さまようこころ、空の上 < at 飛行船.2 /トリックタワー → 軍艦島 >

オレの肩のあたりにゆれる金色の髪。
気づけば、それが見慣れた定位置のようになっていた。
そう、向こうはどう思っているかしらないが。


トリックタワーで見た変な夢にそそのかされたわけではないけれど、オレの中ではもやもやした疑念がくすぶりはじめていた。

つまり・・・こいつが女なんじゃないかってこと。

別に、女だろーが男だろーが関係ねーだろっていう建前と、なんだか表現しがたい本音とが、オレの中で葛藤している。
きれーで線の細い男も、いかつくて不細工な女も、世の中にはごまんといるのだから、見かけだけでそんな疑念を抱く理由にはならない。
それともオレは、ヨコシマな感情だけで女であったらいいなんて思っているのか。

  ちくしょー、こんなコトで悩んでる余裕なんざないはずなのに・・・。



「あれ、クラピカは?」

トリックタワーの三次試験を辛くも通過し、次の試験会場へ向かう飛行船の中。
やたらと気持ちよく晴れた空をぼんやり眺めつつ、そんなことを考えていたオレは、ど明るいゴンの声に現実へ引き戻された。

「しるか。・・・だいたい、なんでオレに聞くんだ」
「だって、レオリオとクラピカってたいていいっしょにいるし、すごく仲よさそーだし」

・・・なんだ、そりゃ。

「なあ、ゴン。おまえの天性のつーか、野生の判断力に聞きたいんだが・・・」

   「クラピカ、もしかして女なんてことねーよな?」

「そーだよ」

・・・・・・

「あれー、レオリオ、わかんなかったの?」
「そんなの、ふつー、たいがい、わかるぜ。なー」

キルア、てめー。どうせ、オレはおまえらの「ふつー」とはレベルの違うごく普通の一般人だよ。

「まー、他の連中も似たよーなもんだとは思うけどな」

聞くんじゃなかった、こいつらに。
・・・けど、こいつらがそーだっていうってコトは、多分、おそらく間違いはない。

じゃあ、女だったらどーだって言われたら、正直よくわかんねーけど。
へんに態度変えたら、なんかかえってやーらしいし。
あんな立居振舞いをしてるってことは、知られたくないのかもしれないし。(もちろん、それが素だってこともありうるけど)
ことさら女の子扱いする気はねーけど、まあ、さいてーヘッドロックかけるのはやめた方がいいか。




・・・・・ちょ、ちょっとまて!!
オレ、あいつに・・・キスしちまってるーーーー



「どうしたのだ、さっきからひとりで百面相をしているが」

思わず口元に手をやってうろたえるオレの耳に、とどめのような声。

「悩み多き青少年なんだってさ」
「悩み・・・?少年??!」
「じゃーねー、おふたりさん、ごゆっくり」

勘のよすぎるオコサマたちはそんな捨てゼリフを残して、あとにはオレとクラピカとふたり残されて。

「なんだ、あれは」
「・・・あ、あのな、クラピカ」
「?」
「い、いや、なんでもねー」
「へんなやつだな」


  いかん、途端に意識しちまってる・・・。

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MEMO/050818