松山国際観光温泉文化都市の話(その1)  (その2)へ続く  (その3)へ続く   topへ戻る

  【松山市広報】昭和26年1月1日号 …松山市弘報から。
   当時は弘報と言っていた。昭和26年=1951年

松山国際観光温泉文化都市」について 

 安井松山市長によって一年半前より企画されていた松山国際観光温泉文化都市建設法案が見事実を結んで昭和25年12月4日衆議院本会議に於て成立を見、つづいて同年12月6日参議院本会議に於て可決成立したことは最近に於ける市政施策上の痛快事であった。 しかしこの法案が成立するにいたったことはわが松山市が観光温泉都市として、自然に恵まれていることに加え郷土先輩各位の御尽力と市民各位の熱烈な御声援の賜であったことはいうまでもない。ここに法案が成立するまでの泉都松山市の実情とこれが企画ならびに松山国際観光温泉文化都市建設法及び事業の内容と計画経費を解説して市民の御承知していただきたい。

  ◎松山市のほこり

 うつ然とした老樹に包まれた城山の頂は天を摩す(かくす)古典美の高層楼閣が四百年になんなんとする歴史の香をただよわせている。これこそわが国無双の国宝松山城の姿である。その高楼を囲繞(いじょう)する復興文化の都市17万市民を抱擁する松山市は悠久三千年、こんこんと湧出する天下の霊泉道後温泉地域を一円にして四時遠近の浴客を呑吐(どんと)している。温泉価値また格別で多量のラヂウム、エマナチオンを含有する透明清澄の泉質と他に類を見ないコロイド質とをもって誇り特に欧米人は、その適温であることと肌触りの快感とを歓迎し終戦当時進駐軍の米濠将兵が日夜温泉に浸ってこれを礼讃したことは、もとものことといわねばならない。
 しかし道後温泉が上代から現代に至る数千年の間、天皇、皇后、皇太子の行幸啓のあった史実は風土記に、万葉集に源氏物語等に徴しても明かである。また道後温泉場が往昔日本外交の策源地として重要視されたことも、また松山市誌に興味深い文化価値をもつものである。古今文人によって風光明媚をたたえられた詩文また枚挙するにいとまなく特に松山市の生んだ俳聖正岡子規の道後温泉に関する文学上の作品頗る多いことも松山市が如何に天下に冠絶する温泉都市であるかを立証するものである。
 
   草花や露温かに温泉の流れ    子規

 ◎ 道後温泉場

 道後温泉場は何れも豪壮典雅な日本趣味豊かな建築物であり、郊外遠近には名所旧跡多く国際観光顧客遊覧の地としてあらゆる条件を具備している点は高く評価されるのである。

  ◎ 松山城の展望
 海抜124米松山城からの四囲の眺望は雪月花によく特に瀬戸内海を一望(眸)におさめ、点々布石する大小幾多の島々、すなどる舟の真帆片帆(まほかたほ)の往きかう風情、また西方に見はるかす中国、九州地帯の連峰を模糊(もこ)の間に瞥見(べっけん)する景観、さらに踵かえし眼を東に転じては四国背染(?)の連山は波濤の如く、石槌の峻峯これが王座を占め、あわせて、この山景が抱く渓谷美、水流美、森林美の極致、その中核をなす面河渓谷は外人遊観客の眼を驚かすに足る。

  ◎ 温泉都市と交通機関
 松山市の観光と不離一体の交通機関について考察してみると、市を中心として四国各県はいうに及ばず、遠く中国、九州各都市間に連絡する交通網は四通八達して朝夕の往来自由である。特に其の点において、松山市は瀬戸内海の要衝に恵まれておるのみでなく、内科特有の気候は四時温暖であって大気また清浄の健康地である。

  ◎ 観光温泉文化都市の構想と企画

 自然はかくの如く松山市にとって、国際観光温泉文化都市としてあつらえ向ではあるが、幾多足らざるものあるを憂い、雄大なる構想と周密なる企画により、固有の美しき自然の環境とこれらの観光温泉資源とを基調とする近代的諸施設をして完全な調和を図るに努めつつあるが当市の経済力では到底目的の完遂は不可能と考えるのでこの際国家の強力な援助と明哲な指導を得て国際間の親善と東西文化の交流をはかり、これにより日本経済の自立平和国家の建設を促進し世界の恒久平和に寄具し、ひいてはわが松山市の発展計画のもとに、このたびの松山国際観光温泉文化都市建設法が成立したのであって、将来の松山市は全国に冠絶する発展と栄挙をかち得るものとしてはばからない。

◎ 松山国際管区温泉文化都市建設法の解説
 
 本法は第1条から第7条までと附則からなっておる。
 
第1条は 本法の目的を示したものであって松山市を国際観光温泉
  文化都市として建設することを示している。

第2条は 都市計画でいう交通、衛生、保安、防空、経済等に関し永久
  に公共の安寧を維持し又は福祉を増進する為の重要施設の計画
  の外国際観光温泉文化都市として、ふさわしい諸施設の計画をあ
  わした事業として実施するものであることを示している。

第3条は 本事業は松山市長が執行しなければならず同時に国際観光
  温泉文化都市を完成することについて不断の活動をしなければなら
  ない事を示している。

第4条は 本事業の促進と完成のために国及び地方公共団体はできる
  限りの援助をせねばならないことを示しておる。

第5条は 松山市は本事業の用に供するため必要がある場合は国か
  ら国有地とか国有建物とか其他国有の普通財産を無償で譲与を
  受けることができることを示している。

第6条は 市長は6ヶ月毎に建設大臣にその事業の進行状況を報告
  しなければならないことを示している。

第7条は 本建設計画及び本建設事業については、この法律に別特の
  定めがある場合を除く外は特別都市計画法及び都市計画法の条文
  によらねばならないことを示している。

附則は  この法律は松山市だけに適用せられるものであるから
  松山市の住民による投票で賛否を問うことになっている。

 以上の様なこととなっているが、この法律は松山市現在の経済状態としては、到底許されない大事業であるから第4条に示してある通り国からの事業の援助を得ると共になお第5条による国の財産の無償譲与を受けて松山国際観光温泉文化都市を建設するのが目的である。

  ◎ 獲得される建設費と事業の大別

 建設費は15ヶ年間に国から18億6,530万円を獲得する方針がきまったがこれが事業の大別は次の八項目に
わたって夫々の事業計画経費を示している。

   八項目事業

  1.戦災復興都市計画事業    3億9,950万円
  2.一般都市計画事業     1億4,320万円
  3.松山港拡張整備計画事業   5億4,190万円
  4.下水道建設計画事業      5,350万円
  5.上水道拡張計画事業     1億9,700万円
  6.住宅建設計画事業      3億6,000万円
  7.観光施設計画事業       4,520万円
  8.道後温泉開発建設計画事業  1億2,500万円

  ◎ むすび

 松山国際観光温泉文化都市建設法の成立によって松山市の将来はきわめて、あかるい都市として推進されてゆく訳であるが前述の通り本大事業を完遂する為には是非とも市民各位の絶大な御賛同と御支援がなければ到底達成せられないのであるから来るべき住民投票にあたっては賛成投票をされ是非国際的松山市発展のため本事業に率先協力されんことを願うものである。

  ※26年度予算:一般会計=8億2,277万9千円 特別会計=9億6,562万2千円
     計=17億8,840万円  

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