ここでは、2000年11月24日以降の記録を掲載しています。
                                             
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 英検1級とTOEIC900対策
(ウィン・ランゲージサービス 松山市空港通り教室)
 「NHKビジネス英会話」をテキストに、英検1級合格とTOEIC900をめざす講座です。(2002年6月開講)
                    LLI体験記と自己研修報告
第8回自己研修 (11/9/01) 英検1級対策って?
one-Sentence Summary ( 7/10/01) 語感を養う
1100 words ( 6/27/01) 語彙強化 (1100 words you need to know)
the law of inertia ( 5/30/01) 教育制度は、「慣性」だらけ!?
ゆとりの教育 ( 5/29/01) 「ゆとりの教育」って、英語でどう言うの?
通訳フォーラムU( 5/29/01) 第1分科会について
通訳フォーラムT( 5/29/01) 教育問題に議論白熱
第7回自己研修( 5/16/01 ) NHKラジオやさしくない?ビジネス英語活用法
第6回自己研修( 4/28/01 ) 語彙力をつける方法ー英検準1級以上ー
通訳フォーラムに向けて(1) 分科会ーこれからの英語教育がめざすものー
第5回自己研修( 3/18/01 ) 再びサイトラ-ニュースを活用して-
第4回自己研修( 2/24/01 ) なんとか、TOEIC900点突破
第14回レッスン( 2/24/01 ) 2度目の逐次通訳・・・少し進歩したかな
第11回レッスン( 1/11/01 ) 初めての逐次通訳
第3回自己研修(1/11/2001 ) ビデオカメラでワルイクセをチェック
第10回レッスン( 12/21/2000 ) 日本の教育改革私案 
ゴア氏敗北宣言( 12/16/2000 ) BSの同時通訳を分析し、そこから通訳のテクを探りました。
リアルタイム同通( 12/15/2000) 投票から36日にも及ぶ大統領選がやっと決着しました
第9回レッスン  ( 12/7/2000 ) 日本・ドイツ・アメリカの能力差に対する教育観について
第8回レッスン ( 11/30/2000 ) ニュースのHeadlineとlead storyの部分を音読練習しました。
Swiss Cheese( 11/24/2000 ) 「スイスチーズ」ってどんなチーズなのでしょう?

                  言葉に対する感性を養う訓練        Back to MENU

 今日のレッスンは非常に興味深いものでした。英文を読み、パラグラフごとにその内容を日本語でまとめるのです。それも、一文で。いわゆるone-sentence summaryとは異なり、単に重要と思われる一文を抜き出すのではなく、内容から客観的に感じ取ったことを一文で表すのです。例をあげた方が分かりやすいと思います。

 In the past month, dotconomy has seen a very different face of the Internet. While in Montreal, Canada, visiting my family, I had the immense pleasure of introducing my mother to the Internet by setting up her own Webbased email address.
は、「我が家も本格的なインターネットファミリー」となります。

 なるほど。私など恥ずかしながら、「先日、母がメールを始めるのを手助けした。」とそのまんま訳したような文にしてしまいました。全16パラグラフについて、同様の練習をしました。書かれている内容を頭の中でいったん消化し、それを自分の言葉で再生し、聞き手に伝えるといった作業で、言葉に対する感性が磨かれると思います。この訓練などは、英語は言うに及ばず日本語でも達人の域に達しておられる井上先生の下でしか学べないものだと思います。



     1100 Words You Need to Know    Back to MENU

 今回の宿題は、総選挙後の労働党大会におけるトニー・ブレア英首相のスピーチを教材に、前半はすべての名詞を同義語に変え、後半は動詞を同義語に変えるというものでした。
 レッスンでは単語チェックの後、一人がテキストを読みもう一人がそれを聞きながらシャドウイングをし、名詞のところはすべて別の単語に置き換えました。ただ単に、特定の単語を同義語に置き換えるのではなく、すべての名詞や動詞をシャドウイングしながら置き換えるということで、かなり難しい作業でした。むろん、フラストレーションも溜まりますが、やはりこういった音声面に重点を置いたボキャビル方法は、通訳の訓練法ならではであり非常に効率のよい方法だと思います。

 実は、私もアメリカのテキストを使い、似たような方法でボキャビルをしています。このテキストは、60〜70語からなる文章を覚えることによって、毎日5つの新出単語がマスターできるように工夫されています。この新出単語というのが、また難しいのですが・・・。(因みに、第2週2日目の単語5つについて、手元にあった3冊の入試用単語集で調べましたが、すべて収録されていませんでした。)

 内容を紹介します。まず、新出単語です。
New Words:  furtive   felon   plethora   hapless   irate

 次に、これら5つの新出単語を含む英文です。
 Casting a furtive glance over his shoulder, the felon slipped out the main prison gate to be swallowed up in the British fog. A plethora of escape from supposedly secure prisons embarrassed the hapeless wardens. To compound their problems, the officials were badgered by irate citizens who accused the guards of accepting bribes from convicts whose motto was: "Stone walls do not a prison make, nor iron bars a cage."

 そして、これらの新出単語を使った例文が載っています。これも穴埋め形式の問題 になっています。
Sample Sentences: Use the new words in the following sentences.
1. The (    ) contest winner was unable to locate the lucky ticket.
2. My uncle was (    ) when the drunken driver swerved in front of us.
3. In a (    ) manner she removed her shoes and tiptoed up to her room.
4. When the teacher asked why the homework had not been done, he was greeted by a (    ) of incredible alibis.
5. Since the boss learned that Bob associated with a known(    ), he fired him.

 さらに以下のように、新出単語の定義が問題形式で紹介されています。
  furtive  (   )  a. angry, incensed
  felon   (   )  b. a person guilty of a major crime
  plethora (   )  c. unfortune
  hapeless (   )  d. excess
  irate    (   )  e. secret, stealthy
  答:上から順に、< e, b, d, c, a >
 
最後に、today's idiomです。
Pyrrhic victory=a too costly victory (King Pyrrhus defeated the Romans but his losses were extremely heavy)
In heavy fighting the troops managed to recapture the hill, but it could only be considered a Pyrrhic victory.

私の活用法を紹介します。
1 最初の英文を読み、文脈で新出単語の意味を類推する。
2 定義問題を解き、単語の意味を確認する。
   (ここで、新出単語の意味は大体分かりますが、自信のない単語については辞書 で確認。)
3 サンプルセンテンスの問題を解き、単語の使い方を学ぶ。
4 再び、最初の英文に戻り、2度声を出してサイトラで訳します。
5 英語で音読します。
6 英文中の新出単語を同義語あるいは定義に置き換えながら、英文を音読します。 これができれば、終わり。   
 このエクササイズを4日間解くと、5日目に復習があります。復習は、その週に学 んだ20単語の定義を選択する問題と4つのイディオムの定義問題です。最後に、約200語からなる英文中の空所5箇所に、適切な単語を入れる問題を解いて第1週が 終了です。
 
個人的にこのテキストがとても気に入り、今ボキャビルにはまっています。このテキストの最大の魅力は、取り上げている単語が洗練されており、その単語の使い方に習熟できるよう工夫されている点です。1レッスン20分ほどでカバーできる点も見逃せません。
 テキストの序文に書かれている言葉を借りると、
 "As you spend the time to master the 1100 words and idioms - even 15 to 20 minutes daily - you will discover the pleasure of recognition and understanding when you come across these challenging words in your listening, reading, and conversing."
ということになります。
 1年間で約900の単語と200のイディオムが覚えられるようになっています。今回のLLI でのレッスンを応用し、自分でこのテキストの英文を録音し、その声をシャドウイングしながら新出単語を同義語に置き換えるという練習も取り入れたいと考えています。
 ところで、このテキストが対象としている人はこんな人だそうです。
  a parent looking to improve their child's vacabulary・・・
  an adult who often feels left out of conversations・・・
 Those who want to score high on the SAT, ACT, and other exams・・・
 Those who want to improve their grades in college・・・
 Those who want to get the most out of what they read and what they hear on television, in the movies・・・ 


            教育制度は慣性だらけ?           Back to MENU

フォーラムも無事終わり、そろそろ英検の準備に取りかからねばと大学入試問題を解いていました。 (「実用英検」と銘打っているのに、その対策に大学入試問題を解かねばならないなんて、 どう考えても「実用」ではないですよね?英検は大学入試問題の延長線上にあるとの批判がしばしば聞かれますが、 仕方ないでしょう。)その長文問題に「慣性の法則」について書かれている文章があったのですが、「教育制度は慣性だらけだ」と指摘し、 「その慣性を打ち破るにはかなりの力と質量を持ったものによって力が行使されなければならない」 と結論付けています。フォーラムで教育問題について議論したばかりだったこともありとても興味深く読めました。物理の時間に習った「慣性の法則」が組織についても当てはまるとは驚きですが、この文章を読んでなるほどと思わず唸りました。それでは、 どうぞ。
 The inertia of a mass is its reluctance to move. In Newton's terms inertia can also refer to the tendency of a body to continue to move in a straight line unless acted upon by some outside force.
 Inertia is the willingness of things to stay exactly as they are unless moved by sufficient force. We know that this is so in physics and yet we are surprised when it turns out to be the case with organisations. Why should a large organisation change direction simply becuse someone with a new idea thinks that it ought to be?
 Measured against the mass of the organisation, the individual's effort muust seem like trying to alter the course of a tank by throwing a stone at it.
 Inertia is not a matter of opposition but simply of inaction. It is often imagined that new ideas are vigorously opposed and hence defeated. This is rarely the case. The ideas are listended and agreed with, but nothing happens because there is no mechanism for overcoming the inertia of the system. An opportunity to change is rarely the same as a reason to change.
 The education system contains a lot of inertia. The subjects taught are taught not because they are of direct relevance to society but because they have always been taught. Like a rocket plunging through space because it has been made to move in a certain direction, the system continued in a straight line along its original course. And it is no one's fault.
  The problem with inertia is that it seems to make change by gradual evolutionary progress impossible. It seems to make sudden and violent modes of change unavoidable. To overcome inertia, force must be exerted by a body of considerable force and mass. ・・・.

  教育制度に限らず日本のシステムは慣性の法則が強烈に働いているので、 この慣性を打ち破るには「かなりの力と質量を持ったものによって力が行使されなければならない」ようです。 そして、最近ではアメリカからの圧力でNTT分割による通信料金の引き下げ案が出てきたように、 その力と質量を持ったものは残念ながら多くの場合外国からの圧力という形で表れるのですね。

 


                ゆとりの教育                   Back to MENU

 フォーラムの準備中たびたび目にした「ゆとりの教育」ですが、なかなかこれといった適訳が見つかりませんでした。 そこで、私が入っているメーリングリストのマネージャーである小泉氏にお伺いしたところ、 次のような返事をいただきましたので紹介します。
 
 「ゆとりの教育」ですが、「文部省のあらまし・平成12年 度版」というパンフレットの英語版では、"education in a worry-free environment" と訳しています。これが定訳 というわけではありませんし、文部科学省のホームページ では、「安心して学べる環境」という日本語表現を英訳し た部分にもこれを使っています。コンテクストを限れば「ゆとり教育」の一つの訳例として使えるとは思いますが定訳はみつかりませんでした。 また、"Education In Japan" という出版物では、 "a comfortable educational environment" という表現も出てきます。これは時間配分や教える量に関する表現としては使えないかもしれません。
 
 皆さん、いかがでしょうか? 個人的には、なるほどと思う部分もあるのですが、「詰め込み教育」"the cramming system of education"の対極にある教育だと理解していたので、別の表現があるような気もします。いい表現があればお知らせください。因みに私の考えでは、「詰め込み教育」が社会や大人の立場を反映した教育なので、「ゆとりの教育」は「子供の立場に立って授業やカリキュラムが組まれている教育」と解釈して、"the student-centered education"とするか、最近はやりのeco-friendlyなどというフレーズを使って、"the student-friendly education"としたいところです。

        会議通訳デモンストレーションフォーラム パートU  Back to MENU

 前回に引き続き、通訳フォーラムの報告です。私は第1分科会のモデレーターを務めたのですが、オープニングスピーチは一応日本語と英語の両方を準備しておりました。分科会の内容紹介を兼ねて、その原稿を一部載せます。

Re-education of teachers and IT

 Good afternoon, everyone. Welcome to the demonstration forum of Conference Interpretation by LLI.. My name is Masaki Nogami and I feel greatly honored and privileged to take chair in this workshop.
 Here, we are going to talk about “re-education of teachers and IT”. With the birth of the new Cabinet we often hear the Prime Minister Koizumi pledging “structural reforms with nothing sacred”. It is true that the structural reforms is an urgent matter for Japan to implement swiftly, but I think that the dramatic reforms of education system is also an even more important issue that Japan has to tackle for its survival. So I would like to invite your opinions about how the current education system and teachers should be changed.
 In order to make the discussion smooth, I would like all of you first to listen to the presentation by four speakers, who will give us some clues for the discussion.
 To begin with we would like to talk about “Re-education of teachers.” As you may know, teachers, once hired, will not be exposed to the open criticism and they don’t have to take any examinations or get any qualifications throughout their teaching career under the current system. In addition, in spite of the urgent necessity of teaching communicative English, most teachers are still giving lessons almost in Japanese and taking the grammar and translation-oriented method.
 What makes this situation standing? The problem may not be easy to solve: however, we should say that the lack of competition is one of the main factors to be noted.
 As for IT education, our government is now struggling for the development of IT: however, Japan is ranked about 20th in the international competitiveness and is not advanced even among the Asian nations. In order to get competitive, Japan has to further promote IT education. Therefore junior and senior high school teachers are expected to play a vital role in IT education. Now Ms. K is going to give you a clear picture of “e-Japan Strategy”, which aims to make Japan an advanced IT nation within five years.・・・. 


       会議通訳デモンストレーションフォーラム報告  Back to MENU
            − 教育と危機管理−

 去る5月27日に愛媛県民文化会館で開催された会議通訳デモンストレーションフォーラムには、地元松山はもとより、大分・香川など県外からも多くの方がご参加くださいました。午前中の二つの基調講演に続いて、午後の分科会では、どの会場もパネリストのみならず、すべての参加者を巻き込んだ「大ディベート大会」の様相を呈していました。教育問題がテーマだけに、子を持つ親や教師などの立場から真剣な意見が交わされました。また、参加者の皆さんが異口同音におっしゃっていましたが、「多くの方と本当に楽しく交流できた」と思います。是非、また近いうちにこのような機会を持つことができればと思います。

 私は第1分科会「教師の再教育とIT」のモデレーターを務めさせていただきましたが、会が進むにつれ準備段階での「パネリストの現状報告や問題提起に対して、会場から反応がない時はどうしようか・・・」などという当初の不安はまったくの杞憂となりました。1つの発言に対して次々と反論や賛成意見が出され、モデレーターとしては残り時間を気にしながら「できるだけ多くの人に発言機会を」といったことに気を配りながら指名しなければならず、うれしい悲鳴をあげていました。ただ議論が白熱したために、同時通訳担当の方は大変だったと思います。

 内容については、後日改めて報告しますが、ここでは同通機器の使い方や技術的なことについて私自身が学んだことをいくつか紹介します。
 まず、愛媛県民文化会館の同時通訳用会議室で基調講演を同通したのですが、レシーバーや機器類のセッティング方法を学べたのは大きな収穫でした。また、同通ブース内の明かりは通訳者の手元を照らすスタンドだけで会場からはブース内が見えないようにしますが、通訳者の存在をあまり意識させないための配慮でしょう。
 次に、同通する上で最も気をつけなければならないのは、イヤフォンから流れる同通者の声量だと思います。ある程度はレシーバーで音量調節できますので、声が小さくならないよう配慮すべきでしょう。そこで、あらかじめ通訳者全員が実際に声を出して、マイクとの距離を測りながら自分の声の大きさを把握しておく必要があるようです。その他、ブース内での交代方法や第2ブース内でのモニタリングも、一見何でもないようですがスムーズに同通するためには必要な知識となります。
 実際の同通場面では、気を遣ってゆっくり日本語で話して下さる発表者もいたのですが、ある程度のスピードで話してもらう方がかえって同通しやすいことも分かりました。
 また、プレゼンなどの同通で、事前に内容がわかっている場合には原稿を英語で作成しておくのですが、特に日英の場合、本番では英語の原稿にあまりとらわれないで同通したほうがスムーズにできるような気がします。つまり原稿は手元におき、必要に応じて目を落とす程度にとどめるということです。これは、井上先生が授業でよく言われていた「予習はほどほどに」という言葉に合い通ずるものがあります。つまり、あまり準備をしすぎると応用が利かなくなり、状況の変化に臨機応変に対応できなくなるということです。これから経験を積めば、どの程度の準備がちょうどいいのか分かるようになるのでしょうが・・・。但し、誤解の無いようにしたいのですが、原稿を作ること自体はよいことなのです。その作成段階で通訳する内容やキーワードが頭の中にスムーズに入ります。

 フォーラムから1日経って自分の通訳はどうだったのだろうか、と反省してみても実際のところ自分では分かりかねます。やはり、録音したものを自分で聞いてみるのが一番だと思います。自分の通訳を聞くのは結構嫌なものですが、今度先生にテープをお借りして、通訳以外の余分な言葉や音を発していなかったか、声の大きさやトーンは適切だったか、明瞭な英語だったか、話者の気持ちを伝えられたかなど冷静に分析したいと思います。 
 県民文化会館の同通施設について一言。おそらく愛媛県でここの同通機器を使える人はほとんどいないでしょうし、この会議室を実際に利用したことのある人はごく限られた数になると思います。なぜかと言うと、3000人もの収容能力を誇るメインホールでさえ、1日の利用料が13万7千円ほどなのに、たった50席しかない通訳会議室が15万円近くするためだと思われます。コンサートや公演を行って入場料を徴収できるメインホールやサブホールとはその構造や利用目的が大きく異なるので、これほど利用料金が高いと一般の利用者が二の足を踏むのは当然です。県内では他に例を見ないすばらしい同通施設だけに、遊休施設化するのは本当にもったいない話です。
 同通を必要とする会議自体がほとんどないのが愛媛の現状ならば、同通を学ぶ県民にもっと広く(つまり、低料金で)開放したり、高校生や大学生に同通体験させる企画を立てるなど底辺の拡充を図り、施設をより有効に利用する方法を考えてはいかがでしょう。その際には、私も喜んでお手伝いさせていただきたいと思います。愛媛にも、小泉内閣の構造改革の風が少しは吹いてくれることを願っております。(因みに、構造改革とは、一言でいうと「官への市場原理や競争原理の導入」だと思います。)
 実際、同時通訳者として著名な立教大学の鳥飼久美子氏は、同通訓練を取り入れた英語教育の提唱をされており、来年度から講座を開かれるようです。私もかねてから同通訓練を取り入れた指導を実践してまいりましたが、今度NHK文化センターで同時通訳入門講座を開講し、一般の方にも広く紹介する予定です。

 最後になりましたが、このフォーラムを開催するに当たり、ご協力いただいた方やご参加くださった皆様方に、この場を借りてお礼申し上げます。特に、全体の基調講演をしてくださったイアン先生、分科会のオブザーバーとして積極的に意見を述べていただき会を大いに盛り上げてくださったビンセント先生さんには感謝いたしております。皆様、本当にありがとうございました。

             第7回自己研修報告    Back to MENU

 英検1級のリスニング問題集を解いてみました。パート1はそれほどでもないのですが、パート2のは英文がやや長く、パート3ではかなりの量のインタビューと英文を聞き、それぞれの質問に対する答えを英語で記述しなければなりません。TOEICに比べると問題文が長いのですが、それだけ情報が多いので解きやすい気がします。また、問題数がそれほど多くないのも、あの機関銃のようなTOEICのリスニング問題に閉口していた私にとってはうれしく思います。
 さて、今回は英検対策にもなる、私流のNHK「やさしいビジネス英語」を活用したリスニングとスピーキング練習法を紹介します。対象は、英検準1級レベル以上の方です。

 1st step
 リスニングに重点を置きます。Vignetteにはまったく目を通さず、右ページにある聞き取りのポイントの質問だけを読みます。次に、Vignetteを一度だけ聞き、「聞き取りのポイント」の質問事項に英語で答えます。(ちなみに、質問は4問ありますがいずれも平易なので3問は確実に解ける英語力が欲しいところです。)さらにもう一度聞いてから、答えのチェックをします。
 2nd step
 語彙と表現力を身につけます。Words and Phrases, Vocabulary Buildingで語句の意味をチェックします。次にVignetteを見ながらのシャドウリーディングを3回行ってから、英日のサイトラをします。
 3rd step
 日本語訳に目を通しながら日英のサイトラをしますが、Vignetteに出てくる表現を覚える為に、できるだけ本文に忠実に行うことを心がけてください。最後に、自分の声で日本語訳をテープに録音し、それを聞きながら同通します。同通の時は時間的な制約もあるので、Vignetteで出てくる表現を生かしながらも、自分の英語で行うことになります。この同通の際に、新たに学んだ表現や語句が口から出てきたならば、もうその英語は自分のモノになっているわけです。

 以上ですが、簡単なあいさつなどは別にして、日常会話を含めたスピーキングというのは瞬時にして頭の中で英文を作る作業であり、いわば英作文の究極の形だと思います。そして、このスピーキングの質を高めるためには、日ごろから多方面にわたる知識を身につけると共に、バリエーションに富んだ表現を定着させておく必要があります。したがって、ここで紹介した練習方法が効果的だと思います。

 

             第6回自己研修報告         Back to MENU 

 以前、井上先生に「リスニング力を高めるいい方法は?」とたずねたところ、「語彙不足が原因で英語が聞き取れないことが意外と多い。」との指摘を受けました。なるほどそう言われてみればそうだなあと思い、奮起してなんとか語彙を増やそうとするけれど、悲しいかな思うように覚えられない。覚えてもすぐ忘れる。この歳になると、英語を学ぶ上で語彙を増やすのが一番辛い。どうしても覚えなければならないという状況を作ると覚えるかなと思い、資格試験を受けることにしました。基本的には、以前にも紹介した「速読速聴・英単語」を使って語彙を増やしています。繰り返しCDを聞き、文章を音読し、知らない単語を筆写します。それでも覚え切れない単語はノートに書き込み翌日チェックします。その他に私が効果的だと思う方法を紹介します。まったく見たことのないようなマニアックな単語が洪水のように押し寄せてくる英検1級を受験しようという方にお勧めです。
 まず、似たような単語をリストアップします。例えば、infer, confer,deferとか、renounce, denounce などです。そして、それぞれ電子辞書で類語を検索します。infer=conjecture, gather, speculate, surmise / confer=bestow, endow, grant, initiate, endueという具合です。このように類語をセットで覚えておくと、通訳する際にも役立つと思います。
 最近買った本で面白かったのは、「英会話・やっぱり・単語」(講談社文庫)です。あの手この手で単語が覚えられるようになっていて飽きないのが魅力です。この本のお陰で、世界で1番目と2番目に長い英単語をおぼえることができました。これまでは、「世界で一番長い英単語は、smiles」で済ませていたのですが、このジョークも実際に一番長い英単語を知っていなければ使うのがはばかれますよね。因みに、一番長いのがpneumonoultramicroscopicsillicovolcanoconiosis(塵肺症)で、二番目に長いのがfloccinaucinihilipilification(軽視)です。皆さんも挑戦してみてください。リーダースプラスなどを調べてみると、意味のほかにちゃんと「最も長い単語として引き合いに出される」と注釈が書いてありました。この二つを覚えると辞書に載っている他の単語があまりに簡単すぎて、覚えるのがばかばかしくなるとのこと。
(但し、長いといっても所詮いくつかの要素が結びついている合成語なので、それぞれの意味を押さえると簡単に覚えられます)
 

        会議通訳デモンストレーション・フォーラムにむけて (1)  Back to MENU 

 LLI松山教室主催の会議通訳デモンストレーション・フォーラムが5月27日に松山の県民文化会館で開催されますが、 私は「教師の再教育とIT」という分科会の司会を担当させていただくことになりました。 急速なIT化に伴い、情報革命への適応能力の国際的な格差ーデジタル・デバイドーが大きな問題となっているのはご存知だと思いますが、その一方で、グローバル化への適応能力格差の指標である英語力格差ーイングリッシュ・デバイドーも重要な問題となっているます。残念なことに、日本は先進国の中で最も英語力格差に悩まされている国だと言えるでしょう。アジアの中でIT化に成功しているインドやシンガポールでは、英語が公用語あるいは補助公用語として使われているという基盤があります。したがって、IT化推進の為にも日本人の英語力向上は重要な国家政策の1つとしてだと位置付けられるべきでしょう。
 そこで、当日は参加される皆さんに、留学・海外勤務・外国人との交流などの経験を踏まえて、「今どのような英語力が求められているのか」を話し合っていただき、これからの英語教育の進むべき道を模索したいと思います。この他、教育に競争原理を取り入れたアメリカのチャータースクールについてもその有用性について話し合いたいと思っています。
 また、松山大学講師のビンセントさんも参加してくださるようなので、日本の学生に対する感想などもお伺いする予定です。

                  第5回自己研修報告         Back to MENU

                   −サイトトランスレーションのための教材ー
 
 通訳者が毎日欠かさず行わなければならない訓練のひとつにサイトラがあります。私も(たまに)声を出してやっています。 ただ、サイトラはかなり完成度の高い翻訳なので、私が行っている方法は正確に言うとフレーズトランスレーションあるいは、 スラッシュトランスレーションというものです。フレーズトランスレーションというのは、 大体文法的な切れ目や意味の切れ目を単位として頭ごなし訳をする作業です。 この訓練によって、語順を逆転させて訳してから理解するという学校で身に染み込んだ癖を直すことができますが、 本来の目的はリーディングしながら語彙を補強し、英文の分析に慣れ通訳の基本技能を習得できるというものです。
 教材は、日本の新聞社が発行している英字新聞をネットで手に入れています。リスニング用の教材選びでも同様のことが言えるのですが、記事はやさしいニュースから選びます。やさしいというのは、例えば事故、災害、国際的事件などです。これらは専門的な知識や背景知識を必要としないので取り組みやすいのです。また、大きな事件ほど長期間に渡って記事になるので、頻繁に出てくる語彙の定着と知識の蓄積が無理なくできます。最初は難しいと思える単語でも、毎日見かけていれば親しみを覚えてくるものです。
 例えば「えひめ丸」関連の記事では、普段はあまり見かけることのない、stern(船尾)、bow(船首)、船体(hull)、salvage(引き揚げ)、periscope(潜望鏡)などがよく出てきました。

                           

ワンポイントアドバイス
 いわゆる文化的常識を身につけたり、語彙を増やしたりするには、英字新聞のフレーズトランスレーションをした後に、繰り返して音読する方法をお勧めします。(リスニングでは、シャドウイングがこれに当たります。)
 それでは、今ヨーロッパを恐怖のどん底に陥れている口蹄疫の記事を読み、それがどのような病気なのかを学び、同時に頻出語彙をチェックしてください。

 そもそも口蹄疫というのは、ウイルス性の急性伝染病で、蹄のある動物に伝染し水ぶくれ、発熱、足が不自由になるなどの症状がでます。
 An acute infectious viral disease causing blister, fever and lameness in animals with hooves.

 その伝染力は強力で、空気感染によって広まるので今回も被害が拡大したようです。
 Foot-and-mouth is a highly contagious virus spread by direct or indirect contact. It can travel many miles by air, in contaminated animal by-products and equipment, or through third-party contact.

 ただ、幸いなことにまず人間には感染しないと考えていいようです。
 The Food Standards Agency says there are no implications for the human food chain with only one recorded case of a human developing foot-and-mouth disease in Britain. It afflicts cloven-hoofed animals like pigs, cattle and sheep causing severe weight loss.

 ワクチンを接種する方法もあるのですが、家畜の数があまりに膨大でコスト面を考えると伝家の宝刀のようです。
 A large-scale vaccination of live-stock to prevent the spread of disease would only be used as a last resort because of the enormous costs and a sheer number of animals that would require vaccination.


 頻出語句
slaughter 家畜などを殺す contain the disease 病気を抑える  viral ウイルス性の
abattoir 屠殺場 susceptible 感染しやすい  contagious 感染力の強い
quarantine=insulate 隔離する disinfectant 消毒薬 lameness 足が不自由な
cloven-hoofed animals 蹄のある動物
(牛、豚、羊などをさす)
blister 水ぶくれ afflict 苦しめる  

       第4回自己研修報告        Back to MENU
 昨年の10月に初めてTOEICを受け、800点そこそこしか取れず自分の力のなさを痛感させられました。あの機関銃のごとく流れてくるリスニング問題では、集中力が続かず、ボリュームたっぷりのリーディング問題ではまったく時間が足りず、最後の10問ほどは手付かずでタイムアップとなってしまいました。
 今回(1月28日)は、前回の経験を踏まえ<集中力の維持と問題を解くスピード>を心がけて臨みました。おかげで、リーディングは15分以上の時間を残して全問解くことができ、見直しも十分できました。ところが、妙なことに自信のあったリーディングが430点しかなく、聞き漏らした問題もあったリスニングが480点ありました。統計上の処理でこうなったのか、それとも単に私の思い込みなのでしょうか。なんとなく、釈然としませんが、他にも私と同様に感じておられる方はいらっしゃらないのでしょうか。
 さて、2度目の受験にあたり、対策として購入したのはTOEIC Friendsという雑誌だけでした。1回分の模擬問題が付いて1260円という値段に惹かれて買いました。この模擬問題は、実際の問題より難しいと思いますので、できなくても悲観することはありません。
 TOEIC対策としては、問題に慣れるという意味で直前に模擬問題を2回ほど解いておくといいでしょう。それ以外では、できるだけオーセンティックな英語に触れることが必要だと思います。つまり、総合的に英語の学習をするということです。
 私の場合は、ニュースはBSでCNN、ABC、BBCを聴き、さらに録画したのを繰り返し聴きます。(NHKのバイリンガル放送は、ときどき生活に疲れ、投げやりな感じがする日本人女性の英語が流れてくるのと、やはり日本語記事の翻訳英語という感がぬぐいきれないのでどうかと思います。但し、時事用語を学ぶのにはこの放送を活用するといいでしょう。)この時に、同時通訳の練習もします。TOEICとは直接関係の無いように思えるこの同時通訳の勉強ですが、実は集中力の養成とリテイン量の増加には最適なので、リスニング力アップをめざしている方にお勧めです。
 他にも、英語を楽しみながら学ぶという観点から、洋書を読んだり、ビデオを観たりしました。これは、勉強しているという感覚がないのでいいのですが、単に読み流したり、漫然と観るだけでは効果は上がりません。
 例えば、今観ているビデオは、緊急救命室ERですが、医学用語を身につけようと第一巻から順に借りています。一週間ほど借りれますので繰り返し鑑賞するようにしています。気になる医学用語に関しては電子辞書で調べながら、その単語を含むフレーズごと声に出して覚えます。このシリーズのように連続ドラマものだと、同じような専門用語が繰り返して出てくるので、無理なく覚えられます。医者や看護婦でない人にとっては、医学用語はあまり馴染みがなく最初は大変ですが、2巻、3巻と進むうちに「この単語、前に出てきたなあ。」とたびたび思うようになり、定着していくのが実感できます。(産科医、糖尿病、胃潰瘍、小児科医、皮膚科、点滴などといった用語をよく耳にします。)

 洋書の方は、現在"Why men don't listen & Women can't read maps"を読んでいますが、内容の面白さと英語の分かりやすさという点で初心者の方にもお薦めです。但し、内容がややこじつけのような所があったり、男女の違いについてセックスに焦点を当てすぎた嫌いがあるので、最後まで読み通すのは努力が必要かも。因みに、私はと申しますと前半は、「ここは面白い考え方だから、覚えておこう」と思える箇所が多かったのですが、8章以降はそういった箇所はありませんでした。ご参考までに。
 次に、<語彙を増やしながら、聴く力・読む力を伸ばす>、つまり<総合的な英語力をつける>ために私が使っているテキストを紹介します。それは、<速読速聴・英単語Advanced 1000>というテキストです。これは、TOEIC対策というわけではなく、ニュースを聞いたり、雑誌を読む力をつけようと購入したものです。また、取り上げられている教材がup to dateなものばかりなのもうれしいですね。ただ、著者もはしがきで述べているようにレベルはかなり高くTOEIC800点以上をめざしている人が対象となっていますので、中級者は、姉妹編のCore1800からはいるのがよいでしょう。
 以上話があちこちに飛びましたが、要するにTOEIC対策として特別に受験勉強のようなものをするのではなく、<英語を楽しみながら総合的に学ぶ>のが一番効果的な学習法だということを言いたかったのでした。

追記
 実はここで紹介したテキストや研修方法は、今日久しぶりに紀伊国屋書店で会った松山聾学校の先生に紹介したものです。その先生も喜んでくださり、早速購入されたテキストもあったようです。私が実際に使ってみてよかったものや実践した方法なので、このHPをご覧下さっている皆さんにも役立ててほしいと思い、紹介しました。その先生とはこれからメール交換をして、お互いにいい刺激を与え合おうという事になりました。

 第14回レッスン 2月21日(木)  Back to MENU

 前回(第13回レッスン)に続いて国際宇宙センターに関する英文の後半部分を逐次通訳しました。とても専門性の高い内容なので前回はかなり苦労しました。特に、技術的な用語と内容の複雑さに悩まされました。ただ、前回苦労した甲斐があって今回の内容は比較的スムーズに理解できたため、余裕を持って逐次ができたように思います。
 具体的には、ゆったりとした口調で、できるだけ言葉に詰まらないように心がけました。メモは漢字部分を中心に押さえ、必要に応じ文と文の間のつなぎ言葉を補いました。しかし、後半になるとさすがに息切れしてしまい、冗漫で繰り返しの多い通訳になってしまったのが残念です。


                                  第11回レッスン 1月11日(木)   Back to MENU

 簡単な科学用語を含む日本文を逐次通訳しましたが、これまた難しいものでした。通訳ブースから出て前で通訳したこともあったのですが、雰囲気がいつもと違い、最初のうちは戸惑ってしましました。これはいい経験になりました。同時通訳ももちろん大変なのですが、逐次はメモをすばやく取り、それをもとに内容を思い出しながらある程度の量を通訳しなければなりません。相変わらずリテインするのが苦手な私としては、ただただメモを頼りに通訳するのですが、自分で書いておきながら何が書かれているのか分からない部分もあり、我ながら情けなく思いました。全員が通訳し終えてから、メモの取り方や間の取り方など英語以外の技術的なことやパーフォーマンスに関する指導をしていただきました。いつものことながら、なるほどと思うことが多くありました。
 まずはリテンションの量を増やすために、日本語のニュースをメモを取りながら1分間ほど聴き、それをもとに日本語で文章を起こす練習を始めてみようかと思います。それからさらに、英日や日英へと発展させたいのですが、いつのことになりますやら。せめてこの練習を通して、自分に合ったメモの取り方が見つかればいいと思っています。

 今回の教訓・・・今回も先生からお言葉をいただきました。それは、「予習はほどほどに」です。皆さんどうしてだかお分かりですか?さて、この言葉を肝に銘じて、宿題に取りかかるとしますか・・・。それでは、また。


                    第3回自己研修報告                 Back to MENU

 第9回レッスンのところで書いたのですが、通訳する際に「言葉をつなぐ時や訳に詰まった時に雑音が入る」「音が明瞭でない」「一定のリズムで言葉を発していない」という大きな欠点が私にはありました。その後、テープレコーダーに加えて、鏡、ビデオカメラを駆使し言葉遣いから顔の表情までチェックしながら練習したのですがやっとその効果が出たのか、ビデオでチェックしてもこれらの癖はあまり気にならなくなりました。(あくまで、自分にとってでありますが・・・)
 英語を学ぶ場合、やはり「自分を客観的に分析する」ことが非常に重要だと改めて痛感しました。語学は一人で学習する時間が多いので、どうしても自分では欠点に気づかないのです。したがって、定期的にテープやビデオなどに録音・録画し、自分を客観的に評価する機会を持つことが必要です。また、そのテープに日付を書いて残しておき、1ヶ月後の自分と比べてみるのもよい刺激になるのではないでしょうか。


                              
ゴア副大統領敗北宣言の同時通訳を分析する   Back to MENU
                                                           
 次の英文は、ゴア副大統領の敗北宣言の後半部分です。ゴア氏のスピーチに合わせて流れていた同時通訳を時間差どおりそのまま書いています。したがって、通訳の日本語は、英文から遅れています。
○遅れの幅は、数語から最大25語でした。
○英文中で赤字部分は、通訳者が訳していない箇所です。
○この引用部分に関して言えば、「一致団結する」が繰り返し使われているキーワードになっています。
 これらの点をもとにさらに、分析します。
 これは敗北宣言のスピーチですから、「ゴア副大統領が自らの敗北を潔く認め、ブッシュ大統領の勝利を称えると同時に、国民が新たな大統領のもとで一致団結することを促す」内容になることは通訳者でなくとも容易に推測できます。
 そういった条件のもとでも、遅れの幅は最大で10語程度が限度のようで、それ以上になると訳出を省略せざるを得ないようです。遅れが、20語、17語、25語になった場合がありましたが、内容的に大事であると思われるにも関わらず、通訳を大幅に省いていました。おそらく意図的なものではなくリテインの量を超えてしまい、そうせざるを得なかったと考える方が妥当でしょう。また、その部分では次のような誤訳も見られました。

 誤訳例
1 President-elect Bush inherits a nation whose citizens will be ready to assist him in the conduct of his large responsibilities.( ブッシュ次期大統領は非常に大きな責任を持って任務を遂行していくでありましょう。)
 ここで、おそらく通訳者の耳にはconduct, responsibilitiesという単語がリテインされていたので、conduct the responsibilitiesとつなげ、「責任を遂行する」と訳したのでしょう。ここは、「国民は、ブッシュ氏の職務遂行を手助けしてくれることでしょう。」くらいで逃げておけばよかったのですが。

2 now is the time to recognize that that which unites us is greater than that which divides us.
  分裂することではなく、団結することで私たちの
偉大さを示さなければなりません。
   ( コメント: greaterを偉大と訳したのはまずいと思います。)
3 I do have one regret: that I didn't get the chance to stay and fight for the American people over the next four years, especially for those who feel their voices have not been heard
 今回の選挙に敗れ、ひとつだけ残念なことがあります。それは、向こう4年間戦うというその立場を得ることができなかったことです。 声が聞かれなかった人の声を実現する為に今後とも戦っていきたいと思います。
   ( コメント: 「声が届かなかった人たちのために戦う機会を得られなかったことを残念に思います。」とすべきです。)
4 defeat might serve as well as victory to shape the soul and let the glory out.
  敗北は苦しいがそれなりの意味がある。勝利を勝利としなければならない。
   (コメント: この訳は、どう考えても苦しい。)
5 最後の方で"America, America"という賛美歌が引用されているのですが、そこはまったく無視でした。
6 これは、誤訳ではないのですが、and mend some fences,literally and figuratively.を「いろんな意味で熟考を重ねたいと思います。」と訳していたのは、「さすがだ」と言うべきなんでしょうか。因みに、mend some fencesは literallyには、「家の垣根を修理する」で、figurativelyには、地元選挙区のてこ入れをする」という意味です。

 以上から、次のようなことが同通のテクとして言えるのではないでしょうか。

Some Hints for Simultaneous Interpreter
 もちろん題材にもよりますが、今回の例ではリテインの量はごく限られており(10語前後)、大幅に遅れたときには内容語をいくつか聞き取っておき、それらをうまく結びつけ、文脈に沿った日本語に仕上げていました。あらてめて、「通訳には日本語力」
 キーワードを決めておき、苦しいときにはそれを使って逃げる。
今回のスピーチで例を挙げれば、前半は「一致団結」、後半は「戦っていきたい」「最善を尽くした」となる。実際、このNHKの通訳者も何度か「最善を尽くした」で見事に逃げています。
 訳に詰まったときには、思い切って省略し、次の訳に集中する。 

         「全部聞き取って通訳しようとしないで、聞き取れた部分をうまくつなぎ、全体として意味の通じる日本語となるよう心がける。」

                      ゴア副大統領敗北宣言とBS放送の同時通訳                    (赤字は通訳者が訳していない英文です。また、英語と通訳のタイム・ラグはそのまま再生しています。)

 Some have expressed concern that the unusual nature of this election
might hamper the next president in the conduct of his office. I do not believe it need be so.
  この選挙は非常に異例のものであったかもしれませんが、 
President-elect Bush inherits a nation whose citizens will be ready to assist him in the conduct of his large responsibilities.
 これを見れば新しいアメリカの大統領の(カヨウ?)も示すものでありましょう。

 
I personally will be at his disposal, and I call on all Americans -- I particularly urge all who stood with us to unite behind our next president.
 ブッシュ次期大統領は非常に大きな責任を持って任務を遂行していくでありましょう。アメリカ国民の皆さんに、それから私を支持してくださった皆さんに、
This is America. Just as we fight hard when the stakes are high, we close ranks and come together when the contest is done.
 次の新しいアメリカ大統領のもとに一致団結することを求めたいと思います。  

And while there will be time enough to debate our continuing differences,
 私はアメリカ人です。戦いますが、戦いが終わったときには、一致団結するのです。  

now is the time to recognize that that which unites us is greater than that which divides us.
 もちろんまだまだ、いろいろな異論はあろうかと思います。しかし、私たちは一つに団結することで、

While we yet hold and do not yield our opposing beliefs, there is a higher duty than the one we owe to political party.
 分裂することではなく、団結することで私たちの偉大さを示さなければなりません。

This is America and we put country before party.
We will stand together behind our new president.
 私たちは、それぞれの政党に対して責任があります。政党の前に国を国民を大事にするのです

As for what I'll do next, I don't know the answer to that one yet. Like many of you, I'm looking forward to spending the holidays with family and old friends.
 私は今後どうするのかについてはまだ分かりません。皆さんのように家族と友人たちと

I know I'll spend time in Tennessee and mend some fences, literally and figuratively.
 休暇を過ごしたいと思います。テネシーで休暇を過ごして、いろんな意味で

Some have asked whether I have any regrets and I do have one regret:
 熟考を重ねたいと思います。ひとつ私は、残念だと思うことがあります。

that I didn't get the chance to stay and fight for the American people over the next four years,
 それは、向こう4年間戦うという

especially for those who need burdens lifted and barriers removed,
 その立場を得ることができなかったことです。

especially for those who feel their voices have not been heard. I heard you and I will not forget.
 この戦いにおいて、声が聞かれなかった人の声を

I've seen America in this campaign and I like what I see. It's worth fighting for and that's a fight I'll never stop.
 実現する為に、私たちは今後とも戦っていきたいと思います。
 
 As for the battle that ends tonight, この戦いは私は決して止めるのもではありません。
I do believe as my father once said, that no matter how hard the loss, defeat might serve
as well as victory to shape the soul and let the glory out.
 今日終わる戦いについては、私の父が言ったことを思い出します。敗北は苦しいことであるけれでも

So for me this campaign ends as it began: with the love of Tipper and our family;
 それなりの意味がある。勝利を勝利としなければならない。

with faith in God and in the country I have been so proud to serve,
私にとってこの戦いは終わります。

from Vietnam to the vice presidency;
 私の妻と家族とともに、

and
with gratitude to our truly tireless campaign staff and volunteers, including all those who worked so hard in Florida for the last 36 days.
 それから、私はベトナムにおいて戦ったときから、副大統領の職務について戦ってきた今まで、

Now the political struggle is over and we turn again to the unending struggle for the common good of all Americans
 全力を尽くしてきました。そして最後36日、この36日においても最善を尽くしてまいりました。

and for those multitudes around the world who look to us for leadership in the cause of freedom.
 私はアメリカの国民の方々、そして世界の方々が

In the words of our great hymn, "America, America": "Let us crown thy good with brotherhood, from sea to shining sea."
 アメリカに指導力を求めている。その人たちに対し申し上げたいと思います。

And now, my friends, in a phrase I once addressed to others, it's time for me to go. Thank you and good night, and God bless America.
 全国の国民とともに全力を尽くしていきたいと思います。そして、神の加護がアメリカにあらんことを願います。

            リアルタイム同時通訳            
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 昨日、米大統領選の決着がつき、ゴア副大統領が敗北を認める(concede)電話をブッシュ候補に入れました。その後、歴史に残る大接戦を演じた両者がそれぞれ敗北宣言、勝利宣言のスピーチを行いました。もちろん副音声で、リアルタイムに同時通訳されていました。毎日流されているBBCやABCのニュースも同時通訳されているのですが、ほとんどの場合同時サイトトランスレーションか完全翻訳原稿と呼ばれる通訳形態です。同時サイトラというのは、予め原稿をもらいそれに目を通し、本番でその原稿をもとに英語のスピードにあわせて通訳する方法です。
 しかし、今回はリアルタイムに通訳していたようです。そこで、主音声と副音声とを同時に流し、本当に同時通訳はオリジナル音声に遅れることなく通訳できているのだろうかと何度か繰り返し聴いてみました。すると、予想どおりどうしても通訳が遅れてしまう場合が生じ、その場合は訳を省略しているようでした。そこで、省略した理由を仮定してみます。
 1 あえて訳す必要がないと判断した。
 2 聞き取れてはいるが、遅れを取り戻すために省略して先へと進んだ。
 3 リテインの量を超えてしまい、聞き取れないので訳せなかった。
 
 さて、皆さんはどうお考えでしょうか。わたしが、分析してみますので乞うお楽しみに。

A new anti-graft bill was enacted by the Diet   ( Nov. 24)   
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 政治家が公務員への口利きの見返りに報酬を受け取ることを禁止する( a new anti-graft bill that bans politicians from receiving rewards for serving as middlemen in governmental contracts)「斡旋利得処罰法」の与党案が、衆議院本会議で可決されましたが、この記事の中で面白い表現を見つけたので紹介します。この法案を野党が「スイス製チーズ」に例えて非難しているのです。
 The ruling coalition-sponsored bill has been likened to swiss cheese by the opposition because they say it is riddled with (       ).
 さて、この(   )内にはどんな単語が入るのでしょう。一体、スイス製のチーズというのはどのような特徴があるのか見当もつかないので、ここはヤフーのオンライン辞書の助けを借りることにしました。次のような説明がありました。
  スイスチーズ =孔が多く硬い。
 孔とは、穴のことで、穴が多いのが特徴のようです。したがって、もうお分かりだと思いますが、野党はこの法案を、holesの多い法案=抜け穴が多く、実効性の乏しい法案だと非難しているわけですね。まあ、議員や公設秘書(state-paid secretaries)が公務員への口利き(vested authority)の見返りに民間からの金銭的報酬(financial rewards)を受け取る行為を禁じているのですが、私設秘書(private secretaries)は公務員ではないのでその対象にならないそうで、これではswiss cheeseと言われても仕方ないですね。
 それにしても、その孔の多いスイスチーズ、味の方は
「斡旋利得」に負けないくらいおいしいのでしょうか?

                 第8回 レッスン   11月30日(木)         Back to MENU

 20編のニュースのheadlineとlead storyを読み込んでくるのが、前回の宿題でした。単に読むのではなく、アメリカのnewscasterのように抑揚をはっきりとつけ、ニュースの内容に応じた読み方をする、といったものでした。先生曰く、「涙が出るほど読み込んで来なさい。」
(前回の授業中、先生が一部を読まれたのですが、どうすればあんなに見事に読めるのかと思うほどでした。単に「英語が上手」というレベルを超えたものがありました。)
 さて、宿題の音読に取り掛かったものの、自分ではどうしてもあのニュース独特の口調がつかめませんでした。そこで宿題からは一旦離れ、CD付きのニューステキストを使って練習することにしました。幸い手元に、以前リスニング用にと購入していたPETER JENNINGSのCDがあったので、「ヘッドフォンで聴きながら自分の声をテープに録る」といった練習をしました。使ったのはリードの部分だけで、ほんの5行ほどですが、ある程度自分で納得するまで練習すると30分以上かかってしまいます。時間と集中力を考えても、一日一つが限度だと思いますが、日本語も英語もやはり自分の声をテープに録音するのが上達の近道だと思います。(これまでも分かってはいたのですが、なかなか時間と勇気がありませんでした。)
 授業の最後に、自分でそれぞれニュースを5つずつ選び、テープに録音し後で全員で聴くことになりました。まず、ヘッドラインの部分を日本語で紹介し、続いて英語の部分を読みます。英語に関しては、先生の指導を受けている間にもずいぶん上達したとは思いますが、まだまだ納得できるレベルではありませんし、もっともっと自分で読み込んでおくべきだったと反省。
 でも、日本語に関しては先生に以前指摘されてから、NHKのニュースで練習した成果が現れたのか、ゆっくりと落ち着いた声で話せましたし、テープの声も分かりやすくなっていたと思います。このところ授業ではずっと落ち込んでいたので、ちょっとうれしいものがありました。
 授業で使ったニュースの一部を紹介します。皆さんも、PETER JENNINGSになったつもりで、読んでみてください。 

1 Barak: Treaty Means Palestinian State
But not, the Israeli prime minister said, under the threat of violence. The White House, meanwhile, has appointed George Michell to chair a commission on the bloodshed.
2 British Diamond Heist Foiled
If it had succeeded, it would have been the biggest robbery ever, according to Scotland Yard. It would also have looked a lot like something out of a James Bond movie.
3 Air War Against Rabies
Trying to stop the westward spread of a dangerous strain of rabies, the U.S. government is pumping money into a program that air-drops vaccine into wilderness areas.
4 Building A Cyberspace Roadblock
A French judge is considering proposals on ways to keep web surfers from clicking onto a U.S.-based Web auction site which has featured Nazi memorabilia, which is illegal in that country.

 それぞれ簡単に日本語の見出しをつけておきます。(間違いがありましたら、平にご容赦を)
   1 イスラエルのバラク首相:和平条約締結はパレスチナ国家の承認を意味することになる
   2 英国のダイヤモンド強盗劇は失敗に終わる
   3 狂犬病封じ込めの為、ワクチンの空中散布を実施
   4 アメリカのインターネットオークションサイトに規制措置


                          第9回レッスン   12月7日(木)        Back to MENU

 教材のテーマは、生徒の能力に対する考え方を日・独・米で比較したものです。一言でいうと、日本は子供の能力に差はなく、義務教育の間は一律平等な教育機会を提供し、何事も努力次第という考え方。一方、独・米は能力の差を認識した教育システムを採っているということです。また、米では富裕地域と貧困地域で能力差の要因に対するとらえ方が異なり、前者は生来の能力を、後者は家庭内の問題を挙げているようです。
 英→日の同時通訳ということでしたので、この一週間は英語を自分の声でテープに吹き込み、それを聴きながら日本語で同時通訳の練習をしました。そして、同時通訳した声をもう一台のテープレコーダーに録音してチェックしました。気が付いたことを挙げます。

 「あ〜」「え〜」「う〜」といった訳以外の雑音が意外と多いのに気が付きました。自分ではほとんど意識していないのですが、言葉がすぐに出てこない時によく発しているようです。聞き苦しい上に、訳が分かりにくくなるので、直さなければなりません。
 そして、つなぎの言葉として「それから」を頻繁に用いていること、「私」とか「我々」といった「主語」をそのまま訳していることにも気付きました。特に、主語は省略した方がいいのは分かっているのですが、つい英語につられて訳してしまいます。気をつけねば・・・。
 自分の声が聞こえない状態で話しているので、言葉が明瞭でありません。例えが適当かどうかは分かりませんが、耳の不自由な方が話すときに言葉が不鮮明になるのと似たような状況だと思います。自分でははっきり言っているつもりでも、テープに録音された声はかなり不鮮明で、リズムも損なわれていました。これは、なにも英→日の同通に限ったことではないようです。ヘッドフォンを付けて大音量で音楽を聴きながら、日本語の原稿を読んでみても同じ現象が起こりました。アナウンサーの話すスピードはかなり速く大変ですが、 NHKの日本語ニュースを利用した日→日練習で克服したいと思います。 
 これはある程度仕方のないことかもしれませんが、 「英語に遅れまいとして意味のまとまりごとに訳し、少し間があってまた訳す」というふうになってしまいます。つまり、発せられる言葉のリズムが一定にならないのです。リテインの量を増やすことができれば、一定のリズムをもって訳せるようになると思いますが・・・。このハードルは、かなり高いと感じています。

 以上の点に注意しながら、さらに練習を続けていきたいと思います。
 次回のレッスンは、今日の教材をもとに教育界の問題点と提言をそれぞれ日本語で書き、それを同通するというものです。私は「21世紀の日本の教育界への提言」を担当することになりました。まだ、案の段階ですが、次のようなものを考えております。

キーワード
バーチャルースクール 自宅で自主学習。学校格差、高校・大学入試などがなくなる
バーチャルティーチャー コンピュータで、レクチャーと教師を選択ソフトライブラリーの中から、研究テーマに合ったレクチャーと教師を選択できる
サイバーリサーチ 研究テーマを決め、コンピュータで情報収集をする。バーチャルスクールでは、年2回の研究内容のプレゼンテーション機会を与えられ、その評価により進級が認定される。
提言要旨
プライマリーバーチャル スクール
(6年間)
現在の小学校




○英語とコンピュータ技術を徹底的に指導する。特に、コンピュータについては、インターネットを使いこなせるまで習熟させる。
○高学年からは、コンピュータを用いたテーマ学習に重点をおき、教師はアドバーザーの役割を果たす。
○ 6年生の一年間は、自宅で自分の決めたテーマに基づきサイバーリサーチを行う。研究成果とプレゼンテーションで一定の評価が得ることができれば卒業が認定されます。
セカンダリーバーチャルスクール
(6年間)
現在の中学校・高校
基本的に自宅でサイバーティーチャーのレクチャーを受ける。   
 年2回、自分で決めた研究内容を発表するために学校に登校する。そこでの評価が大学進学のために必要な認定資格となる。
リサーチ・スクール
(4年間)現在の大学
卒業認定後研究者
 きわめて純粋な研究機関。卒業後、研究者を目指す生徒のためのコース。
インターン・スクール
(2年間)
現在の専門学校
卒業認定後就職
 各種専門技能を身に付けるための教育機関l。複数の会社と契約し、2年間職場で仕事をしながら自分の適性を見極める。

 次回の報告で、完成版を載せたいと思います。 Back to MENU


                     第10回レッスン 12月21日(木)    Back to MENU            

 今回の宿題は、「来るべき21世紀に向けての日本の教育改革案」を日本語で800字以内で書き、その要約をニュースのヘッドラインとリードストーリーとしてまとめるというものでした。「現実離れした内容でいいから、大胆な提言を」ということでしたので、 教育から「既成の学校、教師、入試制度」を排除するという過激な私案を考えました。
 (因みに、ヘッドラインの pleasedとpleadは韻を踏んでおります。)

 Students Pleased, Teachers Plead At A Reform Plan
 
(改革案に、生徒は「大歓迎」、先生は「ちょっと待った」)

 The government released a drastic educational reform plan, which discard conventional teachers, schools and exams. Students are just required to work with what they are interested in and make a presentation for graduation. There might be no teaching difference, no bullying and no rote learning.
  (政府は、教師・学校・入試をなくすという抜本的な教育改革案を発表した。生徒は、自分の興味ある分野を研究し、評価を得られればバーチャルスクールの卒業が認められる。おそらく、指導力格差、いじめ、暗記中心の学習がなくなるだろう。)

                        
教育改革私案

                                                               
 皆様、こんにちは。本日は、教育・科学技術大臣の代理といたしまして、この場で日本の教育制度の改革案を発表できますことを光栄に思います。  これまで、わが国の教育制度に関しましては数多くの議論がなされてまいりましたが、残念ながらいずれの議論も表面的で、問題解決のための抜本的な改革とはほど遠いものでした。そこで、現行の教育制度の問題点を明らかにし、さらに問題解決のための新制度の導入を提案したいと思います。
 まず、現在わが国の教育にとって、教師・学校・入試の存在が大きな弊害となっていることを認識しなければなりません。つまり、教師に関してはその能力差が大きく、すべての教師から同じ質の教育を受けることはほとんど期待できません。また、現在の学校組織には必然的にいじめが発生するメカニズムが内在されており、さらに生徒は入試制度により、暗記中心の学習を余儀なくされてきました。
 教育から、これら教師・学校・入試といった要素を取り除けば、只今申し上げましたような弊害を排除することができると考えます。そこで従来の制度に代わるまったく新しい教育観に基づく教育制度の導入が必要となります。新教育制度のキーワードは次の3つです。
         バーチャルティーチャー・バーチャルスクール・サイバーリサーチ

  第1のキーワードであるバーチャルスクールというのは、コンピュータを通じて、自宅で学習できる教育システムです。自分のレベルに合った教材を選べ、内容は全国統一規格なので平等な教育機会が保障されます。初等教育からすべての教育はこの方式で行われます。
  第2番目のバーチャルティーチャーというのは、コンピュータを通して指導する教師で、ソフトの中から生徒が自分の研究テーマに沿った教師を選択できます。教師の能力差から生じる授業格差がなくなります。 最後のサイバーリサーチとは、バーチャルスクールでコンピュータを用いて行う研究のことです。研究内容のプレゼンテーションの機会は年2回あり、その評価によりバーチャルスクールの卒業資格が与えられます。 それでは、初等、中等、高等教育機関の組織一覧表をご覧下さい。

プライマリー・バーチャルスクール(初等教育 6年間)
(1) 語学教育とコンピュータ技術を徹底的に指導します。特に、コンピュータについは、他人の力を借りることなく使いこなせるまで習熟させます。
(2) 高学年からは、コンピュータを用いたテーマ学習に重点をおき、教師はアドバイザーの役割を果たします。
(3)  6年生の一年間は、自分の決めたテーマに基づきサイバーリサーチを行います。研究成果とプレゼンテーションで一定の評価を得ることができれば、卒業が認定されます。
セカンダリー・バーチャルスクール(中等教育 6年間)
 自宅でコンピュータを使いサイバーリサーチを行い、年2回研究発表をします。プライマリースクール同様、卒業のためには研究内容とプレゼンテーションで一定の評価を得ることが必要です。

リサーチ・スクールとインターン・スクール(高等教育 4年間と2年間)
a リサーチ・スクール(現在の大学)…専門分野の研究機関です。
  卒業後研究者を志望している生徒のためのコースです。
b インターン・スクール(現在の専門学校)…各種技能を身に付けるための教育機関です。卒業後就職希望の生徒のためのコースで、在学中希望職種の仕事をしながら自分の適性を見極めます。

 以上、簡単ではありますが、21世紀に向けて、日本の教育制度の改革試案を発表させていただきました。この試案が国際社会に貢献しうる人材の育成に役立つことを、心より願っております。皆様、ご清聴ありがとうございました。

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