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するから、もう先生にお会いできないけど先
生はやっぱり先生を続けて欲しいです」大澤  
弘美が泣きながら訴えた。教室内が静まりか 
えってしまった。中学生には立ち入り難い、大
人の世界の身の処し方のように思えもした。
「ありがとう、大澤の気持ちは嬉しい。しかし
なあ、それだけでもないんじゃ、最近体調が
悪いんじゃ。大したことではないと思うが今
回のことと合わさって気持ちが萎縮してしも
うた、やっぱり年なんじゃろうか」完一始め何
人かは、教諭が最近授業中に苦しそうに胸の
辺りを押さえることがあるのを不思議に感じ
ていた。
 三月十六日に県立高校の合格発表があった。
三組合格者三十四人、不合格者九人、不合格
者は併願受験の私立に、完一は県立も受かっ
たが私立栄光高校に、私立一本の七人がそれ  7
ぞれの高校に進学を決定した。そして三人が  7
就職をし、内二人は後日の定時制高校受験の
予定であった。教諭は受験者全員の合格を期
待していたが、叶わなかった。しかし、合格率
は平均を上回っていたから、ある程度納得は
出来た。
 翌日好天の中で卒業式が行われた。体育館
は卒業生三百三十六人と、在校生六百三十八
人、来賓、全員ではないが卒業生の父兄で飽
和状態であった。在校生のにこやかな表情に
比べ、卒業生は誰もが式の始まる前から、緊
張と寂しさのため神妙な顔つきであった。
 門脇教頭の司会のもとに国歌斉唱、燕尾服
姿の泉校長の挨拶、市長祝辞、PTA会長の挨
拶、在校生代表の送辞、卒業生代表の菊池完
一による答辞と続き、"仰げば尊し"斉唱とな
った。弥生先生が壇上で弾くピアノに合わせ、
一番は卒業生、二番は在校生、三番は卒業生、