愚者の贈り物 < 1 >

「ようするに聖人の誕生日というわけだな」
待ちあわせたホテルのロビーで、もみの木のディスプレイを眺めながらクラピカがつぶやいた。

時まさにクリスマスイブ。
どうせおっさんの先約があるだろうとカマかけるつもりで誘ったら、意外にもあっさりとOKの返事が返ってきた。
『その日はレオリオとも会う予定だから』
ソレを聞いた時は、さすがにオレもおっさんがかわいそうになったけど。
『じゃ、オレたち遠慮しよーかなー』
『4人の方が楽しいだろう』
・・・なんつーか、前途多難。
ま、いっか。
2人で会ったって、ぜーーったい進展しないの目に見えてんだから。

「もうすこし神聖なものではないのか。それにかこつけてプレゼントやらパーティーやらというのがどうにも解せないのだが」
いかにもの口調で、いかにもの生真面目さで。
「そんなに堅苦しく考えることないよ」
ゴンの笑顔にもまだどこか納得のいかない様子で。
「そういうものなのか?」

クリスマスにプレゼント、お正月にお年玉、バレンタインにチョコレート
特にクリスマスとバレンタインはカップルにとっちゃ冬のイベントの定番だもの
あ、お年玉はオレたちにね

「あんたって知識が豊富なんだか、一般常識に疎いんだかさっぱりわかんねーや」
半分は思わずの、半分は確信犯の本音がもれた。
「これじゃおっさんも苦労するよ」
「なんでそこにレオリオが出てくる」
・・・ホントに苦労してそうだ。

「クラピカはレオリオに何かプレゼントしないの?」
ゴンの問いに、予想通りというか案の定というかその考えが及んでいなかったらしい。
眉間にしわをよせて悩みこんでしまった。

レオリオがやたらと24日にこだわっていたから
まずいな、何も考えていない
あいつのことだから、ないとわかればまたあれこれ言うに決まっているし

「クラピカ?」
「・・・ルクソではそういう風習はなかったし、村を出てからはそんな余裕はなかったからな」
ため息まじりに呟く。
「それにひとに何かを贈るのは非常にむずかしいものだから・・・」
「そうかなあ」
「相手が欲しているものなどたやすく推測できるものではないし、ことに形が残るもので好みにあわなかった時など、律儀な相手なら捨てるに捨てられなかったりするではないか」
多分クラピカにとっては、まじめすぎるほどの思いやりなのだろうけど。
「考えすぎなんだと思うよ。それにクラピカが選んだってだけでレオリオ絶対喜ぶから」
それはもう絶対にまちがいのない事実。
けれどそんなゴンのフォローもかえって逆効果で。
「それだから余計困るのだよ・・・」


「オレ知ってるよ、おっさんのいちばんほしいもの」

このままでは永遠に埒が明かない。
無意識に表情が一瞬やわらいだ。



「あんたがピンクのリボンでもつけて『プレゼント』って言えば、おっさん泣いて喜ぶって」



「なんの話だ。私はリボンのようなものはつけたことがないし、第一似合わんぞ」
真顔でそういう反論するって、やっぱそーとーニブい?
「それにだいたい何を贈ればいいのかわからないではないか」

・・・だから、あんた


−−−−−−−///////!!!


やっと、気ぃついた?

このひとってさ、おっさんのコトになるとかわいそーなくらい
ポーカーフェイスくずれちまうんだよなー
で、ついついいじめてやりたくなるっていうか

「な、なにをバカなことをっ」
これ以上ないというくらいの速攻で真っ赤になって、声はすっかりひっくりかえって。
「『ハジメテ』ってわけでもないんだろ」
「んなっ、ハジメテに決まっ・・・」
思わず言いかけた自分に自分ではっとして両手で口を塞いで・・・そのまんま。

「だめだよ、キルア」
かたまりきった空気を察しているのかいないのか、ゴンが大マジなカオで断言した。
「クラピカは絶対ピンクよりブルーの方が似合うんだから!!」

「何が似合うって」
のんきに応えたのは、遅れてやってきた当事者そのひと。
「ねーレオリオもそう思うよねー」
「うーん、そうだなー。オレとしちゃ、ピンクの、こうキャミソールドレスなんかも見てみたいなーとか・・・」
普段そんな冗談を(たとえ言ってる方は本気でも)口にすればたちまち鉄拳に見舞われること請け合いなので、口調とうらはらに身構えていたレオリオだが、何も起こらないことにはじめて異変に気がついた。

「クラピカ、どーした!!カオ赤いぞ。熱でもあるんじゃないか?!」
かたまっているクラピカの両肩をつかんで顔を覗き込む。
「な、な、なんでもないっ!!」
「なんでもなくあるかよ。目まで赤いじゃねーか」
「ちょ、ちょっと気が動転しただけ・・・わー、そ、そんなにカオを近づけるな!!」
額と額をあてて熱をはかろうとするレオリオにますますパニックして、ますますその目は赤みを増して。

「キルアーーー、おまえこいつに何したーーーっ」

なんで『オレだけ』に言うんだよ


「おっさん、リボンかけそこなったけど『それ』プレゼントな」



あとは勝手にしてくれと、オレとゴンはクリスマスカラーの街へと繰り出す。

「ね、キルア、ホントにリボンあげようよ」
「えー、あいつするわけないだろー」
「そっかなー、それくらいしてもかまわないのになー、女の子なんだし」





  もうすこし髪が長かったらブルーのリボンも似合うかもな
  そうやって身を飾っても誰もあんたを責めたりしないんだから
クリスマスでもバレンタインでも誕生日でも何でもよかったんです。
たまたま時期的にクリスマスかなあと・・・。
思いつきはこちらが早かったんですけど、TOP絵に先越されました。
で、クリスマスすぎちゃったし。
中身はホントにありきたり・・・というか展開がいつも同じになってしまうのは発想が貧困だから。

「うちのおふたりさん」は、ちゃんと系統だったおつきあい度が確定してません。
これは「ボーダーライン越えてない方」。
うちのピカさんは、その手の話になるとかたまってしまう傾向強・・・。
にーさん、がんばれ。

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041226