このままでいいとは思わない

「うそだろ、おい」

酔った勢いにまかせて、ついオレが口走っちまった事実に、悪友どもは鳩豆っつーか、目が点っつーか、ようするににわかには信じられねーといった疑いのまなざしで・・・。


つまり、オレとクラピカの間には、長くて深ーい河があるってこと。


まずったという思いがちらと頭をかすめたけれど、オレの意思とは無関係に愚痴を吐き出してしまう。

・・・あいつが知ったら怒るだろうな


「なに、遠慮してんだ、ばか。おまえらしくもねー」

大学にはいってからのつきあいだから、昔のオレを知るわけもないのに、勝手に決めつけやがる。
オレにはそういう素質がにじみ出てるとでもいうのか。

あいつを知る前のオレなら、このくらい軽かったよな。
女のあしらいなんて慣れてたはずなのに、なんだっていつまでもこんな初歩で右往左往してんだ、オレ。


「けど『カノジョ』なんだろ?泊まりに来る仲なんだろ?」

カノジョね・・・オレはそのつもりだけど。
けど、ホントに許しあった恋人同士だっても、イキナリとかムリヤリなんてのはまずいだろ。

んな、犯罪みたいなコト、できっか。
そうでなくたって、あいつは年齢不相応にコドモなんだ。
あいつの意識は、そういうコトに対していったいどうなんだか・・・皆目、見当つかねえ。



   私は、おまえと同じ空間にいるだけでしあわせだというのに
   それ以上、なにも求めたくないのに


・・・って、正面きって言われたら、正直へこむ。
いや、あいつからすれば、それは精一杯の思いをつたえてくれてんだろーけど、
オレだって、それくらいはわかるんだけど

そう言われてしまったら、これ以上おせないじゃねーか。


「それで、何の進展もないってのか」

とりあえず、キスまではなんとか。
けど、それだって・・・なんか違う気がする。オレが、強引に行動おこしてるだけみたいだ。
キスひとつでくたりとなってしまうあいつに、それ以上どうしろってんだ。


「おまえ、くたりって・・・それカノジョ感じてんだろが」

そんなんじゃねーよ。
ムリヤリあいつの自我をぶっこわして、オレの意のままにしてるみたいな・・・罪悪感感じるんだ。


「それで、そんな不健康なコト続けて大丈夫なのかよ」

大丈夫なわけねーだろ。
もう、いつ、あいつに襲いかからねーかって・・・。



不自然なのは、わかってんだ。
誰に言われなくったって、オレがいちばんわかってる。

わかってるから、オレは・・・やっぱり何もできない。

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MEMO/050825