1、はじめに
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世界的な同時不況による企業護持の可及的速やかな経営的対応として、「派遣切り」に象徴される過酷な人員整理や労働条件の切り下げが、全産業的になだれのように推進されている。 トヨタの「王政復古」や諸対策をプレスで見ていると、昭和30年前後のトヨタ自動車工業とトヨタ自動車販売の両輪対策で危機を克服した同社の経営施策が漠然と思い出される。
大学を卒業したばかりの青年社員が畠山芳雄氏著「会社はなぜつぶれるか~会社破綻のはなし」(白桃書房)を教材に真剣に明日の日本経済を語り合った。当時は繊維産業自動車産業も大不況であった。やがて昭和40年以降、日本は成長路線を走っていくことになる。成長を支えたものの主要なファクターの一つが「日本的人事・労務管理」であったことを忘れないで欲しい。 |
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2、明治期の「祈りの経営」 |
土屋喬雄『日本経営理念史』(正・続)(日本経済新聞社)の記述を中心に、日本の近代化を支えた繊維産業の勃興期における三人の経営者と企業を採り上げてみたい。 |
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①鐘淵紡績 創立 明治20年(1887)<現在 クラシエ㈱ カネカ㈱> |
武藤山治 (1867~1934)美濃国海津郡海西村 豪農 佐久間国三郎長男 武藤松右衛門養子。
◎ 死直前受洗「ヨゼフ」(青年期より基督教的信仰)
(注)昭和9年3月9日、北鎌倉の路上で暴漢に襲われ死去。「時事新報」社長として「帝人汚職」を糾弾中の不慮の死。築地小劇場で武藤を主人公にした「千万人と雖も我行かん」(久板栄二郎作)上演。
□慶応義塾→米国留学→三井銀行→鐘淵紡績
〇明治36年 注意書箱の設置 日本初の提案制度茂夫
〇明治36年 『鐘紡の汽笛』 日本初の社内報創刊
〇明治38年 鐘紡共済制度 日本初の健康保険組合
〇大正3年 職工幸福増進係 産業カウンセラー制度
〇大正13年 鐘紡無料診療所 コミュニティーリレイション
〇大正14年 『女工哀史』(細井和喜蔵・岩波文庫) 「鐘紡は別だが・・・」の記述
【家族共同体経営<家族主義・温情主義> 志向】
愛は人間自然の性情であって、父母、兄弟、姉妹の間には強い愛情があるが、それが次第に広くなるに連れて、薄く成り行くものである。博愛の精神は正義人道に立脚し、時としては眼前の不利を招く様であるが、永遠には必ず勝利を得るものである。『実業読本』
【鐘紡経営理念】
1、愛と正義の人道主義 2、科学的合理主義 3、社会国家への奉仕 |
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②郡是製糸 創立 明治29年(1896)<現 グンゼ㈱> |
波多野鶴吉 (1858~1918)丹波国何鹿郡延村 大庄屋 羽室嘉右衛門次男 波多野家(母富美の実家の分家)養子。
◎明治23年(1890)丹波教会(牧師留岡幸助)洗礼(32歳)
□京都中学→村小学校教員→何鹿郡蚕糸業組合長→京都府蚕糸業取締所頭取
〇明治29年(1896)郡是製糸(株)創立<役員:旧家、従業員:郡民、幹部:羽室家+波多野家>
〇キリスト教教育(教育部長:川合信水牧師)
(注)川合信水 (1867年-1962年) によって提唱された日本に独特のキリスト教信仰「基督心宗教団」。プロテスタントに分類され、キリスト教と儒教を混合した独特の思想を展開。1960年代の調べによると、世界規模での信徒は約3,000人。
〇郡是製糸社訓<キリスト教精神による会社経営>
【村落(郡)共同体経営 志向】
【郡是製糸設立目論見書】
会社ノ性質ハ株式会社ナルガ故ニ、固ヨリ株主ノ利益ヲ重ンズベキハ当然ノコトナルモ、設立ノ趣旨ハ、専ラ蚕業奨励ノ機関タルニアルヲ以テ特ニコノ精神ニヨリ経営スルコト
(注)株主総数738名中、1~2株株主446名 10株未満703名(95%)で「何鹿郡民の、
何鹿郡民による、何鹿郡民のための企業」が奇跡的に誕生した。 |
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③倉敷紡績 創立 明治21年(1888)<現 クラボウ㈱ クラレ㈱> |
大原孫三郎(1880~1943)備中国窪屋郡倉敷村 大地主 大原孝四郎次男
◎ 明治39年(1906)倉敷基督教会(牧師田崎健作)洗礼(26歳)
□ 閑谷黌→東京専門学校(早稲田大学前身)<足尾銅山鉱毒・遊蕩挫折>
富田高慶著『報徳記』、『聖書』
〇岡山孤児院
〇倉敷教会&倉敷日曜講演
〇倉敷紡績㈱ 明治39年(1906)社長就任
〇倉敷絹織㈱
〇大原農業研究所
〇大原社会問題研究所
〇倉敷労働科学研究所
〇大原美術館
【利益(社会)共同体 志向】
労働者の幸福を保証してこそ、事業経営に意義があり、又その反映を到来せしめることができる。
【茶臼原運営理想】石井十次筆
汝自ら茶臼原に在り。鍬鎌主義を実行し、理想の国を建設すべし。理想の国とは何ぞや。曰く。
一、 私心私欲なきものの国也
二、 私有財産のなき国也
三、 国民は悉く鍬鎌主義をもって労働する国也
四、 神様を中心とする国也 |
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三社の経営理念は、タイプとしてはテンニェスの唱える家族・村落・利益共同体志向に分かれ、各共同体を支える「集団の倫理」が主張されているされていると考える。 |
集団の倫理 □フェルディナンド・テンニェス 『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』
岩波文庫 . |
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共同体区分 |
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社会学用語 |
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規範 |
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行動様式 |
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家族共同体 |
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(血縁) |
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ゲマインシャフト |
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恩義 |
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Give & Give→Give & Given |
村落共同体 |
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(地縁) |
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ゲノッセンシャフト |
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信義 |
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Give & Given→Give & Take |
利益共同体 |
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(人縁) |
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ゲゼルシャフト |
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道義 |
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Give & Take→Take & Give 「仁義礼智真」 |
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国家共同体 |
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法 |
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「非理法権天」 安全 安心 |
地球共同体 |
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理念 |
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愛 正義 人道 天道 |
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3、日本的経営の特徴 |
① 生涯雇用 (定年制 年齢序列 後継者育成 伝承 ) |
② 年功序列 (賃金カーブ・昇進カーブ平均化 能力・実力は相対的反映) |
③ 企業内組合 (会社の繁栄は社員<組合員>の反映) |
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企業内運命共同体を希求すると、株主軽視の風潮が生まれるのは事実であった。明治・大正の財閥なり、大資本、大銀行が許容する範囲で「家族主義的経営」なり「温情主義」が浸透し、「乏しきは憂えず 等しからざるを憂う」或いは「同じ釜の飯を食う」といった日本人の心情にマッチした人事・労務施策が展開された。 |
高度成長なり永遠の成長を過信した風潮とグローバリズムの浸透と相俟って「実力主義人事」が導入された。棲み分け・専門化・特殊化などの対応はあったが、結果として上下分解し大幅な格差が生まれた。 |
上下格差は、欲望の相対化(所得・消費・財産・学歴・肉体)を産み、マスコミの過剰反応もあり社会現象から社会不安を起こしつつある。批判は承知の上で言えば、日本における「貧乏」はアジア諸国に比し絶対的な貧乏(絶対的窮乏)といえるかどうか冷静に見つめる必要があろう。 |
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極貧 |
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赤貧洗うが如し「佐賀のがばいばあちゃん」 |
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バブル貧乏 |
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欲望が過大、ローンに追いかけられる |
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やりくり貧乏 |
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家計はバランスするも将来への不安消えず |
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金持ち貧乏 |
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財産処分、管理の不安消えず |
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古来、「清貧」・「清富」なる言葉があり、身の丈に合った生活を理想としてきた。「色即是空」は【捨ててこそ】の世界であり、【無一物即無尽蔵】の世界でもある。【無一物】なり 【無所有】とは、物質の占有でなく【お預かり】と捉えると、物からの執着が薄れてこよう。子供も、家屋も、会社も事業も【お預かり】したものであり、大切に預かり他にお譲りするという発想である。 |
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現在、中流(意識)の崩壊が指摘され、上流 2割・下流 8割という極端な分析まである。下流であることは決してプア(貧乏)ではない。イソップ寓話の「アリとキリギリス」 |
の内、いずれがプアかと考えると、アリは決してプア(貧乏)ではない。夏から秋にかけてバブルの中で享楽したキリギリスこそプア(貧乏)であり、冬には生活保護を受けなければ生存できない。プア(貧乏)とは上流志向の欠如でもある。 |
「貧しかったけれど夢があった。勤勉実直。よく働いた。辛抱した。」とは戦前戦後を生き抜いてきたシニアの述懐であるが、・今日のアジア途上国の姿はまさに我らの過ごしてきた姿の投影である。(リッチになりたい。富国富民) |
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国・地域 |
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経済状態 |
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志向 |
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特 記 |
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①日本 |
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リッチ |
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下流 |
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親の代より豊かになれない |
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②アメリカ |
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リッチ |
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上流 |
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アメリカン・スタンダード⇒アメリカン・ドリーム |
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③ヨーロッパ |
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リッチ |
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中流 |
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親の代の豊かさを守る。 |
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④アジア |
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プア・ミドル |
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上流 |
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モデル=日本 立身出世 富国富民 |
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⑤アフリカ |
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プア |
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下流 |
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モデル=なし |
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日本の旧植民地は「経済自立」したが欧米旧植民地は「経済自立」なし。何故か。 |
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4、 人間の行動様式 |
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1)人はなぜ働くか
キリスト教 「召命」「天職」 Beruf<ベルーフ> Calling(コーリング) |
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【予定説】<ルッター、カルヴァン>魂が救われるか否かはあらかじめ神によって定められている。救済の確証を得るために、人は禁欲的な生活を営み、職業を神から与えられた天職と考えて勤労に従事すべし。
勤労の結果得られる富の蓄積は信仰上正しい。当時勃興しつつあった市民階級(商工業者)に支持されて普及し、資本主義の発展に大きな影響を与えた。→ピューリタン革命
□マックス・ウエーバー 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫)
□リチャード・トーニー 『宗教と資本主義の興隆』(岩波文庫)
□大塚久雄『宗教改革と近代社会』(みすず書房)
□ダグラス・マグレガー 『企業の人間的側面』<X理論Y理論(アメとムチ)>(産業能率大学)
□フレディリック・テーラー『科学的管理法』(産業能率大学) |
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2)欲求の5段階 □アブラハム・マズロー 『A Theory
of Human Motivation』 |
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段階 |
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欲求区分 |
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具体的な事例 |
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第∞段階 |
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自己超越 |
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神仏、聖人、菩薩 |
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第5段階 |
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自己実現欲求 |
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創造的活動 |
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第4段階 |
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自我欲求 |
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集団からの認知、賞賛 |
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第3段階 |
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社会的欲求 |
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集団帰属(家庭・集団・団体・会社など) |
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第2段階 |
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安全欲求 |
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衣・食・住・生活の安定 |
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第1段階 |
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生理欲求 |
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食事 睡眠 排尿便 など |
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(注)最近の若者の行動として、1,2段階が充足されているので一足飛びに5段階へのジャンプして挫折するケースが多い。→集団帰属の5SHIPSをさんしょうのこと。 |
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3)帰属の5SHIPS |
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段階 |
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組織論用語 |
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機能 |
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組織内の地位 |
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第5段階 |
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フレンドシップ |
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友好 |
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退役 (社友) |
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第4段階 |
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ヘッドシップ |
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掌握 |
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連隊長 (担当・役員) |
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第3段階 |
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リーダーシップ |
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指揮 |
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士官 (課長・部長) |
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第2段階 |
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フォロワ―シップ |
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補佐 |
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下士官 (ベテラン・組長・係長) |
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第1段階 |
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メンバーシップ |
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参加、 |
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新兵 (見習い・徒弟) |
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5、現代の「祈りの経営」 |
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不況下にあっても、独特の宗教的な雰囲気の中で、順調に経営を伸ばしている企業がある。西田天香が創設した一灯園で体得した理念「無一物中無尽蔵」を経営に具現化した鈴木清一氏が創業した株式会社ケントクであり株式会社「ダスキンである。 |
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1)企業理念 |
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「ダスキン悲願」
謙遜、賢明、剛健の徳を養い
仕事の第一は人間をつくることでありますように
働くことが楽しみであり
利益は喜びの取り引きから生まれますように
商(あきない)を通じて人と仲良くなり
経済をもって世界平和のお役に立ちますように
合掌 |
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「ダスキン一家の祈り」
はかなきは金銭
たよりなきは地位
人の思惑も苦にせず
合掌
ただひたむきに
ざんげの一路を歩み
己れを捧げて
報恩の托鉢を致します
合掌 |
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「祈りの経営 ダスキンの経営理念」
一日一日と今日こそは
あなたの人生が
(私の人生が)
新しく生れ変るチャンスです
自分に対しては
損と得とあらば
損の道をゆくこと
他人に対しては
喜びのタネまきをすること
我も他も
(私もあなたも)
物心共に豊かになり
(物も心も豊かになり)
生きがいのある
世の中にすること
合掌 |
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2)企業組織 |
〇おつとめ
「般若心経」唱和
①朝夕「おつとめ」
①ダスキン悲願 ②ダスキン一家の祈り ③ダスキンの祈りの経営
②「一燈園」研修 【智徳研修会:ダスキン・第一建設サービス・新生舎・エース・はまつ】 |
〇呼称
①役員・社員 「働きさん」
②セールス 「シーダーさん」(種まく人) 「リーダーさん」「ヘルプさん」
③給料 「お下り」
④賞与 「ご供養」+「期末ご供養」
⑤役職 なし (対外的には役職名) |
〇株主総会
「般若心経」唱和から開始 <上場会社としては稀有なケースであろう> |
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3)社史 |
(事業の変遷)
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昭和19年10月 |
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ユシロ航空油剤製造㈱創立、戦後ケントク改称 |
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昭和33年 9月 |
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ケントク新生舎(ビルメンテナンス業) |
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昭和37年 7月 |
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S・C・ジョンソン社と提携、被吸収合併。【自由化初犠牲】 |
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昭和38年 1月 |
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㈱サニクリーン創立 初代社長 山田 宏 |
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昭和40年 1月 |
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㈱ダスキン 改称 初代社長 鈴木 清一(清市) |
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(注) |
ユシロ |
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油脂+蝋 |
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ケントク |
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一燈園光友「西田恭三」戒名【一燈園謙徳恭像居士】 |
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ダスキン |
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「ダストコントロール」+「ぞうきん」 (ダストクロス)+ (ふきん) |
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関係会社 |
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「ミスタードーナツ」「ユナイテッドレントオール」「「ザ・どん」「ジョーズ」「カーニバルプラザ」その他 |
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(社史関連図書 追加) |
ダスキン㈱ 経営理念 「道」と「経営」の合一
□鈴木清一『ダスキン 祈りの経営』(至知出版社)
□『祈りの経営 ダスキンの30年』①「創業物語と成長への道のり」
□『祈りの経営 ダスキンの30年』②「企業年表&経営資料」
□『祈〇駒井茂春『ダスキン成長への戦略ノート』(ダイヤモンド社)
□広げよう愛の輪運動基金編『自立へのはばたき』<1991年からの年刊誌>
□山田宏『人間関係半世紀』(自家版)りの経営 ダスキンの30年』③「ダスキン企業集団経営者の手記」 |
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6 おわりに |
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〇信じなければ確かめることの出来ない存在がある。
~あなたは「日本」を信じますか~
~あなたは「日本人」を信じますか~
~あなたは「あなた自身」を信じますか~
〇現代の「祈りの経営」
~日本的経営 ①共有 ②共感 ③協生・・・共同体の復活~ |
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【参考】一燈園(いっとうえん)・西田天香 氏 |
西田天香(にしだてんこう)が1905年(明治38)に京都で創始した信仰団体。西田は1872年(明治5)滋賀県長浜の紙問屋に生まれ、北海道で開墾事業の監督となったが、農民と資本主の紛争のなかで苦悩し、職を捨てて、求道の放浪生活に入った。
1903年(明治36)トルストイの『わが宗教』を読んで眼を開かれ、無一物の禁欲、奉仕、内省の生活を始めた。05年長浜の愛染堂で断食中、乳児の泣き声を聞いて、人生の理想は赤児のように無心となることであると悟り、京都鹿ヶ谷に一燈園を開いて、托鉢、奉仕、懺悔の信仰生活を説いた。
のち山科に移り、日露戦争後から第一次世界大戦中には、一燈園が説く「おひかり」による内面的救済を求めて信者が急増した。21年(大正10)西田の教話集『懺悔の生活』がベストセラーとなった。
〇倉田百三「出家とその弟子」 〇尾崎放哉(種田山頭火)
一燈園では、数百人の信者が、絶対平等、無所有、無一物の共同生活を営み、奉仕の托鉢行を行った。大正末期から昭和初年に、光泉林、すわらじ劇団などの関連団体を設立し、朝鮮、中国、ハワイ、アメリカに進出した。西田は、光明祈願による新生活を提唱し、第二次世界大戦中、政治、外交、社会問題などについて活発に発言した。戦後、西田は国民総懺悔を唱えて参議院議員となった。
1968年(昭和43)西田の没後、一燈園では、西田の教えを現代に生かすべく、人間回復のための懺悔と托鉢奉仕の信仰生活を呼びかけている。現在、光泉林(公称は「財団法人懺悔奉仕光泉林」)が存在する京都市山科区四ノ宮に本部を置く。 |
□西田天香『懺悔の生活』(春秋社)
□西田天香『思ひ出』(同光社) |
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【参考】ダスキン創業者 鈴木清一 氏 |
鈴木清一(すずきせいいち)は、1911年(明治44)、愛知県碧南市に生まれる。東京・中央商業学校を卒業後、川原商店に入社。肋膜を患い養母の愛情に救われてからその影響で金光教に入信。1938年(昭和12)、一燈園に身を投じ托鉢求道の生活に入る。
1944年(昭和19)、ケントク創立。以後「道と経済の合一」を願う「祈りの経営」について生涯を通じて追求する。
1963年(昭和38)、ダスキン創業。フランチャイズシステムによって画期的な流通組織を確立、そうじ用具の
レンタル事業を全国展開する。
1971年(昭和46)、ミスタードーナツ事業の導入をはじめとする多角化によって、わが国初の複合フランチャイズ
企業の道を開き、ダスキン企業集団を率いた。
1980年(昭和55)、68 歳で死去 |
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【参考】サニクリーン(ダスキン前身)初代社長 山田 宏 氏 |
山田宏(やまだひろし)は1923年(大正12)、東京に生まれ、旧制大阪理工科大学卒業後、大阪府立産業能率研究所勤務。1956年(昭和31)㈱近代経営社設立し「日本HR協会」が発足、専務理事を務める。協会メンバーは松下電器、日本生命、鐘紡、サントリー、トヨタ、近鉄、クボタなど1業種1社構成でHR(企業内人間関係)の研究、実践を行った。「近代経営者クラブ」からダスキン創業者の鈴木清一らが輩出した。
1963年(昭和38)サニクリーン(ダスキン前身)社長に就任、その後ダスキンの相談役、最高顧問を務める。
2006年(平成18)、83歳で死去。同年9月10日大阪・リーガロイヤルホテルで「山田宏を偲ぶ会」が開かれ、ダスキン関係者と共に、生前同氏と親交のあった関係者が出席し別れを惜しんだ。
論者は1970年(昭和35)から40年に及ぶ知己を得て、日本HR協会の理事として、人間関係論の講演や小論を発表させていただいた。西田天香翁揮毫の色紙「無一物中無尽蔵」はビジネスマン時代の癒しの真言でもあった。 合掌 |
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