太陽の東月の西<2>







優しさに包まれると
嬉しい
   ケレド、セツナクテ
暖かい腕に抱きしめられると
嬉しい
   ケレド、カナシクテ
我儘な声を
ため息で逃がして、我慢



7月も上旬を過ぎると、大学は夏期休暇に突入してしまい学生たる俺は暇。

反対に直江は仕事が超繁多期に突入で、二人見事にすれ違ってしまっている。

俺もそれなりにバイトがあるけど、家事手伝いも俺の仕事だから四六時中は家を

空けらんない。

直江は本心では俺にそんな事をさせたくないらしく、事在るごとに「人を雇いま

しょう」と持ちかけてくる。

その辺の主従の感覚が抜けきっていないのか、本来なら、自分がすべきものだと

思っている節も在る。

でも、それは俺が嫌。

昔はいざ知らす、今の俺はそこまでぼんぼんじゃないし、第一勿体無い。

さすがに掃除だけは、週一回、業者というか人に頼んでいる。

だって、ここってサイズは3Lタイプだけど、坪だと40強。

普通の家で4〜5Lの広さで、マンションには珍しくメゾネット式。当然、リヴ

ィングは天井が妙に高くて段差までついている。

いくら俺でも手に負えないもんな。

セキュリィティ完備の超ハイグレード高級(いくらするかは不明。恐くて訊けな

い)マンションが俺達の住み家。



直江が遅い日が続くせいで、珍しく俺も遅番のシフトを組んでいた日の晩。

「おかえりなさい」

柔らかい声に出迎えられた。

居るはずのない人の声に驚いて、靴を脱ごうと屈みかけた姿勢のまま固まったと

ころを抱きしめられた。

「な、おえ・・・」

そのまま壁に押し付けられて、キスされる。

俺の腕がすがり付くように直江の肩にまわり、何度もキスを交わした。

「高耶さん・・・、どこか怪我でもしましたか?」

唇を少しはなして、直江が尋ねた。気遣わしげに俺の全身を見ている。

「?、怪我なんかしてねぇよ」

「少し消毒っぽいような・・・匂いがしたので」

消毒で、ピンときた。

「もしかして、メンソレの匂いみたいなやつか?」

「ええ」

「あぁ、それって多分、ガムの匂いだ。新発売モノらしくって、バイト先で女の

子が分けてくれたんだけど、俺の好みじゃないって言うか、何か薬臭くってま

いったんだよな」

まだ、匂うのかと俺は手のひらに息を吐いて確かめてみた。

・・・・・・・匂うかも。

顔をしかめた俺を見て、直江は苦笑し俺を抱き上げた。

「安心しました。続き、してもいいですか?」

改めて訊かれると、異様に恥ずかしい。

「おまえ、いやらしいぞ」

「自覚してます」

しらっと言われて、思わず笑ってしまった。返事のかわりにぎゅっとしがみつく

と、直江はそのまま寝室に向かったため、俺は慌てて脱ぎかけの靴を振り落とし

た。そのまま二人してベットに縺れ込む。

「最近、忙しくてすみません」

鳶色の瞳が覗き込む。

「仕事は仕方ねぇだろ」

殊勝な事を言いつつ、寂しかったのも本当だから俺は少し口篭った。

「・・・・・すみません。でも、あなたの大事な日は、空けていますからね」

俺の気持ちを汲み取って直江はもう一度謝る。

高耶さんと囁きながら俺のシャツを手早く脱がして、晒された素肌に唇を落とした。

「・・・・・・ん・・・」

久しぶりの行為に鼓動が走り出す。

「なおえ」

馴染んだ指先が、俺の下腹を彷徨い、弄り、身体の深くへと浸入していく。

「・・・・・高耶さん」

本当に、喰べてしまいたいくらい可愛いと直江が言う。

「こんなに可愛くて綺麗なあなたを独り占めしている私は、果報者ですね。何だ

か、罰があたりそうですよ」

赤面ものの事をえらく真面目な口調で呟かれ、「馬鹿か」とつい憎まれ口。

「おまえ、さっきからジジくさいし、そーゆー小っ恥ずかしいこと言うの止め・・・

―――んっん・・・・・・」

太股の内側の柔らかい部分を強く吸われた。チクツと走った痛みに、身を捩る。

「あっッ」

矢継ぎばやに、身体のあちこちに印をつけられ、追い立てられて息があがる。

「・・・高耶さん、少し早いんですが、いい?」

入りたいと、直江が息を弾ませてねだる。こんな彼は珍しい。

「うん・・・」

でも余裕が無いのは自分も同じだ。求められた分だけ、欲しい。

サイドボードから素早くローションを取出し掌に落とし下半身にあてがうと、直

は俺の中に入ってきた。

少しずつ、奥へ奥へと潜り込んでくる。

「・・・あ・・・・・・っ―――あ・・・」

潤滑剤のたすけがあるとは言え、やっぱりちょっとキツくて、声が溢れる。

目をつぶって堪えていたけど、ふと視線を感じて瞼を薄く開けてみた。

直江が、じっと俺を見下ろしていた。優しい眼差しが俺を包み込む。

「・・・嫌っ―――見るなっ・・・・・・」

「どうして?入れられてる時の高耶さん見てると、ぞくぞくしてきて、好きなん

ですよ」

直江に「好き」と言われると、夏の噴水の水飛沫が光に弾けて煌めく様を思い出す

キラキラと眩しい滴が降り注ぐ。

「尾底骨の辺りが痺れたように疼いてしまって・・・・・・」

言いながら、直江は腰を更に深く突き入れる。

「あっ・・・―――んっ」

「高耶さん、いい?」

喰べさせて可愛い高耶さんを、とまた言われた。額や瞼、顔中にキスをくりかえ

し、掌や指先が優しく触れる。

撫でまわされて、どこもかしこも身体全体で直江を感じた。

「直江・・・、もう、駄目ぇっ・・・」

「もう少し、我慢して。―――まだ、ですよ・・・・・・もう、ちよっ」

直江の突き上げが激しくなって、うっと低く呻いた。

いつもなら固く目を閉じて迎えるその瞬間、俺は今日は目を開けたまま彼を凝視

めていた。なんで、こんな時でも格好いいんだろ。

歪んだ表情も素敵だと思うのは悔しいけど、愛しくて、抱きしめたくなる。

直江は苦しげに鳶色の瞳を伏せたまま、手探りで俺の髪に触れ、額にかかった前

髪をかきあげ、そこにキスをする。

汗ばんでいるのも厭わず、何度も何度も唇で触れた。

愛されていると実感する、こんな優しい時が好きだ。

激しく求めあっている時は何も考えられないから、余計にそう感じるのかもしれ

ない。優しい時間はどこか切なくて、涙が滲みそうになり、直江の胸に顔を埋め

た。身を摺り寄せると、直江もきゅっと抱いてくれる。

世界が終わるその時まで、いいや、二人が終わるその時まで誰にも邪魔されず、

二人だけの場所でずっとこのままでいたい・・・・・・。

それが、俺の密やかな願いのひとつ。



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コメント

いきなり、ソフトに「や」の世界〜でごさいますぅ。
このぐらいなら隠さなくてもいいですよね?仕事場で書くには、この辺が限界。
すっごくドキドキしてました(笑)。表示スペースも2行分ぐらいにして、フォ
ントも小さめにして苦労したわ。
予定では次回で終わるはす。でも、まだ書ききってません。大丈夫か、まゆ(>_<)

余談ですが、ここの設定を少し。
闇戦国終了後で夜叉衆原作設定寄り。
一応、学生高耶さんは本人が希望のためで、年令にくい違いがありますが、無視
してます(爆)
夜叉全員である企業を立ち上げていて、現在、直江が社長。
高耶さん以外は世渡り上手な彼らですので、普通に生活するぐらいの術は困りま
せんが、軍資金は・・・「埋蔵金」
超ハイグレードマンションは、勿論、これで購入。
慎ましく暮らす二人も好きですが、高耶さんには苦労かけさせたくないので、ま
ゆは甘やかし極上主義です(笑)。