六角堂狸
勝山町・松山東警察署近く、電車通りの向い側の通り上一万方向に赤い鳥居の「六角堂」がある。
六角堂=稲荷山六角堂常楽寺にまつわる狸の話。
 江戸時代の頃、六角堂には築城時に東の守りりとして植えた榎の木があり、狸が棲んでいた。ある朝住職が、榎の木を見上げると、狸が髑髏(どくろ)を枝の上で四方八方に振りまくっていた。侍が、通りかかり、なにやらソワソワふらりふらりと行ったり来たりしている。「さては狸に化かされたか」住職は案じていた。
 ある日、髑髏を枝に置き忘れていたのを住職が見つけ取上げたところ、狸は神通力を無くしてしまった。狸は返してもらうよう懇願した。住職は、狸から人をたぶらかすことのなきようにとの誓詞を取り、哀れに思い髑髏を返してやった。以降この榎の下を通っても、何も起きなくなり、お参りすると御利益があるようになり「六角堂狸=榎大明神」として祀られ参詣者が増えたという。
 時代は変わって大正時代、毎夜、六角堂辺りで屋台車を曳いて来て、夜鳴きうどんを売る爺さんがいた。ある夜のこと、みすぼらしい老人が暖簾をくぐり、「そばを一杯ぬるうにして下さい」と言って注文した。あくる夜もやって来て、そばを注文し、必ず屋台の陰に隠れるように食べていた。そんなことが数日続いたが、この老人が来た晩に限って売り上げの勘定が合わない。財布の中から木の葉がでてくる。これは怪しいと考えたそば屋の爺さんは、その正体を見届けてやろうと構えていた。そんなことtも知らないで、いつもの老人がそば屋に現れた。気張って待ち構えていた爺さんは、用意していた鍬で老人を殴りつけた。すると老人は「グーッ」と言ったかと思うと黒い大きなかたまりのようなものが逃げて行った。それから暫らくは何も無かったが、今度は近くの薬屋へ毎晩の様に、貼り薬を買いに来る老人がいた。薬屋は勘定が間違って困っていた。そんな話の続いたある朝、六角堂の住職は、庫裏の縁の下で、全身毛の抜けた大きな古狸が、ウンウンうなっているのを見つけた。住職は、哀れに思い古狸の介抱してやり、快方したという。古狸は、いたずらを改め、御利益があるよう六角堂を盛り立てたという。

 「六角堂」には、狸をまつる祠や大きな狸の石像などがある。 


六角堂狸