<手術当日>

 手術の説明を聞く為に母は前の日から松山に来ていましたので、手術の説明は9時30分となり、その前には病室にいました。
 笠置先生に呼ばれて、外来診察室で手術に関する説明を受けました。私はその時の事は手術前でかなり緊張してあまり覚えていないのですが、その時に頂いた手術等についての説明及び同意書を見ますと、手術の開始時間と@手術の必要性、A手術にかかる時間、B麻酔をどの様にして行うか、C手術の危険性、D集中治療室の件、E輸血の件、F手術創の治り方について説明を受けています。必要性については、心臓及び肺の圧迫を解除すると言う事で、笠置先生は「コスメティックな手術を考えてもらっては困る。」と仰っていました。時間は私の場合は多分1本のバーで上がるであろうから、手術時間は3時間とのことでありました。この時、笠置先生は「当院に於いては肋骨と肋間筋から大胸筋や前胸壁の筋肉を剥離した後開胸し、挿入したバーを左右それぞれ2本の肋骨に結びつけて固定する改良Nuss法を行っている為に、他施設に比べると時間は掛かります。それだけ丁寧に手術をしていると思って下さい。これによって得られる利点は術後のバーのずれがこれまで0例であるという事と、最近解った、皮下にバーを入れたときに見られる皮膚の変形や乳房の変形が全く無い。」という事でありました。「麻酔は全身麻酔で行い、麻酔医は愛媛大学から比較的経験年数の長い先生を選りすぐってきてもらっている。」とのことでありました。危険性は麻酔の危険性であり、肺の手術と同様の3000人〜4000人に1人の麻酔の死亡率があると言う事でした。ICU(集中治療室)はまず入らないであろう、直接帰室するとの事でした。輸血はしないだろうけど、輸血と特定生物由来製品(いわゆるフィブリノーゲン製剤の様な物)の説明を受けました。輸血は嫌ならしなくてもいいけれども、緊急時は入れないと死んでしまうとの事でしたが、「まず血が出る事はないよ。」と言う事で、私は輸血の安全性は聞かされているので、出た時は仕様がないかなと思いました。手術の傷口はそれぞれ左右に約2.5cmの肋骨に平行な傷口が残ると言う事であり、治り方はそれぞれ個人差があるとの事でしたが、これまで治り方が悪かった例は1例も無いとの事であり、安心して手術に対する気持ちを持つ事が出来ました。
 その後部屋で時間まで待ち、午後2時に左手に手術用のプラスチックで出来た針を刺して、午後3時15分には歩いて手術室に行きました。手術室は広く、とても清潔でテレビドラマ等では見ていましたが、「これが本当の手術室なんだ。」と感じるくらい色々な手術に使うモニターや、麻酔ガスのホースや、ライトや色んな手術機器が有りましたが、やはり大分緊張しているので何が何だか分かりません。そのまま横になる様に言われて、麻酔の先生からの診察の後、優しく説明を受け、直ぐに麻酔が開始され、寝てしまいました。


 手術の事に関しては勿論何も覚えていません…。


 そのうち誰かが呼ぶような声と軽く胸を叩かれ目が覚めましたが、訳が分かりません。口の中が苦しかったのですが、管が入っていたらしく、これを抜いてもらって漸く自分で楽に息をする事が出来ました。
 その後、部屋に戻りました。笠置先生が私のそばに来て、私の母を呼んで、手術の後の胸を見せて、「こんなに胸が上がりました。」と言っていたそうです。私はこの時、笠置先生が手を掴んで、掌を胸の上に当てて、何か言っていたのが分かりましたが、覚えていません。どうも、後で母に聞くと「これで治ったからこれから頑張りましょう。」と言っていたみたいです。

 しかしながら、覚悟していた通り、この時はとっても痛かったような気がします(この様な記憶は後になると殆ど薄れていくものです)。その後直ぐに痛み止めを打たれて私は寝てしまいました。
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