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当院は、耳鼻咽喉科、気管食道科、アレルギー科専門クリニックです

TEL. 089-973-8787

〒790-0045 愛媛県松山市余戸中1丁目2-1

メニエール病と
低音障害型感音難聴

メニエール病とは
 耳の奥に位置する内耳は、音を感じるかぎゅう蝸牛 と体のバランスを感じる半規管と前庭で出来ています。半規管は3つあり回転運動を感知し、前庭には耳石器があり重力を感知します。内耳の中は内リンパ液で満たされています。メニエール病は、自律神経失調などが誘引となって、このリンパ液が余分に増えて内リンパ水腫になって聞えや体のバランスに異常をきたす病気です。多くの場合、ストレスや脱水がきっかけとなって発病し、難聴やめまいの発作を繰り返します。発作時に適切な管理治療が行われないと神経の障害が徐々に進行し、発作時でない時にもめまいや難聴を感じるようになります。

原因と悪化の要因
● 自律神経失調により、内耳のリンパ液の調節がうまく行かなくなるためです。この原因の大部分はストレスで、多忙や几帳面な人に起こります。女性ホルモンのアンバランスで自律神経失調が誘発されやすいこともあり、更年期前後の40〜60歳代の女性に多く見られます。有病率は10万人当たり約16人です。
● 近年の研究では、体の脱水により利尿をつかさどるホルモンの働きが悪くなり、体とは逆に内耳が水分過剰となるとの報告もあります。
● 梅雨や秋雨前線、台風などの低気圧や、暑さや汗のかきすぎにいる脱水で内リンパ水腫が増悪します。脱水気味で夏バテを起こし、朝の気温が冷え込んでくる8月下旬、生活の変化で精神的なストレスのかかりやすい5月、9月は発作をおこしやすい時期です。

症状と分類
● 発病のごく初期は、耳のふさがった感じやブーという低い音の耳鳴り、軽い難聴だけです。
● ある日突然、グルグル回るめまい発作が起こり、しばしば吐き気、嘔吐が起こります。
● めまいは1〜2日で軽快しますが、しばしばめまい発作を繰り返し、しだいに難聴が進行します。
● 典型例では蝸牛と半規管・前庭の全体に内リンパ水腫がおこるため耳鳴、難聴、めまいが同時に起こります。しかし内リンパ水腫が部分的におこる場合もあり、耳鳴・難聴が主体のものを蝸牛型メニエール病、めまいが主体のものを前庭型メニエール病と呼びます。内科的には、回転性めまい発作を繰り返し内耳性のめまいが疑われる場合に、便宜的にメニエール症候群と呼ぶこともあります。両側例が約30%あります。
 蝸牛型メニエール病;耳鳴、難聴のみ認めるもの(経過中に80%が典型的メニエール病に移行)
 前庭型メニエール病;めまいのみ認めるもの(典型的メニエール病移行は20%のみ)
 両側メニエール病;高齢発症者に多い、罹病期間が長いほど多い、難聴の程度が高度、完全な改善が難しい
● 高度難聴のある人が難聴の発症から10年以上経過した後にメニエール病を発症することがあり、遅発性内リンパ水腫と呼びます。

発作時の対応法
めまいの前兆について;めまいはいつどこでおこるかわかりませんが、発作を何回か繰り返す人はめまいの前兆がわかるようになります。耳鳴、耳閉感、ふらつき、頭重感、肩こり、低気圧が近づく、睡眠不足やストレスが続く、などの前兆があれば車の運転や遠出を控えます。めまいが起こった時;楽な姿勢をとり静かな環境にします。悪いほうの耳を上にして寝たほうが楽なことが多いです。当院で処方されためまいを抑える頓服薬があれば服用します。
*激しい頭痛と嘔吐、手足のしびれ、目のかすみ、意識がもうろうとしてはっきりしない、などの内耳以外の神経症状が出ている場合には、救急病院で脳神経外科の診察が必要となります!

検 査
 聴力検査、耳鳴検査
 内耳機能検査;音の僅かな変化を敏感に感じる補充現象が陽性になります。SISIテストなどで判定します。
 平衡機能検査、温度眼振検査
 血液検査;自己抗体、ヘルペスウイルス抗体
 内リンパ水腫推定試験;グリセロールテスト(聴覚系)
           フロセミドテスト(平衡神経系)
 電気生理学的検査;蝸電図検査(鼓膜に電極を置いて、内耳の電気反応をみます。−SP振幅増大がメニエール病に特徴的)
 画像診断;内耳造影MRI(内リンパ水腫を確認できます)、頭部MRI、CT(腫瘍、脳血管障害が疑われる場合に行います)

治 療
●発病のきっかけや症状を増悪させるストレスを極力取り除き、規則正しい生活パターン、十分な睡眠を心がけます。ウォーキングなどの有酸素運動が有効です。
●脱水を増悪させる塩分はひかえ(超減塩)、脱水タイプが疑われれば、1日男性2リットル、女性1.5リットルを目途に水分補給し、利尿剤の服用とともにナトリウムを体外に排出します。
● 発作の後は、発作前の状態に戻ったことを確認し、後遺障害として徐々に進行しないように注意します。
● 発作時に激しい嘔吐やめまいが収まらない場合は、入院の上、鎮静剤の持続点滴で一時的に眠った状態にします。
● 薬物療法
 急性期;7%重曹水+ステロイドの注射(点滴)、制吐剤+鎮静剤(屯用)
 間歇期;浸透圧利尿剤:イソバイド(内耳浮腫改善)
                ダイアモックス (吐き気、しびれ感、長期で低カリウムによる筋力低下、動悸に注意)
  抗めまい薬、ビタミンB12、ATP、血管拡張剤
  精神安定剤、自律神経調節剤、抗ヒスタミン薬、ステロイド
  漢方薬:五苓散、柴苓湯、苓桂朮甘湯(めまい時)、半夏白朮天麻湯(めまい嘔気時) など
● 理学療法:非侵襲中耳加圧装置(EFET01)が2019年に保険適応されました。重症例に対し、自宅で1日2回1回3分を1年間を目途に続けます。(鼓膜チューブを介して内耳に圧をかける間歇的中耳加圧療法(Meniett)が01年にスウェーデンで開発され、日本で鼓膜切開を必要としない非侵襲性の装置が開発されました)
● 手 術:保存的治療で治まらないめまいに対して行います。
  内リンパ嚢開放術(シャント手術、徐々に再発する場合がある)
  前庭神経切断術(神経を切断、めまいがひどい場合に行われる)
  内耳破壊術 (聴力がなくなるため、高度難聴の場合にのみに行われる)

日常生活の注意点
食 事;規則正しい食事を心がけ偏食を避けます。塩分の過剰摂取、脱水に注意し、脱水タイプでは水分摂取。
アルコール・コーヒー・タバコ;ストレスを処理するのに有効であれば、適量であれば発症の予防になります。ただし、発作時は増悪要因となる可能性もあり極力避けます。特にタバコには強力な血管収縮作用があるため減煙禁煙して下さい。
睡 眠;睡眠不足を慢性化させないことが重要です。一時的に睡眠導入剤を服用して頂く場合もあります。
ストレス;ストレスを完全になくす事は難しいので、いかにストレスとうまく付き合っていくかに心がけます。
趣味と運動、気圧の変化:趣味や運動は適度に楽しみます。有酸素運動は積極的に行って下さい。ダイビングは内耳の圧変化を誘発することがあり危険ですので控えて下さい。

急性低音障害型感音難聴とは
 低い音を感じる神経が障害された難聴が急に起こった状態です。典型例では、聴力検査で250Hzを中心に谷状の感音(=神経性)難聴がみられます。蝸牛の中心部が障害された場合に起こりますので、内リンパ水腫の初期に起こりやすい難聴です。この難聴だけで他の神経症状がない場合は、CTなどの脳全体の精密検査は病初期には必要ありませんが、難聴が進行する場合や遅れて他の神経症状が出現した場合には改めてMRIなどの精密検査が必要となります。総合病院の放射線科、脳外かに紹介します。
 初めて発症した場合には、ストレス性の血行障害やウイルス感染による一時的な低音障害型突発性難聴によるものか、蝸牛型メニエール病の初回発作かどうかの区別がつきませんので、再度の発症に気を付けます。
 軽度であれば約半数は特別な治療を行わなくても改善します。しかし、内耳の神経は約2週間で回復難くなり、1ヶ月で回復が見込めない後遺症になる場合が多いですので、自覚症状が無くなっても確実に治ったかどうかは聴力を再検査して確認する必要があります。
 治療は、@突発性難聴に準じる急性神経炎の治療として、末梢循環改善剤、内耳循環改善剤、ビタミン剤、、副腎皮質ホルモン、坑ウイルス剤と、Aメニエール病の治療としての利尿剤、炭酸水素ナトリウム、抗不安薬などを組み合わせて用います。

メニエール病と鑑別すべき疾患
 低音障害型突発性難聴:血行障害、ウイルス感染
 ステロイド依存性感音難聴;内耳の自己免疫異常で膠原病の一種と考えられています。抗核抗体を精査します
 良性発作性頭位めまい症(BPPV):寝返り時の一過性めまい
 外リンパ瘻;圧刺激で内耳のリンパ液が中耳に漏れて発症します
 前庭神経炎;ウイルス性疑い、持続的なめまいだけ続きます
 椎骨脳底動脈循環不全
 聴神経腫瘍;良性。めまい症状を中心に徐々に症状が進行します
 小腦や脳幹の小梗塞  *これらの脳障害にはMRIが診断に有用です
 起立性調節障害、低血圧、高血圧、不整脈、貧血、低血糖、うつ病