毘沙門狸
大街道3丁目=通称ロープウェイ街=東雲神社の入口あたりは、毘沙門坂と呼ばれている。この由来は、明治17年頃まで東雲神社階段右手に毘沙門堂があったところから、このように呼ばれている。この毘毘沙門坂近隣に棲んでいた狸にまつわる話。
 ここに棲んでいた狸=名づけて「毘沙門狸」=は、いたずら好きで坊主や提灯に化けるのが得意な狸だったという。明治30年道後と一番町の間を汽車が通い出した当時のこと、「毘沙門狸」はよく汽車に化けて通行人を驚かしていたという。ある人が、道後温泉の終い湯を使っての帰路、夜もふけていたので、近道をして線路上を歩いていると、真向こうから「ポッー!、シュッ・シュッ」と汽笛の音と共に、赤いヘッドライト近付いて来るので、慌てて線路を避けた拍子に側溝へ落ちて怪我をした。汽車は何のこともなく通り過ぎて行った。後で考えて見ると終列車の時間はとっくに過ぎていた時刻だったという。
 また、毘沙門坂を通っての帰路、突然大きな坊主が立ちふさがり、逃げ場を失い股下をくぐり抜け、難を逃れたと言う。股下をくぐりぬけた時、頭を撫でるものがあった。生暖かい柔らかな大きなふぐり=蔭膿だったという。
 毘沙門狸は眼のフチが赤いのが特徴で、「大明神さま」言って拝むと願いを叶えてくれるので、当時は人気があったという。
 東雲神社の毘沙門堂は、明治17年 市坪 玉善寺に移築されたという。
毘沙門坂(東雲神社入口付近)