緒言 |
今日鬱蒼たる松樹洋々たる池水に倒影するの美観に触れ、 |
且つ灌漑至便なる久万の台新池を見て誰かその恩恵の偉大なるを感謝せん者が有ろうか、 |
日やけ村の古三津を日やけ知らずの古三津と化し衰頽に傾く農村から救済した偉人は実に岡田十五郎氏である。 |
大正十年は氏が久万の台新池築造後百年に相当するというので、村長岡田徳蔵氏村民と謀り天長節の佳日を卜して |
菩提寺儀光寺に建設してあった頌徳記念碑を久万の台新池堤に移転し、 |
且つ百年祭の祭典を挙行した。来賓人温泉郡長倉根是翼殿及び遺族福田氏等の臨席があって盛大であった。 |
其の節郡長斯かる偉人の記録に見るべきもの、なきを遺憾とせられ私に調査編集の事を託された。 |
不尚幸に本村に職を奉ずるの故を以って偉大なる功労者の事跡調査の任に当たるを得たる光栄を思い本村の長老立石勇蔵 |
(天保五年七月三十日生当時八十八歳で岡田十五郎氏とは面談をしたることのある人、 |
明治三十一年頌徳記念碑建設の際の世話人の一人)、立川徳五郎(嘉永元年九月八日生、当時七十四歳)、 |
乗松和太郎(嘉永四年五月五日生当時七十一歳以前戸長をしていた人)の三氏遺族福田氏、 |
菩提寺儀光寺住職増田晴城氏等の資料提供の賜により茲に略歴を編纂し偉人を追慕し其の功績を表彰し永劫に伝えたいと思う。 |
茲に資料を提供してくださった諸士の好意を深く感謝します。 |
大正十年十二月二十八日(1921) |
古三津尋常高等小学校校長 土屋繁嘉 |