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「先生ごんちゃんは悪いことない。お父さん
が悪いのよ。ごんちゃんがあまりにも可愛
そう」おとなしい岡部禎子が泣きながら言っ
た。すると女生徒が口々に"ごんちゃんは悪
くない、悪くない"と言った。男生徒達も騒ぎ
始めた。「ごんちゃんは悪ない、悪いのはお
父さんで、お父さんが死んだのは、行き掛か
り上の事故で仕方なかったんじゃ」湧き起こ   
る声はお父さんの非難ばかりになった。     
「先生人生いうて不公平ですよ。僕みたいに
両親からの愛情をいっぱい受けて、精神的
にも経済的にも何の不満もない生活をしとる
者がおるかと思えば、ごんちゃんみたいに次
々と不幸が襲ってくる者もいます。ごんちゃ
んがなんでそんな茨の道を歩かないかんの
ですか」完一が咽びながら言った。
 その時一時限目社会担当のロングが入口の  3
戸を開けた。そして教壇の教諭が見えないほ  7
どに、生徒が取り囲んで悲しんでいる状況を
見て、少し驚きの表情で言った。
「一時間目始まったのですがどうしましょう。
そうじゃ、石田さん四時限目は私のクラスの
国語でしょう。それと差し替えましょうや」
「ロングさん申し訳ない」教諭が立ち上がって
言うと
「いえいえみんなでゆっくり話し合って下さい」
と言って戸を閉めた。生徒達は更に輪を縮め
て教諭に近寄った。
「伊吹には可愛そうじゃが、不公平、それが世
の中というものじゃ。神様はわざと不公平な世
の中を創ったんじゃ。そうじゃろう、世の中みん
な公平に幸せであれば、この世は天国じゃ、
ユウトピアじゃ。だけど人類全てが幸福に浮か
れていては、誰も何の努力もしなくなるから、
この地球は退廃して崩壊してしまう。だから神