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慢性上咽頭炎と上咽頭擦過治療( EAT、Bスポット治療 )

 上咽頭は鼻の奥に位置する場所で、咽頭扁桃(アデノイドとも呼びます)があります。口の奥には扁桃腺(口蓋扁桃)があります。扁桃は、リンパ球が集まった免疫組織で、鼻や口から侵入した病原体などの抗原がリンパ組織に取り込まれ免疫担当細胞を介して免疫反応を誘導する免疫組織としての面と、上気道炎の感染巣となる炎症臓器としての面の2つの顔をもちます。扁桃は成長とともに増殖しその後退縮します。肥大のピークは、口蓋扁桃が6~7歳、咽頭扁桃が3~5歳です。乳児期の呼吸は鼻呼吸であり吸入性抗原の刺激が上咽頭で多いことから、まず咽頭扁桃が増殖し、その後幼児期に入り徐々に口呼吸が可能となり経口的に食事性抗原の刺激を受けることから、遅れて口蓋扁桃が増殖します。咽頭扁桃は8才頃までに劇的に小さくなり、口蓋扁桃は15才頃までに一回り小さくなり大人の大きさになります。
 上咽頭が体に害を及ぼす場合としては、上咽頭に直接的に炎症を持つ場合と、間接的に上咽頭の免疫複合体が他の臓器へ血流やリンパ流を介して悪影響を及ぼす病巣感染巣として作用する場合があります。マイコプラズマやクラミジア、新型コロナウイルスの持続感染でも慢性炎症化する場合があります。また、上咽頭は神経の集まった場所でもあります。脳神経の迷走神経や舌咽神経と自律神経が走行しており、神経の調節作用が障害されると、耳から後頭部、咽喉頭、横隔膜まで影響を及ぼします。

慢性上咽頭炎による症状
上咽頭の慢性炎症から多彩な症状が引き起こされます。
1、炎症:鼻閉・後鼻漏・痰・咳、咽頭違和感、頭痛・舌痛・歯痛などの放散痛、肩こり・首こり、耳鳴、顎関節症
2、病巣感染:IgA腎症、掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症(他に乾癬、リウマチ、微熱、IgA血管炎、Behqet病、結節性紅斑などへの関与も疑われます)
3、自律神経系の異常:全身倦怠感(慢性疲労症候群、繊維筋痛症など)、めまい・立ちくらみ、睡眠障害、記憶力・集中力の低下、消化器機能の低下(機能性胃腸障害など)

< 上咽頭擦過治療 (EAT、Bスポット治療) >
 
上咽頭は鼻咽腔とも呼ばれ、堀口伸作東京医科歯科大耳鼻科教授が1980年代にBスポット(ビインクウのB)と名付けました。このBスポットに塩化亜鉛を塗ることにより炎症を消退させる治療がBスポット治療です。日本病巣疾患研究会がこの治療法を上咽頭擦過治療(EAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy イート、上咽頭擦過治療)と呼称を統一しました。
 0.5~1%の塩化亜鉛溶液を口腔(または同時に鼻からも)からBスポットに塗り込みます。治療後数10分の痛み、半日程度の僅かな出血が見られます。
 週に1~2回の治療を、治療時に出血が無くなることを目標に約10~15回行います。

対象者と安全性:扁桃組織が年齢的に完成して急性炎症を起こしていない(風邪に罹っていない)成人を対象とします。妊婦にも安全に行えるとされていますが、痛みの刺激を与えることを考慮して当院では妊婦さんには行いません。塩化亜鉛に似た作用のグルコン酸亜鉛溶液の点鼻で嗅覚低下が起こったとの外での報告があることから、鼻腔上部への治療は行いません。
*塩化亜鉛で痛みなどの刺激が強い方には、消毒液のルゴール液による上咽頭擦過治療を行います。

費用:医療保険が適応されます。ただし、初再診料や処置後に同時に行う吸入の料金が別途加算されます。

効果発現のメカニズム
①塩化亜鉛製剤自体による組織収斂 (抗炎症作用) 
②迷走神経・舌咽神経や自律神経系を介した神経調節作用と抗炎症作用 
③うっ血状態の改善によるリンパ流や静脈流の改善


日本病巣疾患研究会のホームページに、慢性上咽頭炎と上咽頭擦過治療に関する詳しい論説があります。参考にして下さい。 
  日本病巣疾患研究会 慢性上咽頭炎 へ


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