セミの鳴き声がけたたましい。連日の暑さも、生まれ月の関係かそれほどは苦には感じない。
私が子どもの頃、夕立がよくあった。長い時間降ることはなく、雨宿りしているうちにすぐに止んだ。
夕立が止むと、先ほどの雨が嘘だったかのように空が晴れ、暑さも引き清々しかった。
縁台に座って、井戸水で冷やしておいたスイカを家族で食べたり、浴衣を着て近所の子供たちと花火をしたことなど、今となっては懐かしい。
その当時は、クーラーや扇風機といった文明の利器はなく、夜寝る時には毎日蚊帳を吊るのが日課だった。
今の若い方に「蚊帳」といってもピンとこないと思う。
キャンプの時のテントをイメージしてもらうとわかりやすいかもしれない。
テントはナイロンやポリエステルに防水や撥水加工をした生地だが、蚊帳は麻を網目に織った風通しの良い素材を使っている。
シンプルだけど優れものの夜具である。
戸を開けると風が「すー」と蚊帳を通り抜け、朝方には戸を開けっ放しにしておくと寒いくらいだった。
蚊帳に入る時は、パタパタとしながら蚊が侵入しないように入るが、蚊もさるもの、ちょっとした隙間からでも入ってくることがあって、姉と一緒に蚊を退治するのに大騒ぎしたこともあった。
最近の若い方々には想像もできない光景だと思うけど、古き良き時代の夏の風物詩である。
原発問題もあり、電力不足がいわれる昨今、蚊帳の再登板があっても不思議ではない。>