奥方に化けた狐 (四国には狐に住まない理由) (道後湯築城跡)

 道後温泉の近くにある道後公園の湯築城跡にまつわる伝説。今から450年ほど前、湯築城は河野通直というお殿様が住んでいました。
 ある日、お殿様が奥方の部屋に行きますと、驚いたことに奥方が二人になっていました。お殿様は、「これは、いったいどうしたことじゃ!これは、いずれかが偽者に違いない!」と思いましたが、奥方は二人とも「私が本物じゃ!」{あっちがお化けじゃ」とわめくばかりで、二人とも顔つきから声までまったくうり二つで見当もつきません。
 
 お殿様は医者を呼びました。医者は、「これは、離魂という魂が離れる病で、一人の女が二人になることもある。」と言いました。そして薬を飲ませましたが、何の効き目もありませんでした。それでお殿様は、神様や仏様にもお祈りしてみましたが、やっぱりだめでした。
 お殿様は、とうとう二人の奥方を座敷牢にとじこめました。何日かするうちに、一人の奥方の食事の仕方がおかしいので、お殿様は、その奥方の襟首をつかみ、その場にねじ伏せました。すると、その奥方は、一匹の狐になりその正体を現しました。
 怒ったお殿様は、「よくも騙したな! このうえは火あぶりにしてくれよう!」と言い、家来のものに言いつけました。

 いよいよ火あぶりの容易ができ、火が付けられようとしたとき、お城の門の所に一人の僧が何千人もの人をひきつれてきて、なにやら懸命に頼みこんでいます。「私どもは、四国の狐です。お殿様に捕らえられておりますのは、私どもの統領の狐です。どうぞ命を助けてください。今、火あぶりにされますとお殿様のご領地に災いが起こりましょう。」と言いました。

 お殿様は、「お前達の主人を思う心に免じて、この度のことはこらえてやろう。」と言い、狐を放してやりました。
 すると狐の統領は、「今後一切、この国には住みません。」と書いた証文を残して、四国中の狐を従えて、船に乗って瀬戸内海をわたり、向かいの中国地方へ立ち退いて行きました。 
 ・・・その時の証文は、河野家に代々伝えられたという・・・。

 

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