ときめきの法則

まただ――――

さっきから周期的に感じる息苦しさと胸の痛み。

このところ忙しかったから、やっととれた休みにためこんだ不調さをさらけだしているのだろうか。
到着までにおさまればよいのだが。

――――せっかくの休暇、せっかく・・・会えるというのに。

こんな体調を知られたら、あの男のことだ、ことさら大袈裟に騒ぎたてるに違いない。
日頃の不摂生は認めるが、表れるのはきまってこんな休日なので、とりあえず仕事には支障はない。
とはいえ、あまり続くのも困りものである。やはり、病院に行った方がよいのだろうか。

うつうつと考えているうちに、飛行船は着陸体制にはいった。



到着ゲートにたたずむ見慣れた長身。
「よう」と右手をあげる仕草に、その笑顔に、全身がほっとする。

不意に激しくなる動悸。

「どした、おい、気分でも悪いのか」
至近距離になった途端、眉をひそめる。
中途半端なつくりわらいはすぐに見透かされる。

「・・・・胸が痛い」

言葉にした安心感が、足元の力を萎えさせた。





「特に異状はないみたいだから。疲労がたまったんだろうって」
「すまない・・・」
「ま、よかったよ。休みで、なおかつオレの目の届くとこでさ」

空港の救護室の前の、しんとした廊下。
おさまるまで寝ていろとうるさく言われたが、かえっておちつかないようで、さきほどからベンチに並んでかけている。

「ゆっくりしてたらいい」

髪をなぜる手
途端に胸が悲鳴をあげる。

そうだ、いつからだろう、こんなふうに感じるのは。
この男だ。
声を聞くだけで、夢想するだけで、まして、直接ふれられたら・・・。

だめだ。

こんなことがばれたら、ほんとうに何を言われるかわかったものではない。
「オレは病原菌か」などと、ちくちく言い出すかもしれない。
このさきずっとからかいのタネにされそうな気がする。

救護室の医師は異状なしと言ったが、ほんとうだろうか。
まったくどういう病なら、こんな妙な症状になるのか。



―――――心底、困った
いつも以上に少女です。
続きを書きたいとずっと思っているのですが、他の話とのかねあいでなかなか。
痛みの理由がわかれば、おたがいどうなるのか。

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MEMO/050715