食わず芋(石芋)
 しかとは解らないけど道後の里あたりの昔の話。季節は実りの秋のこと、あるお婆さんお芋を掘っていた。掘りたてのお芋は新鮮でおいいしそうだった。そこへ通りかかった旅の途中の弘法大師は、「ひとつお芋を分けてくださらぬか。」と頼んだ。しかし、お婆さんは掘った芋を渡すのが嫌で、顔をしかめて「お坊さん、折角なんじゃけんど、このお芋は硬うて食えんのじゃ。」と答えた。弘法大師が立ち去ってから、うまいことだまされたよったと、ほくそえみながら芋を家に持って帰った。さて、もう蒸し上がった頃じゃろうと、芋に串を刺してみても芋は石のように硬く串も刺さらなかった。「硬うて食えん」と言ったことが本当になってしまった。それ以後、その辺りでは硬い芋しか取れず、人々は「食わず芋」と呼んだという。
 同じような話が、吉藤の里にもあって、ここでは「石芋」と呼ばれていたという。
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