ずるりと身体の力がぬけた。
身体の中心がざわついて
ふれた唇が熱い。
あわてた男がささえるまもなく膝が地についた。
男の腕にしがみついて、かろうじて持ちこたえる。
思考がぐらつく。
「・・・おまえ、なにか変なくすりとか使ってないだろうな」
「はあーーー?」
「身体がおかしい、立っていられない・・・なにをした」
「なにって、なにもおかしなことしてねーよ」
知識の上ではわかっている。
けれど、どういう精神状態ならば、そんなことが可能なのか・・・。
知らない、わからない。
実体を伴うのは男たちのねめつく視線と嫌悪感だけ。
決して、飲みこまれてはならない。
「これなら力ぬけても大丈夫だから」
男の腕が背にまわされて、ゆっくりと地に横たえられる。
もういちど口づけられ、意識は思考は手放した。
MEMO/050614
嫌いだとか、憎いとか、おぞましいとか
そんな「負の感情」ならば
いやになるほど身にしみているのに
「すきだ」という感覚がいったいどんなものだったのか
―――思い出せない
とうさん、かあさん、みんな、だいすきだったのに
この男に抱いてしまったこの感情がそれなのだろうか
わからない
いまは知りたくない
知るのが怖い
MEMO/051002