黄昏に堕ちていく
< at 軍艦島.1 >
最初は、こんな荒っぽい船にこんな華奢そうな女のコがって思ったよ。
けど、すぐに錯覚だってね。
最悪に小生意気なガキが。
男のくせして、ちっとばかし顔立ちが綺麗なのも、かえって嫌味っつーか、いらつくっつーか。
だから、こいつのうわべのことは意識の外に追いやってた気がする。
結局すぐに和解して、いつのまにか隣にいてあたりまえみたいになっちまってるし、ことあるごとに口論にはなるけれど多分そんなに深刻にはならない。
この状況がどういう関係なんだか考える余裕もなくここまで来て・・・いまになって、あえて遠ざけていたものが見えてしまった。
とはいえ。
女だとしてもだ、断じてオレの好みのタイプではない。ないはずだ!!
つくりは確かに綺麗だ。しかし!
そう思いながらも、やつの行動に表情に意識が走るのをとめられない。
・・・いくら、女日照りが続いてるからってあんまり短絡的じゃねえ、オレ?
ナンパしに来てんじゃねーんだぞ。
考えすぎだかなんだか、ふだん飛行船酔いなんてなまっちょろいものになったことねーのに、最低の気分で着いたのは・・・。
―――ホテル軍艦島
クラピカの同室が、はげの忍者だって小耳にはさんだ。
冗談じゃない。
いままでの雑魚寝状態ならまだしも、「密室」だぞ、おい・・・って、なんで、オレがうろたえてんだよ。
あいつなら、きっとうろたえたりしない。
だから、よけいにあのうろたえた表情が脳裏に焼きついている。
なんで、あんなことしちまったんだか・・・。
女の子なら、かなり失礼なことをした。
あやまったほうがいいのか、かえって薮蛇になってしまいそうな、けど、「なかったこと」にしてしまうのは・・・なぜだか惜しい。
ドアを開けると、いつもムダに厚着しているあいつが驚くほどの軽い格好で振り返った。
トリックタワーでもいちど見た姿ではあったが、あのときは正直そういうとこに気がまわってなかったというかなんというか・・・。しかし。
やっぱ、胸ないぞ・・・
オレの視線に気づいたのか否か、「親しき仲にも礼儀ありだ」と冷たく言い放たれた。
それでも、とりあえず「親しき仲」だとは認めているわけか。
それはどれほどの距離なのか。
暗闇に沈みこんでいくあいつの手をつかんで引きずりあげられる距離なのか。
オレは、この距離をどうしたいのか・・・。
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MEMO/050909