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様は人類に試練を与えたんじゃ。不幸がある
から、幸福のありがたみが分かるのであって、
以前にも言ったが不幸な人は不幸だ不幸だと
嘆いてばかりいないで、幸福になる努力をし
ないといけない。自分で努力して掴んだ幸福
は何にもまして大きいはずです。
 それから幸福とか不幸とかは他人が決めるも
のでもないなあ。他人があの人は不幸だと思
っても、本人は幸福と思っているかもしれない、
勿論逆もあります。伊吹は確かに客観的には
不幸だと思える。だから自分で幸福への道を
切り開いてゆくしかない。伊吹は皆と同じで
これからの人間だから、まだまだチャンスはあ
ります。しかし、罪を償いながらの人生を歩ま
ないかんのじゃけん、これまで以上に茨の道
じゃと思う。伊吹が挫けずに生きていくために、
先生は一生激励し、助けていってやりたい。   4
みんなも伊吹を助けてやってくれるか」教諭が  7
全員を見まわして言った。
「みんなあごんちゃんのために、今我々が出
来ることはなんじゃろか。ごんちゃんを助ける
ために、わしら高校受験のことなんか忘れて
頑張ろうや」完一の声だった。
「そうじゃそうじゃごんちゃんを助けてやろう」
「助けよう」殆ど全員が声を出していた。鳥居
までが腕を上に上げて、助けようと言っている。
「お前ら素晴らしい奴じゃ、本当に素晴らしい。
先生は嬉しい」再び泣きながら教諭が言った。
そして続けた。
「今我々が出来ることは、伊吹の罪を軽くして
やることじゃ、殺人となれば恐らく鑑別所に入
れられ、更に少年院に送致されるじゃろう。そ
こに何年おることになるか分らんが、裁判の
前に検察庁に罪の軽減を懇願してみよう。そ
の懇願する書類を嘆願書というのだが、それ