ひゅうーー
思わず気の抜けたような口笛がもれた。
それは、あまりにも軽薄な表現で。
「うわー、クラピカ綺麗」
ゴンのまじりっけないひとことに、あっさり消されてしまったけれど。
まばゆい陽射しにあふれた部屋で、薄青と純白の衣を纏ったそのひとはひときわ美しかった。
「ありがとう・・・けれど、なんだかどうもおちつかないのだよ」
すこし困ったように微笑む。
「へぇー、クルタの結婚衣裳ってこんなんだ」
「正しくは”クルタ風”だ。あくまでも、みようみまねだからな」
それでもうれしいのだろう。
オレたちが日頃思い浮かべるウェディングドレスのイメージとはやはり印象が違う。
どこか古風で、なんだか神秘的にすら見えた。
「オッサン、はりこんだな」
「おうよ、あったりめーだ。こいつがいちばん綺麗なのはクルタ服のときだからな」
背後から、あたまの少し上から声がした。
オレたちも結構伸びたけど、オッサンには結局かなわないまま。
いや、単に身長だけの問題じゃなくってさ。
「すまない・・・」
クラピカが俯く。
「おい、もうそれはいいっこなしだろ」
オレたちの存在なんて、まったく無視してくれちゃって、オッサンは俯くクラピカの顔を下から見上げるように膝をつく。
―――これ以上、ココにいてもバカ見るだけだ。
「いこっか」
「そだな」
「だーっ、もったいねー。ほんとにオッサンのもんになっちまうのかよ」
「キルアって、クラピカのことすきだったの?」
「あほ、ふつーに考えたらそーだろーが」
言いたかないけど「あこがれのオネーサン」を永遠に手の届かないところへさらわれちまった気分だ。
別に、あこがれたわけじゃないけどさ、断じて、絶対。
それに、割って入る隙なんて、欠片もなかったろーが。
「あいつ、すっげー緊張してんなー。普段は、あんだけえらそーなのに」
「・・・大丈夫かな。なんか、緊張してるって言うより、怯えてない?」
「お、おびえてる〜〜?!」
こいつってば、昔から「何も知りません」てカオして、たまにずばっと核心つくんだから、こえーよな。
「ほら、”マリッジブルー”っていうじゃない」
「けど、それこそこの期におよんで」
「ドタキャンのできる性格じゃないだろ」
「それは言えてるけど」
つづく?