此処に在る純情

思わず振り向いたけれど、もういちどドアに手をかける甲斐性はオレにはなくて・・・。

あいつ、いつから気ぃついてたんだ?
身体くたくただったぞ。完全に寝てたぞ。
あのまま、すきにしたら、すきにさせたのかよ。
―――――してよかったのかよ。

それって、さ、誘ってたってことか?
いや、それならあんなにあっさり「おやすみ」なんて言わねー、多分。
ひきとめるなりするはずだ・・・その気なら。

まさか、オレの反応見て楽しんでたのか?
それでも手を出せない臆病者だと笑うか。
オレがのっちまったら軽薄なスケベ野郎と一瞥するのか。

すっげーなさけなくねーか?

だめだ、わかんね。
よけい悶々として寝れやしねぇ・・・。
こんなことならこっちに引きずり込んどくんだった。
それなら「いつも」のことだとあきらめて、抱いていられる。


抱いていれば、オレの身体はつらくなるけれど。









それでも・・・・無慈悲にも朝はやってくる。


「おはよ」

ベッドにぺたりとすわりこんで、まだ夢うつつのような、ある意味すげーそそられる表情で、クラピカは振り返った。

「ああ・・・おはよう」
「よく眠れたか」
「おまえがここに?」
いまいち釈然としない様子であたりを見回す。
「・・・いつのまに寝たんだろう」

え?!

「覚えてないのか」
「何を」
「いや、てっきり、あんなこと言うから」

怪訝な面持ちで見上げる。

「私がなにか言ったか」
「・・・・すきにしろって
「だから何を?」

 ・・・・・・

「おやすみって!!」
「寝るときに、おやすみと言うのは当然だろう。幼稚園児でも言うぞ」

そんな常識もおまえにはないのかと言うような。



これは、つまり、ようするに、昨夜の「あれ」は


  ねぼけてただけかーーーー!!!




「寝たふりクラピカ」その後。思いっきり蛇足かもしれない。
せっかくの雰囲気(?)をぶちこわしてしまったら申し訳ないが。
・・・いや、実はこの程度のことだったのではないかと。

<< BACK  << TOP >>


MEMO/050709