や陸上の競技場よりフィールドがぐっとコンパクトになって、観客席が迫っています。8万人強でこれだけの密度のスタジアムはさすがW杯主会場ならではです。ゴールの直後など、きっと地鳴りのようなサラウンドなのでしょうね。一度体験したいものです。 
  10日   関東も梅雨入りです。当初、空梅雨だった松山も本格的な梅雨空です。私は朝鮮情勢について、初夏までに米軍の軍事作戦もあるだろうと半ば覚悟していたのですが、当面静かな夏になりそうです。今週末にはいよいよロシアW杯の開幕です。愛媛県庁本館には「祝 W杯3大会連続出場 長友佑都選手」の垂幕です。西条市出身の長友選手。31才で驚くほどの運動量を維持しています。ハリルホジッチ監督の下でも西野新監督の下でも文句なしの当確出場でした。今回のW杯、私も前回までの高揚感はありませんが、日本人らしいチームワークで、予選リーグでのサプライズを見たいものです。
 耳鼻咽喉科専門医に続き、今月は気管食道科専門医の更新手続きも滞りなく進みました。先週横浜で開催された日耳鼻総会ですが、今回は専門医の単位取得の関係で、秋の専門医講習会出席を優先させました。例年ならば総会学術集会の発表を聞いて耳鼻科知識のアップデートしていたのですが、今年は、学会誌を基に新しい知見をチェックし、このコーナーで紹介していこうと思います。
 最近当院では、慢性上咽頭炎の精査やBスポット治療を希望して受診される方が増えています。今年2月発刊の新書「つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい」で当院が治療医療機関一覧に掲載されたこともあり、同書を読んで来院される方が増えました。中には香川や高知から来られる方もおられ、先日も高知の総合病院耳鼻科より紹介された例もありました。他県など遠方より来院した方はどうしても定期的な通院が難しいですので、まずは自宅で可能な治療をして頂くとともに、症状悪化時にまた当院に相談するようお伝えしています。この新書の著者の堀田先生の2001年以来の発表や日本病巣疾患研究会の活動報告を機会に、私も改めて上咽頭の所見をしっかり取るよう心がけるようにまりました。そうすると、以前は鼻過敏症でアレルギー素因や好酸球性、薬剤過敏症のないものを主に血管運動性鼻炎としていましたが、その中には慢性上咽頭炎が刺激となって引き起こされた鼻過敏症や後鼻漏症候群も案外多いことが分かってきました。アレルギー体質が無いのに鼻炎症状が強いケースでは、上咽頭を積極的に観察するようにしています。 
6月  3日   一昨日、今日と手足口病のお子様の来院がありました。手足口病は冬にも散見されていましたが、この夏は一昨日が初めてです。手足口病やヘルパンギーナでは口内炎が多発することから、子供さんが急に何も食べなくなったとお母さんが心配するケースもあります。また、アデノウイルスによる咽頭炎も徐々に増えています。徐々に夏風邪が増えてきました。
 1日より、松山市忽那諸島の中島小学校6年生が学年閉鎖となりました。一昨日は当院近隣の小学校の先生がインフルエンザを発症したとの報告もありました。当院でも3日前に3才の子供さんがA型陽性でした。中島小学校の学級閉鎖も、A香港型によるものと思われます。6月の学級閉鎖は全国的にも珍しいと思います。中島小、中島中は、私も以前に1年間だけ松山耳鼻科会の持ち回りで校医を担当していました。看護師2名とともに高速艇で中島に渡り学校健診を行いました。確か、怒和島の怒和小学校と津和知島の津和知小学校の生徒も集まっていたと思います。広々とした校舎で、生徒たちがみんな健やかで快活だった印象があります。

 抗生物質(抗菌薬)を乳幼児が服用するとアレルギーの発症率が増えるとのニュースがありました。国立成育医療研究センターの研究グループによると、抗菌薬を2才までに服用した乳幼児は、アレルギー疾患の発症リスクが、服用経験のない乳幼児と比べアトピー性皮膚炎1.4倍、鼻炎1.65倍、喘息1.72倍になる、ペニシリンよりも広範囲の細菌に効く第3世代セファロスポリン薬ではさらに喘息や鼻炎の割合が増えたとの報告です。中耳炎や副鼻腔炎、扁桃炎は細菌感染が多いために抗菌薬を処方する機会の多い耳鼻科医にとってはショッキングなニュースです。研究グループでは、この原因を、抗菌薬によって免疫の制御に重要な腸内細菌がいったん死滅し腸内環境が悪化することが関与している可能性があるとしています。以前より、アレルギー疾患の小児期の増加や発症の若年化の機序について、3才児まで清潔な環境過ぎるとアレルギーを抑制する制御性T細胞が増えない、動物性蛋白の摂取が増えた、環境汚染物質(PM2.5など)の増加、1960年代から小児の寄生虫感染が減り寄生虫をブロックする作用のIgE抗体がアレルギー機序への関与が増えた、などの様々な報告があります。ここ10年で、腸内細菌の免疫への関与も注目されており、腸内細菌叢が乱れるのはアレルギーに対して良くないとの研究が出てきています。子供は清潔過ぎるより、泥んこ遊びなどで”汚い”方がアレルギー発症予防の観点からは好ましいとの考えも耳にしたことがあります。小児の鼻の奥の扁桃組織であるアデノイドに細菌が常在感染化していたほうが、アレルギー体質になりにくいかもしれません。しかし抗菌薬が効かないウイルス性急性上気道炎の回復期に細菌感染巣が活動化して、二次感染としての中耳炎や副鼻腔炎、扁桃炎が急性化したり慢性化遷延化します。小児の細菌性中耳炎のどのタイミングでどの種類の抗菌剤をどれくらいの期間投与するのがベストなのか? 抗菌薬投与で清潔化した組織の細菌叢がどう変化するか? 腸内細菌が乱れることが今後のアレルギー疾患の発症にどう影響するのか? 今後の研究発表にも注目しながら、小児の中耳炎をはじめとする細菌感染の治療を進めたいと思います。 
     
  29日   昨日、松山が平年より8日早く梅雨入りです。梅雨入りが遅かった昨年より3週間以上早くなっています。梅雨入りでイネ科雑草花粉症のシーズンは終わり、ダニやカビによるハウスダストアレルギーの季節になります。また気温や気圧の変化が大きく冷房も入ることから気道過敏症やメニエール病、片頭痛など気圧の変動が悪影響を及ぼす病気の季節にもなります。昨日、今日と早速、メニエール病や気管支喘息の増悪した方が目立ってきました。また汗ばむ季節にもなることから、外耳炎の方も徐々に増えてきました。
 タミフルの10才代への投与が再開することになりました。インフルエンザの来シーズンに間に合うように添付文書を改訂するとのことです。ゾフルーザ、タミフルと来シーズンの小児は経口薬による治療が基本となりそうです。 
  22日   5月に入ってもまだインフルエンザが見られます。当院では、A型が幼児、中学生、成人の方で4名、B型が小学生の1名で検出されました。いずれも新しい抗インフルエンザ薬のゾフルーザで早期に解熱しています。中学生達はちょうど修学旅行の前でしたが学校保健法の出席停止期間と重ならずに、無事旅行に参加できました。(^-^) ゾフルーザは革新的新薬として厚労省から先駆け審査指定制度の対象品目となり早期承認の上、緊急薬価収載で今年のインフルエンザシーズンに間に合うよう3月14日に発売されました。薬価収載後の薬剤の有効性や副作用情報を得るための市販後調査も早期に始まりました。当院でもこの調査に協力しており、今月にゾフルーザを服用された患者様には、服用後の体温の経過などを教えて頂きました。通例の市販後調査と異なり自宅での経過を報告する様式になっています。調査に協力頂いた方々には誠にありがとうございました。
 また、当院では今月、咳が長引く方にマイコプラズマ感染症の方が多い印象があります。愛媛県感染症情報センターの報告では特に増えてはいませんが、今後の動向に注意してみます。

 めまいで来院された方に、小脳出血のケースがありました。当院より総合病院に救急搬送しました。小脳出血の早期には症状がめまいだけの場合もあります。しかし、出血部位が広がると命に係わる場合もあります。耳鼻科は内耳性のめまいを中心に診察する神経耳科ですが、今回のように時には脳卒中として一刻を争う病態の患者様の受診もあります。重症の病態を見逃さない的確な診察、迅速な病診連携を心がけたいと思います。
 甲状腺の腫れた方の診察が続きました。亜急性甲状腺炎で甲状腺ホルモンのバランスの経過を診た例、甲状腺嚢腫でエコー検査→穿刺吸引→細胞診を行った例、甲状腺腫瘤に針生検を行い甲状腺腺腫が疑われた例などが続きました。腫瘤の多発した腺腫様甲状腺腫も含めて甲状腺腺腫の大部分は良性です。ですが、濾胞癌のように細胞診で診断のつきにくい癌の可能性があったり、大きくなると気管を圧迫するなどの症状があったりすると手術的な摘出も考えます。大きさでの手術基準も提唱されており、3~4㎝以上の大きさでは手術も考慮するという立場が多いようです。当院でも腫瘤の大きさが2㎝以上の場合には、患者様と相談の上、手術を行っている高位の病院に相談するようにしています。 
5月  9日   今日は、今年度最初の学校健診出務でした。小学校に着いた時間はちょうど掃除の時間でした。20分間、みんなしっかりと掃除に励んでました。健診では、いつもながら皆さんから元気をもらいました。
 例年なら4月、5月にも散発して見られるインフルエンザですが、1月から3月に大流行した影響か、当院では4月中旬を最後に見られなくなりました。4月25日国立感染研の発表では、今シーズンにインフルエンザになった推計患者数は2230万人を超え、統計を取り始めた過去19年間で最多だったそうです。たはり多かったのですね。発症者が2200万人ならば、症状が出ないで感染した不顕性感染者も同数以上にいたと考えられます。少しだるい、のどがヒリヒリするといった軽症者も含めれば、国民の半数以上はインフルエンザが体内に入ったでしょうね。今年のインフルは国民病レベルでした。 
     
  29日   快晴の清々しいゴールデンウィークになりました。この冬から春にかけては、インフルエンザの流行の長期化、ヒノキの大量飛散による花粉症シーズンの長期化で、忙しい外来が続きました。私はこの連休にゆっくり骨休みしいたいと思います。

 免疫力の低下が疑われたお子様を大学の小児科に紹介していました。精査の結果、自己炎症疾患のひとつであるPFAPA症候群が疑われるとの回答を得ました。PFAPA症候群はPeriodic fever(周期性発熱)、aphtha(アフタ性口内炎)、pharyngitis(咽頭炎)、adenitis(頚部リンパ節炎)の頭文字から1999年に提唱された自然免疫系の免疫低下による新しい概念の疾患です。2000年代にわが国でも20例が報告されています。免疫機構には、T細胞や抗体を介して特定の病原体を防御する獲得免疫と、マクロファージや樹状細胞・NK細胞・好中球を介して病原体の共通部分をパターン認識して応答する自然免疫があります。紹介するまで私は、獲得系の免疫異常を疑い、好中球と免疫グロブリンの異常の無いことまでは確認して紹介していましたが、結果は自然免疫系の異常が疑われるとのことでした。私も大いに勉強になりました。医学医療の教師は患者様であるという認識を新たにしました。治療をすすめることで、このお子様が良くなることを願っています。調べてみるとPFPA症候群は5才以下の乳幼児が発症し、多くは4~8年で自然寛解します。また要因は解明されていませんが、扁桃腺の摘出手術が著効とのことです。耳鼻科領域でも、2010年に亀田総合病院の上羽氏から「周期性発熱でPFAPA 症候群と診断後,扁桃摘出術を施行し軽快した症例 ―PFAPA 症候群の診断と治療―」との論文が発表されています。この病気の概念が普及して診断される小児が増えると、今後、この治療には耳鼻科医が関わってくる事が増えると予想されます。扁桃腺は、上気道の入り口に位置する免疫組織で、その局所での免疫反応や炎症反応だけでなく、病巣感染という他の臓器での障害を引き起こす組織としても知られています。慢性扁桃炎が、腎臓でIgA腎症で、皮膚では掌蹠膿疱症で、関節では胸肋鎖骨骨化症の発症や増悪に関与することが明らかにされており、その他の自己免疫疾患や膠原病との関連も研究されています。PFAPA症候群をはじめとする自己炎症疾患と自己免疫疾患や膠原病との因果も今現在研究課題となっています。耳鼻科医がなにげなく小児の習慣性扁桃炎として経過を診ている症例の中には、自然免疫系の機能が低下しているケースも案外多いのかもしれません。耳鼻科でも新たな研究領域となりそうです。耳鼻科を目指す研修医の皆さん、ぜひ病因や病態、治療法を突き止めて下さい。
 以下、自己炎症性疾患のまとめを作りました。

自己炎症性疾患:主に自然免の調節機能低下。1999年に提唱された。遺伝的な場合とない場合がある。
 症状:自分で勝手に炎症が起こり、周期的な発熱、関節・臓器の急性炎症の発症と自然な改善を繰り返す
 検査:遺伝子検査など
  遺伝性:周期性発熱(家族性地中海熱、高IgD症候群/メバロン酸キナーゼ欠損症、TNF受容体関連周期性症候群)
  NLRP関連疾患(クリオピリン関連周期性発熱症候群、NLRP12関連周期熱症候群)
  肉芽腫性疾患(ブラウ症候群/若年性サルコイドーシス)
  化膿性疾患(PAPA症候群、Majeed症候群、IL-1受容体アンタゴニスト欠損症)
  非遺伝性:PFAPA (Periodic fever ,aphtha ,pharyngitis, adenitis) 症候群:5才以下で発症、最も頻度が高い
   症状:3~6日間続く周期性発熱発作、アフタ性口内炎・頸部リンパ節炎・咽頭扁桃炎の併発、発作を3~8週間毎に繰り返し、間欠期に無症状、4~8年で寛解、成長発達障害を認めない
   治療:制酸剤(H2ブロッカー)、ステロイド(一時的効果)、コルヒチンなど。扁桃摘出術が著効(寛解率70~80%)
  その他:自己免疫疾患、膠原病とされる、全身型若年性特発性関節炎、成人スティル病、ベーチェット病、クローン病、遺伝性血管性浮腫、ゴーシェ病、痛風、偽痛風も自己抗体や自己反応性T細胞が認められないため自己炎症疾患類縁の可能性あり

 お笑いコンビ「松本ハウス」ハウス加賀谷氏と松本キック氏共著の「統合失調症がやってきた」を読みました。「進め!電波少年」や「ボキャブラ天国」で大人気だった松本ハウスの、当時と現在のコントをYouTubeで見てみましたが、パワフルで温かい芸風に大笑いです。大人気のさ中、1999年にハウス加賀谷氏の病状の悪化から松本ハウスは突然活動休止しました。この本では、二人の立場でこれまでの経緯を語っています。ハウス加賀谷氏は閉鎖病棟への入院も含め7か月の入院の後、10年間の長期療養を余儀なくされています。相方の松本キック氏は、その後ピン芸人を続けながら、ハウス加賀谷氏に季節に1回のプレッシャーをかけない電話を掛け続けていました。10年後、松本キック氏のプレッシャーをかけない気配りで二人はコンビ再開を果たしています。ふたりの関係がなんとも素敵です。加賀谷氏のお母様も素敵です。私は一気に松本ハウスのファンになりました。医療者としては、病状の変化と薬物治療の関係性や、医師の接し方にも学ぶところがありました。
  25日   お堀端はつつじが咲き誇っています。もうすぐゴールデンウィークです。
 夕方の診察では、まっさらの制服に身を包んだ幼稚園児が来院します。冬に見慣れていた雰囲気が急に変わって、お兄ちゃんやお姉ちゃんになっています。みんな自分の通う園の名前やクラスの名前をハキハキと教えてくれます。子供たちの成長には目を見張ります。明日、修学旅行に出発する予定の急性上気道炎の中学生が受診されました。症状の強くない”風邪”で終わって欲しいものです。聞けば28日の最終日に大阪のUSJ訪問とのこと。ゴールデンウィーク直前の土曜日です。混んでなくてアトラクションに沢山乗れればよいのですが。

 22日の週までで愛媛県のインフルエンザの発生は散発程度となり、流行終息となりました。当院でもインフル陽性の方を見なくなって今日で9日目です。B型が真冬に大流行した反動で、今年の5月はB型のダラダラとした発生はなさそうです。
 スギ花粉の飛散終了は今のところ4月18日になりそうです。ヒノキの飛散終了は5月初頭でしょうか。そろそろイネ科雑草花粉に反応する学生さんも目立ってきました。

 今年は、例年5月に当院を休診にして参加していた日本耳鼻咽喉科学会総会(今年は5月30日~6月2日に横浜で開催)への参加を見合わせ、11月の日耳鼻専門医講習会に参加することとしました。理由は、5月の総会で新専門医制度の単位を取得するための講習を受講しようとすれば土曜日まで休診にしなければいけなくなったからです。11月の専門医講習会ならば日曜日だけの休診で済みます。2年前に臨床科別ではいち早く新専門医制度を導入した日本耳鼻咽喉科学会ですが、2年前より学会の雰囲気が大きく変わりました。学術的な研究や臨床の発表よりも、専門医資格を維持するための講習受講を優先せざるをえなくなりました。講習受講会場は聴衆が一杯で、講習が終わるやいなや、会員は次の講習会場に殺到します。並行して行われている学会発表会場の聴衆は少なくなり活気がないという、ある種殺伐とした風景になっています。私は以前のアカデミックな学会が好きなのですが、、 今日は、日本の医学教育・研修の改革のお話を。
 医学界では、臨床研修→専門医制度→医学教育の順で改革が進みつつあります。
 まずは平成16年(2004年)より新臨床研修制度が始まりました。それまでは大学卒業後7割の卒業生が大学病院に残り単一診療科でのストレート研修を受けていました。私もこの世代です。卒業ととともに耳鼻科教室に入局し研修を受け、その後大学院に入学の上学位授与、その後医局の人事で関連病院に勤務しました。関連病院の人事権はその病院の院長にあるのではなく教室の教授にあり、大学は臨床や教育よりも研究が重要との雰囲気があり、薄給の研修医は生活のためにもアルバイト(これも臨床経験のためともされていました)する、という制度でした。白い巨塔の時代です。この弊害から、新研修制度が始まりました。2年間は単一科だけでなく各科を回る総合診療形式(スーパーローテイト)が必修となり、アルバイトは禁止、その代わり研修医の給与はアップしました。ドイツ式の医局講座制からアメリカ式の研修に変り、医師としての基礎的能力、プライマリケアの能力は底上げされたと思います。しかし新たな弊害も生まれました。研修医が都会の大病院に集中し地方大学の医局への入局者が激減したために大学スタッフが疲弊し、大学医局からの医師の派遣に頼っていた地方の公立病院の深刻な医師不足が引き起こされました。研究の面ではどうでしょうか。「研究論文は凄くても手術が下手な教授」は減りましたが。基礎研究と臨床研究の乖離が広がったようにも思えます。基礎医学には理学部出身者が増えました。それはそれでよいのですが、研究者には科学研究費削減やポスト不足から「ポスドク」の非常勤化により研究継続の困難化の問題も起こっています。
 二つめが先に紹介した新専門医制度の改革です。これまで標準的な仕組みがなく102科目まで増えた独自基準の専門医ではなく、医師の質の向上と医師の偏在にも配慮した制度を作るとされました。従来の専門医は学術集会への参加実績だけで更新できるものも多かったのですが、新制度では、経験症例数などの活動実績を更新要件としました。診療実績の証明、専門医共通講習の受講、診療領域別講習の受講、学術実績・診療以外の活動実績の4項目を積み重ねることで更新が可能となる仕組みです。私も2年前から、毎週のケースレポ―トの作成が義務付けられています。医療倫理や感染症対策などの専門でない医師としての共通課題の講習の受講も義務付けられました。その方針やよしですが、一般的な倫理や感染症などの講義を更新毎に受けなければならないのか? 登録医制度で使われているような自宅でも受講できるe-ラーニングというインターネット上の講習ではだめなのか? 実際の領域別としての耳鼻科講習は専門医としての基礎となる最低レベルの講習です。専門医としてのレベルを上げるには学会発表レベルの講習も必要なのではないか? 結局、厚労省の天下り先が増えただけでなないのか、などの批判の声も聞こえてきます。私にとって新制度は負担ばかり増えて、実が少ない印象です。
 三つ目は教育改革です。既に改革は行われています。臨床実習に進む前に、全国の医学部共通の共用試験CBTと各大学で客観的臨床能力試験OSCEを行い、合格者が臨床実習に進む制度がそれです。私の学生時代にはありませんでした。卒後の国試受験前の臨床実習に参加するレベルでも、一旦全国的なレベルの達成を確認するのはよいことだと思います。今回さらに、2023年問題が起こりました。これは、2010年に米国のECFMG(外国医学部卒業生のための教育委員会)が、米国での医師免許試験の受験資格について“国際基準による認証を受けた医学部の卒業者”という要件を2023年以降は必須化すると通告したことによります。これまで日本の医学部卒業者は,米国の医学部を出ていなくても日本の医師免許があれば米国の医師試験が受験可能でした。日本の医学部は米国と同じレベルとして高く評価されていたのです。ところが2023 年からは国際基準による医学教育を行っているとする認証を受けた医学部の卒業生に限られることになりました。日本の国試合格者で米国の試験を受けるのは毎年60人程度でしたので、急に国内で困る問題ではないのですが、やはり日本の医学教育レベルが国際標準と認められないということは、ひいては医学レベルが国際標準でないことにも繋がることから、医学部の外部評価を実施しようという国内での改革が始まりました。そこで2015年に医学教育を査定する公的機関として日本医学教育評価機構JACMEが新設され,独立した立場での第三者評価活動を開始し、遅くとも2023年までに,日本の全ての医学部の教育評価を実施することとなりました。この評価が低いと、大学の教育レベルが低いと判定され、ひいては研究費や研究棟建設などの予算処置でも差別化される可能性があることから、各大学の目の色が変わってきています。現在の日本の教育カリキュラムを国際認証基準と比較すると臨床実習の不足が最も目立つそうです。先日、10年後には医師の需給が充足されるとの予測が発表されたことから、4年後には医学部入学定員を削減に転じようとの委員会報告が出ています。将来は、医師数の需給が充足された後さらに過剰になると、現在の歯学部のように国家試験の合格率を落とすことで医師の増加を抑える方向に向かうかもしれません。これからの医学生は、臨床実習は増えるは、座学中心の国家試験は難しくなるは、で大変になりそうです。 
  18日   ボストンマラソン、公務員ランナー 川内優輝さん、日本人としては瀬古選手以来31年振りの優勝おめでとうございます! 川内さんは昨年の愛媛マラソンも大会新記録で優勝していました。私は録画で観るだけでしたが、テレビの中で見慣れた沿道の景色がみるみる流れていくその速さにはビックリしていました。川内さんは埼玉出身で愛媛が地元ではありませんが、テレビで応援したことのある選手でしたので、私は身近な選手に感じていました。31才、昨年の世界選手権の結果から日本代表の引退を表明していたそうですが、衰えない努力と向上心には脱帽です。

 黄砂は例年3月~5月にかけて日本に飛来します。昨年は松山の初観測は5月6日と遅めでしたが、今年は4月6日に続いて、16日にも多く飛来しました。アレルギーの領域でも最近は、黄砂症や黄砂アレルギーなどの名称が一般的になりつつあります。PM2.5が一般の方にもおなじみになったのに続いて、これからは黄砂によるアレルギー対策も一般的になるかもしれません。




 ゴールデンウィークを前にして、当院のケヤキの新緑も鮮やかになってきました。玄関の満開のハナミズキにも新緑が混じってきました。すがすがしい季節です。3日前にはA型、B型とお二人のインフルの方が来院されましたが、その後は見られません。ようやくインフルエンザの流行も終息、スギ花粉の飛散も終了して、当院の春到来です。 
  15日  昨日の診察終了前に停電がありましたが、今日は診察直前までWifi通信が復旧しておらず、このままでは診察が始まってもiTcketの運用が出来ないのではとかなりあせりましたが、どうにかルーターの初期化で事なきを得ました。診察開始にギリギリ間に合い、本当にホッとしました。ご近所さんからは停電の情報を教えて頂きました。愛媛新聞にも載っていました。それによると、午後5時35分頃から、余戸地区の約600戸で最大1時間20分停電したとのこと。伊予鉄郡中線の電車4本も安全確認も含めて約15~17分停車しました。原因はカラスが電柱に営巣していたためでした。局地的な停電だったのですね。それにしても四国電力の保守力には安心しました。当院では1時間弱の停電だったと思いますが、救急車並みの対応です。私はトミカでしか見たことはないのですが、きっと「よんでんの働くクルマ」電力緊急車両が出動したのでしょう。愛媛新聞の停電の記事の隣には、昨日ジェットスター成田ー松山便の出発が4時間35分遅れたとの記事も載っていました。こんなことまで載ってるんだと、地方紙のきめ細かさに改めて感心しました。 
  14日   診察終了間際に当院で突然、停電が起こりました。スワッ、漏電でブレーカーが落ちたのかと思いましたが、ブレーカーは正常でした。当院だけ?と思いましたが、余戸地区で停電が起こっていました。復旧まで30分はかかったでしょうか。レセコン本体のバックアップ電源以外は全電源消失となりました。夕闇の中、私の額帯ライトとペンライト以外の照明がなくなりました。吸引や薬液噴霧などの治療も、聴力検査などの検査も電池を用いるマイクロチンパノメトリィーや簡易聴力検査以外はストップです。診察に際しては患者様の足元を私の額帯ライトで足元を照らして、診察椅子に座って頂きました。建物や機材の倒壊はありませんが、ひょっとしたら震災後の停電した診察室もこんな状況なのかなとも感じました。停電が復旧した際には、心からホッとしました。居合せた患者様には、不安を感じさせご迷惑をおけかしました。本当は全館対応の予備電源があればよいのでしょうが、なかなか難しい課題です。

 来週18日に薬価収載される耳鼻科関連の新しい薬剤を紹介します。
 アレサガテープは抗アレルギー剤初の皮膚への貼付テープ剤です。湿布薬の有力メーカー、久光製薬が開発しました。有効成分のエメダスチンは、すでに経口薬で発売されていますが、私は独自に商品名にもじって「ダレンはだれる」と覚えていました。この成分は眠気の発現頻度が高いので、私はこれまで処方していませんでした。今回のテープ材は血中濃度のピークが低く抑えられますので眠気の発現は少なくなるものと思われます。ちなみに私がサンプル品を自身で試した際には眠気は感じませんでした。テープ材特有の問題としては、皮膚がかぶれる場合があることです。湿布薬一般として約5~10%に貼付部位の発赤やかゆみが見られます。本来、アレルギー体質の方が使用しますので、処方する際にはこのような副反応の発現に注意したいと思います。経口投与が難しいケースでは、薬剤選択の幅が広がることになるので、新薬を歓迎したいと思います。
 スギ花粉症の舌下免疫はこれまでボトルに入った水薬による滴下型がありましたが、新たにタブレット型のシダキュアスギ花粉舌下錠が登場します。従来の滴下型のシダトレンよりも高い力価で投与することができ、また従来の12才以上から5才以上と適応年齢も広がりました。薬価の設定に当たっては効果からの有用性加算と小児にも抵抗できることによる小児加算が加わったことから薬価は10%アップですが、錠剤で常温保存できる効果も高いことから、これからはシダキュアスギが主流となりそうです。
 耳鼻科関連ではありませんが、アトピー性皮膚炎で初めての遺伝子組み換えの抗体医薬品デュピクセント皮下注が承認されました。IL-4とIL-13という2つのアトピー性皮膚炎における持続炎症に関わるタンパク質のシグナル伝達を特異的に阻害するヒトIgG4モノクローナル抗体です。ステロイド外用剤では効果不十分なケースに有用とのことです。これまで気管支喘息領域では、抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤のゾレア、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体のファセンラ、好酸球を直接除去するヒト化抗IL-5モノクローナル抗体のヌーカラと、リンパ球や単球、マクロファージなどの免疫反応に関わる白血球から産生されるインターロイキン(IL)に作用するいかにも開発しましたという薬剤が複数登場し、これまでにない効果を挙げています。くやしいですが、いずれも欧米の製薬会社が開発し、薬価もびっくりするくらい高いです。今回のデュピクセントも薬価は月2回の注射で16万円と高価です。日本での年間適応患者数はどのくらいになるのか、国民医療費的には心配ですが、医療の進歩は実感できます。耳鼻科領域、アレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔炎の領域でいつこのような抗体医薬が登場するのか、待ちどおしいようなそうでないような気持ちでいます。 
  13日   春休みが終わり、中耳炎になるお子様は目に見えて少なくなりました。また、冬の間に治らず難治化、反復化していた中耳炎がようやく治ってきたお子様も増えてきました。(^^)/ 
 私は中耳炎の小児では積極的に細菌検査を行っています。その理由は、保育園や幼稚園で集団保育を受けているお子様は、どうしても耐性菌に感染する機会が多くなり、そのようなお子様が中耳炎に罹ると難治化する傾向があることから、中耳炎の病原菌を把握することが抗生物質の選択や鼓膜切開を行う必要があるかどうかの判断に役に立つからです。アデノイド肥大やハウスダストアレルギーなどによるアレルギー性鼻炎があるとどうしても、風邪に罹った後に上咽頭が乾きにくくなりますので、そのようなお子様が中耳炎を引き起こすと治りにくくなります。その上、耐性菌に感染するとより一層治りにくくなるのです。
 ここ数年の、当院の細菌検査の傾向をみると、以前よりも、肺炎球菌が減り、インフルエンザ桿菌やモラクセラ菌の検出が多くなっています。一昨年、当院が参加した多施設による中耳炎起炎菌の研究結果とも一致します。2010年の公費助成の開始により小児の肺炎球菌ワクチン接種率が高くなったことから、病原性の強い肺炎球菌による急性中耳炎が減少しています。全国的にも当院でも、鼓膜所見の強い中耳炎を呈する小児が減ってきていることから、鼓膜切開の施行数も減っています。しかしその代わりに、インフルエンザ桿菌やモラクセラ菌への感染による中耳炎が増えている印象です。
 インフルエンザ桿菌にもHibワクチンがありますが、これはインフルエンザ桿菌の中のb型に対する予防接種です。Hibは乳幼児の細菌性髄膜炎、肺炎、敗血症、喉頭炎の起炎菌として重要ですが、小児の中耳炎全体でみるとインフルエンザ桿菌はHib以外でも持続感染するケースが多いことから、肺炎球菌ワクチンほどには中耳炎の発生数の減少には貢献していないようです。肺炎球菌ワクチンも93種類ある莢膜型の内の最初のワクチンで7種類、後ででたワクチンで13種類をカバーするだけですが、重症タイプをカバーしていることから中耳炎の重症化が少なくなっているようです。インフルエンザ桿菌は細胞内寄生といってアデノイドなどの扁桃組織や中耳粘膜、副鼻腔粘膜に寄生しますので、死滅せずに除菌不良となることが多いです。またモラクセラ菌も病原性は弱いものの、βラクタマーゼという酵素を産生するタイプが多く、他の病原菌と混合感染しているとセフェム系やペニシリン系の効果を減弱する間接起炎菌として重要です。この菌は0才児より定着することが多く、この菌が主体となって症状が強くなるケースは少ないですが、やはり抗生物質の選択には注意しなければいけません。
 実際の治療に際しては、日本や米国の小児急性中耳炎の治療ガイドラインにそって、まず病原性の強い肺炎球菌に有効なペニシリン系抗生物質で治療するべきか、インフルエンザ桿菌やモラクセラ菌の感染による難治化を疑いマクロライド系抗生物質で治療すべきか、そのような判断を行うため、細菌検査が、どのような細菌に感染していて、その菌が耐性菌で抗生物質が効きにくくなっているのかを判断するために有用なのです。 
  9日   日本気象協会が東京都心で3月中に観測したヒノキ花粉の飛散量が昨シーズンの同月と比べて43.6倍にのぼったと発表しました。都心の千代田区大手町で3月に測定されたヒノキ花粉の飛散量は2878個で、昨年3月の計66個を大幅に超えたとのことです。実は松山の飛散量も昨年同時期の69倍となっています。私も松山のヒノキの大量飛散にはビックリしていましたが、今シーズンにヒノキ花粉が大量飛散したのは松山や山口県だけではなく全国的な傾向だったようです。どうしてこんなに大量飛散したのでしょうか? 日本気象協会では、3月下旬の東京は気温が高く降水が少なかったためとコメントしていますが、それにしても多すぎます。いったい何が原因なのか、今後の研究発表が待たれます。 
  8日   明日から新学期が始まります。風邪に罹って保育園や幼稚園の入園式に出席できるか心配のお母様もおられました。症状が軽く終わって無事、入園式に出席できますよう、私も願いながら診察しました。
 病院玄関のハナミズキも花が咲き始めました。同じく病院のケヤキも新緑が芽吹いてきました。春真っ盛りです。昨日は西日本に黄砂が飛来しました。例年はスギの飛散時期の2~3月に初飛来することが多いのですが、昨年はゴールデンウイークまで飛散しませんでした。今年は昨年ほどではありませんが、やや遅めの飛来でした。黄砂はアレルゲンにはなりませんが、黄砂は二酸化ケイ素を多く含んでいますので、鼻や目の粘膜に付着すると炎症を誘発します。黄砂は西高東低の風の強い日に日本に多く飛来しますので、ちょうどスギやヒノキ花粉の大量飛散の時期に一致します。そのため、花粉症の方はより反応が強くなります。黄砂の表面にはPM2.5も付着していますので、黄砂の飛来時期には高性能のマスクが有用です。
 今日の診察では、鼻骨骨折の整復を行いました。また、骨破壊の強い外耳道真珠腫の方が来院されました。鼻骨骨折の評価や、真珠腫が中耳に侵入していないかの判断にはCTが有用です。当院のCTが活躍しました。 
  7日   耳鼻科では上気道の感染症を診ます。”風邪気味”の方を診察する際は、どのような部位にどのような所見があるのか? 病原微生物は何か? どのような治療が有効か? 抗菌薬が有効か? 有効ならばどの抗菌薬がベストか? などを考えながら治療をすすめますが、病気の経過が思わしくないケースも時に見られます。このような場合には、扁桃組織が弱い、アレルギー性の粘膜で修復が悪い、糖尿病などの基礎疾患があり創傷治癒力が低下している、集団保育の環境などで頻回に感染する、難治な病原菌に感染している、複数の病原菌に混合感染している、など様々なケースがありますが、その人の免疫力自体が弱いケースにも注意しなければいけません。極端に風邪の治りが悪い場合や、全身的に複数の障害が見られる場合には免疫力の低下や自己免疫の異常の可能性も考えなければいけません。以前、耳鼻咽喉科の観点で見た膠原病や自己免疫疾患についてまとめましたが、今回、耳鼻科の観点から注意すべき免疫不全をきたす疾患についてまとめました。
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免疫不全について ~耳鼻咽喉科での注意点~

 免疫不全とは、外界の細菌やウイルス・真菌(かび)などの病原微生物から体を守る免疫が正常に働かなくなる状態です。
 耳鼻科領域では、風邪が治らず解熱しない、中耳炎・副鼻腔炎・扁桃炎を繰り返す、ヘルペスが度々発症する、外耳道や鼻の湿疹が治らない、顔面の難治性の膿痂疹(とびひ)、難治性口内炎、口腔カンジダ症(真菌症)など低病原性の微生物に対する抵抗力が弱まって発症する日和見感染症などに注意します。
 急性発症では、感染症や薬剤アレルギーによる好中球減少や白血病・多発性骨髄腫などの骨髄の腫瘍、小児では遺伝的な体質による先天性免疫不全、成人では感染による後天性免疫不全(AIDS)に注意します。

1、抗体産生機能の異常:体液性免疫―B細胞から作られる免疫グロブリン(Ig、抗体)の異常
 検査:血清IgG、IgA、IgM:免疫グロブリンの中でも感染防御に関与する
    B細胞数
    CD40リガンド:ヘルパーT細胞に発現する免疫グロブリンのクラススイッチ誘導を促進する
    Igサブクラス:IgG4欠損症などのサブクラス欠損を確認する

2、T細胞系の異常:細胞性免疫―免疫のネットワークを司るリンパ球の中のT細胞の機能低下の異常
 小児:遺伝的な先天性
 成人:AIDS―ヒト免疫不全ウイルスHIVの感染でCD4陽性Tリンパ球を破壊
  急性初期感染期:感染後2~4週。発熱、咽頭痛、筋肉痛、皮疹、リンパ節腫脹、頭痛などのインフルエンザや伝染性単核症様症状。数日~10週間で自然軽快。
  無症候期~中期:感染後6月~10年。血中に抗体が産生され、ウイルス量は減少し無症候期入り。エイズ発症前駆期(中期)になると、発熱、倦怠感、リンパ節腫脹などが出現し帯状疱疹などを発症。
  エイズ発症期:HIV の増殖とともにCD4リンパ球の破壊が進み、200㎣ 以下でカリニ肺炎などの日和見感染症。50㎣で中枢神経系の悪性リンパ腫などを発症。
 検査:末梢血T細胞数 CD4、CD8

3、好中球の異常:食細胞機能異常―病原微生物を貪食する白血球の中の顆粒球の主成分である好中球の減少による異常
 ①好中球減少症:タイプは、先天性、同種免疫性、慢性良性、周期性、低ガンマグロブリンを伴う、先天性代謝異常を伴う、Myelokathexis(骨髄好中球の異常)、薬剤(抗甲状腺薬、抗てんかん薬、抗生物質など)、感染症、脾機能亢進症、放射線、栄養など
 ②好中球機能異常: 慢性肉芽腫症、 白血球粘着不全症、好中球G-6-PD欠損症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、二次顆粒欠損症 、 Shwachman症候群など
 症状:口内炎、歯肉炎、肛門周囲膿瘍や臍炎などの皮膚化膿症。創傷治癒遅延。
 検査:末梢血好中球数1500㎣以下 (特に500㎣以下)、自己抗体(抗好中球抗体含む)、補体、骨髄検査

4、骨髄機能の異常:白血球を産生する骨髄の異常
 白血病:正常な細胞が骨髄で作られなくなることと、癌化した細胞が骨髄外で増殖することで障害を起こし、貧血、出血、感染、肝臓・脾臓の腫れ、発熱、骨痛、脳脊髄での増殖による頭痛・嘔吐などを引き起こす。
  急性リンパ性白血病;小児白血病の70%、リンパ球細胞が癌化し無制限に増殖。2~5歳での発症が多い、日本では年間500人が発症。
  急性骨髄性白血病;小児白血病の25%、骨髄球系前駆細胞が癌化し無制限に増殖、日本では年間180人が発症。
 多発性骨髄腫:B細胞から分化した抗体をつくる働きを持つ形質細胞が癌化して骨髄腫細胞化、正常な抗体の働きを持たないMタンパクが増殖。

5、その他:複合免疫不全症、症候を伴う遺伝的な免疫不全症、自然免疫不全症、自己炎症性疾患、補体欠損症など

<原発性免疫不全症を疑う10の兆候>  (免疫不全症データベース(PIDJ)より)
1、乳児で呼吸器・消化器感染症を繰り返し、体重増加不良や発育不良がみられる。
2、1年に2回以上肺炎にかかる。
3、気管支拡張症を発症する。
4、2回以上、髄膜炎、骨髄炎、蜂窩織炎、敗血症や、皮下膿瘍、臓器内膿瘍などの深部感染症にかかる。
5、抗菌薬を服用しても2か月以上感染症が治癒しない。
6、重症副鼻腔炎を繰り返す。
7、1年に4回以上、中耳炎にかかる。
8、1歳以降に、持続性の鵞口瘡、皮膚真菌症、重症・広範な疣贅(いぼ)がみられる。
9、BCGによる重症副反応(骨髄炎など)、単純ヘルペスウイルスによる脳炎、髄膜炎菌による髄膜炎、EBウイルスによる重症血球貪食症候群に罹患したことがある。
10、家族が乳幼児期に感染症で死亡するなど、原発性免疫不全症候群を疑う家族歴がある。 
  4日   今日は汗ばむような陽気でした。ここ1週間、当院ではインフルエンザに罹った人の来院は数日に一人のペースになりました。昨シーズンは5月末までダラダラとB型の発生が続いていましたが、今シーズンは1月からB型の大流行がありましたので、B型の流行も4月前半に終息して欲しいものです。
 大量飛散だったヒノキ花粉の飛散も、どうやらピークは1週間前のようです。スギ花粉症の方は、検査でヒノキ花粉の抗体を有していなくても、スギ花粉とヒノキ花粉には共通抗原性がありますので、ヒノキ花粉にもわずかに反応すると思われます。今シーズンは、スギの飛散からヒノキの飛散まで中等度以上の飛散の時期が長かったために、4月に入っても再診する方が目立ちます。慢性的に鼻粘膜が刺激を受けることから例年よりも花粉症の方で鼻出血をきたす方も多いようです。最近は狭心症などの心血管障害や心房細動などの不整脈、隠れ脳梗塞ともいえるラクナ梗塞に対しての抗凝固療法が一般的となっていますので、高齢者の方を中心に”血液サラサラ”のお薬を服薬する方が増えています。消化器領域では胃出血の増加が問題になっていますが、耳鼻科でも鼻出血には難渋します。やはり止血が”甘く”なりますので、どうしても圧迫止血用のガーゼを長めの期間留置するケースが多くなります。


 今年は診察が忙しかったこともあり、私はお花見をせずじまいでした。今日の夕方は、久しぶりに愛媛大学中央図書館に立ち寄れました。やはりキャンパスの空気感は格別です。写真は社会共創学部前の桜です。愛大キャンパスの中でも、この桜は決して大きくはないものの、1本しっかりと立っていますので、なぜか毎年印象に残っています。
 社会共創学部、、地元の私でもあまり知らない学部です。以前は違う学部の建物だったようなと思っていたところ、なんと3日前に新しく開設された学部でした! 大学のホームページを見てみると、「商店街が賑わいを取り戻すには— 俳句文化を観光資源とするには— 社会共創学部は様々な地域社会の持続可能な発展のために、地域の人達と協働しながら、課題解決策を企画・立案することができ、地域社会を価値創造へと導く力を備えた人材を育成します」とあります。産業マネジメント学科ー産業マネジメントコース、事業創造コース 産業イノベーション学科ー海洋生産科学コース、紙産業コース、ものづくりコース 環境デザイン学科ー環境サステナビリティコース、地域デザイン・防災コース 地域資源マネジメント学科ー農山漁村マネジメントコース、文化資源マネジメントコース、スポーツ健康マネジメントコース と地方大学ならではの斬新なコースが並びます。紙産業、海洋生産、農村漁村、文化資源と、愛媛ならではが並んでいます。主な研究をみてみると、安全・安心な地域構築のための実践研究、農産物直売所を核とした地域活性化の新展開、東アジアの生業と社会の地域的形成過程、鉄道黎明期の愛媛県、愛媛県内中小企業の景況感に関する調査、生簀網清掃用自動ロボットの研究、開発途上国の貧困問題を背景とする小規模金採掘による水銀汚染に関する研究、都市地域計画における社会的合意形成に関する研究、排水中の微量化学物質除去のための機能紙の開発、衰退商業地におけるワークライフバランス起業の実態に関する研究など、愛媛のためになる実践研究が並んでいます。地元企業も早速寄付講座の開設で協力しています。愛大、なかなかやります。 
4月  1日   今日は2年に一度の診療報酬改定日でした。今回の改定では特にレセコンの不調も起こらず、無事、診療を終えることができました。ホッとしています。今回の改定からは、妊婦さんの診察の管理のために「妊婦加算」として初診、再診ともに38点(3割負担で自己負担額110円)負担が増えることとなりました。妊婦さんにはお手数ですが、出産予定日をお聞きしなければいけません。ご協力お願いいたします。
 3月28日水曜日にヒノキ花粉が過去最大規模に大量飛散しました。今週の診察では、花粉症の方々から「お薬の効きが悪い」とお聞きすることが多かったのですが、とりあえず合点です。症状の強い方には、個々の症状に応じて、お薬の追加や変更をさせて頂きました。スギ花粉の飛散量は、このままいけば例年の約半数程度になりそうです。東予は前年よりも多い飛散数ですが、松山の飛散は”予想以下”で終息しそうです。
 ここ3日間、ようやくインフルエンザ陽性の方を見なくなりました。例年以上に長かったインフルのシーズンもようやく落ち着いてきました。小児ではヒトメタニューモウイルスの感染が目立ちました。

  音響外傷、難治性鼻出血など。  
     
  29日   ヒノキ花粉の本格的な飛散が始まりました。26日月曜日には大量飛散しました。27日の朝には、車のフロントガラスが薄っすらと花粉で黄色くなっていました。スギ花粉の大量飛散時にはよくお目にかかる光景ですが、ヒノキ花粉で花粉が可視化されたのは、私にとって初めての経験でした。ヒノキは過去最大規模の飛散だったようです。27日から今日まで当院では急に花粉症症状が悪化した方が多数来院されました。多くはヒノキ花粉による悪化だと思われます。 
  25日   本日の診察終了後に、4月からの診療報酬改定に向けたレセコンのソフト更新を行いました。毎回思うことですが、正式な改定内容は3月に慌ただしく決まります。運用の細かな通達はその後も出てきます。どの業界でも年度末は慌ただしいと思いますが、特にレセコン業界の改定年度の慌ただしさは群を抜いているかもしれません。過去からの診療報酬の規定を列挙した”白本”は厚さが5㎝にはなるでしょうか。白本の内容は複雑すぎて全容を完全に理解してI人もいないと、以前に何かの話題で聞いた覚えがあります。限られた優秀な厚生官僚の中には理解している人はいる?のレベルでしょう。診療報酬改定は、医科(外来、入院)、歯科、薬科、介護、薬価と多岐に渡ります。日本に残る数少ない公定価格で定められた業種です。国民皆保険制度は、厚労省を中心とした行政の力によって維持されています。

 全国から例年より早い桜の満開の情報が続々届いています。当院のスギ飛散の最後のピークは、1週間前の16日金曜日になりそうです。これからは大きな飛散はなく徐々に飛散も少なくなりそうです。ここ数日の診察では、急に花粉症症状が強くなったと思い来院された方の大半が、実は風邪に罹って鼻炎症状が強くなったケースでした。スギの飛散のピークが終わり、代わって先週からはハンノキの飛散が目立ち始めました。これからさらにヒノキ花粉の飛散が本格化します。
 この週末は春休み入りしたにもかかわらず、やはりインフルの方の来院が続きました。さすがにこれからは集団発生は見られなくなると思われますが、今シーズンは注意報レベルの発生が4月上旬まで続きそうです。

 代表的な性感染症である梅毒の患者報告数が、日本では2011年より増え始め、2013年からはさらに急激に増えています。特に10才代後半から20才代の女性の発生が増えています。この傾向は日本だけでなく、他の先進国でも見られています。性習慣の変化から、口からの感染も増えていると考えられます。当院でも時に性感染症を心配しての来院もありますが、多くはありません。診察時に患者様がこっそりと心配事を伝えて、私がこっそりと対応するといった診察です。多くの一般の方は自身の風邪症状が性感染症によるものとは思わずに受診されていますが、2013年からの梅毒の発生状況を見ると、私にもこれまで以上に、性感染症の存在も念頭に置いて病原微生物が何かを考えながら進める診療が求められています。特に青年層の方の難治性口内炎には注意して、プライバシーに配慮した慎重な問診を行いながら診察を行いたいと思っています。この機会に、耳鼻咽喉科医の観点からみた性感染症についてまとめてみました。また、結核も重要な感染症で、肺外結核が耳鼻咽喉科領域でも時に見られます。こちらも同時にまとめてみました。

 のどの感染症 ~性感染症と結核~

 風俗の変化による性感染症の口からの感染の増加、海外との交流が増すなどの要因での結核の増加が見られます。注意すべき病原体とその咽喉頭の所見について説明します。

1、クラミジア・トラコマティス:性器クラミジアは毎年45万人以上が新規に感染、不妊症の原因(米国では年間15~20万人が卵管炎で不妊、その1/4はクラミジア感染)
上咽頭炎:10代後半~20代に注意
診断:うがい液からのPCR法
治療:ジスロマック1g単回投与が著効、クラリス・ビブラマイシン・合成抗菌剤7日投与も有効、耐性菌の報告なし

2、梅毒:日本では2013年以降急増中、20代前半女性で著明増加
Ⅰ期:感染後3週間、初期硬結と中央のびらん潰瘍化(硬性下疳)⇒リンパ節腫脹⇒第2潜伏期
 オーラルセックスでは口腔粘膜や舌、口唇、口蓋扁桃に硬性下疳が出現
Ⅱ期:感染後3ヶ月、皮膚の発疹(バラ疹、丘疹性)、口角の扁平コンジローマ
 口腔粘膜の粘膜斑(バタフライ様所見、ベーチェット病様の所見)
診断:脂質抗原とTP抗原で判定
Ⅰ期の10%はTP抗原のみの陽性もあり再検査も考慮、TP抗体があっても再感染する
治療:ペニシリン内服が著効

3、淋菌:1回の性行為による感染率は30%と高い、感染しても免疫は得られず再感染を起こす。男性尿道炎の1/3が淋菌、1/3がクラミジア、1/3がマイコプラズマ
淋菌性咽頭感染:性器に淋菌を持つ1~3割が咽頭にも保菌、症状所見は乏しいが一部に咽頭炎・扁桃炎
診断:上咽頭擦過物やうがい液からのPCR法
治療:ロセフィン静注単回投与が著効

4、マイコプラズマ・ジェニタリウム:クラミジアと同様な病原性、1980年に初めて英国で分離された病原菌のため、咽頭での研究報告例はまだ少ない
治療:ジスロマック2g単回投与、グレースビッド7日投与、両者の耐性菌の報告も見られ始めた

5、単純ヘルペスウイルス(HSV):オーラルセックスによる性器ヘルペス初回感染;Ⅰ型で症状強い、Ⅱ型で軽い

6、ヒト乳頭腫(パピローマ)ウイルス(HPV):2013年4月定期接種化、同6月副反応により積極的推奨の中止(ただし希望あれば接種は可能)
16型18型などのハイリスクHPV:子宮頚癌の96%、中咽頭癌(扁桃癌)の63%(扁平上皮癌に比べ若年、非喫煙・非飲酒多く、放射線や抗がん剤治療が奏功)
6型11型などのローリスクHPV:尖圭コンジローマ

7、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、AIDS:現在、治療開始3ヶ月でウイルスは検出限界以下となり、非感染者と同様の日常生活を送ることが可能となっている
急性期:感染後2~4週間、HIVの急激な増殖でCD4陽性リンパ球が破壊
 発熱・咽頭痛・下痢などのインフルエンザ様症状や皮疹、数週間以内に自然消滞
無症候性キャリア期:約10(2~15)年、CD4陽性リンパ球数の低下により免疫力は徐々に低下
 下痢、体重減少、帯状疱疹、口腔カンジダ症など
エイズ期:免疫力の低下から弱毒性の病原体による日和見感染症や悪性腫瘍、神経障害、20~40代男性注意
 伝染性単核球症様の所見(高度な扁桃炎、発熱、リンパ節腫脹)、頻回の帯状疱疹、口腔カンジダ症や難治性口内炎、結核
検査:保健所でも可能、プライバシーに配慮した検査報告様式

9、結核:地域偏在(関西、大都市圏に多い)、集団発生・在日外国人・東南アジアへの移住邦人に注意
咽頭結核:白苔が付着する腫瘍性病変、肺結核を認めない原発性が多い、上咽頭結核は結核性中耳炎に注意
頸部リンパ節結核:疼痛などの炎症所見に乏しい、原発性が多い、X線での石灰化、CTでの乾酪壊死像
喉頭結核:60~80%は肺結核に続発、急性喉頭蓋炎様の強い嚥下痛や声がれに注意、浸潤型・潰瘍型・軟骨膜炎型・肉芽腫型がある
診断:確定診断には生検が必要

  結節性甲状腺腫、舌小帯短縮症、水疱性鼓膜炎、進行性感音難聴、外耳道アスペルギルス真菌症、慢性顎下腺炎など 
  21日   今週末で子供たちは春休み入りです。この冬は、11月末から今の時期までインフルエンザが流行する、私にとって調子の合わないシーズンでした。さすがに春休み入りで風邪ひきの子供さんはぐっと減ると思います。この冬、中耳炎の経過が思わしくなかった子供達も一気に治って欲しいです。
 入試の季節も終わり、卒業式のシーズンです。幼稚園や保育園の卒園、学生さんの卒業、皆さん、ご卒業おめでとうございます。診察中に卒業が判った方々には、私からも声をかけさせて頂いています。高校卒業でお母様と一緒に来院されてピアスを開ける方もおられました。高校、高専、専門学校、短大、大学を卒業で県外に出る方もみられます。皆さんの新生活に幸あれ!中耳炎の経過を診ていたお子さんがお父さんの転勤に伴って県外に出るケースもあります。転居後も耳鼻科的に経過を見なければならない方には紹介状をお渡ししています。

 今日は、4月からの診療報酬改定に向けての説明会がありました。健康保険法に基づき厚労省が行う集団指導で、医療機関の開設者または管理者は全員参加しなければなりません。今日の会は中予地区の医療機関を対象にしており、ひめぎんホールのメインホールで開かれました。祝日のひめぎんホールはコンサートでしょうと思っている方も多いと思いますが、実はホールはこんなことにも使われています。これから月末にかけて、当院でも新しい医療制度への対応やレセコンソフトの更新を行っていかなければなりません。今のところ耳鼻科外来関係では大きな変化はなさそうですが、変更点はまた皆様にもお伝えしたいと思います。

 先日取り上げていたタリム・アンサーリー著「イスラームから見た世界史」をやっと読了しました。筆者は、西欧から見た"中近東"という呼称をあえて"ミドルワールド"と呼んでいます。ミドルワールドは古代文明が生まれ、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という同じヤハウェという神を崇める宗教が生まれた地域です。また西洋と東洋インドの結節点でもあります。ムハンマド(マホメット)が啓示を受けたのちのわずか数十年でイスラム教は爆発的に広がりました。神の下で人間は平等である、イスラームの教えでは寡婦を保護し(ムハンマドは若くして父親を亡くしています)、貧しき人々に施しを行うべしとが教えにあります。初期のイスラーム世界ウンマに入れば人は皆平等で安心して暮らせると人々は感じました。私は一神教者ではありませんが、イスラム教の支持される理由が理解出来た気がします。しかし外お世界に向けては、イスラームの教えでは、異教者でも人頭税ジズヤを納めればイスラーム世界の中での共生を許されるが、そうでない異教者や棄教者には厳しく当たるようにも定められています。宗教や文明の対立はなかなかに解決困難です。イスラーム世界も多様で、最初の中近東のアラブ人のイスラム、ペルシャ人(現イランとヒンズー教と共生していたインドのムガール)のイスラム、北方遊牧民族が定着したトルコ人のイスラムがあります。ムハンマドの後継者カリフをどのように認めるかでスンニ派、シーア派をはじめ様々な流派に分かれてもいます。この本では、イスラームの視点で、中華社会や西欧の発展も描いています。イスラム文化が花開いていた時代に西欧が暗黒の中世史だったのに、なぜ近世には、西欧社会が国家国民の概念の確立と産業革命で植民地を持つような覇権者になったのかも描いています。なぜイスラムとヒンズーが支配していたインドで、英国がなし崩しに支配を強め、大きな侵略戦争もせずにインド東会社を経て英国国王がインドの統治者となり得たのか。南下政策のロシアとそれを防ぐ英国の地政学的な駆け引きのなかでも、過去も現在もアフガニスタンの攻略が難しいのか。中東戦争から9.11まで続く西欧による圧迫や、イスラームからみた聖戦ジハードの意味も伝えています。私は高校時代に世界史を選択していましたが、中東の歴史の流れは今の今まであやふやなままでした。私は、日本史から見た世界史と、西欧史から見た世界史、少しは中華世界からみた世界史は理解したつもりでいましたが、中近東から見た世界史は理解できていませんでした。世界情勢の流れを理解するためにも、私にとって大いに啓発された本でした。この本は子供たちに語りかけるような文章で、物語を読んでいるような感覚で読み進めることが出来ます。世界情勢を深く理解するためにはとても役に立つ書籍だと思いました。
 診療が忙しかったこともあり、厚い本はなかなか読み進められませんでした。丸山真男講義録の完読はあきらめました。今日はお休みを利用して県立図書館に立ち寄りました。返却と入れ違いに企画書コーナーにあった航空関係の本を中心に借りてきました。好きな交通の本でリラックスしようと思います。城山公園の桜も2分咲きでした。春満開ももうすぐです。

  急性喉頭蓋炎、小児睡眠時無呼吸、メニエール病など。 
  16日   昨日、全国で最も早く高知で桜が開花しました。今日は宇和島市でも開花宣言されました。桜ととともに春が訪れ、スギ花粉の季節が終わります。来週からはインフルの流行も一気に下火になりそうです。忙しかった当院外来もやっと一息つけそうです。
 洋本の 間にはさむ 桜かな  子規

  慢性顎下腺炎、胸部腫瘍、逆流性食道炎、良性発作性頭位めまいなど。
  14日   今日の松山の気温は20℃を超えました。暖房を切っていても暑いなと感じていた診察室の室温は26℃。蒸し蒸し感じていたはずでした。
 今日の朝は車のフロントガラスが花粉でうっすらと黄色くなっていました。昨日から今日にかけてスギ花粉の飛散第三波のようですが、私の思っていたよりは飛散していませんでした。やはり、今年の飛散のピークは3月6日になりそうです。堀之内の梅も満開を過ぎました。今年の飛散量は、やはり”例年よりやや少ない”程度になりそうです。

 本日、インフルエンザの新薬ゾフルーザが発売となりました。昨日、MRさんからの情報提供では発売当初から供給体制は万全とのことです。今日の当院は午前診でしたので、レセコンにゾフルーザのコードを入力しただけでした。明日から処方可能となります。ゾフルーザは1回の服用で5日間有効で、体重10㎏以上の小児なら粉末化での服薬も可能です。ウイルスの増殖の速い段階を阻止することから、タミフルより速効性で耐性株にも有用です。小児の50人に1人で下痢を認めますが、副作用の少ない薬剤です。タミフルのように10才代の処方中止と10才未満の”異常行動の監視”の必要はありません。ただし、抗インフルエンザ薬一般の注意として、これまで異常行動の報告はないものの”未成年者を2日間は一人にならないよう配慮すること”となっています。ウイルスが検出されなくなる時間は、無治療で4日、タミフルで3日、ゾフルーザはなんと1日です。恐らく服薬直後から”効いてきた感じ”が自覚できると思われます。インフルの診療では、迅速診断キットの発売、タミフルの登場に続くエポックメイキングなことだと思もわれます。体重10㎏以上の方に対しては10才代も含めて広く用いることができ、全身に作用しますので、タミフルや吸入薬のリレンザ、イナビル、注射薬のラピアクタを一気に凌駕するお薬になりそうです。明日からのインフルの治療風景は変わります。(^^♪

 今週に入り当院でも目に見えてインフルの方が減ってきました。まだA型の集団発生も見られますが、松山も今週からはやっと注意報レベルの患者発生数になりそうです。愛媛の流行タイプは、12月はA09年型94%B型6%でしたが、1月に入りA型46%B型54%とB型が1月に優位となる初めてのシーズンとなり、3月はA型14%B型86%でした。12月にはA09年>A香港型>B山形系統、1月はB山形系統>A09年型=A香港型、2月はB山形系統>Bビクトリア系統=A香港型で検出されています。やはり、それからは発生数は減るものの、A型に二度罹り、B型の二度罹りにも注意は払いたいと思います。国立感染研から今シーズンの耐性株のサーベイランス情報も発表になりました。昨シーズンと同じ傾向で、タミフルとラピアクタに対してA09年型の1.3%にのみ認めると報告されています。今シーズンも耐性株の増加は見られていませんので、すこし安心しました。しかし、過去最高の患者数だった今シーズンですので、全国的には
(18年3月14日現在 その後の経過は診察時に適宜お知らせします)
 9月は全国的にもインフルの発生が早く、昨年同期の約3.5倍(学校は約5.7倍)で、A香港型、A2009年型、B型ともに検出され、千葉、東京、大阪、鳥取、島根、沖縄では学年・学級閉鎖も報告されました。9月21日砥部町の小学校でB型が集団発生、松山でもB型の散発が続き、10月下旬には東予・中予でA型>B型で散発しました。当院では11月24日にB型を、12月1日にA型を初めて検出しました。愛媛県は11月26日に流行入り、12月10日に注意報入り、松山では12月5日に今シーズン初めてとなる学級閉鎖が三津小学校から報告されました。1月7日に宇和島で警報レベルとなり、1月21日に松山、愛媛とも警報入りしました。2月4日には全国的に過去最高の流行となり、3月4日まで警報レベルの流行が続いています。全国的にはインフルエンザ脳症の報告も増えています。2
月4日までに全国で123例発生し、死亡例も9例(1才2例、30才代2例、10,40,70、80、90才代各1例)報告されています。やはりインフルは”普通の風邪”とは違います。重症化には常に注意して経過を見たいと思います。 
  8日   耳鼻科関連の話題を。様々な癌に広く有効である抗がん剤にプラチナ製剤のシスプラチンがあります。頭頸部癌領域でも最も使われている抗がん剤です。この薬には難聴を惹き起こすという副作用があります。成人の40~80%、小児の50%に発生します。米国立衛生研究所NIHの研究により、シスプラチンが内耳の血管条という聞こえに大事な部位に蓄積していることが明らかになりました。なぜこの抗がん剤だけが内耳障害、特に難聴を引き起こすのか気になっていましたが、どうもシスプラチンは内耳に取り込まれた後に他の部位と異なり排出されないようです。残念ながら一度起こったシスプラチン関連難聴を治す手段はありませんが、がん治療後の難聴で来院された方には、このような機序もあることをお伝えしたいと思います。
 スギ花粉症の有病率についての報告がありました。第4回東京都花粉症患者実態調査では、2016年の都民の推定有病率は49%で、10年間で20%も増加しています。14才未満の小児が10年前の26%から40%に増加、60才以上でも14%から37%に増加しています。都民の半数がスギ花粉症とのことで、ハウスダストアレルギーやスギ花粉症が多数派といえる状況になりつつあると言えます。農村部の学童のスギ花粉症有病率が都会の児童よりも多いとの報告も以前目にしたことがあります。全国平均でみても花粉症持ちが多数派といえそうです。花粉症も含めたアレルギーは、50才を超えると徐々に減弱するアネルジーという現象があると理解していたのですが、60才以上でも3人に1人は花粉症を発症しているという今回の報告で、認識を新たにしたいと思います。
 加齢性難聴が認知機能低下に関連しているとの論文が海外の耳鼻科雑誌に掲載されました。当たり前といえば当たり前の結論ですが、この報告の興味深い点は、アルツハイマー病や血管性認知症などの明らかな脳の細胞の異常による病気では、加齢性難聴との関連性は認めなかったことです。つまり、明らかな脳神経の異常があれば難聴があろうがなかろうが認知症症状は進行する可能性が高いのですが、認知機能低下や認知障害などの年齢変化ともいえる軽い認知症の状態では、聞こえが良いことは大事だということです。高齢の方は、平均聴力が40~60㏈の会話が聞き取りにくくなる中等度難聴の段階から補聴器を使った方が、認知症予防にはよいようです。 
  7日   四月並みの陽気と春一番で、昨日、スギ花粉が大量飛散しました。恐らく今シーズン最大の飛散になると思われます。スギ花粉の飛散と、インフルエンザがまだ警報レベルで流行していることもあり、先週末から今日まで当院の診察時間は長くなりました。お待ちいただいた患者様にはご協力ありがとうございました。インフルエンザの流行に混じって、RSウイルス、ヒト・メタニューモウイルス、アデノウイルス、溶連菌、マイコプラズマ、百日咳、パラインフルエンザウイルス、ノロウイルスなろ様々な感染症も見られます。できる限りの精査を心がけています。花粉症も、その個人個人の体質で、ハウスダストアレルギーがある、ヒノキやハンノキなどの花粉症も合併している、扁桃腺が弱く慢性上咽頭炎が隠れている、好酸球性や消炎鎮痛剤の過敏症がある、年齢的に萎縮性鼻炎が目立っているなど様々な要因がベースにあって花粉症が発症します。また、先日のテレビでも取り上げていましたが、”花粉症インフル”というような、花粉症と思っ受診したら実は隠れB型インフルになっていた、などのケースもあります。一昨日も2才で”花粉症デビュー”が疑がわれたお子様2名を、4才で花粉症確定のお子様2名が来院されました。今日も、4才で確定、5才で確定のお子様の来院もありました。その一方で、B型インフルの二度罹りのお子様も見られます。私は最近診察の場で「人生経験豊富になるとインフルに罹っても熱出ず、花粉症の抗体が増えると砥部動物園や久万のスキー場に行って花粉を被って顔面が腫れあがって咳が止まらずに熱が出る、こともある。軽いインフルより重い花粉症の方が風邪っぽいですよ」とお話ししています。花粉症だけでも、目にくる方、顔面の皮膚が弱い方m、喉にも刺激の出る方など、様々な体質があります。そのような方が、風邪に罹って症状が強くなって診察する、というケースも多々あります。風邪か?花粉症か?過敏症か? 様々なケースを考えて、その方にあった治療をオーダーメイドで行いたいと思いながら診察を進めています。

 患者様から「花粉を防御するスプレーは効果あるのですか?「との質問を頂きました。私は不勉強で知らなかったのですが、「資生堂 イハダアレルスクリーン イオンの透明マスク 花粉・PM2.5をブロック」などの商品が発売されていました。特許技術でイオンのマスクで花粉やPM2.5の吸着を防ぐという商品です。資生堂もさすがです。このような商品の研究開発を進めていたのですね。sぁて、効果はどうでしょうか? さすがに大量飛散では防ぎきるのは困難な気はしますが、、 今度の臨床上の情報には気を留めてみます。

 期待の日本発塩野義製薬のインフルの新薬「ゾルフーザ」ですが、今日の中央社会保険医療協議会総会で特例中の特例で早期承認されました。有用性加算、先駆け審査指定制度加算により薬価も高く設定されました。日本発の新薬が高く評価されて高薬価になることは日本の誇りでもあります。気になる薬価ですが、成人1治療当たりの薬価が、従来の抗インフル薬 タミフル2830円、リレンザ吸入3058円、イナビル吸入4590円に対し、ゾルフーザ4789円と設定されました。3割負担の方で個人負担分が1440円です。製薬会社からのデータを見ると、タミフルよりも早期にウイルスの排出量が減り、副作用も小児ではタミフルでは1/5で下痢が発言していたのが、1.3%の発現率です。その他の有害事象も目立ちませんので、体重10㎏以上の小児も含めて1回服薬するだけで急速にインフルの勢いが無くなり二度熱の可能性も少なくなりそうです。これまでの情報では期待の持てる新薬です。ちょっと高くても許されそうです。

 スギ花粉が大量飛散していますが、どうも今年の当院の花粉測定器ポールンロボは感度が鈍いようです。大量飛散が疑われるのに昨日の観測値は24個でした。確かに飛散の多い時には観測値も高くなっていますのでセンサーの故障ではありませんが、データとしての観測値は少ないです。これは当院のポールンロボに限ったことではなく全国のデータも少なく出ています。昨年も実際のデータより少ない印象があったのですが、今年はより鮮明です。数年前のデータでは、ダーラム法などの直接目で観測する手法よりも感度の良い印象があったのですが、どうなっているのでしょうか。ウェザーニュース社が感度を下げたのでしょうか?? 今年の観測データでは、ポールンロボの観測データ×5~10倍が実際の飛散数のように感じます。当院で掲載している観測データの表も×5倍で掲載するようにしてみました。 
  3日   ひな祭り、耳鼻科では「耳の日」です。
 スギ花粉が2月28日に最初の大量飛散日を迎えました。症状の強い方も目立ち始めました。飛散のピークは1週間後頃と思われます。  
3月  1日   3月、春の訪れです。この1週間、私はこのホームページをアップしているパソコンと個人用のノートパソコンが相次いでトラブルに見舞われました。パソコン工房さんの情報では、どうも最新のWindows10の更新が、windows7や8からのversion upしているパソコンでは更新が動かずにパソコンが使えなくなるケースが多いとのことでした。今回のWindowsの自動更新にはホトホト参りました。ノートパソコンは初期化で再利用可能となりましたが、診療で用いているデスクトップパソコンはハードディスクの耐用年数のことも考えて新しくしました。ハードディスクは3~5年でクラッシュします。データのバックアップが面倒くさくなり油断したころに不思議とクラッシュします。私も何度か途方に暮れた苦い思い出があります。そこで今回、初めてパソコンを新しい記憶装置SSDが入っものにしました。起動も早く、音も静かです。それでもSSDでも寿命は5年という説もありますので、これからはオンラインストレージも活用してクラッシュによるトラブルとはおさらばしたいものです。で、パソコントラブルが解決したかと思った矢先に、今度はオンライン予約システム用の親機のパソコンの不調です。こちらもWindous7時代の古いノートパソコンでしたのでそろそろと思っていたところ、5日前から起動中に急に動作が止まるトラブルが出現です。パソコンの下部が極端に熱くなっており、どうやら熱暴走のようです。翌日からは診療用のアイスノンで冷やしていればなんとか運用可能でしたが、これも冷却システムの経年劣化が疑われることから、新しいモバイルノートパソコンを購入の上、今日、予約システムの移設を行いました。こちらはiTikuketさんのサポートで行いましたので、遠隔操作で設定の移設をして頂きました。順調に移設完了と思いきや、診察室のモニター画面が全く映りません。最近のモバイルパソコンはモニターとの接続端子はHDMI端子だけしかついていないものが主流です。既設の診察室のモニターは昔ながらのRGB端子だけでしたので、変換ケーブルを用意していたのですが、これが不良品? モニターが古いのでパソコンとモニターの相性が悪い? いざとなったらパソコンもミニターも買い替えなければいけない? 明日の運用は大丈夫? とかなり焦りましたが、さすがサポートデスクです。担当者の方は冷静に、モニターの品番も確認しながら、こらがだめなら次はこれと、私の理解の及ばない範囲でパソコンの設定をいじって、時間はかかりましたが、モニターを映すことに成功しました。さすがです! 私一人ならとうにあきらめていました。おかげで明日は、新しい案内画面でiTicketを運用することができます。iTicketでは以前より動画配信サービスが行われていました。2年前に行われたシステム更新時には、当院も当初は動画配信サービスの情報番組をモニターの予約確認画面に流していたのですが、このサービスを利用すると予約システムの動きがなんとも遅くなってしまいました。古いパソコンの処理能力不足のせいです。そこで残念ながらこのサービスはその後停止していたのですが、今回の移設でCPUの処理能力が今風のパソコンになったことから、動画もスムースに流せるようになりました。来院された方には、待合室が少し今風になったと感じていただけると思います。(^^♪

 先日紹介したインフルの新薬ゾフルーザですが、医療情報提供者MRさんからの情報提供では発売は3月ではなく5月の見込みだそうです。新薬の活躍は来シーズンからとなりそうです。
 山口県では一昨日の27日に、杉花粉が今シーズン最初の大量飛散となった模様です。当院のデータや診察の印象では、松山は大量飛散まではいっていない印象ですが、昨日の雨の後、3月入りとともに大量飛散日を迎えそうです。

  仏壇も 仏も春の 光り哉   子規 
     
  26日   今日は花粉を感じて来院する方が増えてきました。当院も含めポールンロボのデータでは全国的にもまだ飛散数は少ないですが、山口県の情報ではこの週末に本格的なスギ花粉の飛散が始まったようです。今日は雨上がりに暖かくなり風が吹きましたので、ここ二三日で最初の大量飛散となりそうです。スギ花粉症の方はそろそろマスクやゴーグルで花粉を被らないよう心がけてください。

 過去最高の患者数で流行している今年のインフルエンザですが、23日に新しいインフルエンザ治療薬が承認されました。塩野義製薬のゾフルーザです。キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬と呼ばれ、既存薬とは異なる新たな作用機序によりインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。厚労省の優先審査薬に指定され、昨年10月に申請、2月に承認、早ければ来月には発売されるというスピードです。小児から大人まで1回の内服で済みますので、来月からはインフルの治療風景が一変しそうです。今日はB型インフルでタミフル耐性が疑われた方も来院されていました。この新薬は新しい機序で作用することから既存薬の耐性ウイルスにもよく効くと考えられます。日本発の期待の新薬です。

 慢性上咽頭炎に関する本が2月17日に発売されました。堀田 修氏の「つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい」です。早速、Amazonでも耳鼻科領域のベストセラー1位となっています。当院で行っているBスポット治療も、この本の著者 堀田博士の研究に基づいて行っています。以前、私がこの治療法について日本病巣疾患研究会と連絡を取っていた縁で、この本の中で当院が慢性上咽頭炎治療医療機関として紹介されました。四国では、当院と松山市北条の久我耳鼻科の2施設が掲載されています。この本では、一般向けに慢性上咽頭炎とはどんな病態か、Bスポット治療=EAT(Epipharingeal Abrasive Therapy 上咽頭擦過療法)の方法や効果をわかりやすく解説しているだけでなく、患者自身でできる上咽頭炎の治療を多数紹介しています。最近は耳鼻科関連学会である日本口腔咽頭科学会などでも慢性上咽頭炎に再注目するようになっています。堀口氏や日本病巣疾患研究会の研究にはこれからも注目していきたいと思います。 
  25日   伊予路に春を呼ぶとされる椿まつりが終わりました。45万人の人出は愛媛県随一です。今年の椿さんは暖かい天候に恵まれました。私はよく椿さんの頃に最もインフルエンザが流行し、椿さんからスギ花粉の飛散が始まるとお伝えしています。今年の椿さんは暦の関係で例年より開催日が遅かったことから、今年は椿さんの頃にはインフルエンザの流行が下火になり、花粉は大量飛散が始まっていると予想していましたが、インフルエンザはA型B型同時に流行していることもあって、まだまだ警報レベルの流行が続いています。スギ花粉も寒波のせいでようやく飛散が始まりましたので、今年も”椿まつりの時期にインフルが流行し、椿まつりとともに花粉の飛散が始まる”そのままになりました。お堀端の梅が二分咲き程になっています。今年も”梅とともに杉花粉の飛散が始まる”となりました。

 スギ花粉の飛散は、松山では2月14日が飛散開始日となりましたが、その後も飛散はごく少量です。それでもここ二三日の陽気で、まだ”少ない”のレベルですが飛散が増えてきました。今日の診察では、花粉を感じ始めて来院される方が目立ってきました。
 昨日の診察では、インフルエンザのタイプは9割がB型の印象でしたが、今日は8割がA型でした。まだまだA型とB型の同時流行が続いています。また今日は、今シーズン二人目のB型に二回罹った方が来院されました。日本で流行するB型のタイプは、山形系統とビクトリア系統の2種類あります。例年日本では、2種類とも検出されてビクトリア系統の方が多いのですが、今シーズンの愛媛では山形系統が先行して検出されています。B型は”系統”で区別されているように、A香港型とA209年型が全く別のウイルス形であるのとは異なり、遺伝子レベルで重なる部分が多いことから、ひとつのシーズンに一度B型に罹ると、違う系統の基礎免疫も出来て発症しにくくなり、そのためB型の1シーズン中の二度罹りはほとんど無いと認識していたのですが、今シーズン初めて二度罹りしたケースを経験しました。二人とも小さいお子様でした。やはり基礎免疫のついていない小児が二度罹りを発症しやすいのだと考えられました。
 ここ数年で、”隠れインフルエンザ”や”熱の出ないインフルエンザ”が一般の方にも知られるようになってきています。今シーズンは、微熱だけど、、倦怠感が強いので、、念のためにインフルエンザの検査を希望して来ましたという方もおられます。

 ダニの舌下免疫療法SCITの適応年齢が2月16日より、これまでの12才以上から、5才以上へと引き下げられました。ダニアレルギーの人は、小学生の年齢で抗体量がほぼプラトーに達し、その後大幅に増えることはありません。また小学生はまだ頭が小さいことから鼻腔内も狭く、鼻の奥の扁桃組織であるアデノイドも大きく、免疫力もまだ成長段階であることより、ダニアレルギーによる鼻粘膜の反応も大人よりも強い傾向にあります。若年期から免疫療法を始めた方が、体が抗原に慣れる力も強いとも思われます。成人よりもSCITの効果が期待できるかもしれません。小学生の方で、この舌下免疫療法を希望される方はご相談下さい。 
  17日   羽生選手、宇野選手、メダルおめでとうございます! 羽生選手の演技時間、診察は続いていましたが、待合室の皆さんはテレビに釘付けで静まり返っていました。私も診察の合間にスタッフから結果を教えてもらい、思わずホッとしました。あの大舞台で実力を発揮できる二人の精神力に脱帽です。
 今日の午前10時半ごろまでアイチケットが不通になっていました。インフルエンザが全国的に流行っていることから全国的なアクセス集中によるサーバートラブルと思って悠長に構えていたところ、当院のルーターの不都合で当院だけが不通状態でした。ルーターのリセットで直ぐにトラブルは解消しましたが、アイチケットを利用されている患者様にはご迷惑をおかけしました。失礼いたしました。アイチケットのサーバーとは光回線で繋がっており、これまでルーターの不通はありませんでしたので、この度のトラブルには私も焦りました。今後は保守をしっかりする所存です。 
  16日   スギ花粉の飛散が始まりました。寒波の影響で松山のスギ飛散開始日は過去最も遅い記録とタイ記録の2月14日となりました。静岡、神奈川の飛散開始は2月10日、山口県は松山と同じ2月14日でした。
  14日  今日は午後から一気に暖かくなりました。松山はまだでしたが、九州北部、中国地方、北陸で春一番が吹きました。ここ数日の寒波の緩みで当院のポールンロボでは花粉が少し観測されました。花粉を感じる方の受診もありました。しかし、これまでの大寒波の影響でスギ花粉は2月に入ってもほとんど飛散しておらず、スギ花粉が毎日観測される飛散開始日、松山の観測史上過去最も遅い2月14日バレンタインデーを過ぎてとなりそうです。 
  13日   この連休に、父の四十九日、満中陰法要が滞りなく終わりました。また連休には頭頸部癌の最新治療の資料を読みました。この紹介をとも思っていましたが、今日は先ほど観た映画の感想を。
 一昨年は「君の名は。」(このお正月に地上波初放映がありましたが、やはりこの映画の評価はアニメながら映画館で見て評価して欲しいものです)で盛り上がった私ですが、昨年は「ラ・ラ・ランド」以降、ぜひ映画館でと思う作品がありませんでした。気になっていたのは「君の膵臓が食べたい」でしたが、映画館に足を運ぶ機会がなく、先ほどレンタルビデオで鑑賞しました。不覚にも4度ウルウルしてしまいました。岩井俊二監督の映画「ラブレター」(こちらがやはり映像美と幻想的な音楽では秀でています)、アニメ版「四月は君の嘘」(遺書からの回想シーンはやはりこたえます)、「ひよっこ」や「最後から二番目の恋」で気になっている脚本家岡田惠和氏の作品(登場人物がみんな心優しい人ばかりでキャラクターが立っています)を思い出しました。私のささやかな夢のひとつが、いつかはシナリオを書きたいという夢です。一時はシナリオ集や教則本を読んだりしていましたが、この映画のような脚本はとても書けそうな気がしません。脱帽です。今年の日本アカデミー賞の優秀作品賞には、「君の膵臓をたべたい」「三度目の殺人」「関ヶ原」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「花戦さ」がノミネートされています。3月2日の発表が楽しみになってきました。映画通が気にするキネマ旬報の2017年度の日本映画ベスト1は既に発表されていて「夜空はいつでも最高密度の青色だ」でした。こちらもまた観てみたいです。
  12日   NHK「ためしてガッテン」では、医療に食生活にと、興味のある話題を楽しく解りやすく取り上げています。医療の話題も決して”色物”でないアカデミックな最新の話題です。よくもまあ毎週毎週話題があるものだなと感心しています。企画スタッフの情報収集力と取材力の力には脱帽です。先々週は食物アレルギーを取り上げていました。食物アレルギーの研究はこの10年大きく進みました。それとともに治療法も、アレルギーの原因物質をを避けるのではなく、食べながら慣らしていく方向に進んでいます。この番組ではどんな風にこの話題を取り上げるのかと興味深く視聴しました。まず、欧米の小児のピーナッツアレルギーが天然のピーナッツオイルの入った保湿剤を塗ることによって発症することを示した後、湿疹などの皮膚の炎症がある部位では抗原提示細胞である樹状細胞が皮下から表層に現れて、皮膚からの抗原刺激でアレルギーが発症(経皮感作)することを人形も使って判りやすく解説していました。パン屋さんの小麦アレルギーが手の湿疹から発症した人も紹介していました。さらに、治療では、原因食物の除去から、徐々に食べて慣らしていく負荷試験や経口免疫療法も紹介しています。この治療法の有用な点と、時に治療中にアナフィラキシーなどの副反応が起こる危険性を、医師の立場と患者の立場から紹介していました。さすがの番組です!
 これに関連した話題を紹介します。ピーナッツアレルギーの素因がある乳児に対しては、除去ではなくむしろ乳児期からピーナッツを食べた方がピーナッツアレルギーを発症し難いとの研究報告を契機に、ここ10年世界的に、食物アレルギーを起こしやすい食物を除去する根拠はないとの方向に治療方針が180度代ってきています。鶏卵アレルギーに対しても、2016年の国立成育医療研究センターが、アトピー性皮膚炎の乳児には生後6ヵ月から固ゆで卵を与えた方が与えなかった群よりも鶏卵アレルギーの発症を8割抑えられたとの報告を出しています。このことからこの研究チームは、アトピー性皮膚炎の赤ちゃんでは経皮感作を予防するために湿疹の治療をしっかり行った上で専門医の下で生後6ヵ月から卵を摂取した方が良いのではないか、逆にアトピー性皮膚炎の無い赤ちゃんには逆に急いで卵を摂取する必要なないのではないかとの考えを示しています。
 2017年には神奈川県立こども医療センターが、牛乳アレルギーの小児が医師の監視の下で牛乳を飲んで慣らしていく急速経口免疫療法で低酸素脳症が起こった例を報告しました。低酸素脳症のような重篤な有害事象の報告は今回が初めてであったことから、日本小児アレルギー学会が注意喚起を公表しています。アレルギーの治療で原因物質を摂って慣らしていく治療は、反面、アレルギーの過剰反応を起こす危険性もはらんでいます。耳鼻科でもスギに次いでハウスダストの経口免疫療法が外来で進められています。これまでのところ死亡例はありませんが、アナフィラキシーなどの重篤な障害例もごく稀ながら報告が上がってきています。アレルギーの過剰反応は、感染症に罹った時など本人の体調が不良な時、ストレスがたまるなどで免疫力が低下した時、低気圧や猛暑、寒波など環境の刺激があった時やこれらの悪条件が重なった時に、急に発症します。当院でも経口免疫療法で経過を診させて頂いいる患者それぞれの方の体調の不調には気をつけたいと思います。 
  11日   昨日も当院ではインフルエンザが大流行でした。タイプ別ではB型が85%、A型が15%といった印象でした。厚労省は2月4日までの週で定点当たりの患者数が54人と過去最多を3週連続で更新したと発表しています。私はシーズン当初、今シーズンは昨シーズンのA香港型に代ってA2009年型が1~2月に流行し、B型が例年通り3~5月に小流行するものと思っていましたが、実際はA2009年型が12月より年末年始も通して早く流行入りし、1月から過去にないペースでB型が大流行しました。そのため週当たりの感染者が過去最高を更新し続けることになりました。現在流行のB型は山形系統です。近年流行しているB型には山形系統とビクトリア系統のふたつがありまし。A香港型とA2009年型は別物で別個に感染しますが、B型は系統ですのでどちらかに罹ればそのシーズンは免疫が出来て違う系統は発症しなくなります。この時期にこれだけB型山形株が流行していますので、例年と違い春にはB型の流行は例年より早く終息すると思われますので、シーズンが終わってみると感染者の総数はそんなに多くならないかもしれません。しかし立て続けに違うインフルに罹ったり時には同時に罹ったりすることから、今現在が大流行になってしまいました。全国的なタイプ別の報告ではB型52%、A香港型26%、A2009年型22%、愛媛県でもB型53%、A香港型30%、A2009年型17%と同様の傾向でA香港型が目立ってきています。松山でもこれから思いの外、A型の二度罹りが目立ってきそうです。
 大流行に伴って、インフルエンザ脳症の報告も急増しています。今シーズン既に全国的には1月21日までに76例の報告があり、直近の1週間だけで21例報告されています。1歳児1例、10歳代1例、30歳代2例、40歳代1例、80歳代1例の死亡例も報告されています。脳症だけのタイプ別では、A型が55例B型が13例でやはりA型が多いのですが、症状の総じて軽いB型でも脳症例が複数報告されていあるのには驚きです。幸い私はインフルエンザ脳症例は経験していませんが、B型でも脳症が起こることには注意したいと思います。
 当院でも何時インフルエンザ脳症を患者様が発症するかわかりません。知識を整理しておきたいと思います。厚労省インフルエンザ脳症研究班のガイドラインでは、初期の診断において意識障害が最も重要な所見だとしています。診断基準では外来来院時の確定例は
1)JCS 20以上の意識障害:けいれん後の意識障害(けいれんそのものの影響)や抗けいれん剤による鎮静状態は除外する。これらの状態と脳症による意識障害の鑑別が困難な場合は、経過によって判断する。原則として、熱性痙攣は数時間で回復傾向を示すが、脳症の意識障害は不変か増悪する。
2)頭部CT検査:びまん性低吸収域、皮髄境界不鮮明、脳表クモ膜下腔・脳室の明らかな狭小化、局所性低吸収域(両側視床、一側大脳半球など)、脳幹浮腫(脳幹周囲の脳槽の狭小化)
となっています。血液検査は参考程度の扱いです。入院後の確定例は、意識障害が経過中、増悪する場合、または、意識障害(JCS 10以上またはGCS 13以下)が24時間以上続く場合となっています。
 実際に当院で判断する場合は、熱性痙攣や一時的な熱せん妄ではなく意識障害が持続する場合には速やかに高次病院に救急紹介することになります。診断基準で示された意識障害のレベル判定で用いられる基準は、Japan Coma Scale(日本昏睡スケール)という基準です。
JCS
Ⅲ 刺激をしても覚醒しない状態
 300 痚み刺激にまったく反応しない
 200 痚み刺激で尐し手足を動かしたり、顔をしかめる
 100 痚み刺激に対し、払いのけるような動作をする
Ⅱ 刺激すると覚醒する状態
 30 痚み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと、辛うじて開眼する
20 大きな声または体をゆさぶることにより開眼する
10 普通の呼びかけで容易に開眼する
Ⅰ 刺激しないでも覚醒している状態
3 自分の名前、生年月日がいえない
2 見当識障害がある
1 意識清明とはいえない

乳幼児の意識レベル判定法
Ⅲ 刺激をしても覚醒しない状態
300 痚み刺激にまったく反応しない
200 痚み刺激で尐し手足を動かしたり、顔をしかめる
100 痚み刺激に対し、払いのけるような動作をする
Ⅱ 刺激すると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む)
30 呼びかけを繰り返すと、辛うじて開眼する
20 呼びかけると開眼して目を向ける
10 飲み物を見せると飲もうとする。あるいは乳首を見せれば欲しがって吸う
Ⅰ 刺激しないでも覚醒している状態
3 母親と視線が合わない
2 あやしても笑わないが、視線は合う
1 あやすと笑う。ただし不十分で、声を出して笑わない
 インフルエンザ脳症では、外来でJCS20以上が続く、すなわち普通に話しかけて開眼応答する場合には今しばらく様子を見ることが出来るが、大声でやっと反応する程度であれば救急搬送する必要があるとのことです。当院でも時に診察の前後の待合室で待っている時にお子様が熱性痙攣を起こすこともあります。その場合は痙攣の応急処置を行い、単純性痙攣で回復すれば慌てずに小児専門医へ連携していますが、複雑性痙攣の際には救急搬送を行ってきました。万一、脳症が疑われる方が来院した場合にもこのような方針で対応したいと思います。
  7日   愛媛マラソンが終わりました。今年は過去最高の1万400人余りが参加しました。私は診療中で、例年の如く録画で見ましたが、スタート時の一番町通りを埋め尽くしたランナーの空からの映像は圧巻でした。今日の診察ではマラソンの応援中にインフルエンザに感染したと思われた方もおられました。今年は極寒の中の大会でした。影響はあったかもしれません。
 この日曜日から目に見えて保育園児や幼稚園児のB型インフルの発症が目立ってきました。1月に小中学生を中心に流行したB型ですが、これから未就学児や高校生、社会人の世代にも流行が広がりそうです。1月にA型とB型が両方流行する初めてのシーズンとなっているせいで、様々なシーンでA型とB型の同時発生が見られます。これまで当院では、親子でAB、兄弟でAB、クラス内でABなどを見てきましたが、昨日はご夫婦でA型とB型に別々に罹った例もありました。こんなことは私も初めてです。

 大寒波のせいでスギ花粉が全国的に全く飛散していません。山口県飛散情報の公開が始まりました。初観測日は1月4日でしたが、山口県でもその後ほとんど飛散していません。2月に入ると全く観測されていません。こんな花粉シーズンも珍しいことです。 
2月  3日   先月31日の夜は曇り空が広がり皆既月食は見えませんでした。残念でした。
 今日は節分。明日は愛媛マラソンです。今日の夕刻、城山公園では明日の大会に備えての会場設営が終わっていました。会場から流れるアナウンスでは「応援する方はこれまでで一番の防寒対策をして下さい」と伝えていました。明日は過去最大規模の寒気団が日本を覆います。予報では明日の松山の最高気温が3℃、最低気温が-1℃です。選手の皆さん、頑張ってください。応援サポーターの方も暖かくして、体調が崩れませんようお祈りしています。 

 今日は珍しく私の母校の話題を。私は徳島大学出身ですが、母校は遠くにありて想うものとなりつつあります。
 昨年だったか私が在学中に所属していた運動部の年報で、学業が疎かになっているので部活動を一時自粛するとの報告がありました。とっさに私は、今の学生は昔以上に部活やバイトに熱心で遊び惚けているのかと思っていました。ところがさにあらず。母校は全国でも有数の留年が多い大学になっていました。某受験サイトのランク付けでは、徳島大学は弘前大学と並んで全学年留年者数が50名以上の”理不尽級”に進級が困難な大学のトップ2となっていました。入学した同期の中で留年せずに既定の6年間で卒業できる人数が半数程度という訳です。昔話になりますが、私が在学中は普通に勉強していれば余裕で進級できていました。ところが最近は、1年から2年への進級時に20人、2年から3年への進級でまた20人留年しています。これを読んだ皆さんは、えっ、徳大ってそんなに学生のレベルが低いのと思われるかもしれませんが、彼らが落第しているのは医師国家試験の勉強とはあまり関係のないジャンルの学科の試験です。国試は臨床医学が出題の中心ですが、解剖学や生理学などの基礎医学の試験で落第しているのです。学生たちは正月明けの試験に備えて大学受験の時よりも猛勉強せざるを得ない状況だそうです。でも勉強しても医師国試の勉強には直接メリットがない、そんな状況で1学年20人、特に1年生の前期でも留年となれば息つく暇もありません。現在の学生は1年生から専門科目が始まります。私の頃は2年生までは教養課程といって医学には全く触れませんでした。良いか悪いかは別として、受験勉強から一息ついて様々な分野に視点を広げることができた期間でした。基礎医学の試験を厳しくするのは、大学の意向として研究機関としての立場から研究者を育てたいという欲があるのだと思います。臨床医になる医師国試への勉強と研究者養成のための基礎医学重視。なかなか難しい問題ですが、学生時代、部活やらなにやらのほほんとしていた私は、現在なら確実に留年していたでしょう。(-_-;)
 私の在学当時、徳島大学は全国有数の多浪生の多い医学部でした。前年には全国最高齢の医学部入学がニュースとなり、私の同期生も現役生から40歳代まで多士済々でした。ところが現在は、徳島大は再受験(多浪生)に厳しい大学に位置付けられています。昔は面接が無く試験点数だけで合否が決まっていたのですが、今は面接に地域推薦枠もあり大学の意向で再受験生を制限することができます。これも学部の研究者を求める姿勢からでしょうか。このあたりも私の在学中と様変わりでビックリです。
 徳島大医学部は映画の舞台ともなりました。さだまさしさんの原作「眉山」です。
 YouTube 「眉山」予告編 へ 
 松嶋菜々子さん主演の映画版では”徳島市立大学医学部”に、常盤貴子さん主演のテレビ版では”徳島県立大学医学部”になっています。(ちなみに「白い巨塔」では、母校は阿波大学として書かれています)映画では建て替わって今は無くなった病院正面玄関や、私が学祭の担当委員で嘉門達夫氏のライブを開いた大塚講堂が実際にロケに使われています。私が長年パート耳鼻科医として通い、これも今は建て替わった旧徳島赤十字病院でもロケされています。
 「眉山 その他のロケ地」 へ 
 今は無き母校の面影を映像作品の中で鑑賞すると、また違った趣があります。松山市民にとっては松山城が普段は意識しない知らず知らずにシンボルであるように、徳島市民にとっては眉山がシンボルです。母校のキャンパスは眉山に抱かれています。 ”眉山にかかる月のように 手は届かなくても いつまでも傍にいた” さだまさしさんの詩は抒情詩です。”
     
  31日   現在午後6時過ぎです。満月が東の空から登ってきました。今日は皆既月食です。薄曇りですが月食を堪能することが出来そうです!

 今夜、四国の山間部では雪の予想です。週間予報では来週後半、さらに猛烈な寒波が来る見込みです。ポールンロボでは1月15日にまとまった花粉を観測しましたが、その後は散見程度です。寒波が続く影響で、松山のスギ花粉の飛散開始日は例年より来週後半2月10日以降となるかもしれません。
 垣生小学校では昨日あるクラスではA型インフルエンザが3名、B型が3名だったそうです。A型が流行りはじめた保育園もあります。小中学校ではB型がやや多いものの、やはりA型B型ともに流行しています。

  真珠腫性中耳炎、耳下腺腫瘤、亜急性甲状腺炎など。
  28日  今日の診察でのインフルエンザのタイプ別は、B型7割A型3割の印象でした。中にはお母さんがB型で、お子さんがA型のケースもありました。他の医療機関で検査を受けてインフルエンザだとは告げられたもののAかBか教えてもらわなかった方もおられましたが、私は結構こだわります。私「B型が出ました」ある小学生「僕はO型です」、こんな会話は案外全国的にもあるのかもしれません。(^.^)

 もうすぐ2月です。スギ花粉症の初期治療(予防投薬)やレーザー治療を求めて受診される方が目立ってきました。初期治療としてお薬を飲み始める時期は、鼻粘膜がまだ花粉に反応していない段階の飛散開始日(スギ花粉が毎日観測され始めた日)の前から服薬すれば粘膜でアレルギー反応が起こりにくいことから、飛散開始前からの服薬が有効とされています。塩基性で抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー剤が直接的にアレルギー反応を鎮めることから、主にこの塩基性抗アレルギー剤を初期治療に用います。また、抗ロイコトリエン薬や吸入ステロイド点鼻薬を初期治療で用いることもあります。過去の松山市の飛散データから飛散開始日を見ると、最も早い年で1月17日から、遅い年で2月14日からとなっています。平均では2月4日頃から毎日飛散し始めると言えます。飛散開始日の前でもすでに隔日では花粉は飛散していることもあり、以前は飛散開始の2週間前からの服薬が進められていましたが、最近の抗アレルギー剤は速効性があり効果が強いことから、私は例年2月に入ってからの服薬開始をお勧めしていました。現在日本を覆っている寒波は今週も続き、関東では2週連続の雪模様との予想ですが、2月4日の週からは寒波もやや緩む模様です。この猛烈な寒波のせいで、全国的に飛散開始日は遅くなるかもしれませんが、初期治療を試みる方は、この寒波がぬるむ2月4日頃からは遅くとも服薬を始めてみて下さい。 
  27日   観測が始まった当院のポールンロボではアメダスデータも判ります。今日午前7時の外気温は氷点下2.5℃で、朝は顔がヒリヒリ痛いほどでした。今日は、朝から耳が時折痛くなったお子様が来院しました。鼻炎体質ですが特段の中耳炎や外耳炎、放散痛を起こすような咽頭扁桃炎や耳下腺炎、リンパ節炎、顎関節症も見られませんでした。聴けば今日は朝から外で氷遊びをしていたとのこと。チンパノグラムはC1型で、軽度の耳管狭窄でした。鼻炎が寒冷刺激などで強くなると、耳管狭窄で耳の閉そく感や耳の後ろの鈍痛が、副鼻腔ブロックで目の周りにも鈍痛が走ります。このような方が飛行機に乗ると着陸の際の陰圧に耳や副鼻腔の換気ブロックが起こって航空性中耳炎や航空性副鼻腔炎を起こします。飛行機搭乗ほどの刺激ではありませんが、今日の朝の寒気は、耳が痛くなるほどの寒気でした。

 1月7日に宇和島で警報レベルとなったインフルエンザの流行ですが、1月21日には遂に松山、愛媛とも警報入りとなりました。愛媛感染症情報センターの報告では、流行タイプは、12月はA09年型94%B型6%でしたが、1月に入りA型46%B型54%となっています。やはり1月にB型が急増するという珍しいシーズンのようです。また保健所でタイプを調べてみると、年末からここまでの検体ではA09年型11例、A香港型6例、B山形株6例とのことで、私の予想よりA香港型が多かったです。A型への二度罹りにはやはり注意したいと思います。
 今日、当院へインフルエンザ迅速診断キットの供給不足の連絡が業者さんからありました。全国的に流行が急激に広がった影響だと思われます。最近は迅速キットは多くの会社から発売されているので、以前のような供給不足はないだろうと安心していましたが、ちょっと油断していました。検査キットが欠品にならないよう注意したいと思います。

 井沢元彦氏の「逆説の世界史」①古代エジプトと中華帝国の興廃 ②一神教のタブーと民族差別 二巻を読了しました。いや、面白かったです。私のとって人生最高の歴史書といっても過言ではないでしょう! 穢れを忌む無意識な多神教の日本人から見た、一神教や儒教、古代の多神教の解説です。一神教徒から見た常識と多神教徒から見た常識の違いが良く判りました。縦横無尽の知識と簡潔化した解説で、複雑な古代オリエントやエジプト史、中国史、中近世イスラム史、中世西欧史がスーッと頭に入ってきます。高校時代に世界史を選択していた私ですが、中世のヨーロッパと中近東の歴史はいくら読んでも全く繋がりませんでしたが、この本に出合って初めて全体が見渡せた気がします。それにしても井沢氏の歴史を俯瞰する知識と理解力には脱帽です。いつか、井沢元彦氏と池上 彰氏、佐藤 優氏の3人の鼎談を聞いてみたいものです。次は、県立図書館で”貸出可”を確認している「イスラームから見た「世界史」」タミム・アンサーリー著 に挑戦したいと思います。 
  24日   この冬一番の寒気が日本列島をすっぽりと覆っています。松山でも日中小雪が舞っていました。昨日から垣生中学校、城西中学校でも学級閉鎖となりました。今週来週が小中学生の、来週再来週が保育園・幼稚園・高校のインフルの流行のピークとなりそうです。
 今日よりウェザーニュースの花粉チャンネルがいよいよ稼働しました。当院のリアルタイムデータの配信も始まりました。記録は12日より始まっており、12日にも花粉を観測しています。”少なくとも当院では9日には初観測日を迎えていた”といえそうです。寒さのぬるんでいた15日には9個観測されています。先週前半に鼻がむずむずして来院されていた方も見られていました。やはり花粉を感じ始めていたと思われます。 
  22日  東京は大雪です。ニュース映像で見る東京駅の雪景色は幻想的でしたが、交通機関の運行の乱れで帰宅困難の方は大変です。事故のないことを祈ります。松山も明後日に今年最大の寒波が到来します。
 寒波到来を待っていたかのようにインフルエンザが一気に流行しそうです。今週に入り松山市内の学級閉鎖の報告が一気に増えました。小学校7校、中学校4校が今日または明日より学級閉鎖です。市内全域から偏りなく報告されていますが、当院近隣では、余土・さくら・雄郡・味生・生石の小学校、城西中学校が該当しています。今日、当院では、B型の検出がさらに増えて7割近くに上りましたが、中にはA型とB型が同時に検出された例、明らかに今シーズンA型に二回陽性となった例も見られました。愛媛県の病原体検出情報では、昨年末に八幡浜からA香港型が検出されています。現在の流行は、A2009年型とB型の流行が主体ですが、松山でもA香港型とA2009年型のA型への二度罹りにも注意しなければいけないようです。 
  20日   インフルエンザのタイプ別ですが、今日の診察ではB型が6割、A型が4割でした。当院近隣の余土小学校で学級閉鎖が報告されました。B型が主体のようです。恐らく来週には保育園や幼稚園でも流行が始まりそうです。

 私はよく「スギ花粉の飛散は梅で始まり桜で終わる」とお伝えしています。また「椿さん」の頃にスギの開花が始まり、インフルエンザの流行のピークを迎える印象があります。今年、松山は全国最速で1月4日に梅が開花しました。例年、松山は全国でも早く開花します。梅の開花は松山気象台の敷地内にある標本木で判定されます。松山の梅の開花が早いのは、松山のお正月が全国的に見ても暖かいせいではなく、松山の標本木は気の早い木を選んでいるからのような気がしています。椿神社の例大祭椿祭りは旧暦の1月8日前後の3日間行われます。今年の椿さんは2月22~24日に開かれます。例年より遅く、やや暖かい椿さんになりそうです。例年50万人前後が訪れる椿さんですが、参道は人込みでごった返しますので、椿さんの人込みでインフルエンザに感染する可能性も無きにしもあらずですが、今年の椿さんの時期は、さすがにインフルエンザのピークも過ぎて、花粉飛散飛散が本格化している時期になっていると思われます。松山のイベントで年による変動が比較的ないのが愛媛マラソンでしょうか。今年は2月4日、あと2週間後には開催です。これからは、「愛媛マラソンで、インフルエンザの流行のピークを迎え、スギの飛散が始まる」と言ってもよいかもしれません。今年も私の周りでは愛媛マラソンに参加する方達の話題で盛り上がっています。エントリーしている人はそれぞれに練習を始めています。中には、仕事中に重りを足首につけて訓練している人もいます。皆さんの完走とタイムアップを祈っています。!(^^)! 私は今年も診察中です。今年も録画を見ながら、ゴール後の遅れての応援となります。


 松山城と椿です。椿(ヤブツバキ)は「伊予国風土記」逸文のなかにも載せられて松山で古くから親まれていたこともあり松山市の市花に制定されています。


  戸無門、筒井門から太鼓櫓、馬具櫓、遠くに天守を望みます。私の松山城で最もお気に入りのアングルです。ちなみに私は中学2年生当時の写生大会でこのアングルで写生しました。今でも鮮明に覚えています。


 天守閣から見た城北、文教地区です。戦前は城山と護国神社の間に松山城北練兵場が広がっていました。市内電車の赤十字病院前停留場の旧称は戦前は練兵場前停留場でした。戦後は教育施設が集まり文教地区となりました。中心部の町名もその名の通り文教町となっています。西(写真左)から、市立勝山中学、市立清水小学校、松山大学(四国の財界人を多く輩出している旧松山高等商業学校、松山商科大学)、県立松山北高(旧制北予中学、坂の上の雲の主人公秋山好古が校長を務めたこともあるサッカーの名門校)、愛媛大学、市立東中学校、市立東雲小学校、松山赤十字病院とアカデミックな雰囲気が広がっています。私は勝山中学(勝中)への2年生からの転校生ですが、当時市内有数のマンモス校だった勝中生にはゴールデンコースがあります。清水小→勝山中→北高→松大or愛大と進学すれば、小1から大卒まで半径200m以内の通学圏内だけで過ごせます。1学年にこのコースに乗る生徒が30~40人はいたのではないでしょうか? 小中や最近では中高と同じ学校というのは珍しくありませんが、小学校から大学まで同じ同窓の集団が目立つのは勝中ゴールデンコースならではでしょう。全国的にもここまで集中した地区は珍しいのではないでしょうか。さすがに少数だと思いますが、医療関係職で卒後日赤に勤務すれば半径300m以内で退職まで過ごす人もいそうです。 
  19日  今週に入り当院でもB型インフルエンザが増えています。今年初めに宇和島がインフルの警報入りしA型6割、B型4割でしたが、先週の松山市医師会の報告でもA型7割、B型3割とB型が目立って増えてきました。今週から松山市内でも学級閉鎖の報告が増えてきました。やはり来週から松山も本格的な警報レベルの流行となりそうです。当院では今日はA型よりもB型が目立ちました。来週からは愛媛県全域でもB型の方が多くなるかも知れません。1月にA型B型ともに流行り、B型が流行の主体となれば過去にない流行のパターンとなります。A型に比べるとB型の方が症状が軽い傾向にあります。しかし、二度熱を呈したり、悪心や下痢などの消化器症状が目立つ場合もあります。発症初日に微熱程度で倦怠感が弱い場合もありますので、発症早期の診断は慎重に行ないたいと思います。
 山梨県では8日に例年より5日早くスギ花粉の初観測日を迎えました。当院のポールンロボがまだ稼働しておらず、私が参考としている松山大学や山口県医師会の花粉症観測データの公表もまだのため、松山の初観測日が何時だったのかの情報がまだ入りませんが、ここ数日の陽気によりスギ花粉の少量飛散は始まっているものと思われます。今日はスギ花粉を感じ始めた方の来院がありました。また、花粉症に備えてレーザー治療を受ける方も増えています。当院ではスギ花粉症の初期(予防)治療については、1)初期治療(発症前投薬・予防投薬)を始める時期は、飛散開始日の1週間前(例年なら2月始め)または1月中でも外出時に花粉を感じ始めた時点から 2)レーザー治療は12月後半から1月中旬に済ませる 3)舌下免疫療法は11月中までに開始する とお勧めしています。

 センター試験が終わりました。試験直前にインフルエンザを発症した学生さんがおられたことから、センター試験の際のインフルエンザの扱いについて調べてみました。別室での受験はなく、疾病によるものとして診断書を提出すれば2週間後の追試験が受けられます。本人の理由による疾病・負傷・事故では追試験に。公共交通機関の遅延や試験会場の不備による試験時間の確保不足などでは再試験となります。ちなみに今年、立命館大学大阪いばらきキャンパス試験場では「正規の試験時間を確保しなかったため(10秒間の時間不足)」で1名再試験しなっています。たった10秒の不足です! 誰がどのように試験時間を計測して、試験会場の不備が判明したのでしょう。この人だけ10秒早く解答用紙を回収したのでしょうか?? 試験は学校保健法には縛られないためにインフルエンザの学生さんが受験しても問題はないそうです。今年58万人受験して、疾病・負傷による追試験者は466人でした。再試験になると二次試験の出願に際して他の受験生との比較が出来ず結果判明も遅くなることから、無理をしてでも正規のセンター試験を受けた方が良いのでしょうね。私の勝手な推測ですが、58万人も受験したとなると、恐らくその中の数千人はインフルエンザに罹っていたかも知れません。中には、試験1日目に会場で感染して、試験2日目の最中に発症した学生さんもいたかも知れません。体調万全で試験に臨むのもなかなか大変です。

  後鼻孔ポリープ切除術、花粉症へのレーザー治療・化学剤手術、副鼻腔カテーテル治療、動脈性鼻出血、急性乳様突起炎、喉頭腫瘍、壊死性リンパ節炎など。 
  12日   この冬もっとも厳しい寒波の到来です。今日の朝は道後平野からみる石鎚山脈の山々は白く染まっていました。全国ニュースでは九州も雪景色です。松山は昨日まではひょうがパラパラ落ちる程度でしたが、今晩はサラサラと雪が舞っています。やはりセンター試験の時期は雪のイメージです。明日のセンター試験を前に受験生でインフルエンザを発症した学生さんの来院もありました。発症は残念ではありますが、昔と違いインフルの増殖を抑える抗ウイルス薬があるので、思いのほか症状は早く軽快します。日本では今シーズンも内服薬のタミフルの10歳代での服用は禁じられていますが、点滴のラピアクタは使えます。ラピアクタは吸入薬と違い全身に効きますので、全身倦怠感なども早く軽くなると考えられます。当院では今日、試験を前の受験生にはラピアクタの点滴を行いました。この治療で、実力を発揮することが出来て、試験を乗り越えられるよう心から祈っています。
 インフルの流行状況ですが、今年に入り年末より報告数は減ったものの注意報レベルが続いています。今治と宇和島では警報レベルで、特に宇和島は今年に入り定点当たりの報告数が58人と警報の基準の30人を大きく上回って急増し、大流行のレベルです。迅速検査では、愛媛県全体ではA型が72%、B型が28%ですが、宇和島ではA型57%、B型43%とB型の増加が目立っています。クラス内や家庭内でA型とB型が同時に発生するケースもあるそうです。この時期にこれだけB型が多い流行パターンは非常に珍しいです。当院でも年初から、B型陽性の方を毎日複数人見ており、珍しいなと思っていましたが、宇和島はそれ以上でした。またA型の中のタイプも大部分がA2009年型ですが八幡浜ではA香港型も検出されています。全国的にもA2009年型>B型>>A香港型の順で報告されています。昨シーズンはA香港型が流行の主体でした。今シーズンは反対にA2009年型が流行の主体ですが、例年春に多いB型も今から多いとなると、今シーズンは子供さんを中心にインフルに3度罹るケースも目立ちそうです。皆さんも、疲れをためない、体を冷やさない、マスク着用やうがいの励行で、インフルの流行を乗り越えて下さい。 
  6日   新年の診察が始まりました。3年前の年末年始にはインフルエンザが大流行しました。当時のお正月の休日診療所は7時間待ちとの情報もありました。3年前程ではありませんが今年のお正月休みも休日診療所は4時間待ち程度はあったとのことです。やはり今シーズンのインフルの流行は早く立ち上がったっようです。昨日今日と当院でもインフルの患者さんが目立ちましたが、まだ大流行という様子ではありません。来週の3学期入りとともに流行が例年より早く警報入りするかもしれません。当院では大部分がA型ですが、B型も散見されました。当院での検出状況ではA型97%B型3%といったところです。中にはクリスマスにインフルエンザ様の症状があり昨日からの微熱でB型が陽性だった方も見られました。このケースでは、ひょっとしてA型→B型の二度罹りだったかも知れません。
 松山へ帰省した際に当院を受診される方も見られます。中には赴任先の中国や東南アジアから一時帰国して来院される方もいます。お正月に中国やフィリピンに一時帰国する方もおられます。診察の合間のわずかな時間ですが、それぞれの国の風土や風習をお聞きする機会もあります。お聞きしていると、やはり日本とはだいぶ違うなと驚かされることも多々あります。お正月に中耳炎になり急患センター受診の後に当院受診という流れのお子様も見られます。お正月が終わり飛行機を利用して自宅に帰る方には、航空性中耳炎への対処法をお伝えしています。
 花粉症のお薬を希望しての来院も目立つようになってきました。愛媛県近隣ではまだスギ花粉の初観測日に関する情報は得られていませんが、1月上旬には西日本の各地で初観測日を迎えつつあるものと思われます。当院設置のポールンロボでは、前シーズン用の機器の最終観測日が12月28日でした。出来れば1月10日頃まで観測が続いていれば当院から初観測日の情報をお伝え出来たのですが、、 今シーズン用の新しい機器の設置は1月下旬になると思われます。設置後は昨年同様リアルタイムの花粉症情報をお伝えしたいと思います。

  アレルギー性鼻炎へのレーザー治療、扁桃縮小手術、鼻タンポンがーぜによる鼻出血止血処置、鼓膜チューブ留置術、術後性頬部のう腫、外傷性鼓膜穿孔、好酸球性中耳炎など。 
  3日  今年は成人の日が早い回りのこともあり、子供たちの始業式が9日と1日遅くなっています。大人も仕事始めから2日で連休となりますので、本格的に集団生活が始まるのは9日からとなります。例年、ここからインフルエンザをはじめとした風邪の本格的な流行が始まります。ちょうど中学受験、センター試験の時期と重なります。受験生の皆さんは、暖かくして、マスク着用、手洗い(室内を触る→無意識に高濃度の病原体が手から口に入る→感染成立)を励行して、万全で試験に臨んで下さい。
 1月に最初にスギ花粉が観測された日が、スギ花粉の”飛散開始日”となります。三が日が穏やかな天気だったことから、このお正月に実質的な飛散開始日を迎えているかもしれません。年末の日本気象協会の花粉飛散予報の第2報では、愛媛は昨年の1.5倍だが例年よりやや少なめの飛散量だとしています。ウェザーニュースの予報と合わせ、やはり今年の飛散量は少な目なのかもしれません、(^.^)

 今年の正月休みは読書三昧です。井沢元彦氏の新著「逆説の日本史22 明治維新編 西南戦争と大久保暗殺の謎」を読みました。近年のNHK大河ドラマでは平成20年の「篤姫」が私にとっては出色の出来でした。篤姫のサウンドトラックは今聞いても耳に染みわたります。今度の逆説の日本史では、西郷隆盛がなぜ下野して西南戦争で最期を遂げたのかの背景がよく判りました。今年の大河ドラマ「西郷どん」の放映開始が楽しみです。井沢氏は、宗教的な背景をもとにした新たな歴史像を示してくれます。「逆説の世界史」も著しているとのこと。調べると県立図書館に蔵書でありました。井沢氏が、中国史・古代エジプト史・一神教の世界をどのような世界史として示しているのか? 今から読むのが楽しみです。
 もうひとつ、ディープな本の紹介を。きっかけは、Netfrixの「ナルコス」というドラマのロケ下見スタッフがメキシコで惨殺されたというニュースからです。気になってビデオの旧作が出ているシーズン1を借りて観てみました。これまでおぼろげながらの知識しかなかったコロンビアの麻薬カルテルの歴史がなぞれます。そこから麻薬を扱う世界の裏社会の歴史に興味がでました。
 歴史を理解できる本を紹介すると、
1、ヨアン・グリゴ著「メキシコ麻薬戦争」 なぜコロンビアからメキシコに密輸の主体が移ったのか、世界でもまれにみる暴力がなぜ生まれたかの歴史がわかります。世界でも類のない残忍な行為は、軍特殊部隊出身者が設立した組織から始まりました。その手法は中米の共産組織との戦いを支援した米軍のマニュアルからも得られています。英国からのアヘン貿易によって中国でアヘンが蔓延し、中国移民が最初はメキシコのネットワークを握っていましたが、その後地元の組織に権力が移行し、コロンビアからマイアミへの海上からの密輸ルートが絶たれたために、米国と長い国境を接するメキシコが密輸を制するようになりました。この本の著者の凄いところは、今後の改善策をしっかりと提言していることです。禁酒法のせいで醸造販売が非合法になりギャングの資金源になりました。麻薬の合法化と課税もひとつのプランであることが理解できます。
2、ミーシャ・グレニー著「世界犯罪機構 世界マフィアのボスを訪ねる」 冷戦崩壊後のボスニア、ロシア、イスラエル、日本、中国の裏組織の歴史が網羅的にまとめられています。ソ連崩壊後などの権力の空白期には、裏社会と国の資産を奪取した新興財閥が癒着します。ロシアでは違う裏組織をバックに、内務省軍とKGBがモスクワ市内で撃ち合いました。裏組織の資金源はどこでも、麻薬、人身売買が主ですが、ロシアや旧ソ連のコーカサス地方ではキャビアや石油も重要な資金源です。日本も終戦直後の混乱で塗炭の苦しみを味わいましたが、それでも島国で国境がないこと、犯罪組織が組織化されていたことで、世界の国々の崩壊期に比べればいかに秩序立っていたかがわかり少しホッとしました。
3、佐藤哲彦他著「麻薬とは何か 禁断の果実五千年史」 麻薬は中枢神経に作用し麻酔作用もある薬理学上も重要なジャンルです。学生時代にも薬理作用は学びましたが、この本では様々な麻薬のディープな歴史を網羅しています。ヒッピー文化とLSD、レイブ文化とエクスタシー薬などの若者の風俗との関係が述べられており、いかに豊かな国アメリカが新たな麻薬の普及に関わっているかが判ります。日本の覚せい剤取締法で所持をまず罪にしたのは、当初は覚せい剤が市販品として売られており、市販の規制が始まって密売人が多くなってきたための対応としてで、覚醒剤第一次流行期の検挙が急に増えたのは東側諸国の資金源を断つためでした。
4、工藤律子著「マフィア国家 メキシコ麻薬戦争を生き抜く人々」 麻薬組織の研究ではなく、現地の子供達や被害者のルポルタージュです。統計に出てこない犠牲者の孤児がいかに多いか。暗澹とさせられます。  
1月  1日  新しい年を迎えました。本年も当院を宜しくお願い致します。皆様の1年が健やかでありますように。


旧年末は臨時休診でご迷惑をお掛けしました。私は喪中ですが道後温泉で清めてきました。 ホームページをご覧の皆様には新春をお届けします。