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アレルギー性鼻炎のレーザー治療 〜有用性とその限界〜

当院ではこれまで、慢性的に症状の強い方以外には積極的にはこの治療法を奨めていませんでした。レーザー装置の普及に伴い、当ホームページや当院外来でレーザー治療に対する問い合わせを受けることも多いことから、これまでの経験や文献的な考察も踏まえて、私なりの考え方を述べてみます。 #以下、医療保険上は「手術」ですが、日帰りで短時間かつ安全に行なえますので「処置」「治療」という表現も用います。

作用機序:ジュール熱により照射中心部の蒸散とその周囲組織の蛋白変成が起こり、治療後2~4週間の及ぶ粘膜の修復過程で粘膜の繊維化が起こります。このため、アレルギー反応を惹き起こすレセプターの減少とともに、鼻腺が減少するために鼻汁分泌が減少し、知覚神経終末が減少するためにくしゃみが起こりにくくなり、粘膜の瘢痕収縮により鼻づまりが改善します。

方法:当院では手術室での日帰りの処置となります。鼻腔の形態や粘膜の状態によりますが、原則として同時に両側行ないます。 
 *予約方法:初診時に説明の上、レーザー治療をご希望の方は、当日、風邪などの体調不良がなければ、土曜日も含めた平日に予約なしで行います。(日曜日は行っておりません)
1、まず、キシロカインと呼ばれる麻酔液のスプレーやガーゼの挿入で鼻粘膜を表面麻酔します。  (鼻粘膜への注射は行ないません) 
2、10分後に鼻粘膜の下鼻甲介を中心に炭酸ガスレーザーを照射します。照射時間は両側で約10分程度です。
 *術中の痛みについては、感じ方に個人差が大きく一概には言えませんが、ほぼ無痛の方から<ちりちり>とした軽い痛みを感じる方までいます。稀に痛みを強く感じる方もおり、この場合は麻酔の追加を行ないます。基本的にはほぼ無痛で行なえますので、幼稚園児ぐらいから施行は可能ですが、処置することに対する恐怖感を覚えやすいので、当院では処置に対する理解のできる小学校3~4年生以降からの施行しています。
3、当日帰宅後の注意点;飲酒は原則として控えてもらいますが、サウナなど高温でなければ入浴は可能です。
4、当日はくしゃみが出易く、翌日以降術後10日目ごろまでかさぶた状の鼻汁が出やすくなりますので、適宜鼻かみをして頂きます。
5、手術後1~3日以内と2週後に再診します。 *手術の次の診察日は、診察の順番は優先的にしています。
6、アレルギー反応が高度で1回の治療で充分な効果が得られない場合は、ある程度経過を診た上で本人とご相談の後、1~2回の追加照射も行ないます。

費用:診察料も含めた全てに医療保険が適応されます。診察料や投薬料を除いた手術自体の費用は両側で健康保険1割負担の方で2.910円、3割負担の方で8.730円です。(2020年4月現在の保険点数)

利点
1、副作用はまずありません。再発する例はありますが、当院での悪化例はありません。
 *万が一、粘膜深部の骨膜まで焼灼した場合には、痂皮(かさぶた)の付着が持続する可能性も否定はできませんが、当院での処置方法では起こりません。妊娠中の治療については、薬理的な面からの副作用はありませんので妊婦さんでも施行可能ですが、処置を受けることに対する精神的な緊張感などによる自律神経失調の誘発も否定できませんので、当院では行なっていません。
2、通院日数が少なくて済みます。
3、ごく軽い痛みのみで施行可能です。

限界
1、アレルギー反応を惹起する鼻粘膜全面にレーザーを当てるわけではないので、症状が全くなくなるわけではありません。(下鼻甲介という鼻粘膜で最も反応する部分のみにレーザー照射し、嗅覚に影響する嗅裂(鼻腔の上部)や副鼻腔との交通路である中鼻道(鼻腔の中部)には照射しません)
2、再発の傾向があります:術後4~6週後に最も安定した効果が見られ、粘膜局所のアレルギー反応の強さに応じて徐々にアレルギー反応を起こしやすい粘膜が再生していきますので、自覚的な効果はおおむね6ヶ月から2年程度の方が多いです。視診上、1~2年後に照射した粘膜をみると、瘢痕化した部分は確認できるので、ある程度持続的な効果が認められます。注意深く観察すると5年後でも瘢痕化は確認できます。しかし、アレルギー反応の強い人の中には、3ヶ月で自覚的にもとに戻る方もあります。レーザー治療を専門とする大学病院の中には、充分な効果を得るため3~5回繰返し照射してその治療効果を公表している施設もあります。

当院でレーザー治療をお勧めする方
1、ダニ、カビなどのハウスダスト(家のほこり)で、変動はあるものの一年中症状が持続して、常に服薬して  ないと快適な日常生活を送れない方
2、スギ、ヒノキ、イネ科・キク科の雑草などの多種の花粉抗原を持ち、春から秋まで症状の持続する方
3、スギ花粉症の反応が高度で、発症前(予防)投薬を受けても症状を抑えられない方→花粉シーズン前の12月から1月に照射(効果は原則的にそのシーズンだけのことが多い)
 *治療費を安いと見るか高いと見るかは患者さんそれぞれです。私は、出来る限り「利点」と「限界」を説明した上で、ご本人自身に治療を受けるか否かの決定をして頂いております。時々季節性に症状が出るだけで短期間の処置や服薬で症状がコントロールできる方にはお勧めしていません。

総括東洋医学、民間療法も含め数あるアレルギー性鼻炎の治療の中でも、ごく短期間の治療で持続的な高い効果が得られ、副作用のほとんどない有用な治療法です。しかし、あくまでも鼻粘膜局所の対処療法であり、体質や身の回りの環境自体が変わらなければ、アレルギー反応の強さによっては3ヶ月から2年である程度再発してきます。



<アレルギー性鼻炎における体質改善の意味>
 アレルギー性鼻炎の代表的な発症機序である、特定の異種蛋白(アレルゲン)に対して抗体が作られ自己の免疫系が過剰反応して症状が出現するI型アレルギーに限定して言えば、現在の医療では抗体自体を直接減らす治療法はありません。もし「ほこり」のアレルギーが主体であるならば、極端な話、クリーンルームにでも生活するか、年齢的体力的に免疫力全体が低下するアネルジーと呼ばれる状態にならなければ抗体の減少は期待できません。最も体質改善に近いといわれる減感作療法(原因の抗体を少しづつ体に注射して体を慣らしていく治療法)にしても、遮断抗体が出来るとの報告もありますが、抗体自体が減る訳ではなく、いまだに効果の発現する厳密な機序は解明されていません。
 アレルギーの発現に関しては、たとえ同じ抗体の量、同じ粘膜の状態でも自律神経に調節される体調によって症状の出易さに大きな違いがあります。言い替えれば、精神的、肉体的ストレスなどによる自律神経の状態によってアレルギー症状は大きく左右されます。西洋医学に基づく抗アレルギー剤はもちろんのこと、東洋医学に基づく漢方薬、鍼治療や、星状神経節ブロックなどの理学療法も、原則的には治療中のアレルギー反応を起こり難くしたり自律神経失調を改善するもので、直接的な持続効果はありません。しかし、治療をある程度続ければ、治療中にアレルギー反応が抑えられることから徐々に粘膜が正常化してゆくため、その後しばらく症状が出現し難くなります。その意味では、持続的な服薬や治療が体質改善と表現されることもありますが、体質が永続的に改善されるのを保証するものではありません。あくまでも「治療を受けることによって悪循環を断つ」という心構えが必要です。
 例:1週間治療すれば→直接アレルギー反応が抑えられるので、その間は調子がいい
   2ヶ月治療すれば→粘膜が正常化してゆくので、治療後もしばらくは調子がいい

*また喘息治療の分野では、炎症により粘膜が元の状態に戻らずに悪循環になる(リモデリングといいます)ことが明らかになってきており、成人の喘息治療に続いて乳幼児でも吸入ステロイドによって悪循環を断つという早期介入の考えも一般的になりつつあります。
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