最近の話題から


 耳鳴りの「デジタル薬」 オリーブユニオン開発へ

スマート補聴器を手掛けるオリーブユニオン(東京・目黒)は、デジタル技術を使って治療やその補助をする耳向けの「デジタル薬」を開発する。耳鳴りの症状を緩和する音を流したり、聴力の具合から認知症の兆候を発見したりするような機能を想定する。2022年の実用化を目指す。

開発に向け、ベンチャーキャピタル(VC)のビヨンドネクストベンチャーズ(東京・中央)などから約7億円を調達した。エンジニアの増員やマーケティングに充てる。難聴の人は認知症を患っていることもあるため、オーウェン・ソン代表は「認知症の兆候を見出し、早期受診につなげたい」と意気込む。

オリーブユニオンのスマート補聴器はスマートフォンのと連動し、聞こえ具合をアプリから手軽に調整できる。
     (日経新聞  2021/04/05より引用)

  即座には具体的なイメージが湧きませんが高齢化から難聴、耳鳴り、あるいは認知症問題もあり、期待出来ればいいと思います。


    ンフルエンザ この冬流行せずー現行調査で初めてー

この冬のインフルエンザは、患者報告数が流行の目安とされる水準に達することなくシーズンを終えた。流行が起きなかったのは、厚生労働省が今の方法で調査を始めた2000年以降で初めて。
世界的にも同じ傾向となっており、新型コロナウイルス対策で海外との行き来や他者との接触が減ったことが原因と考えられる。
例年、ピーク時の報告は数万人規模になるが、昨年11月ー今年3月は100人未満で推移した。1医療機関当たりでは0−0.02人にとどまり、流行の目安とされる1人を超えることはなかった。

国立感染症研究所の長谷川秀樹インフルエンザウイルス研究センター長は「海外との往来の制限や3密を避けるといったコロナ対策が影響しているのは間違いない」と指摘する。
その上で、毎年流行する季節性インフルエンザで同じ対策をするのは現実的ではないが、ほとんどの人が免疫を持たない新型インフルエンザのパンデミック(世界的流行)が起きた場合に行えば「感染の広がりを杭止められるかもしれない」と話している。
   (日経新聞  2021/04/03より引用)


 タミフル格下げ  WHOが新リストーインフル薬、補足的にー

抗インフルエンザ薬のタミフルが、6月に公表された世界保健機関(WHO)の新しい「必須医薬品」リストで「保健システムに最低限必要な薬」から「補足的な薬」に格下げされたと英医学誌BMJが(7月)9日までに報じた。

同誌によると、タミフルは2009年にリスト入りした。その後、大人で症状のある期間を約1日短縮するだけで、入院や合併症を減らす効果はないとの研究が発表されるなど、以前考えられていたよりも効果は限定的との報告が出たため格下げになったという。

WHOの専門家委員会は「タミフルの使用は、入院患者が重症となっている場合に限るべきだ」と指摘。効果を示す新たな情報が出てこなければ、リストから外す可能性も示唆した。

必須医薬品は、主に発展途上国が医療水準を確保するために準備しておくべき薬をまとめたリスト。日本でタミフルは治療に広く使われているほか、新型インフルエンザの流行(パンデミック)に備え国が備蓄している。
   (日経新聞  2017/07/10より引用)

 使用しなければ数日は高熱が続きます。経験的には使用すると翌日夕方にはかなり解熱していることが多いです。データを統計的に処理すると「一日短縮するだけ」になるのかも知れませんがそれでもかなりメリットはあると思うのですが。


  皮膚に貼るインフルワクチン −北大など開発

皮膚に貼って使う新しいタイプのインフルエンザワクチンを北海道大などのチームが開発し、(5月)27日に長崎市で開かれた日本臨床ウイルス学会で発表した。

マウスを使った実験で注射より効果が高いことが確かめられ、新型インフルエンザとしての流行が懸念されるH5N1型の鳥インフルエンザにも効いたという。北大大学院獣医学研究院の迫田義博教授は「人間への活用を目指したい」としている。貼るワクチンは、シートに長さ約0.5ミリの非常に細かな針が並んだ構造で、皮膚に貼り付けると針が溶けて、中のワクチンが体内に入る仕組み
   (日経新聞  2017/05/29より引用)

 痛みが少なく、新型鳥インフルにも効果が高いとなれば一日も早いヒトへの活用が期待されます。


 耳鳴り聴神経の機能低下、一因   客観診断に応用へー生理学研

自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)などの研究チームは、耳鳴りに悩まされている患者の脳活動を調べ、必要な音を聞き分ける聴神経の機能低下が一因とみられるとの研究結果を明らかにした。

耳鳴りの患者は国内に約2千万人いると考えられているが、多くの場合、耳鳴りがしているかどうかは、本人の訴えによって知るしかないという。チームは「耳鳴りの客観的な診断法や、治療法の開発につながる」と期待している。

チームは聴神経には、周りの音とのコントラストをはっきりさせて、聴きたい音を聞きやすくする働きがあることに着目。脳磁計を使い、片方の耳だけに耳鳴りがするという患者7人が、静かな状況と雑音がする状況で、特定の周波数の音を聞いたときの反応を調べた。

その結果、耳鳴りがしている方も正常な方も、静かなときよりも、雑音がしているときの方が特定の音に対する反応が鈍く、聞き取りづらくなっていることが示された。耳鳴りがしている方がより鈍くなっていた。
  (日経新聞  2017/05/02より引用)

 高齢化の影響か耳鳴り人口は増加しており、約2千万人とのこと。左右差のない「いわゆる頭鳴り」というような状態もかなり見受けられます。原因は一概に内耳、その中枢側の後迷路、それよりもっと中枢の脳の中で鳴っている可能性を示唆するデータも増えています。今後この分野の研究には大いに期待したいところです。。


 騒音でも会話快適  −須山歯研 特定周波数拾う耳栓

補聴器やイヤホンを製造・販売する須山歯研(千葉市、須山慶太社長)は特定の周波数の音のみを伝える特殊なフィルター入りの耳栓を開発した。6月に発売する。騒音がひどい環境下で作業する人の需要を見込む。千葉市と東京・銀座の販売店で取り扱う。

製品名は「フィットイヤー・サイレンス」。特定の周波数の音のみを通す特殊な音響フィルターを耳栓に組み込む。人の声の周波数のみを通すようにすれば、騒音が大きくても会話ができる

耳の穴の型を採取して製作する。個人ごとに調整を施すので、ぴったりとはまる。素材には柔らかいシリコンを使う。スポンジの弾性を使って耳穴をふさぐ一般的な耳栓と異なり、長時間着けても痛みが少なくて済む。

装着することで25−30デシベル程度音が小さくなる。大音量ライブを楽しむ際の耳の保護にもなる

黒や黄色、透明色など全部で20色ある。価格は2万1600円。耳型の採取費用として別途1万5400円が必要だ。
   (日経新聞  2016/05/09より引用)

 普及すれば空港の作業士の方とかの見慣れたヘッドホーン型防音具姿が変わるのでしょうか。ノイズキャンセリング技術も発達が凄いですが、大音響や騒音による耳への負担が軽減することは長寿社会にとっても重要なことと思います。


 耳穴の形で生体認証 −NECなど 音の反射から解析

NECと長岡技術科学大学の矢野昌平准教授らは、音を使って耳穴の形状を調べることで個人を特定する新たな生体認証技術を開発した。イヤホンから音を出し、その反射音をデータサーバーに送って解析する。イヤホンとスマートフォンさえ持っていれば、いつでもどこでも、歩き回りながらでも認証を受けることができる。2018年度の実用化を目指す。

横浜市で開く日本音響学会で10日に発表する。

開発したのは、携帯端末で使えるアプリケーションソフト。市販のマイク付きのイヤホンから20キロヘルツまでの様々な周波数の音を出し、その反射音を捉えてデータサーバーに送る。

サーバーで反射音を解析して耳の鼓膜に至る外耳道の形をつきとめ、あらかじめ登録した個人データと照合する。外耳道の形には個人差があり、99%以上の精度で誰の耳かを特定できる。反射音の送信から約1秒で認証可能だ。

顔の形や指紋、静脈など様々な生体情報を利用した生体認証技術が実用化されているが、いずれも生体情報を測定するための専用装置が必要だ。施設への入場時など、決まった場所でのチェックには有用だが、施設内で行動しているときに要所要所で認証するような用途には向かない。

今回開発した技術なら、スマートフォンとイヤホンを持ち歩いてもらうだけで、どこでも認証できる。周囲の雑音にも強い。イベントのスタッフや重要施設の警備員、プラントの保守点検の作業者など、歩き回って作業する人をこまめに認証することが可能で、作業の進行管理やセキュリティーの確保に役立つ。
    (日経新聞  2016/03/07より引用)

 まるでスパイ映画みたいですが、確かに外耳道の直径、長さ、角度などは個人差が多いので。それを生体認証に利用することに思いついた人は流石、凄いです。


 インフルエンザの流行状況とワクチン、抗インフルエンザ薬の有効性 日本臨床内科医会インフルエンザ研究班班長 河合直樹

2014−15年シーズンの流行はPCR等の結果、A香港型(H3N2)が約95%、B型は5%程度で、H1N1型は全くみられなかった。流行の開始とピークは例年より約2週間早かった。A香港型の年齢層は10代(27%)と60歳以上(19%)が比較的多く、B型は約7割が20歳以上であった。

ワクチンに関してインフルエンザ発生率は10歳代で非接種群の29.6%に比し、接種群は10.3%と有意に低く(p<0.001)、有効性が確認された。抗インフルエンザ薬は例年より各薬剤ともA型では解熱時間が短い傾向にあり(25.8−28.7時間)、ウイルス残存率も低い傾向にあった。B型は例年同様。A型よりも解熱時間が長かった(37.5−46.5時間)

(後略)

結語:2014−15年シーズンはほぼA香港型一色の流行でワクチンや抗インフルエンザ薬の有効性も確認された。


  「白い舌」 がんのリスク増   ー原因化合物濃度高く 岡山大、北海道大発表ー

舌の表面にできる白い汚れ「舌苔(ぜったい)」が多い人は口や喉のがんの原因になるとされる化合物アセトアルデヒド」の口中濃度が高いことを岡山大、北海道大のチームが突き止め、(3月)28日までに発表した。

チームは、舌苔を取り除くと濃度が下がることも確認しており、舌をきれいにすることが、がん予防につながる可能性がある、としている。

チームによると、舌苔は、食べかすや、口の中から剥がれ落ちた粘膜細胞、細菌がたまったもの。口の中が乾燥しやすいと付着しやすく、口臭の原因ともされる。

研究は健康な男女65人を対象に実施。その結果、舌苔が舌全体の3分の2以上付着した人の呼吸中のアセトアルデヒド濃度は、付着が3分の1以下の人の約3倍だった。

口の中のアセトアルデヒドは喫煙や飲酒などで発生するとされるが、チームは舌苔に含まれる細菌もアセトアルデヒドを作り出しているとみている。
   (愛媛新聞  2015/03/29より引用)

 白色または黄色っぽい舌からはカビが検出されることが多いですが、喫煙・飲酒以外に舌苔自体が多いことが発がん性に関係があることを研究した興味ある結果です。


  花粉4割減ったのに、、、重症の割合昨年並み

今春の花粉は昨春より4割減ったのに、花粉症の症状があった人のうち重症だった人の割合は昨年並みー。こんな調査結果を気象情報会社ウエザーニュース(千葉市)がまとめた。

スギとヒノキの花粉が飛んだ時期がずれたためで、同社は「例年は症状が軽くなるシーズン後半にヒノキ花粉のピークが現れ、重い症状の期間が長引いた」としている。

症状は2−5月、同社のスマートフォンアプリ利用者約6万8千人に調査。「非常につらい」「つらい」「ややつらい」「大丈夫」の4択から回答してもらった。北海道はシラカバ花粉を対象とした。

その結果、半数は「大丈夫」と回答。症状を訴えた人の内訳をみると、「非常につらい」は10%、「つらい」は24%で、重い症状を訴えた人の合計は3人に1人で、昨年の31%と並んだ。「ややつらい」は67%だった。

同様に都道府県別に「非常につらい」「つらい」の合計をみると、高知は47%(昨年28%)で最も多く、滋賀の46%(同32%)が続いた。最少は福井の20%(同41%)多くの県は30%前後だった。愛媛は33%(同37%)だった。
   (愛媛新聞  2014/08/06より引用)

アレルギー性鼻炎は発症してしまうと花粉飛散数にはあまり関係なく、飛散の状況(一気に飛ぶ、持続的に飛ぶなど)に影響されます。今年はスギ、ヒノキの飛散時期が折悪しく重なり長引いたようです。「冷夏の翌年のシーズンは花粉症が少な」く、当たり年、裏年が交互に訪れていたのですが、この頃は毎年酷暑が続きますので来年はどうでしょうか。


  近年のインフルエンザ感染率、サーベイランス報告よりはるかに高い

英・University Colllege LondonのAndrew C.Hayward氏らは、近年の季節性インフルエンザウイルスと2009年パンデミックウイルス(A/H1N1 pdm09)による感染の重症度と負荷を追跡した大規模な地域住民研究を実施。これまでの受診者ベースの研究では見えてこなかった無症候性感染者の実態をLancet Respir Med(2014年3月17日オンライン版)で報告した。それによると、総人口の5人に1人が感染していたが、のうち症状が発現したのは23%、受診したのは17%のみであった。

追跡人口は、11万8,158人/週、1流行期当たり5,448人であり、ペア血清が得られた3,295人中2,737人(83%)がワクチン非接種であった。ワクチン非接種地域のインフルエンザ感染率は、冬季が平均18%、パンデミック期が平均19%、2009年のパンデミック期が18%であった。感染者のほとんど(77%)は無症候で、受診したのはPCRでインフルエンザ感染が確認された者の約17%であった。

ベトナム・Oxford University Clinical Research UnitのPeter W.Horby氏は、同誌の付随論評(2014年3月17日オンライン版)で「潜在性インフルエンザ感染率の高さは疑いないが、軽度および無症候性のインフルエンザ感染が、感染拡大にどの程度寄与するのかについてはまだ答えが出ていない。地域社会では多くの健康な者と感染者がともに生活しており、軽度の感染でも感染拡大の進行に実質的に寄与している可能性がある」と指摘。
   (Medical Tribune 2014/05/15記事より抜粋引用)

 英国ではインフルエンザに罹患しても受診することは少なく、このような調査研究がなされたこと自体、今まで少なかったようです。症状があっても日本ほど抗インフルエンザ薬で治療することはないようですが、感染拡大を防止する目的で、無症候の保菌者をどう対処するかは今後の重要な検討課題です。


  花粉症に対する舌下免疫療法薬が米国で初承認

米食品医薬品局(FDA)は4月2日、牧草などの花粉に対する眼や鼻のアレルギー症状(grass pollen allergies)の舌下免疫療法薬(商品名Oralair)を同国内で初めて承認した。

FDAによると、同薬の適応は「特定の花粉により引き起こされるアレルギー性鼻炎(hay fever)の治療」で、投与対象年齢は10−65歳。開発企業の資料によると、同薬にはハルガヤやホソムギなど米国の患者が曝露する頻度が高い5種類の植物の花粉アレルゲンが含まれている。

同薬承認の根拠となったのは、米国などで実施された2,500例の患者を対象としたプラセボ対照試験。アレルゲンとなる花粉の飛散シーズンにおいて、アレルギー性鼻炎の症状および治療薬の追加状況などが比較された。その結果、1シーズンでプラセボ群に比べ、実薬群で16−30%の症状改善や追加投薬の減少が確認された。

同薬は花粉飛散シーズンの4か月前から終了まで1日1回舌下投与する。初回投与時には医師の前で服用し、30分の経過観察を行うことが求められている。その場で有害事象の可能性がないことが確認できた後は自宅での服用が可能としている。

なお、添付文書にはアナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応の可能性に関する警告欄が示されている。最も多く報告された有害事象は耳や口、舌の痒み、唇の腫れや喉の違和感などであった。
   (Medical Tribune 2014/04/24記事より引用)

  日本では花粉症と言えば「スギ花粉症」が代表的ですが米国や欧州では牧草などが最も重要な原因です。日本では今秋、スギ花粉症に対する舌下免疫療法が開始される動きです。新たな治療法として注目されます。


  アレルギーなぜ夜にひどく −免疫細胞の遺伝子 活発な働きが原因ー 山梨大 発症時間の調整に道

花粉症やぜんそくなどのアレルギー症状が夜や朝にひどくなる傾向にあるのは、免疫細胞「マスト細胞」内の遺伝子が夜間から朝方に活発化するためであることを、山梨大医学部の中尾篤人教授(免疫学)の研究チームが突き止めた。遺伝子の働きを薬で抑制すれば症状の出る時間帯を調整でき、治療への応用が期待される。

研究によると、この遺伝子は「時計遺伝子」と呼ばれ、マスト細胞内で振動してリズムを刻んでいる。日中に落ち着き夜間に活発になる遺伝子の活動に応じて、マスト細胞が花粉などのアレルギー原因物質に反応する度合いを自ら調節していることが分かった。

鼻づまりなどの症状は原因物質が体内に入ってマスト細胞から化学物質ヒスタミンが放出され、粘膜や呼吸器に影響するために起きる。これまではヒスタミンの作用を薬で抑える治療法が一般的だったが、中尾教授は「時計遺伝子の活発化を薬で抑えることができれば、ヒスタミンの量を少なくすることが可能だ」と強調する。研究論文は米国アレルギー臨床免疫学会誌(電子版)に載った。
   (日経新聞  2013/10/28より引用)

  花粉症はモーニングアタックぜんそくは明け方4時ごろに症状のピークが来ることが知られていますが、マスト細胞内のヒスタミンでなく時計遺伝子を変化させるユニークな発想の治療法が臨床応用化されることになれば新しい展開が期待されます。


  においの正体、嗅覚の仕組み

食べ物や花、香水などは、それぞれが何百種類もの揮発性の化学物質を出している。これらを「におい分子」といい、その集合体が香りやにおいの正体だ。

何百種類の「におい分子」の中には、香りやにおいを大きく左右するものもあれば、それほど関係のないものもある。バラの香りと焼肉のにおいが違うのは、それぞれに含まれている分子の顔ぶれや量が異なっているからだ。

空気中を漂う「におい分子」は、鼻の中の嗅細胞にある受容体(センサー)でばらばらに捕えられる。それらの情報が脳で統合されてはじめて、特定の香りやにおいとして認識される

地球上には数十万種類にも上る「におい分子」があり、人間はこのうち約1万種類を嗅ぎ分けている。だが、人間の嗅覚のセンサーは、わずか400種類ほどしかない。人間より鼻がいいイヌでも800種類で、嗅覚を頼りに行動するマウスでも1、000種類だ。

このように限られた種類のセンサーで、身の回りにある膨大な種類の「におい分子」をどうやって識別しているのか? 動物の嗅覚のメカニズムは謎だった。

謎を解く突破口になったのが、米国のリンダ・バックとリチャード・アクセルの研究だ。2人はセンサーに関する遺伝子群を初めて突き止め、2004年のノーベル医学生理学賞を受賞した。

バックらはこれらの遺伝子のはたらきを調べることで、一つの「におい分子」が複数のセンサーをオンにできることを解明した。たとえば、人間が何らかの香りを嗅いだとき、400種類のセンサーの中にはオンになるものもあれば、オフのままのものもある。この「オン・オフ」のパターンをもとに、脳はそれが何の香りなのかを識別しているのだ。

400種類の「オン・オフ」のパターンは膨大なので、多種多様な香りやにおいに対応できている。(竹石涼子)
   (朝日新聞  GLOBE 2013/04/21-5/4より引用)

 鼻炎、風邪のときなどに嗅覚が無くなったり、低下したりします。嗅覚は味覚とともに、有毒なものを探知、識別したり、情緒を楽しんだり、味わい深い生活を送るために必須な感覚です。たかだか400種類くらいのセンサーで何万種類ものにおい、香りを識別している仕組みに驚かされます。


  黄砂でアレルギー悪化? 花粉破裂、原因物質が拡散

春の空は微小粒子状物質(PM2.5)などの大気汚染物質に黄砂、花粉などが混ざりあって漂う場合も多い。これらが互いに影響し合うとアレルギーの原因物質が出やすくなり、花粉症の悪化につながるらしいことが分かってきた。

今春のスギ花粉の飛散は多くの地域で峠を越えつつあるが、ヒノキ花粉はなお多い。北海道ではシラカバの花粉も飛ぶ。

スギの花粉の大きさは30マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル前後。普通のマスクで十分に防げそうだが、必ずしもうまくいかない。花粉が割れて細かく砕けて散るからだ。

花粉は殻のようなもので覆われているが、何らかのきっかけで水分を吸い込むと破裂する。その際に表面付近のアレルギー物質が飛び散り、続いて内部のアレルギー物質も外に出る。破片はPM2.5より小さいものも多い

何が破裂のきっかけになるのか。埼玉大学の王青躍准教授によると、大気汚染物質の硫酸塩や硝酸塩が湿り気を帯びた状態で、弱アルカリ性の花粉に付くと酸によって表面が傷つく。そこから水分がどんどん吸収されて短時間で壊れてしまう

なかでも硫酸カルシウムなどのカルシウム塩の破壊力が大きいことが、スギ花粉を使った実験でわかった。カルシウム成分を持つ代表的な粒子が黄砂だ。表面で汚染物質と反応すれば硫酸カルシウムなどができる。実際に黄砂の飛来時に降った雨の成分を測定すると、アレルギー物質の濃度が高かった。

ヒノキ花粉の場合も、スギと同じような条件で花粉症を悪化させる可能性が高い。霧雨など弱い雨と黄砂の組み合わせが最悪だという。

土砂降りの日には花粉も黄砂も大部分が洗い流されるので、アレルギー物質は飛びにくい。しかし翌日晴れあがり、風があると壊れた花粉が乾燥して一気に飛び散る恐れがある。

気象業務支援センターの村山貢司・専任主任技師によると、雨上がりにはただでさえ花粉が飛びやすい。雨でつぼみが開かずたまっていた花粉がまとめて飛び出すからだ。花粉の表面に汚染物質がくっついていると、花粉症を悪化させるとの報告もある。

黄砂が中国大陸から運ばれる間には表面で様々な化学反応が起きる。加えて多くの微生物が付着しており、アレルギー反応を起こすものもあるようだ。これらが花粉症の悪化にどう影響するのか、解明が待たれる。(編集委員 安藤 淳)
   (日経新聞 2013/04/14より引用)

  今年は「西日本の花粉飛散は少ない」と予想されていましたが、例年より症状の強い患者さんが多かったように思います。飛散数もさることながら、種々の汚染物質のアジュバント効果(増強効果)が関係していたのかも知れません。


  花粉症 欧米で増加温暖化背景 飛散長引くー患者、国民の15−25%

日本で毎年春に多くの人を悩ませ「国民病」ともいわれる花粉症は、米国や欧州などでも増加傾向にある。地球温暖化で花粉を飛ばす植物の開花期間が延び、花粉の量が増えていることが原因の一つとみられ、患者は今後も増える勢いだ。

花粉症は米、カナダや英国、南半球のオーストラリアにもあり、患者は国民の15−25%程度。約20%が花粉症とされる日本とあまり変わらない

米国立アレルギー感染症研究所によると、米国で花粉症の最も大きな原因はキク科の植物ブタクサ。夏の終わりから初秋にかけてが花粉のピークで、国民の15−20%が花粉症とみられる。

北米でブタクサの花粉飛散期間は長期化しつつあり、過去30年間に花粉症を含む米国のアレルギー疾患は増加傾向。継続的調査によると、カナダでは花粉が飛び始めてから飛散がほぼ終わるまでの期間が2011年までの17年間に、最長で26日間延びた。米北部では24日間、中部で12日間長くなった。

大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が上昇すると光合成が盛んになり、花粉の生産量も増えるため、米農務省研究チームは、「地球温暖化がさらに進むと花粉症被害が深刻化する可能性がある」と警告している。

英国の患者は国民の20−25%。芝などイネ科植物の花粉症が最も多い。

オーストリアの花粉症患者は国民の16−20%。ドイツ誌シュピーゲルは昨年4月、欧州13か国の都市部で花粉の量が年に3%の割合で増えていると報じた。

オーストラリアにはブタクサやオリーブなどの花粉症があり、現地の春に当たる9−11月がピーク。保健当局によると07−08年の患者は国民の約15%。花粉症対策によく使われるスプレー式点鼻薬や抗ヒスタミン剤などの販売額は10年までの10年間で倍増した。

スギの木が少ない韓国ではヨモギ、ブタクサによる秋の花粉症が多い。一方アフリカ諸国では花粉症は大きな問題になっていない。

世界保健機関(WHO)などが昨年10月に発表した報告書は、環境と生活様式の変化が花粉症増加を助長していると分析。温暖化により欧州全域で植物の成長する季節が長くなり、大気中の花粉の量も増えていると指摘した。

各国の花粉症

           原因となる主な植物    主な発症の季節      国民に占める患者の割合(推定)

米国         ブタクサ             夏ー秋           15−20%
英国         芝などのイネ科植物      5−7月頃         20−25%
            イラクサ、ヨモギなど     8−9月頃
オーストリア    シラカバ、イネ科植物     春ー夏           16ー20%
            ヨモギ、ブタクサ        秋
オーストラリア   ブタクサ、オリーブなど   9−11月頃         15%程度
韓国         ヨモギ、ブタクサ        秋              不詳
日本         スギ、ヒノキ          2−5月頃          20%程度

  (愛媛新聞 2013/04/03より引用)

日本では花粉症と言えばスギ、ヒノキなどの樹木花粉が代表的で、イネ科の雑草が続きますが、各国でそれぞれ特徴があります。米国ではブタクサなどのキク科の雑草、英国ではイネ科雑草が主因です。日本ではスギ、ヒノキの花粉が結ぶ夏の気候が重要視されますが、花粉が増えれば花粉症の人も増える道理で、地球規模で種々の花粉が増加する要因として地球温暖化が原因の一つと考えられており、注目に値する報告です。


  薬剤で難聴改善 −マウスの内耳細胞再生ー慶大など根本治療に道

慶応義塾大学の岡野栄之教授らは、認知症の治療向けに開発された薬剤を難聴のマウスに投与し、聴力を改善させる実験に成功した。音を電気信号に変えて脳神経に伝える内耳の細胞が再生した。内耳性難聴などの根本的な治療につながる可能性がある。

米ハーバード大学との共同研究成果。(1月)9日付けの米科学誌ニューロンに掲載される。

マウスや人間では内耳にある蝸牛(かぎゅう)の有毛細胞で音を電気信号に変える。騒音や加齢などの影響で有毛細胞が損傷すれば難聴になる有毛細胞は自力で再生できず、一度失った聴力は取り戻せない。

研究チームは有毛細胞の隣にあり、騒音などのダメージを受けにくい支持細胞の働きに注目。支持細胞は有毛細胞になることができるが、通常は有毛細胞から変化を阻む信号が出ている。この信号伝達を阻害する薬剤を難聴マウスの耳に投与した。実験の結果、有毛細胞の数が回復した一方で、同程度の数の支持細胞が減っていた。音を聞かせた際の脳波を調べたところ、人間の高度難聴に相当するマウスの聴力が小幅に改善したことも確認できた。

この薬剤は下痢などの副作用があり認知症治療薬としては実用化しなかった。耳への局所的な投与なら、問題ないと研究チームはみている。

世界では人口の一割以上が内耳などに障害がある感音難聴であるとされ、治療法の研究が進んでいる。
   (日経新聞 2013/01/10より引用)

 内耳の有毛細胞は有限で再生が効かないと考えられていましたが、支持細胞から変化させることにより再生に成功したということで、今までごく限られていた「治せる感音難聴」が飛躍的に増加する可能性が出てきました。


 貼ってインフル予防 −阪大などワクチン 臨床で効果確認ー

創薬ベンチャーのコスメディ製薬(京都市、神山文男社長)と大阪大学は、皮膚に貼って使うインフルエンザワクチンを共同開発した。阪大が実施した人への臨床研究で有効性を確認したのは初めてという。貼るだけで済むため注射が要らずワクチンも保存しやすくなる。大手製薬会社などと研究を進め、5年後にも実用化を目指す

(11月)17,18日に横浜市で開く日本ワクチン学会で、阪大の岡田直貴准教授が発表する。

開発したのは直径1センチ程度の丸いパッチ。皮膚に貼り付ける面に微細な突起が230本ついている。突起は根元部分の直径が0.16ミリメートル、先端は0.04ミリメートルで高さは0.8ミリメートル。貼ると皮膚に刺さり、突起部分に注入してある成分が溶けて吸収される。突起は小さいため、刺さっても痛みはほとんど感じない。

健康な19人を対象に、3種類のインフルエンザワクチンで実験した。突起に注射と同じ必要量(15マイクログラム)を入れて6時間貼った。3週間後に体内の抗体の量が欧州医薬品庁(EMA)が定める基準を満たしていることを確かめた。

ワクチンは通常、空気接触などによる酸化を防ぐため、冷温で管理する。突起内にワクチンを密封すれが酸化しにくくなり、常温で保存できる。消費期限も1年以上に延びるという。

貼るワクチンが実用化すれば、注射技術を持つ医師や看護師がいない場所でも使えるようになる。使用時の痛みがほとんどないため、子供に接種しやすい。ワクチンを手軽に使えるようになれば途上国などで需要が期待できる。
   (日経新聞 2012/11/17より引用)

 皮膚にかゆみや発疹などが出なければ、注射ではないので痛みが少なく、特に子供には福音です。


 スギ花粉症 食べて治すコメー医薬品で20年度にもー

農業生物資源研究所などがスギ花粉症を治療するコシヒカリの実用化研究を本格化している。食べているうちに症状を改善できる花粉症治療米を、食品としてではなく医薬品として開発する。すべての花粉症患者に効果が見込めるコメを2020年度をめどに実用化する。

今月(6月)4日、茨城県つくば市の農業生物資源研の敷地内のフェンスで囲われた水田で田植えがあった。整然と並ぶ苗は一見するとごく普通のコシヒカリ。だが、遺伝子組み換え技術を使い、米粒の中に花粉症の原因となる4種類の物質がたまるように細工してある。収穫は9月半ばの予定だ。

治療米は花粉症の原因となる物質を摂取し続けて体を慣れさせ、アレルギー症状を和らげる。個人差はあるが、数年間食べ続ければ効果が出るとみられる。同研究所が日本製紙やサタケなどと開発中の治療米は、胃で分解されにくいタンパク質の中に原因物質が含まれ腸から吸収されやすい。

治療米を初めて栽培したのは昨年。収穫したコメをスギ花粉症のモデルマウスに20日間食べさせた後、花粉を投与した。通常のコメを食べたマウスを比べたところ、「花粉症に伴うくしゃみなどの症状が大幅に減った」(同研究所の高野誠研究主幹)。花粉症と密接な関係がある抗体などのタンパク質も激減していた。

本格的な作付けを始めた今年は約400Kgの収穫が見込めそうだ。高木英典主任研究員は「次は人に近いサルを使った実験を始めたい」と意気込む。将来、製薬会社と連携し、人での臨床試験(治験)も実施する考え。

同研究所が花粉症を緩和するコメの研究を始めたのは00年。数年で開発でき、健康食品として販売を目指した。しかし、07年に厚生労働省が、医薬品として扱う方針を打ち出したため、プロジェクトは中断。一から出直すことになった。

今回の治療米は組み込む遺伝子に工夫を凝らしたため、ほぼすべてのスギ花粉症患者に効くと研究チームは期待する。従来は7−8割の人しか改善が見込めなかった。

医薬品として開発するには効果だけでなく品質管理も重要。医薬品製造に求められるGMPという基準を満たすため、日本製紙は網が張られた大型温室でコメを安定して生産・管理できる水耕栽培システムを作る。アレルギーの原因物質はコメの外側に蓄積されるが、多すぎてもおいしく炊けない。これを解決するため、サタケが有効成分を残しながら味も良い精米技術を開発する。

治療米はレトルトパックに入れる方針で、有効成分がある範囲に収まっているか確認する必要もある。独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)と相談しながら課題を一つずつ解決していく考えだ。

花粉症は国民の4人に1人が悩まされている。患者負担が少ない「医食同源」の治療米が実用化すれば、非常に便利だ。医薬業界も世界初の試みに注目している。(編集委員 西山彰彦)
   (日経新聞 2012/06/26より引用)

 花粉症治療として非常にユニークな発想の治療法と思います。三食とも食べるのか、花粉症でない家族も一緒に食べて問題ないのか、加えて遺伝子操作というのが少し気になりますが、そのあたりをクリアできれば年々増加傾向にある沢山の患者さんには大きな福音です。


  いびきの状態、スマホで確認 ーアニモー

音声認識技術の開発を手がけるアニモ(横浜市、服部一郎社長)はスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)を使っていびきの状態をチェックできるサービスを6月4日から始める。NTTドコモのスマホ向け。いびきをかいていた時間やいびきの中断回数などを自動集計し、体調管理に役立てる。

新サービスはNTTドコモの「SPモード」のメニューサイト上で提供する。就寝時にスマホで録音を始め、3時間分の音量データをアニモのサーバーに自動的に送信し、分析する仕組み。独自の音声分析技術を用いて、送られたデータの中からいびきの部分だけを検出できる。

東京大学の加我君孝名誉教授が監修した。いびきの割合が全体の8%以内、いびきの中断回数が3時間のうちに7回以内であれば、特に問題ないという。月額利用料は420円。
   (日経新聞 2012/05/28より引用)

 いびき、睡眠時無呼吸(症候群)は子どもでは発育障害、大人では心・肺への負担など、ストレス社会における現代病として話題となっています。睡眠中のこととて、自覚症状はわからず、寝起きをともにする人に教えてもらうしかなく、今でも検査をするとなると多くは最低一泊入院が必要です。この方法だと非常に簡便に検査が可能のようで、いびきや無呼吸で悩む人々には福音です。


 2012年 スギ・ヒノキ花粉飛散情報

スギ・ヒノキ花粉飛散総数は2011年6−8月の気象条件、気温・日照時間・降水量に影響されます。9月下旬のスギ雄花の調査結果から、2012年春の花粉飛散総数は、西日本の一部地域で2011年を上回りますが、全国的に平年(過去10年平均)の80−120%と予測しています。また過去10年平均の飛散量はその10年前と比較して2倍以上になっており、近年の花粉飛散量自体が増加傾向です。

花粉飛散数に最も影響する2011年の6−8月の気象状況は、梅雨明けが早かった6月・7月にかけての気温・日照時間を、2010年と比較すると全国的にほぼ同じでしたが、8月は気温の変動が大きく日照時間は2010年と比べるとかなり少なくなっています。また、9月末の時点でのスギ雄花の着花は2011年より少ないですが平年並みです。
   (NPO法人 花粉情報協会 佐橋紀男先生 Medical Tribune 2011/12/08)

 以前は2年、3年周期で花粉の「当たり年」が予測されていましたが、この頃は少し「法則性」に狂いが生じている印象です。花粉飛散直前の天候にも大いに影響されますので、やはり油断は禁物です。


  インフルエンザウイルス 早期検査装置を開発ー富士フイルム 発症初期に検出ー

富士フイルムはインフルエンザウイルスへの感染を調べる検出装置で、感度を従来の100倍程度に高めた新製品を開発した。現在、インフルエンザの感染は発熱など発症から半日以上たたないと判別が難しいとされるが、同装置を使うと発症6時間以内の初期段階でも感染を検出できるという。

検出キットとともに今冬にも医療機関向けに販売する予定。患者の鼻やのどから採取した検体を専用チップに塗布し、化学反応でできる線を目視で確認し感染の有無を判別する。写真フィルムの現像技術を応用した独自開発の溶液により、検体中のウイルス量が従来の100分の1でも反応を目視できるようにした。検出できるのはインフルエンザA型と同B型。チップを挿入して15分で最終確認が可能となる。
   (日経新聞 2011/07/16より引用)

  インフルエンザの診断は簡易検査キットの開発で随分容易となり、また年々新しいキットが開発され短時間でより正確な診断が可能となっていますが、今回のものは予定通りであれば発症6時間の段階で診断可能とのことで一般臨床の場でまたまた強力な味方の誕生となります。


  携帯音楽プレーヤー 大音量で聴覚異常 ー雑踏で小さい音聞きづらくー生理研が解明

携帯音楽プレーヤーを大音量で聞き続けると、音を鮮明に聞き取りにくくなるーー。こんな研究成果を自然科学研究機構・生理学研究所の柿木隆介教授と岡本秀彦准教授らがまとめた。雑踏の中で自分の名前を呼ばれても気がつきにくくなるという。

大音量で聞き続けると難聴になるが、その前の段階で聴覚の異常が起こることは知られていなかった。難聴の聴覚検査では見つからないため、専門家は大音量は控えるよう呼びかけている

成果は(3月)3日の米科学誌「プロスワン」(電子版)に掲載された。

研究チームは、人が音に気付く前に脳の活動が活発になることに注目。半年以上、携帯音楽プレーヤーを1日平均で1時間程度、最大に近い大音量で聞き続けている13人と、まったく使わない13人を比較。騒がしい音がする中で、注意しないと気付かない小さな音を聞かせたときの脳の活動の様子を調べた。

大音量で聞いている人は、小さな音を聞かせたときの脳活動が20%ほど低かった。はっきりと認識できていない状態だという。
   (日経新聞 2011/03/06より引用)

 大音量に長時間曝されると内耳の有毛(神経)細胞が時には急激に、時には慢性変化として障害を受けます。特に通学、通勤途中などでは、電車や周囲の騒音に負けない音量で長い時間聞くこととなり、聴覚系にかなりの負担を強いていることになりますが、「聴力検査で異常が見つかる前の異常」ということで非常に厄介なこととなりました。


  花粉”悲惨”量予測  来春 四国は今年の6−7倍

気象情報会社「ウエザーニューズ」(東京)は(10月)6日までに、来春のスギとヒノキ(北海道はシラカバ)の花粉飛散量予測を発表した。全国平均で今年の5倍、近畿だと10倍、関東は7−8倍とみている。
今夏の記録的猛暑と日照時間の長さから、雄花生産量が多くなるとみられるという。同社は「花粉症は無関係と思っていた人も来春は油断できなくなりそう。早目の対策を」と呼び掛けている。

今春と比べた各地域の予測は以下の通り。
北海道             1−2倍
東北北部           5−6倍
東北南部           2−3倍
関東、甲信、北陸、東海  7−8倍
近畿                10倍
山陰             2−3倍
山陽             5−6倍
四国             6−7倍
九州                2倍
   (愛媛新聞 2010/10/07より引用)

 今年(2010年)は2,3月の雨などもあり、また花粉生産のウラ年も重なり、花粉飛散は少なかったのですが、来年は上記の条件も加味すればかなりの飛散が予想されます。毎年症状のでる人は勿論ですが、あらたに花粉症デビューする人が増えそうです。


 花粉飛散 今年は平年の3割 (愛媛)県内研究者が調査結果

(愛媛)県内のスギ・ヒノキ科の花粉飛散状況を観測している日本花粉学会員の桧垣義光さん(64)−今治市大西町九王ーらの研究グループはこのほど、2010年の県内4地点の飛散状況をまとめた。比較調査が可能な1997年からの過去13年間平均の約3割しか飛散しておらず、花粉症患者にとっては、過ごしやすい年だったことが裏付けられた。

観測地点は新居浜、今治、松山、宇和島の4市で、飛散量が平年(13年間平均)に比べ最も少ないのは新居浜市で26.6%にとどまった。最も高いのは宇和島市の44.1%だが、1平方センチメートル中の飛散量は他の3地点の半数程度だった。桧垣さんは前年7月の気温が高い日数が多いほど花粉が形成されやすいとし、「昨年7月の県内平均気温はやや低めに推移し、今年の飛散量の減少につながった」とみている。

飛散期間はスギが2月上旬から3月下旬まで、ヒノキが3月中旬から4月末ごろまでだった。比率ではスギが約7割を占めた。昨年と比較してスギが1割程度多かったという。(松下和人)
   (愛媛新聞 2010/07/14より引用)

花粉の作付けが裏年に当たり、花粉の実をつける昨夏の日照時間が少なく、花粉飛散数は少なめが予想されていましたが、直接の原因は飛散時期の「観測史上稀な」雨の多さだったためと思われます。


 応援ラッパ「ブブゼラ」って何 −古くは「ホラ貝」の用途 ー耳栓勧める専門家も

南アフリカのサッカーと切り離せない応援グッズがある。「ブー、ブー」とけたたましい重低音を発するラッパ、ブブゼラだ。お祭りムードを盛り上げる一方、「聴覚障害を引き起こす可能性もある」とする専門家の意見も。W杯南ア大会では、選手同士の声が伝わりにくいなどピッチ上にも影響が出そうだ。

南アフリカ観光局によると、ブブゼラは南アの先住民族が古くから「ホラ貝」のような用途で使ってきたという。つまり「最もよく通る音が出る器具」。もともとは動物の骨や角をくりぬいて作り、村人に集合をかけたり、敵の侵入を知らせたりしていたらしい。

現在の用途はほぼサッカーの応援限定で、ラグビーなどでは見られない。長さ50センチほどのプラスチック製のタイプが一般的で価格は数百円。吹き口は筒状になっており唇を震わせないとうまく音が出ないが、W杯期間中は格好のお土産ともなっている。

その大音量は「騒音」なみで、電車が通るときのガード下が目安の100デシベルを軽く越えるという。一斉に吹き鳴らせば、主審の笛や非常時のアナウンスが聞こえにくくなる可能性も。近くで聞き続ければ難聴を引き起こす恐れもあるとして、専門家は観客に耳栓の持参を勧めている。一部の選手からは精神の集中を妨げるなどとして禁止を求める声もあがっていたが、国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長は「ブブゼラは南アのサッカー文化の一部」と擁護発言。南ア大会組織委員会は国歌斉唱時の使用を控えるなど、マナー順守を呼びかけている。
   (日経新聞 2010/06/12より抜粋引用)

岡田ジャパンが頑張っている今大会で会場から蚊のような、ハチか蝿の大群のようなおよそ440ヘルツくらいの異音が試合中ずーーっと持続的に鳴らされています。中東の試合ではイスラム教のお経のような音が聞こえたり、それぞれ国によって独特の応援のしきたりがあるようです。そう言えば日本サッカーでもでもその昔、チャルメラのような甲高い音の応援が流行ったことがありました。野球でも甲子園のメガホンを叩く音は前の座席の者には耐え難いこともあります。これも「文化の一部」と言われればそうかも知れませんが、確かに耳栓が必要な感じですね。それでもゲームに勝てば苦痛でないでしょうが、負けた時はかなりこたえそうです。

 7月19日発行の朝日新聞「GLOBE」によればブブゼラの基本周波数は約200ヘルツで、人間の声の基本周波数は成人男性で90−130ヘルツ、成人女性では250−330ヘルツで中間に当たる、とのことで、テレビを通じて小生の耳に響いたのは倍音だった可能性があります。


 花粉少なめ過ごしやすい春ー(愛媛)県内飛散数 昨年の26%−夏の少ない日照時間影響

ウェザーニュース(東京)が(4月)9日まとめた都道府県別(沖縄県除く)花粉飛散数では、愛媛は全国40番目で、2009年の26%しかない。同社は、昨夏の日照時間が少なかった点に加え、花粉の飛散量が隔年で推移することから過去5年で飛散量が一番多かった09年の反動とみている。
今シーズン初めから4月7日までの松山大学薬学部 難波弘行教授(臨床薬学)の観測では1平方cm当たりのスギ花粉数は1172個で09年の8718個の約8分の1に激減。
日本花粉学会員の桧垣義光さん(今治市)の話では、2月1日から4月7日までのスギ花粉の飛散数は今治で809個(1平方cm当たり)と04年の729個に次ぐ少なさで09年の27%。「飛散のピークの3月上旬に雨が多いことも重なり、予想より大幅に少なかった」とみる。
   (愛媛新聞 2010/04/10より抜粋引用)

花粉の作付けが裏年に当たり、花粉の実をつける昨夏の日照時間が少なく、今年の花粉飛散数は少なめの予想でしたが、直接の原因は観測史上稀な雨の多さだったためと思われます。


 花粉飛散量予測

1)スギの花粉 来春少なめ −ウェザーニュース社ー (2009/12/09 朝日新聞記事より)
2)東日本と北日本はやや少なく、西日本ではほぼ例年並み −田辺三菱製薬資料ー (2009年10月作成)
3)花粉飛散量やや少なめ −環境省ー 2010/01/23 朝日新聞記事より)

 2009年春の花粉が大飛散であったので今年はウラ年であり、スギの雄花の生育を左右する夏の日照時間が少なかったことなどから昨年ほどではないようですが、特に西日本では過去10年の平均飛散量と同等かやや上回るとの予測が大方を支配しています。大量飛散の年は新たに発症するヒトが増加しますが、毎年症状の出るヒトはやはり例年通り、十分対策を講じる必要があります。


  めまい改善にガム咀嚼の有効性を示唆

東京都で開かれた第110回日本耳鼻咽喉科学会(会長=東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科教室・森山 寛教授)において、平塚市民病院(神奈川県)耳鼻咽喉科の井出里香主任医長と日野市立病院(東京都)耳鼻咽喉科の五島史行部長らは、片側迷路機能低下を含むめまい患者を対象に、ガム咀嚼運動による身体動揺の改善効果を検討した結果。一部の症例で改善効果が認められたと報告した。

井出主任医長らは、めまいを主訴に受診した患者37例(男性15例、女性22例、平均年齢60.4±18.2歳)にガムを咀嚼させ(被検者の通常のガム咀嚼速度で1分間咀嚼)、咀嚼運動前および咀嚼中に、開眼および閉眼で重心動揺計を用いて身体動揺の総軌跡長をパラメータとして改善効果を評価した。対象患者の疾患は、片側迷路機能低下20例、精神疾患関連のめまい4例、メニエール病4例、老人性平衡障害3例、恐怖性姿勢めまい症3例、良性発作性頭位めまい症とめまいを伴う突発性難聴、ハント症候群がそれぞれ1例であった。

その結果、ガム咀嚼の前後で総軌跡長に大きな変化は見られなかったが、37例中19例(51.4%)で総軌跡長の短縮傾向が認められ、改善群における改善量は16.8cm、改善率は15.97%であった。片側迷路機能低下(前庭神経炎、半規管機能低下)では20例中7例で15%以上の改善が認められた。

同主任医長は「迷路機能低下症例では下肢筋の緊張が低下しており、ガム咀嚼によるかみ締めによってヒラメ筋の伸長反射の興奮性が高まり、身体動揺が改善する」と考察し、「この検討結果から、めまいに対してもガム咀嚼が有効な可能性が示唆された」と述べた。
   (Medical Tribune 2009/07/09記事より引用)

  平衡感覚は内耳前庭機能や小脳などに注目しがちですが、下肢筋の緊張低下に着眼し、それを咀嚼効果で改善していくとした研究は少ないです。めまいに悩む患者さんは多く、なんらかの理由で薬を服用しにくいケースには試してみるとよいかも知れません。


  めまいと骨粗鬆症に関連性ーめまいの発症率は3倍

ソウル大学(ソウル)のJi Soo Kim博士らは、骨粗鬆症患者はめまいを起こしやすく、そのめまいにはカルシウム(Ca)代謝が関与している可能性が示唆されたと Neurology (2009: 72: 1069-1076) に発表した。

今回の研究は,頭部外傷や耳の手術といった既知の原因がない良性頭位めまい症の患者209例とめまいの既往歴のない対照202例を対象とした。良性頭位めまい症は、めまいの原因として多い内耳疾患である。同疾患は遊離した炭酸カルシウム結晶が内耳の半規管内部で動くために生じると考えられている。

その結果、骨密度が低下している骨粗鬆症患者では、骨密度が正常である者と比べてめまいを呈する確率が3倍高く、骨粗鬆症の前段階である骨減少症患者では2倍高いことがわかった。

女性では、骨粗鬆症、骨減少症を有する患者が対照群ではそれぞれ9%、33%であったのに対し、めまい群では25%、47%であった。男性では、対照群で6%、27%であったのに対し、めまい群では12%、40%であった。

Kim博士らは「これらの知見から、めまいを有する患者ではCa代謝に問題があることが示唆された。女性はエストロゲン低下により骨量が減少する50歳代になって初めてめまいを経験することが多い。エストロゲンはCa代謝と骨代謝に影響を与える主要なホルモンの一つである」と説明している。

しかし、同博士は骨粗鬆症とめまいの関連性は男性にも認められることを指摘し、「めまいにおけるエストロゲンの関与はまだ解明されていないが、他の要因も関与していることは間違いない」と述べている。
   (Medical Tribune 2009/06/11 記事より抜粋引用)

  めまいには色々な原因がありますが、耳石(内耳に存在)の変調からくると考えられる良性(発作性)頭位性めまい症はCa代謝、それを司るホルモンの一つであるエストロゲンの関与が大いに考えられます。


 中高年、新型に免疫?ー米CDC分析ー57年より前の生まれ

 新型の豚インフルエンザの感染者に若い人が多いのは、1957年より前に生まれた人の一部には免疫があるためらしい。そんな見方を、米疾病対策センター(CDC)インフルエンザ対策部門のジャーニガン副部長が(5月)20日、会見で明らかにした。

同副部長によると、スペイン風邪の流行が始まった1918年以降、世界で流行していたのはH1N1型。アジア風邪の流行が始まった57年以降、H2N2型が流行するようになった。

今回の新型ウイルスは、57年まで流行していたウイルスとはかなり異なるが、H1N1型。中高年の人の血清を調べたら、今回の新型に対しても何らかの防御反応性があることが分かったという。(ワシントン=勝田敏彦)
   (朝日新聞 2009/05/22より抜粋引用)

 季節性のインフルエンザの場合、家族内で感染が多発することが多いのですが、今のところ、新型は高校生中心に感染者が拡大していますが、その家族に発症者が出たという報道はありません。予防接種では株のタイプが違えば同じH1N1型でも効果が薄い年度がありますが、一度は同じタイプのものが流行し、親の世代はすでに免疫を獲得している可能性があります。(なお68年流行の香港風邪はH3N2型で、77年のロシア風邪はH1N1型。)


 (スギ)花粉、(愛媛)県内の飛散量予測  昨年に比べ8割増

環境省は、県内の花粉飛散量が今春、昨年に比べ8割も増えると予測している。−略ー 春先には大陸から黄砂も飛来する。ー略ー(伊藤喜之)

環境省によると、1月末から5月末までの県内(松山市)のスギ、ヒノキ花粉の飛散量は、昨年に比べ79.6%増の大幅アップとなる見通し。平年比でも2割程度、増える見込みだ。

飛散量の予測は前年7−8月の気温や日照量、降水量をもとに推計する。気温が高く、日照量が多く、降水量が少ないほど飛散量が増えるという。同省は作夏、松山市内が水不足となるなど、県内の8月の日照量が多かったことで、平年より増えたと見ている。県内では早くても4月末、遅ければ5月初旬まで、花粉の飛散は続く見通しだ。

黄砂もj悪さ

花粉症の症状悪化に、春先、大陸から舞い込む中国の黄砂が影響しているという近年の研究もある。微小なカビなどの異物が付着した黄砂が花粉症が発症した鼻に入り込むと、鼻炎のさらなる悪化を誘うのだという。

黄砂が引き起こすアレルギー疾患を研究している大分県立看護科学大学の市瀬孝道教授は、「花粉症に黄砂が加わると通常のくしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状のほか、頭痛や血混じりのたんが出るなどの症例が報告されている。また、黄砂がきっかけで花粉症を発症する人もいる」と警鐘を鳴らす。
   (朝日新聞 2009/03/15より引用)

 今シーズン、まだ途中ですが、今のところ患者さんは去年より症状のきつい人が非常に多いように思います。黄砂の触媒効果、増幅効果も加花粉症を悪化させている要因の一つかも知れません。


 愛媛)県内ハクション注意報  花粉飛散「今年(08年 平成20年)の3倍」 研究団体来春予測

2009年のスギ・ヒノキの花粉は「非常に多い」−。県内でスギ・ヒノキの花粉飛散数を調査している日本花粉学会員で桧垣義光さん(西条農業高校講師)の研究グループはこのほど、09年の花粉飛散量を予測した。花粉症の人にはつらい年になりそうだ。

同グループは宇和島、松山、今治、新居浜の四市で花粉の飛散状況を観測。飛散量は花粉の形成に影響する前年七月の気温が関係しているとされ、桧垣さんは「今年七月は最高気温のj平均値が高く、降雨量も少なかったことから、09年は多くの花粉が飛散するだろう」と指摘。

過去のデータなどを基に、県内四地点平均の予測は過去十年間(1999−2008年)平均の約二倍。比較的花粉量が少なかった08年に比べると「三倍近い」と推測する。

地域別の予測数と08年の花粉数(実数)と比較すると宇和島約4倍、松山約2.6倍、今治約2.7倍、新居浜3.4倍となっている。

例年の飛散は、スギが二月上旬ごろから、ヒノキが三月中旬ごろからで、五月上旬ごろまで続く。
   (愛媛新聞 2008/12/20より引用)

 松山地区の渇水が話題になった年はスギが多く実をつけ、翌年は花粉飛散が多いようです。


 カモガヤ新規感作にスギ花粉飛散量が関連

スギ花粉症発症の低年齢化が指摘されているが、スギ以外の抗原に関する疫学調査は少ない。そのため、他の抗原でも同様な傾向があるかどうかは不明である。大阪医科大学耳鼻咽喉科教室の伊藤加奈子氏は、京都府立医科大学の小笹晃太郎氏らと共同研究である6−15歳の学童・生徒を対象に実施したアレルギー疾患の経年的疫学調査から、「イネ科植物であるカモガヤの感作率は小学校高学年生から中学生にかけて増加し、またカモガヤ新規感作とスギ花粉飛散量が関連していることが示唆された」と報告した。

伊藤氏と同科の竹中 洋教授らは京都府W町において2002−07年の6年間に学校健診を受けた6−15歳の小・中学生625人(延べ1811人)を対象に、4月中旬に耳鼻咽喉科健診、5月中旬に自記式問診表調査および血清アレルギー検査(同意が得られた者のみ)を実施した。

カモガヤ感作率は小学校低学年生でも20%程度となっており、小学校高学年生から中学生にかけて増加しており、カモガヤも学童期に注意すべき花粉抗原の一つであると考えられた。男女別では、男児で小学校高学年生から中学生にかけて感作率が増加する傾向が認められた。

ダニ感作のカモガヤ感作に及ぼす影響を検討したところ、ダニ感作群のほうが非感作群に比べカモガヤ感作率が高かった。同様に、スギ感作群のほうが非感作群に比べてカモガヤ感作率が高かった。これらのことから、カモガヤ感作とアトピー素因の関連が示唆された。

カモガヤ新規感作率には経年的変動が見られ、2005年と2007年に高値を示した。スギ感作の有無別にカモガヤ新規感作率の経年的変化を検討したところ、2003年および2005年ではスギ感作群のほうが非感作群に比べてカモガヤ感作率は有意に高値を示した。なおスギ花粉飛散量は、2003年、2005年、2007年に高値を示していた。ダニ感作の有無別にカモガヤ新規感作率を検討したところ、有無による有意差は認められなかった。

以上から、伊藤氏は「スギ感作陽性例ではカモガヤも陽性化しやすく、またスギ花粉飛散量とカモガヤ新規感作は相関することが示唆されたが、同年のスギ花粉飛散量による影響を受けず、前年までにスギ花粉に感作されていることが必要条件と考えられる」と述べた。
   (Medical Tribune 2008/06/19 第26回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 記事より抜粋引用)

 この研究によって、スギ花粉症だけでなくイネ科雑草による花粉症も低年齢化が実証された結果が得られたと思います。


  花粉症対策に飲むワクチンー山口大「8割以上改善」

花粉症を引き起こすたんぱく質をスギ花粉から取り出し、弱毒化して錠剤として飲む方法で、花粉症患者八割以上の症状が改善したと、山口大の加藤昭夫名誉教授の研究室が(4月)19日までに学会で発表した。

加藤名誉教授によると、2006年に花粉症の原因となるたんぱく質を1日に0.7ミリグラム摂取するように調整した錠剤を患者40人に30日間投与したところ、34人の症状が改善。うち5人は完治したという。

注射治療は数年の継続が必要だが、この「経口ワクチン」は錠剤を1ヶ月飲むだけ。
   (日経新聞 2008/04/20より引用)

 八割以上の改善率と40人中5人の完治例が見られたことは驚異的な結果です。安全性などに問題がなければ花粉症患者さんにはまさに福音です。


  Aソ連型(インフルエンザ)のタミフル耐性化 欧州を中心に急速に広がる

Aソ連型(H1N1)インフルエンザウイルスのオセルタミビル(商品名タミフル)に対する耐性化が、欧州を中心に広がりを見せている。世界保健機構(WHO)によると、昨年(2007年)10月から今年2月21日までに、検査結果が確定したH1N1の2348分離株のうち、313株でオセルタミビルへの耐性が認められた。耐性率は13%だった。

国別に見ると、ノルウエーの耐性率が66%と最も高く、これにフランス(同39%)、ポルトガル(33%)、ベルギー(33%)などが続く。日本でも、100分離株中、5株(5%)にオセルタミビルへの耐性が確認された。

WHOによると、2006/07シーズンの調査では、H1N1の流行株におけるオセルタミビル耐性化は日本と欧州では見付からず、米国でも1%未満にとどまっていた。ただし日本では2005/06シーズンにH1N1の178分離株のうち2.2%が耐性株だったとの報告もある。今回欧州で確認された耐性ウイルスはいずれもオセルタミビルを使用していない患者から分離されており、耐性ウイルスの起源や伝播経路はまだ分かっていない。
   (Nikkei Medical 2008 3月号 68−69頁より引用)

 日本は世界の中でもオセルタミビルを大量に使用していると言われていますが、そうでないと考えられている欧州で耐性化が進んでいるというのは奇異です。またA香港型(H3N2)やB型はどうか、研究が待たれます。


  インフルエンザ 鼻にシュッ 一吹き 感染防ぐ 「新型インフル」対応ワクチン

注射器がいらず、鼻の粘膜に吹き付けるだけでインフルエンザウイルスの感染を防ぐワクチンの開発に、厚生労働省の研究班(主任研究者・長谷川秀樹国立感染症研究所室長)が成功した。ウイルスの株(系統)が違っても効果を発揮するため、どの株から変異するか予測できない新型インフルエンザへの対応策をして期待される。

従来の注射ワクチンは、血液中にウイルスに対する「抗体」をつくる仕組みで、感染した後の発症や重症化を予防する。ただし、ウイルス株が一致しなければ十分な効果はない。これに対し、研究班はウイルスが侵入する粘膜の外側に抗体を作り、感染そのものを防御する方法に取り組んだ。

この場合、ワクチン単独では免疫反応を引き起こせず、免疫細胞を刺激して抗体を作らせる「補助剤」が必要。かつて大腸菌毒素などが補助剤に用いられたが、臨床試験で顔面マヒが起き使われなくなった。

長谷川室長らは、安全な補助剤を探り、ウイルス本体に似たRNA(リボ核酸)に着目。既に米国で人に用いられているRNA薬剤を補助剤とし、2004年にベトナムで人に感染したH5N1型鳥インフルエンザウイルスでワクチンを作成した。マウスで検証したところ、同じベトナム株では100%感染を防ぎ、遺伝子が多少違う05年インドネシア株や1997年香港株でも感染による死亡を抑制した。

さらに、より免疫機能が人に近いサルで検証。ワクチンを使ったサルは体内でウイルスが増えず元気だったが、使わなかったサルは肺炎を起こした。研究班は、2010年にも臨床試験を始めたいとしている。
    (日経新聞2008/03/16より引用)

従来のワクチンは血中の免疫細胞だけを刺激してウイルスに対抗する抗体を作る。このためウイルスが体内に感染しないと効果は出ない。

新ワクチンは粘膜を刺激し、粘膜の外に抗体を分泌する免疫反応を起こさせる。鼻腔に入ったウイルスが粘膜にくっつく前に、この抗体が撃破する。従来の抗体と働き方が違うため、遺伝子の細かな違いにかかわらず防御効果を発揮するのが特徴だ。新型ウイルス登場前に製造でき、発生直後からすばやく対応できる。
   (朝日新聞2008/03/12より引用)

 鼻にスプレーする形で注射と違い、恐怖感が少なく、ウイルスが増殖する上気道、とりわけ鼻腔部分でのブロックなので理想的な形のワクチンとなりそうです。


  「万能ワクチン」実現へ道筋 −多様なインフルエンザに対応-動物実験で効果

国立感染症研究所と日油などは、様々なタイプのインフルエンザウイルスの増殖を予防できる可能性を持つ新物質を開発した。従来のインフルエンザワクチンとは異なり、ウイルスが感染した細胞を攻撃するのが特徴。動物実験で効果を確かめた。発生が懸念される新型インフルエンザをはじめ、どんなインフルエンザにも効く「万能ワクチン」の実現につながる成果で、さらに改良を進める。

開発したのは感染研、日油、北海道大学、埼玉医科大学の研究者らで構成するチーム。体にウイルスが侵入すると、免疫という仕組めが働く。ワクチンはこの仕組みの働きを高める。免疫には二つあり、従来のワクチンはウイルスを直接攻撃する免疫の働きを強める。だが、ウイルスは表面の構造が変わりやすく、いったん変わると既存のワクチンは効かなくなる

一方、新物質はもう一つの免疫に作用する。この免疫はウイルスが感染した細胞を攻撃するもので、ウイルスの増殖を抑える。感染した細胞はウイルスほど構造が変わらず攻撃しやすい。

新物質は、ウイルスが感染した細胞の表面にできる物質などを微粒子に付けた構造。実験では、鳥の強毒性ウイルス(H5N1型)が感染した細胞の表面にできる物質などを部粒子に付けてマウスに与えた。別のウイルス(H3N2型)を感染させた結果、免疫が働き肺でのウイルス増殖を約十分の一にj抑えられた。H5N1型は人で大流行が懸念される新型インフルエンザに変化するとの見方がある。

新物質はアレルギーのもととなる抗体を作らないので副作用も少なくできる可能性がある。
   (日経新聞 2008/03/10より引用)

 従来型のワクチンは一定の効果は挙げながらも、その年の流行型株の予測がはずれた場合、効果が今一つのことがありましたが、このタイプだと流行に左右されずに効果が期待できそうです。


  スギ花粉 飛散防ぐ薬剤  日油と東農大 4,5年後に実用化

中堅化学メーカーの日油と東京農業大学の小塩海平准教授は共同で、花粉症の原因となるスギ花粉の飛散を防ぐ薬剤を開発した。夏ごろに薬剤をスギに散布すれば雄花だけが枯れて花粉を作らなくなる主成分は天然物由来で環境や人体への影響はないという。両者は「4−5年後に実用化し、スギ花粉症の抜本対策につなげたい」としている。

2005年から材木育種場などで実施してきた実験によると、スギが雄花を形成する夏から秋にかけて開発した薬剤を空中散布すると、散布部分は約1ヶ月後に雄花だけがすべて枯れた。年に一回の散布で効果が得られるという。

天然物由来の物質が主成分で、試験では動植物の健康や生育への影響は確認されていないという。スギの成長を妨げず、伐採したあとの木材の品質にも悪影響は考えにくいとしている。

日油と東農大は早ければ2012年ごろの実用化を目指す。薬効試験や薬害試験、低コスト化などの研究を続けたうえで、農林水産省に薬剤を登録申請する方針。スギ林を管理した花粉症対策を進めている国や地方自治体などの需要を見込む。

スギ林は全国に約450万ヘクタールあり、国民の五人に一人が花粉症を患っているとされる。第一生命経済研究所によると、スギ花粉症でレジャーや外食需要が減退し、今年の場合、3−4月だけで実質国内総生産(GDP)を約1,800億円押し下げるという。
   (日経新聞 2008/02/23より引用)

  今ちょうどスギ花粉症シーズン真っ只中ですが、花粉症患者さんにはまさに朗報です。実現化すればあと数年で状況が大きく変わる可能性がでてきました。


  環境省 08年花粉飛散量予測 東日本は07年の1.5−3倍

環境省が(2007年)12月27日に発表した2008年春(1月末ー5月)の花粉総飛散量予測(速報)によると、08年春のスギ・ヒノキ科花粉総飛散量は、東海から関東、東北で07年春より多く、北陸から九州は07年春と同じかやや少ない見込み、とくに、東海から関東、東北では07年比1.5倍ー3倍に増加する地域が多いという。

1月後半に寒さが緩み、気温が上がるため、スギ花粉の飛散開始は、例年並みかやや早い見通し。同省は、花粉症患者や医療機関は早目の予防、対策が必要を注意を呼びかけている。
   (アスティスニュース No.1227 2008/01/21 より引用)

 「今年は花粉飛散が多い」という予測が多いようです。予防治療、(発症)初期治療が肝要です。



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